説明

自動製パン器

【課題】穀物粒を出発原料に用いる場合と穀物粉を出発原料に用いる場合との両方に適切に対応できる、ユーザにとって便利な自動製パン器を提供する。
【解決手段】自動製パン器は、穀物粒を出発原料に用いる第1の場合と、穀物粉を出発原料に用いる第2の場合とで、パン原料を投入するパン容器を異ならせてパンを製造する。前記第1の場合には第1のパン容器60が本体内に設けられる焼成室30に収容され、前記第2の場合には第2のパン容器(図示せず)が焼成室30に収容される。第1のパン容器60及び前記第2のパン容器のうち、いずれか一方が焼成室30に収容された場合にのみ、焼成室30にパン容器が収容されたことを検知するパン容器検知手段120が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内のパン原料を混練ブレードで混練して練り上げ(練り工程)、発酵工程を経た後に、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる(焼成工程)仕組みのものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来においては、このような自動製パン器を用いてパンを製造する場合、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料を混ぜたミックス粉を入手し、これを製パン原料として用いることによってパンを製造していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−116526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般家庭においては米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物を所持していることがある。このために、自動製パン器を用いて穀物粒から直接パンを製造することができれば非常に便利である。このようなことから、本出願人らは、鋭意研究の末、穀物粒を原料としてパンを製造する方法を発明している。なお、これについては、先に特許出願を行っている(特願2008−201507)。
【0006】
先に出願したパンの製造方法について紹介しておく。このパンの製造方法では、まず、穀物粒を液体と混合し、この混合物を粉砕ブレードによって粉砕する(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉に例えばグルテンやイースト等を加えて生地に練り上げ(練り工程)、生地を発酵(発酵工程)させた後、パンに焼き上げる(焼成工程)。
【0007】
ここで、ユーザの利便性を考えると、自動製パン器の構成として、米粒等の穀物粒を出発原料として用いる場合と、小麦粉や米粉といった穀物粉を出発原料として用いる場合との両方に対応できる構成であることが望まれる。この点、本出願人らは、種々の検討を行う中で、穀物粒を出発原料に用いる場合と、穀物粉を出発原料に用いる場合とで、パン容器(パン原料を投入する容器で、この容器には粉砕用のブレードや混練用のブレードが備えられるようになっている)を使い分ける構成を、好ましい形態の1つと考えるに至っている。
【0008】
しかしながら、このようなパン容器の使い分けを行う構成の場合、自動製パン器の制御部が、いずれの仕様のパン容器が自動製パン器にセットされているかということを把握していないと不都合であることがわかった。自動製パン器には、穀物粒(米粒等)を粉砕する必要があるために、粉砕用のブレードを高速回転するモータが備えられている。自動製パン器の制御部が、セットされているパン容器に関する情報を有しない場合には、例えば、穀物粉(小麦粉、米粉等)を出発原料として用いる場合のパン容器がセットされているにもかかわらず、誤って粉砕用のモータを駆動してしまうという事態が起こり得る。このような事態が起こると、パン容器内のパン原料が飛散してしまって出来の良いパンが製造できない場合がある。また、場合によっては、ユーザが危険な目に合うといったことも考えられる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、穀物粒を出発原料に用いる場合と穀物粉を出発原料に用いる場合との両方に適切に対応できる、ユーザにとって便利な自動製パン器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、穀物粒を出発原料に用いる第1の場合と、穀物粉を出発原料に用いる第2の場合とで、パン原料を投入するパン容器を異ならせてパンを製造する自動製パン器であって、前記第1の場合には第1のパン容器が本体内に設けられる焼成室に収容され、前記第2の場合には第2のパン容器が前記焼成室に収容され、前記第1のパン容器及び前記第2のパン容器のうち、いずれか一方が前記焼成室に収容された場合にのみ、前記焼成室にパン容器が収容されたことを検知するパン容器検知手段が設けられていることを特徴としている。
【0011】
本構成の自動製パン器によれば、パン容器検知手段を用いて、焼成室に収容されているパン容器が、第1のパン容器と第2のパン容器とのうちのいずれのパン容器であるかを判断できる。このために、焼成室に収容されているパン容器に対応した適切な制御を行うことが可能になる。
【0012】
上記構成の自動製パン器において、前記第1のパン容器の底部には、粉砕ブレード及び第1の混練ブレードを回転可能とする第1のブレード回転軸が支持され、前記第2のパン容器の底部には、第2の混練ブレードを回転可能とする第2のブレード回転軸が支持され、前記本体内には、前記粉砕ブレードを回転する際に使用される第1のモータと、前記第1の混練ブレード及び前記第2の混練ブレードを回転する際に使用される第2のモータとが設けられ、前記第1のブレード回転軸及び前記第2のブレード回転軸は、前記第1のモータの駆動によって回転可能であると共に、前記第2のモータの駆動によって回転可能であるのが好ましい。
【0013】
本構成によれば、第1のパン容器と第2のパン容器とを使い分ける構成の自動製パン器において、本体のサイズを小型化可能である。ただし、この構成の場合には、第1のパン容器と第2のパン容器とのいずれが焼成室に入っている場合でも、高速回転される第1のモータ(粉砕用のモータ)によってブレード回転軸を回転することが可能である。このために、第2のパン容器が焼成室に入っているにもかかわらず、高速回転する第1のモータを誤って駆動させてしまうという事態を引き起こしかねない。しかし、本構成の自動製パン器は、上述のパン容器検知手段を備えるために、第2のパン容器が焼成室に収容されている場合に誤って第1のモータ(高速回転する)を動作させてしまう、という事態を防止するように制御可能である。
【0014】
具体的には、上記構成の自動製パン器において、前記パン容器検知手段を用いて前記焼成室に前記第2のパン容器が収容されているか否かを判断すると共に、前記第2のパン容器が前記焼成室に収容されていると判断される場合には、前記第1のモータが駆動されないように制御する制御手段を備えるようにすればよい。
【0015】
また、上記構成の自動製パン器において、前記パン容器検知手段は、前記焼成室の壁面から突出するボタンが押圧されることによりオン状態になるスイッチであることとしてもよい。本構成によれば、上述のパン容器検知手段を例えば安価に得やすい等のメリットがある。
【0016】
上記パン容器検知手段を上記スイッチにより構成する場合の自動製パン器の構成として、前記第1のパン容器は、前記第2のパン容器よりも高さが高く設けられ、前記第2のパン容器の開口部側縁には鍔部が形成され、前記ボタンは、前記第2のパン容器が前記焼成室に収容された状態で、前記鍔部に押圧されて前記スイッチがオン状態となるように、前記焼成室の壁面に設けられる位置及び前記焼成室の壁面からの突出量が調整されると共に、前記第1のパン容器が前記焼成室に収容された状態で、前記第1のパン容器の側壁に接触しないように前記焼成室の壁面からの突出量が調整されているようにしてもよい。
【0017】
また、他の構成として、前記第2のパン容器の開口部側縁には鍔部が形成され、前記第1のパン容器の外壁には、前記鍔部より低い位置において突出する部分を有する突起部が設けられ、前記ボタンは、前記第1のパン容器が前記焼成室に収容された状態で、前記突起部に押圧されて前記スイッチがオン状態となるように、前記焼成室の壁面に設けられる位置及び前記焼成室の壁面からの突出量が調整されると共に、前記第2のパン容器が前記焼成室に収容された状態で、前記第2のパン容器の側壁に接触しないように前記焼成室の壁面からの突出量が調整されていることとしてもよい。
【0018】
また、上記構成の自動製パン器において、前記パン容器検知手段で検知される一方のパン容器とは異なる他方のパン容器のみを検知する別のパン容器検知手段が更に設けられていることとしてもよい。本構成によれば、焼成室にパン容器が収容されていない状態も検知可能となって便利である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、穀物粒を出発原料に用いる場合と、穀物粉を出発原料に用いる場合との両方に適切に対応できる、ユーザによって便利な自動製パン器を提供できる。このため、家庭でのパン製造をより身近なものとして、家庭でのパン作りが盛んになることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図
【図2】本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図
【図3】本実施形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図で、第1のパン容器を用いる場合の構成を示す図
【図4】本実施形態の自動製パン器において、第1のパン容器を使用する場合に用いられる粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための図で、斜め下方から見た場合の概略図
【図5】本実施形態の自動製パン器において、第1のパン容器を使用する場合に用いられる粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための図で、下から見た場合の概略図
【図6】混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の第1のパン容器の上面図
【図7】混練ブレードが開き姿勢にある場合の第1のパン容器の上面図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備えるガードの構成を示す概略斜視図
【図9】本実施形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図で、第2のパン容器を用いる場合の構成を示す図
【図10】第2のパン容器における第2の混練ブレードのハブと第2のブレード回転軸との関係を説明するための図
【図11】本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図
【図12】本実施形態の自動製パン器によって実行される製パンコースについて説明するための模式図
【図13】第1別形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図で、第1のパン容器を用いる場合の構成を示す図
【図14】第1別形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図で、第2のパン容器を用いる場合の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や温度等はあくまでも例示であり、本発明の内容を限定するものではない。
(自動製パン器の概略構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、自動製パン器1の本体10(例えば合成樹脂によって形成される)の上面右側寄りには操作部16が設けられる。この操作部16には、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等の操作キー群と、操作キー群によって設定された内容やエラー等を表示する表示部が設けられている。なお、表示部は、例えば、液晶表示パネルや発光ダイオードを光源とする表示ランプ等によって構成される。
【0022】
また、本体10の上面側には操作部16と隣り合うように、パン容器(詳細は後述する)が収容される焼成室30が形成されている。例えば板金によって形成される焼成室30は、平面視略矩形状に形成され、上面が開口している。また、本体10には、この焼成室30を覆う蓋20(例えば合成樹脂によって形成される)が設けられる。この蓋20は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として回動することで、焼成室30の開口の開閉が可能となっている。この蓋20には、図示は省略するが、焼成室30内を覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓が設けられている。
【0023】
図2は、本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合を想定している。図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室30の右横に練り工程で用いられる低速・高トルクタイプの混練モータ40が配置され、焼成室30の後ろ側に粉砕工程で用いられる高速回転タイプの粉砕モータ50が固定配置されている。混練モータ40及び粉砕モータ50はいずれも竪軸である。
【0024】
混練モータ40の上面から突出する出力軸41には第1のプーリ42が固定され、この第1のプーリ42は、第1のベルト43によって、その径が第1のプーリ42よりも大きく形成されると共に、回転軸44の上端側に固定される第2のプーリ45に連結されている。回転軸44の下端側には第3のプーリ46が固定されている。回転軸44の第2のプーリ45が固定される部分と第3のプーリ46が固定される部分との間には、図示しないクラッチ機構が設けられており、第2のプーリ45と第3のプーリ46との間で、一方の回転力を他方へ伝達するか否かを切替可能となっている。第3のプーリ46は、第2のベルト47によって、焼成室30の下部側に設けられる原動軸11に固定される第1の原動軸用プーリ12(第3のプーリ46とほぼ同一の径を有する)に連結されている。混練モータ40自身が低速・高トルクタイプであり、その上、第1のプーリ42の回転が第2のプーリ45によって減速回転されるので、混練モータ40が駆動すると、原動軸11は低速・高トルクで回転する。
【0025】
粉砕モータ50の下面から突出する出力軸51には、第4のプーリ52が固定されている。この第4のプーリ52は、第3のベルト53によって、原動軸11に固定される第2の原動軸用プーリ13(第1の原動軸用プーリ12より下側で固定される)に連結されている。第2の原動軸用プーリ13は第4のプーリ52とほぼ同一の径を有する。粉砕モータ50には高速回転のものが選定され、第4のプーリ52の回転は第2の原動軸用プーリ13においてほぼ同一で維持されるために、粉砕モータ50が駆動すると、原動軸11は高速回転(例えば7000〜8000rpm)を行う。
【0026】
なお、粉砕モータ50を駆動する際には、上述の第2のプーリ45と第3のプーリ46との間に設けられるクラッチは互いの回転が伝達されない状態とされ、粉砕モータ50が高速回転してもその回転が混練モータ40に伝達されないようになっている。
【0027】
ところで、本実施形態の自動製パン器1は、米粒(穀物粒の実施形態)を出発原料に用いてパンを焼き上げることができると共に、小麦粉や米粉(いずれも穀物粉の実施形態)を出発原料に用いてパンを焼き上げることも可能になっている。そして、米粒を出発原料に用いる場合と、小麦粉や米粉を出発原料に用いる場合とで、パン原料を投入するパン容器について、異なるものを使用する構成となっている。以下では、米粒を出発原料に用いる場合に第1のパン容器を使用し、小麦粉や米粉を出発原料に用いる場合に第2のパン容器を使用することとし、第1のパン容器を用いる場合の構成と第2のパン容器を用いる場合の構成とを分けて説明する。
1.第1のパン容器を用いる場合の構成
図3は、本実施形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図で、第1のパン容器を用いる場合の構成を示す図である。なお、図3は自動製パン器を正面側から見た場合を想定している。
【0028】
図3に示すように、焼成室30の内部にはシーズヒータ31が、焼成室31に収容された第1のパン容器60(後述の第2のパン容器100と置き換えてもよい)を包囲するように配置され、第1のパン容器60(後述の第2のパン容器100と置き換えてもよい)内のパン原料を加熱できるようになっている。
【0029】
また、焼成室30の底壁30aの略中心にあたる箇所には、第1のパン容器60(後述の第2のパン容器100と置き換えてもよい)を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室30の底壁30aから窪むように形成され、その窪みの形状は平面視略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が垂直に支持されている。
【0030】
第1のパン容器60は例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品であり、バケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部60aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。第1のパン容器60の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、第1のパン容器60の底部には、詳細は後述する粉砕ブレード70とカバー80とを収容する平面視略円形状の凹部61が形成されている。
【0031】
第1のパン容器60の底部中心には、垂直方向に延びる第1のブレード回転軸62が、シール対策が施された状態で支持されている。この第1のブレード回転軸62の下端(第1のパン容器60の外部にある)には容器側カップリング部材62aが固定されている。また、第1のパン容器60の外側底面には筒状の台座63が設けられており、第1のパン容器60は、この台座63がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に配置されるようになっている。なお、台座63は、第1のパン容器60とは別に形成してもよいし、第1のパン容器60と一体的に形成してもよい。
【0032】
パン容器支持部14の内周面と台座63の外周面とには、それぞれ図示しない突起が形成されており、これらの突起は周知のバヨネット結合を構成する。すなわち、第1のパン容器60をパン容器支持部14に取り付ける際、台座63の突起がパン容器支持部14の突起に干渉しないようにして第1のパン容器60を下ろす。そして、台座63がパン容器支持部14に嵌り込んだ後、第1のパン容器60を水平にひねると、パン容器支持部14の突起の下面に台座63の突起が係合するようになっている。これにより、第1のパン容器60は上方に抜けなくなる。
【0033】
なお、この操作で、第1のブレード回転軸62に設けられる前述の容器側カップリング部材62aと、原動軸11の上端に固定される原動軸側カップリング部材11aとの連結(カップリング)も同時に達成される。そして、このカップリングにより、第1のブレード回転軸62は原動軸11から回転力が伝えられるようになる。
【0034】
第1のブレード回転軸62には、第1のパン容器60の底部より少し上の箇所に、粉砕ブレード70が取り付けられている。また、第1のブレード回転軸62の上端には、平面視略円形のドーム状カバー80が取り付けられている。図4は、本実施形態の自動製パン器において、第1のパン容器を使用する場合に用いられる粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための図で、斜め下方から見た場合の概略図である。図5は、本実施形態の自動製パン器において、第1のパン容器を使用する場合に用いられる粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための図で、下から見た場合の概略図である。
【0035】
図4及び図5に示すように、粉砕ブレード70(例えばステンレス鋼板によって形成される)は、飛行機のプロペラのような形状を有し、第1のブレード回転軸62に対して回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード70の中心部は第1のブレード回転軸62に嵌合するハブ70aとなっている。このハブ70aの下面には、ハブ70aを直径方向に横断する溝70bが形成されている。粉砕ブレード70を第1のブレード回転軸62の上から嵌め込んだ場合に、第1のブレード回転軸62を水平に貫くピン(図示せず)が、ハブ70aを受け止め、また、溝70bに係合し、粉砕ブレード70を第1のブレード回転軸62に対して回転不能に連結する。
【0036】
なお、粉砕ブレード70は、第1のブレード回転軸62から簡単に引き抜くことができるので、製パン作業終了後の洗浄や、切れ味が悪くなった時の交換を手軽に行うことができる。
【0037】
ドーム状のカバー80(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)は、図4に示すように粉砕ブレード70を囲んで覆い隠す。このカバー80は、粉砕ブレード70のハブ70aに回転自在に支持され、座金80aと抜け止めリング80bによってハブ70aから抜けないようにされている(図3参照)。すなわち、本実施形態では、粉砕ブレード70とカバー80は分離できないユニットを構成し、粉砕ブレード70のハブ70aが、カバー80の第1のブレード回転軸62を受け入れる回転軸受入部を兼ねる構成となっている。
【0038】
なお、このカバー80は、粉砕ブレード70と共に第1のブレード回転軸62から簡単に引き抜くことができるために、製パン作業終了後の洗浄を手軽に行うことができる。
【0039】
ドーム状のカバー80の外面には、第1のブレード回転軸62から離れた箇所に配置された垂直方向に延びる支軸81(図5参照)により、平面形状「く」の字形の混練ブレード82(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。支軸81は、混練ブレード82に固定ないし一体化されており、混練ブレード82と動きを共にする。
【0040】
なお、本実施形態では、カバー80の外面に、混練ブレード82に並ぶように補完混練ブレード83が設けられている。この補完混練ブレード83は、必ずしも設ける必要がないが、パン生地を練る練り工程における効率を高めるために設けるのが好ましい。本構成の場合、混練ブレード82と補完混練ブレード83が、本発明の第1の混練ブレードの実施形態となる。
【0041】
混練ブレード82の動作について、図4から図7を参照して説明する。なお、図6、図7は、第1のパン容器60を上から見た図で、図6と図7とでは、混練ブレード82が異なる姿勢となっている。
【0042】
混練ブレード82は、支軸81と共に支軸81の軸線周りに回転し、図6に示す折り畳み姿勢と、図7に示す開き姿勢との2姿勢をとる。折り畳み姿勢では、混練ブレード82の下縁から垂下した突起82a(図4参照)がカバー80の上面に設けられた第1のストッパ部80cに当接し、混練ブレード82はそれ以上カバー80に対し時計方向(上から見た場合を想定)の回動を行うことができない。混練ブレード82の先端は、この時、カバー80から少し突き出している。ここから混練ブレード82が反時計方向(上から見た場合を想定)に回動して図7に示す開き姿勢となると、混練ブレード82の先端はカバー80から大きく突き出す。この開き姿勢における混練ブレード82の開き角度は、カバー80の内面に設けられる第2のストッパ部80d(図4、図5参照)によって制限される。後述のクラッチ84(図5参照)を構成する第2係合体84bが第2のストッパ部80dに当って回転できなくなった時点で、混練ブレード82は最大開き角度となる。
【0043】
なお、混練ブレード82が折り畳み姿勢となっている場合には、図6に示すように補完混練ブレード83は混練ブレード82に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード82のサイズが大型化したようになる。
【0044】
カバー80と第1のブレード回転軸62の間には、図5に示すようにクラッチ84が介在する。クラッチ84は、混練モータ40が原動軸11を回転させるときの第1のブレード回転軸62の回転方向(この回転方向を「正方向回転」とする。図5では時計方向回転となる。)において、第1のブレード回転軸62とカバー80を連結する。逆に、粉砕モータ50が原動軸11を回転させるときの第1のブレード回転軸62の回転方向(この回転方向を「逆方向回転」とする。図5では反時計方向回転となる。)では、クラッチ84は第1のブレード回転軸62とカバー80の連結を切り離す。なお、図6及び図7では、前記「正方向回転」は反時計方向回転となり、前記「逆方向回転」は時計方向回転となる。
【0045】
クラッチ84について更に詳細に説明する。クラッチ84は、第1係合体84aと第2係合体84bとによって構成される。第1係合体84aは粉砕ブレード70のハブ70aに固定されるか、又は、ハブ70aと一体成形される。すなわち、第1係合体84aは第1のブレード回転軸62に回転不能に取り付けられた状態となっている。第2係合体84bは混練ブレード82の支軸81に固定されるか、又は支軸81と一体成形され、混練ブレード82の姿勢変更に伴って角度を変える。
【0046】
混練ブレード82が折り畳み姿勢にある場合(例えば図5の状態)は、第2係合体84bは第1係合体84aの回転軌道に干渉する角度となる。このため、第1のブレード回転軸62が正方向回転(図5では時計方向回転、図6では反時計方向回転)すると、第1係合体84aと第2係合体84bは係合し、第1のブレード回転軸62の回転力がカバー80及び混練ブレード82に伝達される。
【0047】
一方、混練ブレード82が開き姿勢にある場合(図7の状態)には、第2係合体84bは第1係合体84aの回転軌道から逸脱した角度となる。このために、第1のブレード回転軸62が逆方向回転(図7では時計方向回転)しても、第1係合体84aと第2係合体84bは係合しない。従って、第1のブレード回転軸62の回転力はカバー80及び混練ブレード82に伝達されない。以上からわかるように、クラッチ84は、混練ブレード82の姿勢によって第1のブレード回転軸62とカバー80との連結状態を切り替える。
【0048】
図4及び図5に示すように、カバー80には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓85が形成される。窓85は粉砕ブレード70に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。なお、本実施形態では、計4個の窓85が90°間隔で並んでいるが、それ以外の数と配置間隔を選択することもできる。
【0049】
また、カバー80内面には、各窓85に対応して計4個のリブ86が形成されている。各リブ86はカバー80の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ86は、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
【0050】
図3に戻って、カバー80の下面にはガード90が着脱可能に取り付けられている。このガード90は、カバー80の下面を覆って粉砕ブレード70への指の接近を阻止する。ガード90は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。図8は、本実施形態の自動製パン器が備えるガードの構成を示す概略斜視図である。
【0051】
図8に示すように、ガード90の中心には、第1のブレード回転軸62を通すリング状のハブ90aがある。また、ガード90の周縁にはリング状のリム90bがある。ハブ90aとリム90bとは複数のスポーク90cで連結される。スポーク90c同士の間は、粉砕ブレード70によって粉砕される米粒を通す開口部90dとなる。開口部90dは、指が通り抜けられない程度の大きさとなっている。
【0052】
ガード90は、カバー80に取り付けられた時、粉砕ブレード70と近接状態となる。そして、あたかも、ガード90が回転式電気かみそりの外刃で、粉砕ブレード70が内刃のような形になる。
【0053】
リム90bの周縁には、90°間隔で計4個(この構成に限定されないのは言うまでもない)の柱90eが一体成形されている。この柱90eのガード90中心側を向いた側面には、一端が行き止まりになった水平な溝90fが形成される。この溝90fにカバー80の外周に形成される突起80e(実施形態では、45°間隔で計8個配置されている)を係合することによって、ガード90はカバー80に取り付けられる。なお、溝90fと突起80eはバヨネット結合を構成するように設けられている。
2.第2のパン容器を用いる場合の構成
図9は、本実施形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図で、第2のパン容器を用いる場合の構成を示す図である。なお、図9は自動製パン器を正面側から見た場合を想定している。また、第1のパン容器60を用いる場合と重複する構成については、特に説明の必要がない場合には説明を省略する。
【0054】
第2のパン容器100(例えば板金製)は、第1のパン容器60と同様にバケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部100aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。また、第2のパン容器100も水平断面は四隅を丸めた矩形である。ただし、第2のパン容器100の底部には、第1のパン容器60のような凹部61は形成されていない。これは、第2のパン容器100を用いる場合には粉砕工程がなく、粉砕ブレード70を取り付ける必要がないことと関係している。また、第2のパン容器100は、凹部61を設ける必要がないために、第1のパン容器60に比べて、その高さが低くなっている。
【0055】
第2のパン容器100の底部中心には、垂直方向に延びる第2のブレード回転軸101が、シール対策が施された状態で支持されている。この第2のブレード回転軸101の下端(第2のパン容器100の外部にある)には容器側カップリング部材101aが固定されている。また、第2のパン容器100の外側底面には筒状の台座102が設けられており、第2のパン容器100は、この台座102がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に配置されるようになっている。
【0056】
なお、この台座102とパン容器支持部14との結合手法は、第1のパン容器60の台座63とパン容器支持部14との結合手法と同様である。また、台座102とパン容器支持部14との結合によって、第2のブレード回転軸101に設けられる容器側カップリング部材101aと、原動軸11に固定される原動軸側カップリング部材11aとの連結(カップリング)も達成される。そして、このカップリングにより、第2のブレード回転軸101は原動軸11から回転力が伝えられるようになる。
【0057】
第2のブレード回転軸101の上端には、第2の混練ブレード110(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品)が取り付けられている。この第2の混練ブレード110は、上述の混練ブレード82及び補完混練ブレード83(両者で第1の混練ブレードを構成)を一体化したような形状であり、そのハブ111が第2のブレード回転軸101の上端に回転不能に連結されている。
【0058】
図10は、第2のパン容器における第2の混練ブレードのハブと第2のブレード回転軸との関係を説明するための図で、図10(a)は断面図、図10(b)は上面図である。第2の混練ブレード110のハブ111の中心孔は、下端から所定の高さまでは円形孔部111aであるが、そこから上がD字孔部111bとなっている。D字孔部111bは、D字の弦にあたる部分の下部が第2のブレード回転軸101の中心に向けて張り出した段差構造となっている。一方、第2のブレード回転軸101は、上端まで少し距離を残すところまでは円形断面であるが、そこから上がD字形断面部101bとなっている。D字形断面部101bは、D字孔部111bとは逆に、D字の弦に当る部分の上部が張り出した段差構造となっている。
【0059】
D字形断面部101bの張り出した部分がD字孔部111bの張り出した部分に対してオーバーハングした状態となるように、D字孔部111bとD字形断面部101bとを組み合わさることによって、第2の混練ブレード110のハブ111は、第2のブレード回転軸101に回転不能に連結される。なお、ハブ111と第2のブレード回転軸101との嵌合にはゆとりがあるので、ハブ111に第2のブレード回転軸101を問題なく通して上記オーバーハングした状態を得られる。また、第2のブレード回転軸101に動力が伝えられると、図10(b)に示すように、D字孔部111bとD字形断面部101bとの角度がずれて張り出し部分同士が引っ掛かる。このため、第2の混練ブレード110が第2のブレード回転軸101から簡単に抜けることはない。
(自動製パン器が備えるパン容器検知手段の構成)
以上、本実施形態の自動製パン器1の概略構成について説明したが、次に、本実施形態の自動製パン器1の特徴部である、パン容器検知手段の構成について説明する。
【0060】
図3及び図9に示すように、自動製パン器1の焼成室30が有する4つの側壁30bの1つには、パン容器検知手段の実施形態であるマイクロスイッチ120が取り付けられている。このマイクロスイッチ120は、その本体121が焼成室30の側壁30bの外面側に固定配置されている。また、マイクロスイッチ120は、そのボタン122が焼成室30の側壁30bに設けられる開口に嵌め込まれて、その先端が焼成室30の内部に向けて突出するように焼成室30に取り付けられている。
【0061】
マイクロスイッチ120のボタン122は、スプリング123によって、焼成室30の内部側に向けて付勢(図3及び図9において左方向に付勢)されており、ボタン122胴体部に設けられるフランジ部122aが突出量規制部124に当接することによって、ボタン122の焼成室30の側壁30bからの突出量が所定量となるように調整されている。また、ボタン122の先端部上側には、先端側に向けて先細りとなるように斜面122bが形成されている。
【0062】
マイクロスイッチ120は、そのボタン122の位置が焼成室30に収容された第2のパン容器100の鍔部100aの高さとほぼ同じになるように、焼成室30の側壁30bに取り付ける位置が調整されている。また、ボタン122の焼成室30の側壁30bからの突出量は、第1のパン容器60及び第2のパン容器60が焼成室30に収容された状態において、ボタン122がパン容器の側壁60b、100bに接触しないように調整されている。また、ボタン122の焼成室30の側壁30bからの突出量は、第2のパン容器100が収容された状態で、ボタン122が鍔部100aに押圧されてスイッチがオン状態となるように調整されている。
【0063】
第2のパン容器100を焼成室30に収容する場合、鍔部100aがボタン122の先端側に設けられる斜面122bに当接し、ボタン122に、その突出方向と反対方向(図9において右方向)の力が加わり、その方向にボタン122が移動を始める。この移動がある程度進むと、ボタン122の後端側に設けられる突起部122cによって可動接触子125が押圧されて固定接触子126に当接し、マイクロスイッチ120はオン状態となる(図9の状態)。
【0064】
なお、第2のパン容器100を焼成室30から取り出すと、ボタン122は押圧されていない状態となるので、ボタン122はスプリング123によって焼成室30の内部に向かう方向(図9において左方向)に移動する。これにより、可動接触子125と固定接触子126との当接が解除され、マイクロスイッチ120のオン状態は解除される(マイクロスイッチ120はオフされる)。
【0065】
一方、第1のパン容器60を焼成室30に収容する場合には、図3に示すように、マイクロスイッチ120はオンされない。上述のように、マイクロスイッチ120においては、ボタン122の焼成室30の側壁30bからの突出量は、第1のパン容器60の側壁60bに当接しないように調整されている。また、第1のパン容器60は、凹部61を有する構成のために、第2のパン容器100よりも、その高さが高くなっている。このために、第1のパン容器60を焼成室30に収容した場合に、焼成室30の側壁30bに最も近づく鍔部60aは、マイクロスイッチ120のボタン122よりも高い位置にある。したがって、鍔部60aがマイクロスイッチ120のボタン122を押すことはない。
【0066】
以上のように、本実施形態においては、マイクロスイッチ120は、第2のパン容器100が焼成室30に収容された場合にオン状態となるが、第1のパン容器60が焼成室30に収容された場合にはオン状態とならない。すなわち、マイクロスイッチ120は、第2のパン容器100が焼成室30に収容されたことを検知するパン容器検知手段となっている。
【0067】
図11は、本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図11に示すように、マイクロスイッチ120は、自動製パン器1の動作制御を行う制御装置130に電気的に接続されている。このために、制御装置130は、マイクロスイッチ120のオンオフにより、焼成室30に収容されているパン容器が第1のパン容器60であるか、第2のパン容器100であるかを判断できる。詳細には、マイクロスイッチ120がオン状態の場合、第2のパン容器100が焼成室30に収容されていると判断する。また、マイクロスイッチ120がオフ状態の場合、第1のパン容器60が焼成室30に収容されていると判断する。
【0068】
このように、本実施形態においては、制御装置130は焼成室30に収容されるパン容器が、第1のパン容器60であるか、第2のパン容器100であるかを判断できるために、制御装置130に次のような制御を行わせることができる。例えば、第2のパン容器100が焼成室30に収容されている場合に操作部16から粉砕モータ50を駆動する指令が入力された場合(粉砕工程を伴う製パンコースが選択された場合)には、エラー表示を表示するようにできる。また、例えば第2のパン容器100が焼成室30に収容されている場合には、粉砕モータ50を駆動する製パンコースを始めから選択できないようにすることもできる。これにより、第2のパン容器100が焼成室30に収容されている場合に誤って粉砕モータ50が回転(それと共に第2の混練ブレード110が回転)して、容器内のパン原料が飛散する等の事態を避けられる。
【0069】
なお、制御装置130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置130は、焼成室30の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置130には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。
【0070】
また、制御装置130には、マイクロスイッチ120以外に、操作部16と、温度センサ15と、粉砕モータ駆動回路131と、混練モータ駆動回路132と、ヒータ駆動回路133と、が電気的に接続されている。温度センサ15は、焼成室30の温度を検知できるように設けられるセンサである。粉砕モータ駆動回路131は、制御装置130からの指令の下で粉砕モータ50の駆動を制御する回路である。また、混練モータ駆動回路133は、制御装置130からの指令の下で混練モータ40の駆動を制御する回路である。ヒータ駆動回路133は、制御装置130からの指令の下でシーズヒータ31の動作を制御する回路である。
【0071】
制御装置130は、操作部16からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、粉砕モータ駆動回路131を介して粉砕ブレード70の回転の制御、混練モータ駆動回路132を介して混練ブレード82及び補完混練ブレード83、或いは、第2の混練ブレード110の回転の制御、ヒータ駆動回路133を介してシーズヒータ31による加熱動作の制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
(自動製パン器の動作)
次に、以上のように構成される自動製パン器1によってパンを製造する場合の自動製パン器1の動作について説明する。上述のように、本実施形態の自動製パン器1は、米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合と、小麦粉や米粉といった製粉した粉を出発原料に用いてパンを焼き上げる場合とで異なるパン容器を使用することになっている。このために、第1のパン容器60を用いる場合と、第2のパン容器100を用いる場合とに分けて、自動製パン器1の動作を説明する。
1.第1のパン容器を使用する場合
第1のパン容器60は、米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合に使用される。米粒を出発原料に用いる場合には、米粒用製パンコースが実行される。図12(a)は自動製パン器1によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図12(a)に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0072】
米粒用製パンコースを実行するにあたって、ユーザは、第1のパン容器60に、粉砕ブレード70と、混練ブレード82及び補完混練ブレード83付きのカバー80とを取り付ける。そして、ユーザは、米粒と水をそれぞれ所定量ずつ計量して第1のパン容器60に入れる。なお、ここでは、米粒と水とを混ぜることにしているが、単なる水の代わりに、例えば、だし汁のような味成分を有する液体、果汁、アルコールを含有する液体等としてもよい。この後、ユーザは、米粒と水とを投入した第1のパン容器60を焼成室30に入れて蓋20を閉じ、操作部16によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置130によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースが開始される。
【0073】
なお、第1のパン容器60が焼成室30に収容された場合には、マイクロスイッチ120がオン状態とならない。このために、制御装置130は、焼成室30に収容されているパン容器が第1のパン容器60であると判断し、粉砕モータ50が誤って駆動される事態防止する制御は行わない。このために、米粒用製パンコースを選択してパンの製造を開始できる。
【0074】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置130の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、米粒と水との混合物が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では50分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0075】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制できる。また、浸漬時間を短時間とするために、浸漬工程時にシーズヒータ31に通電して焼成室30の温度を高めるようにしてもよい。
【0076】
また、浸漬工程においては、その初期段階で粉砕ブレード70を回転させ、その後も断続的に粉砕ブレード70を回転させるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率を高められる。
【0077】
上記所定時間が経過すると、制御装置130の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水との混合物の中で粉砕ブレード70が高速回転される。具体的には、制御装置130は、粉砕モータ50を制御して第1のブレード回転軸62を逆方向回転させ、米粒と水との混合物の中で粉砕ブレード70の回転を開始させる。なお、この際、カバー80も第1のブレード回転軸62の回転に追随して回転を開始するが、次のような動作によってカバー80の回転はすぐに阻止される。
【0078】
粉砕ブレード70を回転させるための第1のブレード回転軸62の回転に伴うカバー80の回転方向は、図6において時計方向であり、混練ブレード82は、それまで折り畳み姿勢(図6に示す姿勢)であった場合には、米粒と水の混合物から受ける抵抗で開き姿勢(図7に示す姿勢)に転じる。混練ブレード82が開き姿勢になると、クラッチ84は、第2係合体84bが第1係合体84aの回転軌道から逸脱するために、第1のブレード回転軸62とカバー80の連結を切り離す。同時に、開き姿勢になった混練ブレード82は図7に示すように、第1のパン容器60の内側壁に当るために、カバー80の回転は阻止される。
【0079】
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード70の回転は本実施形態では間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。なお、最後のサイクルでは、5分間の停止は行わない。粉砕ブレード70の回転は連続回転としてもよいが、例えば第1のパン容器60内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0080】
粉砕工程においては、粉砕がカバー80内で行われるから、米粒が第1のパン容器60の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード90の開口部90dからカバー80内に入る米粒は、静止したスポーク90cと回転する粉砕ブレード70の間でせん断されるので、効率良く粉砕できる。また、カバー80に設けられるリブ86によって、米粒と水とからなる混合物の流動(粉砕ブレード70の回転と同方向の流動である)が抑制されるので、効率良く粉砕できる。
【0081】
また、粉砕された米粒と水との混合物はリブ86によって窓85の方向に誘導されて、窓85からカバー80の外に排出される。リブ86は、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ86の表面に対流しにくく、スムーズに窓85の方へ流れていく。更に、カバー80内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部61の上の空間に存在していた混合物が凹部61に入り、凹部61からガード90の開口部90dを通ってカバー80に入る。このような循環をさせつつ粉砕ブレード70による粉砕を行うので、効率良く粉砕できる。
【0082】
なお、自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程の終了を、粉砕モータ50の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断する構成等としても構わない。
【0083】
粉砕工程が終了すると、続いて練り工程が行われる。なお、この練り工程は、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で行う必要がある。このため、所定の温度範囲となった時点で練り工程が開始されるのが好ましい。また、練り工程の開始時には、グルテンや、食塩、砂糖、ショートニングといった調味料がそれぞれ所定量ずつ、第1のパン容器60に投入される。この投入は、例えばユーザの手によって投入するようにしてもよいし、自動投入装置を設けてユーザの手を煩わせることなくそれらを投入するようにしてもよい。
【0084】
なお、グルテンは、パン原料として必須のものではない。このため、好みに応じてパン原料に加えるか否かを判断してよい。また、グルテンの代わりに、或いは、グルテンと共に小麦粉や増粘安定剤(例えばグアガム)を投入するようにしても構わない。また、食塩、砂糖、ショートニングといった調味料は、ユーザの好みで、その量を適宜変更して構わない。
【0085】
練り工程が開始されると、制御装置130は混練モータ40を制御して第1のブレード回転軸62を正方向回転させる。この第1のブレード回転軸62を正方向回転させると、粉砕ブレード70も正方向に回転し、粉砕ブレード70の周囲のパン原料が正方向に流動する。それにつられてカバー80が正方向に動くと、混練ブレード82は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図7参照)から折り畳み姿勢(図6参照)へと角度を変えて行く。第2係合体84bが第1係合体84aの回転軌道に干渉する角度となると、クラッチ84の連結が生じ、カバー80は第1のブレード回転軸62によって本格的に駆動される態勢に入る。カバー80と折り畳み姿勢になった混練ブレード82は、第1のブレード回転軸62と一体となって正方向に回転する。
【0086】
混練ブレード82が折り畳み姿勢になると、混練ブレード82の延長上に補完混練ブレード83が並ぶために、混練ブレード82があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
【0087】
練り工程における混練ブレード82及び補完混練ブレード83の回転は、終始連続回転としてもよいが、自動製パン器1では、練り工程の初期の段階は間欠回転とし、後半を連続回転としている。本実施形態では、初期に行う間欠回転が終了した段階で、イースト(例えばドライイースト)を投入するようになっている。このイーストは、ユーザが投入するようにしてもよいし、自動投入するようにしてもよい。なお、イーストをグルテン等と一緒に投入しないのは、イースト(ドライイースト)と水とが直接接触するのをなるべく避けるためである。ただし、場合によっては、イーストをグルテン等と同時に投入してもよい。
【0088】
混練ブレード82及び補完混練ブレード83の回転によってパン原料は混練され、所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード82及び補完混練ブレード83が生地を振り回して第1のパン容器60の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード82及び補完混練ブレード83の回転によりカバー80も回転する。カバー80が回転すると、カバー80に形成されるリブ86も回転するために、カバー80内のパン原料は速やかに窓85から排出され、混練ブレード82及び補完混練ブレード83が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0089】
なお、練り工程においては、カバー80と共にガード90も正方向に回転する。ガード90のスポーク90cは、正方向回転時、ガード90の中心側が先行しガード90の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード90は、正方向に回転することにより、カバー80内外のパン原料をスポーク90cで外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0090】
また、ガード90の柱90eは、ガード90が正方向に回転するときに回転方向前面となる側面90g(図8参照)が上向きに傾斜しているから、混練時、カバー80の周囲のパン原料が柱90eの前面で上方に跳ね上げられる。このために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0091】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では10分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば、混練モータ40の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に、練り工程の終了時点を判断する構成等としても構わない。
【0092】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
【0093】
練り工程が終了すると、制御装置130の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では60分)放置される。
【0094】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード82及び補完混練ブレード83を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0095】
発酵工程が終了すると、制御装置130の指令によって焼成工程が開始される。制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させ、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼くように制御する。焼成工程の終了については、例えば操作部16の図示しない液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋20を開けて第1のパン容器60を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0096】
なお、パンの底には混練ブレード82の焼き跡が残るが、カバー80とガード90は凹部61の中に収容された状態であるために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことはない。
2.第2のパン容器を使用する場合
第2のパン容器100は、小麦粉や米粉といった穀物粉を出発原料に用いてパンを製造する場合に使用される。ここでは、一例として、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造する小麦粉製パンコースが実行される場合について説明する。図12(b)は自動製パン器1によって実行される小麦粉製パンコースの流れを示す模式図である。図12(b)に示すように、小麦粉製パンコースにおいては、練り(捏ね)工程と、一次発酵工程と、ガス抜き工程と、生地休め工程(ベンチタイムやねかしとも呼ばれる)と、生地丸め工程と、成型発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0097】
小麦粉製パンコースを実行するにあたって、ユーザは、第2のパン容器100に、第2の混練ブレード110を取り付ける。そして、所定量の水を第2のパン容器100に入れた後、所定量の小麦粉、食塩、砂糖、ショートニングを入れ、最後に、ドライイーストを水に触れないように第2のパン容器100に入れる。なお、食塩、砂糖、ショートニングといった調味料は、ユーザの好みで、その量を適宜変更して構わない。この後、ユーザは、第2のパン容器100を焼成室30に入れて蓋20を閉じ、操作部16によって小麦粉製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置130によって小麦粉を出発原料に用いてパンを製造する小麦粉製パンコースが開始される。
【0098】
なお、第2のパン容器100が焼成室30に収容された場合には、マイクロスイッチ120がオン状態となる。このために、制御装置130は、焼成室30に収容されているパン容器が第2のパン容器100であると判断し、粉砕モータ50が誤って駆動される事態を防止するための制御を実行する。すなわち、例えば米粒用製パンコースの選択ができなくなったり、米粒用製パンコースを選択してもエラー表示が出たりして、米粒用製パンコースを開始できない。
【0099】
小麦粉製パンコースがスタートされると、制御装置130の指令によって練り工程が開始される。練り工程が開始されると、制御装置130は混練モータ40を制御して第2のブレード回転軸101を正方向回転させる。これにより、第2の混練ブレード110は低速、高トルクで回転される。なお、第2の混練ブレード110の回転は、例えば、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置130によって制御される。
【0100】
第2の混練ブレード110の回転により、第2のパン容器100内のパン原料は混練され、所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。第2の混練ブレード110が生地を振り回して第2のパン容器100の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。この練り工程は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では12分)行われる。
【0101】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
【0102】
練り工程が終了すると、制御装置130の指令によってパン生地を発酵させる一次発酵工程が開始される。この一次発酵工程が開始されると、制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を発酵が進む所定の温度(本実施形態では32℃)に維持させる。一次発酵工程は、本実施形態では48分50秒間行われる。
【0103】
一次発酵工程が終了すると、制御装置130の指令によってパン生地中に含まれるガスを抜くガス抜き工程が開始される。このガス抜き工程では、制御装置130は混練モータ40の駆動を制御して、第2の混練ブレード110を所定時間(本実施形態では10秒間)連続回転させる。また、このガス抜き工程では、焼成室30の温度を所定の温度に維持すべく、制御装置130はシーズヒータ31の制御も行う。
【0104】
ガス抜き工程が終了すると、制御装置130の指令によってパン生地を休ませる生地休め工程(ベンチタイム;「ねかし」と呼ばれることもある)が実行される。このベンチタイムにおいては、制御装置130はシーズヒータ31を制御し、焼成室30の温度を所定の温度(本実施形態では32℃)に維持させる。ベンチタイムは、本実施形態では35分30秒間)行われる。
【0105】
生地休め工程が終了すると、制御装置130の指令によってパン生地を丸める生地丸め工程が開始される。この生地丸め工程では、制御装置130は混練モータ40の駆動を制御し、第2の混練ブレード110を回転させる。この生地丸め工程では、第2の混練ブレード110は非常にゆっくりと所定の時間(本実施形態では1分30秒)回転される。
【0106】
生地丸め工程が終了すると、制御装置130の指令によってパン生地を再度発酵させる成型発酵工程が行われる。この成型発酵工程では、制御装置130はシーズヒータ31を制御し、焼成室30の温度を発酵が進む所定の温度(本実施形態では38℃)として、この状態を所定の時間(本実施形態では60分)維持させる。
【0107】
成型発酵工程が終了すると、制御装置130の指令によってパン生地を焼成する焼成工程が実行される。この焼成工程では、制御装置130がシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(本実施形態では120℃)まで上昇させる。そして、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では47分)パンを焼く。焼成工程の終了については、例えば操作部16の図示しない液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋20を開けて第2のパン容器100を取り出して、パンの製造を完了させる。
(自動製パン器が備えるパン容器検知手段の別形態)
1.第1別形態
以上に示した実施形態の場合、焼成室30に第1のパン容器60と第2のパン容器100とのいずれもが入ってない場合には、マイクロスイッチ120がオン状態とならない。このために、制御装置130は、焼成室30にいずれのパン容器も入っていない場合にも、第1のパン容器60が焼成室30に入っているものと判断する。すなわち、上述した、粉砕モータ50が誤って駆動される事態を防止するための制御が、焼成室30にいずれのパン容器も入っていない場合にも実行されない。このため、パン容器が焼成室30に収容されない状態で原動軸11が粉砕モータ50によって高速回転される可能性があり、ユーザに対して危険を伴う事態が起こり得る。そこで、上記実施形態とは異なり、以下に説明する第1別形態のような構成としてもよい。
【0108】
図13は、第1別形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図で、第1のパン容器を用いる場合の構成を示す図である。図14は、第1別形態の自動製パン器の概略構成を示す一部断面図で、第2のパン容器を用いる場合の構成を示す図である。図13に示すように、この第1別形態では、第1のパン容器60の構成が、上記実施形態の場合と若干異なる。
【0109】
具体的には、第1のパン容器60の側壁60b(複数の側壁でも良いし、1つでもよい。図13では複数となっている。)に、平面視略台形の板状の突起部60cが形成されている。この突起部60cは、第1のパン容器60の上端近傍から下側に向けて延び出し、その下端が第2のパン容器100の鍔部100aよりも十分低い位置となるように構成されている。
【0110】
また、この第1別形態では、上記実施形態と同様のマイクロスイッチ120を備えるが、そのボタン122の位置が上記実施形態の場合と異なっている。すなわち、マイクロスイッチ120のボタン122の位置は、焼成室30に収容された第1のパン容器60の突起部60cの下端より少し上の部分(先細りする下部側の先細りが始まる少し手前に相当する部分)に対向する位置であって、且つ、焼成室30に収容された第2のパン容器100の鍔部100aよりも低い位置となっている。
【0111】
また、ボタン122の焼成室30の側壁30bからの突出量は、第1のパン容器60及び第2のパン容器100が収容された状態で、パン容器の側壁60b、100bに接触しないように調整されている(この点は上記実施形態に同じ)。また、ボタン122の焼成室30の側壁30bからの突出量は、第1のパン容器60が収容された状態で、突起部60cの、上述した下端より少し上の部分(この部分の第1のパン容器60の側壁60bから突出量は鍔部60aの側壁60bからの突出量と同程度)にボタン122が押圧されてスイッチがオンされるように調整されている。
【0112】
第1のパン容器60を焼成室30に収容する場合、突起部60cがボタン122の先端側に設けられる斜面122bに当接し、ボタン122に、その突出方向と反対方向(図13において右方向)の力が加わり、その方向にボタン122が移動を始める。この移動がある程度進むと、ボタン122の後端側に設けられる突起部122aによって可動接触子125が押圧されて固定接触子126に当接し、マイクロスイッチ120はオン状態となる(図13の状態)。
【0113】
一方、第2のパン容器100を焼成室30に収容する場合には、図14に示すように、マイクロスイッチ120はオンされない。上述のように、マイクロスイッチ120のボタン122の焼成室30の側壁30bからの突出量は、第2のパン容器100の側壁100bに接触しないように調整されている。また、第2のパン容器100の鍔部100aは、第2のパン容器100が焼成室30に収容された状態で、マイクロスイッチ120のボタン122よりも高い位置にある。したがって、第2のパン容器100が焼成室30に収容されても、マイクロスイッチ120のボタン122は押圧されない。
【0114】
以上のように、本実施形態においては、マイクロスイッチ120は、第1のパン容器60が焼成室30に収容された場合にオン状態となるが、第2のパン容器100が焼成室30に収容された場合にはオン状態とならない。すなわち、マイクロスイッチ120は、第1のパン容器60が焼成室30に収容されたことを検知するパン容器検知手段となっている。
【0115】
この構成では、焼成室30に第1のパン容器60と第2のパン容器100とのいずれもが入ってない場合には、マイクロスイッチ120がオン状態とならないために、制御装置130は第2のパン容器100が焼成室30に入っているものと判断する。この場合、上述した、粉砕モータ50が誤って駆動される事態を防止するための制御が制御装置130によって実行されることになる。このため、パン容器が焼成室30に収容されない状態で原動軸11が粉砕モータ50によって高速回転されるという事態を避けられる。
【0116】
なお、突起部60cは、第2のパン容器100の鍔部100aより低い位置に設けられるボタン122を押圧できる構成であればよいので、上端近傍から延び出している(図13に示す構成が相当する)必要はない。すなわち、第1のパン容器60が、第2のパン容器100の鍔部100aより低い位置(あまり低すぎないのが好ましい)に突起部を有する構成としておけば、上記した第1のパン容器60を検知するパン容器検知手段を得られる。
2.第2別形態
上記実施形態及び第1別形態では、焼成室30にパン容器がない場合でも、制御装置130はいずれかのパン容器が入っているものと判断する。このために、第1のパン容器60の構成を第1別形態と同様とすると共に、2つのマイクロスイッチ120を用意して、上記実施形態における位置と、第1別形態における位置との2箇所にマイクロスイッチ120を配置するようにしても構わない。このように、別々のパン容器を検知する第1のパン容器検知手段と第2のパン容器検知手段とを有する構成とすれば、焼成室30にパン容器が収容されていない場合にはそのことを検知でき、また、焼成室30に第1のパン容器60が収容された場合にはそのことを検知でき、更に、焼成室30に第2のパン容器100が収容された場合にはそのことを検知できる。
(その他)
以上に示した実施形態(別形態を含む)は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0117】
例えば、以上に示したパン容器検知手段としてのスイッチ120の構成は一例である。すなわち、パン容器が焼成室30に収容されることによって押圧されるボタンを用いてオン状態が得られるスイッチであればよく、その構成を適宜変更してもよいのは当然である。
【0118】
また、以上では、パン容器検知手段をスイッチ120で構成し、パン容器が焼成室30に収容されることによってスイッチ120が作動し(オン状態となり)、特定のパン容器を検知できる構成とした。しかし、これに限られる趣旨ではない。すなわち、場合によっては、パン容器検知手段の構成として、パン容器が焼成室30に収容されることによって、スイッチのオン状態が解除され、そのことによってパン容器が焼成室30に収容されたことを検知できる構成としてもよい。
【0119】
また、以上に示した実施形態では、焼成室30に収容されたパン容器を検知するパン容器検知手段をスイッチによって構成した。しかし、この構成に限定される趣旨ではなく、例えば、フォトインタラプタ等の光センサによってパン容器検知手段を構成してもよい。光センサの配置を適切な位置とすれば、第1のパン容器60と第2のパン容器100とのうちの、いずれか一方の鍔部や突起部(パン容器の側壁に形成される)のみを検知する構成を実現できる。すなわち、一方のパン容器のみを検知できる構成を実現できる。その他、パン容器検知手段として、磁気センサ等を用いる構成としてもよい。
【0120】
また、以上に示した実施形態における米粒は穀物粒の一例であり、小麦粉や米粉は穀物粉の一例である。例えば大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米や小麦以外の穀物をパン原料に使用する構成の自動製パン器にも本発明は適用可能である。
【0121】
また、以上に示した米粒用製パンコース及び小麦粉用製パンコースで実行される製造工程は例示であり、他の製造工程としてもよい。米粒用製パンコースについて、他の例を挙げると、粉砕工程の後に、粉砕粉に水を吸水させるために、再度浸漬工程を行ってから練り工程を行う構成等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0123】
1 自動製パン器
30 焼成室
30b 焼成室の側壁
40 混練モータ(第2のモータ)
50 粉砕モータ(第1のモータ)
60 第1のパン容器
60c 第1のパン容器の突起部
62 第1のブレード回転軸
70 粉砕ブレード
82 混練ブレード(第1の混練ブレードの一部)
83 補完混練ブレード(第1の混練ブレードの一部)
100 第2のパン容器
100a 第2のパン容器の鍔部
101 第2のブレード回転軸
110 第2の混練ブレード
120 マイクロスイッチ(パン容器検知手段)
122 ボタン
130 制御装置(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粒を出発原料に用いる第1の場合と、穀物粉を出発原料に用いる第2の場合とで、パン原料を投入するパン容器を異ならせてパンを製造する自動製パン器であって、
前記第1の場合には第1のパン容器が本体内に設けられる焼成室に収容され、前記第2の場合には第2のパン容器が前記焼成室に収容され、
前記第1のパン容器及び前記第2のパン容器のうち、いずれか一方が前記焼成室に収容された場合にのみ、前記焼成室にパン容器が収容されたことを検知するパン容器検知手段が設けられていることを特徴とする自動製パン器。
【請求項2】
前記第1のパン容器の底部には、粉砕ブレード及び第1の混練ブレードを回転可能とする第1のブレード回転軸が支持され、
前記第2のパン容器の底部には、第2の混練ブレードを回転可能とする第2のブレード回転軸が支持され、
前記本体内には、前記粉砕ブレードを回転する際に使用される第1のモータと、前記第1の混練ブレード及び前記第2の混練ブレードを回転する際に使用される第2のモータとが設けられ、
前記第1のブレード回転軸及び前記第2のブレード回転軸は、前記第1のモータの駆動によって回転可能であると共に、前記第2のモータの駆動によって回転可能であることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記パン容器検知手段を用いて前記焼成室に前記第2のパン容器が収容されているか否かを判断すると共に、前記第2のパン容器が前記焼成室に収容されていると判断される場合には、前記第1のモータが駆動されないように制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記パン容器検知手段は、前記焼成室の壁面から突出するボタンが押圧されることによりオン状態になるスイッチであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記第1のパン容器は、前記第2のパン容器よりも高さが高く設けられ、
前記第2のパン容器の開口部側縁には鍔部が形成され、
前記ボタンは、前記第2のパン容器が前記焼成室に収容された状態で、前記鍔部に押圧されて前記スイッチがオン状態となるように、前記焼成室の壁面に設けられる位置及び前記焼成室の壁面からの突出量が調整されると共に、前記第1のパン容器が前記焼成室に収容された状態で、前記第1のパン容器の側壁に接触しないように前記焼成室の壁面からの突出量が調整されていることを特徴とする請求項4に記載の自動製パン器。
【請求項6】
前記第2のパン容器の開口部側縁には鍔部が形成され、
前記第1のパン容器の外壁には、前記鍔部より低い位置において突出する部分を有する突起部が設けられ、
前記ボタンは、前記第1のパン容器が前記焼成室に収容された状態で、前記突起部に押圧されて前記スイッチがオン状態となるように、前記焼成室の壁面に設けられる位置及び前記焼成室の壁面からの突出量が調整されると共に、前記第2のパン容器が前記焼成室に収容された状態で、前記第2のパン容器の側壁に接触しないように前記焼成室の壁面からの突出量が調整されていることを特徴とする請求項4に記載の自動製パン器。
【請求項7】
前記パン容器検知手段で検知される一方のパン容器とは異なる他方のパン容器のみを検知する別のパン容器検知手段が更に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−161030(P2011−161030A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27694(P2010−27694)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】