説明

自動混合弁およびこれを備えたタンク

【課題】大掛かりな設備構成とすることなくコンパクトな構成にでき、それでいて各種成分の所定量の送給を自動化可能とし、成分配合を変更する際にも、異種成分の混入を確実に少なくできる自動混合弁およびこれを備えたタンクを提供する。
【解決手段】一端に開口部1Aを有すると共に複数の液状成分導入口1a〜1dを設けた筒状のバルブハウジング1と、このバルブハウジング1に収納されてバルブハウジング1内を摺動可能な切り換えバルブ本体2と、この切り換えバルブ本体2に接続されて、切り換えバルブ本体2を前後動可能にするエアーシリンダー3と、このエアーシリンダー3を構成する駆動軸5と接続されて、切り換えバルブ本体2を駆動軸5周りに旋回させる旋回手段6とを有する。切り換えバルブ本体2が、複数の液状成分導入口1a〜1dから導入される液状成分を個別に開口部1Aに排出可能な経路2aを形成している自動混合弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動混合弁およびこれを備えたタンクに関し、詳しくは、硬質ポリウレタン発泡原液などの各種成分の所定量の送給を自動化可能にする自動混合弁およびこれを備えたタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
各種建築構造材や、産業用断熱外壁などとして硬質ポリウレタンフォームパネルが多用されている。この硬質ポリウレタンフォームパネルを製造する場合、上下面材の間に硬質ポリウレタンフォームを発泡させてサンドイッチ状にしたラミネートパネルに成形されるが、連続式の製造ラインでサンドイッチ状にしてから所定長さに裁断して製造する方法と、予め配置された型内の下面材上に硬質ポリウレタン発泡原液を注入した後、上面材をラミネートするバッチ式で製造する方法とがある(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
いずれの場合も、硬質ポリウレタン発泡原液となるポリオール成分とイソシアネート成分を、ミキシングヘッドから吐出直前に所定の割合に均一混合し、この混合液を下面材上に吐出した後、上面材を被覆し、所定厚みの形状に保持し冷却固化して、上下両面材の間に硬質ポリウレタンフォームを配置した硬質ポリウレタンフォームパネルを製造する。
【0004】
これらポリオール成分やイソシアネート成分も多種類の有効成分が所定割合だけ配合されて構成されており、これらをミキシングヘッドに送給する前にも各種有効成分の所定量を配合して、均一混合する必要がある。
【0005】
そこで、各種成分の所定量をタンクに投入した後、撹拌機にて十分に撹拌し、この均一撹拌された混合液をミキシングヘッドに送給して吐出する。その場合、混合成分が多種類であると、タンクへの配管数は多くなり、しかもそれぞれの配管に供給量を調整するバルブが取り付けられているため、全体として、かなり大掛かりな設備構成とならざるをえない。
【0006】
更に、各種成分を所定量だけ投入して混合する工程を自動化すべく、複数の液状成分の配管を共用し、自動バルブを兼用して使用するようにすると、成分配合を切り換える際に、異種成分が混入して品質上の問題を生じるため、配管あるいはバルブ内の清掃を、吐出する毎に十分に行う必要があり、多大な労力を要する。
【0007】
【特許文献1】特開2003−145558号公報
【特許文献2】特開2005−219363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、大掛かりな設備構成とすることなくコンパクトな構成にでき、それでいて各種成分の所定量の送給を自動化可能とし、成分配合を変更する際にも、異種成分の混入を確実に少なくできる自動混合弁およびこれを備えたタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係る自動混合弁の特徴構成は、一端に開口部を有すると共に複数の液状成分導入口を設けた筒状のバルブハウジングと、このバルブハウジングに収納されてバルブハウジング内を摺動可能な切り換えバルブ本体と、この切り換えバルブ本体に接続されて、切り換えバルブ本体を前後動可能にする前後動駆動手段と、この前後動駆動手段を構成する駆動軸と接続されて、前記切り換えバルブ本体を駆動軸周りに旋回させる旋回手段とを有していて、前記切り換えバルブ本体が、複数の前記液状成分導入口から導入される液状成分を個別に前記開口部に排出可能な経路を形成していることにある。
【0010】
この構成によれば、大掛かりな設備構成とすることなく、切り換えバルブ本体を回転駆動させることにより、複数の液状成分を個別に順次排出することができ、しかも、排出する毎に前後動駆動手段を作動させて切り換えバルブ本体を前後動させることにより、バルブハウジング内の液状成分を排出できるので、バルブハウジング内に液状成分を残留するのを確実に抑えることができる。のみならず、液状成分の定量供給や前後動駆動手段の前後動、あるいは旋回手段による旋回駆動などは自動化が容易となる。なお、本明細書において液状成分とは、液体のみならず固液混合体などの流体を含む概念として用いる。
【0011】
その結果、大掛かりな設備構成とすることなくコンパクトな構成にでき、それでいて各種成分の所定量の送給を自動化可能とし、成分配合を変更する際にも、異種成分の混入を確実に少なくできる自動混合弁およびこれを備えたタンクを提供することができた。
【0012】
前記切り換えバルブ本体に形成されている経路が、前記切り換えバルブ本体の外周面の一部が切り欠かれて、1種類の液状成分導入口と前記バルブハウジングの開口部とを結ぶようになっていると共に、前記前後動駆動手段がエアーシリンダーであることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、成分配合を切り換えて変更する際にも、異種成分の混入を一層確実に少なくでき、しかも切り換えバルブ本体の加工が容易であり、製造コストを低減できると共に、前後動駆動手段としてエアーシリンダーを用いると前後動範囲を大きくでき、切り換えバルブ本体の前後動により、一層確実にバルブハウジング内の残留成分を排出できる。
【0014】
更に、本発明にかかるタンクの特徴構成は、請求項1又は2記載の自動混合弁の1又は複数個を取り付けたことにある。
【0015】
この構成によれば、大掛かりな設備構成とすることなくコンパクトな構成にでき、それでいて各種成分の所定量の送給を自動化可能とし、成分配合を変更する際にも、異種成分の混入を確実に少なくできる自動混合弁を備えたタンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る自動混合弁の概略横断面構造であり、図2(イ)、(ロ)は図1のII−II断面構造を示す。
【0017】
この自動混合弁は、図1に示すように、液状成分を混合するタンクの液状成分受入口(図示略)に接続可能になっていて、一端に開口部1Aを有する筒状をしたバルブハウジング1と、このバルブハウジング1に収納され内周面に摺動可能に摺接している、棒状をしたロッド式の切り換えバルブ本体2と、この切り換えバルブ本体2の後端側に接続されて、切り換えバルブ本体2を前後動可能にするエアシリンダー(前後動駆動手段に相当)3と、このエアシリンダー3を構成する駆動軸5と接続されて、この駆動軸5を旋回させることにより、切り換えバルブ本体2を駆動軸5の周りに旋回させる旋回用モーターを内蔵した旋回手段6と、等を備えて構成されている。
【0018】
バルブハウジング1の外周面には、その長さ方向中間箇所に、液状成分を導入すべく導入口1a〜1dが円周方向に4箇所、略等間隔で形成されていて、それぞれの導入口1a〜1dには、液状成分供給源(図示略)と接続している配管4a〜4dが溶接などの方法により取り付けられている。このように、本実施形態の場合、4種類の液状成分A〜Dが順次導入可能になっているが、もとより導入口の数はこれに限定されるものではなく、2〜3箇所あるいは、5箇所以上設けてもよい。なお、図番1Bは、タンクに形成されたフランジ(図示略)との接続を容易にするためのフランジである。
【0019】
切り換えバルブ本体2は、図1、2にその断面構造を示すように、その外周面が回転可能にバルブハウジング1の内周面に摺接していると共に、外周面の一部が切り欠かれていて、4種類の成分の内、1種類の導入口1aとバルブハウジング1の開口部1Aとを結ぶ経路2aを形成している。そして、旋回用モーターの旋回動作によって、4種類の液状成分の導入口に対して、順次連通するように切り換えられるようになっている。
【0020】
その場合、液状成分の1をタンクに排出した後、排出した液状成分の一部が経路2a内に残留することがあるので、エアシリンダー3の駆動軸5を前方へ駆動することにより、これと接続している切り換えバルブ本体2を前方に押し出し、液状成分を確実にタンク側に押し出した後、エアシリンダー3の駆動軸5を後退させるようにする。このようにすれば、切り換えバルブ本体2とバルブハウジング1の内周面との間に形成されている経路2a内の液状成分は、略確実に排出されることになる。
【0021】
図2(イ)は、液状成分Aを、経路2aを介してタンク内に導入する状態を示す。液状成分Aの導入が終わると、エアシリンダー3の駆動軸5を前方へ駆動して切り換えバルブ本体2を前方に押し出し、液状成分Aを経路2aから確実に排出する。
【0022】
ついで、旋回手段6の旋回用モーターを用いて切り換えバルブ本体2を略90°旋回させ、次の液状成分Bを導入する。かかる動作を繰り返す。そして、図2(ロ)は、旋回用モーターを用いて切り換えバルブ本体2を旋回させ、液状成分Dを導入する状態になっていることを示す。
【0023】
具体例として、硬質ポリウレタン発泡原液として用いられるポリオール成分を例に上げれば、ポリオール化合物、触媒、難燃剤、発泡剤などが用途に応じて、それぞれ複数種から選択して配合、混合される。A〜D成分として、例えば、複数のポリオール化合物が供給される例を挙げることができる。もとより、本実施形態の自動混合弁の複数個をタンクに取り付けることにより、所定成分の全てを送給するようにすることができる。
【0024】
このように、本実施形態に示す自動混合弁の場合、大掛かりな構造にすることなく、4成分を順次タンク内に送給させることができ、しかも各成分の送給が混合、完了した後に、バルブハウジング1内の液状成分を排出するようにしているので、バルブハウジング1内の経路2a中に液状成分が滞留することを防止して、所定の液状成分が所定量通りにタンクへ送給され、切り換え時に残留液が次のポリオール成分などの組成物に不純物として混入することが防止され、安定した品質の組成物を製造できる。もとより、バルブハウジング1内の経路2a中で液状成分どうしの反応が進行するといった弊害も確実に防止できる。
【0025】
のみならず、本自動混合弁を構成するエアシリンダー3と、このエアシリンダー3の駆動軸5を旋回させる旋回用モーターを内蔵した旋回手段6などは、別に設けた制御機構によりその駆動を容易に自動化でき、作業者の労力を軽減できて、高い作業効率を達成できる。
【0026】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態では、液状成分を導入する経路2aの断面を、円柱状の切り換えバルブ本体2の一部を半月様に切り欠いた構造としたが、経路2aの断面はこれに限定されるものではなく、図3に示すように、略L形に切り欠いた断面形状2a’としてもよい。これによっても、図2に示した切り換えバルブ本体2と同様な効果がられる。このように、経路の断面は、所定液状成分のみを確実にタンク側に送給できれば、他の形状であってもよい。
(2)上記実施形態では、前後動駆動手段としてエアーシリンダーを用いた例を示したが、切り換えバルブ本体の前後動を可能にする機構であれば、他の機構を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、他成分を順次混合して所定の混合液体を調合するような場合に広く利用でき、上記した硬質ポリウレタンフォームパネルを製造する場合に限定して利用されるものではなく、各種化学工業、食品工業、医薬品工業、ICなど電子機器製造業の他、各種製造業に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動混合弁の概略部分横断面図
【図2】図1のII−II断面図
【図3】本発明の別実施形態に係る自動混合弁の図2と同様な断面図
【符号の説明】
【0029】
1 バルブハウジング
1A 開口部
1a,1b 液状成分導入口
1c,1d 液状成分導入口
2 切り換えバルブ本体
2a 経路
3 前後動駆動手段(エアーシリンダー)
5 駆動軸
6 旋回手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有すると共に複数の液状成分導入口を設けた筒状のバルブハウジングと、このバルブハウジングに収納されてバルブハウジング内を摺動可能な切り換えバルブ本体と、この切り換えバルブ本体に接続されて、切り換えバルブ本体を前後動可能にする前後動駆動手段と、この前後動駆動手段を構成する駆動軸と接続されて、前記切り換えバルブ本体を駆動軸周りに旋回させる旋回手段とを有していて、前記切り換えバルブ本体が、複数の前記液状成分導入口から導入される液状成分を個別に前記開口部に排出可能な経路を形成している自動混合弁。
【請求項2】
前記切り換えバルブ本体に形成されている経路が、前記切り換えバルブ本体の外周面の一部が切り欠かれて、1種類の液状成分導入口と前記バルブハウジングの開口部とを結ぶようになっていると共に、前記前後動駆動手段がエアーシリンダーである請求項1記載の自動混合弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動混合弁の1又は複数個を取り付けたタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−144649(P2007−144649A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338823(P2005−338823)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】