説明

自動変速機のリバースシフト制限装置

【課題】N→Rシフト時にブレーキペダルと間違ってアクセルペダルを踏み込んだ場合に、R状態で急発進するのを防止できる、機械式のリバースシフト制限装置を提供する。
【解決手段】シフトロックカムに、シフトレバーがN位置でかつノブボタンを操作した状態でガイドピンと当接する当接部が設けられ、シフトロックカムとシフトロックケーブルを介して連結されたスライドロック部材に、シフトレバーがN位置でかつブレーキペダルが踏み込まれないとき、ブレーキ連動部材と係合する第2係止面が設けられている。ブレーキペダルが踏み込まれた状態で、ノブボタンを操作しつつシフトレバーをN位置からR位置方向へ操作したときだけ、ブレーキ連動部材と第2係止面との係合が外れてシフトロックカムをロック解除状態とし、ガイドピンがシフトロックカムの当接部を押してR位置へ動くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動変速機のリバースシフト制限装置、特にN(又は前進レンジ)からRレンジへのシフト操作を制限するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動変速機(無段変速機も含む)では、シフトレバーの操作によってP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)等の各レンジへ順に切替可能となっている。Pレンジでは、エンジンキーをLOCK位置からACC位置以降へ回し、シフトレバーに設けられたノブボタンを押す(ゲート式ではセレクト操作)と共に、ブレーキペダルを踏み込むことで、はじめてRレンジへシフト可能になる。
【0003】
一方、N(又はD)→Rシフトは、P→Rシフトとは異なり、シフトレバーに設けられたノブボタンを押すだけでシフト操作可能である。つまり、ブレーキ操作に関係なくN→Rシフトが可能になる。そのため、N→Rシフト時にブレーキペダルと間違ってアクセルペダルを踏み込んだ場合、R状態で急発進する可能性がある。
【0004】
特許文献1には、機械式シフトロック装置が開示されている。このシフトロック装置は、シフトレバーに設けられたノブボタンと連動するディテントピンと、このディテントピンの動きを規制する回動可能なシフトロックカムとが設けられ、シフトロックカムにシフトインターロックケーブルの一端部が連結されている。シフトインターロックケーブルの他端部にはスライド部材が連結され、このスライド部材の第1係止部に対し、ブレーキペダルを踏み込まない状態でロックピンが直交して係合している。キーをACC位置からLOCK位置へ回すと、キーインターロックケーブルが移動し、そのケーブルの端部に連結されたキーインターロック部材がスライド部材の第2係止部に係合するようになっている。その結果、ブレーキペダルを踏み込み、かつキーをACC位置に回すことで、ロックが解除され、Pレンジから他のレンジへシフト可能になる。
【0005】
特許文献2には、シフトレバー装置にパーキングレンジ用とニュートラルレンジ用のシフトロック部材を連動可能に設け、ソレノイドによってシフトロック部材を作動させるものが開示されている。
【0006】
特許文献1のような機械式シフトロック装置の場合、Pレンジ以外ではシフトロックカムとディテントピンとは係合しないので、N(又は前進レンジ)からRレンジにシフトしようとしたとき、ブレーキペダルを踏み込まずにノブボタンを押すだけでシフト可能である。そのため、ブレーキペダルと間違ってアクセルペダルを踏み込んだ場合、R状態での急発進を防止できない。
【0007】
特許文献2のような電気式シフトロック装置の場合、プログラムの変更だけでNレンジからRレンジへのシフトロックも可能であるが、ソレノイドを使用するためにコスト上昇となると共に、断線等の電気系の故障によりソレノイドの作動不良が発生する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−188062号公報
【特許文献2】実開平4−119662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、N(又は前進レンジ)→Rシフトにおいてブレーキペダルと間違ってアクセルペダルを踏み込んだ場合に、R状態になるのを防止できる機械式のリバースシフト制限装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、少なくともP−R−N−Dの各レンジへ順に切替可能とされ、操作ノブにノブボタンが設けられたシフトレバーと、前記シフトレバーのノブボタンと連動してシフトレバーの軸方向に移動するガイドピンと、前記各レンジ位置に対応して形成され、前記ガイドピンが係合可能なガイド窓と、前記ガイドピンと接触し、P位置において前記ガイドピンを係止して前記シフトレバーをP位置にロックする、回動可能なシフトロックカムと、一端が前記シフトロックカムに連結されたシフトロックケーブルと、前記シフトロックケーブルの他端に連結され、固定部材に対してスライド可能に設けられたスライドロック部材と、ブレーキペダルの踏み込みに連動して移動するブレーキ連動部材とを備え、前記シフトレバーがP位置でかつブレーキペダルが踏み込まれないとき、前記ブレーキ連動部材がスライドロック部材の第1係止面を係止して、前記シフトロックケーブルの作動を拘束する自動変速機において、前記シフトロックカムに、前記シフトレバーがN位置でかつノブボタンを操作した状態で前記ガイドピンと当接する当接部が設けられ、前記スライドロック部材に、前記シフトレバーがN位置でかつブレーキペダルが踏み込まれないとき、前記ブレーキ連動部材と係合する第2係止面が設けられ、前記ブレーキペダルが踏み込まれない状態で、前記ノブボタンを操作しつつ前記シフトレバーをN位置からR位置方向へ操作したとき、前記ブレーキ連動部材が前記第2係止面を係止して前記シフトロックカムをロック状態とし、前記ガイドピンのR位置への動きを前記シフトロックカムの当接部によって規制し、前記ブレーキペダルが踏み込まれた状態で、前記ノブボタンを操作しつつ前記シフトレバーをN位置からR位置方向へ操作したとき、前記ブレーキ連動部材と前記第2係止面との係合が外れて前記シフトロックカムをロック解除状態とし、前記ガイドピンが前記シフトロックカムの当接部を押してR位置へシフト可能とする、リバースシフト制限装置を提供する。
【0011】
Pレンジにおいては、従来と同様に、ブレーキペダルを踏み込むと共に、シフトレバーに設けられたノブボタンを押すことで、はじめてRレンジへシフト可能となる。つまり、ブレーキペダルを踏まないまま、シフトレバーをPレンジから他のレンジへシフトすることはできない。一方、Nレンジにおいても、ブレーキペダルが踏み込まれた状態で、ノブボタンを操作しつつシフトレバーをN→R方向へ操作したときだけ、Rレンジへシフト可能になる。つまり、ブレーキペダルを踏み込まないままRレンジへシフトできないため、N→Rシフト操作と同時にブレーキペダルと間違ってアクセルペダルを踏み込んだ場合でも、Nレンジが維持され、急発進を防止できる。
【0012】
上記説明ではキーインターロック機構については省略したが、キーインターロック機構を本発明に追加できることは言うまでもない。すなわち、固定部材(例えばハウジング)にキーインターロックケーブルを介してキー装置と連結されたキーインターロック部材をスライド自在に設け、キーをキーシリンダに挿入してLOCK位置からACC位置に回すことで、キーインターロック部材がスライドロック部材のロックを解除し、Pレンジから他のレンジへシフト可能としてもよい。
【0013】
本発明におけるN→Rシフトとは、DやLなどの前進レンジからRレンジへのシフトを含む。その理由は、P−R−N−Dのように、前進レンジとRレンジとの中間にNレンジが存在するので、前進レンジ→Rシフトをする場合には、その途中でNレンジを必ず通過するからである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ブレーキペダルを踏み込んだときのみ、N(又は前進段)からRレンジへのシフトが可能になるため、ブレーキペダルと間違ってアクセルペダルを踏み込んでも、R状態での急発進を防止できる。また本発明は、既存の機械式シフトロック装置の一部を形状変更(シフトロックカムの当接部と、スライドロック部材の第2係止面の追加)するだけで、N→Rシフトにおけるブレーキペダルの踏み込み条件を設定することが可能になるため、新規部品を追加しなくてもN→Rシフトロックを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るリバースシフト制限装置を備えたシフト機構の一例の側面図である。
【図2】本発明に係るシフトロック装置の一例のPレンジ、ブレーキOFF時の横断面図、及びA−A線断面図である。
【図3】図2に示すシフトロック装置のPレンジ、ブレーキON時の横断面図、及びB−B線断面図である。
【図4】Nレンジにおけるシフトレバー機構の拡大側面図である。
【図5】N→Rシフト途中におけるシフトレバー機構の拡大側面図である。
【図6】Rレンジにおけるシフトレバー機構の拡大側面図である。
【図7】NレンジにおけるブレーキOFF/ON時のシフトロック装置の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るリバースシフト制限装置を図を参照しながら説明する。
【0017】
まず最初に、本発明のリバースシフト制限装置が適用されるシフト機構について説明する。図1は自動変速機のシフト機構の概略構造の一例を示す。このシフト機構はフロアシフトタイプの例であり、シフトレバー1は、車体5に支軸6を中心として車体前後方向へ回動可能に取り付けられている。なお、フロアシフトタイプに限らず、コラムシフトタイプでも同様に適用できる。シフトレバー1の操作ノブ2には、指で操作できるノブボタン3が設けられている。シフトレバー1の中間部には、シフトレバー1の軸方向に移動可能なガイドピン4が長孔1a(図4参照)から側方へ突出しており、ノブボタン3を押し込むことによってガイドピン4を下方へ移動させることができる。なお、ガイドピン4は、シフトレバー1に内装されたスプリング(図示せず)によって、常時上方へ付勢されている。本実施例ではガイドピン4の先端部の断面形状が角形であるが、円形であってもよい。
【0018】
シフトレバー1の側方の車体5上にはガイドプレート7が固定されており、ガイドプレート7にはシフトポジションに対応した凹凸部を有するガイド窓8が形成されている。シフトレバー1のガイドピン4はガイド窓8に挿入されており、ガイドピン4が凹凸部に係合することで、P(パーキング),R(リバース),N(ニュートラル),D(ドライブ),2(セカンド)及びL(ロー)の各レンジ位置に順に切替可能になっている。なお、2,Lレンジは、前進走行レンジであれば、他のレンジに設定してもよい。ガイド窓8の凹凸部の具体的形状は、P位置に対応した部分が深い凹溝状に形成され、凸部を間にしてR位置が凸部より一段低い段差状に形成され、N位置がR位置よりさらに低い段差状に形成され、D位置はN位置とほぼ同じ高さに形成されている。2位置はD位置より一段高い段差状に形成され、L位置は2位置よりさらに高い段差状に形成されている。上述のように、ガイドピン4は常時上方へ付勢されているので、ノブボタン3を操作しない状態では、ガイドピン4は上述のようなガイド窓8の凹凸状溝部の上縁に係合している。
【0019】
なお、ガイド窓8とは別に、ガイドプレート7にディテント溝(図示せず)を形成し、このディテント溝にシフトレバー1に取り付けられたディテントスプリング(図示せず)を係合させることにより、シフトレバー1をP,R,N,D,2及びLの各位置に節度感をもって位置決め可能としてもよい。
【0020】
図1、図4に示すように、ガイドプレート7の側面には、シフトロックカム10が支軸11を中心として回動可能に取り付けられている。シフトロックカム10にはガイドピン4を収容可能なU字溝10aが略半径方向に形成されている。シフトレバー1がP位置にある状態(かつブレーキペダルを踏み込んだ状態)でノブボタン3を押し込むと、ガイドピン4がシフトロックカム10を図1の右回り方向に回動させるので、ガイドピン4はガイド窓8を摺動して他のレンジ位置へ移動できる。シフトレバー1がP位置にある間は、ガイドピン4はU字溝10a内に位置しており、R位置以降ではガイドピン4はU字溝10aから外れる。
【0021】
シフトロックカム10にはシフトロックケーブル20のインナケーブル21の一端が連結されている。シフトロックケーブル20はインナケーブル21とアウタケーブル22とを有しており、アウタケーブル22の一端がブラケット23によって車体5に固定されている。シフトロックカム10はリターンスプリング24によって図1の右回り方向に回動付勢されている。なお、リターンスプリング24のばね力は、シフトレバー1に内装されたガイドピン4の付勢用スプリングのばね力より小さい。シフトロックケーブル20の他端は、ブレーキペダル40の近傍に配置されたシフトロック装置30まで延設されている。
【0022】
シフトロックカム10のU字溝10aを間にして一方側の腕部先端には、当接部10bが設けられている。この当接部10bは、後述するN位置からR位置へシフトする時にガイドピン4と当接し、N→Rシフトをロックする機能と、ブレーキペダル40を踏み込んだ状態では、ガイドピン4によって押されてシフトロックカム10の図1の左回り方向への回転を許容し、R位置へのシフトを許容するロック解除機能とを持つものである。
【0023】
シフトロック装置30は、図2、図3に示すようにハウジング(固定部材)31を備えており、このハウジング31にシフトロックケーブル20のアウタケーブル22の他端が固定されている。シフトロックケーブル20のインナケーブル21の他端は、ハウジング31内にスライド自在に配置されたスライドロック部材32と連結されている。スライドロック部材32は、軸方向に間隔をあけて2つの円筒状ランド部33、34を有しており、先端側の第1ランド部33は、スライドロック部材32に対して直交するキーインターロック部材35と係合することで、スライドロック部材32をケーブル押し込み状態(図2の状態)でロックすることができる。キーインターロック部材35はキーインターロックケーブル36を介して図示しないキーシリンダと連結されている。エンジンキーをキーシリンダに挿入してLOCK位置からACC位置に回すと、キーインターロック部材35はスライドロック部材32の第1ランド部33から外れ、ロックを解除するようになっている。なお、キーインターロック機構自体については、例えば特許文献1等により公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0024】
スライドロック部材32の2番目の第2ランド部34の両面に、第1係止面34aと第2係止面34bとが形成されている。図2の右側の第1係止面34aはP→R時のシフトロックを行う面であり、左側の第2係止面34bはN→R時のシフトロックを行う面である。ハウジング31には、ブレーキスイッチ部材42がスライドロック部材32に対して直交方向にスライド可能に配置されている。ブレーキスイッチ部材42の内部には、スライドピン43とこのスライドピン43を突出方向(ブレーキペダルとの接触方向)に付勢する第1スプリング44とが設けられている。ブレーキスイッチ部材42から外部へ突出したスライドピン43の先端部が、ブレーキペダル40の接触部41に当接している。ブレーキスイッチ部材42とスライドピン43と第1スプリング44とによって、ブレーキペダル40の踏み込み/解除に連動してON/OFFするブレーキスイッチが構成されている。
【0025】
図2、図3に示すように、ブレーキスイッチ部材42は、スライドロック部材32の第2ランド部34と交差する位置と離れた位置との間をスライド可能である。なお、本実施例では、ブレーキペダル40の踏み込み時には接触部41がハウジング31から離れ、非踏み込み時には接触部41がハウジング31に近づくように設定されている。ブレーキスイッチ部材42の先端部には細い軸部42aが一体に突設されており、この軸部42aが図2(b)に示すように、スライドロック部材32の第2ランド部34と干渉しない位置に延びている。軸部42aとハウジング31との間には第2スプリング45が介装され、この第2スプリング45により、ブレーキスイッチ部材42を含むブレーキスイッチ全体がブレーキペダル40の接触部41との接触方向に付勢されている。
【0026】
次に、本発明のリバースシフト制限装置の作動について図4〜図7を参照しながら説明する。Pレンジでは、図2に示すように、シフトロックケーブル20のインナケーブル21がハウジング31内に押し込まれた位置にある。キー位置がLOCK位置にあると、キーインターロック部材35がスライドロック部材32の第1ランド部33を係止するため、ブレーキペダル40の踏み込みとは関係なく、P位置から他の位置へシフトすることはできない。また、エンジンキーをACC位置又はそれ以後の位置へ回しても、ブレーキペダル40を踏み込んでいない状態では、ブレーキスイッチ部材42がスライドロック部材32の第2ランド部34の右側の第1係止面34aを係止するので、やはりP位置から他の位置へシフトすることができない。
【0027】
Pレンジにおいて、エンジンキーをACC位置さらにはそれ以後の位置へ回し、ブレーキペダル40を踏み込むと、図3のようにキーインターロック部材35がスライドロック部材32の第1ランド部33から外れ、かつブレーキスイッチ部材42がスライドロック部材32の第2ランド部34から外れるので、シフトレバー1をP位置から他の位置へシフトすることが可能になる。ノブボタン3を押しながらシフトレバー1を操作すると、ガイドピン4がシフトロックカム10を図1の右回り方向へ押すため、R位置へのシフトが可能になる。
【0028】
図4はシフトレバー1がN位置にある状態を示す。ガイドピン4がガイド窓8のN位置にあり、シフトロックカム10の当接部10bがガイドピン4の側面に当接している。ノブボタン3を押していない状態では、ガイドピン4は上側位置(実線で示す)にあり、ガイド窓8のN位置に係合しているが、ノブボタン3を押すと、ガイドピン4は下側位置(二点鎖線で示す)に移動し、ガイド窓8のN位置から外れる。しかし、ノブボタン3を押しても、シフトロックカム10の当接部10bがガイドピン4の前方に立ちふさがっているので、シフトロックカム10を回さない限り、R位置へはシフトできない。
【0029】
シフトレバー1がN位置で、かつブレーキOFF(ブレーキペダル40を踏み込んでいない状態)のとき、シフトロック装置30は図7(a)に示すように、ブレーキペダル40の接触部41によりブレーキスイッチ部材42が押し込まれた位置にある。ブレーキスイッチ部材42がスライドロック部材32の第2ランド部34の左側の第2係止面34bを係止するので、シフトロックケーブル20の押し方向(R方向)の動きがロックされる。つまり、シフトロックカム10の回転がロックされる。この状態で、ノブボタン3を押しながらシフトレバー1をR方向へ操作しても、図4のようにガイドピン4が当接部10bに当たり、R位置へシフトできない。このようにブレーキペダル40を踏み込まないまま、N→Rシフトしようとしても、Rレンジを達成できないので、ブレーキペダルと間違ってアクセルペダルを踏み込んだ場合でも、急発進を防止できる。
【0030】
図5はブレーキON(ブレーキペダル40を踏み込んだ状態)の状態で、シフトレバー1をN→R位置へシフトする途中を示す。シフトロック装置30については、図7(b)に示すように、ブレーキペダル40の接触部41がハウジング31から離れるので、それに応じてブレーキスイッチ部材42が第2スプリング45により後退して第2ランド部34から外れ、スライドロック部材32のロックが解除される。そのため、シフトロックケーブル20の押し方向(R方向)の動き、つまりシフトロックカム10の回転が可能になる。この状態で、ノブボタン3を押しながらシフトレバー1をR方向へ操作すると、ガイドピン4がシフトロックカム10の当接部10bを押してR位置へシフト可能になる。
【0031】
図6はシフトレバー1をR位置へシフトした後の状態を示す。ガイドピン4はガイド窓8のR位置へ移動し、シフトロックカム10の当接部10bの縁部と接している。この状態では、シフトロック装置30のブレーキスイッチ部材42がスライドロック部材32の第2ランド部34の外周面に接触しているので、ブレーキペダル40の踏み込みとは関係なく、スライドロック部材32はスライド可能であり、シフトロックカム10の回転も可能になる。そのため、R→P、R→Nのいずれにもシフトが可能である。なお、ノブボタン3を押しながらシフトレバー1をR→Pへシフトすると、ガイドピン4はシフトロックカム10の当接部10bを乗り越えてU字溝10aへ入り込み、図1の状態に戻ることができる。
【0032】
上記実施例では、キーインターロック部材35がスライドロック部材32の第1ランド部33に係合する例を示したが、キーインターロック部材35がスライドロック部材32に係合することは本発明において必須ではない。例えば、キーインターロック部材35がシフトロックカム10に係合するように配置することで、P位置から他の位置へのキーインターロックを行うようにしてもよい。
【0033】
また、スライドロック部材32として、中心軸に複数のランド部を設け、一方のランド部34の両側面を第1、第2係止面とした部材を用いたが、これに限るものではなく、特許文献1のように角柱状部品の側面に複数の係合溝を形成し、これら係合溝の側面を第1、第2係止面としてもよい。スライドロック部材32の第1係止面及び第2係止面を係止するブレーキ連動部材として、ブレーキペダル40と当接するブレーキスイッチ部材42を用いたが、ブレーキスイッチに限るものではなく、ブレーキペダルと連動して移動する部材であればいかなる部材でも使用できる。さらに、ブレーキスイッチ部材42、スライドピン43、第1スプリング44、軸部42a、第2スプリング45の構成も図2のような構造に限るものではなく、例えば特許文献1のような構造でもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 シフトレバー
3 ボブボタン
4 ガイドピン
7 ガイドプレート
8 ガイド窓
10 シフトロックカム
10a U字溝
10b 当接部
20 シフトロックケーブル
21 インナケーブル
22 アウタケーブル
30 シフトロック装置
32 スライドロック部材
34 第2ランド部
34a 第1係止面
34b 第2係止面
35 キーインターロック部材
40 ブレーキペダル
41 接触部
42 ブレーキスイッチ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともP−R−N−Dの各レンジへ順に切替可能とされ、操作ノブにノブボタンが設けられたシフトレバーと、
前記シフトレバーのノブボタンと連動してシフトレバーの軸方向に移動するガイドピンと、
前記各レンジ位置に対応して形成され、前記ガイドピンが係合可能なガイド窓と、
前記ガイドピンと接触し、P位置において前記ガイドピンを係止して前記シフトレバーをP位置にロックする、回動可能なシフトロックカムと、
一端が前記シフトロックカムに連結されたシフトロックケーブルと、
前記シフトロックケーブルの他端に連結され、固定部材に対してスライド可能に設けられたスライドロック部材と、
ブレーキペダルの踏み込みに連動して移動するブレーキ連動部材とを備え、
前記シフトレバーがP位置でかつブレーキペダルが踏み込まれないとき、前記ブレーキ連動部材がスライドロック部材の第1係止面を係止して、前記シフトロックケーブルの作動を拘束する自動変速機において、
前記シフトロックカムに、前記シフトレバーがN位置でかつノブボタンを操作した状態で前記ガイドピンと当接する当接部が設けられ、
前記スライドロック部材に、前記シフトレバーがN位置でかつブレーキペダルが踏み込まれないとき、前記ブレーキ連動部材と係合する第2係止面が設けられ、
前記ブレーキペダルが踏み込まれない状態で、前記ノブボタンを操作しつつ前記シフトレバーをN位置からR位置方向へ操作したとき、前記ブレーキ連動部材が前記第2係止面を係止して前記シフトロックカムをロック状態とし、前記ガイドピンのR位置への動きを前記シフトロックカムの当接部によって規制し、
前記ブレーキペダルが踏み込まれた状態で、前記ノブボタンを操作しつつ前記シフトレバーをN位置からR位置方向へ操作したとき、前記ブレーキ連動部材と前記第2係止面との係合が外れて前記シフトロックカムをロック解除状態とし、前記ガイドピンが前記シフトロックカムの当接部を押してR位置へシフト可能とする、リバースシフト制限装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−71505(P2013−71505A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210439(P2011−210439)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】