説明

自動車のアシスト式発進システムの動作状態を診断する方法およびシステム

制御式駐車ブレーキを装備する自動車のアシスト式発進システムの動作状態を診断する方法であって、車両情報の少なくとも1つの項目を計算するステップと、前記車両情報に関連づけられた有効性情報の少なくとも1つの項目が生成される有効性ステップとを含む。本方法は、駐車ブレーキをはずすためのコマンドの間に車両情報および関連有効性情報を不揮発性メモリに記録するステップと、診断情報の少なくとも1つの項目が、記録された情報の有効性の検証に基づいて作成される診断ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のアシスト式発進システムの動作状態を診断する方法およびシステムに関する。
【0002】
詳細には、本発明は、制御式駐車ブレーキを装備する自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、一部の自動車はアシスト式発進システムを装備し、このシステムの本質は、車両を発進させるときに駐車ブレーキの解放を自動制御することにある。駐車ブレーキは、車両が停止されたときに車両を固定することを意図した、ブレーキペダルによって作動されるブレーキに加えた補助ブレーキシステムである。
【0004】
自動駐車ブレーキ解放コマンドは、「坂道発進」ともいう、斜面での発進の際に運転者を支援することを可能にする。斜面で発進する原理は、エンジンによって駆動輪に伝えられるトルクが、斜面の影響を補償するのに十分なときに、非駆動輪に対するブレーキを解放することである。
【0005】
アシスト式発進システムを用いるときに遭遇する問題の1つは、自動ブレーキ解放コマンドが、一定の条件において損なわれ得ることである。実際、アシスト式発進システムが誤動作した場合、駐車ブレーキ解放コマンドを許可する条件がすべて満たされなくても、システムによって駐車ブレーキ解放コマンドが発行される可能性がある。この特定のケースでは、「不順発進」が起こると言われる。「不順発進」という表現は、駐車ブレーキ解放コマンドを許可する条件が満たされなかった瞬間に起こるので運転者を驚かせる、システムによって発行される駐車ブレーキ解放コマンドを意味すると理解されたい。
【0006】
したがって、アシスト式発進システムの動作状態を診断するためには、駐車ブレーキ解放コマンドが出された場合に許可条件を帰納的に分析することが有利である。
【0007】
英国特許出願第GB2376990号を一例として引用する。前記出願は、駐車ブレーキを制御するシステムについて記載しており、このシステムでは、車両が陽圧置換によって動かされ、満足できる位置にクラッチペダルが達すると駐車ブレーキが解放されるが、この文書は、アシスト式発進システムの動作状態を診断する手段については記載していない。
【0008】
英国特許出願第GB2342967号も引用する。この出願は、駐車ブレーキを制御する装置について開示しており、車輪に印加されるブレーキトルクが一定の閾値を下回ると、前記ブレーキが解放される。さらに、坂道発進支援装置について記載している、本出願人の名前で出願した仏国特許出願第FR2828450号、および車両を発進させると駐車ブレーキを自動的に解放する装置を開示している、やはり本出願人の名前で出願した仏国特許出願第FR2841199号を引用することも可能である。ただし、こうした文書も、アシスト式発進システムの動作状態を診断する手段については開示していない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的の1つはしたがって、アシスト式発進システムの動作状態を診断するシステムおよび方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、アシスト式発進システムの動作状態を帰納的に診断可能にして、このようなシステムの良好または不良動作を提示することである。
【0011】
本発明の主題はしたがって、制御式駐車ブレーキを装備する自動車のアシスト式発進システムの動作状態を診断する方法であって、少なくとも1つの車両情報項目を計算するステップと、前記車両情報項目に関連づけられた少なくとも1つの有効性情報項目が生成される有効性ステップとを含む方法である。
【0012】
この方法は、駐車ブレーキ解放コマンドの間に車両情報項目および関連有効性情報項目を不揮発性メモリに格納するステップと、格納された情報項目の有効性に関するチェックに基づいて、少なくとも1つの診断情報項目が作成される診断ステップとを含む。
【0013】
このようなプロセスは、アシスト式発進システムの動作状態を容易に素早く診断する簡単でコストのかからない方法を提供する。情報項目の有効性に関するチェックは、たとえば、車両情報項目と、それに関連した有効性情報項目との比較でよい。予め格納された情報項目の有効性に関する帰納的チェックから、有効性エラーに続いて不順発進が起きているかどうか、また、この不順発進が車両情報項目計算エラーに続いて起きたかどうかを診断することが可能である。
【0014】
別の実施形態によると、格納ステップの後に、少なくとも1つの格納された情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目が計算される分析ステップが実施され、新規有効性情報項目と少なくとも1つの格納された情報項目との比較に基づいて、少なくとも1つの診断情報項目が作成される診断ステップが実施される。
【0015】
このような方法により、アシスト式発進システムエラーまたは車両情報項目計算エラーを検出することも可能になる。この方法は前述の方法に追加されて、診断の信頼性を増し得る。この方法により、アシスト式発進システムを制御し、格納された情報項目からの同一の帰納的計算を実施することによって車両情報項目を計算することも可能になる。こうした格納された情報項目は、アシスト式発進システムの動作条件のトレースを表す。
【0016】
さらに別の実施形態によると、この方法は、少なくとも1つの他の車両情報項目を測定するステップを含み、分析ステップの間に、少なくとも1つの現在の情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目が計算される。
【0017】
したがって、アシスト式発進システムが、情報項目を測定するセンサを装備するとき、このような方法により、起こり得るセンサ故障を検出することが可能になる。この方法は、駐車ブレーキ解放コマンドの間に故障が起きたかどうかをチェックするのに特に適している。さらに、この方法により、この未検出故障が解放コマンドの後に消滅したかどうかを検出することが可能になる。
【0018】
別の特性によると、アシスト式発進システムは、新規アシスト式発進を実施して少なくとも1つの追加有効性情報項目を取得するよう命じられ、分析ステップ中に、追加情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目が計算される。
【0019】
格納ステップの後に、追加アシスト式発進コマンドを実施して、予め格納された情報項目と比較するための新規情報項目を生成することが可能である。
【0020】
さらに別の特性によると、格納ステップは、自動車に組み込まれた装置を使って実施され、分析ステップおよび診断ステップは次いで、前記車両の外部に位置する装置を使って実施される。
【0021】
この場合、たとえば、専門修理工場によって実施される、車両の状態に関する全般的チェックの間に診断結果が作成され得る。したがって、専門修理工場は、アシスト式発進システムの動作状態の不順発進に関するクライアントからの苦情に続いて帰納的診断を可能にする適切な装置を装備し得る。
【0022】
さらに別の実施形態によると、分析ステップは、様々な計算条件で実施される。
【0023】
このように、車両の発進条件を修正して、ブレーキ解放コマンドの間には検出されなかったであろうアシスト式発進システムにおける有効性エラー、計算エラーまたは測定エラーを明らかにすることが可能である。
【0024】
別の態様によると、本発明の主題は、制御式駐車ブレーキを装備する自動車のアシスト式発進システムの動作状態を診断するシステムであって、アシスト式発進システムは、駐車ブレーキの解放を制御し、車両情報項目に関連づけられた少なくとも1つの有効性情報項目を生成することができるアシスト式発進コンピュータで使用される前記車両情報項目を計算する少なくとも1つの計算手段を備える。
【0025】
このシステムは、駐車ブレーキ解放コマンドの間に不揮発性メモリに車両情報項目および関連有効性情報項目を格納するバックアップモジュールと、格納された情報項目の有効性に関するチェックに基づいて、少なくとも1つの診断情報項目を作成することができるチェックモジュールを備える、格納された情報項目を受信することができる診断モジュールとを備える。
【0026】
別の実施形態によると、前記診断モジュールは、新規有効性情報項目と少なくとも1つの格納された情報項目との比較に基づいて少なくとも1つの診断情報項目を作成することもできるチェックモジュールで使用される少なくとも1つの格納された情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目を計算する分析モジュールを備える。
【0027】
さらに別の実施形態によると、アシスト式発進システムは、アシスト式発進コンピュータで使用される少なくとも1つの他の車両情報項目を測定する少なくとも1つのセンサを備え、診断モジュールは、現在の車両情報項目および関連づけられた現在の有効性情報項目を受信することもでき、分析モジュールは、少なくとも1つの現在の情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目を計算することができる。
【0028】
別の特性によると、アシスト式発進コンピュータは、追加駐車ブレーキ解放コマンドの間に少なくとも1つの追加有効性情報項目を生成することができ、分析モジュールは、追加有効性情報項目に基づいて新規有効性情報項目を作成することができる。
【0029】
さらに別の特性によると、バックアップモジュールは自動車に組み込まれ、診断モジュールは前記車両の外部に位置する。
【0030】
さらに別の実施形態によると、分析モジュールは、様々な計算条件で新規有効性情報項目を計算することが可能である。
【0031】
本発明の他の目的、特徴および利点が、純粋に非限定的例として与えられるとともに添付の図面を参照する以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による診断システムを示す概略図である。
【図2】診断モジュールの一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明による診断方法の主なフェーズを示すフロー図である。
【図4】診断ステップの例示的な一実装形態を示すフロー図である。
【図5】診断ステップの例示的な一実装形態を示すフロー図である。
【図6】診断ステップの例示的な一実装形態を示すフロー図である。
【図7】診断ステップの例示的な一実装形態を示すフロー図である。
【図8】診断ステップの例示的な一実装形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、自動車のアシスト式発進システム2の動作状態を診断するシステム1の概略図を示す。
【0034】
アシスト式発進システム2(またはASS)は、アシスト式発進コンピュータ3、複数のセンサ4〜8、電気制御式駐車ブレーキ9、計算手段10、11およびASS入出力モジュール12を備える。アシスト式発進システム2は、自動車に組み込まれる。
【0035】
アシスト式発進コンピュータ3は、駐車ブレーキ9解放または作動コマンドを管理するアルゴリズムを収容する。アシスト式発進コンピュータ3は、接続13を介して駐車ブレーキ9に送信される解放/作動コマンドを発行する。
【0036】
アシスト式発進コンピュータ3は、センサ4〜8から発生する車両情報項目を受信する。斜面センサ4は、接続14を介してアシスト式発進コンピュータ3に斜面の測定値SlopeDAを発行する。加速ペダル位置センサ5は、接続15を介してアシスト式発進コンピュータ3に加速ペダルの位置の測定値AccPedPosを発行する。エンジン速度センサ6は、接続16を介してアシスト式発進コンピュータ3にエンジン速度の測定値Nmotを送付する。変速レバー位置センサ7は、接続17を介してアシスト式発進コンピュータ3に変速レバーの位置の測定値GLPosを送付する。クラッチペダル位置センサ8は、接続18を介してアシスト式発進コンピュータ3にクラッチペダルの位置の測定値ClutchPedPosを送付する。
【0037】
アシスト式発進コンピュータ3は、それぞれ接続19、20を介して送信される、計算手段10、11から発生する車両情報項目も受信する。
【0038】
計算手段10、11は、特に、計算アルゴリズムから車両情報項目を作成し、または推定することができる。こうした計算手段10、11は好ましくは、アシスト式発進システムに組み込まれるが、たとえば、車両の車輪滑り止めシステムなど、車両の他の組込みシステムに属してもよい。
【0039】
好ましい実施形態によると、アシスト式発進システムは、車両の車輪に伝達されるトルクTwheelsを推定する2つの推定モジュールA1、A2を備える。
【0040】
第1の推定モジュールA1は、上で引用した特許出願第FR2841199号に記載されている方法により、車輪に伝達されるトルクTwheelsを推定する。アシスト式発進システムは、上で引用した特許出願第FR2828450号に記載されている方法により、車輪に伝達されるトルクTwheelsを推定する第2の推定モジュールA2も備え得る。この第2のモジュールA2は、第1の推定モジュールA1に追加しても、モジュールA1と置き換えてもよい。2つのモジュールを並行して使用することにより、様々な方法により車輪に伝達されるトルクの2つの推定値を取得することが可能になり、したがって、車輪に伝達されるトルクの推定が豊富になって、アシスト式発進システムの信頼性が増す。
【0041】
第1の推定モジュールA1は、特許出願第FR2841199号の方法に基づき、エンジン速度の時間微分から、エンジントルクから、およびエンジン慣性から、車輪に伝達されるトルクTwheelsの推定値を供給する。
【0042】
第2の推定モジュールA2は、特許出願第FR2828450号の方法に基づき、センサにより実施されるクラッチペダルの位置の測定、およびクラッチ曲線から、車輪に伝達されるトルクTwheelsの推定値を与える。
【0043】
たとえば、車輪上のトルクセンサを使うことによって、車輪に伝達されるトルクTwheelsに関する情報項目を作成する他の手段または前記トルクTwheelsを計算する他の任意のアルゴリズムを想定することも可能である。
【0044】
さらに、アシスト式発進コンピュータ3は、センサから、または計算手段から受信される車両情報項目それぞれに関連づけられた少なくとも1つの有効性情報項目を生成することができる。こうした有効性情報項目は、アシスト式発進コンピュータ3によって、駐車ブレーキ9解放または作動コマンドを送付する前に発進条件を検査するのに使われる。有効性情報項目の検査が有効な場合、駐車ブレーキ9を解放するための解放コマンドが送付される。
【0045】
ASSの入出力モジュール12は、接続21によってアシスト式発進コンピュータ3に接続されており、センサ4〜8によって測定され、推定モジュールA1、A2によって作成された車両情報項目、ならびにアシスト式発進コンピュータ3によって生成された有効性情報項目を受信する。ASSの入出力モジュール12は、車両および有効性情報項目を診断システム1に送信する。ASSの入出力モジュール12は、接続21を介して駐車ブレーキ解放/作動コマンドも受信し、診断システム1にコマンドを送信することができる。
【0046】
診断システム1は、バックアップモジュール22および診断モジュール23を備える。
【0047】
図中にAで示す好ましい実施形態では、バックアップモジュール22は車両に組み込まれ、車両はアシスト式発進システム2に組み込むことができ、診断モジュール23は車両の外部に位置する。たとえば、診断モジュール23は、ラップトップコンピュータではコンピュータに組み込むことができる。
【0048】
Bで示す変形形態では、バックアップモジュール22および診断モジュール23は、車両に組み込まれる。さらに、診断モジュール23は、アシスト式発進システム2に組み込むことができる。
【0049】
バックアップモジュール22は、接続24によってASSの入出力モジュール12に接続される。
【0050】
バックアップモジュール22は、接続24を介して、駐車ブレーキ9解放/作動コマンドと、センサ4〜8から、および推定モジュールA1、A2から発生する車両情報項目と、アシスト式発進コンピュータ3によって生成された有効性情報項目とを受信する。バックアップモジュール22は、接続24を介して、モジュール22に格納された情報項目をすべて、ASSの入出力モジュール12に送信することもできる。
【0051】
同様に、診断モジュール23は、接続25を介して、駐車ブレーキ9解放/作動コマンド、車両情報項目および有効性情報項目を受信するように、ASSの入出力モジュール12に接続される。診断モジュール23によって受信される情報項目および解放/作動コマンドは、アシスト式発進コンピュータ3から発生してもよく、この場合は現在の情報項目として示され、バックアップモジュール22から発生してもよく、この場合は格納された情報項目として示される。
【0052】
図2は、診断モジュール23の一実施形態の概略図を示す。診断モジュール23は、診断モジュールの入出力モジュール26、分析モジュール27、基準変数を生成するモジュール28およびチェックモジュール29を備える。
【0053】
診断モジュールの入出力モジュール26は、接続25を介してASSの入出力モジュール12に接続され、アシスト式発進コンピュータ3から発生する現在の情報項目、ならびにバックアップモジュール22から発生する格納された情報項目を受信する。診断モジュールの入出力モジュール26は、接続25を介して、アシスト式発進コンピュータ3に発進コマンドを送信することもでき、そうすることによってコンピュータ3は、追加駐車ブレーキ9解放/作動コマンドを生成することができる。診断モジュール23から発生するこの発進コマンドにより、格納された情報項目を生成したものとは異なる発進条件で、追加アシスト式発進を実施することが可能になる。追加アシスト式発進により、追加の現在の情報項目を生成することが可能になり、こうした項目は、帰納的診断結果を作成するために格納された情報項目と比較され得る。
【0054】
分析モジュール27は、接続30を介して送信される、アシスト式発進コンピュータ3から発生する現在の情報項目と、接続31を介して送信される、バックアップモジュール22から発生する格納された情報項目とを受信するように、診断モジュールの入出力モジュール26に接続される。この分析モジュール27は、接続32を介して、計算された情報項目をチェックモジュール29に送信する。分析モジュール27は、アシスト式発進コンピュータ3から発生する現在の情報項目を、チェックモジュール29に直接送信することもできる。「情報項目の直接送信」という表現は、分析モジュール27によって計算し直されない情報項目を意味すると理解されたい。
【0055】
モジュール28は、基準変数を生成して、接続33を介してチェックモジュール29に基準変数を送信することができる。
【0056】
チェックモジュール29は、接続31を介して、診断モジュールの入出力モジュール26から発生する格納された情報項目も受信する。チェックモジュール29は、VD1、VD2…、VDi…、VDNで示す複数の診断情報項目を作成し、接続35を介して診断モジュールの入出力モジュール26に送信する。
【0057】
診断情報項目は、ラップトップコンピュータスクリーンに、またはテキストタイプのコンピュータファイルに送信することができる。診断モジュールが車両に組み込まれているとき、運転者への警告のために生成されるべき視覚、聴覚または触覚アラームが用意され得る。
【0058】
図3は、上で記載したアシスト式発進システム2の動作状態を診断する方法の主なフェーズを説明するフロー図を示す。
【0059】
この方法はステップ100、101で始まり、ここで計算手段からの車両情報項目の計算およびセンサからの車両情報項目の測定がそれぞれ実施される。次いで、次のステップ102が実施され、ここで、車両情報項目それぞれに関連づけられた有効性情報項目が生成される。発進条件が満たされるとき、ステップ103が実施され、ここで、駐車ブレーキ解放コマンドが送付される。次いで、ステップ104が実施されて、アシスト式発進システム2の動作の診断結果を作成するために有用な車両情報項目と関連情報項目とを格納する。次いで、ステップ105が実施されて、格納された情報項目の有効性をチェックし、診断ステップ106が実施され、ここで、各チェックステップ105ごとに診断情報項目が作成される。
【0060】
チェックステップ105は、格納された情報項目に依存して、いくつかの任意選択のステップ107〜109を含み得る。チェックステップ105の間、たとえば、格納された情報項目を互いと比較し、次いで診断ステップ106を実施することが可能である。ステップ109を実施して、格納された情報項目から新規有効性情報項目を計算し、こうした新規情報項目を予め格納された情報項目と比較することも可能である。ステップ107を実施することさえも可能であり、ここで、たとえば異なる傾斜の斜面に車両を配置することによって、または変速レバーを「ニュートラル」ポジションに入れることによって発進条件が修正される。この修正ステップ107の後、ステップ108が実施され、ここで、追加駐車ブレーキ解放コマンドが送付される。ステップ108により、様々な条件で実施される、新規情報項目の生成が可能になり、次いで、こうした新規情報項目は、予め格納された情報項目と比較される。
【0061】
診断方法の原則は、アシスト式発進コンピュータ3を介して、駐車ブレーキ9に解放/作動コマンドを送付する前に受信された車両情報項目の有効性を検査することである。解放/作動コマンドが送付されると、車両および関連有効性情報項目は、バックアップモジュール22を介して、EEPROM、すなわち電気的消去可能プログラム可能読出し専用メモリタイプの不揮発性メモリに格納される。次いで、不順発進が起こると、アシスト式発進システム2の動作状態を診断するために、格納データが分析される。
【0062】
いくつかのタイプの不順発進は、車両情報項目作成元のうち1つの作成元の故障により見分けることができる。主な車両情報項目作成元は、測定センサ、車輪に伝達されるトルクを推定するモジュール、およびアシスト式発進コンピュータである。
【0063】
欠陥元による3タイプの不順発進について検討する。
・タイプI:センサの未検出故障に続く不順発進。たとえば、車両が停止されるとき、変速レバーは「ニュートラル」ポジションに入り、駐車ブレーキが作動される。こうした条件において、発進直前にギアボックス接触器が「ギア作動」位置に閉塞された場合、加速ペダルを踏むだけで、駐車ブレーキ解放コマンドにつながり得る。この故障は通常、車両がローリング条件にあるとき、ニュートラルポイントおよびギア作動接触器が矛盾したメッセージを供給するとき、帰納的に検出される。
・タイプII:車輪に伝達されるトルクの過剰推定に続く不順発進。車輪に伝達される実際のトルクが斜面のせいでトルク未満のとき、解放コマンドが送付されるのが早過ぎ、予期せぬ車両後退につながる。
・タイプIII:アシスト式発進コンピュータの故障に続く不順発進。アシスト式発進を実施する条件は、すべてがコンピュータによって正しく確認されるわけではない。
【0064】
バックアップモジュール22を使って格納される情報項目の非網羅的リストを、以下に挙げる。バックアップモジュール22は、使用される推定モジュールに従って、車両情報項目を格納することもできる。実際、車両情報項目は、使用される推定モジュールによって異なる。
【0065】
以下は、センサ4〜7によって測定される車両情報項目の例示的リストである。こうした測定情報項目は、使用される推定モジュールにかかわらず格納される。
・SlopeDA:水平に相対して、車両が走行している斜面または道路の傾斜
・AccPedPos:加速ペダル位置
・GLPos:変速レバー位置
・Nmot:エンジン速度
【0066】
アシスト式発進コンピュータ3によって生成される有効性情報項目の例示的リストを、以下に挙げる。こうした計算情報項目は、使用される推定モジュールにかかわらず格納される。
・TotalDistance:車両によって移動される距離
・SlopeValDA:SlopeDA情報項目に対するブーリアン有効性信号であって、以下の値をもつ。
・SlopeDA情報項目が無効な場合は0
・SlopeDA情報項目が有効な場合は1
・AccPedPosVal:AccPedPos情報項目に対するブーリアン有効性信号であって、以下の値をもつ。
・AccPedPos情報項目が無効な場合は0
・AccPedPos情報項目が有効な場合は1
・AccPedPosThres:アシスト式発進コンピュータ3によって作成される加速ペダル位置閾値
・GLPosVal:GLPos情報項目に対するブーリアン有効性信号であって、以下の値をもつ。
・GLPos情報項目が無効な場合は0
・GLPos情報項目が有効な場合は1
・NmotVal:Nmot情報項目に対するブーリアン有効性信号であって、以下の値をもつ。
・Nmot情報項目が無効な場合は0
・Nmot情報項目が有効な場合は1
・NmotThres:斜面による、アシスト式発進コンピュータ3によって作成されるエンジン速度閾値。
【0067】
第1の推定モジュールA1が使われるとき、車輪に伝達されるトルクは、クラッチペダルの位置と、その位置にあるクラッチによって伝達され得る最大トルクとをリンクするクラッチ曲線から推定される。車輪に伝達されるトルクの帰納的計算のためには、したがって、アシスト式発進の間にクラッチ曲線を格納することが必要である。
【0068】
第1の推定モジュールA1が使われるときにのみ格納される情報項目の例示的リストを、以下に挙げる。
センサ8によって測定される情報項目:
・ClutchPedPos:クラッチペダル位置
アシスト式発進コンピュータによって生成される情報項目:
・ClutchPedPosVal:ClutchPedPos情報項目に対するブーリアン有効性信号であって、以下の値をもつ。
・ClutchPedPos情報項目が無効な場合は0
・ClutchPedPos情報項目が有効な場合は1
・ClutchPedPosThres:アシスト式発進コンピュータ3によって作成されるクラッチペダル位置閾値
・AntClutchPedPos:アシスト式発進コンピュータ3によって作成される、クラッチペダルの予想位置
・TwheelsThres:斜面に従ってアシスト式発進コンピュータ3によって作成される、車輪に伝達されるべきトルクの閾値
第1の推定モジュールA1によって生成される情報項目:
・Twheels:車輪に伝達されるトルクの推定値
・ClutchCurve:第1の推定モジュールA1によって生成されるクラッチ曲線
【0069】
第2の推定モジュールA2が使われるとき、車輪に伝達されるトルクは、エンジン速度の時間微分から、およびエンジントルクから推定される。車輪に伝達されるトルクの帰納的計算のためには、したがって、アシスト式発進中にエンジン速度の履歴を格納することが必要である。
【0070】
第2の推定モジュールA2が使われるときにのみ格納される情報項目の例示的リストを、以下に挙げる。
センサ6によって測定される情報項目:
・Nmot(1…n):アシスト式発進中のエンジン速度のn個のサンプルに渡る履歴。n個のサンプルの格納により、エンジン速度の時間ドリフトを計算することが可能になる。値Nmot(1)は、駐車ブレーキ9解放コマンド中に測定されるエンジン速度の値に対応する。
・CME:エンジントルク
アシスト式発進コンピュータによって生成される情報項目:
・TwheelsThres:斜面に従ってアシスト式発進コンピュータ3によって作成される、車輪に伝達されるべきトルクの閾値
第2の推定モジュールA2によって生成される情報項目:
・Twheels:車輪に伝達されるトルクの推定
【0071】
図4〜8は、診断ステップの例示的な実装形態を説明するフロー図を示す。
【0072】
診断ステップは、格納された情報項目に対するチェックを実施すること、および関連づけられた診断情報項目VDiを作成することに本質がある。関連づけられた情報項目VDiは、以下のように符号化され得る。
・VDi:以下の値もつ、チェックに関連づけられた診断情報項目
・アシスト式発進システムの動作状態が有効な場合は0
・センサの故障に続いて、タイプIの不順発進が起こる場合は1
・推定モジュールによる、車輪に伝達されるトルクの過剰推定に続いて、タイプIIの不順発進が起こる場合は2
・アシスト式発進コンピュータの故障に続いて、タイプIIの不順発進が起こる場合は3。
【0073】
チェックは、チェックモジュール29によって実施される。アシスト式発進コンピュータ3は、複数の情報項目を受信することができ、情報項目をチェックするモジュール29は、様々なタイプのいくつかのチェックを備え得る。
【0074】
図4〜8は、5タイプのチェックを示す。
【0075】
図4は、格納された有効性情報項目が、分析モジュール27から直接発生する、対応する現在の有効性情報項目と比較される第1のタイプのチェックを示す。
【0076】
この第1のタイプのチェックは、センサによって測定された様々な車両情報項目をチェックするのに使われ得る。図4は、SlopeDA情報項目に適用されるこの第1のタイプのチェックの例示的な適用例を記載する。
【0077】
図4において、SlopeDA情報項目がチェックされ、チェックの結果に従って、診断情報項目VD1が作成される。駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、格納された有効性情報項目SlopeValDAは、信頼できると見なされるべきである。斜面センサ4の故障を検出するために、格納された値SlopeValDAは次いで、分析モジュール27から発生する現在の値SlopeValDA_MAと比較される。
【0078】
ステップ200の間、SlopeValDA情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。SlopeValDA情報項目が無効な場合、情報項目VD1は値3をもち、有効な場合は次のステップ201が実施される。ステップ201の間、SlopeValDA_MA情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。SlopeValDA_MA情報項目が無効な場合、情報項目VD1は値1をもち、有効な場合は情報項目VD1は値0をもつ。
【0079】
図5は、第2のタイプのチェックを示し、このチェックでは、第1のステップの間、格納された測定済み情報項目が、第1の格納された有効性情報項目と比較され、次いで、第2の格納された有効性情報項目が、分析モジュール27から発生する、対応する現在の有効性情報項目と比較される。
【0080】
この第2のタイプのチェックは、一方では、センサによって測定された様々な車両情報項目を、他方では関連有効性情報項目をチェックするのに使われ得る。図5は、AccPedPos情報項目に適用されるこの第2のタイプのチェックの例示的な適用例を記載する。
【0081】
図5において、AccPedPos情報項目がチェックされ、チェックの結果に従って診断情報項目VD2が作成される。駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、加速ペダル位置AccPedPosは、閾値AccPedPosThresより大きくあるべきであり、格納された有効性情報項目AccPedPosValは、信頼できると見なされるべきである。加速ペダル位置センサ5の故障を検出するために、格納された値AccPedPosValは、分析モジュール27から発生する現在の値AccPedPosVal_MAと比較される。
【0082】
ステップ202の間、情報項目AccPedPosは、閾値AccPedPosThresと比較される。AccPedPos情報項目がAccPedPosThres閾値以下の場合、情報項目VD2は値3をもち、閾値より大きい場合は次のステップ203が実施される。
【0083】
ステップ203の間、AccPedPosVal情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。AccPedPosVal情報項目が無効な場合、情報項目VD2は値3をもち、有効な場合は次のステップ204が実施される。ステップ204の間、AccPedPosVal_MA情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。AccPedPosVal_MA情報項目が無効な場合、情報項目VD2は値1をもち、有効な場合は情報項目VD2は値0をもつ。
【0084】
別のセンサ4〜8の故障が、この第2のタイプのチェックと同様にして検出され得る。アシスト式発進システム2は、各センサごとに異なる1組の情報項目を用いる。こうした情報項目は、第2のタイプのチェックにおいて記載した情報項目と異なる名称だが同様の役割をもつ。図5で記載したこの第2のタイプのチェックは、使われる情報項目を調整することによって、他のセンサにも適用され得る。
【0085】
変速レバー位置センサ7が使われるとき、第2のタイプのチェックと同様にして、GLPos情報項目に対してチェックを実施し、チェックの結果に従って診断情報項目VD3を作成することが可能である。駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、ギア比が関与するべきであり、すなわち、GLPos情報項目はNeutral_Pointポジションとは異なるべきである。この条件は、第一速ギアに入っているときまたはバックギアに入っているときにのみ発進を強制することによって、より厳格にされ得る。さらに、格納された有効性情報項目GLPosValは、信頼できると見なされるべきである。変速レバー位置センサ7の故障を検出するために、格納された値GLPosValは次いで、分析モジュール27から発生する現在の値GLPosVal_MAと比較される。
【0086】
GLPos情報項目は、Neutral_Point閾値と比較される。GLPos情報項目がNeutral_Point閾値とは異なる場合、情報項目VD3は値3をもち、閾値と等しい場合は次のステップが実施される。
【0087】
次のステップの間、GLPosVal情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。GLPosVal情報項目が無効な場合、情報項目VD3は値3をもち、有効な場合はさらに次のステップが実施される。さらに次のこのステップの間、GLPosVal_MA情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。GLPosVal_MA情報項目が無効な場合、情報項目VD3は値1をもち、有効な場合は情報項目VD3は値0をもつ。
【0088】
エンジン速度センサ6が使われるとき、第2のチェックと同様に、Nmot情報項目に対してチェックを実施し、チェックの結果に従って診断情報項目VD4を作成することが可能である。駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、エンジン速度Nmotは閾値NmotThresより大きくあるべきであり、格納された有効性情報項目NmotValは信頼できると見なされるべきである。エンジン速度センサ6の故障を検出するために、格納された値NmotValは次いで、分析モジュール27から発生する現在の値NmotVal_MAと比較される。
【0089】
Nmot情報項目は、閾値NmotThresと比較される。Nmot情報項目が閾値NmotThres以下の場合、情報項目VD4は値3をもち、閾値より大きい場合は次のステップが実施される。
【0090】
次のステップの間、NmotVal情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。NmotVal情報項目が無効な場合、情報項目VD4は値3をもち、有効な場合はさらに次のステップが実施される。さらに次のこのステップの間、NmotVal_MA情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。NmotVal_MA情報項目が無効な場合、情報項目VD4は値1をもち、有効な場合は情報項目VD4は値0をもつ。
【0091】
クラッチペダル位置センサ8が使われるとき、第2のチェックと同様に、情報項目ClutchPedPosに対してチェックを実施し、チェックの結果に従って診断情報項目VD5を作成することが可能である。駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、クラッチペダル位置ClutchPedPosは、閾値ClutchPedPosThresより大きくあるべきであり、格納された有効性情報項目ClutchPedPosValは信頼できると見なされるべきである。クラッチペダル位置センサ8の故障を検出するために、格納された値ClutchPedPosValは次いで、分析モジュール27から発生する現在の値ClutchPedPosVal_MAと比較される。
【0092】
ClutchPedPos情報項目は、閾値ClutchPedPosThresと比較される。ClutchPedPos情報項目が閾値ClutchPedPosThres以下の場合、情報項目VD5は値3をもち、閾値より大きい場合は次のステップが実施される。
【0093】
次のステップの間、ClutchPedPosVal情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。ClutchPedPosVal情報項目が無効な場合、情報項目VD5は値3をもち、有効な場合はさらに次のステップが実施される。さらに次のこのステップの間、ClutchPedPosVal_MA情報項目が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。ClutchPedPosVal_MA情報項目が無効な場合、情報項目VD5は値1をもち、有効な場合は情報項目VD5は値0をもつ。
【0094】
図6は、第3のタイプのチェックを示し、このチェックにおいて、第1のステップの間、分析モジュール27を使って、新規有効性情報項目が格納された情報項目から、または現在の情報項目から計算される。第2のステップで、格納された有効性情報項目と前記新規有効性情報項目との間の差分が確定される。次いで、この差分は、基準閾値と比較される。基準閾値は、基準変数生成モジュール28によって生成される。
【0095】
この第3のタイプのチェックは、アシスト式発進コンピュータ3によって生成された様々な有効性情報項目をチェックするのに使われ得る。図6は、AccPedPosThres情報項目に適用されるこの第3のタイプのチェックの例示的な適用例を記載する。
【0096】
図6において、AccPedPosThres情報項目がチェックされ、チェックの結果に従って診断情報項目VD6が作成される。
【0097】
駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、閾値AccPedPosThresは信頼できるべきである。チェックステップ205が実施され、ここで、以下の比較が行われる。
abs(AccPedPosThres−AccPedPosThres_MA(SlopeDA,Nmot))<err_AccPedPosThres
上式で、
・abs:絶対値関数
・AccPedPosThres_MA(SlopeDA,Nmot):分析モジュール27によって計算される加速ペダル位置閾値。この計算は、格納された斜面SlopeDAおよび格納されたエンジン速度Nmotに従って加速ペダルの閾値を与えるマップを用いて確立される。
・err_AccPedPosThres:モジュール28によって生成される許容偏差。
【0098】
チェックが有効でない場合、情報項目VD6は値3をもち、有効な場合、情報項目VD6はレート0をもつ。
【0099】
さらに、図6で記載したチェックと同様にして、この第3のタイプのチェックをTwheelsThres情報項目に適用することが可能である。したがって、このようにして、TwheelsThres情報項目をチェックし、チェックの結果に従って診断情報項目VD7を作成することが可能である。
【0100】
駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、閾値TwheelsThresは信頼できるべきである。以下の比較が行われるチェックステップが実施される。
abs(TwheelsThres−TwheelsThres_MA)(SlopeDA))<err_TwheelsThres
上式で、
・abs:絶対値関数
・TwheelsThres_MA(SlopeDA):分析モジュール27によって計算される、車輪に伝達されるべきトルクに対する閾値。この計算は、格納された斜面SlopeDAに従って、車輪に伝達されるべきトルクの閾値を与えるマップを用いて確立される。
・err_TwheelsThres:モジュール28によって生成される許容偏差。
【0101】
チェックが有効でない場合、情報項目VD7は値3をもち、有効な場合は情報項目VD7は値0をもつ。
【0102】
図6で記載したチェックと同様にして、この第3のタイプのチェックをTwheels情報項目に適用することも可能である。したがって、このようにして、Twheels情報項目をチェックし、チェックの結果に従って診断情報項目VD8を作成することが可能である。
【0103】
駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、車輪Twheelsにおけるトルクは信頼できるべきである。以下の比較が行われるチェックステップが実施される。
abs(Twheels−Twheels_MA(ClutchCurve,AntClutchPedPos))<err_Twheels
上式で、
・abs:絶対値関数
・Twheels_MA(ClutchCurve,AntClutchPedPos):分析モジュール27によって計算される、車輪に伝達されるべきトルクに対応する。この計算は、格納された予想クラッチペダル位置AntClutchPedPosで評価される、格納されたクラッチ曲線ClutchCurveの線形補間を用いて実施される。
・err_Twheels:モジュール28によって生成される許容偏差。
【0104】
チェックが有効でない場合、情報項目VD8は値3をもち、有効な場合は情報項目VD8は値0をもつ。
【0105】
図6で記載したチェックと同様にして、この第3のタイプのチェックをClutchCurve情報項目に適用することも可能である。したがって、このようにして、ClutchCurve情報項目をチェックし、チェックの結果に従って診断情報項目VD9を作成することが可能である。
【0106】
駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、クラッチ曲線ClutchCurveは信頼できるべきである。以下の比較が行われるチェックステップが実施される。
abs(Twheels_MA(ClutchCurve_MA,AntClutchPedPos)−Twheels_MA(ClutchCurve,AntClutchPedPos))<err_Torque
上式で、
・abs:絶対値関数
・Twheels_MA(ClutchCurve,AntClutchPedPos):格納されたクラッチ曲線ClutchCurveの線形補間により取得される、車輪に伝達されるトルクの推定値。この推定値は、格納された予想クラッチペダル位置AntClutchPedPosで評価される。
・ClutchCurve_MA:モジュール28によって供給される新規クラッチ曲線。
・Twheels_MA(ClutchCurve_MA,AntClutchPedPos):新規クラッチ曲線ClutchCurve_MAの線形補間により取得される、車輪に伝達されるトルクの推定値。この推定値は、格納された予想クラッチペダル位置AntClutchPedPosで評価される。
・err_Torque:モジュール28によって生成される許容偏差。
【0107】
チェックが有効でない場合、情報項目VD9は、クラッチ曲線の学習が遅いために車輪に伝達されるトルクの過剰推定を信号通知するための値2をもち、有効な場合、情報項目VD9は値0をもつ。
【0108】
図7は、第4のタイプのチェックを示し、このチェックにおいて、推定モジュールによって計算される格納された情報項目は、格納された有効性情報項目と比較される。
【0109】
この第4のタイプのチェックは、計算手段10、11によって計算される様々な車両情報項目をチェックするのに使われ得る。図7は、Twheels情報項目に適用されるこの第4のタイプのチェックの例示的な適用例を記載する。
【0110】
図7において、Twheels情報項目がチェックされ、チェックの結果に従って診断情報項目VD10が作成される。駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、車輪に伝達されるトルクTwheelsは、閾値TwheelsThresを上回るべきであり、すなわち、格納された情報項目Twheelsは信頼できると見なされるべきである。
【0111】
ステップ206で、Twheels>TwheelsThresという条件が有効かどうかを見るためのチェックが行われる。
【0112】
条件が無効な場合、情報項目VD10は値3をもち、有効な場合、情報項目VD10は値0をもつ。
【0113】
図8は、第5のタイプのチェックを示し、このチェックにおいて、第1のステップの間、格納された車両情報項目と格納された有効性情報項目との間の差分が確定される。次いで、この差分は基準閾値と比較される。基準閾値は、基準変数生成モジュール28によって生成される。
【0114】
この第5のタイプのチェックは、センサによって測定された、車両の様々な車両情報項目をチェックするのに使われ得る。図8は、ClutchPedPos情報項目に適用されるこの第5のタイプのチェックの例示的な適用例を記載する。
【0115】
図8において、ClutchPedPos情報項目がチェックされ、チェックの結果に従って診断情報項目VD11が作成される。
【0116】
駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、予想クラッチペダル位置AntClutchPedPosと実際のクラッチペダル位置ClutchPedPosとの間の差分は、厳密には閾値err_ClutchPedPosを下回るべきである。
【0117】
ステップ207で、以下の条件が有効かどうかを見るためのチェックが実施される。
abs(ClutchPedPos−AntClutchPedPos)<err_ClutchPedPos
上式で、
・abs:絶対値関数
・ClutchPedPosおよびAntClutchPedPosは、格納された情報項目である。
・err_ClutchPedPosは、モジュール28によって生成される許容差分である。
条件が有効でない場合、情報項目VD11は値3をもち、有効な場合は情報項目VD11は値0をもつ。
【0118】
さらに、この第5のタイプのチェックは、図8で記載したチェックと同様にして、第2の推定モジュールA2が使われるときはTwheels情報項目に適用され得る。したがって、このようにして、Twheels情報項目をチェックし、チェックの結果に従って診断情報項目VD12を作成することが可能である。
【0119】
駐車ブレーキ解放コマンドが与えられているとき、車輪に対するトルクTwheelsは、エンジンCMEによって供給されるトルクと、エンジンの慣性Jmで乗算されたエンジン速度の時間微分dNmot/dtとの間の差分に対応するべきである。
【0120】
したがって、以下の条件がチェックされる。
abs(Twheels−(CME−Jm*dNmot/dt))<err_Torque
上式で、
・abs:絶対値関数
・Jm:エンジン慣性
・dNmot/dt:エンジン速度の時間微分
・err_Torque:モジュール28によって生成される許容差分。
【0121】
条件が有効でない場合、情報項目VD12は値3をもち、有効な場合、情報項目VD12は値0をもつ。
【0122】
上記の通り記載した診断システムおよび方法は、1つまたは複数の不順発進の後に車両の運転者から苦情があった場合に主に使われる。好ましくは、診断モジュールは、車両に組み込まれず、車両の外部に位置する。したがって、診断は、適切な修理工場において実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御式駐車ブレーキを装備する自動車のアシスト式発進システムの動作状態を診断する方法であって、少なくとも1つの車両情報項目を計算するステップと、前記車両情報項目に関連づけられた少なくとも1つの有効性情報項目を生成する有効性ステップとを含み、駐車ブレーキ解放コマンドの間に前記車両情報項目および前記関連有効性情報項目を不揮発性メモリに格納するステップと、前記格納された情報項目の有効性に関するチェックに基づいて、少なくとも1つの診断情報項目を作成する診断ステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記格納ステップの後に、少なくとも1つの格納された情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目を計算する分析ステップを実施し、前記新規有効性情報項目と少なくとも1つの格納された情報項目との比較に基づいて、少なくとも1つの診断情報項目を作成す前記診断ステップを実施する、請求項1に記載の診断方法。
【請求項3】
少なくとも1つの他の車両情報項目を測定するステップであって、前記分析ステップの間に、少なくとも1つの現在の情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目を計算するステップを含む、請求項2に記載の診断方法。
【請求項4】
前記アシスト式発進システムに対し、新規アシスト式発進を実施して、少なくとも1つの追加有効性情報項目を取得するよう命じ、前記分析ステップ中に、前記追加情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目を計算する、請求項2または3に記載の診断方法。
【請求項5】
前記格納ステップを、前記自動車に組み込まれた装置を使って実施し、次いで前記分析ステップおよび診断ステップを、前記車両の外部に位置する装置を使って実施する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の診断方法。
【請求項6】
前記分析ステップを様々な計算条件で実施する、請求項2ないし4のいずれか一項に記載の診断方法。
【請求項7】
制御式駐車ブレーキ(9)を装備する自動車のアシスト式発進システム(2)の動作状態を診断するシステムであって、前記アシスト式発進システム(2)が、アシスト式発進コンピュータ(3)で使用される車両情報項目を計算する少なくとも1つの計算手段(10)を備えており、前記アシスト式発進コンピュータが、前記駐車ブレーキ(9)の解放を制御し、且つ前記車両情報項目に関連づけられた少なくとも1つの有効性情報項目を生成することができるもので、駐車ブレーキ解放コマンドの間に不揮発性メモリに前記車両情報項目および前記関連有効性情報項目を格納するバックアップモジュール(22)を備えることと、前記格納された情報項目の有効性に関するチェックに基づいて、少なくとも1つの診断情報項目を作成することができるチェックモジュール(29)を含む、前記格納された情報項目を受信可能な診断モジュール(23)を備えることとを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記診断モジュール(23)が、少なくとも1つの格納された情報項目に基づいて、前記チェックモジュール(29)で使用される少なくとも1つの新規有効性情報項目を計算する分析モジュール(27)を備えており、前記チェックモジュール(29)が、前記新規有効性情報項目と少なくとも1つの格納された情報項目との比較に基づいて少なくとも1つの診断情報項目を作成することもできる、請求項7に記載の診断システム。
【請求項9】
前記アシスト式発進システム(2)が、前記アシスト式発進コンピュータ(3)で使用される少なくとも1つの他の車両情報項目を測定する少なくとも1つのセンサ(4)を備え、前記診断モジュール(23)が、現在の車両情報項目および関連づけられた現在の有効性情報項目を受信することもでき、前記分析モジュール(27)が、少なくとも1つの現在の情報項目に基づいて少なくとも1つの新規有効性情報項目を計算することができる、請求項8に記載の診断システム。
【請求項10】
前記アシスト式発進コンピュータ(3)が、追加駐車ブレーキ(9)解放コマンドの間に少なくとも1つの追加有効性情報項目を生成することができ、前記分析モジュール(27)が、前記追加有効性情報項目に基づいて新規有効性情報項目を作成することができる、請求項8または9に記載の診断システム。
【請求項11】
前記バックアップモジュール(22)が前記自動車に組み込まれており、前記診断モジュール(23)が前記車両の外部に位置している、請求項7ないし10のいずれか一項に記載の診断システム。
【請求項12】
前記分析モジュール(27)が、様々な計算条件で前記新規有効性情報項目を計算することができる、請求項8ないし11のいずれか一項に記載の診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−529827(P2011−529827A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521617(P2011−521617)
【出願日】平成21年7月20日(2009.7.20)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051440
【国際公開番号】WO2010/015765
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】