説明

自動車に設けられた、圧縮機と消費器とを備えたシステム

本発明は、圧縮機(16)と消費器(20)とを備えたシステムであって、圧縮機(16)および消費器(20)は、駆動トレーン(14,18)に連結されていて、かつ駆動トレーン(14,18)からエネルギを受け取るようになっている形式のものに関する。本発明では、消費器(20)は、駆動トレーン(14,18)から供給される出力の消費を、圧縮機運転にとって必要な、駆動トレーン(14,18)から圧縮機(16)に供給される出力に応じて変化させるのに適当な構成を有している。さらに本発明は、ポンプであって、ポンプ運転中ポンプ出力を形成する少なくとも1つのポンプチャンバ(24)を備えている形式のものに関する。本発明によれば、ポンプは、少なくとも1つの別のポンプチャンバ(22)を備えており、別のポンプチャンバ(22)は、ポンプ運転中ポンプ出力を形成しないか、または僅かなポンプ出力を形成するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機と消費器とを備えたシステムであって、圧縮機および消費器は、駆動トレーンに連結されていて、駆動トレーンからエネルギを受け取るようになっている形式のものに関する。さらに本発明は、ポンプであって、ポンプ運転中にポンプ出力を形成する少なくとも1つのポンプチャンバを備えている形式のものに関する。
【0002】
自動車には、多くの場合圧縮機もしくはコンプレッサを備えたシステムが用いられている。圧縮機は、たとえばブレーキ、空気ばね、伝動装置などに関して圧縮空気形成するために用いられる。通常、圧縮機は、自動車の内燃機関によって駆動トレーンを介して駆動される。駆動トレーンは、周辺条件が許容すると、内燃機関を分離するためのクラッチ装置によって遮断することができる。
【0003】
さらに最近の自動車は、多くの場合ステアリング補助装置(パワーステアリングとも呼ばれる)を備えており、ステアリング補助装置は、実質的にステアリング補助ポンプまたはハイドロリックポンプたとえば油ポンプと、ハイドロリック回路とから成っており、ハイドロリック回路を介して、ハイドロリックポンプは、ハイドロリック圧を、ステアリングロッドに連結されたステアリング補助装置に供給する。これによって補助力が形成され、補助力は、適切な機械手段によってステアリングホイールに、これを補助するように取り付けられる。ハイドロリックポンプは、多くの場合、間接的に、つまり非直接的に、内燃機関の駆動トレーンによって駆動される。たとえば圧縮機は、内燃機関とハイドロリックポンプとの間で駆動トレーンに配置されており、この場合圧縮機は、消費器としてのハイドロリックポンプを駆動する。
【0004】
一般的に、圧縮機は、圧縮機運転にとって必要な駆動トルクもしくは圧縮機運転にとって必要な駆動出力の不均等な経過を示しており、この場合駆動トルクもしくは駆動出力は、内燃機関から提供される。たとえば圧縮機が圧縮過程もしくは圧縮サイクルを行うと、圧縮運転にとって必要な駆動トルクは、膨張過程もしくは膨張サイクルに対して極めて高くなっている。このことはとりわけ少なくとも1つのシリンダを備えたピストン圧縮機でみられる。圧縮過程において圧縮機運転にとって必要な駆動トルクもしくは圧縮機運転にとって必要な駆動出力は、シリンダ内で上死点に向かってピストンが移動するにつれ上昇し、最終的に上死点付近で、トルク頂点または出力頂点とも呼ばれる最高値に達する。トルク頂点によって、内燃機関、たとえば内燃機関のホイール伝動装置に対する影響が生じる。
【0005】
同様にカム軸の正確な作動のトラブルの生じる恐れがある。したがって内燃機関に提供されるトルクもしくは出力の、一定の、もしくは均等な経過が要求される。
【0006】
圧縮機に対して追加的に、圧縮機と同じ駆動トレーン上に存在するステアリング補助ポンプまたはハイドロリックポンプを駆動する必要のある場合、さらに内燃機関の高められた駆動トルクもしくは高められた駆動出力が要求される。同様に内燃機関の駆動トレーンに設けられたクラッチ装置は、内燃機関の最大伝達駆動トルクもしくは最大供給駆動出力に応じて設計する必要がある。
【0007】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べたようなシステムを改良して、駆動トレーンに配置された構成要素の負荷に関して改善されたものを提供することである。
【0008】
この課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。
【0009】
本発明の有利な形態および改良形は、従属請求から理解される。
【0010】
本発明のシステムは、冒頭で述べた形式の従来技術に基づいて、消費器は、駆動トレーンから供給される出力の消費を、圧縮機運転にとって必要な、駆動トレーンから圧縮機に供給される出力に応じて変化させるのに適当な構成を有している。圧縮機に供給される、圧縮機運転にとって必要な出力に関する、消費器の出力消費の依存性は、駆動トレーンに提供される出力、たとえば総出力の時間経過が、消費器の出力消費の適当な変化によってポジティブに影響させることができ、有利である。
【0011】
本発明の有利な形態では、消費器は、供給される出力の消費を変化させ、それも圧縮機運転にとって必要な出力と、消費器によって消費される出力との総出力の経過が概ね一定であるように変化させるのに適当な構成を有している。この形態は特に有利である。なぜならば圧縮機は、原則として圧縮機運転において、圧縮機運転にとって必要な駆動出力もしくは圧縮機運転にとって必要な駆動トルクの極めて不均等な経過を有しているからである。消費器の出力消費の適切な変化によって、不均等な経過は、全体としては補償される。このことは、駆動トレーンに供給される総トルクもしくは駆動トレーンに提供される総出力が、圧縮機運転にとって必要な駆動トルクもしくは駆動出力と、消費器によって消費されるトルクもしくは出力との重畳に起因する。したがって場合によってはトルク変動またはトルク頂点に基づいて、たとえば内燃機関から分岐された駆動トレーンに対する影響は回避される。
【0012】
さらに本発明によるシステムでは、消費器は、圧縮機運転にとって必要な出力の経過が、所定の閾値を超えて上昇するか、または最大出力範囲に達すると、消費器に提供される出力の消費を変化させるのに適切な構成を有している。閾値の設定によって、駆動トレーンにおける総トルク経過もしくは総出力経過が許容最大値を超える、ということが防止され、この場合同時に駆動トレーンにおける出力頂点もしくはトルク頂点が回避される。閾値の高さは、有利には駆動トレーン、たとえば駆動トレーンに存在する内燃機関に対する影響が大体において遮断されるように設定される。
【0013】
さらに本発明のシステムによれば、圧縮機運転にとって必要な出力は、圧縮過程または圧縮サイクルで、閾値を超えるか、または最大出力に達する。特に圧縮過程では、圧縮機を駆動するために極めて高いトルクもしくは極めて高い駆動出力が必要である。高い駆動トルクは、ピストンコンプレッサにおいて上死点に到達する直前に極めて高いトルク頂点に達し、この高い駆動トルクは、前述したように補償することができる。したがって圧縮機が圧縮過程を行う場合、特に上死点の到達直前で、消費器の出力消費を正確に低下させると有利であり、これによって駆動トレーンにおいて均等な総出力経過もしくは総トルク経過が保証される。
【0014】
さらに本発明によるシステムによれば、消費器は、ポンプ、特にステアリング補助ポンプまたはハイドロリックポンプを備えており、ポンプは、提供される出力を消費する、ポンプ出力を形成する運転と、提供される出力を消費しないか、または僅かしか消費しない、ポンプ出力を形成しない運転、または圧縮機の運転特性に応じて低下したポンプ出力しか形成しない運転とを行うのに適切な構成を有している。この形態に基づいて、駆動トレーンに存在するポンプは、一般的に均等なトルク経過もしくは出力経過を有しており、このポンプは、圧縮機運転にとって必要な、供給される出力の経過に適合させられ、これによって前述した総出力の一定の経過が得られる。
【0015】
本発明によるシステムの有利な形態によれば、ポンプは、容積ポンプ、特にベーンポンプまたはピストンポンプであり、ポンプ出力を形成しない、または圧縮機の運転特性に応じて低下したポンプ出力しか形成しない少なくとも1つのポンプチャンバが形成されており、ポンプチャンバによって、ポンプ運転で、出力が消費されないか、または提供される出力が僅かに消費され、ポンプは、ポンプ出力を形成する少なくとも1つのポンプチャンバを追加的に備えており、ポンプチャンバによって、ポンプ運転で、提供される出力が消費される。ポンプのこのような形態によって、ポンプチャンバにおける構造手段によって、前述の異なる運転を行うことができる。7つ以上のポンプチャンバを備えたベーンポンプも考えられ、そのうちの一部のチャンバは、「非ポンプ」状態にすることができ、これによってポンプチャンバの運転中に出力消費を低下させ、したがってトルク頂点の前述の補償が達成される。このことはたとえばベーンポンプにおいて拡大されたチャンバ容積によって得られ、たとえばベーンポンプの場合ロータの装備変更によって拡大することができ、つまりロータ縦軸線に関して片側で面取りされたロータに基づいて、ロータは、面取りされた側で、ポンプ出力を形成しないポンプチャンバを一部で形成する。さらにまた低下したポンプ出力しか形成しないポンプチャンバの構成も考えられ、そのポンプ出力は、様々な要因に依存している。さらにポンプ出力を形成する、適当なチャンバの運転を防止する別の手段も考えられる。したがって複数のシリンダを備えたピストンポンプ、特に斜板式ピストンポンプでは、単数または複数のピストンの省略によって、該当するチャンバのポンプ出力が遮断される。
【0016】
さらに本発明のシステムによれば、圧縮機は、内燃機関の駆動トレーンによって駆動されるようになっており、消費器は、圧縮機の駆動トレーンによって駆動されるようになっており、選択的にクラッチ装置が、内燃機関の駆動トレーンに配置されている。この形態は特に有利である。なぜならば内燃機関が、圧縮機に、駆動トルクの一定の経過もしくは駆動出力の一定の経過を提供し、しかも圧縮過程による駆動トルク上昇が生じないからであり、これによってエンジンのホイール伝動装置における問題およびカム軸の精確な作動の障害は、トルク頂点の補償に基づいて回避することができる。さらに本発明によるシステムでは、クラッチ装置、たとえば遮断クラッチを使用する際に、小型化ひいてはこれに付随するコスト削減が達成される。なぜならば、クラッチ装置は圧縮機の最大駆動トルクもしくはトルク頂点に関して設定されるからである。付記しておくと、ここで述べる配置構造は、エンジン、圧縮機および消費器の直列配置構造に相当する。もちろん同じ駆動トレーンに連結されている限り、圧縮機および消費器またはその他の装置の平行配置構造も考えられる。
【0017】
本発明によるポンプは、従来技術を基にして、少なくとも1つの追加的なポンプチャンバを備えており、このポンプチャンバは、ポンプ運転中ポンプ出力を形成しないか、または僅かなポンプ出力しか形成しないようになっている。ここではステアリング補助ポンプもしくはハイドロリックポンプに関して記載した利点が当てはまる。
【0018】
以下に、図面につき、本発明の有利な実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるシステムの概略図である。
【図2】図1の消費器の特別な実施例を示す図である。
【0020】
図1には、本発明によるシステムを概略的に示した。自動車の内燃機関10は、駆動トレーン14を介して圧縮機またはコンプレッサ16と連結されている。圧縮機16は、たとえば詳しく説明しない様々な構成要素に関する圧縮空気形成のために自動車に設けられている。
【0021】
遮断クラッチもしくはクラッチ装置12は、内燃機関10と圧縮機16との間で駆動トレーン14に配置されている。クラッチ装置12は、内燃機関10に圧縮機16を連結するため、かつ内燃機関10から圧縮機を分離するために働く。たとえば圧縮機16の運転がもはや要求されず、車両条件もしくは周辺条件が許容する場合、圧縮機16は、内燃機関10の駆動トレーン14から分離される。
【0022】
圧縮機16は、特別な実施例では、単数または複数のシリンダを備えた往復ピストンコンプレッサであってよいが、同様に別の構造も考えられる。
【0023】
さらに圧縮機16は、駆動トレーン18を介して消費器20と連結されている。消費器20は、本実施例では、パワーステアリングもしくはステアリング補助装置の配設されたステアリング補助ポンプまたはハイドロリックポンプである。特にハイドロリックポンプは、容積ポンプ、たとえばベーンポンプまたはピストンポンプであってよい。ハイドロリックポンプは、図1で概略的に示した2つのポンプチャンバ22,24を備えている。ポンプチャンバ24は、ポンプ出力を形成するポンプチャンバであり、ポンプチャンバによって、流体が、ハイドロリック回路(図示していない)内でステアリング補助装置に搬送される。ポンプチャンバ24の運転中、ポンプは、圧縮機16から駆動トレーン18を介して駆動出力を受ける。これに対してポンプチャンバ22は、本実施例では、ポンプ出力を形成しないように形成されている。ポンプチャンバ22の運転中、ポンプは、圧縮機16から駆動トレーン18を介して駆動出力を受けない。
【0024】
選択的にポンプチャンバ22のポンプ出力は低下させることもできるが、ほぼゼロに設定してはならない。ポンプ出力の低下度は、たとえば使用される、内燃機関10の駆動トレーンに存在する圧縮機16またはそこに配置された別の構成要素に応じて設定することができる。したがってポンプチャンバ22のポンプ出力の低下度は、圧縮機16もしくは別の構成要素の様々な要因たとえば運転特性(トルク経過など)に依存している。
【0025】
図1には、単に異なる2つのポンプチャンバを示しているが、このような構成を有する多数のポンプチャンバを設けてもよい。
【0026】
図1に示した、圧縮機16および消費器20の配置構造は、必然的なものではない。重要な点を述べると、圧縮機16および消費器は、同じ駆動トレーンに連結されている。したがって消費器は、駆動トレーン18ではなく、内燃機関10の駆動トレーン14と直に連結されていると考えることができる。
【0027】
運転中、内燃機関10は、駆動トレーン14を介して圧縮機16を駆動する。この場合連結装置12は係合しているので、内燃機関10の駆動トルクが圧縮機16に伝達されるか、または内燃機関10の駆動出力が圧縮機に提供される。この場合内燃機関10は、圧縮機16を運転するにも消費器20を運転するにも必要である駆動出力を提供する。なぜならば消費器20は、図1に示したように、圧縮機16に連結されているからである。
【0028】
内燃機関の出力消費を低下させるために、自動車の運転条件もしくは周辺条件が許容して、コンプレッサが駆動されない場合、クラッチ装置12は、分離することができる。以下の説明は、係合しており、したがって駆動トルクを伝達するクラッチ装置12から出発している。
【0029】
圧縮機16は、運転中、膨張行程および圧縮行程を行う。往復ピストンコンプレッサの場合、往復ピストンコンプレッサは、たとえばピストン(図示していない)の往復運動を行い、往復運動によって、たとえば詳しく説明しない圧縮空気システムのための圧縮空気が形成される。圧縮過程の間、つまりピストンが下死点から上死点に向かって移動する間、駆動トレーン14内での、圧縮運転にとって必要なトルク/出力の経過は、あとで説明するようになる。説明を容易にするために、以下においては、単に1つのピストン/シリンダを備えた往復ピストンコンプレッサから出発している。
【0030】
圧縮機16のピストンが下死点から上死点に向かって移動すると、シリンダ内に存在する流体は圧縮される。この場合シリンダ内の圧力は上昇する。シリンダ内の圧力上昇と共に、圧縮機16に供給される、圧縮機運転にとって必要なトルク(内燃機関10から送られる)もまた上昇する。特定のピストンストロークから、つまり圧縮過程において進んだ特定のストロークから、シリンダ内の圧力は比較的強く高められる。これによって圧縮機運転にとって必要なトルクの経過におけるトルク頂点が生じる。駆動トレーン14における、圧縮機運転にとって必要なトルク経過のトルク頂点を補償するために、本発明によれば、圧縮機16の駆動トレーン18に消費器20が設けられており、消費器20は、出力消費を低下させ、圧縮機運転にとって必要なトルクの経過が圧縮過程において閾値を超えるか、または最高トルクに達する。これによって総じて駆動トレーン14におけるエンジン駆動トルク(エンジン駆動トルクは圧縮機運転にとって必要なトルクと消費器20のトルクとの重畳を示す)が実質的に一定に維持されるか、もしくは前述の出力頂点もしくはトルク頂点が消費器の低下した出力消費に基づいて補償される。したがって内燃機関10から伝達されるトルクもしくは提供される内燃機関10の駆動出力の、ほぼ均等もしくは一定の経過が提供される。
【0031】
したがって圧縮機16の圧縮サイクルにおいて消費器20の出力消費を低下させるために、特別な形態ではステアリング補助ポンプまたはハイドロリックポンプである消費器20は、圧縮過程の間に、閾値を超えると、ポンプ出力を形成しないポンプチャンバを運転し、これによってハイドロリックポンプの出力消費が低下させられる。したがってトルクもしくは内燃機関10の駆動出力の経過が一定に維持されるか、もしくはトルク頂点が補償される。圧縮機16がもはや圧縮過程になく、たとえば膨張過程にある場合(ここでは圧縮機運転にとって必要な出力の経過は所定の閾値を下回るか、もしくは最高出力に到達しない)、ポンプは、ポンプ出力を形成して、これに応じて流体を搬送するポンプチャンバ22を運転し、これによって消費器20の出力消費は高められる。
【0032】
図2には、図1に示した消費器20の特別な形態を示した。図2では、消費器20を成すハイドロリックポンプまたはステアリング補助ポンプは、半径方向断面図で示した本発明によるベーンポンプであり、このベーンポンプは、前述の様々な運転、つまりポンプ出力を形成する運転とポンプ出力を形成しない運転とを実施できるように変更されている。図2には、3つのポンプチャンバを備えたベーンポンプを示しているが、前述の構成を有する、単に2つのポンプチャンバまたは4つ以上のポンプチャンバを備えた、変更されたベーンポンプを用いてもよい。
【0033】
ベーンポンプは、ロータ26とステータ30とを備えている。ロータ26は、概ね円筒形に形成されていて、縦軸線を中心に回動可能にステータ30内で支承されている。第1面40でロータ26は面取りされており、つまり第1面40で、軸方向もしくはロータ軸方向でみて、円区分もしくは円セグメントがロータ26から除去された構成を有しており、ここでは場合ロータ26は、第1面で面取りされた区分を成している。さらにロータ26は、接触区分44で、ステータ30に接触しており、接触区分44は、ロータ26の、第1面40とは反対側の第2面に設けられている。
【0034】
ロータ26には、ガイド38が形成されており、ガイド38は、回転軸線に対して垂直に、かつロータ26を通って延びている。有利にはガイド38は、回転軸線を通って延びているので、第1面40は、ガイド38に関して、ロータ26の面取りされた区分を備えており、第2面42は、ガイド38に関して、ロータ26の接触区分44を備えている。ガイド38には、2つの回動スライダ28が配置されており、回動スライダ28は、ばね36によって保持されていて、かつステータ30に対してプレロードを掛けられている。ばねは、ロータ26内で不動に固定されている。したがってロータ26は、ステータ30、ステータ30とロータ26との接触区分44、および回動スライダ28に協働して、異なるポンプチャンバ22,24を形成する。
【0035】
ステータには、吐出開口32および吸込開口34が設けられており、吐出開口32および吸込開口34は、それぞれ流体を吐出するか、または吸い込む。図2から看取されるように、ステータ30の内側空間は、ロータ26、特にロータ26とステータ30との接触区分44と、回動スライダとによって、異なるポンプチャンバ22,24に分けられている。この場合ポンプチャンバ24は、ポンプ出力を形成しないポンプチャンバであり、これに対してポンプチャンバ22は、ポンプ出力を形成するポンプチャンバである。このことは、材料除去もしくは面取りまたはロータ26の面取りされた区分に基づいて拡大されたチャンバスペースによってもたらされる。
【0036】
運転中、ロータ26は、回転軸線を中心に、たとえば右回り方向で、つまり反時計回り方向で回動する。回動スライダ28が連続的にばね36のプレロードに基づいてステータ30に接触して、その間に位置するギャップをシールすることによって、ポンプチャンバ22内に存在する流体は、吐出開口32に搬送される。さらに別のポンプチャンバ22は、ロータ26の回動に基づいて吸込開口34を介して流体を吸い込む。これに対してポンプチャンバ24は、ロータ26の特別な構成によって、ポンプ出力を形成しないように形成されている。したがってこのことは、ロータ26が、適切な位置で、つまりロータ26の面取りされた区分が吐出開口32および吸込開口34に向いた位置で、吐出開口32と吸込開口34との間でステータ30に接触しない、つまりロータ26は、ポンプチャンバ24を形成する側で、接触区分44を有していないことに起因する。これによって吐出開口32と吸込開口34とは、ポンプチャンバ24において、ロータ26の適切な位置で永続的に接続し、これによって流体が搬送されず、したがってポンプ出力が形成されない。したがってポンプの出力消費は大幅に低下されている。
【0037】
本発明によれば、ポンプチャンバ24の運転は、時間的に前述の閾値の超過から、圧縮機16の圧縮過程と一致させられるか、もしくは同期化される。したがってポンプは、圧縮機運転にとって必要な駆動出力の経過が閾値を超える間、ポンプ出力を形成しない。したがってロータ26の所定のクランク角度にわたる、ベーンポンプの均等なトルク経過が大幅に低下させられる。これによって、前述したように、圧縮機16に伝達される最大トルクの位置における低下が得られ、この場合内燃機関の駆動トレーン14における均等な総トルク経過もしくは均等な総駆動装置出力経過が保証されるか、もしくは一定に維持される。
【0038】
前述の実施例の説明、図面ならびに請求の範囲で開示された、本発明の特徴は、それぞれ個々の構成でも、また任意に組み合わせた構成でも、本発明の実現にとって重要なものである。
【符号の説明】
【0039】
10 内燃機関、 12 クラッチ装置、 14 駆動トレーン、 16 圧縮機、 18 駆動トレーン、 20 消費器、 22 ポンプチャンバ、 24 ポンプチャンバ、 26 ロータ、 28 回動スライダ、 30 ステータ、 32 吐出開口、 34 吸込開口、 36 ばね、 38 ガイド、 40 ロータの第1面、 42 ロータの第2面、 44 ロータの接触区分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(16)と消費器(20)とを備えたシステムであって、
該圧縮機(16)および該消費器(20)は、駆動トレーン(14,18)に連結されていて、かつ該駆動トレーン(14,18)からエネルギを受け取るようになっている形式のものにおいて、
前記消費器(20)は、前記駆動トレーン(14,18)から提供される出力の消費を、圧縮機運転にとって必要な、前記駆動トレーン(14,18)から前記圧縮機(16)に供給される出力に応じて変化させるのに適当な構成を有していることを特徴とする、圧縮機と消費器とを備えたシステム。
【請求項2】
前記消費器(20)は、提供される出力の消費を変化させ、それも圧縮機運転にとって必要な出力と、前記消費器(20)によって消費される出力との総出力の経過が概ね一定であるように変化させるのに適当な構成を有している、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記消費器(20)は、圧縮機運転にとって必要な出力の経過が、所定の閾値を超えて上昇するか、または最大出力範囲に達すると、該消費器(20)に提供される出力の消費を変化させるのに適切な構成を有している、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
圧縮機運転にとって必要な出力は、圧縮過程または圧縮サイクルで、閾値を超えるか、または最大出力に達する、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記消費器(20)は、ポンプ、特にステアリング補助ポンプまたはハイドロリックポンプを備えており、該ポンプは、提供される出力を消費する、ポンプ出力を形成する運転と、提供される出力を消費しないか、または僅かしか消費しない、ポンプ出力を形成しない運転、または前記圧縮機(16)の運転特性に応じて低下したポンプ出力しか形成しない運転を行うのに適切な構成を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記ポンプは、容積ポンプ、特にベーンポンプまたはピストンポンプであり、ポンプ出力を形成しない、または前記圧縮機(16)の運転特性に応じて低下したポンプ出力しか形成しない少なくとも1つのポンプチャンバ(22)が形成されており、該ポンプチャンバ(22)によって、ポンプ運転で、出力が消費されないか、または提供される出力が僅しか消費されず、前記ポンプは、ポンプ出力を形成する少なくとも1つのポンプチャンバ(24)を追加的に備えており、該ポンプチャンバ(24)によって、ポンプ運転で、提供される出力が消費される、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記圧縮機(16)は、内燃機関(10)の駆動トレーン(14)によって駆動されるようになっており、前記消費器(20)は、前記圧縮機(16)の駆動トレーン(18)によって駆動されるようになっており、選択的にクラッチ装置(12)が、内燃機関(10)の駆動トレーン(14)に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
ポンプであって、
該ポンプは、ポンプ運転中ポンプ出力を形成する少なくとも1つのポンプチャンバ(24)を備えている形式のものにおいて、
前記ポンプは、少なくとも1つの別のポンプチャンバ(22)を備えており、該別のポンプチャンバ(22)は、ポンプ運転中ポンプ出力を形成しないか、または僅かなポンプ出力しか形成しないようになっていることを特徴とする、ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−543973(P2009−543973A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519872(P2009−519872)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006421
【国際公開番号】WO2008/009446
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】