説明

自動車のロッカ部構造

【課題】側面衝突時にロッカ部材が変形するのを抑制することにより、ドアビームの室内側への進入を防止できる自動車のロッカ部構造を提供する。
【解決手段】ロッカパネル11内の少なくともドアビーム20の後端部20bに臨む部分を補強部材28,29により複数の閉断面部A,Bに画成し、車両前後方向に見たとき、上記ロッカパネル11の各閉断面部A,Bと上記ドアビーム20の後端部20bとリヤサイドメンバ(フロア骨格部材)17とが、それぞれ略同じ高さに位置し、かつ車幅方向に並ぶように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口の下縁部を形成するロッカ部材と、該ドア開口を開閉するドア内に配設されたドアビームと、上記ロッカ部材の車幅方向内側に車両前後方向に延びるよう配置されたフロア骨格部材とを備えた自動車のロッカ部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、側面衝突時にドアが変形して車室側に進入するのを抑制するために、ドア内に前後方向に延びるドアビームを、前端部がピラー部材に車幅方向に重なるように、後端部がロッカ部材に車幅方向に重なるように配置している。
【0003】
この場合、例えば、特許文献1では、ロッカ部材のリインホースに、側面衝突時にドアビームが係合する凹部を設けるとともに、該凹部に変形を促進する脆弱部を形成した構造が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、ロッカ部材のリインホースに、側面衝突時にドアビームが入り込む凹部を形成した構造が提案されている。
【特許文献1】特開2004−17815号公報
【特許文献2】特開平9−86178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の何れの公報においても、側面衝突時の入力を、ドアビームによりロッカ部材を変形させることにより吸収する構造である。このため衝突時の入力の如何によっては、ロッカ部材の変形量が大きくなる場合があり、ドアビームが車室側に進入するという懸念がある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、側面衝突時にロッカ部材が変形するのを抑制してドアビームの室内側への進入を防止できる自動車のロッカ部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、車両前後方向に延びてドア開口の下縁部を形成するロッカ部材と、該ドア開口を開閉するドア内に車両前後方向に向けて、かつその後端部が上記ロッカ部材と車幅方向に重なるよう配設されたドアビームと、上記ロッカ部材の車幅方向内側に車両前後方向に延びるよう配置されたフロア骨格部材とを備えた自動車のロッカ部構造において、上記ロッカ部材内の少なくとも上記ドアビームの後端部に臨む部分を補強部材により複数の閉断面部に画成し、車両前後方向に見たとき、上記ロッカ部材の各閉断面部と上記ドアビームの後端部と上記フロア骨格部材とが、それぞれ略同じ高さに位置し、かつ車幅方向に並ぶように配置されていることを特徴とする自動車のロッカ部構造。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、上記各閉断面部は、複数の補強部材により形成され、該各補強部材の互いの閉断面部がその長手方向に交差し、かつ上記ドアビームの長手方向に交差するよう配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係るロッカ部構造によれば、ロッカ部材内のドアビームの後端部に臨む部分を補強部材により複数の閉断面部に画成し、車両前後方向に見たとき、各閉断面部,ドアビームの後端部,フロア骨格部材を、それぞれ車幅方向に略同じ高さ位置に並ぶように配置したので、側面衝突時の入力を、ドアビームからロッカ部材の各閉断面部を介してフロア骨格部材に効率良く伝達することができる。これによりロッカ部材の変形による断面崩れを抑制でき、ドアビームの車室側への進入を防止できる。
【0010】
請求項2の発明では、複数の補強部材の互いの閉断面部がその長手方向に交差し、かつドアビームの長手方向に交差するよう配置したので、衝突荷重に対する耐力を向上でき、ロッカ部材の変形をより一層抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1ないし図8は、本発明の一実施形態による自動車のロッカ部構造を説明するための図であり、図1は自動車の側面図、図2,図3はそれぞれ自動車のフロア骨格部材の平面図,側面図、図4はロッカ部材の側面図、図5はロッカ部材の断面正面図(図4のV-V 線断面図)、図6はロッカ部材の断面平面図(図4のVI-VI 線断面図) 、図7(a)〜図7cはそれぞれ第1補強部材の側面図,正面図,断面図、図8(a),図8(b)はそれぞれ第2補強部材の側面図,断面図である。なお、本実施形態の説明のなかで前後,左右という場合は、シートに着座した状態で見た場合の前後,左右を意味する。
【0013】
図において、1は自動車を示しており、これは車室aを構成する車体2の左,右側部にフロントドア開口2a,リヤドア開口2bを形成するとともに、後端面にバックドア開口2cを形成し、各ドア開口2a〜2cにそれぞれ該ドア開口2a〜2cを開閉するフロントドア3,リヤドア4,バックドア5を配設し、上記車室a内にフロントシート6,リヤシート7を配置した構造を有している。
【0014】
上記車体2は、ルーフパネル8の左,右側部に接続された前後方向に延びるルーフサイドレール9,9と、フロアパネル10の左,右側部に接続された前後方向に延びるロッカパネル(ロッカ部材)11,11とを上下方向に延びる左,右のフロントピラー12,センタピラー13,リヤピラー14により連結した概略構造を有している。
【0015】
上記リヤピラー14の下端部には、後輪15の上方を覆うホイールハウス16が接続されており、該ホイールハウス16の前下端部16aに上記ロッカパネル11の後端部11aが接続されている。上記ホイールハウス16は、ホイールインナパネル16fとホイールアウタパネル16bとの内縁部16c同士を結合した構造を有している(図6参照)。ここで、車両側方から見ると、上記リヤシート7のシートバック7aは、左,右のリヤピラー14に車幅方向に重なるように配置されている。
【0016】
上記フロアパネル10の後部下面には、フロア骨格部材を構成する前後方向に延びる左,右のリヤサイドメンバ17,17と、車幅方向に延びて左,右のリヤサイドメンバ17の前端部17a同士を結合するクロスメンバ18,及び中途部17b同士を結合するリヤクロスメンバ19とが配設されている。
【0017】
上記左,右のリヤサイドメンバ17は、上方に開口する断面ハット状のものであり、上記ホイールハウス16の車内側に沿って内側に湾曲しており、前端部18aは上記ロッカパネル11の内側壁に結合されている。
【0018】
上記左,右のリヤサイドメンバ17の内,外フランジ部17c,17cの上面にはフロアパネル10の外側部10aが結合され、該外側部10aは外フランジ17cとともに上記ロッカパネル11の後述するロッカインナパネル23の上壁部23bに結合されている(図5参照)。
【0019】
上記リヤドア4内には、前後方向に向けてかつ後斜め下方に傾斜して延びる円筒状のドアビーム20が配設されている。該ドアビーム20は、車両側方から見て、前端部20aがセンターピラー13に重なり、後端部20bがロッカパネル11の後端部11aに重なるように配置されている。側面衝突時に、ドアビーム20がセンタピラー13とロッカパネル11との間で突っ張ることとなり、これによりリヤドア4が車室側に変形するのを抑制している。
【0020】
上記ロッカパネル11は、横断面ハット状のロッカインナパネル23とロッカアウタパネル24とを概ね角筒状をなすよう重ね合わせ、両パネル23,24の上縁部23a,24a同士及び下縁部23b,24b同士をスポット溶接により結合した構造を有している。
【0021】
上記ロッカパネル11内の後端部11aには、ロッカリインホース25が配設されている。該ロッカリインホース25は、ロッカアウタパネル24に略沿うよう横断面ハット状をなしており、これの上,下縁部25a,25bは、上記上縁部23a,24a及び下縁部23b,24bに挟持結合されている。
【0022】
またロッカリインホース25の前縁部25cは、ロッカパネル11内に設けられ、ロッカアウタパネル24に略沿うように形成された横断面ハット状のリインホース(不図示)に結合されている。
【0023】
上記ロッカパネル11の後端部11a内には、上記ホイールアウタパネル16bの延長部16dが上記ドアビーム20の後端部20bに車幅方向に重なるように突出形成されている。
【0024】
上記ロッカパネル11の後端部11a内には、第1,第2補強部材28,29が配設されており、該第1,第2補強部材28,29により上記ロッカパネル11のドアビーム20の後端部20bに臨む部分は、第1,第2閉断面部A,Bに画成されている。
【0025】
車両前後方向に見たとき、上記ドアビーム20の後端部20bと、上記ロッカパネル11の第1,第2閉断面部A,Bと、上記リヤサイドメンバ17とは、それぞれ略同じ高さに位置し、かつ車幅方向に略直線上に並列配置されている(図5参照)。
【0026】
上記第1補強部材28は、ロッカリインホース25の車幅方向内側に配置され、該ロッカリインホース25にスポット溶接により結合されている。詳細には、第1補強部材28は、ロッカリインホース25の上縁部25aに続いて下方に延びる上縦壁部25cに結合された上縦壁28aと、該上縦壁28aの下縁から車幅方向外側に屈曲して延び、前斜め上向きに開口するよう略円弧状をなす横壁28bと、該横壁28bの外縁から下側に屈曲して延び、上記ロッカリインホース25の外側壁部25dに結合された下縦壁28cとを有している。
【0027】
上記第1補強部材28とロッカリインホース25とで上記第1閉断面部Aが形成され、該第1閉断面部Aは、その長手方向xが後斜め上向きに傾斜するよう配置されている。
【0028】
上記第2補強部材29は、ホイールアウタパネル16の延長部16dの車幅方向内側に配置され、該延長部16dにスポット溶接により結合されている。詳細には、第2補強部材29は、延長部16dからロッカインナパネル23に近接するよう車幅内側に延びる前,後壁29a,29aと、該前,後壁29aの内縁同士を結合する内側壁29bと、上記前,後壁29aの外縁から前,後に屈曲して延び、上記延長部16dに結合された前,後フランジ部29c,29cとを有する横断面ハット形状をなしている。
【0029】
上記前,後壁29aには、車幅方向に延びる複数の凹凸状の補強ビード29d,29eが形成されている。
【0030】
上記第2補強部材29と延長部16dとで上記第2閉断面部Bが形成され、該第2閉断面部Bは、その長手方向yが上下方向に向くように配置されている。
【0031】
このようにして、上記第1,第2閉断面部A,Bは、互いの長手方向x,yが交差し、かつ上記ドアビーム20の長手方向(中心線)zと交差するように配置されている。
【0032】
本実施形態によれば、ロッカパネル11内のドアビーム20の後端部20bに臨む部分を、第1,第2補強部材28,29により第1,第2閉断面部A,Bに画成し、車両前後方向に見たとき、ドアビーム20の後端部20bと、ロッカパネル11の第1,第2閉断面部A,Bと、リヤサイドメンバ17とが、それぞれ略同じ高さに位置し、かつ車幅方向に並ぶように配置したので、側面衝突時の入力は、ドアビーム20からロッカパネル11の第1,第2補強部材28,29を介してリヤサイドメンバ17に効率良く伝達され、クロスメンバ18,19を介して反対側のリヤサイドメンバ17に伝達されることとなる。これによりロッカパネル11の変形による断面崩れを抑制でき、ドアビーム20が車室a内に進入するのを防止できる。
【0033】
本実施形態では、第1,第2補強部材28,29により形成された第1,第2閉断面部A,Bの長手方向x,yが交差し、かつドアビーム20の長手方向zに交差するよう配置したので、衝突荷重に対する耐力を向上でき、ロッカパネル11の変形をより一層抑制することができる。
【0034】
本実施形態では、第1補強部材28をロッカリインホース25に結合し、第2補強部材29をホイールハウス16の延長部16dに結合したので、ロッカパネル11とホイールハウス16との結合部の強度,剛性を向上できる。
【0035】
また第1,第2補強部材28,29を、それぞれロッカリインホース25,ホイールアウタパネル16bに結合したので、ロッカ部の生産ラインをそのまま使用することができ、生産工程を変更したり、追加したりするのを回避できる。例えば、第1,第2補強部材28,29を一体形成又は予め一体に組み付ける場合には、ロッカアウタパネル24にロッカインナパネル23を組み付ける際に、第2補強部材29が作業の邪魔になり、ロッカ周辺のフロア部材の変更,あるいは工程を変更する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態による自動車の側面図である。
【図2】上記自動車のフロア骨格部の平面図である。
【図3】上記フロア骨格部の側面図である。
【図4】上記自動車のロッカパネルの側面図である。
【図5】上記ロッカパネルの断面正面図(図4のV-V 線断面図)である。
【図6】上記ロッカパネルの断面平面図(図4のVI-VI 線断面図) である。
【図7】上記ロッカパネルに配設された第1補強部材の図である。
【図8】上記ロッカパネルに配設された第2補強部材の図である。
【符号の説明】
【0037】
1 自動車
2b リヤドア開口
4 リヤドア
11 ロッカパネル(ロッカ部材)
17 リヤサイドメンバ(ロッカ骨格部材)
20 ドアビーム
20b 後端部
28 第1補強部材
29 第2補強部材
A 第1閉断面部
B 第2閉断面部
x 第1閉断面部の長手方向
y 第2閉断面部の長手方向
z ドアビームの長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びてドア開口の下縁部を形成するロッカ部材と、該ドア開口を開閉するドア内に車両前後方向に向けて、かつその後端部が上記ロッカ部材と車幅方向に重なるよう配設されたドアビームと、上記ロッカ部材の車幅方向内側に車両前後方向に延びるよう配置されたフロア骨格部材とを備えた自動車のロッカ部構造において、
上記ロッカ部材内の少なくとも上記ドアビームの後端部に臨む部分を補強部材により複数の閉断面部に画成し、
車両前後方向に見たとき、上記ロッカ部材の各閉断面部と上記ドアビームの後端部と上記フロア骨格部材とが、それぞれ略同じ高さに位置し、かつ車幅方向に並ぶように配置されていることを特徴とする自動車のロッカ部構造。
【請求項2】
請求項1において、上記各閉断面部は、複数の補強部材により形成され、該各補強部材の互いの閉断面部がその長手方向に交差し、かつ上記ドアビームの長手方向に交差するよう配置されていることを特徴とする自動車のロッカ部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−239106(P2008−239106A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86233(P2007−86233)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】