説明

自動変速機の油圧制御装置

【課題】ライン圧を係合圧に調圧するリニアソレノイドバルブにおける油圧損失を低減し、もって車両の燃費向上を図ることが可能な自動変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】ライン圧PをリニアソレノイドバルブSL1に供給すると共に、リニアソレノイドバルブSL1からの係合圧PC1を油圧サーボ31に供給する第1位置と、リニアソレノイドバルブSL1に対するライン圧Pの供給、及びリニアソレノイドバルブSL1から油圧サーボ31に対する係合圧PC1の供給を遮断すると共に、ライン圧Pを油圧サーボ31に供給する第2位置と、にスプール21pの位置が切換えられるC−1リレーバルブ21を設ける。クラッチC−1の係合完了時に、リニアソレノイドバルブSL1に対するライン圧を遮断し、C−1リレーバルブ21よりも径が大きくて油圧損失が大きいリニアソレノイドバルブSL1の油圧損失を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される自動変速機の油圧制御装置に係り、詳しくは、ライン圧を調圧して摩擦係合要素の油圧サーボに係合圧として出力し得るリニアソレノイドバルブを備えた自動変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両等に搭載される自動変速機においては、変速ショックを低減するため、変速時にはクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素のスリップ制御などを行っており、このようなスリップ制御等を可能にするために、摩擦係合要素の油圧サーボに供給する係合圧を、リニアソレノイドバルブを用いて電気的に調圧制御している。
【0003】
ところで、リニアソレノイドバルブは、リニア駆動するソレノイド部でバルブ部のスプールの位置駆動を行うことで、該バルブ部で供給されてくる油圧を調圧して出力する。このバルブ部においては、スプールとバルブボディとのクリアランスの関係上、供給されてくる油圧がスプールとバルブボディとのクリアランスから油圧が漏れ出し、油圧損失が生じる。この油圧損失は、オイルポンプの設計に関わり、油圧損失が大きくなると、オイルポンプの吐出量が大きくなるようにオイルポンプを大径化する必要が生じ、オイルポンプの駆動ロスが大きくなって、当該自動変速機を搭載した車両の燃費向上の妨げになるという問題が生じる。
【0004】
そのため、複数のリニアソレノイドバルブを第1グループと第2グループとに区分し、第1変速状態において、第2変速状態のあるときのみ作動される第2グループのリニアソレノイドバルブの元圧(作動油)を遮断するように構成し、第1変速状態における油圧損失の低減を図ったものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、上記特許文献1のものは、その図4に示すように、リニアソレノイドバルブから出力される制御圧によりアプライリレーバルブを制御し、該アプライリレーバルブによってライン圧を調圧することで、摩擦係合要素の油圧サーボに供給する係合圧を生成しているが、近年、リニアソレノイドバルブの性能向上により、該リニアソレノイドバルブによりライン圧を直接的に調圧し、油圧サーボに供給する係合圧を該リニアソレノイドバルブで生成するものが主流になりつつある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−105333号公報
【特許文献2】特開2010−84855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のものは、変速段の形成に不要な摩擦係合要素の油圧サーボに対応するリニアソレノイドバルブ(例えば第2グループのリニアソレノイドバルブ)の元圧(作動圧)を遮断するものであるが、変速段を形成するために係合される摩擦係合要素の油圧サーボに対応するリニアソレノイドバルブ(例えば第1グループのリニアソレノイドバルブ)には、元圧が供給される必要があるため、変速段の形成中(摩擦係合要素の係合中)も元圧の供給が継続して行われる。
【0008】
しかしながら、リニアソレノイドバルブにあっては、たとえスプール位置が元圧を全開に出力する位置であったとしても、高い油圧が作用することでスプールとバルブボディとのクリアランスから油圧が漏れ出し、つまり摩擦係合要素の係合中にあってもリニアソレノイドバルブにおける油圧損失が発生する。
【0009】
更に、上記特許文献2のように、ライン圧を直接的に調圧して、摩擦係合要素の油圧サーボに供給する係合圧を出力するものにあっては、係合圧の高出力化が要求されるため、バルブ部のスプール径が大きくなり、それに伴ってスプールとバルブボディとのクリアランスも大きくなるばかりか、高圧であるライン圧がリニアソレノイドバルブに作用するため、摩擦係合要素の係合中における油圧損失がさらに大きくなってしまうという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、ライン圧を係合圧に調圧するリニアソレノイドバルブにおける油圧損失を低減し、もって車両の燃費向上を図ることが可能な自動変速機の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は(例えば図1乃至図10参照)、ライン圧(P)を発生するライン圧発生部(20)と、供給される係合圧(例えばPC1)によって摩擦係合要素(例えばC−1)を係脱する油圧サーボ(例えば31)と、前記ライン圧(P)を調圧して前記油圧サーボ(例えば31)に前記係合圧(例えばPC1)として出力し得るリニアソレノイドバルブ(例えばSL1)と、を備えた自動変速機(3)の油圧制御装置(1)において、
前記ライン圧(P)を前記リニアソレノイドバルブ(例えばSL1)に供給すると共に、前記リニアソレノイドバルブ(例えばSL1)からの前記係合圧(例えばPC1)を前記油圧サーボ(例えば31)に供給する第1位置(例えば図4の位置)と、前記リニアソレノイドバルブ(例えばSL1)に対する前記ライン圧(P)の供給、及び前記リニアソレノイドバルブ(例えばSL1)から前記油圧サーボ(31)に対する前記係合圧(例えばPC1)の供給を遮断すると共に、前記ライン圧(P)を前記油圧サーボ(例えば31)に供給する第2位置(例えば図5の位置)と、にスプール(例えば21p)の位置が切換えられる切換えバルブ(例えば21)を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は(例えば図1乃至図10参照)、前記切換えバルブ(例えば21)を前記第1位置(例えば図4の位置)に復帰させるための復帰圧(例えばPS1,PC2)を供給し得る復帰圧供給手段(例えばS1、SL2)を備え、
前記切換えバルブ(例えば21)は、前記スプール(例えば21p)を前記第1位置に付勢する付勢手段(例えば21s)と、前記係合圧(例えばPC1)を入力し、前記係合圧(例えばPC1)により前記付勢手段(例えば21s)の付勢力に抗して前記スプール(例えば21p)を前記第2位置(例えば図5の位置)に押圧させる第1油室(例えば21a)と、前記復帰圧(例えばPS1,PC2)を入力し、前記復帰圧(例えばPS1,PC2)により前記スプール(例えば21p)を前記第1位置(例えば図4の位置)に押圧させる第2油室(例えば21b)と、を有し、
前記付勢手段(例えば21s)の付勢力は、前記摩擦係合要素(例えばC−1)の係脱制御時における前記係合圧(例えばPC1)よりも大きく、前記摩擦係合要素(例えばC−1)の係合完了時における前記係合圧(例えばPC1)よりも小さく設定されたことを特徴とする。
【0013】
更に、本発明は(例えば図4、図5、図8参照)、前記復帰圧供給手段は、前記摩擦係合要素(例えばC−1)の係脱制御の開始時に前記復帰圧(PS1)を供給する信号ソレノイドバルブ(S1)からなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は(例えば図8参照)、前記油圧サーボ(31,32,33,34,35)を、多段変速を可能にする複数の摩擦係合要素(C−1,C−2,C−3,B−1,B−2)をそれぞれ係脱するように複数有し、
前記リニアソレノイドバルブ(SL1,SL2,SL3,SL4)を、前記複数の油圧サーボ(31,32,33,34,35)にそれぞれ供給する複数の係合圧(PC1,PC2,PC3,PB1,PB2)を調圧するように複数有し、
前記切換えバルブ(21,22,23,24)を、前記複数のリニアソレノイドバルブ(SL1,SL2,SL3,SL4)にそれぞれ対応するように複数有し、
前記信号ソレノイドバルブ(S1)は、前記複数の切換えバルブ(21,22,23,24)に対する前記復帰圧(PS1)を共通して供給し得ることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は(例えば図9、図10参照)、前記油圧サーボ(31、32)を、多段変速のうちの低速段側の複数変速段で係合される摩擦係合要素(C−1)用と、高速段側の複数変速段で係合される摩擦係合要素(C−2)用と、で少なくとも2つ有し、
前記リニアソレノイドバルブ(SL1,SL2)を、前記2つの油圧サーボ(31,32)にそれぞれ供給する複数の係合圧(PC1,PC2)を調圧するように少なくとも2つ有し、
前記切換えバルブ(例えば21)を、前記2つのリニアソレノイドバルブの少なくとも一方(SL1)に対応するように有し、
前記復帰圧供給手段は、前記摩擦係合要素(C−2)の係合時に出力される係合圧(PC2)を前記復帰圧として供給する他方の前記リニアソレノイドバルブ(SL2)からなることを特徴とする。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明によると、ライン圧をリニアソレノイドバルブに供給すると共に、リニアソレノイドバルブからの係合圧を油圧サーボに供給する第1位置と、リニアソレノイドバルブに対するライン圧の供給、及びリニアソレノイドバルブから油圧サーボに対する係合圧の供給を遮断すると共に、ライン圧を油圧サーボに供給する第2位置と、に切換えられる切換えバルブを備えているので、例えばリニアソレノイドバルブによる係合圧の調圧制御によって、摩擦係合要素の滑らかな係脱制御(スリップ制御等)を行うことを可能とするものでありながら、摩擦係合要素の係合完了時には、リニアソレノイドバルブに対するライン圧を遮断すると共に、ライン圧を摩擦係合要素の油圧サーボに直接的に供給することができ、切換えバルブよりも径が大きくて油圧損失が大きくなるはずのリニアソレノイドバルブの油圧損失を抑えることができて、車両の燃費向上を図ることができる。
【0018】
また、例えば多段式自動変速機にあって、本切換えバルブを全てのリニアソレノイドバルブに対応するように配設し、かつ摩擦係合要素の係合完了時に第2位置に切換えるように構成することで、どの変速段であっても、各リニアソレノイドバルブの係合圧の最高出力状態(ライン圧出力状態)を無くすことができる。これにより、設計上、オイルポンプの吐出容量を低減することができるので、オイルポンプを小型化することができ、自動変速機のコンパクト化を可能にすると共に、当該オイルポンプを採用した自動変速機を搭載した車両の燃費向上を図ることができる。また、設計上、各リニアソレノイドバルブの出力性能も小さくできるので、リニア駆動するソレノイド部の小型化も図ることでき、自動変速機のコンパクト化を可能にすることができる。
【0019】
請求項2に係る本発明によると、切換えバルブが、スプールを第1位置に付勢する付勢手段と、係合圧を入力し、該係合圧により付勢手段の付勢力に抗してスプールを第2位置に押圧させる第1油室と、復帰圧を入力し、該復帰圧によりスプールを第1位置に押圧させる第2油室と、を有していると共に、付勢手段の付勢力が、摩擦係合要素の係脱制御時における係合圧よりも大きく、摩擦係合要素の係合完了時における係合圧よりも小さく設定されているので、摩擦係合要素の係脱制御(特に係合制御)を行っている間は、切換えバルブが第1位置にあって、リニアソレノイドバルブによる係合圧の調圧制御を可能とするものでありながら、摩擦係合要素の係合完了時には、切換えバルブが第2位置となって、リニアソレノイドバルブの油圧損失を抑えることを可能とすることができる。更に、復帰圧により切換えバルブを第1位置に切換えることができるので、摩擦係合要素の係脱制御(特に解放制御)を行う際には、リニアソレノイドバルブによる係合圧の調圧制御を可能とすることができる。
【0020】
請求項3に係る本発明によると、復帰圧供給手段が、摩擦係合要素の係脱制御の開始時に復帰圧を供給する信号ソレノイドバルブからなるので、摩擦係合要素の係脱制御(特に解放制御)の開始時に信号ソレノイドバルブが復帰圧を供給するように制御することで、リニアソレノイドバルブによる係合圧の調圧制御状態に戻すことができる。
【0021】
請求項4に係る本発明によると、信号ソレノイドバルブは、複数のリニアソレノイドバルブにそれぞれ対応する複数の切換えバルブに対して、復帰圧を共通して供給し得るので、信号ソレノイドバルブの本数を1本にすることができ、全ての切換えバルブに対してそれぞれ信号ソレノイドバルブを配設する場合に比して、本油圧制御装置のコンパクト化を可能とすることができる。また、特に多段式自動変速機にあっては、変速が判断された際、摩擦係合要素の掴み換えによる変速を行うが、この場合には各摩擦係合要素で係脱制御(解放制御と係合制御)が同時期に開始されるため、1本の信号ソレノイドバルブによって複数の切換えバルブを第1位置に同時期に復帰させることを可能とすることができる。
【0022】
請求項5に係る本発明によると、他方のリニアソレノイドバルブから摩擦係合要素の係合時に出力される係合圧を、一方のリニアソレノイドバルブに対応する切換えバルブの復帰圧として供給するので、例えば低速段側の変速段から高速段側の変速段に切換る際、或いは高速段側の変速段から低速段側の変速段に切換った後にあって、完全係合していた一方の摩擦係合要素の解放が必要となるタイミングで、他方の摩擦係合要素用の係合圧の上昇で、切換えバルブが第2位置に復帰されるため、その解放する摩擦係合要素用の係合圧のリニアソレノイドバルブによる滑らかな調圧制御を可能とすることができる。そして、他方のリニアソレノイドバルブの係合圧を復帰圧として用いることができるので、別途に信号ソレノイドバルブを配設することを不要とすることができ、本油圧制御装置のコンパクト化も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用し得る自動変速機を示すスケルトン図。
【図2】本自動変速機の係合表。
【図3】本発明に係る自動変速機並びに制御部の概略構成を示すブロック図。
【図4】第1の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ及びC−1リレーバルブの第1位置を示す油圧回路図。
【図5】第1の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ及びC−1リレーバルブの第2位置を示す油圧回路図。
【図6】第1の実施の形態に係るクラッチ係脱制御を示すフローチャートで、(a)は係合制御の図、(b)は解放制御の図。
【図7】第1の実施の形態に係るクラッチ係脱制御及び係合完了時を示すタイムチャート。
【図8】第2の実施の形態に係る油圧制御装置を示す油圧回路図。
【図9】第3の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ及びC−1リレーバルブの第1位置を示す油圧回路図。
【図10】第3の実施の形態に係るリニアソレノイドバルブ及びC−1リレーバルブの第2位置を示す油圧回路図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図1乃至図7に沿って説明する。
【0025】
[自動変速機の概略構成]
まず、本発明を適用し得る自動変速機3の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFFタイプ(フロントエンジン、フロントドライブ)の車両に用いて好適な多段変速を可能とする自動変速機3は、エンジン2(図3参照)に接続し得る自動変速機の入力軸8を有しており、該入力軸8の軸方向を中心としてトルクコンバータ4と、自動変速機構5とを備えている。
【0026】
上記トルクコンバータ4は、自動変速機3の入力軸8に接続されたポンプインペラ4aと、作動流体を介して該ポンプインペラ4aの回転が伝達されるタービンランナ4bとを有しており、該タービンランナ4bは、上記入力軸8と同軸上に配設された上記自動変速機構5の入力軸10に接続されている。また、該トルクコンバータ4には、ロックアップクラッチ7が備えられており、該ロックアップクラッチ7が係合されると、上記自動変速機3の入力軸8の回転が自動変速機構5の入力軸10に直接伝達される。
【0027】
上記自動変速機構5には、入力軸10上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。
【0028】
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
【0029】
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、ミッションケース9に一体的に固定されている不図示のボス部に接続されて回転が固定されている。また、上記リングギヤR1は、上記入力軸10の回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっている。更に上記キャリヤCR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、クラッチC−1(摩擦係合要素)及びクラッチC−3(摩擦係合要素)に接続されている。
【0030】
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、バンドブレーキからなるブレーキB−1(摩擦係合要素)に接続されてミッションケース9に対して固定自在となっていると共に、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
【0031】
更に、上記キャリヤCR2は、入力軸10の回転が入力されるクラッチC−2(摩擦係合要素)に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチF−1及びブレーキB−2(摩擦係合要素)に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース9に対して一方向の回転が規制されると共に、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、カウンタギヤ11に接続されており、該カウンタギヤ11は、不図示のカウンタシャフト、ディファレンシャル装置を介して駆動車輪に接続されている。
【0032】
上記のように構成された自動変速機3は、図2に示す作動表のように前進1速段〜前進6速段及び後進段において、各クラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1〜B−2、ワンウェイクラッチF−1が作動することにより、良好なステップ比をもって変速段のギヤ比を形成する。また、これらの複数のクラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1〜B−2同士を掴み換えすることで各変速制御が実行され、各変速段において前進1速段(低速段)の駆動時を除き、各クラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1〜B−2のうちの2つが係合されて各変速段が達成される。
【0033】
[自動変速機の制御装置の構成]
図3に示すように、本自動変速機3は、制御部(ECU)100を有しており、該制御部100には、出力回転速度(車速)センサ111、アクセル開度センサ112などが接続されている。該制御部100には、変速マップmapを有する変速制御手段101、復帰指令手段102が備えられて構成されている。
【0034】
上記変速マップmapには、予め各変速段に対する変速点(アップシフト点及びダウンシフト点)が、アクセル開度と出力回転速度とに対応付けられて記録されている。変速制御手段101は、走行中(イグニッションON状態)において、随時変速マップmapを参照し、アクセル開度と出力回転速度とに基づき変速点を検知すると、変速開始を判断し、各クラッチC−1〜C−3やブレーキB−1〜B−2の油圧サーボに供給する係合圧を調圧制御する各リニアソレノイドバルブSL1〜SL4(例えば図8参照)に調圧指令を出力し、図2の係合表に沿って、摩擦係合要素同士の掴み換え変速を行う。
【0035】
なお、例えば運転者がシフトレバー等により変速段を選択し得るように構成された車両にあって、運転者が変速段を選択指示した場合には、上記変速制御手段101は、例えば運転者がシフトレバー等により指示した変速段への変速開始を判断し、それに基づき各リニアソレノイドバルブに調圧指令を出力することになる。
【0036】
上記復帰指令手段102は、上記変速制御手段101により変速開始が判断された際に、詳しくは後述する信号ソレノイドバルブS1に指令し、復帰圧PS1を出力するように制御する。
【0037】
[油圧回路の構成]
ついで、本発明に係る油圧制御装置1における本発明の要部について図4及び図5に沿って説明する。本油圧制御装置1には、図4及び図5に示すように、ライン圧発生部20と、リニアソレノイドバルブSL1と、C−1リレーバルブ(切換えバルブ)21と、信号ソレノイドバルブ(復帰圧供給手段)S1とを備え、自動変速機構5の内部に配設されたクラッチC−1の油圧サーボ31に油圧を給排し得るように構成されている。
【0038】
上記ライン圧発生部20は、具体的には図示を省略しているが、例えばエンジン2と連動して駆動されるオイルポンプと、スロットル開度等に応じて制御圧を出力するリニアソレノイドバルブ(いわゆるSLT)と、該制御圧に基づきオイルポンプから排出された油圧をライン圧Pに調圧するレギュレータバルブと、を有して構成されており、油路a1,a2,a3にライン圧Pを供給する。なお、該ライン圧Pは、不図示のシフトレバーに連動して切換えられるマニュアルバルブを介して供給されるレンジ圧(Dレンジ圧やRレンジ圧)であってもよいが、本明細書中では、レンジ圧もライン圧Pと同圧であるので、便宜的にレンジ圧を含めて「ライン圧P」という。
【0039】
一方、上記リニアソレノイドバルブSL1は、供給される電気信号に応じてリニア駆動されるプランジャ(不図示)を有するソレノイド部SL1Aと、該プランジャと内蔵されたスプリングとの付勢力の均衡によって位置制御されるスプール(不図示)を有するバルブ部SL1Bと、を備えて構成されており、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなる。
【0040】
該リニアソレノイドバルブSL1のバルブ部SL1Bは、油路b1を介してライン圧Pを入力する入力ポートSL1aと、該ライン圧Pを調圧して油路c1に係合圧PC1として出力する出力ポートSL1bと、該係合圧PC1を油路c2を介してフィードバック入力するフィードバックポートSL1cと、ドレーンポートEXと、を有している。
【0041】
即ち、該リニアソレノイドバルブSL1は、非通電時に入力ポートSL1aと出力ポートSL1bとを遮断して非出力状態となり、上記制御部100の変速制御手段101からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSL1aと出力ポートSL1bとの連通する量(開口量)を該指令値に応じて大きくし、つまり指令値に応じた係合圧PC1を出力し得るように構成されている。
【0042】
C−1リレーバルブ(切換えバルブ)21は、スプール21pと、該スプール21pを図中下方に付勢するスプリング21sとを有していると共に、該スプール21pの図中下方に第1油室21aと、スプール21pの図中上方に第2油室21bと、を有しており、さらに、入力ポート21cと、出力ポート21dと、入力ポート21eと、出力ポート21fと、入力ポート21gと、を有して構成されている。
【0043】
上記入力ポート21c及び入力ポート21gには、それぞれ油路a2,a3が接続されており、ライン圧Pが入力される。上記出力ポート21dは、油路b1に接続されており、上記リニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aに接続されている。上記入力ポート21eは、油路c1に接続されており、上記リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bに接続されている。上記出力ポート21fは、油路d1に接続されており、クラッチC−1の油圧サーボ31に接続されている。そして、上記第1油室21aは、油路d2を介して上記出力ポート21fに接続されており、上記第2油室21bは、油路e1を介して信号ソレノイドバルブS1に接続されている。
【0044】
[本油圧制御装置の動作]
ついで、本油圧制御装置1の動作について図4乃至図7に沿って説明する。上記変速制御手段101の変速判断に基づき、クラッチC−1が解放されている状態から係合制御が行われる場合(例えば前進1速段の形成)にあっては、まず、図6(a)に示すように、変速制御手段101からリニアソレノイドバルブSL1に対して、クラッチC−1の係合指令がある(S11)。この際、図4に示すように、当初はスプール21pが下方位置(第1位置)にあって、油路a1,a2を介してライン圧PがC−1リレーバルブ21の入力ポート21cに入力されると共に、出力ポート21dから油路b1を介してリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aにライン圧Pが供給される(S12)。
【0045】
続いて、変速制御手段101はリニアソレノイドバルブSL1に指令して、係合圧PC1の上昇を開始する(S13)。この係合圧PC1は、リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bから出力され、油路c1、C−1リレーバルブ21の入力ポート21e及び出力ポート21f、油路d1を介してクラッチC−1の油圧サーボ31に供給される。また同時に、該係合圧PC1は油路d2を介して第1油室21aにも供給される。
【0046】
この係合圧PC1の上昇は、図7に示すように、まず時点t1から時点t2までの所定時間の間、急上昇されてファストフィル(即ち油圧サーボの充満、ピストンと摩擦板とのガタ詰め)が行われ、時点t2から時点t3までの所定時間の間、クラッチC−1の摩擦板がスリップ開始するまで係合圧PC1を低圧で待機させる待機制御が行われ、時点t3から所定勾配で係合圧PC1を上昇させてクラッチC−1の係合を終了させる係合終了制御が行われる(S14)。
【0047】
そして、時点t4において、クラッチC−1の係合が終了し、係合圧PC1が所定圧Pa(つまり係脱制御時における係合圧よりも大きく、係合完了時における係合圧よりも小さく設定された圧)よりも大きくなると(S15のYES)、図4に示すC−1リレーバルブ21において、第1油室21aの係合圧PC1がスプリング21sの付勢力に打勝って、図5に示すように、スプール21pが上方位置である第2位置に切換えられる(S16)。
【0048】
すると、C−1リレーバルブ21において、入力ポート21cと出力ポート21dとの間が遮断され、かつ入力ポート21eと出力ポート21fとの間が遮断されて、リニアソレノイドバルブSL1に対するライン圧Pの供給、及びリニアソレノイドバルブSL1から油圧サーボ31に対する係合圧PC1の供給が遮断されると共に、入力ポート21gと出力ポート21fとの間が連通され、ライン圧Pを油圧サーボ31に直接供給するようになり(S17)、つまりクラッチC−1の係合が完了する(係合完了制御)。またこの際、第1油室21aにはライン圧Pが供給され、C−1リレーバルブ21は第2位置にロックされた形となる。
【0049】
一般に、ライン圧Pを油圧サーボ31に供給して係合完了状態に制御する場合は、リニアソレノイドバルブSL1の出力を最大にしてライン圧PをリニアソレノイドバルブSL1を経由させて供給するが、本油圧制御装置1にあっては、上述のようにC−1リレーバルブ21がリニアソレノイドバルブSL1に対するライン圧Pの供給を遮断すると共に、直接的に油圧サーボ31にライン圧Pを供給するので、一般的なクラッチC−1の係合圧PC1の供給状態と何ら変わることなく、ライン圧Pを油圧サーボ31に供給する係合完了制御を行うことが可能である。
【0050】
そして、この際は、リニアソレノイドバルブSL1よりもバルブ径の小さいC−1リレーバルブ21において油圧が漏れることによる油圧損失が生じるものの、リニアソレノイドバルブSL1におけるライン圧Pの出力による比較的大きな油圧(図7参照)による長時間(即ちクラッチC−1の係合中である、前進1速段から前進4速段での走行中の時間)の油圧損失を抑える(無くす)ことが可能となる。
【0051】
また、この際は、リニアソレノイドバルブSL1によって調圧制御を行う必要がなくなるので、該リニアソレノイドバルブSL1に対する電力供給も遮断することができ、消費電力の低減も図ることができ、総じて車両の燃費向上を図ることができる。
【0052】
次に、クラッチC−1の解放制御について説明する。上記変速制御手段101の変速判断に基づき、クラッチC−1が係合されている状態から解放制御が行われる場合(例えば前進4速段から前進5速段への変速)にあって、当初は、図5及び図6(b)に示すように、C−1リレーバルブ21がライン圧Pを直接クラッチC−1の油圧サーボ31に供給している状態である(S21)。
【0053】
図7に示す時点t5において、変速制御手段101が変速判断に基づきクラッチC−1の解放指令を行うと(S22)、それを受けた復帰指令手段102は、信号ソレノイドバルブS1に復帰圧PS1の供給開始を指令する(S23)。これにより、C−1リレーバルブ21は、第2油室21bに復帰圧PS1が入力されるため、スプリング21sの付勢力と相俟って第1油室21aのライン圧Pに打勝って、スプール21pを図4に示す下方位置である第1位置に切換える。これにより、再度、ライン圧PがC−1リレーバルブ21の入力ポート21c、出力ポート21d、油路b1を介してリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aに供給される(S24)。つまり、リニアソレノイドバルブSL1による係合圧PC1を制御して油圧サーボ31に供給する、一般的な油圧制御装置と同様な状態に復帰する。
【0054】
その後、変速制御手段101はリニアソレノイドバルブSL1に指令して、係合圧PC1の下降を開始し、この下降された係合圧PC1は、リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートSL1bから、油路c1、C−1リレーバルブ21の入力ポート21e、出力ポート21f、油路d1を介してクラッチC−1の油圧サーボ31に供給される。
【0055】
この係合圧PC1の下降は、図7に示すように、時点t5から時点t6まで段階的に下降され、これによって、クラッチC−1は急解放によるショックを生じることなく、徐々に解放される(S24)。そして、時点t6において、リニアソレノイドバルブSL1により係合圧PC1が0にされ、クラッチC−1の解放が完了する(S26)。
【0056】
なお、上記信号ソレノイドバルブS1による復帰圧PS1の出力は、次のクラッチC−1の完全係合制御(つまり時点t4)までに非出力とされれば良いが、特に係合圧PC1が所定圧Paよりも下がった時点(時点t5のすぐ後)であれば、どのタイミングで非出力に切換えてもよい。
【0057】
[第1の実施の形態のまとめ]
以上のように第1の実施の形態に係る油圧制御装置1によると、ライン圧PをリニアソレノイドバルブSL1に供給すると共に、リニアソレノイドバルブSL1からの係合圧PC1を油圧サーボ31に供給する第1位置と、リニアソレノイドバルブSL1に対するライン圧Pの供給、及びリニアソレノイドバルブSL1から油圧サーボ31に対する係合圧PC1の供給を遮断すると共に、ライン圧Pを油圧サーボ31に供給する第2位置と、に切換えられるC−1リレーバルブ21を備えているので、例えばリニアソレノイドバルブSL1による係合圧PC1の調圧制御によって、クラッチC−1の滑らかな係脱制御(スリップ制御等)を行うことを可能とするものでありながら、クラッチC−1の係合完了時には、リニアソレノイドバルブSL1に対するライン圧Pを遮断すると共に、ライン圧PをクラッチC−1の油圧サーボ31に直接的に供給することができ、C−1リレーバルブ21よりも径が大きくて油圧損失が大きくなるはずのリニアソレノイドバルブSL1の油圧損失を抑えることができて、車両の燃費向上を図ることができる。
【0058】
また、例えば多段式自動変速機3にあって、本C−1リレーバルブ21のような切換えバルブを全てのリニアソレノイドバルブに対応するように配設し、かつ摩擦係合要素の係合完了時に第2位置に切換えるように構成することで、どの変速段であっても、各リニアソレノイドバルブの係合圧の最高出力状態(ライン圧出力状態)を無くすことができる。これにより、設計上、オイルポンプの吐出容量を低減することができるので、オイルポンプを小型化することができ、自動変速機3のコンパクト化を可能にすると共に、当該オイルポンプを採用した自動変速機3を搭載した車両の燃費向上を図ることができる。また、設計上、各リニアソレノイドバルブの出力性能も小さくできるので、リニア駆動するソレノイド部の小型化も図ることでき、自動変速機3のコンパクト化を可能にすることができる。
【0059】
更に、C−1リレーバルブ21が、スプール21pを第1位置に付勢するスプリング21sと、係合圧PC1を入力し、該係合圧PC1によりスプリング21sの付勢力に抗してスプール21pを第2位置に押圧させる第1油室21aと、復帰圧PS1を入力し、該復帰圧PS1によりスプール21pを第1位置に押圧させる第2油室21bと、を有していると共に、スプリング21sの付勢力が、クラッチC−1の係脱制御時における係合圧PC1よりも大きく、クラッチC−1の係合完了時における係合圧よりも小さく設定されている(即ち所定圧Paに設定されている)ので、クラッチC−1の係脱制御(特に係合制御)を行っている間は、C−1リレーバルブ21が第1位置にあって、リニアソレノイドバルブSL1による係合圧PC1の調圧制御を可能とするものでありながら、クラッチC−1の係合完了時には、C−1リレーバルブ21が第2位置となって、リニアソレノイドバルブSL1の油圧損失を抑えることを可能とすることができる。更に、復帰圧PS1によりC−1リレーバルブを第1位置に切換えることができるので、クラッチC−1の係脱制御(特に解放制御)を行う際には、リニアソレノイドバルブSL1による係合圧PC1の調圧制御を可能とすることができる。
【0060】
そして、信号ソレノイドバルブS1が、クラッチC−1の係脱制御の開始時に復帰圧PS1を供給するバルブからなるので、クラッチC−1の係脱制御(特に解放制御)の開始時に信号ソレノイドバルブS1が復帰圧PS1を供給するように制御することで、リニアソレノイドバルブSL1による係合圧PC1の調圧制御状態に戻すことを可能とすることができる。
【0061】
なお、本第1の実施の形態においては、クラッチC−1の係合圧PC1を調圧制御するリニアソレノイドバルブSL1に対応してC−1リレーバルブ21を設けたものを説明したが、例えばクラッチC−2の係合圧PC2を調圧制御するリニアソレノイドバルブSL2、クラッチC−3の係合圧PC3を調圧制御するリニアソレノイドバルブSL3、ブレーキB−1の係合圧PB1を調圧制御するリニアソレノイドバルブSL4などに対して、同様にライン圧の供給・遮断を切換えられる切換えバルブを配設することが可能である。これら複数のリニアソレノイドバルブのうちの少なくとも1本だけであっても油圧損失を抑えることが可能となれば、オイルポンプの小型化や車両の燃費向上に寄与することになる。
【0062】
<第2の実施の形態>
つづいて、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について図8に沿って説明する。なお、本第2の実施の形態の説明においては、上記第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
図8に示すように、本第2の実施の形態に係る油圧制御装置1は、複数有する油圧サーボ31〜35に対してそれぞれ係合圧を供給し得るリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4を複数有し、それらリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4に対応してC−1リレーバルブ21、C−2リレーバルブ(切換えバルブ)22、C−3リレーバルブ(切換えバルブ)23、B−1リレーバルブ(切換えバルブ)24を複数有しており、各リレーバルブ21〜24を復帰させる信号ソレノイドバルブS1を共通させるように設けたものである。
【0064】
[油圧回路の構成]
即ち、リニアソレノイドバルブSL1、C−1リレーバルブ21、油圧サーボ31、信号ソレノイドバルブS1の接続構成や動作は第1の実施の形態と同様である。なお、信号ソレノイドバルブS1の入力ポートS1aには、ライン圧Pを一定圧に調圧してモジュレータ圧Pmodとして出力するモジュレータバルブ29が接続されており、出力ポートS1bから油路e1〜e5には、復帰圧PS1が出力自在となっている。
【0065】
同様に、リニアソレノイドバルブSL2は、ソレノイド部SL2Aとバルブ部SL2Bとを備えて構成されており、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、該リニアソレノイドバルブSL2のバルブ部SL2Bは、油路b2を介してライン圧Pを入力する入力ポートSL2aと、該ライン圧Pを調圧して油路c3に係合圧PC2として出力する出力ポートSL2bと、該係合圧PC2を油路c4を介してフィードバック入力するフィードバックポートSL2cと、ドレーンポートEXと、を有している。
【0066】
C−2リレーバルブ(切換えバルブ)22は、スプール22pと、該スプール22pを図中下方に付勢するスプリング22sとを有していると共に、該スプール22pの図中下方に第1油室22aと、スプール22pの図中上方に第2油室22bと、を有しており、さらに、入力ポート22cと、出力ポート22dと、入力ポート22eと、出力ポート22fと、入力ポート22gと、を有して構成されている。
【0067】
上記入力ポート22c及び入力ポート22gには、それぞれ油路a4,a5が接続されており、ライン圧Pが入力される。上記出力ポート22dは、油路b2に接続されており、上記リニアソレノイドバルブSL2の入力ポートSL2aに接続されている。上記入力ポート22eは、油路c3に接続されており、上記リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートSL2bに接続されている。上記出力ポート22fは、油路d3に接続されており、クラッチC−2の油圧サーボ32に接続されている。そして、上記第1油室22aは、油路d4を介して上記出力ポート22fに接続されており、上記第2油室22bは、油路e2,e5を介して信号ソレノイドバルブS1に接続されている。
【0068】
同様に、リニアソレノイドバルブSL3は、ソレノイド部SL3Aとバルブ部SL3Bとを備えて構成されており、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、該リニアソレノイドバルブSL3のバルブ部SL3Bは、油路b3を介してライン圧Pを入力する入力ポートSL3aと、該ライン圧Pを調圧して油路c5に係合圧PC3として出力する出力ポートSL3bと、該係合圧PC3を油路c6を介してフィードバック入力するフィードバックポートSL3cと、ドレーンポートEXと、を有している。
【0069】
C−3リレーバルブ(切換えバルブ)23は、スプール23pと、該スプール23pを図中下方に付勢するスプリング23sとを有していると共に、該スプール23pの図中下方に第1油室23aと、スプール23pの図中上方に第2油室23bと、を有しており、さらに、入力ポート23cと、出力ポート23dと、入力ポート23eと、出力ポート23fと、入力ポート23gと、を有して構成されている。
【0070】
上記入力ポート23c及び入力ポート23gには、それぞれ油路a6,a7が接続されており、ライン圧Pが入力される。上記出力ポート23dは、油路b3に接続されており、上記リニアソレノイドバルブSL3の入力ポートSL3aに接続されている。上記入力ポート23eは、油路c5に接続されており、上記リニアソレノイドバルブSL3の出力ポートSL3bに接続されている。上記出力ポート23fは、油路d5に接続されており、油路d5には不図示の振分けバルブが介在され、変速制御手段101の指令に基づき振分けバルブで振分けられる形で、クラッチC−3の油圧サーボ33又はブレーキB−2の油圧サーボ35に接続されている。そして、上記第1油室23aは、油路d6を介して上記出力ポート23fに接続されており、上記第2油室23bは、油路e3,e5を介して信号ソレノイドバルブS1に接続されている。
【0071】
同様に、リニアソレノイドバルブSL4は、ソレノイド部SL4Aとバルブ部SL4Bとを備えて構成されており、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、該リニアソレノイドバルブSL4のバルブ部SL4Bは、油路b4を介してライン圧Pを入力する入力ポートSL4aと、該ライン圧Pを調圧して油路c7に係合圧PB1として出力する出力ポートSL4bと、該係合圧PB1を油路c8を介してフィードバック入力するフィードバックポートSL4cと、ドレーンポートEXと、を有している。
【0072】
B−1リレーバルブ(切換えバルブ)24は、スプール24pと、該スプール24pを図中下方に付勢するスプリング24sとを有していると共に、該スプール24pの図中下方に第1油室24aと、スプール24pの図中上方に第2油室24bと、を有しており、さらに、入力ポート24cと、出力ポート24dと、入力ポート24eと、出力ポート24fと、入力ポート24gと、を有して構成されている。
【0073】
上記入力ポート24c及び入力ポート24gには、それぞれ油路a8,a9が接続されており、ライン圧Pが入力される。上記出力ポート24dは、油路b4に接続されており、上記リニアソレノイドバルブSL4の入力ポートSL4aに接続されている。上記入力ポート24eは、油路c7に接続されており、上記リニアソレノイドバルブSL4の出力ポートSL4bに接続されている。上記出力ポート24fは、油路d7に接続されており、ブレーキB−1の油圧サーボ34に接続されている。そして、上記第1油室24aは、油路d8を介して上記出力ポート24fに接続されており、上記第2油室24bは、油路e4,e5を介して信号ソレノイドバルブS1に接続されている。
【0074】
[本油圧制御装置の動作]
以上のような第2の実施の形態に係る油圧制御装置1は、変速制御手段101が変速を判断して変速制御を行う度、即ち摩擦係合要素同士の掴み換え変速を行う度に、復帰指令手段102の指令に基づき信号ソレノイドバルブS1が復帰圧PS1を出力し、各リニアソレノイドバルブSL1〜SL4による係合圧の調圧制御(解放制御及び係合制御)を行って、各変速段において係合される摩擦係合要素の油圧サーボ(図2参照)にライン圧Pが供給される状態になると共に、その摩擦係合要素に対応する切換えバルブ21〜24のうちの2つ(前進1速段ではC−1リレーバルブのみの場合あり)が第2位置に切換えられて、油圧サーボに直接的にライン圧Pを供給し、対応するリニアソレノイドバルブに対するライン圧Pの供給を遮断する。
【0075】
即ち、第1の実施の形態においては、例えば前進1速段から前進4速段までにあってクラッチC−1の係合中であれば、C−1リレーバルブ21を第2位置から第1位置に復帰する必要がなかったが、本第2の実施の形態にあっては、変速の度に各切換えバルブ21〜24が第1位置に復帰されることになる。そのため、例えば前進1速段から前進2速段への変速、前進2速段から前進3速段への変速、前進3速段から前進4速段への変速などにあって、クラッチC−1を係合完了状態に維持するため、リニアソレノイドバルブSL1からライン圧Pを出力する必要が生じる場合もあるが、変速時間は、所定変速段での走行中に比して圧倒的に短時間であり、総じて油圧損失を低減することができるので、車両の燃費向上が可能となる。
【0076】
[第2の実施の形態のまとめ]
以上のように第2の実施の形態に係る油圧制御装置1によると、信号ソレノイドバルブS1は、複数のリニアソレノイドバルブSL1〜SL4にそれぞれ対応する複数の切換えバルブ21〜24に対して、復帰圧PS1を共通して供給し得るので、信号ソレノイドバルブS1の本数を1本にすることができ、全ての切換えバルブ21〜24に対してそれぞれ信号ソレノイドバルブを配設する場合に比して、本油圧制御装置1のコンパクト化を可能とすることができる。また、特に多段式自動変速機3にあっては、変速が判断された際、摩擦係合要素の掴み換えによる変速を行うが、この場合には各摩擦係合要素で係脱制御(解放制御と係合制御)が同時期に開始されるため、1本の信号ソレノイドバルブS1によって複数の切換えバルブ21〜24を第1位置に同時期に復帰させることを可能とするものである。
【0077】
なお、以上説明した第2の実施の形態における他の作用・効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
<第3の実施の形態>
つづいて、上記第1の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態について図9及び図10に沿って説明する。なお、本第3の実施の形態の説明においては、上記第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
図9及び図10に示すように、本第3の実施の形態に係る油圧制御装置1は、信号ソレノイドバルブS1による復帰圧PS1に代えて、リニアソレノイドバルブ(復帰圧供給手段)SL2が出力する係合圧PC2を入力するように変更したものである。それ以外の油圧回路構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0080】
ところで、上述のように本自動変速機3にあっては、前進1速段から前進4速段までの低速段側の複数変速段でクラッチC−1が係合され、前進4速段から前進6速段までの高速段側の複数変速段でクラッチC−2が係合される(図2参照)。
【0081】
上記のように構成された第3の実施の形態に係る油圧制御装置1にあっては、例えば前進1速段の形成時にクラッチC−1の係合制御が終わって係合完了制御に移行すると(図7の時点t4参照)、C−1リレーバルブ21が図9に示す第1位置から図10に示す第2位置に切換り、例えば前進1速段から前進3速段までの間は、リニアソレノイドバルブSL1に対するライン圧Pの供給を遮断すると共に、クラッチC−1の油圧サーボ31(即ち、低速段側の複数変速段で係合される摩擦係合要素用の油圧サーボ)に直接的にライン圧Pを供給する状態となり、上述したように油圧損失の低減を図ることが可能となる。
【0082】
そして、例えば前進3速段から前進4速段の変速時にあって、リニアソレノイドバルブSL2からクラッチC−2用の係合圧PC2が出力されると、C−1リレーバルブ21の第2油室21bに該係合圧PC2が復帰圧として供給されて、図10に示す第2位置から図9に示す第1位置に切換えられる(復帰される)。この前進4速段の間は、リニアソレノイドバルブSL1によってクラッチC−1の油圧サーボ31に対してライン圧Pを出力することになるが、例えば前進4速段から前進5速段への変速に際して、リニアソレノイドバルブSL1により係合圧PC1を徐々に下降する解放制御を行うことが可能となる。
【0083】
従って、クラッチC−1とクラッチC−2とを同時に係合する状態にあっては、リニアソレノイドバルブSL1によるライン圧Pの出力が必要となるものの、クラッチC−2を係合しないクラッチC−1だけを係合する他の変速段(前進1〜3速段)にあっては、リニアソレノイドバルブSL1によるライン圧Pの出力が不要となり、その分、油圧損失を低減することが可能となる。
【0084】
なお、本第3の実施の形態においては、リニアソレノイドバルブSL1に対応して設けられたC−1リレーバルブ21をリニアソレノイドバルブSL2から出力される係合圧PC2で第2位置から第1位置に復帰させるものを説明したが、リニアソレノイドバルブSL2に対応してC−2リレーバルブ22を設け、リニアソレノイドバルブSL1から出力される係合圧PC1で第2位置から第1位置に復帰させるように構成することも可能である。この場合は、前進4速段(クラッチC−2の係合完了時)において、C−2リレーバルブ22が第1位置に切換えられるため、リニアソレノイドバルブSL2からライン圧Pを出力する必要があるが、前進5速段及び前進6速段においては、C−2リレーバルブ22が第2位置に切換えられるので、クラッチC−2の油圧サーボ32(即ち、高速段側の複数変速段で係合される摩擦係合要素用の油圧サーボ)に直接的にライン圧Pを供給する状態となると共に、リニアソレノイドバルブSL2に対するライン圧Pの供給を遮断することができ、油圧損失の低減が図られる。
【0085】
[第3の実施の形態のまとめ]
以上のように第3の実施の形態に係る油圧制御装置1によると、リニアソレノイドバルブSL2からクラッチC−2の係合時に出力される係合圧PC2を、リニアソレノイドバルブSL1に対応するC−1リレーバルブ21の復帰圧として供給するので、例えば前進1速段から前進3速段のうちの変速段から前進4速段に切換った後にあって、完全係合していたクラッチC−1の解放が必要となるタイミングで、クラッチC−2用の係合圧PC2の上昇で、C−1リレーバルブ21が第2位置に復帰されるため、その解放するクラッチC−1用の係合圧PC1のリニアソレノイドバルブSL1による滑らかな調圧制御を可能とすることができる。そして、リニアソレノイドバルブSL2の係合圧PC2を復帰圧として用いることができるので、別途に信号ソレノイドバルブを配設することを不要とすることができ、本油圧制御装置のコンパクト化も図ることができる。
【0086】
また反対に、リニアソレノイドバルブSL1からクラッチC−1の係合時に出力される係合圧PC1を、リニアソレノイドバルブSL2に対応するC−2リレーバルブ22の復帰圧として供給することで、例えば前進5速段から前進6速段のうちの変速段から前進4速段に切換った後にあって、完全係合していたクラッチC−2の解放が必要となるタイミングで、クラッチC−1用の係合圧PC1の上昇で、C−2リレーバルブ22が第2位置に復帰されるため、その解放するクラッチC−2用の係合圧PC2のリニアソレノイドバルブSL2による滑らかな調圧制御を可能とすることができる。そして、リニアソレノイドバルブSL1の係合圧PC1を復帰圧として用いることができるので、別途に信号ソレノイドバルブを配設することを不要とすることができ、本油圧制御装置のコンパクト化も図ることができる。
【0087】
なお、以上説明した第3の実施の形態における他の作用・効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0088】
なお、以上説明した第1乃至第3の実施の形態においては、前進6速段及び後進段を達成し得る自動変速機3を油圧制御する油圧制御装置1を一例に説明したが、例えば前進8速段及び後進段を達成し得る自動変速機を油圧制御する油圧制御装置など、どのような自動変速機の油圧制御装置にあっても、本発明を適用し得ることは、勿論のことである。
【0089】
また、第1乃至第3の実施の形態においては、FFタイプなどのエンジン出力軸が横向きの車両に用いて好適な自動変速機を一例に説明したが、勿論、FRタイプなどのエンジン出力軸が縦向きの車両に用いて好適な自動変速機にあっても、本発明を適用することができる。
【0090】
また、第1乃至第3の実施の形態において説明した、ライン圧の遮断・供給を切換える切換えバルブ(C−1リレーバルブ等)のポート構成は、種々変更が可能であり、例えばライン圧を1つの入力ポートに入力し、リニアソレノイドバルブと油圧サーボとに振り分けるように切換えられるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0091】
1 油圧制御装置
3 自動変速機
20 ライン圧発生部
21 切換えバルブ(C−1リレーバルブ)
21a 第1油室
21b 第2油室
21p スプール
21s 付勢手段
22 切換えバルブ(C−2リレーバルブ)
23 切換えバルブ(C−3リレーバルブ)
24 切換えバルブ(B−1リレーバルブ)
31 油圧サーボ
32 油圧サーボ
33 油圧サーボ
34 油圧サーボ
35 油圧サーボ
C−1 摩擦係合要素(クラッチ)
C−2 摩擦係合要素(クラッチ)
C−3 摩擦係合要素(クラッチ)
B−1 摩擦係合要素(ブレーキ)
B−2 摩擦係合要素(ブレーキ)
S1 復帰圧供給手段、信号ソレノイドバルブ
SL1 リニアソレノイドバルブ
SL2 復帰圧供給手段、リニアソレノイドバルブ
SL3 リニアソレノイドバルブ
SL4 リニアソレノイドバルブ
ライン圧
S1 復帰圧
C1 係合圧
C2 復帰圧、係合圧
C3 係合圧
B1 係合圧
B2 係合圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン圧を発生するライン圧発生部と、供給される係合圧によって摩擦係合要素を係脱する油圧サーボと、前記ライン圧を調圧して前記油圧サーボに前記係合圧として出力し得るリニアソレノイドバルブと、を備えた自動変速機の油圧制御装置において、
前記ライン圧を前記リニアソレノイドバルブに供給すると共に、前記リニアソレノイドバルブからの前記係合圧を前記油圧サーボに供給する第1位置と、前記リニアソレノイドバルブに対する前記ライン圧の供給、及び前記リニアソレノイドバルブから前記油圧サーボに対する前記係合圧の供給を遮断すると共に、前記ライン圧を前記油圧サーボに供給する第2位置と、にスプールの位置が切換えられる切換えバルブを備えた、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記切換えバルブを前記第1位置に復帰させるための復帰圧を供給し得る復帰圧供給手段を備え、
前記切換えバルブは、前記スプールを前記第1位置に付勢する付勢手段と、前記係合圧を入力し、前記係合圧により前記付勢手段の付勢力に抗して前記スプールを前記第2位置に押圧させる第1油室と、前記復帰圧を入力し、前記復帰圧により前記スプールを前記第1位置に押圧させる第2油室と、を有し、
前記付勢手段の付勢力は、前記摩擦係合要素の係脱制御時における前記係合圧よりも大きく、前記摩擦係合要素の係合完了時における前記係合圧よりも小さく設定された、
ことを特徴とする請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記復帰圧供給手段は、前記摩擦係合要素の係脱制御の開始時に前記復帰圧を供給する信号ソレノイドバルブからなる、
ことを特徴とする請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記油圧サーボを、多段変速を可能にする複数の摩擦係合要素をそれぞれ係脱するように複数有し、
前記リニアソレノイドバルブを、前記複数の油圧サーボにそれぞれ供給する複数の係合圧を調圧するように複数有し、
前記切換えバルブを、前記複数のリニアソレノイドバルブにそれぞれ対応するように複数有し、
前記信号ソレノイドバルブは、前記複数の切換えバルブに対する前記復帰圧を共通して供給し得る、
ことを特徴とする請求項3記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項5】
前記油圧サーボを、多段変速のうちの低速段側の複数変速段で係合される摩擦係合要素用と、高速段側の複数変速段で係合される摩擦係合要素用と、で少なくとも2つ有し、
前記リニアソレノイドバルブを、前記2つの油圧サーボにそれぞれ供給する複数の係合圧を調圧するように少なくとも2つ有し、
前記切換えバルブを、前記2つのリニアソレノイドバルブの少なくとも一方に対応するように有し、
前記復帰圧供給手段は、前記摩擦係合要素の係合時に出力される係合圧を前記復帰圧として供給する他方の前記リニアソレノイドバルブからなる、
ことを特徴とする請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−50164(P2013−50164A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188368(P2011−188368)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】