自動変速機
【課題】出力部材の音振性能を向上できるともに、コントロールバルブボディと共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図った自動変速機を提供すること。
【解決手段】ラビニオ式遊星歯車PGUと5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを用い、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bのうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する。この自動変速機であって、出力ギアOUTを、オイルポンプハウジング30の円筒部30aに直接支持する。出力ギアOUTの後方側に、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bをまとめて配置する。共通キャリアCの両端部に設けられるフロントキャリアプレート23とリアキャリアプレート24に対し第1ハブ部材31と第2ハブ部材32を連結する。
【解決手段】ラビニオ式遊星歯車PGUと5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを用い、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bのうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する。この自動変速機であって、出力ギアOUTを、オイルポンプハウジング30の円筒部30aに直接支持する。出力ギアOUTの後方側に、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bをまとめて配置する。共通キャリアCの両端部に設けられるフロントキャリアプレート23とリアキャリアプレート24に対し第1ハブ部材31と第2ハブ部材32を連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビニオ式遊星歯車を用いて、5個の摩擦締結要素の締結・解放の組み合わせにより前進4速後退1速を達成する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラビニオ式遊星歯車(2列の遊星歯車を一体化した複合型遊星歯車)を用いて、クラッチ2個、ブレーキ3個の締結・解放の組合せにより前進4速及び後退1速を達成する自動変速機が知られている(例えば、特許文献1の図9(a),(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−169730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラビニオ式遊星歯車を用いて4速を達成する特許文献1の図9(b)に示された自動変速機のレイアウトでは、下記の3点の問題がある。
(1) 出力ギアの音振性能が劣る。
出力ギアの内周側にブレーキB1の部材が配置されており、出力ギアはブレーキB1のハブ部材を介して支持している。これは、直接ケースで支持する場合に比べて、ブレーキB1のハブ部材を介している分だけ、出力ギアのガタが大きくなり、ノイズや振動が発生しやすい。なお、出力ギアの内周側にブレーキB1のハブ部材が配置されたレイアウトにおいて、ケース部材で直接支持しようとすると、出力ギア支持用の中間壁を設けなければならず、変速機が大型化し、コストアップを招く。
(2) コントロールバルブボディが大型化し、コストが高い。
出力ギアの一方側および他方側にてケース側とコントロールバルブ側との油路を接続しなければならず、コントロールバルブボディが大型化し、コストが高くなる。
(3) 共通キャリアが大型化し、コストが高い。
共通キャリアからクラッチC-2までの回転メンバが、2つあるサンギアの間に配置されている。よって、共通キャリアの中央部にセンターキャリアプレートを1枚追加する必要があり、共通キャリアが大型化するし、コストが高くなる。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、出力部材の音振性能を向上できるともに、コントロールバルブボディと共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機は、
フロントサンギアと、リアサンギアと、リングギアと、前記フロントサンギアと前記リングギアに噛み合うロングピニオンと、前記リアサンギアと前記ロングピニオンに噛み合うショートピニオンと、前記ロングピニオンと前記ショートピニオンを回転可能に支持する共通キャリアと、を有するラビニオ式遊星歯車と、
駆動源の回転を入力する入力部材と、
前記入力部材と前記フロントサンギアを選択的に連結する第1摩擦締結要素と、
前記入力部材と前記共通キャリアを選択的に連結する第2摩擦締結要素と、
前記リアサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第3摩擦締結要素と、
前記フロントサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第4摩擦締結要素と、
前記共通キャリアを選択的に自動変速機ケースに固定する第5摩擦締結要素と、
前記リングギアに常時連結する出力部材と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成するものを前提とする。
この自動変速機であって、
前記ラビニオ式遊星歯車の一方側に、前記出力部材を配置する。
前記出力部材の他方側に、前記第1摩擦締結要素、前記第2摩擦締結要素、前記第3摩擦締結要素、前記第4摩擦締結要素、前記第5摩擦締結要素を配置する。
外周側に前記第2摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記一方側端部の第1キャリアプレートに連結する第1ハブ部材と、
外周側に前記第5摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記他方側端部の第2キャリアプレートに連結する第2ハブ部材と、
前記ラビニオ式遊星歯車および前記各摩擦締結要素を収納する変速機室を自動変速機ケースとともに形成する隔壁部材と、
を備える。
前記出力部材は、前記隔壁部材から軸方向の前記他方側に伸びる円筒部に支持される。
【発明の効果】
【0007】
上記のように、出力部材の一方側に摩擦締結要素を配置せず、出力部材は、隔壁部材から軸方向の他方側に伸びる円筒部に支持するレイアウトを採用した。
すなわち、出力部材を支持するために中間壁を設けることなしに、出力部材を隔壁部材で直接支持するため、例えば、出力部材を摩擦締結要素のハブ部材を介して支持する場合に比べて、出力部材を支持する際のガタを低減でき、ノイズや振動の発生が抑制される。
また、ラビニオ式遊星歯車の一方側に配置した出力部材の他方側に、第1摩擦締結要素〜第5摩擦締結要素をまとめて配置するレイアウトを採用した。
したがって、各摩擦締結要素を押圧するピストンへのケース側の油路と、コントロールバルブボディ側の油路と、のそれぞれの受け渡し箇所を集中して配置できる。このため、コントロールバルブボディの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
さらに、共通キャリアの両端部に設けられる第1キャリアプレートと第2キャリアプレートに対し第1ハブ部材と第2ハブ部材を連結するレイアウトを採用した。
すなわち、既存のキャリアプレートを用いることで、2つのサンギアの間の位置に、センターキャリアプレートを1枚追加する必要がない。このため、センターキャリアプレートの追加による共通キャリアの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
この結果、出力部材の音振性能を向上できるともに、コントロールバルブボディと共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の自動変速機の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図3】実施例1の自動変速機において5つの摩擦締結要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進4速及び後退1速の締結作動を示す締結作動表図である。
【図4】実施例1の自動変速機において変速機室の内部に配置されたラビニオ式遊星歯車・出力ギア・各摩擦締結要素の詳細構造を示す拡大断面図である。
【図5】比較例の自動変速機においてラビニオ式遊星歯車の2つのサンギアの間に配置されたセンターキャリアプレートを示す課題説明図である。
【図6】実施例1の自動変速機における第1速(1st)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図7】実施例1の自動変速機における第2速(2nd)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図8】実施例1の自動変速機における第3速(3rd)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図9】実施例1の自動変速機における第4速(4th)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図10】実施例1の自動変速機における後退速(Rev)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図11】実施例1の自動変速機において各摩擦締結要素への潤滑油経路を示す潤滑油経路説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動変速機を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の自動変速機の構成を、「全体構成」、「変速構成」、「変速機室における各要素の配置構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1は、実施例1の自動変速機の全体構成を示す縦断面図であり、図2は、実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図1及び図2に基づいて、実施例1の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦締結要素構成を説明する。
【0012】
実施例1の自動変速機は、図1及び図2に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGUと、入力軸IN(入力部材)と、出力ギアOUT(出力部材)と、第1クラッチ13R/C(第1摩擦締結要素)と、第2クラッチ234/C(第2摩擦締結要素)と、第3ブレーキ12/B(第3摩擦締結要素)と、第4ブレーキ4/B(第4摩擦締結要素)と、第5ブレーキR/B(第5摩擦締結要素)と、自動変速機ケースATCと、を備えている。
【0013】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUは、2列の遊星歯車であるシングルピニオン式遊星歯車とダブルピニオン式遊星歯車を一体化した複合型遊星歯車である。このラビニオ式遊星歯車PGUは、図1及び図2に示すように、フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、フロントサンギアSsとリングギアRに噛み合うロングピニオンPLと、リアサンギアSdとロングピニオンPLに噛み合うショートピニオンPSと、ロングピニオンPLとショートピニオンPSを回転可能に支持する共通キャリアCと、を有する。
【0014】
前記入力軸INは、図外のエンジン(駆動源)からの回転駆動トルクが、図1に示すように、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータT/Cを介して入力される軸である。
【0015】
前記出力ギアOUTは、図1に示すように、リングギアRに常時連結する。この出力ギアOUTの出力回転は、カウンターギア1→カウンターシャフト2→終減速ギア3→ドライブギア4→デファレンシャルギアケース5へと伝達される。そして、デファレンシャルギアケース5に伝達された出力回転は、デファレンシャルギアケース5と一体に回転するピニオンメートシャフト6→ピニオン7,7を経過し、ピニオン7,7に噛み合う一対のサイドギア8,9から図外の左右のドライブシャフト及び左右の駆動輪へ伝達される。
【0016】
前記第1クラッチ13R/Cは、第1速(1st)と第3速(3rd)と後退速(Rev)において入力軸INとフロントサンギアSsを選択的に連結する多板摩擦締結クラッチである。
【0017】
前記第2クラッチ234/Cは、第2速(2nd)と第3速(3rd)と第4速(4th)において入力軸INと共通キャリアCを選択的に連結する多板摩擦締結クラッチである。
【0018】
前記第3ブレーキ12/Bは、第1速(1st)と第2速(2nd)においてリアサンギアSdを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0019】
前記第4ブレーキ4/Bは、第4速(4th)においてフロントサンギアSsを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0020】
前記第5ブレーキR/Bは、後退速(Rev)において共通キャリアCを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0021】
前記自動変速機ケースATCは、図1に示すように、ケース内部空間にラビニオ式遊星歯車PGUと5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/B等を収納している。この自動変速機ケースATCの駆動源側には、コンバータハウジング10が連結され、コンバータハウジング10内にトルクコンバータT/Cが配置される。また、自動変速機ケースATCとコンバータハウジング10の連結部には、エンジン(駆動源)により回転駆動されるオイルポンプO/Pが配置されている。この自動変速機ケースATCには、図1に示すように、コントロールバルブボディC/Vと、該コントロールバルブボディC/Vを収めるオイルパン17が設けられている。コントロールバルブボディC/Vは、内部に各変速段での油圧を作り出す複数のコントロールバルブや油路などを有し、コントロールバルブボディ側油路と、各摩擦締結要素を押圧するピストンへのケース側油路と、のそれぞれの受け渡し箇所を、自動変速機ケースATCの後部に集中している。すなわち、自動変速機ケースATCの後部には、図1に示すように、第1クラッチ圧油路11、第2クラッチ圧油路12、第3ブレーキ圧油路13、第4ブレーキ圧油路14、第5ブレーキ圧油路15、潤滑油路16の径方向油路部を、軸方向の同じ位置に集中配置している。
【0022】
[変速構成]
図3は、実施例1の自動変速機において5つの摩擦締結要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進4速及び後退1速を達成する締結作動表を示す。以下、図3に基づいて、実施例1の自動変速機の各変速段を成立させる変速構成を説明する。
【0023】
第1速(1st)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsを連結し、リアサンギアSdをケース固定することで達成する。
【0024】
第2速(2nd)の変速段は、図3に示すように、第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bの同時締結により、入力軸INと共通キャリアCを連結し、リアサンギアSdをケース固定することで達成する。
【0025】
第3速(3rd)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsと共通キャリアCを互いに連結することで達成する。
【0026】
第4速(4th)の変速段は、図3に示すように、第2クラッチ234/Cと第4ブレーキ4/Bの同時締結により、入力軸INと共通キャリアCを連結し、フロントサンギアSsをケース固定することで達成する。
【0027】
後退速(Rev)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第5ブレーキR/Bの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsを連結し、共通キャリアCをケース固定することで達成する。
【0028】
そして、図3の締結作動表から明らかなように、第1速(1st)から第4速(4th)までの隣接変速段でのアップ変速及びダウン変速は、所謂、2つの摩擦締結要素の掛け替え変速により行われる。ここで、掛け替え変速とは、変速前の変速段において同時締結されている2つの摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を締結状態のまま維持し、他の1つの摩擦締結要素を解放し、新たに1つの摩擦締結要素を締結して変速後の変速段に移行することをいう。例えば、第1速(1st)から第2速(2nd)へのアップ変速は、第3ブレーキ12/Bを締結状態のまま維持し、第1クラッチ13R/Cを解放し、第2クラッチ234/Cを締結することで行われる。
【0029】
[変速機室における各要素の配置構成]
上記のように、自動変速機ケースATCのケース内部空間(=変速機室20)には、図1に示すように、入力軸INと、ラビニオ式遊星歯車PGUと、出力ギアOUTと、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを配置している。以下、図4に基づいて、変速機室20における各要素の配置構成を説明する。
【0030】
前記変速機室20は、図4に示すように、自動変速機ケースATCの前端開口部に固定されたオイルポンプハウジング30(隔壁部材)によりケース内部空間として形成される。この変速機室20には、ラビニオ式遊星歯車PGUの駆動源に近い前方側(一方側)に、出力ギアOUTを配置する。そして、出力ギアOUTの駆動源から遠い後方側(他方側)に、第1クラッチ13R/C、第2クラッチ234/C、第3ブレーキ12/B、第4ブレーキ4/B、第5ブレーキR/Bをまとめて配置している。
【0031】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUは、図4に示すように、出力ギアOUTの後方側であって、入力軸INの外周位置に配置され、フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、共通キャリアCと、の4つを回転要素とする。この回転要素のうち共通キャリアCは、ロングピニオンPLを支持するロングピニオン軸21と、ショートピニオンPSを支持するショートピニオン軸22(図1参照)と、両ピニオン軸21,22を両端位置にて支持するフロントキャリアプレート23(第1キャリアプレート)及びリアキャリアプレート24(第2キャリアプレート)と、により構成される。
【0032】
前記入力軸INは、図4に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGUの内周側に設けられ、前記出力ギアOUTは、ラビニオ式遊星歯車PGUの回転要素の一つであるリングギアRに直結される。この出力ギアOUTは、オイルポンプハウジング30から後方側に向かって軸方向に伸びる円筒部30aに対し、ベアリング25を介して直接支持される。なお、出力ギアOUTのオイルポンプハウジング30側には、パーキングギア26が固定される。
【0033】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUの3つの回転要素(リングギアRを除く)と各摩擦締結要素は、図4に示すように、回転メンバである第1ハブ部材31と第2ハブ部材32と第3ハブ部材33と第4ハブ部材34と第1ドラム部材35と第2ドラム部材36により連結されている。
【0034】
前記第1ハブ部材31は、図4に示すように、外周側に第2クラッチ234/Cの摩擦板がスプライン嵌合により配置され、入力軸INの外周側を通って共通キャリアCの前方側端部のフロントキャリアプレート23に連結する。
【0035】
前記第2ハブ部材32は、図4に示すように、外周側に第5ブレーキR/Bの摩擦板がスプライン嵌合により配置され、共通キャリアCの後方側端部のリアキャリアプレート24に連結する。この第2ハブ部材32は、第3ハブ部材33の外周側に設けられている。
【0036】
前記第3ハブ部材33は、図4に示すように、外周側に第3ブレーキ12/Bの摩擦板がスプライン嵌合により配置され、第2ドラム部材36の外周を通ってリアサンギアSdに連結する。
【0037】
前記第4ハブ部材34は、図4に示すように、外周側に第4ブレーキ4/Bの摩擦板がスプライン嵌合により配置され、第2ドラム部材36の第1クラッチ13R/Cよりも後方側にて第2ドラム部材36に連結する。
【0038】
前記第1ドラム部材35は、図4に示すように、内周側に第2クラッチ234/Cの摩擦相手板がスプライン嵌合により配置されるとともに、該第2クラッチ234/Cと径方向に重なる位置の外周側に第1クラッチ13R/Cの摩擦板がスプライン嵌合により配置される。そして、入力軸INの先端部にスプライン結合により連結する。つまり、第1ドラム部材35は、内周側に第2クラッチ234/Cが配置されるとともに、外周側に第1クラッチ13R/Cが配置される兼用ドラム部材である。
【0039】
前記第2ドラム部材36は、図4に示すように、内周側に第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板がスプライン嵌合により配置され、第1ハブ部材31の外周側およびリアサンギアSdの内周側を通って、フロントサンギアSsにスプライン結合により連結する。なお、この第2ドラム部材36は、第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板がスプライン嵌合されるとともに、第4ハブ部材34が連結されるドラム部分と、フロントサンギアSsにスプライン結合される連結部分と、に分割し、ドラム部分と連結部分を周方向に噛み合わせることで構成される。
【0040】
前記第1クラッチ13R/Cは、図4に示すように、第2クラッチ234/Cより径方向外側位置であって、かつ、第2クラッチ234/Cとは少なくとも一部が径方向に重なる位置に配置される。この第1クラッチ13R/Cの第1クラッチピストン41は、第1クラッチ13R/Cの後方側であって、第2ドラム部材36に形成したピストンシリンダに配置される。第2ドラム部材36と第1クラッチピストン41の間には、第1クラッチリターンスプリング51が介装される。
【0041】
前記第2クラッチ234/Cは、図4に示すように、第1クラッチ13R/Cより径方向内側位置であって、かつ、第1クラッチ13R/Cとは少なくとも一部が径方向に重なる位置に配置される。この第2クラッチ234/Cの第2クラッチピストン42は、第2クラッチ234/Cの後方側であって、第1ドラム部材35に形成したピストンシリンダに配置される。第1ドラム部材35と第2クラッチピストン42の間には、第2クラッチリターンスプリング52が介装される。
【0042】
前記第3ブレーキ12/Bは、図4に示すように、第2クラッチ234/C及び第1クラッチ13R/Cより径方向外側位置であって、かつ、第2クラッチ234/C及び第1クラッチ13R/Cと径方向に重なる位置に配置される。この第3ブレーキ12/Bの第3ブレーキピストン43は、第3ブレーキ12/Bの後方側であって、自動変速機ケースATCと、その内側の軸方向突出ケース部61と、により形成した大円環溝のピストンシリンダに配置される。自動変速機ケースATCと第3ブレーキピストン43の間には、第3ブレーキリターンスプリング53が介装される。
【0043】
前記第4ブレーキ4/Bは、図4に示すように、自動変速機ケースATCの最後方側位置に配置される。この第4ブレーキ4/Bの第4ブレーキピストン44は、第4ブレーキ4/Bの後方側であって、自動変速機ケースATCにより形成した小円環溝のピストンシリンダに配置される。自動変速機ケースATCと第4ブレーキピストン44の間には、皿バネによる第4ブレーキリターンスプリング54が介装される。
【0044】
前記第5ブレーキR/Bは、図4に示すように、第3ブレーキ12/Bの前方側位置であって、ラビニオ式遊星歯車PGUの一部と径方向に重なる位置に配置される。この第5ブレーキR/Bの第5ブレーキピストン45は、第3ブレーキピストン43の後方側であって、自動変速機ケースATCに形成した環状溝によるピストンシリンダに配置される。第5ブレーキピストン45のリターンスプリングは、第3ブレーキリターンスプリング53を共用している。
【0045】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例における共通キャリアの大型化課題」の説明を行う。続いて、実施例1の自動変速機における作用を、「各変速段での変速作用」、「音振性能向上と大型化抑制作用」、「摩擦締結要素の潤滑作用」に分けて説明する。
【0046】
[比較例における共通キャリアの大型化課題]
ラビニオ式遊星歯車を用いて、クラッチ2個、ブレーキ3個の締結・解放の組合せにより4速を達成する特開平10−169730号公報の図9に記載された自動変速機を比較例とする。
【0047】
上記公報に記載されているように、近年、自動変速機においては、コンパクト化や低コスト化について厳しい要求が課されている。しかし、比較例に示されたレイアウトでは、共通キャリアが大型化し、コストが高いという課題がある。
【0048】
すなわち、比較例の場合、共通キャリアから第2クラッチC-2までの回転メンバが、2つあるサンギアS1,S2の間に配置されている。よって、共通キャリアの中央部に、キャリアプレートとして、センターキャリアプレートを1枚追加する必要があり、共通キャリアが大型化するし、コストが高くなる。この詳しい理由を、図5を用いながら説明する。
【0049】
ドーナツ形状のセンターキャリアプレートには、図5(a),(b)に示すように、ロングピニオンが通るロングピニオン穴を設ける必要があり(例えば、3箇所)、このロングピニオン穴の設定によって、下記の制約条件が課される。
1) ロングピニオン穴とセンターキャリアプレート外周との径方向肉厚を確保するため、センターキャリアプレートの外径が大きくなる。
2) ロングピニオン穴とセンターキャリアプレート内周との径方向肉厚を確保するため、センターキャリアプレートの内径が小さくなり、サンギアを組み付けられなくなる。
3) ロングピニオンが通るロングピニオン穴が開くため、センターキャリアプレートの強度を確保するために、プレート板厚を厚くしなければならない。
したがって、1枚追加されたセンターキャリアプレートは、1),2),3)の制約条件をクリアした外径が大きな分厚いプレートとなり、共通キャリアが径方向にも軸方向にも大型化する。センターキャリアプレートは、新たに追加を要する追加部品であることでコストが高くなる。
【0050】
なお、上記1),2),3)の制約条件を受けないためにセンターキャリアプレートに、ロングピニオンが通るロングピニオン穴を設けない構成にすると、ロングピニオンを2分割する必要がある。つまり、3個のロングピニオンを用いたラビニオ式遊星歯車の場合、ロングピニオン数が6個となり、部品点数増によりコストアップする。
【0051】
[各変速段での変速作用]
実施例1のラビニオ式遊星歯車PGUは、速度線図上で回転速度関係が直線上に並ぶ4つの回転要素として、フロントサンギアSsとリアサンギアSdとリングギアRと共通キャリアCを備えている。以下、図6〜図10に基づいて、4つの回転要素の回転速度関係変更により得られる各変速段での変速作用を説明する。
【0052】
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図6(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bが同時締結され、第3ブレーキ12/Bの締結によりリアサンギアSdが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsに入力回転数が入力されると、図6(b)に示すように、リアサンギアSdの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRとリアサンギアSdの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、共通キャリアCの回転数がフロントサンギアSsより減速され、リングギアRの回転数が共通キャリアCよりさらに減速される。このように、フロントサンギアSsへの入力回転数を減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第1速の変速段(ファーストアンダードライブ変速段)が達成される。
【0053】
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図7(a)のハッチングに示すように、第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bが同時締結され、第3ブレーキ12/Bの締結によりリアサンギアSdが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過して共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図7(b)に示すように、リアサンギアSdの固定により、共通キャリアCとリングギアRとリアサンギアSdの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転数が共通キャリアCより減速される。このように、共通キャリアCへの入力回転数を減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第2速の変速段(セカンドアンダードライブ変速段)が達成される。
【0054】
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図8(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cが同時締結される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsと共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図8(b)に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGU2の三つの回転要素であるフロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRが一体となって回転する。このように、フロントサンギアSsと共通キャリアCへの入力回転数と同じリングギアRの回転数(=入力回転数)が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第3速の変速段(ダイレクトドライブ変速段)が達成される。
【0055】
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図9(a)のハッチングに示すように、第2クラッチ234/Cと第4ブレーキ4/Bが同時締結され、第4ブレーキ4/Bの締結によりフロントサンギアSsが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過して共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図9(b)に示すように、フロントサンギアSsの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転数が共通キャリアCの回転数(=入力回転数)より増速される。このように、共通キャリアCへの入力回転数を増速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第4速の変速段(オーバードライブ変速段)が達成される。
【0056】
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図10(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第5ブレーキR/Bが同時締結され、第5ブレーキR/Bの締結により共通キャリアCが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsに入力回転数が入力されると、図10(b)に示すように、共通キャリアCの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転が、フロントサンギアSsの入力回転方向と逆回転方向で、かつ、減速される。このように、フロントサンギアSsへの入力回転数を逆転減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、後退速の変速段(リバース変速段)が達成される。
【0057】
[音振性能向上と大型化抑制作用]
小型・廉価をコンセプトとする自動変速機の実用化を目指すには、比較例において未解決である「出力ギアの音振性能が劣る。」、「コントロールバルブボディが大型化し、コストが高い。」、「共通キャリアが大型化し、コストが高い。」という課題を解決する必要がある。以下、これを反映する車載性向上と大型化抑制作用を説明する。
【0058】
(a) 出力ギアOUTの音振性能がよい。
実施例1では、出力ギアOUTの前方側に摩擦締結要素を配置せず、出力ギアOUTは、隔壁部材であるオイルポンプハウジング30から軸方向の後方側に伸びる円筒部30aにベアリング25を介して支持するレイアウトを採用した。
すなわち、出力ギアOUTを支持するために中間壁を設けることなしに、出力ギアOUTを自動変速機ケースATCに固定されたオイルポンプハウジング30で直接(ベアリング25を介して)支持する。
このため、例えば、出力部材を摩擦締結要素のハブ部材を介して支持する場合に比べて、出力ギアOUTを支持する際のガタを低減でき、ノイズや振動の発生が抑制される。
【0059】
(b) コントロールバルブボディC/Vの大型化を抑制し、コストを下げられる。
実施例1では、ラビニオ式遊星歯車PGUの前方側に配置した出力ギアOUTの後方側の変速機室20に、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bをまとめて配置するレイアウトを採用した。
したがって、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを押圧する各ピストン41,42,43,44,45へのケース側の油路と、コントロールバルブボディC/V側の油路と、のそれぞれの受け渡し箇所を集中して配置できる。実施例1の場合、図1に示すように、コントロールバルブボディC/Vからの各油路11,12,13,14,15,16のうち径方向油路部を、自動変速機ケースATCの後部であって、軸方向の同じ位置に集中配置している。
このため、出力部材の前方側にケース側とコントロールバルブボディ側との油路の受け渡し箇所を設ける必要がなくなることによって、出力部材の前方側にてケース側とコントロールバルブボディ側との油路を接続するためにコントロールバルブボディを大型化する必要がなくなる。この結果、コントロールバルブボディC/Vの大型化が抑えられるし、コストも低減される。そして、コントロールバルブボディC/Vが大型化しない分、ストレーナやCPUの配置の自由度が増すとともに、コントロールバルブボディC/Vを収めるオイルパン17も小型化でき、車両搭載性も向上する。
【0060】
(c) 共通キャリアCの大型化を抑制し、コストを下げられる。
実施例1では、共通キャリアCの両端部に設けられるフロントキャリアプレート23とリアキャリアプレート24に対し第1ハブ部材31と第2ハブ部材32を連結するレイアウトを採用した。
すなわち、共通キャリアCから第2クラッチ234/Cまでの回転メンバが、ロングピニオンPL及びショートピニオンPSを支持するために共通キャリアCの前方側端部に連結された既存のフロントキャリアプレート23を用いる構成である。このため、比較例のように、共通キャリアの中央部であって、2つのサンギアの間の位置に、センターキャリアプレートを1枚追加する必要がない。
このように、共通キャリアCの両端で各ハブ部材31,32と連結するようにしたため、センターキャリアプレートの追加による共通キャリアの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
【0061】
[摩擦締結要素の潤滑作用]
実施例1において、第1速と第2速と第3速の間の変速時には、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bによる掛け替え制御が行われるため、これら3個の摩擦締結要素13R/C,234/C,12/Bを如何に潤滑するかの工夫が必要である。以下、図11に基づき、これを反映する摩擦締結要素の潤滑作用を説明する。
【0062】
まず、第1速と第2速との間の変速時は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cとの掛け替え制御が行われる。第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの掛け替え制御中は、両クラッチ13R/C,234/Cがスリップ状態になる。したがって、第1速と第2速との間の変速時に両クラッチ13R/C,234/Cの潤滑・冷却が必要になる。
【0063】
また、第2速と第3速との間の変速時は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bとの掛け替え制御が行われる。第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bの掛け替え制御中は、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bがスリップ状態になる。したがって、第2速と第3速との間の変速時に第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bの潤滑・冷却が必要になる。
【0064】
これに対し、実施例1では、第2クラッチ234/Cの少なくとも一部が径方向に重なる位置の外周側に第1クラッチ13R/Cを配置し、第1クラッチ13R/Cの少なくとも一部が径方向に重なる位置の外周側に第3ブレーキ12/Bを配置する構成を採用した。このため、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bの潤滑が効率的に行える。
【0065】
例えば、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cが離れて配置されていたり、あるいは、軸方向に並んで配置されていたりすると、第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却した油は、オイル溜りに戻されるだけであり、潤滑効率が悪くなる。
【0066】
これに対し、実施例1では、入力軸INに形成された潤滑油路から第1ハブ部材31の後方側に供給された潤滑油が、図11の矢印Eに示すように径方向外側に流れ、第1ハブ部材31に形成された穴を経過して第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却する。なお、潤滑経路については、ドラム部材(及びハブ部材)には図示してしない穴が開いており、そこから潤滑油は外周側に流れる。
【0067】
一方、入力軸INに形成された潤滑油路から第1ハブ部材31と第2ドラム部材36の隙間に供給された潤滑油が、図11の矢印Fに示すように、第2ドラム部材36に沿って軸方向後方側に流れた後、径方向外側に向きを変えて流れ、第1ハブ部材31と第2ドラム部材36との対向面を経過して第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却する。加えて、第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却した後の潤滑油が、図11の矢印Gに示すように、径方向外側に流れ、第1ドラム部材31に形成された穴を経過し、矢印Fの流れと合流して第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却する。
【0068】
そして、第2クラッチ234/C及び第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却した後の潤滑油は、図11の矢印Hに示すように径方向に流れ、第3ハブ部材33に形成された穴を経過して第3ブレーキ12/Bを潤滑・冷却する。
【0069】
さらに、入力軸INに形成された潤滑油路から第1ハブ部材31と第2ドラム部材36の隙間に供給された潤滑油が、図11の矢印Iに示すように、第2ドラム部材36に沿って軸方向前方側に流れた後、第2ドラム部材36の潤滑油穴を経過し、軸方向後方側と径方向外側とに分かれて流れる。一方の軸方向後方側の流れは、図11の矢印Jに示すように、第2ドラム部材36とリアサンギアSdの隙間を、軸方向後方側に流れた後、径方向外側に向きを変え、第2ドラム部材36と第3ハブ部材33の隙間を経過し、矢印Hの流れと合流し、第3ブレーキ12/Bを潤滑・冷却する。他方の径方向外側の流れは、ロングピニオンPLとリアサンギアSdの隙間を、軸方向後方側に流れた後、径方向外側に向きを変え、第2ハブ部材32と第3ハブ部材33の隙間を経過し、第5ブレーキR/Bを潤滑・冷却する。
【0070】
このように、第2クラッチ234/Cの摩擦プレートを潤滑・冷却した油が、第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却することで、第2クラッチ234/C及び第1クラッチ13R/Cを効率的に潤滑することができる。したがって、第1速と第2速との間の変速時、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cに対する高い潤滑・冷却要求に対して応えることができる。
【0071】
さらに、第1クラッチ13R/Cの摩擦プレートを潤滑・冷却した油が、第3ブレーキ12/Bを潤滑・冷却することで、第1クラッチ13R/C及び第3ブレーキ12/Bを効率的に潤滑することができる。したがって、第2速と第3速との間の変速時、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bに対する高い潤滑・冷却要求に対して応えることができる。
【0072】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0073】
(1) フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、前記フロントサンギアSsと前記リングギアRに噛み合うロングピニオンPLと、前記リアサンギアSdと前記ロングピニオンPLに噛み合うショートピニオンPSと、前記ロングピニオンPLと前記ショートピニオンPSを回転可能に支持する共通キャリアCと、を有するラビニオ式遊星歯車PGUと、
駆動源の回転を入力する入力部材(入力軸IN)と、
前記入力部材(入力軸IN)と前記フロントサンギアSsを選択的に連結する第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と、
前記入力部材(入力軸IN)と前記共通キャリアCを選択的に連結する第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と、
前記リアサンギアSdを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)と、
前記フロントサンギアSsを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)と、
前記共通キャリアCを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)と、
前記リングギアRに常時連結する出力部材(出力ギアOUT)と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する自動変速機であって、
前記ラビニオ式遊星歯車PGUの一方側に、前記出力部材(出力ギアOUT)を配置し、
前記出力部材(出力ギアOUT)の他方側に、前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)、前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)、前記第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)を配置し、
外周側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)が配置され、前記共通キャリアCの前記一方側端部の第1キャリアプレート(フロントキャリアプレート23)に連結する第1ハブ部材31と、
外周側に前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)が配置され、前記共通キャリアCの前記他方側端部の第2キャリアプレート(リアキャリアプレート24)に連結する第2ハブ部材32と、
前記ラビニオ式遊星歯車PGUおよび前記各摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを収納する変速機室20を自動変速機ケースATCとともに形成する隔壁部材(オイルポンプハウジング30)と、
を備え、
前記出力部材(出力ギアOUT)は、前記隔壁部材(オイルポンプハウジング30)から軸方向の前記他方側に伸びる円筒部30aに支持される。
このため、出力部材(出力ギアOUT)の音振性能を向上できるともに、コントロールバルブボディC/Vと共通キャリアCの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる。
【0074】
(2) 前記入力部材(入力軸IN)は、前記ラビニオ式遊星歯車PGUの内周側に設けられ、
前記第1ハブ部材31は、前記入力部材(入力軸IN)の外周側を通って前記第1キャリアプレート(フロントキャリアプレート23)と連結され、
内周側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)が配置されるとともに、該第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と径方向に重なる位置の外周側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)が配置され、前記入力部材(入力軸IN)に連結する第1ドラム部材35と、
内周側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)が配置され、前記第1ハブ部材31の外周側および前記リアサンギアSdの内周側を通って、前記フロントサンギアSsに連結する第2ドラム部材36と、
外周側に前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)が配置され、前記第2ドラム部材36の外周を通って前記リアサンギアSdに連結する第3ハブ部材33と、
外周側に前記第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)が配置され、前記第2ドラム部材36の前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)よりも他方側にて前記第2ドラム部材36に連結する第4ハブ部材34と、を備え、
前記第2ハブ部材32は、前記第3ハブ部材33の外周側に設けられている。
このため、上記(1)の効果に加え、ハブ部材31,32,33,34及びドラム部材35,36を取り回すことによって、5個の摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを出力部材(出力ギアOUT)の他方側にまとめて配置することができる。さらに、第1速と第2速との間での変速時に掛け替えられる第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の潤滑を効率的に行うことができる。
【0075】
(3) 前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)は、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と径方向に重なる位置の外周側に配置される。
このため、上記(2)の効果に加え、第2速と第3速との間での変速時に掛け替えられる第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)の潤滑を効率的に行うことができる。
【0076】
以上、本発明の自動変速機を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0077】
実施例1では、オイルポンプO/Pを収納するオイルポンプハウジング30を隔壁部材とし、このオイルポンプハウジング30で出力ギアOUTを支持する例を示した。しかし、これに限定されず、例えば、オイルポンプO/Pを入力軸INと別軸に設け、変速機室を形成する隔壁部材で出力ギアを支持するものであってもよい。
【0078】
実施例1では、入出力軸を平行配置とするFFエンジン車に搭載される自動変速機の例を示した。しかし、FFエンジン車に限らず、FRエンジン車、エンジンとモータの少なくとも一方を駆動源とするハイブリッド車、モータを駆動源とする電気自動車や燃料電池車、等の様々な車両の自動変速機としても適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
PGU ラビニオ式遊星歯車
Ss フロントサンギア
Sd リアサンギア
R リングギア
PL ロングピニオン
PS ショートピニオン
C 共通キャリア
IN 入力軸(入力部材)
OUT 出力ギア(出力部材)
ATC 自動変速機ケース
C/V コントロールバルブボディ
13R/C 第1クラッチ(第1摩擦締結要素)
234/C 第2クラッチ(第2摩擦締結要素)
12/B 第3ブレーキ(第3摩擦締結要素)
4/B 第4ブレーキ(第4摩擦締結要素)
R/B 第5ブレーキ(第5摩擦締結要素)
17 オイルパン
20 変速機室
23 フロントキャリアプレート(第1キャリアプレート)
24 リアキャリアプレート(第2キャリアプレート)
30 オイルポンプハウジング(隔壁部材)
30a 円筒部
31 第1ハブ部材
32 第2ハブ部材
33 第3ハブ部材
34 第4ハブ部材
35 第1ドラム部材
36 第2ドラム部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビニオ式遊星歯車を用いて、5個の摩擦締結要素の締結・解放の組み合わせにより前進4速後退1速を達成する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラビニオ式遊星歯車(2列の遊星歯車を一体化した複合型遊星歯車)を用いて、クラッチ2個、ブレーキ3個の締結・解放の組合せにより前進4速及び後退1速を達成する自動変速機が知られている(例えば、特許文献1の図9(a),(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−169730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラビニオ式遊星歯車を用いて4速を達成する特許文献1の図9(b)に示された自動変速機のレイアウトでは、下記の3点の問題がある。
(1) 出力ギアの音振性能が劣る。
出力ギアの内周側にブレーキB1の部材が配置されており、出力ギアはブレーキB1のハブ部材を介して支持している。これは、直接ケースで支持する場合に比べて、ブレーキB1のハブ部材を介している分だけ、出力ギアのガタが大きくなり、ノイズや振動が発生しやすい。なお、出力ギアの内周側にブレーキB1のハブ部材が配置されたレイアウトにおいて、ケース部材で直接支持しようとすると、出力ギア支持用の中間壁を設けなければならず、変速機が大型化し、コストアップを招く。
(2) コントロールバルブボディが大型化し、コストが高い。
出力ギアの一方側および他方側にてケース側とコントロールバルブ側との油路を接続しなければならず、コントロールバルブボディが大型化し、コストが高くなる。
(3) 共通キャリアが大型化し、コストが高い。
共通キャリアからクラッチC-2までの回転メンバが、2つあるサンギアの間に配置されている。よって、共通キャリアの中央部にセンターキャリアプレートを1枚追加する必要があり、共通キャリアが大型化するし、コストが高くなる。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、出力部材の音振性能を向上できるともに、コントロールバルブボディと共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機は、
フロントサンギアと、リアサンギアと、リングギアと、前記フロントサンギアと前記リングギアに噛み合うロングピニオンと、前記リアサンギアと前記ロングピニオンに噛み合うショートピニオンと、前記ロングピニオンと前記ショートピニオンを回転可能に支持する共通キャリアと、を有するラビニオ式遊星歯車と、
駆動源の回転を入力する入力部材と、
前記入力部材と前記フロントサンギアを選択的に連結する第1摩擦締結要素と、
前記入力部材と前記共通キャリアを選択的に連結する第2摩擦締結要素と、
前記リアサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第3摩擦締結要素と、
前記フロントサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第4摩擦締結要素と、
前記共通キャリアを選択的に自動変速機ケースに固定する第5摩擦締結要素と、
前記リングギアに常時連結する出力部材と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成するものを前提とする。
この自動変速機であって、
前記ラビニオ式遊星歯車の一方側に、前記出力部材を配置する。
前記出力部材の他方側に、前記第1摩擦締結要素、前記第2摩擦締結要素、前記第3摩擦締結要素、前記第4摩擦締結要素、前記第5摩擦締結要素を配置する。
外周側に前記第2摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記一方側端部の第1キャリアプレートに連結する第1ハブ部材と、
外周側に前記第5摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記他方側端部の第2キャリアプレートに連結する第2ハブ部材と、
前記ラビニオ式遊星歯車および前記各摩擦締結要素を収納する変速機室を自動変速機ケースとともに形成する隔壁部材と、
を備える。
前記出力部材は、前記隔壁部材から軸方向の前記他方側に伸びる円筒部に支持される。
【発明の効果】
【0007】
上記のように、出力部材の一方側に摩擦締結要素を配置せず、出力部材は、隔壁部材から軸方向の他方側に伸びる円筒部に支持するレイアウトを採用した。
すなわち、出力部材を支持するために中間壁を設けることなしに、出力部材を隔壁部材で直接支持するため、例えば、出力部材を摩擦締結要素のハブ部材を介して支持する場合に比べて、出力部材を支持する際のガタを低減でき、ノイズや振動の発生が抑制される。
また、ラビニオ式遊星歯車の一方側に配置した出力部材の他方側に、第1摩擦締結要素〜第5摩擦締結要素をまとめて配置するレイアウトを採用した。
したがって、各摩擦締結要素を押圧するピストンへのケース側の油路と、コントロールバルブボディ側の油路と、のそれぞれの受け渡し箇所を集中して配置できる。このため、コントロールバルブボディの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
さらに、共通キャリアの両端部に設けられる第1キャリアプレートと第2キャリアプレートに対し第1ハブ部材と第2ハブ部材を連結するレイアウトを採用した。
すなわち、既存のキャリアプレートを用いることで、2つのサンギアの間の位置に、センターキャリアプレートを1枚追加する必要がない。このため、センターキャリアプレートの追加による共通キャリアの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
この結果、出力部材の音振性能を向上できるともに、コントロールバルブボディと共通キャリアの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の自動変速機の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。
【図3】実施例1の自動変速機において5つの摩擦締結要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進4速及び後退1速の締結作動を示す締結作動表図である。
【図4】実施例1の自動変速機において変速機室の内部に配置されたラビニオ式遊星歯車・出力ギア・各摩擦締結要素の詳細構造を示す拡大断面図である。
【図5】比較例の自動変速機においてラビニオ式遊星歯車の2つのサンギアの間に配置されたセンターキャリアプレートを示す課題説明図である。
【図6】実施例1の自動変速機における第1速(1st)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図7】実施例1の自動変速機における第2速(2nd)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図8】実施例1の自動変速機における第3速(3rd)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図9】実施例1の自動変速機における第4速(4th)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図10】実施例1の自動変速機における後退速(Rev)の変速段でのスケルトン図(a)と速度線図(b)を示す変速作用説明図である。
【図11】実施例1の自動変速機において各摩擦締結要素への潤滑油経路を示す潤滑油経路説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動変速機を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の自動変速機の構成を、「全体構成」、「変速構成」、「変速機室における各要素の配置構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1は、実施例1の自動変速機の全体構成を示す縦断面図であり、図2は、実施例1の自動変速機を示すスケルトン図である。以下、図1及び図2に基づいて、実施例1の自動変速機の遊星歯車構成と摩擦締結要素構成を説明する。
【0012】
実施例1の自動変速機は、図1及び図2に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGUと、入力軸IN(入力部材)と、出力ギアOUT(出力部材)と、第1クラッチ13R/C(第1摩擦締結要素)と、第2クラッチ234/C(第2摩擦締結要素)と、第3ブレーキ12/B(第3摩擦締結要素)と、第4ブレーキ4/B(第4摩擦締結要素)と、第5ブレーキR/B(第5摩擦締結要素)と、自動変速機ケースATCと、を備えている。
【0013】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUは、2列の遊星歯車であるシングルピニオン式遊星歯車とダブルピニオン式遊星歯車を一体化した複合型遊星歯車である。このラビニオ式遊星歯車PGUは、図1及び図2に示すように、フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、フロントサンギアSsとリングギアRに噛み合うロングピニオンPLと、リアサンギアSdとロングピニオンPLに噛み合うショートピニオンPSと、ロングピニオンPLとショートピニオンPSを回転可能に支持する共通キャリアCと、を有する。
【0014】
前記入力軸INは、図外のエンジン(駆動源)からの回転駆動トルクが、図1に示すように、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータT/Cを介して入力される軸である。
【0015】
前記出力ギアOUTは、図1に示すように、リングギアRに常時連結する。この出力ギアOUTの出力回転は、カウンターギア1→カウンターシャフト2→終減速ギア3→ドライブギア4→デファレンシャルギアケース5へと伝達される。そして、デファレンシャルギアケース5に伝達された出力回転は、デファレンシャルギアケース5と一体に回転するピニオンメートシャフト6→ピニオン7,7を経過し、ピニオン7,7に噛み合う一対のサイドギア8,9から図外の左右のドライブシャフト及び左右の駆動輪へ伝達される。
【0016】
前記第1クラッチ13R/Cは、第1速(1st)と第3速(3rd)と後退速(Rev)において入力軸INとフロントサンギアSsを選択的に連結する多板摩擦締結クラッチである。
【0017】
前記第2クラッチ234/Cは、第2速(2nd)と第3速(3rd)と第4速(4th)において入力軸INと共通キャリアCを選択的に連結する多板摩擦締結クラッチである。
【0018】
前記第3ブレーキ12/Bは、第1速(1st)と第2速(2nd)においてリアサンギアSdを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0019】
前記第4ブレーキ4/Bは、第4速(4th)においてフロントサンギアSsを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0020】
前記第5ブレーキR/Bは、後退速(Rev)において共通キャリアCを選択的に自動変速機ケースATCに固定する多板摩擦締結ブレーキである。
【0021】
前記自動変速機ケースATCは、図1に示すように、ケース内部空間にラビニオ式遊星歯車PGUと5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/B等を収納している。この自動変速機ケースATCの駆動源側には、コンバータハウジング10が連結され、コンバータハウジング10内にトルクコンバータT/Cが配置される。また、自動変速機ケースATCとコンバータハウジング10の連結部には、エンジン(駆動源)により回転駆動されるオイルポンプO/Pが配置されている。この自動変速機ケースATCには、図1に示すように、コントロールバルブボディC/Vと、該コントロールバルブボディC/Vを収めるオイルパン17が設けられている。コントロールバルブボディC/Vは、内部に各変速段での油圧を作り出す複数のコントロールバルブや油路などを有し、コントロールバルブボディ側油路と、各摩擦締結要素を押圧するピストンへのケース側油路と、のそれぞれの受け渡し箇所を、自動変速機ケースATCの後部に集中している。すなわち、自動変速機ケースATCの後部には、図1に示すように、第1クラッチ圧油路11、第2クラッチ圧油路12、第3ブレーキ圧油路13、第4ブレーキ圧油路14、第5ブレーキ圧油路15、潤滑油路16の径方向油路部を、軸方向の同じ位置に集中配置している。
【0022】
[変速構成]
図3は、実施例1の自動変速機において5つの摩擦締結要素のうち二つの同時締結の組み合わせにより前進4速及び後退1速を達成する締結作動表を示す。以下、図3に基づいて、実施例1の自動変速機の各変速段を成立させる変速構成を説明する。
【0023】
第1速(1st)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsを連結し、リアサンギアSdをケース固定することで達成する。
【0024】
第2速(2nd)の変速段は、図3に示すように、第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bの同時締結により、入力軸INと共通キャリアCを連結し、リアサンギアSdをケース固定することで達成する。
【0025】
第3速(3rd)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsと共通キャリアCを互いに連結することで達成する。
【0026】
第4速(4th)の変速段は、図3に示すように、第2クラッチ234/Cと第4ブレーキ4/Bの同時締結により、入力軸INと共通キャリアCを連結し、フロントサンギアSsをケース固定することで達成する。
【0027】
後退速(Rev)の変速段は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第5ブレーキR/Bの同時締結により、入力軸INとフロントサンギアSsを連結し、共通キャリアCをケース固定することで達成する。
【0028】
そして、図3の締結作動表から明らかなように、第1速(1st)から第4速(4th)までの隣接変速段でのアップ変速及びダウン変速は、所謂、2つの摩擦締結要素の掛け替え変速により行われる。ここで、掛け替え変速とは、変速前の変速段において同時締結されている2つの摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を締結状態のまま維持し、他の1つの摩擦締結要素を解放し、新たに1つの摩擦締結要素を締結して変速後の変速段に移行することをいう。例えば、第1速(1st)から第2速(2nd)へのアップ変速は、第3ブレーキ12/Bを締結状態のまま維持し、第1クラッチ13R/Cを解放し、第2クラッチ234/Cを締結することで行われる。
【0029】
[変速機室における各要素の配置構成]
上記のように、自動変速機ケースATCのケース内部空間(=変速機室20)には、図1に示すように、入力軸INと、ラビニオ式遊星歯車PGUと、出力ギアOUTと、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを配置している。以下、図4に基づいて、変速機室20における各要素の配置構成を説明する。
【0030】
前記変速機室20は、図4に示すように、自動変速機ケースATCの前端開口部に固定されたオイルポンプハウジング30(隔壁部材)によりケース内部空間として形成される。この変速機室20には、ラビニオ式遊星歯車PGUの駆動源に近い前方側(一方側)に、出力ギアOUTを配置する。そして、出力ギアOUTの駆動源から遠い後方側(他方側)に、第1クラッチ13R/C、第2クラッチ234/C、第3ブレーキ12/B、第4ブレーキ4/B、第5ブレーキR/Bをまとめて配置している。
【0031】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUは、図4に示すように、出力ギアOUTの後方側であって、入力軸INの外周位置に配置され、フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、共通キャリアCと、の4つを回転要素とする。この回転要素のうち共通キャリアCは、ロングピニオンPLを支持するロングピニオン軸21と、ショートピニオンPSを支持するショートピニオン軸22(図1参照)と、両ピニオン軸21,22を両端位置にて支持するフロントキャリアプレート23(第1キャリアプレート)及びリアキャリアプレート24(第2キャリアプレート)と、により構成される。
【0032】
前記入力軸INは、図4に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGUの内周側に設けられ、前記出力ギアOUTは、ラビニオ式遊星歯車PGUの回転要素の一つであるリングギアRに直結される。この出力ギアOUTは、オイルポンプハウジング30から後方側に向かって軸方向に伸びる円筒部30aに対し、ベアリング25を介して直接支持される。なお、出力ギアOUTのオイルポンプハウジング30側には、パーキングギア26が固定される。
【0033】
前記ラビニオ式遊星歯車PGUの3つの回転要素(リングギアRを除く)と各摩擦締結要素は、図4に示すように、回転メンバである第1ハブ部材31と第2ハブ部材32と第3ハブ部材33と第4ハブ部材34と第1ドラム部材35と第2ドラム部材36により連結されている。
【0034】
前記第1ハブ部材31は、図4に示すように、外周側に第2クラッチ234/Cの摩擦板がスプライン嵌合により配置され、入力軸INの外周側を通って共通キャリアCの前方側端部のフロントキャリアプレート23に連結する。
【0035】
前記第2ハブ部材32は、図4に示すように、外周側に第5ブレーキR/Bの摩擦板がスプライン嵌合により配置され、共通キャリアCの後方側端部のリアキャリアプレート24に連結する。この第2ハブ部材32は、第3ハブ部材33の外周側に設けられている。
【0036】
前記第3ハブ部材33は、図4に示すように、外周側に第3ブレーキ12/Bの摩擦板がスプライン嵌合により配置され、第2ドラム部材36の外周を通ってリアサンギアSdに連結する。
【0037】
前記第4ハブ部材34は、図4に示すように、外周側に第4ブレーキ4/Bの摩擦板がスプライン嵌合により配置され、第2ドラム部材36の第1クラッチ13R/Cよりも後方側にて第2ドラム部材36に連結する。
【0038】
前記第1ドラム部材35は、図4に示すように、内周側に第2クラッチ234/Cの摩擦相手板がスプライン嵌合により配置されるとともに、該第2クラッチ234/Cと径方向に重なる位置の外周側に第1クラッチ13R/Cの摩擦板がスプライン嵌合により配置される。そして、入力軸INの先端部にスプライン結合により連結する。つまり、第1ドラム部材35は、内周側に第2クラッチ234/Cが配置されるとともに、外周側に第1クラッチ13R/Cが配置される兼用ドラム部材である。
【0039】
前記第2ドラム部材36は、図4に示すように、内周側に第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板がスプライン嵌合により配置され、第1ハブ部材31の外周側およびリアサンギアSdの内周側を通って、フロントサンギアSsにスプライン結合により連結する。なお、この第2ドラム部材36は、第1クラッチ13R/Cの摩擦相手板がスプライン嵌合されるとともに、第4ハブ部材34が連結されるドラム部分と、フロントサンギアSsにスプライン結合される連結部分と、に分割し、ドラム部分と連結部分を周方向に噛み合わせることで構成される。
【0040】
前記第1クラッチ13R/Cは、図4に示すように、第2クラッチ234/Cより径方向外側位置であって、かつ、第2クラッチ234/Cとは少なくとも一部が径方向に重なる位置に配置される。この第1クラッチ13R/Cの第1クラッチピストン41は、第1クラッチ13R/Cの後方側であって、第2ドラム部材36に形成したピストンシリンダに配置される。第2ドラム部材36と第1クラッチピストン41の間には、第1クラッチリターンスプリング51が介装される。
【0041】
前記第2クラッチ234/Cは、図4に示すように、第1クラッチ13R/Cより径方向内側位置であって、かつ、第1クラッチ13R/Cとは少なくとも一部が径方向に重なる位置に配置される。この第2クラッチ234/Cの第2クラッチピストン42は、第2クラッチ234/Cの後方側であって、第1ドラム部材35に形成したピストンシリンダに配置される。第1ドラム部材35と第2クラッチピストン42の間には、第2クラッチリターンスプリング52が介装される。
【0042】
前記第3ブレーキ12/Bは、図4に示すように、第2クラッチ234/C及び第1クラッチ13R/Cより径方向外側位置であって、かつ、第2クラッチ234/C及び第1クラッチ13R/Cと径方向に重なる位置に配置される。この第3ブレーキ12/Bの第3ブレーキピストン43は、第3ブレーキ12/Bの後方側であって、自動変速機ケースATCと、その内側の軸方向突出ケース部61と、により形成した大円環溝のピストンシリンダに配置される。自動変速機ケースATCと第3ブレーキピストン43の間には、第3ブレーキリターンスプリング53が介装される。
【0043】
前記第4ブレーキ4/Bは、図4に示すように、自動変速機ケースATCの最後方側位置に配置される。この第4ブレーキ4/Bの第4ブレーキピストン44は、第4ブレーキ4/Bの後方側であって、自動変速機ケースATCにより形成した小円環溝のピストンシリンダに配置される。自動変速機ケースATCと第4ブレーキピストン44の間には、皿バネによる第4ブレーキリターンスプリング54が介装される。
【0044】
前記第5ブレーキR/Bは、図4に示すように、第3ブレーキ12/Bの前方側位置であって、ラビニオ式遊星歯車PGUの一部と径方向に重なる位置に配置される。この第5ブレーキR/Bの第5ブレーキピストン45は、第3ブレーキピストン43の後方側であって、自動変速機ケースATCに形成した環状溝によるピストンシリンダに配置される。第5ブレーキピストン45のリターンスプリングは、第3ブレーキリターンスプリング53を共用している。
【0045】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例における共通キャリアの大型化課題」の説明を行う。続いて、実施例1の自動変速機における作用を、「各変速段での変速作用」、「音振性能向上と大型化抑制作用」、「摩擦締結要素の潤滑作用」に分けて説明する。
【0046】
[比較例における共通キャリアの大型化課題]
ラビニオ式遊星歯車を用いて、クラッチ2個、ブレーキ3個の締結・解放の組合せにより4速を達成する特開平10−169730号公報の図9に記載された自動変速機を比較例とする。
【0047】
上記公報に記載されているように、近年、自動変速機においては、コンパクト化や低コスト化について厳しい要求が課されている。しかし、比較例に示されたレイアウトでは、共通キャリアが大型化し、コストが高いという課題がある。
【0048】
すなわち、比較例の場合、共通キャリアから第2クラッチC-2までの回転メンバが、2つあるサンギアS1,S2の間に配置されている。よって、共通キャリアの中央部に、キャリアプレートとして、センターキャリアプレートを1枚追加する必要があり、共通キャリアが大型化するし、コストが高くなる。この詳しい理由を、図5を用いながら説明する。
【0049】
ドーナツ形状のセンターキャリアプレートには、図5(a),(b)に示すように、ロングピニオンが通るロングピニオン穴を設ける必要があり(例えば、3箇所)、このロングピニオン穴の設定によって、下記の制約条件が課される。
1) ロングピニオン穴とセンターキャリアプレート外周との径方向肉厚を確保するため、センターキャリアプレートの外径が大きくなる。
2) ロングピニオン穴とセンターキャリアプレート内周との径方向肉厚を確保するため、センターキャリアプレートの内径が小さくなり、サンギアを組み付けられなくなる。
3) ロングピニオンが通るロングピニオン穴が開くため、センターキャリアプレートの強度を確保するために、プレート板厚を厚くしなければならない。
したがって、1枚追加されたセンターキャリアプレートは、1),2),3)の制約条件をクリアした外径が大きな分厚いプレートとなり、共通キャリアが径方向にも軸方向にも大型化する。センターキャリアプレートは、新たに追加を要する追加部品であることでコストが高くなる。
【0050】
なお、上記1),2),3)の制約条件を受けないためにセンターキャリアプレートに、ロングピニオンが通るロングピニオン穴を設けない構成にすると、ロングピニオンを2分割する必要がある。つまり、3個のロングピニオンを用いたラビニオ式遊星歯車の場合、ロングピニオン数が6個となり、部品点数増によりコストアップする。
【0051】
[各変速段での変速作用]
実施例1のラビニオ式遊星歯車PGUは、速度線図上で回転速度関係が直線上に並ぶ4つの回転要素として、フロントサンギアSsとリアサンギアSdとリングギアRと共通キャリアCを備えている。以下、図6〜図10に基づいて、4つの回転要素の回転速度関係変更により得られる各変速段での変速作用を説明する。
【0052】
(第1速の変速段)
第1速(1st)の変速段では、図6(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bが同時締結され、第3ブレーキ12/Bの締結によりリアサンギアSdが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsに入力回転数が入力されると、図6(b)に示すように、リアサンギアSdの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRとリアサンギアSdの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、共通キャリアCの回転数がフロントサンギアSsより減速され、リングギアRの回転数が共通キャリアCよりさらに減速される。このように、フロントサンギアSsへの入力回転数を減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第1速の変速段(ファーストアンダードライブ変速段)が達成される。
【0053】
(第2速の変速段)
第2速(2nd)の変速段では、図7(a)のハッチングに示すように、第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bが同時締結され、第3ブレーキ12/Bの締結によりリアサンギアSdが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過して共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図7(b)に示すように、リアサンギアSdの固定により、共通キャリアCとリングギアRとリアサンギアSdの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転数が共通キャリアCより減速される。このように、共通キャリアCへの入力回転数を減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第2速の変速段(セカンドアンダードライブ変速段)が達成される。
【0054】
(第3速の変速段)
第3速(3rd)の変速段では、図8(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cが同時締結される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsと共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図8(b)に示すように、ラビニオ式遊星歯車PGU2の三つの回転要素であるフロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRが一体となって回転する。このように、フロントサンギアSsと共通キャリアCへの入力回転数と同じリングギアRの回転数(=入力回転数)が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第3速の変速段(ダイレクトドライブ変速段)が達成される。
【0055】
(第4速の変速段)
第4速(4th)の変速段では、図9(a)のハッチングに示すように、第2クラッチ234/Cと第4ブレーキ4/Bが同時締結され、第4ブレーキ4/Bの締結によりフロントサンギアSsが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過して共通キャリアCに入力回転数が入力されると、図9(b)に示すように、フロントサンギアSsの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転数が共通キャリアCの回転数(=入力回転数)より増速される。このように、共通キャリアCへの入力回転数を増速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、第4速の変速段(オーバードライブ変速段)が達成される。
【0056】
(後退速の変速段)
後退速(Rev)の変速段では、図10(a)のハッチングに示すように、第1クラッチ13R/Cと第5ブレーキR/Bが同時締結され、第5ブレーキR/Bの締結により共通キャリアCが自動変速機ケースATCに固定される。
したがって、入力軸INを経過してフロントサンギアSsに入力回転数が入力されると、図10(b)に示すように、共通キャリアCの固定により、フロントサンギアSsと共通キャリアCとリングギアRの回転速度関係が一つの直線により規定される。つまり、リングギアRの回転が、フロントサンギアSsの入力回転方向と逆回転方向で、かつ、減速される。このように、フロントサンギアSsへの入力回転数を逆転減速したリングギアRの回転数が出力ギアOUTにそのまま伝達され、後退速の変速段(リバース変速段)が達成される。
【0057】
[音振性能向上と大型化抑制作用]
小型・廉価をコンセプトとする自動変速機の実用化を目指すには、比較例において未解決である「出力ギアの音振性能が劣る。」、「コントロールバルブボディが大型化し、コストが高い。」、「共通キャリアが大型化し、コストが高い。」という課題を解決する必要がある。以下、これを反映する車載性向上と大型化抑制作用を説明する。
【0058】
(a) 出力ギアOUTの音振性能がよい。
実施例1では、出力ギアOUTの前方側に摩擦締結要素を配置せず、出力ギアOUTは、隔壁部材であるオイルポンプハウジング30から軸方向の後方側に伸びる円筒部30aにベアリング25を介して支持するレイアウトを採用した。
すなわち、出力ギアOUTを支持するために中間壁を設けることなしに、出力ギアOUTを自動変速機ケースATCに固定されたオイルポンプハウジング30で直接(ベアリング25を介して)支持する。
このため、例えば、出力部材を摩擦締結要素のハブ部材を介して支持する場合に比べて、出力ギアOUTを支持する際のガタを低減でき、ノイズや振動の発生が抑制される。
【0059】
(b) コントロールバルブボディC/Vの大型化を抑制し、コストを下げられる。
実施例1では、ラビニオ式遊星歯車PGUの前方側に配置した出力ギアOUTの後方側の変速機室20に、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bをまとめて配置するレイアウトを採用した。
したがって、5つの摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを押圧する各ピストン41,42,43,44,45へのケース側の油路と、コントロールバルブボディC/V側の油路と、のそれぞれの受け渡し箇所を集中して配置できる。実施例1の場合、図1に示すように、コントロールバルブボディC/Vからの各油路11,12,13,14,15,16のうち径方向油路部を、自動変速機ケースATCの後部であって、軸方向の同じ位置に集中配置している。
このため、出力部材の前方側にケース側とコントロールバルブボディ側との油路の受け渡し箇所を設ける必要がなくなることによって、出力部材の前方側にてケース側とコントロールバルブボディ側との油路を接続するためにコントロールバルブボディを大型化する必要がなくなる。この結果、コントロールバルブボディC/Vの大型化が抑えられるし、コストも低減される。そして、コントロールバルブボディC/Vが大型化しない分、ストレーナやCPUの配置の自由度が増すとともに、コントロールバルブボディC/Vを収めるオイルパン17も小型化でき、車両搭載性も向上する。
【0060】
(c) 共通キャリアCの大型化を抑制し、コストを下げられる。
実施例1では、共通キャリアCの両端部に設けられるフロントキャリアプレート23とリアキャリアプレート24に対し第1ハブ部材31と第2ハブ部材32を連結するレイアウトを採用した。
すなわち、共通キャリアCから第2クラッチ234/Cまでの回転メンバが、ロングピニオンPL及びショートピニオンPSを支持するために共通キャリアCの前方側端部に連結された既存のフロントキャリアプレート23を用いる構成である。このため、比較例のように、共通キャリアの中央部であって、2つのサンギアの間の位置に、センターキャリアプレートを1枚追加する必要がない。
このように、共通キャリアCの両端で各ハブ部材31,32と連結するようにしたため、センターキャリアプレートの追加による共通キャリアの大型化が抑えられるし、コストも低減される。
【0061】
[摩擦締結要素の潤滑作用]
実施例1において、第1速と第2速と第3速の間の変速時には、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bによる掛け替え制御が行われるため、これら3個の摩擦締結要素13R/C,234/C,12/Bを如何に潤滑するかの工夫が必要である。以下、図11に基づき、これを反映する摩擦締結要素の潤滑作用を説明する。
【0062】
まず、第1速と第2速との間の変速時は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cとの掛け替え制御が行われる。第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cの掛け替え制御中は、両クラッチ13R/C,234/Cがスリップ状態になる。したがって、第1速と第2速との間の変速時に両クラッチ13R/C,234/Cの潤滑・冷却が必要になる。
【0063】
また、第2速と第3速との間の変速時は、図3に示すように、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bとの掛け替え制御が行われる。第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bの掛け替え制御中は、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bがスリップ状態になる。したがって、第2速と第3速との間の変速時に第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bの潤滑・冷却が必要になる。
【0064】
これに対し、実施例1では、第2クラッチ234/Cの少なくとも一部が径方向に重なる位置の外周側に第1クラッチ13R/Cを配置し、第1クラッチ13R/Cの少なくとも一部が径方向に重なる位置の外周側に第3ブレーキ12/Bを配置する構成を採用した。このため、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cと第3ブレーキ12/Bの潤滑が効率的に行える。
【0065】
例えば、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cが離れて配置されていたり、あるいは、軸方向に並んで配置されていたりすると、第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却した油は、オイル溜りに戻されるだけであり、潤滑効率が悪くなる。
【0066】
これに対し、実施例1では、入力軸INに形成された潤滑油路から第1ハブ部材31の後方側に供給された潤滑油が、図11の矢印Eに示すように径方向外側に流れ、第1ハブ部材31に形成された穴を経過して第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却する。なお、潤滑経路については、ドラム部材(及びハブ部材)には図示してしない穴が開いており、そこから潤滑油は外周側に流れる。
【0067】
一方、入力軸INに形成された潤滑油路から第1ハブ部材31と第2ドラム部材36の隙間に供給された潤滑油が、図11の矢印Fに示すように、第2ドラム部材36に沿って軸方向後方側に流れた後、径方向外側に向きを変えて流れ、第1ハブ部材31と第2ドラム部材36との対向面を経過して第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却する。加えて、第2クラッチ234/Cを潤滑・冷却した後の潤滑油が、図11の矢印Gに示すように、径方向外側に流れ、第1ドラム部材31に形成された穴を経過し、矢印Fの流れと合流して第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却する。
【0068】
そして、第2クラッチ234/C及び第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却した後の潤滑油は、図11の矢印Hに示すように径方向に流れ、第3ハブ部材33に形成された穴を経過して第3ブレーキ12/Bを潤滑・冷却する。
【0069】
さらに、入力軸INに形成された潤滑油路から第1ハブ部材31と第2ドラム部材36の隙間に供給された潤滑油が、図11の矢印Iに示すように、第2ドラム部材36に沿って軸方向前方側に流れた後、第2ドラム部材36の潤滑油穴を経過し、軸方向後方側と径方向外側とに分かれて流れる。一方の軸方向後方側の流れは、図11の矢印Jに示すように、第2ドラム部材36とリアサンギアSdの隙間を、軸方向後方側に流れた後、径方向外側に向きを変え、第2ドラム部材36と第3ハブ部材33の隙間を経過し、矢印Hの流れと合流し、第3ブレーキ12/Bを潤滑・冷却する。他方の径方向外側の流れは、ロングピニオンPLとリアサンギアSdの隙間を、軸方向後方側に流れた後、径方向外側に向きを変え、第2ハブ部材32と第3ハブ部材33の隙間を経過し、第5ブレーキR/Bを潤滑・冷却する。
【0070】
このように、第2クラッチ234/Cの摩擦プレートを潤滑・冷却した油が、第1クラッチ13R/Cを潤滑・冷却することで、第2クラッチ234/C及び第1クラッチ13R/Cを効率的に潤滑することができる。したがって、第1速と第2速との間の変速時、第1クラッチ13R/Cと第2クラッチ234/Cに対する高い潤滑・冷却要求に対して応えることができる。
【0071】
さらに、第1クラッチ13R/Cの摩擦プレートを潤滑・冷却した油が、第3ブレーキ12/Bを潤滑・冷却することで、第1クラッチ13R/C及び第3ブレーキ12/Bを効率的に潤滑することができる。したがって、第2速と第3速との間の変速時、第1クラッチ13R/Cと第3ブレーキ12/Bに対する高い潤滑・冷却要求に対して応えることができる。
【0072】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0073】
(1) フロントサンギアSsと、リアサンギアSdと、リングギアRと、前記フロントサンギアSsと前記リングギアRに噛み合うロングピニオンPLと、前記リアサンギアSdと前記ロングピニオンPLに噛み合うショートピニオンPSと、前記ロングピニオンPLと前記ショートピニオンPSを回転可能に支持する共通キャリアCと、を有するラビニオ式遊星歯車PGUと、
駆動源の回転を入力する入力部材(入力軸IN)と、
前記入力部材(入力軸IN)と前記フロントサンギアSsを選択的に連結する第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と、
前記入力部材(入力軸IN)と前記共通キャリアCを選択的に連結する第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と、
前記リアサンギアSdを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)と、
前記フロントサンギアSsを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)と、
前記共通キャリアCを選択的に自動変速機ケースATCに固定する第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)と、
前記リングギアRに常時連結する出力部材(出力ギアOUT)と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する自動変速機であって、
前記ラビニオ式遊星歯車PGUの一方側に、前記出力部材(出力ギアOUT)を配置し、
前記出力部材(出力ギアOUT)の他方側に、前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)、前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)、前記第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)、前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)を配置し、
外周側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)が配置され、前記共通キャリアCの前記一方側端部の第1キャリアプレート(フロントキャリアプレート23)に連結する第1ハブ部材31と、
外周側に前記第5摩擦締結要素(第5ブレーキR/B)が配置され、前記共通キャリアCの前記他方側端部の第2キャリアプレート(リアキャリアプレート24)に連結する第2ハブ部材32と、
前記ラビニオ式遊星歯車PGUおよび前記各摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを収納する変速機室20を自動変速機ケースATCとともに形成する隔壁部材(オイルポンプハウジング30)と、
を備え、
前記出力部材(出力ギアOUT)は、前記隔壁部材(オイルポンプハウジング30)から軸方向の前記他方側に伸びる円筒部30aに支持される。
このため、出力部材(出力ギアOUT)の音振性能を向上できるともに、コントロールバルブボディC/Vと共通キャリアCの大型化を抑制し、コスト低減を図ることができる。
【0074】
(2) 前記入力部材(入力軸IN)は、前記ラビニオ式遊星歯車PGUの内周側に設けられ、
前記第1ハブ部材31は、前記入力部材(入力軸IN)の外周側を通って前記第1キャリアプレート(フロントキャリアプレート23)と連結され、
内周側に前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)が配置されるとともに、該第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と径方向に重なる位置の外周側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)が配置され、前記入力部材(入力軸IN)に連結する第1ドラム部材35と、
内周側に前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)が配置され、前記第1ハブ部材31の外周側および前記リアサンギアSdの内周側を通って、前記フロントサンギアSsに連結する第2ドラム部材36と、
外周側に前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)が配置され、前記第2ドラム部材36の外周を通って前記リアサンギアSdに連結する第3ハブ部材33と、
外周側に前記第4摩擦締結要素(第4ブレーキ4/B)が配置され、前記第2ドラム部材36の前記第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)よりも他方側にて前記第2ドラム部材36に連結する第4ハブ部材34と、を備え、
前記第2ハブ部材32は、前記第3ハブ部材33の外周側に設けられている。
このため、上記(1)の効果に加え、ハブ部材31,32,33,34及びドラム部材35,36を取り回すことによって、5個の摩擦締結要素13R/C,234/C,12/B,4/B,R/Bを出力部材(出力ギアOUT)の他方側にまとめて配置することができる。さらに、第1速と第2速との間での変速時に掛け替えられる第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)の潤滑を効率的に行うことができる。
【0075】
(3) 前記第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)は、前記第2摩擦締結要素(第2クラッチ234/C)と径方向に重なる位置の外周側に配置される。
このため、上記(2)の効果に加え、第2速と第3速との間での変速時に掛け替えられる第1摩擦締結要素(第1クラッチ13R/C)と第3摩擦締結要素(第3ブレーキ12/B)の潤滑を効率的に行うことができる。
【0076】
以上、本発明の自動変速機を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0077】
実施例1では、オイルポンプO/Pを収納するオイルポンプハウジング30を隔壁部材とし、このオイルポンプハウジング30で出力ギアOUTを支持する例を示した。しかし、これに限定されず、例えば、オイルポンプO/Pを入力軸INと別軸に設け、変速機室を形成する隔壁部材で出力ギアを支持するものであってもよい。
【0078】
実施例1では、入出力軸を平行配置とするFFエンジン車に搭載される自動変速機の例を示した。しかし、FFエンジン車に限らず、FRエンジン車、エンジンとモータの少なくとも一方を駆動源とするハイブリッド車、モータを駆動源とする電気自動車や燃料電池車、等の様々な車両の自動変速機としても適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
PGU ラビニオ式遊星歯車
Ss フロントサンギア
Sd リアサンギア
R リングギア
PL ロングピニオン
PS ショートピニオン
C 共通キャリア
IN 入力軸(入力部材)
OUT 出力ギア(出力部材)
ATC 自動変速機ケース
C/V コントロールバルブボディ
13R/C 第1クラッチ(第1摩擦締結要素)
234/C 第2クラッチ(第2摩擦締結要素)
12/B 第3ブレーキ(第3摩擦締結要素)
4/B 第4ブレーキ(第4摩擦締結要素)
R/B 第5ブレーキ(第5摩擦締結要素)
17 オイルパン
20 変速機室
23 フロントキャリアプレート(第1キャリアプレート)
24 リアキャリアプレート(第2キャリアプレート)
30 オイルポンプハウジング(隔壁部材)
30a 円筒部
31 第1ハブ部材
32 第2ハブ部材
33 第3ハブ部材
34 第4ハブ部材
35 第1ドラム部材
36 第2ドラム部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントサンギアと、リアサンギアと、リングギアと、前記フロントサンギアと前記リングギアに噛み合うロングピニオンと、前記リアサンギアと前記ロングピニオンに噛み合うショートピニオンと、前記ロングピニオンと前記ショートピニオンを回転可能に支持する共通キャリアと、を有するラビニオ式遊星歯車と、
駆動源の回転を入力する入力部材と、
前記入力部材と前記フロントサンギアを選択的に連結する第1摩擦締結要素と、
前記入力部材と前記共通キャリアを選択的に連結する第2摩擦締結要素と、
前記リアサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第3摩擦締結要素と、
前記フロントサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第4摩擦締結要素と、
前記共通キャリアを選択的に自動変速機ケースに固定する第5摩擦締結要素と、
前記リングギアに常時連結する出力部材と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する自動変速機であって、
前記ラビニオ式遊星歯車の一方側に、前記出力部材を配置し、
前記出力部材の他方側に、前記第1摩擦締結要素、前記第2摩擦締結要素、前記第3摩擦締結要素、前記第4摩擦締結要素、前記第5摩擦締結要素を配置し、
外周側に前記第2摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記一方側端部の第1キャリアプレートに連結する第1ハブ部材と、
外周側に前記第5摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記他方側端部の第2キャリアプレートに連結する第2ハブ部材と、
前記ラビニオ式遊星歯車および前記各摩擦締結要素を収納する変速機室を自動変速機ケースとともに形成する隔壁部材と、
を備え、
前記出力部材は、前記隔壁部材から軸方向の前記他方側に伸びる円筒部に支持される
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機において、
前記入力部材は、前記ラビニオ式遊星歯車の内周側に設けられ、
前記第1ハブ部材は、前記入力部材の外周側を通って前記第1キャリアプレートと連結され、
内周側に前記第2摩擦締結要素が配置されるとともに、該第2摩擦締結要素と径方向に重なる位置の外周側に前記第1摩擦締結要素が配置され、前記入力部材に連結する第1ドラム部材と、
内周側に前記第1摩擦締結要素が配置され、前記第1ハブ部材の外周側および前記リアサンギアの内周側を通って、前記フロントサンギアに連結する第2ドラム部材と、
外周側に前記第3摩擦締結要素が配置され、前記第2ドラム部材の外周を通って前記リアサンギアに連結する第3ハブ部材と、
外周側に前記第4摩擦締結要素が配置され、前記第2ドラム部材の前記第1摩擦締結要素よりも他方側にて前記第2ドラム部材に連結する第4ハブ部材と、を備え、
前記第2ハブ部材は、前記第3ハブ部材の外周側に設けられている
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項2に記載された自動変速機において、
前記第3摩擦締結要素は、前記第2摩擦締結要素と径方向に重なる位置の外周側に配置される
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項1】
フロントサンギアと、リアサンギアと、リングギアと、前記フロントサンギアと前記リングギアに噛み合うロングピニオンと、前記リアサンギアと前記ロングピニオンに噛み合うショートピニオンと、前記ロングピニオンと前記ショートピニオンを回転可能に支持する共通キャリアと、を有するラビニオ式遊星歯車と、
駆動源の回転を入力する入力部材と、
前記入力部材と前記フロントサンギアを選択的に連結する第1摩擦締結要素と、
前記入力部材と前記共通キャリアを選択的に連結する第2摩擦締結要素と、
前記リアサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第3摩擦締結要素と、
前記フロントサンギアを選択的に自動変速機ケースに固定する第4摩擦締結要素と、
前記共通キャリアを選択的に自動変速機ケースに固定する第5摩擦締結要素と、
前記リングギアに常時連結する出力部材と、
を備え、前記5つの摩擦締結要素のうち、二つの要素を同時に締結する締結組み合わせにより、前進4速及び後退1速を達成する自動変速機であって、
前記ラビニオ式遊星歯車の一方側に、前記出力部材を配置し、
前記出力部材の他方側に、前記第1摩擦締結要素、前記第2摩擦締結要素、前記第3摩擦締結要素、前記第4摩擦締結要素、前記第5摩擦締結要素を配置し、
外周側に前記第2摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記一方側端部の第1キャリアプレートに連結する第1ハブ部材と、
外周側に前記第5摩擦締結要素が配置され、前記共通キャリアの前記他方側端部の第2キャリアプレートに連結する第2ハブ部材と、
前記ラビニオ式遊星歯車および前記各摩擦締結要素を収納する変速機室を自動変速機ケースとともに形成する隔壁部材と、
を備え、
前記出力部材は、前記隔壁部材から軸方向の前記他方側に伸びる円筒部に支持される
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機において、
前記入力部材は、前記ラビニオ式遊星歯車の内周側に設けられ、
前記第1ハブ部材は、前記入力部材の外周側を通って前記第1キャリアプレートと連結され、
内周側に前記第2摩擦締結要素が配置されるとともに、該第2摩擦締結要素と径方向に重なる位置の外周側に前記第1摩擦締結要素が配置され、前記入力部材に連結する第1ドラム部材と、
内周側に前記第1摩擦締結要素が配置され、前記第1ハブ部材の外周側および前記リアサンギアの内周側を通って、前記フロントサンギアに連結する第2ドラム部材と、
外周側に前記第3摩擦締結要素が配置され、前記第2ドラム部材の外周を通って前記リアサンギアに連結する第3ハブ部材と、
外周側に前記第4摩擦締結要素が配置され、前記第2ドラム部材の前記第1摩擦締結要素よりも他方側にて前記第2ドラム部材に連結する第4ハブ部材と、を備え、
前記第2ハブ部材は、前記第3ハブ部材の外周側に設けられている
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項2に記載された自動変速機において、
前記第3摩擦締結要素は、前記第2摩擦締結要素と径方向に重なる位置の外周側に配置される
ことを特徴とする自動変速機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−251647(P2012−251647A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126825(P2011−126825)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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