説明

自動変速機の操作機構

【課題】自動変速機の組立性向上、工数削減、強度確保、軽量化、並びにコスト低減を図る。
【解決手段】マニュアルシャフト15は、シフトレバーに操作されるレバー被操作部9が設けられる第1シャフト16と、マニュアルバルブを操作するバルブ操作部21が設けられる第2シャフト17とを備えている。第1シャフト16とバルブ操作部21が予め固着されてなる第2シャフト17とが直接又は第3シャフト18を介して連結されて、当該マニュアルシャフト15が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機には、自動変速機の操作レンジを選択するシフトレバー(「セレクトレバー」とも呼ばれる。)の操作に連動して回動するマニュアルシャフトが設けられている。このマニュアルシャフトに係る操作機構の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
この文献1では、一端から他端まで単一径に形成された1本物のマニュアルシフトが変速機ケースに回転自在に支持されている。変速機ケースから突出したマニュアルシャフトの一端にレバーがナットにてねじ止めされ、このレバーと上記シフトレバーとがリンケージにて連結されている。変速機ケースから突出したマニュアルシャフトの他端にも同じくレバーがナットにてねじ止めされている。この他端のレバーは、同文献1には説明がないが、自動変速機の油圧制御系のマニュアルバルブを操作するレバーと認められる。また、マニュアルシャフトの中間部にはパーキング機構のマニュアルプレート(ディテントプレート)が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−236201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のマニュアルシャフトの端部にマニュアルバルブの操作レバーをねじ止めする構造では、ナット締付け用工具を挿入して作業するスペースを確保しなければならない。しかも、その締付け時には空回りしないようにマニュアルシャフトを固定する必要があり、作業が煩雑になる。
【0006】
また、作業スペースを確保ことができるとしても、図6に示すように、マニュアルシャフトaには、バルブ操作レバーbの回り止めとなる二面幅部(二面取り部)cを形成する必要がある。これが別の問題となる。すなわち、通常、マニュアルシャフトaの端部のねじ切りをした後、そのねじ部に二面幅加工を施す。このとき、バリがねじ部の谷を塞いだり、或いは切粉がねじ部の谷に入ったりすることがあり、加工後の後処理に手数がかかる。また、二面幅加工後にねじ切りをすることも考えられるが、ねじ切りによるバリが二面幅部に出やすく、バルブ操作レバーbの位置決め精度が悪くなる。このため、別途仕上げ加工を要することになる。なお、図6において、dはナット、eは変速機ケースである。
【0007】
また、マニュアルシャフトaに二面幅加工を施すと、当該部分が細くなるため強度が低下する。これに対して、バルブ操作レバーの支持強度確保のために、マニュアルシャフト全体を太くすると、軽量化やコスト低減に不利になる。細くても強度の高い材質のものは高価である。熱処理によって二面幅部分の強度を高めることも考えられるが、工数が増えるだけでなく、コスト低減にも不利になる。
【0008】
そこで、本発明は、以上のような問題を解決する自動変速機の操作機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するために、マニュアルシャフトを1本物にせず、複数のシャフトの連結によってマニュアルシャフトを構成するようにした。
【0010】
すなわち、ここに開示する自動変速機の操作機構は、変速機ケースに回動自在に支持されていて、シフトレバーに連動するマニュアルシャフトを備え、該マニュアルシャフトの一端部に上記シフトレバーによって操作されるレバー被操作部が設けられ、該マニュアルシャフトの他端部に自動変速機の油圧制御系のマニュアルバルブを操作するバルブ操作部が設けられている。
【0011】
上記マニュアルシャフトは、上記レバー被操作部が設けられる第1シャフトと、上記バルブ操作部が設けられる第2シャフトとを備え、該第1シャフトと第2シャフトとは同軸に配置され、且つ上記バルブ操作部は上記第2シャフトに固着状態に設けられている。そうして、上記第1シャフトと上記バルブ操作部が固着されてなる第2シャフトとが、直接連結されて、又は中間の第3シャフトを介して連結されて、上記マニュアルシャフトが構成されている。
【0012】
従って、上記構成によれば、第2シャフトに予めバルブ操作部を固着しておくから、自動変速機の組立において、変速機ケースまわりにバルブ操作部をマニュアルシャフトにねじ止めする作業スペースを確保することや、マニュアルシャフトを空回りしないように固定することは不要になり、その組立性が向上する。そして、マニュアルシャフトにバルブ操作部を固定するためのねじ切り加工や二面幅加工を施す必要もなくなり、工数削減、コスト低減に有利になるとともに、マニュアルシャフトのバルブ操作部を支持する部分の強度確保も容易になり、軽量化及びコスト低減を図ることが容易になる。
【0013】
好ましい実施形態では、上記変速機ケースの壁に、上記第2シャフトを回転自在に支持するためのシャフト支持孔が設けられており、上記第2シャフトは、上記シャフト支持孔に通されて上記第1シャフトに連結される小径部と、該小径部に続いて上記シャフト支持孔よりも大径になった大径部とを有し、該大径部に上記バルブ操作部が固着されている。そして、上記小径部と大径部との段差部と、該小径部を上記シャフト支持孔に差し込んだときに上記段差部を受ける上記変速機ケースの壁面とが、上記第2シャフトの軸方向位置を決める位置決め手段を構成している。
【0014】
これは、上記段差部を、第2シャフトの軸方向位置を決める位置決めストッパとする構成である。従って、第2シャフトに別途ストッパを設けることなく、当該位置決めが図れ、第1シャフトと第2シャフトとの連結が容易になるとともに、マニュアルシャフトの軽量化及びコスト低減に有利になる。
【0015】
また、好ましい実施形態では、上記第1シャフト及び第2シャフトに加えて、中間に配置され両端が開口した中空の第3シャフトを備え、上記第1シャフト及び第2シャフトが上記中空の第3シャフトに両端から嵌合されて上記マニュアルシャフトが構成されている。そして、上記第3シャフトに、パーキングギヤに対するパーキングポールの係合離脱を操作するパーキング操作部が設けられている。
【0016】
すなわち、パーキングポールのパーキングギヤへの係合時にはパーキング操作部を介して第3シャフトに大きな反力が作用する。従って、マニュアルシャフトの強度確保が求められるところ、第3シャフトを中空にしたから、第1シャフト及び第2シャフトと第3シャフトとの連結が容易になるだけでなく、軽量化と上記強度確保との両立を図ることが容易になる。
【0017】
この場合、上記第3シャフトに、ディテントスプリングと相俟って上記シフトレバーの操作に節度感を付与するディテントプレートが固着されていることが好ましい。これにより、第3シャフトにパーキング操作部とディテントプレートとを組み付けた状態で、この第3シャフトに第1シャフト及び第2シャフトを連結することができるから、組立性の向上が図れる。しかも、パーキング操作部とディテントプレートとが同じ第3シャフトに設けられているから、パーキングポールの操作と、その際の操作節度感とに感覚的なずれを生ずることが避けられる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、マニュアルシャフトは、シフトレバーに操作されるレバー被操作部が設けられる第1シャフトと、マニュアルバルブを操作するバルブ操作部が設けられる第2シャフトとを備え、この第1シャフトと、上記バルブ操作部が固着されてなる第2シャフトとが直接又は第3シャフトを介して連結されて当該マニュアルシャフトが構成されているから、従来は上記バルブ操作部がネックになって実現が難しかった、自動変速機の組立性の向上、工数削減、強度確保、軽量化、並びにコスト低減を図ることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る自動変速機の操作機構の全体構成を示す一部断面にした平面図である。
【図2】同操作機構の要部を示す縦断面図である。
【図3】同操作機構の平面図である。
【図4】(A)は同操作機構のマニュアルシャフトを分解して示す縦断面図、(B)は同マニュアルシャフトを組み立てて示す縦断面である。
【図5】別の実施形態に係るマニュアルシャフトを示す縦断面図である。
【図6】(A)は従来のマニュアルシャフトの一部を示す縦断面図、(B)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1に示す車両1において、2はエンジン3、自動変速機4等からなるパワープラントが設けられたエンジンルーム、5はシフトレバー6が設けられた車室、7はダッシュパネルである。エンジン3はクランクシャフトを車幅方向に延びる横置きにして車体フレーム8に支持されている。シフトレバー6は、自動変速機4の操作レンジを選択するものであり、シフトレバー6と自動変速機4のアウタレバー(レバー被操作部)9とがコントロールケーブル11によって結ばれている。操作レンジとしては、「P」(パーキング)、「R」(後進)、「N」(ニュートラル)、「D」(Dレンジ)等があり、ドライバがシフトレバー6を操作して所望のレンジを選択する。図1において、12は前輪である。
【0022】
<マニュアルシャフトの構成>
図2には上記シフトレバー6の操作に連動して回動するマニュアルシャフト15が示されている。このマニュアルシャフト15は、上部の第1シャフト16と下部の第2シャフト17とを中間の第3シャフト18で連結して構成されている。第1シャフト16の上端には上記アウタレバー9が溶接によって固着されている。第2シャフト17の下端には、自動変速機4の油圧制御系のマニュアルバルブ(図3に符号19で示す)を操作するインナレバー(バルブ操作部)21が溶接によって固着されている。第3シャフト18には、パーキングギヤ22に対するパーキングポール23の係合離脱を操作するパーキング操作部24が設けられている。
【0023】
第1シャフト16は、その上部と下部の径が異なり、上側の大径部16aの上端に上記アウタレバー9が固着されている。下側の小径部16bは、自動変速機4の変速機ケース25の壁に形成された上部シャフト支持孔26に通され、その下部が変速機ケース25内に突出している。
【0024】
具体的に説明すると、上部シャフト支持孔26は、そのケース外面側から内面側に向かって順に、第1シャフト16の大径部16aをオイルシール27と共に収容する大径孔、第1シャフト16の小径部16bをニードルベアリング28で変速機ケース25に回転自在に支持する中径孔、並びに小径孔が形成されてなる。第1シャフト16の小径部16bには、ワッシャ29が嵌められている。上部シャフト支持孔26の大径孔と中径孔との段部は、第1シャフト16の小径部16bを上部シャフト支持孔26に差し込んだときに、ワッシャ29を介して大径部16aを受けるストッパ面になっている。これにより、第1シャフト16の軸方向位置が決まるようになっている。
【0025】
換言すれば、第1シャフト16の大径部16aと小径部16bとの段差部と、該小径部16bを上部シャフト支持孔26に差し込んだときに段差部(大径部16a)を受ける、変速機ケース25の壁に形成された受け面(ストッパ面)とが、上記第1シャフト16の軸方向位置を決める位置決め手段を構成している。
【0026】
第2シャフト17は、その上部と下部の径が異なり、下部の大径部17aの下端に上記インナレバー21が固着されている。上側の小径部17bは、変速機ケース25の壁に形成された下部シャフト支持孔31に通され、その上部が変速機ケース25内に突出している。第2シャフト17は下部シャフト支持孔31において変速機ケース25に回転自在に支持されている。
【0027】
変速機ケース25における下部シャフト支持孔31まわりの外壁面は、第2シャフト17の小径部17bを下部シャフト支持孔31に差し込んだときに、大径部17aを受けるストッパ面になっている。これにより、第2シャフト17の軸方向位置が決まるようになっている。
【0028】
換言すれば、第2シャフト17の大径部17aと小径部17bとの段差部と、該小径部17bを下部シャフト支持孔31に差し込んだときに段差部(大径部17a)受ける、変速機ケース25の外壁面(ストッパ面)とが、上記第2シャフト17の軸方向位置を決める位置決め手段を構成している。
【0029】
第1シャフト16及び第2シャフト17は中実シャフトであるが、第3シャフト18は、両端が開口した中空シャフトである。第3シャフト18の上部に第1シャフト16の小径部16bが差し込まれ、両シャフト16,18がスプリングピン32によって連結されている。第3シャフト18の下部に第2ャフト17の小径部17bが差し込まれ、両シャフト17,18がスプリングピン32によって連結されている。
【0030】
図4(A)に示すように、第3シャフト18は、第1シャフト16及び第2シャフト17各々の小径部16b,17bが差し込まれる上部及び下部のシャフト挿入孔18a,18bの内径よりも、中間部18cの内径の方が大きくなっている。つまり、第3シャフト18の内面においては、シャフト挿入孔18a,18bと中間部18cとの境界に段部18dが形成されている。この段部18dは、第1及び第2のシャフト16,17各々の小径部16b,17bを第3シャフト18のシャフト挿入部18a,18bに挿入したときの、シャフト同士の軸方向における相対位置を決める位置決めストッパになっている。
【0031】
従って、第1及び第2のシャフト16,17各々の小径部16b,17bを第3シャフト18のシャフト挿入孔18a,18bに、段部18dに当たるまで挿入すると、互いのスプリングピン孔16c,18eの位置、並びにスプリングピン孔17c,18fの位置は高さが同じになる。
【0032】
また、第3シャフト18の上部18gにディテントプレート35が嵌められて溶接により固着されている。第3シャフト18の上部18gに続く下部の外径は、ディテントプレート35の嵌合孔の内径よりも大きくなっている。従って、ディテントプレート35を上部18gに嵌めて下方へずらしていくと、外径が大きくなった下部の上端で受け止められ、これにより、ディテントプレート35の軸方向位置が決まる。
【0033】
<マニュアルシャフトの組立>
図4(A)に示すように、予め、第1シャフト16にはアウタレバー9を、第2シャフト17にはインナレバー21を、また、第3シャフト18にはディテントプレート35を、それぞれ固着しておく。
【0034】
そして、第3シャフト18を変速機ケース25内に入れる。第3シャフト18に第1シャフト16を連結する場合は、該第1シャフト16の小径部16bを、変速機ケース25の上部シャフト支持孔26に外側から通し、さらに第3シャフト18の上部シフト挿入孔18aに差し込んで、段部18dに当てる。これにより、第1シャフト16及び第3シャフト18各々のスプリングピン孔16c,18eの位置は高さが同じになる。よって、シャフト同士を相対的に回転させるだけで、スプリングピン孔16c,18e同士が合致することになり、スプリングピン32の差し込み作業が容易になる。このスプリングピン32の差し込みにより、第1シャフト16と第3シャフト18との連結が済む(図4(B)参照)。
【0035】
図4(A)では変速機ケース25の上部シャフト支持孔26を簡略化して描いているが、上部シャフト支持孔26に予めニードルベアリング28、ワッシャ29及びオイルシール27を組み付けた状態で、第1シャフト16を差し込み組み付ける。第1シャフト16の大径部16aを、ワッシャ29を介して上部シャフト支持孔26の段部に支持させると、第1シャフト16の変速機ケース25での軸方向位置が定まる。
【0036】
第3シャフト18に第2シャフト17を連結する場合は、該第2シャフト17の小径部17bを、変速機ケース25の下部シャフト支持孔31に外側から通し、さらに第3シャフト18の下部シフト挿入孔18bに差し込んで、段部18dに当てる。これにより、第2シャフト17及び第3シャフト18各々のスプリングピン孔17c,18fの位置は高さが同じになる。よって、シャフト同士を相対的に回転させるだけで、スプリングピン孔17c,18f同士が合致することになり、スプリングピン32の差し込み作業が容易になる。このスプリングピン32の差し込みにより、第2シャフト17と第3シャフト18との連結が済む(図4(B)参照)。
【0037】
また、第2シャフト17をその大径部17aが変速機ケース25の外壁面に当たる状態にすると、該第2シャフト17の変速機ケース25での軸方向位置が定まる。従って、仮に第3シャフト18の内周面の段部18dがストッパにならない不具合があっても、スプリングピン32の差し込み、並びに第2シャフト17の位置決めには支障がない。
【0038】
そうして、上述の如く第2シャフト17に予めインナレバー(バルブ操作部)21を固着しておくから、自動変速機4の組立において、変速機ケース25まわりにインナレバー21をマニュアルシャフトにねじ止めする作業スペースを確保することや、マニュアルシャフトを空回りしないように固定することは不要になる。もちろん、マニュアルシャフトにねじ切り加工や二面幅加工を施す必要もない。
【0039】
なお、第2シャフト17を先に第3シャフト18に連結し、後から第1シャフト16を第3シャフト18に連結することもできる。
【0040】
<ディテント機構及びパーキング操作部>
次にディテント機構について説明する。第3シャフト18に固着されたディテントプレート35は、図3に示すように、扇状のものであって、その先端側の周面にレンジ位置に対応した数の凹部35aを有し、これら凹部35aにディテントスプリング36で係合方向に付勢されたローラ37が選択的に係合するようになっている。
【0041】
すなわち、ディテントスプリング36は、板バネよりなり、変速機ケース25に固定されたディテントブラケット38に一端が固定され、その他端にローラ37が支持されている。シフトレバー6によるレンジ選択に伴ってマニュアルシャフト15と共にディテントプレート35が回動し、ローラ37が係合する凹部35aが切り替わる。ローラ37がディテントスプリング36によって係合方向に付勢されているため、シフトレバー6の操作に節度感が得られるものである。
【0042】
次にパーキング操作部24について説明する。図2に示すように、パーキングギア22は、遊星歯車機構を含む自動変速機4の第2の動力伝達軸であるセカンダリ軸41に組み込まれている。一方、パーキングポール23は、その一端が変速機ケース25にピン42で回動するように支持され、他端にパーキングカム43が係合する係合部が設けられ、中間にパーキングギヤ22に係合するポール(爪)23aが設けられている。パーキングポール23は、パーキングギヤ22に対するポール23aの係合が外れる方向に、スプリング44,45によって付勢されている。
【0043】
パーキングカム43は、スプリング44,45の付勢に抗してパーキングポール23をポール23aがパーキングギヤ22に係合するように回動させるものであり、パーキングロッド46に設けられている。すなわち、パーキングロッド46は、その一端がディテントプレート35に固定されており、このパーキングロッド46の他端に、パーキングカム43が緩衝用スプリング47にてロッド長手方向へ変位が許容されるように設けられている。また、変速機ケース25には、パーキングカム43の移動を案内するガイド48が設けられている。このガイド48の案内により、パーキングカム43はパーキングポール23を係合方向に回動させるようになっている。
【0044】
なお、図2及び図3において、符号49はパーキングポール23の反係合方向への回動角度を規制するストッパである。
【0045】
パーキング操作部24の作動を説明する。シフトレバー6がPレンジに操作されると、それに伴ってマニュアルシャフト15と共にディテントプレート35が回動する。これにより、ディテントプレート35に固定されたパーキングロッド46がパーキングポール23側に前進するとともに、ディテントスプリング36の先端のローラ37がディテントプレート35のPレンジの凹部35aに係合する。
【0046】
上記パーキングロッド46の前進に伴って、パーキングカム43が、ガイド48に案内されて、スプリング44,45の付勢に抗して、パーキングポール23をパーキングギヤ22に係合するように回動させる。そして、ポール23aのパーキングギア22への係合によってパーキングギア22がロックされる。これにより、セカンダリ軸41からデファレンシャル軸51への回転力の伝達が禁止される。同図において、符号52は、自動変速機4の第1の動力伝達軸であるプライマリ軸を示し、プライマリ軸52はエンジン3のクランクシャフトと同軸に配置されている。
【0047】
そうして、パーキングポール23のパーキングギヤ22への係合時には、パーキングカム43、パーキングロッド46及びディテントプレート35を介して、第3シャフト18に大きな反力が作用する。これに対して、上記実施形態では、第3シャフト18を中空にしたから、第1シャフト16及び第2シャフト17との連結が容易になるだけでなく、マニュアルシャフト15の軽量化と強度確保との両立を図ることができる。
【0048】
また、パーキング操作部24とディテントプレート35とが同じ第3シャフト18に設けられているから、パーキングポール23の操作と、その際の節度感とに感覚的なずれを生ずることが避けられる。さらに、ディテントプレート35を第3シャフト18に設けたから、特に第1シャフト16に近い第3シャフト18の上部に設けたから、アウタレバー9(シフトレバー6の操作力の入力部)とディテントプレート35(パーキング操作部24に対する出力部)とが接近する。このため、アウタレバー9からパーキング操作部24への操作力の伝達性が良くなる(シャフトの捩れが問題にならない)。よって、マニュアルシャフト15の軽量化を図りながら、必要強度を確保する上で有利になる。
【0049】
<別の実施形態>
図5はマニュアルシャフト15に関する別の実施形態を示す。先の実施形態では第3シャフト18を中空シャフトにした。これに対して、本実施形態では、第3シャフト18を中実シャフトとし、その両端部に第1シャフト16及び第2シャフト17に対するシャフト挿入孔18a,18bを設けている。他の構成は先の実施形態と同じである。本実施形態においても、先の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0050】
1 車両
3 エンジン
4 自動変速機
6 シフトレバー
9 アウタレバー(レバー被操作部)
15 マニュアルシャフト
16 第1シャフト
17 第2シャフト
18 第3シャフト
21 インナレバー(バルブ操作部)
22 パーキングギヤ
23 パーキングポール
24 パーキング操作部
25 変速機ケース
17a 大径部
17b 小径部
31 シャフト支持孔
35 ディテントプレート
36 ディテントスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機の変速機ケースに回動自在に支持されていて、シフトレバーに連動するマニュアルシャフトを備え、該マニュアルシャフトの一端部に上記シフトレバーによって操作されるレバー被操作部が設けられ、該マニュアルシャフトの他端部に自動変速機の油圧制御系のマニュアルバルブを操作するバルブ操作部が設けられている自動変速機の操作機構であって、
上記マニュアルシャフトは、上記レバー被操作部が設けられる第1シャフトと、上記バルブ操作部が設けられる第2シャフトとを備え、該第1シャフトと第2シャフトとは同軸に配置され、且つ上記バルブ操作部は上記第2シャフトに固着状態に設けられていて、
上記第1シャフトと、上記バルブ操作部が固着されてなる第2シャフトとが、直接連結されて、又は中間の第3シャフトを介して連結されて、上記マニュアルシャフトが構成されていることを特徴とする自動変速機の操作機構。
【請求項2】
請求項1において、
上記変速機ケースの壁に、上記第2シャフトを回転自在に支持するためのシャフト支持孔が設けられており、
上記第2シャフトは、上記シャフト支持孔に通されて上記第1シャフトに連結される小径部と、該小径部に続いて上記シャフト支持孔よりも大径になった大径部とを有し、該大径部に上記バルブ操作部が固着されており、
上記小径部と大径部との段差部と、該小径部を上記シャフト支持孔に差し込んだときに当該段差部を受ける上記変速機ケースの壁面とが、上記第2シャフトの軸方向位置を決める位置決め手段を構成していることを特徴とする自動変速機の操作機構。
【請求項3】
請求項又は請求項2において、
上記第1シャフト及び第2シャフトに加えて上記中間の第3シャフトを備え、
上記第3シャフトは両端が開口した中空状に形成されていて、上記第1シャフト及び第2シャフトが上記中空の第3シャフトに両端から嵌合されて上記マニュアルシャフトが構成されており、
上記第3シャフトに、パーキングギヤに対するパーキングポールの係合離脱を操作するパーキング操作部が設けられていることを特徴とする自動変速機の操作機構。
【請求項4】
請求項3において、
上記第3シャフトに、ディテントスプリングと相俟って上記シフトレバーの操作に節度感を付与するディテントプレートが固着されていることを特徴とする自動変速機の操作機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−241878(P2011−241878A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113336(P2010−113336)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】