説明

自動定寸ヘッド

【課題】 バイトが破損したり、測定子を揺動させるエアーシリンダの作動不良等のトラブルや調整ミスによって測定ジョーの先端部に設けた測定子がワークと衝突した場合でも、その衝撃が装置全体に伝わらないようにして、部分的な損傷だけで済ませるようにする。
【解決手段】 ケース本体23に揺動自在に設けられた一対の測定ジョー20と、この測定ジョー20を開閉するエアーシリンダ40と、前記測定ジョー20の先端部に取付けられた測定子22をワーク21に接触させた時の測定ジョー20の位置変化に基づいて測定値を出力する検出器30とを備えてなる自動定寸ヘッドHにおいて、前記測定子22には該測定子22に所定以上の衝撃が加わった時に測定子22の先端部22aが破損する切欠部39を設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、円筒研削盤や自動旋盤などの工作機械に直接取り付けて、研削中あるいは切削中のワークの外径寸法や内径寸法を測定する自動定寸ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の自動定寸ヘッドとしては、例えば図10示した内径測定定寸装置が知られている。これはケース本体1に測定方向、及びリトラクタ方向に揺動自在に設けられた測定ジョー2と、この測定ジョー2に連結されたレバー13を介して測定方向に付勢するバネ3と、前記ケース本体1の外側に設けられエアーコンプレッサ4からの圧縮エアーの供給・停止によって作動する左右一対のエアーシリンダ5とを備えたものであり、各エアーシリンダ5の一室にエアーコンプレッサ4から圧縮エアーを供給すると、ロッド6がそれぞれ伸長してL字形状の測定ジョー2の基端部を押すことにより測定ジョー2が支点軸7を中心にリトラクタ方向、即ちワーク8に衝突しない方向に揺動する。そして、リトラクタ状態の測定ジョー2をワーク8の内径部9に挿入したのち、ソレノイドバルブ10を切り替えて圧縮エアーをエアーシリンダ5の他室に供給すると、ロッド6が収縮することにより測定ジョー2がバネ3の付勢力によって支点軸7を中心に測定方向に揺動し、測定ジョー2の先端部に固着された測定子11が前記内径部9に接触する。このとき、測定ジョー2の位置変化に基づいて発生する作動トランス12からの出力信号に基づいて、ワーク8の内径部寸法を測定することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のように支点軸7によって測定ジョー2を揺動させて測定する方法では、測定ジョー2の先端での円弧誤差を出来るだけ少なくするために、測定ジョー2の揺動幅は極めて小さく設定されており、1mm前後の場合も少なくない。そのため、上記記従来の内径測定定寸装置のように、揺動させた測定ジョー2の先端部を直接ワーク8の内径部9に挿入する方法では、ワーク8の加工中にバイトが破損する等のトラブルで所定の内径寸法まで削れていない場合やエアーシリンダ5が何らかのトラブルでロッド6が十分に伸びず測定ジョー2が所定位置まで揺動していない場合、更には測定ジョー2をセッテングする際に調整ミスがあった場合等では、測定ジョー2をワーク8の内径部9に挿入する際、測定ジョー2の先端部若しくは測定ジョー2に固着された測定子11がワーク8と衝突してしまい、その時の衝撃でワーク8を傷付けるだけでなく、測定ジョー2及びこれに一体に連結されたレバー13やエアーシリンダ5、更にはケース本体1内のバネ3や作動トランス12など測定装置全体を破損してしまうといった問題があった。
【0004】そこで、本発明の目的は、上述のようなトラブルや調整ミスによって測定ジョーの先端部に設けた測定子がワークと衝突した場合でも、その衝撃が装置全体に影響しないようにして、測定子のみの交換だけで済むようにした自動定寸ヘッドを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る自動定寸ヘッドは、ケース本体に揺動自在に設けられた一対の測定ジョーと、この測定ジョーを開閉する駆動装置と、前記測定ジョーの先端部に取付けられた測定子をワークに接触させた時の測定ジョーの位置変化に基づいて測定値を出力する検出器とを備えてなる自動定寸ヘッドにおいて、前記測定子には該測定子に所定以上の衝撃が加わった時に測定子の一部が破損する脆弱部を設けたことを特徴とする。
【0006】また、本発明の請求項2に係る自動定寸ヘッドは、前記脆弱部が、測定子に設けた切欠部であることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて本発明に係る自動定寸ヘッドの実施の形態を説明する。図1乃至図3はワークの外径寸法を測定する自動定寸ヘッドの実施例を示したものであり、図1は装置全体の水平方向の断面図、図2は装置全体の縦方向の断面図である。また、図3は前記図1のA−A線に沿った断面図である。
【0008】上記図1乃至図3において、この自動定寸ヘッドHは、平行に配列された一対の測定ジョー20を有しており、その先端部にはワーク21の外周面に両側から挟み込むように接触する測定子22が取付けられている。また、測定ジョー20の後端部は、ケース本体23内に設けられた支点軸24によって揺動自在に支持されたレバー25の先端部にネジ26によって一体に連結されている。従って、測定ジョー20は、ケース本体23に対して左右方向で揺動自在となる。
【0009】上記測定子22は、締付けボルト38によって測定ジョー20の長手方向と直交する方向にクランプされており、ワーク21の外径の大きさによって測定ジョー20からの先端突出量が調整される。この測定子22は、細長い薄板状の部材で形成されており、先端近傍には前側から斜め後方に切り込んだ切欠部39が形成されている。この切欠部39は、測定子22に前側から所定の衝撃が加わった時に折れて先端部22aを破損させ、その衝撃が測定ジョー20やレバー25に伝達されないようにするものである。従って、測定子22に所定以上の衝撃によって破損することができれば、図4に示したように切欠部39の切込み角度を変えたり、また図5R>5に示したように切欠部39の切込み方向を変えることができ、更には図6に示したように測定子22の前後から切り込んだ一対の切欠部39を設けても良い。なお、上記したような切欠部39を設けることなく、測定子22の先端部が一定以上の衝撃で破損するような脆弱部を測定子22に設けることも可能である。
【0010】前記各レバー25の後端部は、圧縮コイルバネ27によってケース本体23の中央壁28に連結され、常時はこの圧縮コイルバネ27のバネ力によって測定ジョー20を閉じる方向、即ち測定方向へ揺動するように付勢されている。なお、図1において、符号29は前記レバー25が圧縮コイルバネ27によって揺動した時のストッパであり、このストッパ29が本体ケース23の内壁面に当接することで測定子22の先端同士が当たるのを防止している。
【0011】また、前記圧縮コイルバネ27の近傍において、レバー25には測定子22がワーク21の外周面に接触した時のレバー25の位置変化に基づいて測定信号を出力する検出器30が配置されている。この検出器30は、差動トランス型の検出構造を有しており、一方のレバー25から延びるコア31と、このコア31を囲むようにして他方のレバー25から延びる筒体の内周に設けられたコイル32とで構成されている。
【0012】更に、上記レバー25の中央部には前記測定ジョー20を揺動させるための開閉部33が設けられている。この開閉部33は、図3に詳細を示したように、互いに他方のレバー25に向かって伸びるアーム部34と、その先端部に形成されたコンタクト部35とで構成されている。アーム部34は、レバー25の上面側と下面側からそれぞれ水平方向に延びる横アーム36と、先端部が互いにクロスしたのち、垂直方向に延びる縦アーム37とで構成され、この縦アーム37に互いに向かい合うように一対のコンタクト部35が設けられている。両方のコンタクト部35の間には隙間が形成されており、この隙間に後述するエアーシリンダ40のロッド41の先端部が進退可能に押し入る。伸長したロッド41の先端が隙間に押し入ってコンタクト部35を押し広げると、左右のアーム部34が更にクロスするために圧縮コイルバネ27が押し縮められ、測定ジョー20が開く方向にレバー25が揺動するとになる。
【0013】一方、上述したエアーシリンダ40は、図1R>1及び図2に示したように、ケース本体23内に一本だけが配置される。エアーシリンダ40は、前記レバー25の下側であって、且つ左右のレバー25の真ん中に位置するように配設され、また前述したように、ロッド41の先端円錐部41aがコンタクト部35の隙間に向かうように位置している。なお、エアーシリンダ40の後端からは図示外のコンプレッサ装置等に連通する配管42が延びている。
【0014】この実施例では前記エアーシリンダ40の上方と前記レバー25の後方とによって形成されるケース本体23内の空間部43に、前記検出器30から出力された測定信号を処理するための回路が搭載されたコントロール基板44が配設されている。このコントロール基板44はケース本体23に固定されており、検出器30及び図示外の外部機器と配線45,46によってそれぞれ接続されている。なお、配線46は、ケース本体23の後端に固定されたチューブ47内に配設され、配線46に荷重が掛からないように配慮されている。このコントロール基板44は、検出器30からの測定値に基づいた電気信号の出力を、ゼロ点調整及びゲイン調整をしてから外部アンプ等に出力するものである。これは検出器30から得られた電気信号の出力およびゼロ点が自動定寸ヘッド毎にばらつきがあるため、このコントロール基板44でこれらを調整し互換性を保つ必要があるからである。従来はこのコントロール基板44がケース本体23の外部に設けられ、コードによってつながれていた。そのため、自動定寸ヘッドHを設置する時やゼロ点等を調整する時などの取り扱いが面倒となるばかりかコードが引張られると測定精度に影響が出るといった問題があった。上記実施例では、一本のエアーシリンダ40を配設することでケース本体23内に有効な空間部43を形成し、この空間部43を利用してコントロール基板44を配設したので上記の問題を解決することができた。
【0015】この実施例における支点軸24は、図7に示したように、レバー25に設けられたピン50の上下がラジアル玉軸受51,52で支持された構造となっており、これによってレバー25の水平方向での揺動を可能としている。ラジアル玉軸受51,52の外輪51a,52aは、ケース本体23に固定されたベアリングホルダ53に固定されているが、特に上側のラジアル玉軸受51の外輪51aがベアリングホルダ53から僅かに突出している。そして、この外輪51aを下方に押え込むようにして一枚の穴明きプレート54が両方のレバー25のラジアル玉軸受51に架け渡され、ベアリングホルダ53の上面に固着されている。このようにしてラジアル玉軸受51に与圧を掛けることで、レバー25を揺動させた時の支点軸24でのガタをなくすことができ、結果的に測定精度の繰り返し安定性が増すことになる。
【0016】次に、上記のように構成された自動定寸ヘッドHの作用について説明する。図8に示したように、エアーコンプレッサからエアーシリンダ40の一室に圧縮エアーが送り込まれるとロッド41が伸長し、先端円錐部41aで開閉部33のコンタクトピン部35を左右に押し広げる。これにより、レバー25は圧縮コイルバネ27の付勢力に抗して、支点軸24を中心として測定ジョー20を開く方向に揺動する。自動定寸ヘッドHをワーク21に近づけ、測定子22をワーク21の両側に位置させる。次に、ソレノイドバルブを切り替えて再びエアーコンプレッサからエアーシリンダ40の他室に圧縮エアーを供給すると、ロッド41が収縮してコンタクト部35から抜け出ると、今度は圧縮コイルバネ27の付勢力によって測定ジョー20が閉じる方向に揺動し、測定子22の先端がワーク21の外周面に接触する。この時のレバー25の位置変化量が検出器30によって検出され、電気信号に変換されて外径測定値として出力される。
【0017】上記の測定過程において、例えばワーク21を切削するバイト(図示せず)の破損などでワーク21の外径に所定の切削ができないような場合や、エアーシリンダ40が作動されずに測定ジョー20が外側へ十分に揺動していない場合等には、図9に示したように、測定ジョー20を開いた状態でワーク21に近づけ、測定子22をワーク21の両側に位置させる際に、測定子22の先端部22aがワーク21に衝突するおそれがあるが、この実施例では衝突したときの衝撃で切欠部39の部分が折れて先端部22aが破損してしまうために、衝撃力が測定ジョー20やレバー25には伝わらず、ケース本体23内の部品を損傷することがない。このような時にはクランプの締付けネジ38を緩め、破損した測定子22を新しいものに交換して再びクランプすることで測定を継続させることができる。
【0018】なお、上記自動定寸ヘッドHは、一般に工作機械のスライドユニット等に取り付けられており、ワーク21が加工されている間はワーク21から離れた位置で待機している。そして、ワーク21の加工が一旦終了するとスライドユニットが移動して自動定寸ヘッドHをワーク21に近づけると共に測定ジョー20を開く方向に揺動し、一対の測定子22間にワーク21を入れる。そして、上述したように、測定子22を閉じてワーク21の外周面に接触させ、外径寸法を測定する。このとき、ワーク21の外径寸法が予め設定された寸法に達していないと、自動定寸ヘッドHが待機位置に戻った後、再びワーク21の加工が開始され、以後上記動作を繰り返しながら所定の外径寸法に仕上げる。
【0019】上記実施例に係る自動定寸ヘッドHは、ワークの外径寸法を測定する場合のものであるが、同様にしてワークの内径寸法を測定する場合にも適用できることは勿論である。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る自動定寸ヘッドによれば、測定ジョーの先端部に測定子を取付け、この測定子をワークに接触させてワークの外径寸法や内径寸法を測定する場合に、前記測定子に所定以上の衝撃が加わった時に測定子の一部が破損するような脆弱部を設けたので、予期せぬトラブルや調整ミス等によって測定子がワークに衝突した場合でも、測定子だけが破損し、その衝撃が測定ジョーや測定ジョーに連結されたレバー等には伝達されないので、ヘッド自体が破損するといったことはなく、測定子の交換のみで済ませることができる。
【0021】また、本発明に係る自動定寸ヘッドによれば、脆弱部を切欠部で構成した場合には、簡易な構造でありながら確実に目的を達成できるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動定寸ヘッドの水平方向の断面図である。
【図2】本発明に係る自動定寸ヘッドの縦方向の断面図である。
【図3】前記図1のA−A線に沿った断面図である。
【図4】測定子に設けた切欠部の切込み角度を変えた場合の部分平面図である。
【図5】測定子に設けた切欠部の切込み方向を変えた場合の部分平面図である。
【図6】測定子に設けた切欠部の切込み数を増やした場合の部分平面図である。
【図7】図2においてB部を拡大した支点軸の断面図である。
【図8】エアーシリンダのロッドを伸長したときの測定ジョーの動きを示す断面図である。
【図9】測定子の先端部が切欠部から破損する状態を示す説明図である。
【図10】従来における内径測定定寸装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
H 自動定寸ヘッド
20 測定ジョー
21 ワーク
22 測定子
22a 測定子の先端部
23 ケース本体
30 検出器
39 切欠部(脆弱部)
40 エアーシリンダ(駆動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケース本体に揺動自在に設けられた一対の測定ジョーと、この測定ジョーを開閉する駆動装置と、前記測定ジョーの先端部に取付けられた測定子をワークに接触させた時の測定ジョーの位置変化に基づいて測定値を出力する検出器とを備えてなる自動定寸ヘッドにおいて、前記測定子には該測定子に所定以上の衝撃が加わった時に測定子の一部が破損する脆弱部を設けたことを特徴とする自動定寸ヘッド。
【請求項2】 前記脆弱部が、測定子に設けた切欠部であることを特徴とする請求項1記載の自動定寸ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2000−292115(P2000−292115A)
【公開日】平成12年10月20日(2000.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−94189
【出願日】平成11年3月31日(1999.3.31)
【出願人】(000124362)河口湖精密株式会社 (120)
【Fターム(参考)】