説明

自動変速機用スイッチ

【課題】可動側接点と固定側接点との間で接触不良が生じにくい自動変速機用スイッチを提供する。
【解決手段】自動車の車両本体に固定される固定部材2には固定側接点10が設けられる。固定側接点10と対向配置され固定部材2によって回動自在に支持される可動部材5には、固定部材2との対向面に可動側接点11が設けられる。可動側接点11は固定側接点10との接触部位を可動部材5の移動方向に沿って断続的に有しており、可動部材5は自動変速機に連結されシフトレバーの切換操作に応じて回動することにより固定側接点10と可動側接点11とを接離させる。可動側接点11は可動部材5に対して位置固定され、固定部材2には固定側接点10を可動側接点11側にばね付勢するコイルばね17が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じて接点が接離する自動変速機用スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動変速機を備えた自動車(所謂オートマチック車)では、運転状況等に応じて、シフトレバーの切換操作により、たとえばパーキングレンジ(以下、Pレンジという)、リバースレンジ(以下、Rレンジという)、ニュートラルレンジ(以下、Nレンジという)、ドライブレンジ(以下、Dレンジという)、2速レンジ、1速レンジ(以下、Lレンジという)といった複数のレンジから1つのレンジを選択可能となっている。この種の自動車には、選択されたレンジに応じて接点が接離する自動変速機用スイッチが備わっている。
【0003】
この自動変速機用スイッチ1は、たとえば図11に示すように自動車の車両本体(図示せず)に固定される固定部材2と、固定部材2の一部に貫設された軸受孔3に枢支されるシャフト4と、シャフト4に固定されることで固定部材2に対してシャフト4の長手方向に沿う中心軸を中心(回動軸)として回動自在に支持される可動部材5とを備えている。可動部材5は、自動変速機(図示せず)に連結されており、シャフト4がシフトレバー(図示せず)の切換操作に応じて軸受孔3内で回動することにより固定部材2に対して回動しレンジを切り換える。
【0004】
固定部材2における可動部材5との対向面には図12に示すように固定側接点10が配設され、可動部材5における固定部材2との対向面には固定側接点10に接離する可動側接点11が配設される。固定側接点10は可動側接点11との接触部位を可動部材5の移動方向に沿って断続的に有しており、可動側接点11と固定側接点10とは、可動部材5がシフトレバーの切換操作に応じて回動することにより接離する。
【0005】
この種の自動変速機用スイッチ1においては、固定側接点10と可動側接点11との間の接圧を確保するために、通常、可動側接点11を固定側接点10側にばね付勢するばね部材が可動部材5に設けられている。たとえば図11の自動変速機用スイッチ1では、可動側接点11を固定側接点10側に付勢する板ばね25が可動部材5に設けられている。
【特許文献1】米国特許第5736701号明細書(FIG.1,FIG.3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した自動変速機用スイッチ1では、可動部材5が自動変速機に連結されているので、車両の走行中などにエンジン等の振動を受けて自動変速機が振動していると、この振動が自動変速機から可動部材5に直接伝わる。可動部材5に伝わった自動変速機の振動がばね部材(板ばね25)を介して可動側接点11に伝播されると、この振動にばね部材の変形が追従できずに可動側接点11が固定側接点10から離れてしまうことがある。すなわち、自動変速機の振動がばね部材を介して可動側接点11に伝播されると、可動側接点11に所謂バウンスが発生して可動側接点11と固定側接点10との間で接触不良を生じる可能性がある。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、可動側接点と固定側接点との間で接触不良が生じにくい自動変速機用スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、自動車の車両本体に固定される固定部材と、固定部材の一表面に設けられた固定側接点と、固定部材の前記一表面に対向する形で配置され固定部材によって前記一表面に直交する回動軸を中心として回動自在に支持される可動部材と、可動部材における固定部材との対向面に設けられた可動側接点とを備え、固定側接点と可動側接点との一方が他方との接触部位を可動部材の移動方向に沿って断続的に有しており、可動部材が自動変速機に連結されシフトレバーの切換操作に応じて回動することにより固定側接点と可動側接点とを接離させる自動変速機用スイッチであって、可動側接点が、可動部材に対して位置固定されており、固定部材には、固定側接点を可動側接点側に付勢するばね部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、可動側接点が可動部材に対して位置固定されており、固定側接点を可動側接点側に付勢するばね部材は固定部材に設けられているので、可動側接点と固定側接点とが接触した状態で自動変速機の振動が可動部材に伝わっても、可動側接点は固定側接点と共に振動することとなり固定側接点から可動側接点が離れる可能性は低い。したがって、自動変速機の振動がばね部材を介して可動側接点に伝播される従来構成に比較して、可動側接点のバウンスによる接触不良を生じにくいという利点がある。なお、自動変速機の振動は固定部材に対して直接には伝わらないので、自動変速機からばね部材を介して固定側接点に伝播される振動は無視できる程度に小さく、固定側接点のバウンスによる接触不良は生じない。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記可動側接点が、前記可動部材と一体不可分に形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、可動側接点と可動部材とが一体不可分の関係にあるから、可動部材に対して別体の可動側接点を設ける場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記固定側接点は前記可動側接点に対して接離する接触子を有し、前記ばね部材が、接触子と前記固定部材との間に介在するコイルばねからなることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ばね部材がコイルばねからなるので、板ばねをばね部材として用いる場合に比較して、可動側接点と共に振動する固定側接点の振動を吸収するために小型のばね部材を用いることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記可動側接点が、前記固定側接点との接触面が平坦に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、可動側接点における固定側接点との接触面が平坦であるから、可動側接点と固定側接点とは面接触することとなり、可動部材の回動時においてばね部材のばね圧による固定側接点および可動側接点の摩耗量を低減することができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記可動部材のうち前記固定側接点と接触する部位には絶縁材料からなる絶縁リブが可動部材の移動方向に沿って固定側接点よりも小さい幅寸法で断続的に突設されており、前記可動側接点が、固定側接点と接触する部位であって絶縁リブを可動部材の移動方向に延長した領域と重複しない領域に、絶縁リブよりも低い接点リブが突設されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、可動側接点のうち固定側接点と接触する部位であって絶縁リブを可動部材の移動方向に延長した領域と重複しない領域に接点リブが突設されているから、固定側接点に対する絶縁リブの摺動時に絶縁リブの表面が削れて固定側接点に異物として付着することがあっても、可動側接点は接点リブによって固定側接点のうち前記異物が付着していない部位と接触することとなり、接触不良を回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、可動側接点が可動部材に対して位置固定されており、固定側接点を可動側接点側に付勢するばね部材は固定部材に設けられているので、可動側接点と固定側接点とが接触した状態で自動変速機の振動が可動部材に伝わっても、可動側接点は固定側接点と共に振動することとなり固定側接点から可動側接点が離れる可能性は低く、したがって、自動変速機の振動がばね部材を介して可動側接点に伝播される従来構成に比較して、可動側接点のバウンスによる接触不良を生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施形態1)
本実施形態の自動変速機用スイッチ1は、図1に示すように扇状に形成され自動車の車両本体(図示せず)に固定される固定部材2と、固定部材2の一部に貫設された軸受孔3に枢支されるシャフト4と、扇状に形成されシャフト4に固定されることで固定部材2に対してシャフト4の長手方向に沿う中心軸を中心(回動軸)として回動自在に支持される可動部材5とを備えている。なお、ここではシャフト4の長手方向の両端部は長手方向に直交する断面が矩形状に形成されており、可動部材5に形成された矩形状の固定孔6(図3(a)参照)にシャフト4の一端部が挿入される形で可動部材5にシャフト4が固定される。
【0020】
シャフト4はシフトレバー(図示せず)の切換操作に応じて軸受孔3内で回動するように構成され、これにより可動部材5は、シフトレバーの切換操作に応じて固定部材2に対して回動する。また、可動部材5は、シャフト4によって自動変速機(図示せず)に連結されており、固定部材2に対して回動することによりPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、2速レンジ、Lレンジの6つのレンジから1つのレンジを選択する。ここで、自動変速機は車両の走行中などにエンジン等の振動を受けて振動し、シャフト4によって自動変速機に連結された可動部材5には自動変速機から振動が直接伝わることがある。一方、固定部材2においては、シャフト4を枢支しているもののシャフト4に対して固定されているものではないので、自動変速機の振動が直接伝わることはなく、可動部材5に比べて自動変速機の振動の影響を受けにくい。
【0021】
固定部材2のうち可動部材5との対向面に隣接する外周面には一対の突起7が突設されており、両突起7の間には軸受孔3側にばね付勢されたローラ(図示せず)が配置され、可動部材5のうちローラが摺動する外周面には可動部材5の移動方向に沿って複数個のひだ突部8が突設されている。ここで、可動部材5を回動させた際に隣接する2つのひだ突部8の間にローラが嵌る位置毎に自動変速機のレンジが切り換わるように、ひだ突部8の間隔が設定されている。これにより、可動部材5が回動してレンジが切り換わる毎に隣接する2つのひだ突部8の間にローラが嵌って可動部材5が位置決めされることとなる。
【0022】
固定部材2のうち可動部材5との対向面となる一表面には、図1(a)に示すように凹所9が形成されており、この凹所9内に固定側接点10が収納されている。また、可動部材5のうち凹所9との対向部位には、固定側接点10に対して接離する可動側接点11が配設されている。詳しくは後述するが、可動側接点11は可動部材5の回動に伴って固定側接点10と接離する。
【0023】
しかして、自動変速機用スイッチ1は、シフトレバーの切換操作に応じて固定側接点10と可動側接点11とを接離させることで、選択されているレンジを表すポジション信号を信号系回路(図示せず)に出力してレンジ表示ランプ(図示せず)をオンオフしたり、エンジンスタータ(図示せず)への通電路をオンオフしたり、バックライト(図示せず)をオンオフしたりするのである。エンジンスタータへの通電路はPレンジおよびNレンジでオンとなり、バックライトはRレンジでオンとなる。固定側接点10と可動側接点11との接離状態に対応した接点出力は、固定部材2のうち可動部材5との対向面に隣接する外周面の一部に突設されたコネクタ12から取り出される。
【0024】
以下、固定側接点10および可動側接点11の具体的な構成について説明する。
【0025】
固定部材2においては、図2(a)に示すように複数本(ここでは6本)のリードフレーム13がインサート成形されており、これら各リードフレーム13の一端部はそれぞれ上記コネクタ12の端子を構成する。リードフレーム13の他端部は、図2(b)に示すように凹所9内に立設された仕切壁14によって仕切られた複数(ここでは6つ)の端子収納室15の底面にそれぞれ露出する。なお、固定部材2の成形時にリードフレーム13の位置ずれが生じないように、固定部材2の成形時には全てのリードフレーム13が一体に結合されており、固定部材2の成形後、固定部材2の適所に貫設された切除用孔16を通してリードフレーム13同士の連結部(図示せず)を切除することでリードフレーム13を分離する。
【0026】
各端子収納室15には、図1(a)に示すようにそれぞれ固定側接点10を構成する接触子19およびコイルばね17が配置され、各固定側接点10はそれぞれ端子収納室15の底面に露出したリードフレーム13に電気的に接続される。つまり固定側接点10はリードフレーム13ごとに設けられることで複数(ここでは6つ)設けられる。接触子19は、端子収納室15の底面に沿う断面が端子収納室15と略同じ形状に形成されており、端子収納室15の底面との対向面にコイルばね17の一端部が収まる凹部18が形成されている。これにより、接触子19はコイルばね17を介してリードフレーム13に電気的に接続されるとともに、コイルばね17を伸縮させながら端子収納室15の深さ方向に移動可能となる。ここで、コイルばね17は固定側接点10を端子収納室15の外側に付勢するばね部材として機能する。
【0027】
複数の固定側接点10は軸受孔3の半径方向に沿って配列されている。ここでは、隣接する固定側接点10同士が可動部材5の移動方向にずれて配置されるように、2列に配列されている。固定側接点10は、軸受孔3の半径方向に沿った幅寸法が軸受孔3の半径方向に沿ったピッチよりも大きく設定されているが、上述のように隣接する固定側接点10同士が可動部材5の移動方向にずれて配置されることにより、隣接する固定側接点10同士が互いに干渉することはない。
【0028】
一方、可動部材5においては、図3(a)に示すように固定部材2との対向面に1枚の導電板からなる可動側接点11が固着されている。可動側接点11は、図3(b)、(c)に示すように可動部材5との対向面に突設した複数個の結合突起20を可動部材5に貫通させ、各結合突起20の先端部をかしめることによって可動部材5に対して位置固定される。可動側接点11は固定孔6を中心とする扇状に形成され、半径方向の両端縁には、固定部材2側に突出し先端部が互いに離れる向きに延長された摺動リブ21が形成されている。摺動リブ21は、図1(a)のように固定部材2の凹所9内に挿入され、凹所9の内側面に形成された摺動爪22に係合することによって凹所9からの可動側接点11の抜け止めとして機能する。
【0029】
このように本実施形態の可動側接点11は1枚の導電板からなり、可動側接点11に同時に接触する固定側接点10同士を電気的に接続することでコネクタ12に接点出力を生じる。なお、図3の例では、可動側接点11における固定部材2側の表面において固定孔6を中心とする同心円状に複数の接点リブ23が突設されているが、以下では接点リブ23のない構成について先に説明し、接点リブ23を採用した例について後に説明する。
【0030】
また、可動側接点11のうち各固定側接点10と接触する部位には絶縁材料からなる絶縁リブ24が可動部材5の移動方向に沿って固定側接点10よりも小さい幅寸法でそれぞれ断続的に突設されている。具体的には、可動部材5を合成樹脂製とし、可動側接点11に設けた透孔(図示せず)を通して可動側接点11の表面から突出する形で絶縁リブ24が突設されている。ここに、1本の絶縁リブ24が1つの固定側接点10に対応するように、絶縁リブ24は可動側接点11の半径方向において固定側接点10と同一のピッチで形成されている。したがって、可動部材5を固定部材2に対して回動させると、固定側接点10の接触子19が絶縁リブ24の途切れた位置にある状態で固定側接点10と可動側接点11とが接触し、一方、固定側接点10の接触子19が絶縁リブ24に乗り上げた状態で固定側接点10と可動側接点11とが非接触になる。
【0031】
ここにおいて、絶縁リブ24は、図3(a)のように可動部材5の移動方向、つまり固定孔6を中心とする円弧に沿って、レンジが切り換わる位置毎に異なる組み合わせの固定側接点10が可動側接点11に接触するように所定のパターンで形成されている。要するに、たとえば図4(a)に示す状態では、軸受穴3側から数えて2番目、4番目の各固定側接点10が絶縁リブ24に乗り上げているので、軸受穴3側から数えて1番目、3番目、5番目、6番目の各固定側接点10が可動側接点11に接触して互いに導通することとなる。
【0032】
図4(a)の例では、可動側接点11に接点リブ23が設けられておらず、可動側接点11における固定側接点10との接触面は平坦に形成されている。したがって、図4(b)に示すように可動側接点11と固定側接点10とは面接触し、固定側接点10を押圧するコイルばね17のばね圧が固定側接点10における可動側接点11との接触面の全域に分散されるので、可動部材5の回動時においてコイルばね17のばね圧による固定側接点10および可動側接点11の摩耗量を低減することができるという利点がある。
【0033】
ところで、本実施形態の自動変速機用スイッチ1においては、上述のように可動側接点11が可動部材5に対して位置固定されており、固定部材2には固定側接点10を可動側接点11側に付勢するばね部材(コイルばね17)が設けられている。そのため、可動側接点11と固定側接点10とが接触した状態で可動部材5に連結された自動変速機から可動部材5に振動が直接伝わっても、可動側接点11は固定側接点10と共に振動することとなり固定側接点10から可動側接点11が離れる可能性は低い。
【0034】
したがって、自動変速機から可動部材5に伝わった振動がばね部材を介して可動側接点11に伝播される従来構成に比較して、可動側接点11のバウンスによる接触不良を生じにくいという利点がある。なお、自動変速機の振動は固定部材2に対して直接には伝わらないので、自動変速機からコイルばね17を介して固定側接点10に伝播される振動は無視できる程度に小さく、固定側接点10のバウンスによる接触不良は生じない。
【0035】
また、本実施形態では、ばね部材がコイルばね17からなるので、板ばねをばね部材として用いる場合に比較して、可動側接点11と共に振動する固定側接点10の振動を吸収するためのばね部材を小型化することができる。さらに、本実施形態のコイルばね17は、一端部が固定側接点11の凹部18に挿入され、他端部がリードフレーム13に接触しているだけであって、いずれの端部も固定側接点11や固定部材2に対して固定されていない。そのため、固定側接点11あるいは固定部材2に端部が固定されたばね部材を用いる場合に比べて、固定部材2と固定側接点11との間でコイルばね17が動きやすく、仮に固定部材2に何らかの振動が伝わったとしても、固定側接点11においてはこの振動の影響を受けにくくなる。
【0036】
次に、図5(a)に示すように接点リブ23が設けられた可動側接点11を採用した構成について説明する。図5(a)では、可動側接点11は、固定側接点10と接触する部位であって絶縁リブ24の幅方向の両側方となる部位にそれぞれ接点リブ23が設けられているので、絶縁リブ24を可動部材5の移動方向に延長した領域に接点リブ23が重複することはない。この接点リブ23は、可動部材5の移動方向において可動側接点11の両端間に亘って延長されており、且つ絶縁リブ24よりも低く形成されている。
【0037】
この構成によれば、可動側接点11は、図5(b)に示すように固定側接点10に対して一対の接点リブ23の先端を接触させることにより固定側接点10に接触する。ここで、固定側接点10は、隣接する一対の接点リブ23間に跨って接触する。そして、可動部材5が回動して固定側接点10が絶縁リブ24に乗り上げると、接点リブ23が固定側接点10から離れて固定側接点10と可動側接点11とが非接触となる。
【0038】
ここにおいて、固定側接点10に対する絶縁リブ24の摺動時に合成樹脂製の絶縁リブ24の表面が削れて固定側接点10に異物として付着することがある。この場合に、前記異物は固定側接点10における絶縁リブ24との接触部位に付着する。ただし、図5の構成では、固定側接点10は、絶縁リブ24との接触部位の両側方で接点リブ23によって可動側接点10と接触するので、可動側接点11は、固定側接点10のうち前記異物が付着する部位を避けて固定側接点10と接触することとなり、前記異物が固定側接点10と可動側接点11との間に介在することによる接触不良を回避することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、可動側接点11を1枚の導電板とした例を示したが、たとえばそれぞれ可動側接点11を構成する複数の導電部材を可動部材5に固着することにより、電気的に独立した複数の可動側接点11を構成するようにしてもよい。
【0040】
(実施形態2)
本実施形態の自動変速機用スイッチ1は、図6に示すように固定側接点10を可動側接点11側に付勢するばね部材としてコイルばね17に代えて板ばね25を用いた点が実施形態1の自動変速機用スイッチ1と相違する。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0041】
本実施形態では、図7に示すように帯状であって長手方向の一端部に接触子19が連続一体に形成され、固定部材2に取り付けるための固定片26が他端部に形成された板ばね25を用いている。固定部材2においては、図8に示すようにリードフレーム13の一部を露出させるフレーム孔27が凹部18の底壁に貫設されており、板ばね25は、このフレーム孔27内で図9に示すようにリードフレーム13に固定片26を重ねる形で固定片26とリードフレーム13とがリベット28によりかしめ結合されることにより、固定部材2に取り付けられるとともにリードフレーム13に対して電気的に接続される。板ばね25は固定片26から離れるほど可動側接点11に近づくようにリードフレーム13に沿ってコネクタ12側に延長されている。接触子19は、板ばね25の幅方向に板ばね25よりも幅広であって、可動側接点11側に凸となるJ字状に湾曲されている。
【0042】
なお、本実施形態においても、図6のように接点リブ23のない可動側接点11と、図9のように接点リブ23が設けられた可動側接点11とのいずれを採用してもよく、それぞれの可動側接点11を採用した場合の作用効果は実施形態1で説明した通りである。
【0043】
(実施形態3)
本実施形態の自動変速機用スイッチ1は、図10に示すように可動側接点11が可動部材5と一体不可分に形成されている点が実施形態1の自動変速機用スイッチ1と相違する。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0044】
すなわち、本実施形態では、可動部材5に固着される導電板が省略され、図10に示すように可動部材5における固定部材2の凹所9との対向面に高導電性めっきを施すことで形成されためっき層29に可動側接点11を形成している。なお、絶縁リブ24はめっき層29の形成時に同時成形される。
【0045】
このように、可動側接点11は可動部材5に直接形成されており、可動側接点11と可動部材5とが一体不可分の関係にあるから、可動部材5と別体の導電板を可動側接点11とする場合に比べて、自動変速機用スイッチ1の部品点数を削減することができる。したがって、自動変速機用スイッチ1の組立作業を簡略化することができる。
【0046】
なお、可動側接点22を可動部材5と一体不可分に形成する構成は、上述のようにめっき層29を形成する構成に限らず、たとえば可動部材5自体を導電性材料で形成し、可動部材5における固定側接点10との接触部位を可動側接点11とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態1の構成を示し、(a)は断面図、(b)は正面図である。
【図2】同上の固定部材を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図3】同上の可動部材を示し、(a)は正面図、(b)は断面図、(c)は背面図である。
【図4】(a)は同上の可動側接点と固定側接点との接触状態を示す正面図、(b)は(a)のA部の断面図である。
【図5】(a)は同上の他の構成の可動側接点と固定側接点との接触状態を示す正面図、(b)は(a)のB部の断面図である。
【図6】本発明の実施形態2の構成を示し、(a)は断面図、(b)は正面図である。
【図7】同上の固定側端子の構成を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【図8】同上の固定部材を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【図9】同上の可動側接点と固定側接点との接触状態を示し、(a)は正面図、(b)は要部の下面図、(c)は(a)のC部の断面図である。
【図10】本発明の実施形態3の可動部材を示す正面図である。
【図11】従来例を示す分解斜視図である。
【図12】同上の側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 自動変速機用スイッチ
2 固定部材
5 可動部材
10 固定側接点
11 可動側接点
17 コイルばね
19 接触子
23 接点リブ
24 絶縁リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車両本体に固定される固定部材と、固定部材の一表面に設けられた固定側接点と、固定部材の前記一表面に対向する形で配置され固定部材によって前記一表面に直交する回動軸を中心として回動自在に支持される可動部材と、可動部材における固定部材との対向面に設けられた可動側接点とを備え、固定側接点と可動側接点との一方は他方との接触部位を可動部材の移動方向に沿って断続的に有しており、可動部材が自動変速機に連結されシフトレバーの切換操作に応じて回動することにより固定側接点と可動側接点とを接離させる自動変速機用スイッチであって、可動側接点は、可動部材に対して位置固定されており、固定部材には、固定側接点を可動側接点側に付勢するばね部材が設けられていることを特徴とする自動変速機用スイッチ。
【請求項2】
前記可動側接点は、前記可動部材と一体不可分に形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動変速機用スイッチ。
【請求項3】
前記固定側接点は前記可動側接点に対して接離する接触子を有し、前記ばね部材は、接触子と前記固定部材との間に介在するコイルばねからなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動変速機用スイッチ。
【請求項4】
前記可動側接点は、前記固定側接点との接触面が平坦に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動変速機用スイッチ。
【請求項5】
前記可動部材のうち前記固定側接点と接触する部位には絶縁材料からなる絶縁リブが可動部材の移動方向に沿って固定側接点よりも小さい幅寸法で断続的に突設されており、前記可動側接点は、固定側接点と接触する部位であって絶縁リブを可動部材の移動方向に延長した領域と重複しない領域に、絶縁リブよりも低い接点リブが突設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動変速機用スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−186637(P2008−186637A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17103(P2007−17103)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】