説明

自動変速機の制御装置および変速機装置並びに動力出力装置

【課題】変更する変速段に拘わらず変速フィーリングを良好なものとする。
【解決手段】エンジンからオートマチックトランスミッションの入力軸にトルクが作用している状態で変速段の変更が指示されたとき、オンすべきクラッチにトルク相実行圧を作用させて待機することによりトルク相を行なうと共にアップシフト段Snが減速側のアップシフト段ほどエンジントルクが大きくダウンする傾向目標トルクダウン量ΔTeを設定し、トルク相実行圧Ptorで待機している状態で目標トルクダウン量ΔTeによるエンジンのトルクダウンによりイナーシャ相を開始させて変速段を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの摩擦係合要素の係合圧を調圧する調圧器を備え、該調圧器を制御して前記摩擦係合要素の係合状態を切り替えることにより変速段の変更を伴って動力源から入力軸に入力された動力を出力軸に伝達可能で、前記入力軸にトルクが作用している状態で変速段を変更する際には該変速段の変更をトルクの伝達を変速後の変速段による伝達に変更するトルク相と該入力軸の回転速度を変速後の変速段に応じた回転速度に変更するイナーシャ相の2相によって行なう自動変速機を制御する自動変速機の制御装置および変速機装置並びに動力出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の変速機装置としては、自動変速機の変速が要求されたとき、係合するクラッチ(摩擦要素)に作用させる油圧を調圧することにより、入力軸の回転速度の変化(イナーシャ相)を生じさせて変速段の変更を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−263135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した変速機装置では、通常、各変速段間でステップ比が異なる(減速側の変速段間のステップ比ほど大きい)ため、変更する変速段によって、変速に要する時間や入力軸の回転速度変化は大きく異なるものとなり、変速フィーリングに大きな影響を与えてしまう。
【0005】
本発明の自動変速機の制御装置および変速機装置並びに動力出力装置は、変更する変速段に拘わらず変速フィーリングを良好なものとすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動変速機の制御装置および変速機装置並びに動力出力装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動変速機の制御装置は、
少なくとも一つの摩擦係合要素の係合圧を調圧する調圧器を備え、該調圧器を制御して前記摩擦係合要素の係合状態を切り替えることにより変速段の変更を伴って動力源から入力軸に入力された動力を出力軸に伝達可能で、前記入力軸にトルクが作用している状態で変速段を変更する際には該変速段の変更をトルクの伝達を変速後の変速段による伝達に変更するトルク相と該入力軸の回転速度を変速後の変速段に応じた回転速度に変更するイナーシャ相の2相によって行なう自動変速機を制御する自動変速機の制御装置であって、
変速段の変更が指示されたときには、前記トルク相が、前記摩擦係合要素を所定の係合圧で滑りを伴って係合させて待機することにより行なわれ、前記イナーシャ相が、変更する変速段に拘わらず変速状態が所定範囲内と収まるように前記変更が指示された変速段に基づいて目標減少量を設定すると共に前記所定の係合圧で待機している状態で前記動力源から前記入力軸に作用するトルクを前記設定した目標減少量に基づいて減少させることにより行なわれるよう前記動力源側に指示すると共に前記調圧器を制御する
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動変速機の制御装置では、変速段の変更が指示されたときには、トルク相が、摩擦係合要素を所定の係合圧で滑りを伴って係合させて待機することにより行なわれ、イナーシャ相が、変更する変速段に拘わらず変速状態が所定範囲内と収まるように変更が指示された変速段に基づいて目標減少量を設定すると共に所定の係合圧で待機している状態で動力源から入力軸に作用するトルクを設定した目標減少量に基づいて減少させることにより行なわれるよう動力源側に指示すると共に調圧器を制御する。これにより、変更する変速段に拘わらず変速フィーリングを良好なものとすることができる。また、イナーシャ相を摩擦係合要素の滑りを伴って係合圧を増圧させることにより行なうものに比して、摩擦係合要素の係合に伴う変速ショックを抑制しつつ変速段の変更を素早く行なうことができる。
【0009】
こうした本発明の自動変速機の制御装置において、変速段を変更する際のステップ比が大きいほどトルクが大きく減少する傾向に前記目標減少量を設定するものとすることもできる。こうすれば、変更する変速段に拘わらず、変速に要する時間や変速の際の入力軸の回転速度の変化の程度を略均一な状態に近づけることができる。
【0010】
また、本発明の自動変速機の制御装置において、前記変速状態として、変更する変速段に拘わらず変速に要する時間が所定時間幅内に収まるよう前記目標減少量を設定するものとすることもできる。この態様の本発明の自動変速機の制御装置において、変更する変速段に拘わらず変速に要する時間が略一定となるよう前記目標減少量を設定するものとすることもできる。
【0011】
或いは、本発明の自動変速機の制御装置において、前記変速状態として、変更する変速段に拘わらず変速の際の前記入力軸の回転速度の変化の程度が所定幅内に収まるよう前記目標減少量を設定するものとすることもできる。この態様の本発明の自動変速機の制御装置において、変更する変速段に拘わらず変速の際の前記入力軸の回転速度の変化の程度が略一定となるよう前記目標減少量を設定するものとすることもできる。
【0012】
本発明の変速機装置は、
自動変速機と、
上述した各態様のいずれかの本発明の自動変速機の制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0013】
この本発明の変速機装置では、述した各態様のいずれかの本発明の自動変速機の制御装置を備えるから、本発明の変速機装置が奏する効果、例えば、変更する変速段に拘わらず変速フィーリングを良好なものとすることができる効果や、イナーシャ相を摩擦係合要素の滑りを伴って係合圧を増圧させることにより行なうものに比して摩擦係合要素の係合に伴う変速ショックを抑制しつつ変速段の変更を素早く行なうことができる効果などと同様な効果を奏することができる。
【0014】
本発明の動力出力装置は、
上述した各態様のいずれかの本発明の変速機装置と、
動力源と、
前記変速機装置からの指示に基づいて前記動力源を制御する動力源用制御装置と
を備えることを要旨とする。
【0015】
この本発明の動力出力装置では、上述した各態様のいずれかの本発明の変速機装置を備えるから、本発明の変速機装置が奏する効果、例えば、変更する変速段に拘わらず変速フィーリングを良好なものとすることができる効果や、イナーシャ相を摩擦係合要素の滑りを伴って係合圧を増圧させることにより行なうものに比して摩擦係合要素の係合に伴う変速ショックを抑制しつつ変速段の変更を素早く行なうことができる効果などと同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例としての変速機装置が組み込まれた動力出力装置を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】オートマチックトランスミッション20の作動表を示す説明図である。
【図3】油圧回路50の構成の概略を示す構成図である。
【図4】実施例のATECU29により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】トルクダウン量設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】変速要求とエンジントルクTeと入力軸回転速度Ninと出力トルクToutと油圧指令Po*の時間変化の様子を示す説明図である。
【図7】2−3変速時の変速の様子と3−4変速時の変速の様子とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の一実施例としての変速機装置が組み込まれた動力出力装置を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2はオートマチックトランスミッション20の作動表を示し、図3はオートマチックトランスミッション20の油圧回路50の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図1に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられたロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ24と、このトルクコンバータ24の出力側に入力軸21が接続されると共にギヤ機構26およびデファレンシャルギヤ28を介して駆動輪18a,18bに出力軸22が接続され入力軸21に入力された動力を変速して出力軸22に伝達する有段の自動変速機としてのオートマチックトランスミッション20と、動力出力装置全体をコントロールするメイン電子制御ユニット(以下、メインECUという)60とを備える。なお、実施例では、エンジン12とオートマチックトランスミッション20との間にトルクコンバータ24を介在させるものとしたが、これに限られず、種々の発進装置を採用しうる。
【0019】
エンジン12は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16により運転制御されている。エンジンECU16は、詳細に図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。このエンジンECU16には、クランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサなどのエンジン12を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU16からは、スロットル開度を調節するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU16は、メインECU60と通信しており、メインECU60からの制御信号によってエンジン12を制御したり、必要に応じてエンジン12の運転状態に関するデータをメインECU60に出力する。
【0020】
オートマチックトランスミッション20は、6段変速の有段変速機として構成されており、シングルピニオン式の遊星歯車機構30とラビニヨ式の遊星歯車機構40と三つのクラッチC1,C2,C3と二つのブレーキB1,B2とワンウェイクラッチF1とを備える。シングルピニオン式の遊星歯車機構30は、外歯歯車としてのサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31はケースに固定されており、リングギヤ32は入力軸21に接続されている。ラビニヨ式の遊星歯車機構40は、外歯歯車の二つのサンギヤ41a,41bと、内歯歯車のリングギヤ42と、サンギヤ41aに噛合する複数のショートピニオンギヤ43aと、サンギヤ41bおよび複数のショートピニオンギヤ43aに噛合すると共にリングギヤ42に噛合する複数のロングピニオンギヤ43bと、複数のショートピニオンギヤ43aおよび複数のロングピニオンギヤ43bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア44とを備え、サンギヤ41aはクラッチC1を介してシングルピニオン式の遊星歯車機構30のキャリア34に接続され、サンギヤ41bはクラッチC3を介してキャリア34に接続されると共にブレーキB1を介してケースに接続され、リングギヤ42は出力軸22に接続され、キャリア44はクラッチC2を介して入力軸21に接続されている。また、キャリア44はブレーキB2を介してケースに接続されると共にワンウェイクラッチF1を介してケースに接続されている。
【0021】
こうして構成されたオートマチックトランスミッション20では、クラッチC1〜C3のオンオフ(オンが係合状態でオフが解放状態)とブレーキB1,B2のオンオフとの組み合わせによって前進1速〜6速と後進とニュートラルとを切り替えることができるようになっている。図2に、オートマチックトランスミッション20の作動表を示す。なお、図2では、後進と前進1速〜前進6速の各ギヤ比と、前進1速〜前進6速の各変速段間における低速側のギヤ比を高速側のギヤ比で割ったステップ比も示した。ニュートラルの状態は、クラッチC1〜C3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができる。また、前進1速の状態は、クラッチC1をオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はワンウェイクラッチF1によるキャリア44の固定によりキャリア44側で反力を受け持つことにより減速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は比較的大きな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進1速の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2をオンとすることにより、ワンウェイクラッチF1に代えてキャリア44が固定される。前進2速の状態は、クラッチC1とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はブレーキB1によるサンギヤ41bの固定によりサンギヤ41b側で反力を受け持つことにより減速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進1速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進3速の状態は、クラッチC1,C3をオンとすると共にクラッチC2とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達されると共にサンギヤ41aに入力される動力はクラッチC1およびクラッチC3のオンによるラビニヨ式の遊星歯車機構40の一体回転により等速をもってリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進2速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進4速の状態は、クラッチC1,C2をオンとすると共にクラッチC3とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC1を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41aに伝達される一方で入力軸21からクラッチC2を介して直接にラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に伝達されてリングギヤ42すなわち出力軸22の駆動状態が決定されるから、入力軸21に入力される動力は前進3速よりも小さな減速比をもって減速して出力軸22に出力される。前進5速の状態は、クラッチC2,C3をオンとすると共にクラッチC1とブレーキB1,B2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC3を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに伝達される一方で入力軸21からクラッチC2を介して直接にラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に伝達されてリングギヤ42すなわち出力軸22の駆動状態が決定されるから、入力軸21に入力される動力は増速して出力軸22に出力される。前進6速の状態は、クラッチC2とブレーキB1とをオンとすると共にクラッチC1,C3とブレーキB2とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からクラッチC2を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のキャリア44に入力される動力はブレーキB1によるサンギヤ41bの固定によりサンギヤ41b側で反力を受け持つことにより増速されてリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は前進5速よりも小さな減速比をもって増速して出力軸22に出力される。後進1速の状態は、クラッチC3とブレーキB2とをオンとすると共にクラッチC1,C2とブレーキB1とをオフとすることにより形成することができ、この状態では、入力軸21からシングルピニオン式の遊星歯車機構30のリングギヤ32に入力される動力はサンギヤ31の固定によりサンギヤ31側で反力を受け持つことにより減速されてキャリア34およびクラッチC3を介してラビニヨ式の遊星歯車機構40のサンギヤ41bに伝達されると共にサンギヤ41bに入力される動力はブレーキB2によるキャリア44の固定によりキャリア44側で反力を受け持つことにより逆回転してリングギヤ42を介して出力軸22に出力されるから、入力軸21に入力される動力は比較的小さな減速比をもって減速して逆回転の動力として出力軸22に出力される。
【0022】
オートマチックトランスミッション20のクラッチC1〜C3やブレーキB1,B2は、図3に部分的に示す油圧回路50によりオンオフされる。油圧回路50は、図示するように、エンジン12からの動力により作動油を圧送する機械式オイルポンプ52と、機械式オイルポンプ52により圧送された作動油の圧力(ライン圧PL)を調節するレギュレータバルブ54と、このレギュレータバルブ54を駆動するリニアソレノイド55と、ライン圧PLをマニュアルバルブ56を介して入力すると共に調圧してクラッチC1側に出力するリニアソレノイドSLC1と、同じくライン圧PLをマニュアルバルブ56を介して入力すると共に調圧しクラッチC3側に出力するリニアソレノイドSLC3と、同じくライン圧PLをマニュアルバルブ56を介して入力すると共に調圧しブレーキB1側に出力するリニアソレノイドSLB1などにより構成されている。なお、図3では、クラッチC1,C3とブレーキB1の油圧系のみを図示したが、その他のクラッチC2やブレーキB2についても同様の油圧系により構成することができる。
【0023】
オートマチックトランスミッション20(油圧回路50)は、オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(以下、ATECUという)29により駆動制御されている。ATECU29は、詳細に図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。ATECU29には、入力軸21に取り付けられた回転速度センサからの入力軸回転速度Ninや出力軸22に取り付けられた回転速度センサからの出力軸回転速度Noutなどが入力ポートを介して入力されており、ATECU29からは、リニアソレノイド55やリニアソレノイドSLC1,リニアソレノイドSLB1への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。ATECU29は、メインECU60と通信しており、メインECU60からの制御信号によってオートマチックトランスミッション20(油圧回路50)を制御したり、必要に応じてオートマチックトランスミッション20の状態に関するデータをメインECU60に出力する。
【0024】
メインECU60は、詳細には図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。メインECU60には、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSPやアクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル操作量Acc,ブレーキペダル65の踏み込みを検出するブレーキスイッチ66からのブレーキスイッチ信号BSW,車速センサ68からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。メインECU60は、前述したように、エンジンECU16やATECU29と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU16やATECU29と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0025】
ここで、実施例の動力出力装置としては、エンジン12と、エンジンECU16と、オートマチックトランスミッション20と、ATECU29と、メインECU60とが該当し、変速機装置としては、オートマチックトランスミッション20と、ATECU29とが該当する。
【0026】
次に、こうして構成された自動車10が備える実施例の動力出力装置の動作、特に、オートマチックトランスミッション20の変速段を変更する際の動作について説明する。図4は、ATECU29により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、アップシフト変速が指示されたときに実行される。なお、アップシフト変速の指示は、アクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル操作量Accや車速センサ68からの車速Vなどに基づいてメインECU60によりATECU29に対して行なわれる。なお、アップシフト変速は、前進1速から前進2速へのアップシフト変速(1−2変速)が指示されてブレーキB1をオンする場合と、前進2速から前進3速へのアップシフト変速(2−3変速)が指示されてブレーキB1をオフすると共にクラッチC3をオンする場合と、前進3速から前進4速へのアップシフト変速(3−4変速)が指示されてクラッチC3をオフすると共にクラッチC2をオンする場合と、前進4速から前進5速へのアップシフト変速(4−5変速)が指示されてクラッチC1をオフすると共にクラッチC3をオンする場合と、前進5速から前進6速へのアップシフト変速(5−6変速)が指示されてクラッチC3をオフすると共にブレーキB1をオンする場合とがある。
【0027】
変速制御ルーチンが実行されると、ATECU29のCPUは、まず、オンすべきクラッチ(ブレーキの場合も含む)の図示しないピストンと摩擦板とのクリアランスを詰めるために作動油を急速充填するファストフィルを実行して(ステップS100)、低圧待機する(ステップS110)。ファストフィルは、前進1速から前進2速へアップシフト変速するときには、ブレーキB1側に作動油が供給されるよう比較的高いデューティ比をもってリニアソレノイドSLB1を駆動することにより行なわれる。なお、変速段の変更に伴ってオンしていたクラッチやブレーキをオフするときにはそのクラッチやブレーキに作用している油圧をドレンするドレン処理も行なわれる。
【0028】
続いて、所定のトルク相実行圧Ptorまでステップ状に増圧する油圧指令によりオンすべきクラッチに油圧を作用させて待機し(ステップS120)、トルク相が完了するのを待つ(ステップS130)。ここで、トルク相は、入力軸21の回転速度は変速前の変速段に応じた回転速度を維持した状態で入力軸21からのトルクを伝達するときに反力を受け持つクラッチやブレーキが変速後の変速段に応じたものに変更される状態であり、イナーシャ相は、入力軸21の回転速度が変速後の変速段に応じた回転速度に変更される状態である。実施例では、オートマチックトランスミッション20の変速段の変速は、トルク相とイナーシャ相の2相を伴って行なわれる。所定のトルク相実行圧Ptorは、トルク相が完了するために必要十分な油圧より大きくイナーシャ相が開始するために必要十分な油圧より小さな圧力として実験的に求めたものを設定するものとした。また、トルク相の完了は、トルク相実行圧Ptorをオンすべきクラッチに作用させてから実際にトルク相が略完了するまでに要する所要時間を予め実験的に求めておき、この所要時間が経過したか否かにより判定することができる。
【0029】
トルク相が完了すると、入力軸回転速度センサ36からの入力軸回転速度NinやエンジントルクTe,シフトアップ段Snを入力する(ステップS140)、ここで、エンジントルクTeは、図示しないトルクセンサにより検出されたものをエンジンECU16から通信により入力したり、エンジン12の制御に用いられる目標トルクをエンジントルクTeとしてエンジンECU16から通信により入力したりすることができる。そして、入力した入力軸回転速度NinとエンジントルクTeとシフトアップ段Snとに基づいてエンジン12からの出力トルクを減少させるべき量として目標トルクダウン量ΔTeを設定し(ステップS150)、イナーシャ相を開始させるために、設定した目標トルクダウン量ΔTeでトルクダウン指令を出力する(ステップS160)。トルクダウン指令の出力は、この指令をメインECU60に送信することにより、トルクダウン指令を受信したメインECU60がエンジンECU16に対してトルクダウン指令を送信することにより行なわれる。トルクダウン指令を受信したエンジンECU16は、目標トルクダウン量ΔTeだけエンジントルクが減少するよう吸入空気量調節制御や燃焼噴射制御、点火制御を実行する。なお、ステップS130におけるトルク相の完了の判定をエンジン12の応答時間だけ早いタイミングで行なってトルクダウン指令を出力するものとすれば、実際にトルク相が完了したタイミングでエンジン12のトルクダウンを行なうことができる。ここで、目標トルクダウン量ΔTeとしては、実施例では、入力軸回転速度NinとエンジントルクTeとシフトアップ段Snと目標トルクダウン量ΔTeとの関係を予め求めて目標トルクダウン量設定用マップとしてROMに記憶しておき、入力軸回転速度NinとエンジントルクTeとシフトアップ段Snとが与えられると、目標トルクダウン量設定用マップから対応する目標トルクダウン量ΔTeを導出するものとした。このマップの一例を図5に示す。目標トルクダウン量ΔTeは、図示するように、入力軸回転速度Ninが高いほど、アップシフト段Snが減速側のアップシフト段ほどトルクが大きく減少するように設定するものとした。また、図示しないが、変速時のエンジントルクTeが大きいほどトルクが大きく減少するように設定するものとした。これは、各変速段間のアップシフト変速前の変速比をアップシフト変速後の変速比で除したステップ比が、1−2変速,2−3変速,3−4変速,4−5変速,5−6変速の順(減速側ほど)で大きくなるよう各変速比を定めていることから、アップシフト段Snに拘わらず同量のトルクダウン量ΔTeを設定すると、ステップ比が大きくなるアップシフト段Snほど、変速に要する時間が長くなったりイナーシャ相における入力軸21の回転速度の変化(回転加速度)が大きくなったりする傾向があり、変速フィーリングが大きく異なるものとなることから、これを解消しようとするものである。したがって、ステップ比が大きくなるアップシフト段Snほど大きくなる傾向に目標トルクダウン量ΔTeが設定されるものとなる。実際には、アップシフト変速に要する時間がいずれのアップシフト段Snでもほぼ均一となるように、アップシフトに関わる回転要素のイナーシャを考慮してシフトアップ段SnとエンジントルクTeと入力軸回転速度Ninと目標トルクダウン量ΔTeとの関係が定められる。なお、オンすべきクラッチの油圧をトルク実行圧Ptorで保持している状態でエンジン12のトルクダウンによってイナーシャ相を開始させるのは、クラッチ圧(ブレーキ圧)の調圧はその機構上高い精度で行なうことが困難であることから、イナーシャ相の開始をオンすべきクラッチへの油圧の増圧によって行なうと、急激な係合により変速ショックが生じる場合があり、この変速ショックを抑制するために油圧の増圧を緩やかに行なうと、変速レスポンスが悪化するためである。
【0030】
イナーシャ相が開始されると、イナーシャ相が完了するまで待つ(ステップS170)。イナーシャ相の完了は、入力軸回転速度センサ36からの入力軸回転速度Ninを出力軸回転速度センサ38からの出力軸回転速度Noutで除することにより現在のギヤ比(減速比)を計算し、計算したギヤ比が目標ギヤ段のギヤ比に略一致するか否かを判定することにより行なうことができる。イナーシャ相が完了すると、メインECU60を介してエンジンECU16に送信したトルクダウン指令を解除すると共に(ステップS180)、オンすべきクラッチに作用させる油圧を最大として(ステップS190)、本ルーチンを終了する。
【0031】
図6は、変速要求とエンジントルクTeと入力軸回転速度Ninと出力トルクToutと油圧指令Po*の時間変化の様子を示す説明図である。なお、図中破線は、比較例におけるエンジントルクTeと入力軸回転速度Ninと出力トルクToutと油圧指令Po*の時間変化の様子を示す。実施例では、図示するように、時刻t12にアップシフト変速要求がなされると、ファストフィルを実行し、時刻t12にトルク実行圧Ptorをオンすべきクラッチに作用させて待機することによりトルク相が行われ、時刻t13にトルク相が完了すると、目標トルクダウン量ΔTeをもってエンジン12のトルクダウンを行なう。これにより、イナーシャ相が開始され、入力軸21の回転速度(入力軸回転速度Nin)は変速後の回転速度に向けて素早く下降する。時刻t14に入力軸回転速度Ninが変速後の回転速度に至ってイナーシャ相が完了すると、エンジン12のトルクダウンを解除すると共にオンするクラッチに作用させる油圧を最大とする。これに対して、比較例では、図中の破線で示すように、時刻t12でオンすべきクラッチに作用させる油圧を徐々に増圧することによりトルク相が行なわれると共にイナーシャ相が開始され、イナーシャ相が開始された後にエンジン12のトルクダウンを行なって変速段を変更する。この比較例では、クラッチやブレーキの係合に伴う変速ショックが生じないように変速段の変更にはオンすべきクラッチに作用させる油圧の増圧を緩やかに行なっており、実施例に比して変速段の変更に長時間を要することがわかる。
【0032】
図7は、2−3変速時の変速の様子と3−4変速時の変速の様子とを示す説明図である。なお、図中の破線は、2−3変速時のエンジン12のトルクダウン量ΔTeを3−4変速時のエンジン12のトルクダウン量ΔTeと同量した場合の変速の様子を示す。2−3変速は、3−4変速よりもステップ比(変速前のギヤ比を変速後のギヤ比で割ったもの)が大きいことから、図示するように、2−3変速で変速に要する時間を3−4変速で変速に要する時間に合わせるために、2−3変速のトルクダウン量ΔTeを3−4変速のトルクダウン量ΔTeよりも大きく設定していることがわかる。なお、同様に、1−2変速のトルクダウン量ΔTeは2−3変速のトルクダウン量ΔTeよりも大きくなり、4−5変速のトルクダウン量ΔTeは3−4変速のトルクダウン量ΔTeよりも小さくなり,5−6変速のトルクダウン量ΔTeは4−5変速のトルクダウン量ΔTeよりも小さくなるように設定される。
【0033】
以上説明した実施例の動力出力装置によれば、エンジン12からオートマチックトランスミッション20の入力軸21にトルクが作用している状態で変速段の変更が指示されたとき、オンすべきクラッチにトルク相実行圧Ptorを作用させて待機することによりトルク相を行なうと共にアップシフト段Snが減速側のアップシフト段ほどエンジントルクが大きく減少するよう目標トルクダウン量ΔTeを設定し、トルク相実行圧Ptorで待機している状態で目標トルクダウン量ΔTeによるエンジン12のトルクダウンによりイナーシャ相を開始させて変速段を変更するから、アップシフト段Snに拘わらず変速フィーリングをほぼ均一なものとすることができる。また、オンすべきクラッチに作用させる油圧の増圧によってトルク相を行なうと共にイナーシャ相を開始させるものに比して、変速ショックを抑制しながら変速段の変更を迅速に行なうことができる。
【0034】
実施例の動力出力装置では、変速に要する時間がアップシフト段Snに拘わらずほぼ均一となるようにシフトアップ段Snと目標トルクダウン量ΔTeとの関係を定めるものとしたが、変速に要する時間の許容時間幅を設定しこの許容時間幅に収まるようにシフトアップ段Snと目標トルクダウン量ΔTeとの関係を定めるものとしてもよい。また、変速中の入力軸回転速度Ninの変化量(回転加速度)がアップシフト段Snに拘わらずほぼ均一となるようにシフトアップ段Snと目標トルクダウン量ΔTeとの関係を定めるものとしてもよいし、変速中の入力軸回転速度Ninの変化量の許容幅を設定しこの許容幅に収まるようにシフトアップ段Snと目標トルクダウン量ΔTeとの関係を定めるものとしてもよい。
【0035】
実施例の動力出力装置では、目標トルクダウン量ΔTeを入力軸回転速度NinとエンジントルクTeとシフトアップ段Snとに基づいて設定するものとしたが、目標トルクダウン量ΔTeの設定に入力軸回転速度Ninを考慮しないものとしてもよいし、エンジントルクTeを考慮しないものとしてもよいし、他のパラメータも考慮に入れるものとしても構わない。
【0036】
実施例の動力出力装置では、目標トルクダウン量ΔTeを各シフトアップ段Snにおけるステップ比を考慮して設定するものとしたが、目標トルクダウン量ΔTeをステップ比に代えて変速前のギヤ比を考慮して設定するものとしてもよい。
【0037】
実施例の動力出力装置では、トルク相を行なう際に、トルク相実行圧Ptorまでステップ状に増圧する油圧指令を設定してオンすべきクラッチに油圧を作用させるものとしたが、これに限定されるものではなく、勾配をもってトルク実行圧Ptorまで増圧する油圧指令を設定するものとしてもよい。
【0038】
実施例の動力出力装置では、トルク相の完了をトルク相実行圧Ptorの経過時間に基づいて判定するものとしたが、トルク相が完了すると車両の加速度が減少することから、入力軸回転速度センサ36からの入力軸回転速度Ninに基づいて演算される入力軸21の回転加速度や出力軸回転速度センサ38からの出力軸回転速度Noutに基づいて演算される出力軸22の回転加速度に基づいて車両の加速度が減少したか否かを判定することによりトルク相の完了を判定するものとしてもよい。この場合、トルク相が完了するときの車両の加速度の減少は、目標ギヤ段のギヤ比(減速比)が小さいほど小さく現われることから、前進1速から前進2速へのアップシフト変速や前進2速から前進3速へのアップシフト変速など比較的高いギヤ比の変速段に変更する場合に限定して実行することが望ましい。
【0039】
実施例の動力出力装置では、イナーシャ相が開始されてから完了するまでオンすべきクラッチをトルク相実行圧Ptorで待機するものとしたが、トルク相実行圧Ptorで待機している状態でイナーシャ相が開始された後はイナーシャ相が完了する前にトルク相実行圧Ptorとは異なる油圧をオンすべきクラッチに作用させるものとしてもよい。
【0040】
実施例の動力出力装置では、イナーシャ相が完了するのを待ってエンジンECU16に送信したトルクダウン指令を解除するものとしたが、エンジン12のトルクダウンをレート処理やなまし処理などの緩変化処理により徐々に復帰させるものとすれば、イナーシャ相が完了する前にトルクダウン指令を解除するものとしてもよい。
【0041】
実施例の動力出力装置では、6段変速のオートマチックトランスミッション20を用いるものとしたが、変速段は6段に限定されるものではなく、3〜5段の変速段としたり、7段以上の変速段としてもよい。
【0042】
実施例では、本発明を動力出力装置の形態として説明したが、自動変速機の制御装置の形態とするものとしてもよいし、変速機装置の形態とするものとしてもよい。
【0043】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン12が「動力源」に相当し、オートマチックトランスミッション20が「自動変速機」に相当し、リニアソレノイドSLC1,SLC3やリニアソレノイドSLB1などが「調圧器」に相当し、図4の変速制御ルーチンを実行するATECU29が「自動変速機の制御装置」に相当する。また、エンジンECU16が「動力源用制御装置」に相当する。ここで、「動力源」としては、内燃機関としてのエンジン12に限定されるものではなく、電動機など、動力源として機能するものであれば如何なるタイプの動力源であっても構わない。「調圧器」としては、ライン圧から最適なクラッチ圧(ブレーキ圧)を生成してクラッチ(ブレーキ)をダイレクトに制御可能なダイレクト制御用のリニアソレノイドとして構成されたリニアソレノイドSLC1,SLC3,SLB1などに限定されるものではなく、パイロット制御用のリニアソレノイドを用いて別途コントロールバルブを駆動することによりライン圧からクラッチ圧(ブレーキ圧)を生成してクラッチ(ブレーキ)を制御するものなど、摩擦係合要素の係合圧を調圧できるものであれば如何なるものであっても構わない。また、「調圧器」としては、油圧を用いてクラッチやブレーキの係合圧を調節するものに限定されるものではなく、油圧以外の他の流体圧によりクラッチやブレーキの係合圧を調節するものや、電磁クラッチなど電磁力によってクラッチやブレーキの係合圧を調節するものなどとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0044】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、自動変速機の制御装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、16 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、18a,18b 駆動輪、20 オートマチックトランスミッション、21 入力軸、22 出力軸、24 トルクコンバータ、26 ギヤ機構、28 デファレンシャルギヤ、29 オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(ATECU)、30 シングルピニオン式の遊星歯車機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、36 入力軸回転速度センサ、38 出力軸回転速度センサ、40 ラビニヨ式の遊星歯車機構、41a,41b サンギヤ、42 リングギヤ、43a ショートピニオンギヤ、43b ロングピニオンギヤ、44 キャリア、50 油圧回路、52 機械式オイルポンプ、54 レギュレータバルブ、55 リニアソレノイド、56 マニュアルバルブ、60 メイン電子制御ユニット(メインECU)、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキスイッチ、68 車速センサ、C1〜C3 クラッチ、B1,B2 ブレーキ、F1 ワンウェイクラッチ、SLC1,SLC3,SLB1 リニアソレノイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの摩擦係合要素の係合圧を調圧する調圧器を備え、該調圧器を制御して前記摩擦係合要素の係合状態を切り替えることにより変速段の変更を伴って動力源から入力軸に入力された動力を出力軸に伝達可能で、前記入力軸にトルクが作用している状態で変速段を変更する際には該変速段の変更をトルクの伝達を変速後の変速段による伝達に変更するトルク相と該入力軸の回転速度を変速後の変速段に応じた回転速度に変更するイナーシャ相の2相によって行なう自動変速機を制御する自動変速機の制御装置であって、
変速段の変更が指示されたときには、前記トルク相が、前記摩擦係合要素を所定の係合圧で滑りを伴って係合させて待機することにより行なわれ、前記イナーシャ相が、変更する変速段に拘わらず変速状態が所定範囲内と収まるように前記変更が指示された変速段に基づいて目標減少量を設定すると共に前記所定の係合圧で待機している状態で前記動力源から前記入力軸に作用するトルクを前記設定した目標減少量に基づいて減少させることにより行なわれるよう前記動力源側に指示すると共に前記調圧器を制御する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
変速段を変更する際のステップ比が大きいほどトルクが大きく減少する傾向に前記目標減少量を設定することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記変速状態として、変更する変速段に拘わらず変速に要する時間が所定時間幅内に収まるよう前記目標減少量を設定することを特徴とする請求項1または2記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
変更する変速段に拘わらず変速に要する時間が略一定となるよう前記目標減少量を設定することを特徴とする請求項3記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記変速状態として、変更する変速段に拘わらず変速の際の前記入力軸の回転速度の変化の程度が所定幅内に収まるよう前記目標減少量を設定することを特徴とする請求項1または2記載の自動変速機の制御装置。
【請求項6】
変更する変速段に拘わらず変速の際の前記入力軸の回転速度の変化の程度が略一定となるよう前記目標減少量を設定することを特徴とする請求項5記載の自動変速機の制御装置。
【請求項7】
自動変速機と、
請求項1ないし6いずれか1項に記載の自動変速機の制御装置と
を備える変速機装置。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項に記載の変速機装置と、
動力源と、
前記変速機装置からの指示に基づいて前記動力源を制御する動力源用制御装置と、
を備える動力出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−158001(P2011−158001A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18462(P2010−18462)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】