説明

自動制動システム

【課題】自動制動用ストップランプ回路の故障診断を後続車両に違和感や煩わしさを与えることなく実施でき後続車両への影響を低減可能な自動制動システムを提供する。
【解決手段】ストップランプ装置は、手動制動に連動したスイッチがオン側に切り換えられることで閉成されてストップランプを点灯させる第1のストップランプ回路(手動制動用ストップランプ回路)と、自動制動に伴いリレーがオン側に切り換えられることで閉成されてストップランプを点灯させる第2のストップランプ回路(自動制動用ストップランプ回路)と、自動制動に拘わらずリレーに疑似信号を供給することで上記第2のストップランプ回路の異常検出を行う異常検出手段とを備え、該異常検出手段は、第1のストップランプ回路が閉成された後(S10)、スイッチがオフ側に切り換えられて該第1のストップランプ回路が開成された直後の微少時間に異常検出を行う(S14〜S26)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動制動システムに係り、詳しくは、自動制動に伴いストップランプを点灯作動するストップランプ装置の故障診断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、前方障害物に対する自車両の衝突を予知して自動的に制動を行う衝突軽減ブレーキシステム等の自動制動システムが種々開発されている(例えば、特許文献1参照)。
当該自動制動システムでは、ブレーキペダルを操作した場合と同様に自車両のストップランプを点灯させることで自車両が減速中であることを後続車両に知らせて注意を喚起するようにしている。この場合、一般的には、例えばブレーキペダルと連動するスイッチとは別に当該スイッチと並列にリレーを設け、自動制動時には当該リレーを介してストップランプ回路を成立させストップランプを点灯させるようにしている。
【0003】
しかしながら、リレーが故障したり断線したりするとストップランプ回路が成立しないことがあり、このような場合には、自動制動システムによって制動が行われても自車両のストップランプが点灯せず、後続車両への注意喚起がなされないという不都合が生じることとなる。
そこで、このような不都合を解消すべく、リレーを含む自動制動用ストップランプ回路が正常に機能しているか否かの確認を適宜行う必要があり、例えばブレーキペダルの操作によってストップランプを点灯させていない状況下でリレーの故障や断線等の確認作業、即ち自動制動用ストップランプ回路の故障診断をすることが考えられている。
【特許文献1】特開平6−48244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の如くブレーキペダルの操作によってストップランプを点灯させていない状況下で任意に自動制動用ストップランプ回路の故障診断を行うようにすると、自動制動用ストップランプ回路に異常がない場合には、実際には自動制動を行っていないにも拘わらずストップランプが点灯してしまう。
かかるストップランプの点灯は不要な点灯であって、後続車両に不必要に注意喚起を行う結果となり、後続車両に違和感を与え、後続車両にとって紛らわしく、煩わしいという問題がある。
【0005】
また、自動制動用ストップランプ回路に異常があると診断された場合には、ストップランプが点灯しないことになり、このような場合において如何に後続車両への影響を少なくするかが課題となる。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、自動制動用ストップランプ回路の故障診断を後続車両に違和感や煩わしさを与えることなく実施でき後続車両への影響を低減可能な自動制動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の自動制動システムでは、手動制動のみならず自動制動可能であって、制動に伴い車両後部に設けられたストップランプを点灯作動するストップランプ装置を含む自動制動システムにおいて、前記ストップランプ装置は、前記手動制動に連動したスイッチがオン側に切り換えられることで閉成され、前記ストップランプを点灯させる第1のストップランプ回路と、前記自動制動に伴い前記スイッチとは別に設けられたリレーがオン側に切り換えられることで閉成され、前記ストップランプを点灯させる第2のストップランプ回路と、前記自動制動に拘わらず、前記リレーをオン側に切り換えるべく該リレーに疑似信号を供給することで前記第2のストップランプ回路の異常検出を行う異常検出手段とを備え、該異常検出手段は、前記第1のストップランプ回路が閉成された後、前記スイッチがオフ側に切り換えられて該第1のストップランプ回路が開成された直後の微少時間に前記第2のストップランプ回路の異常検出を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2の自動制動システムでは、請求項1において、前記異常検出手段は、前記第2のストップランプ回路の所定位置の電圧を計測することを特徴とする。
請求項3の自動制動システムでは、請求項1または2において、前記異常検出手段が前記第2のストップランプ回路の異常を検出したとき、前記自動制動を制限する自動制動制限手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項4の自動制動システムでは、請求項3において、前記自動制動制限手段は、前記自動制動を禁止することを特徴とする。
請求項5の自動制動システムでは、請求項1または2において、さらに、車両後部に設けたハザードランプを点灯作動可能なハザードランプ装置を含み、前記異常検出手段が前記第2のストップランプ回路の異常を検出したとき、前記ストップランプ装置に代えて前記ハザードランプ装置により前記ハザードランプを点灯作動する代替手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の自動制動システムによれば、手動制動に連動したスイッチがオン側に切り換えられて手動制動用の第1のストップランプ回路が閉成された後、当該スイッチがオフ側に切り換えられて当該第1のストップランプ回路が開成された直後の微少時間において自動制動用の第2のストップランプ回路の異常検出を行うようにしている。
従って、第2のストップランプ回路の異常検出を実施すべくリレーに疑似信号を供給すると、第2のストップランプ回路に異常がない場合にはストップランプが点灯することになるのであるが、第1のストップランプ回路の閉成に伴うストップランプの点灯に続けてストップランプが微少時間に亘り一寸延長して点灯することになり、ストップランプの点灯を手動制動時の点灯と一体化させて第2のストップランプ回路の異常検出を行うことができる。
【0010】
これにより、本発明によれば、実際の制動と全く関係なくストップランプが点灯することを防止して後続車両に不必要に注意喚起を行わないようにし、後続車両に違和感を与えることなく、後続車両にとって紛らわしくなく、煩わしくないようにして自動制動用の第2のストップランプ回路の故障診断を行うことができる。
請求項2の自動制動システムによれば、第2のストップランプ回路の所定位置の電圧を計測することにより、電圧値に基づいて容易に第2のストップランプ回路の異常検出を行うことができる。例えば、電流方向で見てストップランプ回路のストップランプ直上流の電圧を計測し、電圧値がゼロであればリレーの故障、断線のいずれかが発生していることを容易に診断でき、或いは電流方向で見てストップランプ回路のストップランプ下流の電圧を計測し、電圧値がゼロであればリレーの故障、断線、ストップランプの球切れのいずれかが発生していることを容易に診断できる。
【0011】
請求項3の自動制動システムによれば、第2のストップランプ回路の異常を検出したときには自動制動を制限するので、後続車両に違和感を与えることなく第2のストップランプ回路の異常検出を行うことができるとともに、第2のストップランプ回路の故障によってストップランプが点灯しない場合には、自動制動時の制動度合いを小さく制限して急激な制動を回避するようにでき、後続車両に注意喚起が行われないことによる当該後続車両への影響を低減でき、安全性を維持することができる。
【0012】
請求項4の自動制動システムによれば、第2のストップランプ回路の異常を検出したときには自動制動を禁止するので、後続車両に違和感を与えることなく第2のストップランプ回路の異常検出を行うことができるとともに、第2のストップランプ回路の故障によってストップランプが点灯しない場合には、自動制動を一切行わないようにでき、後続車両に注意喚起が行われないことによる当該後続車両への影響を排除でき、安全性を確保することができる。
【0013】
請求項5の自動制動システムによれば、第2のストップランプ回路の異常を検出したときにはストップランプの点灯に代えてハザードランプを点灯するので、後続車両に違和感を与えることなく第2のストップランプ回路の異常検出を行うことができるとともに、第2のストップランプ回路の故障によってストップランプが点灯しない場合には、代わりにハザードランプを点灯させることで自動制動を制限しなくても後続車両に引き続き注意喚起を行うことが可能である。これにより、やはり当該後続車両への影響を排除でき、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る自動制動システムの全体構成図が示されている。
なお、当該自動制動システムは、例えば、先行車両との車間距離に応じて自車両の車速等を加減速制御する車間距離制御システムや、先行車両の制動に応じて自車両の制動をアシストして衝突を回避する衝突軽減ブレーキシステム(プリクラッシュシステム)等に適用されるものである。
【0015】
自動制動システムは、同図に示すように、電子コントロールユニット(ECU)1を有して車両に搭載されており、大きくはECU1の入力側に車両前部に設けられた前方監視ユニット(例えば、CCDカメラ)2が電気的に接続され、出力側に自動制動ユニット4が電気的に接続され、当該自動制動ユニット4にさらにブレーキユニット6が接続されて構成されている。
【0016】
自動制動ユニット4は、例えば電磁的に作動するアクチュエータであり、ブレーキユニット6は、例えば油路、油圧シリンダ、ブレーキデバイス(所謂ドラムブレーキ、ディスクブレーキ等)等からなる油圧ブレーキユニットであり、ブレーキユニット6は自動制動ユニット4のアクチュエータの作動に応じてブレーキデバイスを作動可能である。
これにより、自動制動システムは、前方監視ユニット2によって検出される自車両前方の障害物の状況に応じて自動制動ユニット4を作動制御し、ブレーキユニット6を駆動させて自動的に車両に制動力を付与可能である。
【0017】
ブレーキユニット6には、自動制動ユニット4による自動制動のみならずドライバが踏込操作することで手動制動を行うブレーキペダル8も接続されている。
ブレーキペダル8には、手動制動時においてドライバが当該ブレーキペダル8を踏込操作することで作動するストップランプユニット(ストップランプ装置)10が接続されている。詳しくは、ブレーキペダル8は、ストップランプユニット10のうちストップランプスイッチ(ストップランプSW)14に連結されており、踏込操作に連動して当該ストップランプSW14をオン(ON)・オフ(OFF)操作可能である。
【0018】
ストップランプユニット10は、手動制動時のみならず自動制動ユニット4による自動制動時においても作動するよう構成されており、大きくは、車両の後部に設けられたストップランプ12が上記ストップランプSW14を介してバッテリ16に接続されて成る手動制動用ストップランプ回路(第1のストップランプ回路)と、ストップランプ12がリレー20を介してバッテリ16に接続されて成る自動制動用ストップランプ回路(第2のストップランプ回路)とから構成されている。
【0019】
リレー20は、コイル22に励磁電流を流すことでメインスイッチ24をオン(ON)・オフ(OFF)する一般的なものであり、コイル22の一端はバッテリ16に接続される一方、他端のリレー動作端子はECU1に接続されている。即ち、リレー20は、ECU1内でリレー励磁信号に基づき励磁電流がオン・オフ制御されることでメインスイッチ24のオン・オフ切り換えを行い、ストップランプ12の点灯と消灯を間接操作可能である。
【0020】
また、ストップランプユニット10には、ブレーキペダル8の踏込操作によりストップランプSW14と連動して作動するブレーキスイッチ(ブレーキSW)18が設けられている。ブレーキSW18は、ECU1のペダル確認端子に接続されており、ブレーキペダル8の踏込操作によりブレーキSW18がオン(ON)側に切り換わるとブレーキSW18を介して電流が流れるよう構成されており、これによりECU1内においてブレーキペダル8の踏込操作ひいては手動制動の有無を検出可能である。
【0021】
また、ECU1内には、電圧計測部30が構成されており、当該電圧計測部30は電圧計測端子を介してストップランプ回路のうち電流方向で見てストップランプ12の上流部分に接続されている。詳しくは、電圧計測部30は電圧計測端子を介して自動制動用ストップランプ回路のうちストップランプ12とリレー20との間の部分(所定位置)に接続されている。これより、ストップランプユニット10は、電圧計測部30によってストップランプ12とリレー20との間の電圧を計測し、当該計測電圧を自動制動用ストップランプ回路電圧Esとして検出可能である。
【0022】
このような構成により、当該自動制動システムでは、ストップランプユニット10において、通常ブレーキペダル8が踏込操作されて手動制動が開始されるとストップランプSW14がオン側に切り換えられて手動制動用ストップランプ回路が閉成しストップランプ12が点灯するとともに、前方監視ユニット2からの情報に応じて自動制動が開始されてECU1からリレー励磁信号が発せられて励磁電流が供給されるとリレー20がオン側に切り換えられて自動制動用ストップランプ回路が閉成しストップランプ12が点灯する。このストップランプ12の点灯により、自車両が制動中であることを後続車両に知らせることができ、後続車両への注意喚起を行うことができる。
【0023】
ところで、手動制動用ストップランプ回路は比較的簡単な構成である一方、自動制動用ストップランプ回路はリレー20を介して配線がやや複雑に構成されていることから、リレー20が故障したり配線が断線したりすることもあり得る。このように自動制動用ストップランプ回路に当該自動制動用ストップランプ回路を成立させることができないとする異常が発生した場合、自動制動を行うにも拘わらずストップランプ12が点灯しない事態が起こり、後続車両への注意喚起を十分に行うことができず好ましいことではない。
【0024】
また、このような自動制動用ストップランプ回路の故障診断を車両走行中に任意に実施すると、上述したように、自動制動用ストップランプ回路が正常である場合には制動を行わないにも拘わらず不必要にストップランプ12が点灯することになり、後続車両に違和感を与えるという問題がある。
そこで、本発明に係る自動制動システムでは、このような問題点を解決するようにしており、以下、本発明に係る自動制動システムの制御内容について説明する。
【0025】
先ず、自動制動用ストップランプ回路の異常検出手順について説明する。
図2を参照すると、ECU1が実行する本発明に係る自動制動用ストップランプ回路の異常検出の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに沿い説明する。
ステップS10では、ドライバがブレーキペダル8の踏込操作によりブレーキSW18がオン(ON)側に切り換わったか否かを判別する。つまり、ドライバにより手動制動が開始されたか否かを判別する。判別結果が偽(No)の場合には当該ルーチンを抜け、判別結果が真(Yes)の場合にはステップS12に進む。
【0026】
ステップS12では、リレー20に励磁電流を供給すべくリレー励磁信号を発信(ON)する。なお、ここで発信するリレー励磁信号は前方監視ユニット2の情報に基づく通常の自動制動時のものではなく、ECU1内で擬似的に発生させる疑似信号である。
このように、本システムでは、ドライバがブレーキペダル8の踏込操作をすると、ストップランプSW14がオン側に切り換えられて手動制動用ストップランプ回路が閉成されストップランプ12が点灯すると同時に、自動制動に拘わらずリレー20に励磁電流が供給されリレー20のメインスイッチ24がオン側に操作されて自動制動用ストップランプ回路も併せて閉成される。
【0027】
ステップS14では、その後にドライバがブレーキペダル8を戻してブレーキSW18がオフ(OFF)側に切り換わったか否かを判別する。つまり、ドライバにより手動制動が終了されたか否かを判別する。判別結果が偽(No)の場合には当該ルーチンを抜け、判別結果が真(Yes)の場合にはステップS16に進む。
ステップS16では、電圧計測部30によって計測される電圧値に基づき自動制動用ストップランプ回路電圧Esを検出する。つまり、自動制動用ストップランプ回路のうちストップランプ12とリレー20との間の電圧値を自動制動用ストップランプ回路電圧Esとして検出する。
【0028】
ステップS18では、自動制動用ストップランプ回路電圧Esの検出を開始してから微少時間(例えば、1〜2sec)経過したか否かを判別する。
つまり、ドライバがブレーキペダル8を戻し、手動制動用ストップランプ回路が開成して手動制動によるストップランプ12の点灯が解除された直後の微少時間において、リレー20のメインスイッチ24をオン側に操作した状態を保持して自動制動用ストップランプ回路電圧Esの検出を行う。
【0029】
ステップS18の判別結果が偽(No)の場合には微少時間が経過するのを待つ。一方、同判別結果が真(Yes)で微少時間が経過したと判定された場合には、ステップS20に進む。
ステップS20では、リレー20に供給していた励磁電流を停止すべくリレー励磁信号の発信を停止(OFF)する。これにより、リレー20のメインスイッチ24がオフ側に戻し操作されて自動制動用ストップランプ回路が開成され、点灯していたストップランプ12が消灯する。
【0030】
そして、ステップS22において、上記検出した自動制動用ストップランプ回路電圧Esが通電時において通常得られる所定電圧E1より小さい値であるか否かを判別する。
ステップS22の判別結果が偽(No)で、自動制動用ストップランプ回路電圧Esが所定電圧E1以上と判定された場合には、リレー励磁信号に基づき断線もなくリレー20は正常に作動して自動制動用ストップランプ回路を正常に電流が流れたと判定でき、この場合には、ステップS24に進み、自動制動用ストップランプ回路正常と判定する。
【0031】
一方、ステップS22の判別結果が真(Yes)で、自動制動用ストップランプ回路電圧Esが所定電圧E1より小さい(例えば、0ボルト)と判定された場合には、リレー励磁信号を発信しても自動制動用ストップランプ回路を正常に電流が流れなかったと判定でき、この場合には、自動制動用ストップランプ回路に断線やリレー20の故障等の異常があると判断し、この場合には、ステップS26に進み、自動制動用ストップランプ回路異常と判定する。
【0032】
このように、本発明に係る自動制動用ストップランプ回路の異常検出では、手動制動の実施に併せて手動制動用ストップランプ回路の閉成とともに自動制動用ストップランプ回路を擬似的に閉成するようにし、その後、手動制動用ストップランプ回路が開成した直後の微少時間に亘り自動制動用ストップランプ回路を閉成状態に保持し、自動制動用ストップランプ回路の故障を診断するようにしている。
【0033】
従って、自動制動用ストップランプ回路が正常である場合には、リレー20に疑似信号を発信して自動制動用ストップランプ回路を閉成するようにすると必然的にストップランプ12が点灯してしまうことになるのであるが、手動制動に引き続いて自動制動用ストップランプ回路を擬似的に閉成することにより、手動制動用ストップランプ回路が開成した後においても微少時間に亘りストップランプ12を一寸延長して点灯させ、ストップランプ12の点灯を手動制動時の点灯に一体化させるようにできる。
【0034】
即ち、図3を参照すると、上記ルーチンを実施した場合のストップランプSW14ひいてはブレーキSW18のオン(ON)・オフ(OFF)状態、リレー励磁信号のオン(ON)・オフ(OFF)状態及び自動制動用ストップランプ回路電圧Esの時間変化がタイムチャートで示されているが、同図に示すように、手動制動期間が終了した直後の微少時間を故障診断期間とすることにより、自動制動用ストップランプ回路が正常である場合にあっては電圧Esを保持してストップランプ12の点灯を手動制動時に引き続いて暫時維持するようにできる。
【0035】
これにより、実際の制動と全く関係ないタイミングでストップランプが点灯することを防止して、後続車両に違和感を与えず、不必要に注意喚起を行わないようにでき、後続車両にとって紛らわしくなく、煩わしくないようにして自動制動用ストップランプ回路の故障診断を行うことができる。
自動制動用ストップランプ回路に異常がある場合には、図3に一点鎖線で示すように、手動制動期間が終了した直後において電圧Esが低下(例えば、0ボルト)することになり、電圧Esに基づいて自動制動用ストップランプ回路の異常、即ち断線やリレー20の故障等の異常を容易にして確実に検出することができる。
【0036】
なお、ここでは手動制動用ストップランプ回路が閉成されると同時にリレー励磁信号を発信して自動制動用ストップランプ回路も併せて閉成しておくようにしているが(ステップS12)、自動制動用ストップランプ回路の故障診断は手動制動の終了直後に行うことから、必ずしも手動制動用ストップランプ回路が閉成されると同時にリレー励磁信号を発信する必要はなく、少なくとも手動制動の終了時点でリレー励磁信号が発信されていればよい。
【0037】
次に、自動制動制御の制御内容について説明する。
先ず、第1実施例について説明する。
図4を参照すると、ECU1が実行する本発明の第1実施例に係る自動制動制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに沿い説明する。
ステップS30では、前方監視ユニット2の情報等に基づいて自動制動開始条件が成立したか否かを判別する。判別結果が偽(No)で自動制動開始条件が成立していない場合には自動制動を行うことなく当該ルーチンを抜け、判別結果が真(Yes)で自動制動開始条件が成立した場合には、ステップS32に進む。
【0038】
ステップS32では、自動制動用ストップランプ回路が正常か否か、即ち上記自動制動用ストップランプ回路の異常検出においてステップS24が実行され、自動制動用ストップランプ回路正常と判定されたか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で自動制動用ストップランプ回路正常と判定された場合には、ステップS34に進む。
ステップS34では、自動制動の開始に伴い、通常の制御としてECU1からリレー励磁信号を発信してリレー20に励磁電流を供給する。これにより、リレー20がオン側に切り換えられて自動制動用ストップランプ回路が閉成し、ストップランプ12が点灯する。故に、上述したように自車両が制動中であることを後続車両に知らせることができ、後続車両へ注意喚起を行うことができる。
【0039】
この場合には、ステップS36において自動制動ユニット4を作動させ、自動制動を通常通り実施する。
一方、上記ステップS32の判別結果が偽(No)で、自動制動用ストップランプ回路異常と判定された場合、即ち上記自動制動用ストップランプ回路の異常検出においてステップS26が実行され、自動制動用ストップランプ回路異常と判定された場合には、ストップランプ12を点灯させることができないことから、リレー励磁信号を発信せずストップランプ12を点灯操作することなく、ステップS38に進む。
【0040】
ステップS38では、自動制動を制限して実施する。即ち、ストップランプ12を点灯しない状態のまま通常通り自動制動を実施すると後続車両に違和感を与え不安全であることから、自動制動を緩和し、制動度合い(減速度)を小さく制限して自動制動を実施する(自動制動制限手段)。
これにより、急激な制動を回避するようにでき、後続車両に注意喚起が行われないことによる当該後続車両への影響を低減でき、安全性を維持することができる。
【0041】
次に、第2実施例について説明する。
図5を参照すると、ECU1が実行する本発明の第2実施例に係る自動制動制御の制御ルーチンの一部がフローチャートで示されており、以下同フローチャートに沿い説明する。
第2実施例は、上記第1実施例における制御ルーチンのステップS38をステップS38’に置換した点が第1実施例と相違しており、ここでは第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
上記第1実施例ではステップS38において制動度合いを小さく制限して自動制動を実施するようにしたが、当該第2実施例では、自動制動用ストップランプ回路に異常がある場合には、ステップS32を経てステップS38’において、自動制動を禁止する。
このように自動制動用ストップランプ回路異常の場合に自動制動自体を一切実施しないようにすると、後続車両に注意喚起が行われないことによる当該後続車両への影響を排除でき、安全性を確保することができる。
【0043】
次に、第3実施例について説明する。
図6を参照すると、ECU1が実行する本発明の第3実施例に係る自動制動制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに沿い説明する。
第3実施例は、図1に示すようにECU1にハザードランプユニット(ハザードランプ装置)40が接続され、上記第1実施例における制御ルーチンのステップS38の代わりにステップS39を実行する点が第1実施例と相違しており、ここでは第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。
【0044】
ハザードランプユニット40はハザードランプ42を有しており、ハザードランプ42は、車両の前後部分(少なくとも車両後部)に点灯或いは点滅可能に通常設けられた例えば橙色のランプである。
当該第3実施例では、自動制動用ストップランプ回路に異常がある場合には、ストップランプ12を点灯できないことから、ステップS32を経てステップS39において、ハザードランプユニット40を作動させ、ストップランプ12に代えてハザードランプ42を点灯させる(代替手段)。
【0045】
そして、ステップS36に進み、自動制動ユニット4を作動させ、自動制動を通常通り実施する。
このように自動制動用ストップランプ回路異常の場合にハザードランプ42を点灯させるようにすると、自動制動を制限しなくても後続車両に引き続き注意喚起を行うことが可能である。これにより、やはり当該後続車両への影響を排除でき、安全性を確保することができる。
【0046】
以上説明したように、本発明に係る自動制動システムによれば、後続車両にとって紛らわしくなく、煩わしくないようにして自動制動用ストップランプ回路の故障診断を行うことができるとともに、自動制動用ストップランプ回路に異常があった場合であっても、後続車両に注意喚起が行われないことによる当該後続車両への影響を低減でき、安全性を十分に維持することができる。
【0047】
なお、実施形態は上記に限られるものではなく、例えば、上記実施形態では、電圧計測部30によってストップランプ12とリレー20との間の電圧を計測し、当該計測電圧を自動制動用ストップランプ回路電圧Esとして検出するようにしたが、電流方向で見てストップランプ12の下流の電圧を計測し(図示せず)、これを自動制動用ストップランプ回路電圧Esとして検出するようにしてもよい。
【0048】
このようにストップランプ12の下流の電圧に基づけば、自動制動用ストップランプ回路の断線やリレー20の故障のみならず、併せてストップランプ12の球切れ等の異常をも容易にして確実に検出可能であり、より効果的である。
また、上記実施形態では、自動制動用ストップランプ回路電圧Esに基づいて自動制動用ストップランプ回路の異常を検出し故障診断を行うようにしたが、回路の異常を検出できれば電圧以外の要素を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る自動制動システムの全体構成図である。
【図2】本発明に係る自動制動用ストップランプ回路の異常検出の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2の制御ルーチンを実行した場合のストップランプSWのON・OFF状態、リレー励磁信号のON・OFF状態及び自動制動用ストップランプ回路電圧Esの時間変化を示すタイムチャートである。
【図4】本発明の第1実施例に係る自動制動制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施例に係る自動制動制御の制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施例に係る自動制動制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 電子コントロールユニット(ECU)
2 前方監視ユニット
4 自動制動ユニット
6 ブレーキユニット
8 ブレーキペダル
10 ストップランプユニット(ストップランプ装置)
14 ストップランプSW
18 ブレーキSW
20 リレー
30 電圧計測部
40 ハザードランプユニット(ハザードランプ装置)
42 ハザードランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動制動のみならず自動制動可能であって、制動に伴い車両後部に設けられたストップランプを点灯作動するストップランプ装置を含む自動制動システムにおいて、
前記ストップランプ装置は、
前記手動制動に連動したスイッチがオン側に切り換えられることで閉成され、前記ストップランプを点灯させる第1のストップランプ回路と、
前記自動制動に伴い前記スイッチとは別に設けられたリレーがオン側に切り換えられることで閉成され、前記ストップランプを点灯させる第2のストップランプ回路と、
前記自動制動に拘わらず、前記リレーをオン側に切り換えるべく該リレーに疑似信号を供給することで前記第2のストップランプ回路の異常検出を行う異常検出手段とを備え、
該異常検出手段は、前記第1のストップランプ回路が閉成された後、前記スイッチがオフ側に切り換えられて該第1のストップランプ回路が開成された直後の微少時間に前記第2のストップランプ回路の異常検出を行うことを特徴とする自動制動システム。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記第2のストップランプ回路の所定位置の電圧を計測することを特徴とする、請求項1記載の自動制動システム。
【請求項3】
前記異常検出手段が前記第2のストップランプ回路の異常を検出したとき、前記自動制動を制限する自動制動制限手段を備えたことを特徴とする、請求項1または2記載の自動制動システム。
【請求項4】
前記自動制動制限手段は、前記自動制動を禁止することを特徴とする、請求項3記載の自動制動システム。
【請求項5】
さらに、車両後部に設けたハザードランプを点灯作動可能なハザードランプ装置を含み、
前記異常検出手段が前記第2のストップランプ回路の異常を検出したとき、前記ストップランプ装置に代えて前記ハザードランプ装置により前記ハザードランプを点灯作動する代替手段を備えたことを特徴とする、請求項1または2記載の自動制動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−296743(P2008−296743A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145303(P2007−145303)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】