説明

自動車の上部車体構造

【課題】フロントヘッダやルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの接合強度を向上させることによって、車体上部構造の剛性を向上させる。
【解決手段】車幅方向外端部に作業孔21aが設けられたヘッダ下壁部21、ヘッダ前側縦壁部22及びヘッダ後側縦壁部24を有するフロントヘッダ2と、ピラー12と、内端部がフロントヘッダ2のヘッダ下壁部21と作業孔21aよりも車幅方向外側で接合される一方、外端部がピラー12と接合されるコーナーガセット8とを備える。上記コーナーガセット8の内端部には、フロントヘッダ2の作業孔21aの後方において車幅方向内方に延びる延出部8Cが設けられ、この延出部8Cがフロントヘッダ2と接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントヘッダやルーフレインフォースメントを有する自動車の上部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロントヘッダやルーフレインフォースメントをピラー等の側部車体に取り付ける際に、フロントヘッダ等とピラー等との間にコーナーガセットを設ける車体構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このコーナーガセットは、フロントヘッダ等とピラー等との接合部の剛性を向上させるためのものであり、特許文献1では、フロントヘッダとピラーとの間にコーナーガセットを設け、車幅方向において、コーナーガセットの内端部をフロントヘッダの外端部と接合する一方、コーナーガセットの外端部をピラーと接合している。
【0004】
ここで、フロントヘッダとコーナーガセットとをスポット溶接によって接合するためには、各部材のパネル同士を重ね合わせて、そのパネルをスポットガンによって両側から挟み込んで溶接する必要がある。ところが、特許文献1に係るフロントヘッダは下側のフロントルーフレールと上側のルーフレールレインフォースメントとからなる閉断面を形成するように構成されいるため、両部材のパネルをフロントヘッダの内方と外方とから挟み込むことはできない。そこで、特許文献1に係るフロントヘッダは、その下壁部の車幅方向外端部に作業孔が設けられており、この作業孔からフロントヘッダの内方へスポットガンを挿入して、作業孔よりも車幅方向外側でフロントヘッダの下壁部とコーナーガセットの下壁部とをスポットガンで挟み込んでスポット溶接している。
【特許文献1】実開平05−64067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フロントヘッダやルーフレインフォースメント等は車体上部における車体構造の剛性を向上させるために設けられた補強部材である。つまり、フロントヘッダとコーナーガセットとの接合部において、接合強度をできる限り向上させる必要がある。
【0006】
また、フロントヘッダには、特許文献1に係るフロントヘッダのような閉断面を有するものだけでなく、例えば、上記下側のフロントルーフレールのみからなるものもある。このような下側のフロントルーフレールのみからなるフロントヘッダを採用する場合には、フロントヘッダとコーナーガセットとの接合強度の向上がさらに重要となる。
【0007】
また、フロントヘッダとピラーとの接合部には、車幅方向と前後方向との異なる2方向の力が作用するため、車体の捻れ荷重が集中する箇所であり、この点からも、フロントヘッダとコーナーガセットとの接合強度を向上させる必要がある。
【0008】
さらに、ルーフレインフォースメントは、車両前後方向のフロントヘッダとリヤヘッダとの間の位置において車幅方向の強度を補強するものであり、車両側方からの衝突に対する安全性を向上させるためにも、ルーフレインフォースメントと側部車体との接合強度を向上させる必要がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フロントヘッダやルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの接合強度を向上させることによって、車体上部構造の剛性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、下壁部と、該下壁部の前端から上方へ立ち上がる前側縦壁部と、該下壁部の後端から上方へ立ち上がる後側縦壁部とを有して車幅方向に延びて形成されると共に、該下壁部の車幅方向外端部に作業孔が設けられているフロントヘッダと、上記フロントヘッダの車幅方向外側で前後方向に延びて形成されるピラーと、内端部が上記フロントヘッダの下壁部と上記作業孔よりも車幅方向外側で接合される一方、外端部が上記ピラーと接合されるコーナーガセットとを備える自動車の上部車体構造が対象である。
【0011】
そして、上記コーナーガセットの内端部には、上記フロントヘッダの上記作業孔の後方において車幅方向内方へ延びる延出部が設けられ、上記コーナーガセットは、上記延出部が上記フロントヘッダとさらに接合されるものとする。
【0012】
尚、「前」及び「後」とは、それぞれ「車両前後方向の前」及び「車両前後方向の後」を表す。
【0013】
上記の構成の場合、上記フロントヘッダとコーナーガセットとを、上記作業孔の車幅方向外側だけでなく、該作業孔の後方でも接合することによって、接合点数が増加するため、フロントヘッダとコーナーガセットとの結合強度を向上させることができる。また、フロントヘッダとコーナーガセットとの接合点数がフロントヘッダの長手方向へ増加するため、フロントヘッダとコーナーガセットとの接合部の、フロントヘッダの長手方向に垂直な方向周りの曲げ剛性を向上させることができる。そして、フロントヘッダとコーナーガセットとの接合強度を向上させることによって、フロントヘッダ、コーナーガセット及びピラーからなる上部車体構造の剛性を向上させることができる。
【0014】
ところで、フロントヘッダは、一般的には、その前端縁がルーフパネルの前端縁とスポット溶接等によって接合される場合が多い。かかる場合には、フロントヘッダ及びコーナーガセットの前端縁がルーフパネルに接合されることによって、フロントヘッダとコーナーガセットとはルーフパネルを介して前側部分の接合強度が向上する。一方、フロントヘッダの後端縁は、スポットガンによってルーフパネルと挟み込んで溶接することが困難であり、自由端となる傾向がある。つまり、上記フロントヘッダとコーナーガセットとを上記作業孔の車両幅方向外側に加えて後側でも接合する、即ち、フロントヘッダとコーナーガセットとの後側の接合強度を向上させる本発明は、ルーフパネルとの接合により前側部分の接合強度が向上するフロントヘッダにとって、上部車体構造の剛性を向上させる上で特に有効である。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記コーナーガセットの内端部は、少なくとも、上記フロントヘッダの下壁部と上記作業孔よりも車幅方向外側で接合されるガセット下壁部と、該ガセット下壁部の後端から上方へ立ち上がるガセット後側縦壁部とを有し、上記延出部は、上記フロントヘッダの上記作業孔の後方において、上記ガセット後側縦壁部から車幅方向内方へ延び且つ、上記フロントヘッダの後側縦壁部と接合されるガセット後側縦壁延出部を有するものとする。
【0016】
上記の構成の場合、上記フロントヘッダとコーナーガセットとの接合において、上記フロントヘッダの下壁部とガセット下壁部とだけではなく、上記フロントヘッダの後側縦壁部とガセット後側縦壁延出部も接合することによって、下壁部と後側縦壁部という異なる2つの面が接合されるため、接合強度を向上させることができる。特に、後側縦壁部に垂直な方向周りの曲げ剛性を向上させることができる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、上記延出部は、上記フロントヘッダの上記作業孔の後側において、上記ガセット下壁部から車幅方向内方へ延び且つ、その後端が上記ガセット後側縦壁延出部と連続すると共に、上記フロントヘッダの下壁部と上記作業孔の後側で接合されるガセット下壁延出部をさらに有するものとする。
【0018】
上記の構成の場合、上記作業孔の後方でフロントヘッダの下壁部とガセット下壁延出部とを接合することによって、上記フロントヘッダとコーナーガセットとの両下壁部においては、作業孔の車幅方向外側の接合部から作業孔の後方の接合部に亘る部分の接合強度を向上させることができると共に、上記作業孔の後方においては、その下壁部の接合部から後側縦壁部の接合部に亘る部分の接合強度を向上させることができる。つまり、上記作業孔の後方でフロントヘッダの下壁部とガセット下壁延出部とを接合することによって、上記両下壁部における接合と上記作業孔の後方部分における接合との2つの領域の接合を同時に強化することができ、効率的に接合強度を向上させることができる。
【0019】
第4の発明は、下壁部と、該下壁部の前端から上方へ立ち上がる前側縦壁部と、該下壁部の後端から上方へ立ち上がる後側縦壁部とを有して車幅方向に延びて形成されると共に、該下壁部の車幅方向外端部に作業孔が設けられているルーフレインフォースメントと、上記ルーフレインフォースメントの車幅方向外側で前後方向に延びて形成されるピラーと、上記ピラーから下方に延びて形成されるセンタピラーと、内端部が上記ルーフレインフォースメントの下壁部と上記作業孔よりも車幅方向外側で接合される一方、外端部が上記ピラーの、上記センタピラーが連結された部分と前後方向において同じ位置に接合されるコーナーガセットとを備える自動車の上部車体構造が対象である。
【0020】
そして、上記コーナーガセットの内端部には、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の前方において車両幅方向内方へ延びる前側延出部と、該作業孔の後方において車幅方向内方へ延びる後側延出部とが設けられ、上記コーナーガセットは、上記前側及び後側延出部が上記ルーフレインフォースメントとさらに接合されるものとする。
【0021】
上記の構成の場合、上記ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとを、上記作業孔の車幅方向外側だけでなく、該作業孔の前方及び後方でも接合することによって、接合点数が増加するため、ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの結合強度を向上させることができる。また、ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの接合点数がルーフレインフォースメントの長手方向へ増加するため、ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの接合部の、ルーフレインフォースメントの長手方向に垂直な方向周りの曲げ剛性を向上させることができる。そして、ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの接合強度を向上させることによって、ルーフレインフォースメント、コーナーガセット及びピラーからなる上部車体構造の剛性を向上させることができる。特に、側部車体の剛性を向上させる上記センタピラーが位置する部分は車体全体の剛性に大きな影響を与える部分であり、上記ピラーの、センタピラーが連結される部分において、上部車体構造の剛性を向上させることによって、より効果的に車体全体の剛性を向上させることができる。
【0022】
ところで、ルーフレインフォースメントはルーフパネルの下方に設けられるが、一般的には、ルーフレインフォースメントの前端部又は後端部とルーフパネルとをスポットガンで挟み込んでスポット溶接することは困難であり、ルーフレインフォースメントの前端縁及び後端縁は自由端となる傾向がある。つまり、上記ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとを上記作業孔の車両幅方向外側だけでなく、該作業孔の前方及び後方でも接合する、即ち、ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの前側及び後側の接合強度を向上させる本発明は、その前端縁及び後端縁がルーフパネルに対して接合されていないルーフレインフォースメントにとって、上部車体構造の剛性を向上させる上で特に有効である。
【0023】
第5の発明は、第4の発明において、上記コーナーガセットの内端部は、少なくとも、上記ルーフレインフォースメントの下壁部と上記作業孔よりも車幅方向外側で接合されるガセット下壁部と、該ガセット下壁部の前端から上方へ立ち上がるガセット前側縦壁部と、該ガセット下壁部の後端から上方へ立ち上がるガセット後側縦壁部とを有し、上記前側延出部は、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の前方において、上記ガセット前側縦壁部から車幅方向内方へ延び且つ、上記ルーフレインフォースメントの前側縦壁部と接合されるガセット前側縦壁延出部を有し、上記後側延出部は、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の後方において、上記ガセット後側縦壁部から車幅方向内方へ延び且つ、上記ルーフレインフォースメントの後側縦壁部と接合されるガセット後側縦壁延出部を有するものとする。
【0024】
上記の構成の場合、上記ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの接合において、上記ルーフレインフォースメントの下壁部とガセット下壁部とだけではなく、上記ルーフレインフォースメントの前側縦壁部とガセット前側縦壁延出部と、及び上記ルーフレインフォースメントの後側縦壁部とガセット後側縦壁延出部とも接合することによって、下壁部と前側縦壁部と後側縦壁部という異なる3つの面が接合されるため、接合強度をさらに向上させることができる。特に、前側縦壁部に垂直な方向周りの曲げ剛性及び後側縦壁部に垂直な方向周りの曲げ剛性を向上させることができる。
【0025】
第6の発明は、第5の発明において、上記前側延出部は、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の前方において、上記ガセット下壁部から車幅方向内方へ延び且つ、その前端が上記ガセット前側縦壁延出部と連続すると共に、上記ルーフレインフォースメントの下壁部と上記作業孔の前方で接合されるガセット前側下壁延出部をさらに有し、上記後側延出部は、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の後方において、上記ガセット下壁部から車幅方向内方へ延び且つ、その後端が上記ガセット後側縦壁延出部と連続すると共に、上記ルーフレインフォースメントの下壁部と上記作業孔の後方で接合されるガセット後側下壁延出部をさらに有するものとする。
【0026】
上記の構成の場合、上記作業孔の前方でルーフレインフォースメントの下壁部とガセット下壁延出部とを接合することによって、上記ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの両下壁部においては、作業孔の車幅方向外側の接合部から作業孔の前側の接合部に亘る部分の接合強度を向上させることができると共に、上記上記作業孔の前方においては、その下壁部の接合部から前側縦壁部の接合部に亘る部分の接合強度を向上させることができる。つまり、上記作業孔の前側でルーフレインフォースメントの下壁部とガセット下壁部とを接合することによって、上記両下壁部における接合と上記作業孔の前方部分における接合との2つの領域の接合を強化することができ、効率的に接合強度を向上させることができる。同様に、上記作業孔の後側でルーフレインフォースメントの下壁部とガセット下壁部とを接合することによって、上記両下壁部における接合と上記作業孔の後方部分における接合との2つの領域の接合を強化することができ、効率的に接合強度を向上させることができる。
【0027】
第7の発明は、第4〜第6の発明の何れか1つにおいて、上記ルーフレインフォースメントは、上記作業孔の開口縁部にフランジが形成されているものとする。
【0028】
上記の構成の場合、上記ルーフレインフォースメントの作業孔周辺の面剛性を向上させることができる。その結果、車両側方からの衝突に対するルーフレインフォースメントの強度を向上させることができると共に、上部車体構造としての剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上記コーナーガセットの内端部に、上記フロントヘッダの作業孔の後方において車幅方向内方へ延びる延出部を設けると共に、上記フロントヘッダとコーナーガセットとを該作業孔の車幅方向外側と後方とで接合することによって、両部材の接合点数を車幅方向に増やすことができ、フロントヘッダとコーナーガセットとの接合強度を向上させることができる。その結果、フロントヘッダ、コーナーガセット及びピラーとからなる上部車体構造の剛性を向上させることができる。
【0030】
また、本発明によれば、上記コーナーガセットの内端部に、上記ルーフレインフォースメントの作業孔の前方及び後方にいおいて車幅方向内方へ延びる前側延出部及び後側延出部を設けると共に、上記ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとを該作業孔の車幅方向外側と前方と後方とで接合することによって、両部材の接合点数を車幅方向に増やすことができ、ルーフレインフォースメントとコーナーガセットとの接合強度を向上させることができる。その結果、ルーフレインフォースメント、コーナーガセット及びセンタピラーとからなる上部車体構造の剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明に係る自動車の上部車体構造を含む車体構造を示す(ルーフパネルを省略している)。尚、本明細書においては、車両前後方向の前を単に前、車両前後方向の後を単に後と表す。また、車幅方向内側を単に内側、車幅方向外側を単に外側、車幅方向内端を単に内端、車幅方向外端を単に外端ともいう。
【0033】
符号1は左右で対をなす側部車体である。各側部車体1は、車室の下部側方において前後方向に延びるサイドシル11と、車室の上部側方において前後方向に延びるピラー12と、サイドシル11の前後方向中央部から上方に延びて上端がピラー12に連結されるセンタピラー13と、センタピラー13の前方に位置し、サイドシル11の前端から上方に延びて上端がピラー12に連結されるヒンジピラー14と、センタピラー13の後方に位置し、サイドシル11の後端から上方に延びて上端がピラー12に連結されるリヤピラー15と、を有する。
【0034】
また、上記ピラー12は、後述するルーフパネル7の側端フランジ72(図2参照)が接合されるルーフサイドレール16と、このルーフサイドレール16の前端からさらに前方に延びて、フロントウィンドウ開口の側縁部を形成するフロントピラー17とを有する。
【0035】
これらサイドシル11、センタピラー13、ヒンジピラー14、リヤピラー15、ルーフサイドレール16及びフロントピラー17は、高い剛性を実現すべく、それぞれアウタパネルとインナパネルとによって閉断面を形成すると共に、内部にレインフォースメントを挟持している。
【0036】
このように構成された左右の側部車体1、1の上部においては、前方から後方に向かって順に、フロントヘッダ2と、ルーフレインフォースメント3〜5と、リヤヘッダ6とが、左右のピラー12、12(具体的にはルーフサイドレール16、16)の間にそれぞれ車幅方向に延びて設けられている。これらフロントヘッダ2、ルーフレインフォースメント3〜5及びリヤヘッダ6は、上部車体の車幅方向の強度を向上させている。そして、略矩形状をしたルーフパネル7(図2以降を参照)は、これらフロントヘッダ2等の上方に配置され、その前端縁がフロントヘッダ2に接合され、後端縁がリヤヘッダ6に接合され、両側端縁がそれぞれ左右のルーフサイドレール16、16に接合される。ここで、フロントヘッダ2及びリヤヘッダ6は、図2に示すように、コーナーガセット8を介してピラー12に接合されている(図2では、フロントヘッダ2の右側端部のみ図示)。こうして、フロントヘッダ2及びリヤヘッダ6のピラー12に対する接合強度が強化されている。また、ルーフレインフォースメント3〜5のうち中央ルーフレインフォースメント4は、図3に示すように、外端部がルーフパネル7の側端縁と接合されると共に(図中の破線の△印)、この接合部を跨ぐようにして配設されたコーナーガセット9によってピラー12と接合されている。
【0037】
各部材についてさらに詳述すると、上記ピラー12は、ルーフサイドレール16及びフロントピラー17とを有しており、ピラー12のうちルーフサイドレール16とフロントピラー17との連結部にフロントヘッダ2の外端が接合されている(正確には、コーナーガセット8を介して接合されている)。このルーフサイドレール16とフロントピラー17との連結部は、図4に示すように、キャブサイドアウタ10の上部内側において水平に形成された内側フランジ10aとルーフレールインナ16aの上部内側において水平に形成された内側フランジ16bとをスポット溶接によって接合すると共に、キャブサイドアウタ10のルーフサイドレール16を構成する部分の下部において下方に延びて形成された下側フランジ10bとルーフレールインナ16aの下部において下方に延びて形成された下側フランジ16cとをスポット溶接によって接合(図中の×印参照)することによって、閉断面形状をしたルーフサイドレール16が形成される。また、両内側フランジ10a、16b及び両下側フランジ10b、16cのそれぞれの間に、ルーフレールレインフォースメント16dが挟持されていて、ルーフサイドレール16の内部にルーフレールレインフォースメント16dが配設されることになる。尚、図4はルーフサイドレール16とフロントピラー17とが連結された部分における断面図であるため、ルーフレールインナ16aとフロントピラーインナ17aとがオーバーラップしている。この断面よりも後側の位置では、キャブサイドアウタ10とルーフレールインナ16aとでルーフレールレインフォースメント16dを挟持するようにしてルーフサイドレール16が構成される一方、この断面よりも前側の位置では、キャブサイドアウタ10とフロントピラーインナ17aとでフロントピラーレインフォースメントを挟持するようにしてフロントピラー17が構成される。さらに、キャブサイドアウタ10の内側フランジ10aとルーフレールインナ16aの内側フランジ16bとを接合することによって、ルーフサイドレール16の上部内側に水平方向に拡がり且つ車幅方向に延びる水平接合部16Aが形成され、この水平接合部16Aにルーフパネル7の側端フランジ72がスポット溶接によって接合される(図中の×印参照)。
【0038】
また、上記ピラー12の前後方向略中央位置には、下方からセンタピラー13が連結されている。このセンタピラー13の連結部では、図5に示すように、ルーフレールインナ16aとセンタピラーインナ13aとからなるインナ側パネルにキャブサイドアウタ10を接合することによって、閉断面形状を有するルーフサイドレール16とセンタピラー13が形成される。このとき、インナ側パネルとキャブサイドアウタ10との間には、上記ルーフレールレインフォースメント16dの他にセンタピラーレインフォースメント13bが挟持されている。センタピラーレインフォースメント13bは、詳しくは、キャブサイドアウタ10のセンタピラー対応部分に設けられたフランジ10c及びセンタピラーインナ13aに設けられたフランジ13cに挟持されている。
【0039】
上記フロントヘッダ2は、図1、2、6、7に示すように、車幅方向に延びて形成され、その断面が上方に開口する略ハット形状をしている。詳しくは、下壁部としてのヘッダ下壁部21と、このヘッダ下壁部21の前端から上方へ立ち上がる前側縦壁部としてのヘッダ前側縦壁部22と、このヘッダ前側縦壁部22の上端から前方へ拡がるヘッダ前側フランジ23と、ヘッダ下壁部21の後端から上方へ立ち上がる後側縦壁部としてのヘッダ後側縦壁部24と、このヘッダ後側縦壁部24の上端から後方へ拡がるヘッダ後側フランジ25とを有している。そして、このヘッダ前側フランジ23がルーフパネル7の前端フランジ71に接合されることになる。また、フロントヘッダ2の両外端は、上述の如く、それぞれコーナーガセット8、8を介してピラー12、12に接合されている。さらに、フロントヘッダ2のヘッダ下壁部21の両外端部には、作業孔21aが形成されている(図2では、右側の外端部に設けられたもののみ図示)。この作業孔21aは、フロントヘッダ2の外端部とコーナーガセット8の内端部とをスポット溶接するために、スポットガンをルーフパネル7とフロントヘッダ2とで囲まれた空間内に挿入するための開口である。また、作業孔21aの開口縁部には上方に立ち上がるフランジ21bが曲折形成されている。
【0040】
上記コーナーガセット8は、図2、6、7に示すように、上記フロントヘッダ2と接合される車幅方向内側のハット形状部8Aと上記ピラー12と接合される車幅方向外側のフランジ部8Bとからなる。
【0041】
上記ハット形状部8Aは、ガセット下壁部81と、このガセット下壁部81の前端から上方へ立ち上がるガセット前側縦壁部82と、このガセット前側縦壁部82の上端から前方へ拡がるガセット前側フランジ83と、ガセット下壁部81の後端から上方へ立ち上がるガセット後側縦壁部84と、このガセット後側縦壁部84の上端から後方へ拡がるガセット後側フランジ85とを有して車幅方向に延びて形成され、その断面は上方に開口する略ハット形状をしている。さらに、ハット形状部8Aは、ガセット下壁部81の後側部分においてガセット下壁部81の内端よりも車幅方向内方へさらに延出するガセット下壁延出部86と、ガセット後側縦壁部84から車幅方向内方へさらに延出し且つ、ガセット下壁延出部86と繋がるガセット後側縦壁延出部87とからなる延出部8Cを有する。
【0042】
上記フランジ部8Bは、ピラー12の車幅方向内側面に沿って前後方向に拡がるフランジを有しており、このフランジはハット形状部8Aの外端から連続的に屈曲して形成されている。
【0043】
そして、ハット形状部8Aが、ガセット下壁部81、ガセット前側縦壁部82及びガセット後側縦壁部84とに囲まれた空間にフロントヘッダ2の外端部が収まるようにフロントヘッダ2に取り付けられる一方、フランジ部8Bが、ピラー12の車幅方向内側面に取り付けられる。このとき、ガセット下壁部81の内端はフロントヘッダ2の作業孔21aの外端近傍に位置すると共に、延出部8Cは該作業孔21aの後方に位置し、コーナーガセット8がフロントヘッダ2の作業孔21aを塞がないように構成されている。また、ハット形状部8Aの外端には、2つの作業孔8D、8Dが形成されている。この作業孔8D、8Cは、ルーフパネル7の側端フランジ72をルーフサイドレール16の水平接合部16Aに接合する際に、スポットガンを水平接合部16Aに対して下方から当接させるための開口である。
【0044】
尚、リヤヘッダ6は、フロントヘッダ2と同様の構造をしており、コーナーガセットを介してピラー12に接合されている。
【0045】
また、上記ルーフレインフォースメント3〜5も、フロントヘッダ2と略同様の形状をしている。前後方向中央に位置する中央ルーフレインフォースメント4について詳しく説明すると、中央ルーフレインフォースメント4は、図1、3、8、9に示すように、フロントヘッダ2と同様に、車幅方向に延びて形成され、その断面が上方に開口する略ハット形状をしている。詳しくは、下壁部としてのレイン下壁部41と、このレイン下壁部41の前端から上方へ立ち上がる前側縦壁部としてのレイン前側縦壁部42と、このレイン前側縦壁部42の上端から前方へ拡がるレイン前側フランジ43と、レイン下壁部41の後端から上方へ立ち上がる後側縦壁部としてのレイン後側縦壁部44と、このレイン後側縦壁部44の上端から後方へ拡がるレイン後側フランジ45とを有している。そして、レイン前側フランジ43とレイン後側フランジ45とは、その車幅方向両外端部がレイン下壁部41よりも車幅方向外方に突出しており、この突出した部分がルーフパネル7の両側端フランジ72に接合されることになる(図3の△(破線)印及び図5の×印参照)。そして、上述の通り、この連結部を跨ぐようにして設けられたコーナーガセット9によって、中央ルーフレインフォースメント4の外端部がそれぞれピラー12と連結されている。また、中央ルーフレインフォースメント4のレイン下壁部41の両外端部には、作業孔41aが形成されている。この作業孔41aは、中央ルーフレインフォースメント4の外端部とコーナーガセット9の内端部とをスポット溶接するために、スポットガンをルーフパネル7と中央ルーフレインフォースメント4とで囲まれた空間内に挿入するための開口である。また、作業孔41aの開口縁部には上方に立ち上がるフランジ41bが曲折形成されている。
【0046】
上記コーナーガセット9は、図3、8、9に示すように、上記中央レインフォースメント4と接合される車幅方向内側のハット形状部9Aと上記ピラー12と接合される車幅方向外側のフランジ部9Bとからなる。
【0047】
上記ハット形状部9Aは、中央ルーフレインフォースメント4のレイン下壁部41と対向するガセット下壁部91と、このガセット下壁部91の前端から上方へ立ち上がるガセット前側縦壁部92と、このガセット前側縦壁部92の先端から前方へ拡がるガセット前側フランジ93と、ガセット下壁部91の後端から上方へ立ち上がるガセット後側縦壁部94と、このガセット後側縦壁部94の先端から後方へ拡がるガセット後側フランジ95とを有して車幅方向に延びて形成され、その断面は上方に開口する略ハット形状をしている。さらに、ハット形状部9Aは、ガセット下壁部91の前側部分においてガセット下壁部91の内端よりも車幅方向内方へさらに延出するガセット前側下壁延出部96と、ガセット前側縦壁部92から車幅方向内方へさらに延出し且つ、ガセット前側下壁延出部96と繋がっているガセット前側縦壁延出部97とからなる前側延出部9C、およびガセット下壁部91の後側部分においてガセット下壁部91の内端よりも車幅方向内方へさらに延出するガセット後側下壁延出部98と、ガセット後側縦壁部94から車幅方向内方へさらに延出し且つ、ガセット後側下壁延出部98と繋がっているガセット後側縦壁延出部99とからなる後側延出部9Dを有する。
【0048】
上記フランジ部9Bは、ピラー12の車幅方向内側面に沿って前後方向に拡がるフランジを有しており、このフランジはハット形状部9Aの外端から連続的に屈曲して形成されている。
【0049】
そして、ハット形状部9Aが、ガセット下壁部91、ガセット前側縦壁部92及びガセット後側縦壁部94とに囲まれた空間に中央ルーフレインフォースメント4の外端部が収まるように中央ルーフレインフォースメント4に取り付けられる一方、フランジ部9Bが、ピラー12の、センタピラー13が連結された部分と前後方向において同じ位置に車幅方向内方から取り付けられる。このとき、ガセット下壁部91の内端は中央ルーフレインフォースメント4の作業孔41aの外端近傍に位置すると共に、前側延出部9Cは該作業孔41aの前方に、後側延出部9Dは該作業孔41aの後方に位置し、コーナーガセット9が中央ルーフレインフォースメント4の作業孔41aを塞がないように構成されている。また、ガセット下壁部91は、ルーフサイドレール16の水平接合部16Aの下方位置に2つの作業孔9E、9Eが形成されている。この作業孔9E、9Eは、ルーフパネル7の側端フランジ72をルーフサイドレール16の水平接合部16Aに接合する際に、スポットガンを水平接合部16Aに対して下方から当接させるための開口である。
【0050】
尚、その他のルーフレインフォースメント3、5は、中央ルーフレインフォースメント4と略同じ形状をしている。ただし、コーナーガセット9、9が設けられておらず、それぞれの前側フランジと後側フランジがルーフパネル7の側端フランジ72に結合されているのみである。
【0051】
次に、このように構成される車体構造の製造工程について説明する。
【0052】
上記の車体構造は、側部車体1と、ルーフパネル7、フロントヘッダ2、ルーフレインフォースメント3〜5及びリヤヘッダ6からなるルーフ部とが別々にサブアッセンブリされた後、その側部車体1とルーフ部とを合体させて組み立てられる。
【0053】
側部車体1は、キャブサイドアッシー工程において、まずセンタピラー13やルーフサイドレール16等のインナ側パネル13a、16a、…がサブアッセンブリされる。このとき、コーナーガセット8、9も同時に、ルーフレールインナ16aやフロントピラーインナ17aに対して接合される。その後、上記センタピラーレインフォースメント13bやルーフレールレインフォースメント16d等のレインフォースメントを挟持するように、キャブサイドアウタ10がサブアッセンブリされたインナ側パネル13a、16a、…に対して接合される。
【0054】
一方、ルーフアッシー工程において、フロントヘッダ2と、ルーフレインフォースメント3〜5と、リヤヘッダ6とが、ルーフパネル7に対してサブアッセンブリされる。
【0055】
そして、合体工程において、サブアッセンブリされた上部車体が、既にサブアッセンブリされた側部車体1、1に対して取り付けられる。
【0056】
このような工程で製造された、フロントヘッダ2とピラー12との取付構造についてさらに詳しく説明する。
【0057】
まず、キャブサイドアッシー工程において、図2の○印で示す位置において、コーナーガセット8のフランジ部8Bがピラー12のインナ側パネル16a、17aに対してスポット溶接される。
【0058】
一方、ルーフアッシー工程において、図2の△印で示す位置において、フロントヘッダ2のヘッダ前側フランジ23がルーフパネル7の前端フランジ71に対してスポット溶接される。
【0059】
その後、合体工程において、ルーフパネル7の側端縁とルーフサイドレール16との接合、ルーフパネル7の前端縁とコーナーガセット8との接合およびフロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合が行われる。
【0060】
上記ルーフパネル7の側端縁とルーフサイドレール16との接合は、図4の×印で示すように、ルーフパネル7の側端フランジ72とルーフサイドレール16の水平接合部16Aとをスポット溶接する。スポット溶接は良好な接合を実現するためには、パネルの重ね枚数は3枚程度が好ましい。そこで、ルーフレールレインフォースメント16dを部分的に切り欠く等して、溶接するパネルの枚数が3枚(ルーフパネル7、キャブサイドアウタ10、ルーフレールインナ16a)となるようにしている。
【0061】
また、上記ルーフパネル7の前端縁とコーナーガセット8との接合は、図2の□印で示す位置において、ルーフパネル7の前端フランジ71とコーナーガセット8のガセット前側フランジ83とをスポット溶接する。尚、ガセット前側フランジ83の最内に位置する溶接位置では、ルーフパネル7、フロントヘッダ2及びコーナーガセット8を3枚重ねた状態で溶接されている。
【0062】
さらに、上記フロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合は、図2の☆印で示す位置において、フロントヘッダ2の外端部とコーナーガセット8の内端部とをスポット溶接する。かかるスポット溶接は、作業孔21aの外側で2箇所(図6の×印参照)、作業孔21aの後方で2箇所(図7の×印参照)の計4箇所で行われる。作業孔21aの外側のスポット溶接は、ヘッダ下壁部21及びガセット下壁部81とが前後方向の2箇所で溶接されている。また、作業孔21aの後方でのスポット溶接は、ヘッダ下壁部21及びガセット下壁部81とが1箇所で溶接され且つ、ヘッダ後側縦壁部24とガセット後側縦壁部84とが1箇所で溶接されている。これらスポット溶接は、作業孔21aからスポットガンをフロントヘッダ2の内方へ挿入して行う。
【0063】
一方、フロントヘッダ2の後端部としてのヘッダ後側フランジ25は、図6に示すように、ルーフパネル7とは接合されておらず、車幅方向の複数箇所において、図7に示すように、ヘッダ後側フランジ25とルーフパネル7との間には緩衝部材25aが設けられている。
【0064】
次に、中央ルーフレインフォースメント4とピラー12との取付構造についてさらに詳しく説明する。
【0065】
まず、キャブサイドアッシー工程において、図3の○印で示す位置において、コーナーガセット9がルーフサイドレール16のルーフレールインナ16aに対してスポット溶接される。
【0066】
一方、ルーフアッシー工程において、図3の△(破線)印及び図5の×印で示すように、中央ルーフレインフォースメント4のレイン前側フランジ43及びレイン後側フランジ45の外端部がルーフパネル7の側端フランジ72に対してスポット溶接される。
【0067】
その後、合体工程において、ルーフパネル7の側端縁とルーフサイドレール16との接合および中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9との接合が行われる。
【0068】
上記ルーフパネル7の側端縁とルーフサイドレール16との接合は、図示を省略するが、上記フロントヘッダ2の取付構造で説明したのと同様に、ルーフパネル7の側端フランジ72とルーフサイドレール16の水平接合部16Aとをスポット溶接する。
【0069】
また、上記中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9との接合は、図3の☆印で示す位置において、中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9の内端部とをスポット溶接する。かかるスポット溶接は、作業孔41aの外側で2箇所(図8の×印参照)、作業孔41aの前方で2箇所(図9の×印参照)、作業孔41aの後方で2箇所(図9の×印参照)の計6箇所で行われる。作業孔41aの外側のスポット溶接は、レイン下壁部41及びガセット下壁部91とが前後方向の2箇所で溶接されている。また、作業孔41aの前方でのスポット溶接は、レイン下壁部41及びガセット前側下壁延出部96とが1箇所で溶接され且つ、レイン前側縦壁部42とガセット前側縦壁延出部97とが1箇所で溶接されている。さらに、作業孔41aの後方でのスポット溶接は、レイン下壁部41及びガセット後側下壁延出部98とが1箇所で溶接され且つ、レイン後側縦壁部44とガセット後側縦壁延出部99とが1箇所で溶接されている。これらスポット溶接は、作業孔41aからスポットガンを中央ルーフレインフォースメント4の内方へ挿入して行う。
【0070】
尚、中央ルーフレインフォースメント4は、ルーフパネル7に対しては、両端の側端フランジ72以外では接合されておらず、車幅方向の複数箇所において、図9に示すように、レイン前側フランジ43とルーフパネル7との間及びレイン後側フランジ45とルーフパネル7との間には緩衝部材45aが設けられている。
【0071】
尚、溶接する位置を説明する便宜上、図2、3を用いて説明しただけであり、上述の如く、キャブサイドアッシー工程とルーフアッシー工程によって、側部車体1とルーフ部とは別々にサブアッセンブリされる。
【0072】
したがって、上記実施形態によれば、フロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合部において、フロントヘッダ2の作業孔21aの車幅方向外側でヘッダ下壁部21とガセット下壁部81とをスポット溶接するだけでなく、該作業孔21aの後方でヘッダ後側縦壁部24とガセット後側縦壁延出部87とをスポット溶接することによって、フロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合点数が増加するため、フロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合強度を向上させることができる。その結果、フロントヘッダ2、コーナーガセット8、ピラー12等からなる上部車体構造の剛性を向上させることができる。特に、フロントヘッダ2とピラー12の接合部には、車幅方向と前後方向との異なる2方向の力が作用するため、車体の捻れ荷重が作用するが、上記フロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合強度を向上させることによって、車体の捻れ荷重に対する強度も向上させることができる。
【0073】
また、上記フロントヘッダ2の作業孔21aの車幅方向外側位置と、該作業孔21aの後方位置とを接合することによって、フロントヘッダ2の長手方向にずれた2箇所で接合されるため、フロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合部において、該長手方向に垂直な方向周りの曲げ剛性を向上させることができる。
【0074】
さらに、上記フロントヘッダ2の作業孔21aの車幅方向外側でヘッダ下壁部21とガセット下壁部81とを接合することに加えて、該作業孔21aの後方でヘッダ後側縦壁部24とガセット後側縦壁延出部87とを接合することによって、下壁部以外の面に接合点が設けられるため、フロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合強度をさらに向上させることができる。特に、下壁部だけを接合する構成よりも、ヘッダ後側縦壁部24又はガセット後側縦壁延出部87に垂直な方向周りの曲げ剛性を向上させることができる。
【0075】
さらにまた、上記フロントヘッダ2の作業孔21aの後方においてヘッダ下壁部21とガセット下壁延出部86とを接合することによって、下壁部においては、作業孔21aの車幅方向外側から作業孔21aの後方に亘る部分を平面的に接合することができるだけでなく、作業孔21aの後方においては、ガセット後側縦壁延出部87における接合点からガセット下壁延出部86の接合点に亘る広い範囲を平面的に接合することができる。つまり、作業孔21aの後方でヘッダ下壁部21とガセット下壁延出部86とを接合することによって、上記両下壁部21、81における接合と上記作業孔21aの後方部分における接合との2つの領域の接合を同時に強化することができ、効率的に接合強度を向上させることができる。
【0076】
また、上記作業孔21aの開口縁部に上方に立ち上がるように曲折形成されたフランジ21bを設けることによって、フロントヘッダ2に作業孔21aを形成したにもかかわらず、フロントヘッダ2の剛性を維持することができる。
【0077】
さらに、上記フロントヘッダ2は、ヘッダ前側フランジ23がルーフパネル7の前端フランジ71とスポット溶接により接合されているが、ヘッダ後側フランジ25はルーフパネル7とは接合されていない。これは、ヘッダ前側フランジ23は、フロントウィンドウ開口を利用してルーフパネルの前端フランジ71と共にスポットガンで挟み込んで溶接することができるのに対して、ヘッダ後側フランジ25は、スポットガンでルーフパネル7と挟み込んで溶接することができないからである。このように、フロントヘッダは後端部が自由端となる傾向がある。同様に、コーナーガセット8のガセット前側フランジ83も同様にルーフパネル7の前端フランジ71とスポット溶接できるのに対して、ガセット後側フランジ85はルーフパネル7に対してスポット溶接することができない。これらの結果、フロントヘッダ2及びコーナーガセット8の前部は、ルーフパネル7を介してフロントヘッダ2とコーナーガセット8との接合強度が強化される一方、フロントヘッダ2とコーナーガセット8の後部は、ルーフパネル7を介した接合強度の向上を図ることができない。そこで、上記フロントヘッダ2の作業孔21aの後方においてフロントヘッダ2と延出部8Cとを接合することによって、フロントヘッダ2及びコーナーガセット8の後部の接合強度を向上させることができる。
【0078】
尚、リヤヘッダ6は、フロントヘッダ2と同様の構成であるため、フロントヘッダ2と同様の作用効果を奏する。
【0079】
また、上記実施形態によれば、中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9との接合部において、中央ルーフレインフォースメント4の作業孔41aの車幅方向外側でレイン下壁部41とガセット下壁部91とをスポット溶接するだけでなく、該作業孔41aの前方で前側延出部9Cを、後方で後側延出部9Dを中央ルーフレインフォースメント4に対してスポット溶接することによって、中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9との接合点数が増加するため、中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9との接合強度を向上させることができる。その結果、中央ルーフレインフォースメント4、コーナーガセット9、ルーフサイドレール16等からなる上部車体構造の剛性を向上させることができる。特に、中央ルーフレインフォースメント4は、ルーフサイドレール16の前後方向中央位置における車幅方向の剛性を向上させる部材であるため、該コーナーガセット9と中央ルーフレインフォースメント4との接合強度を向上させることによって、車両側方からの衝突に対する安全性を向上させることができる。また、側部車体1の剛性を向上させる上記センタピラー13が位置する部分は車体全体の強度及び剛性に大きな影響を与える部分であり、上記ルーフサイドレール16の、センタピラー13が連結される部分にコーナーガセット9の外端を接合させて車幅方向の剛性を向上させることによって、より効果的に車体全体の剛性を向上させることができる。
【0080】
さらに、上記中央ルーフレインフォースメント4の作業孔41aの車幅方向外側位置と、該作業孔41aの前方位置及び後方位置とを接合することによって、中央ルーフレインフォースメント4の長手方向にずれた2箇所で接合されるため、中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9との接合部において、該長手方向に垂直な方向周りの曲げ剛性を向上させることができる。
【0081】
また、上記中央ルーフレインフォースメント4の作業孔41aの車幅方向外側でレイン下壁部41とガセット下壁部91とを接合することに加えて、該作業孔41aの前方でレイン前側縦壁部42とガセット前側縦壁延出部97とを接合することによって、下壁部以外の面に接合点が設けられるため、中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9との接合強度をさらに向上させることができる。さらに、該作業孔41aの後方でレイン後側縦壁部44とガセット後側縦壁延出部99とを接合することによって、下壁部以外の面に接合点がさらに設けられ、計3つの異なる面が接合される。その結果、中央ルーフレインフォースメント4とコーナーガセット9との接合強度をさらに向上させることができる。特に、下壁部だけを接合する構成よりも、レイン前側縦壁部42又はレイン後側縦壁部44に垂直な方向周りの曲げ剛性を向上させることができる。
【0082】
さらにまた、上記中央ルーフレインフォースメント4の作業孔41aの前方においてレイン下壁部41とガセット前側下壁延出部96とを接合することによって、下壁部においては、作業孔41aの車幅方向外側から作業孔41aの前方に亘る部分を平面的に接合することができるだけでなく、作業孔41aの前方においては、ガセット前側縦壁延出部97における接合点からガセット前側下壁延出部96の接合点に亘る広い範囲を平面的に接合することができる。つまり、作業孔41aの前方でレイン下壁部41とガセット前側下壁延出部96とを接合することによって、上記両下壁部41、91における接合と上記作業孔41aの前方部分における接合との2つの領域の接合を同時に強化することができ、効率的に接合強度を向上させることができる。同様に、作業孔41aの後方でレイン下壁部41とガセット後側下壁延出部98とを接合することによって、上記両下壁部41、91における接合と上記作業孔41aの後方部分における接合との2つの領域の接合を同時に強化することができ、効率的に結合強度を向上させることができる。
【0083】
また、上記作業孔41aの開口縁部に上方に立ち上がるように曲折形成されたフランジ41bを設けることによって、中央ルーフレインフォースメント4に作業孔41aを形成したにもかかわらず、中央ルーフレインフォースメント4の剛性を維持することができる。その結果、車両側方からの衝突時の安全性を向上させることができる。
【0084】
さらに、上記中央ルーフレインフォースメント4は前後方向においてルーフパネル7の略中央位置に位置すると共に、ルーフパネル7には溶接用の作業孔が設けられていないため、レイン前側フランジ43及びレイン後側フランジ45をルーフパネル7とスポット溶接することはできず、中央ルーフレインフォースメント4は前端部及び後端部が自由端となっている。そこで、上記中央ルーフレインフォースメント4の作業孔41aの前方及び後方において中央ルーフレインフォースメント4と前側延出部9Cと後側延出部9Dとを接合することによって、中央ルーフレインフォースメント4及びコーナーガセット9の前部及び後部の接合強度を向上させることができる。
【0085】
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。すなわち、上記実施形態では、上方に開口するフロントヘッダ2をルーフパネル7と接合しているが、これに限られるものではない。例えば、上記特許文献1に係るフロントヘッダのように、上方に開口する断面ハット形状部材と下方に開口する断面ハット形状部材とを接合して、閉断面形状を有するフロントヘッダとコーナーガセットを接合する場合であっても本発明を適用することができる。つまり、フロントヘッダとコーナーガセットとをフロントヘッダに設けた作業孔を介して接合する構成であれば、本発明を適用して、フロントヘッダとコーナーガセットの接合強度を向上させることができる。
【0086】
また、上記フロントヘッダ2、中央ルーフレインフォースメント4及びコーナーガセット8、9は、上記の形状に限られるものではない。すなわち、上記フロントヘッダ2及び中央ルーフレインフォースメント4は、下壁部と前側縦壁部と後側縦壁部とを有するものであれば、前側フランジや後側フランジの有無は問わず、断面形状が略ハット形状であるか否かも問わない。また、コーナーガセット8、9は、それぞれフロントヘッダ2とピラー12とを、中央ルーフレインフォースメント4とピラー12とを接合するものであれば形状は問わない。例えば、コーナーガセット8は、その外端部がルーフサイドレール16とフロントピラー17との連結部に接合されるのではなく、T字形状に形成され、3つの端部にそれぞれフロントヘッダ2の端部、ルーフサイドレール16の端部及びフロントピラー17の端部を接合するようにしてもよい。
【0087】
また、上記車体構造は、キャブサイドアッシー工程、ルーフアッシー工程、合体工程等からなる製造工程によって製造されるが、これに限られるものではなく、任意の順序、工程で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態に係る車体構造の概略斜視図である。
【図2】フロントヘッダとピラーとの接合部を車室内から見た斜視図である。
【図3】ルーフレインフォースメントとセンタピラーとの接合部を車室内から見た斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線における断面図である。
【図5】図3のV−V線における断面図である。
【図6】図2のVI−VI線における断面図である。
【図7】図2のVII−VII線における断面図である。
【図8】図3のVIII−VIII線における断面図である。
【図9】図3のIX−IX線における断面図である。
【符号の説明】
【0089】
12 ピラー
13 センタピラー
16 ルーフサイドレール(ピラー)
17 フロントピラー(ピラー)
2 フロントヘッダ
21 ヘッダ下壁部(下壁部)
21a 作業孔
22 ヘッダ前側縦壁部
24 ヘッダ後側縦壁部
4 ルーフレインフォースメント
41 レイン下壁部(下壁部)
41a 作業孔
41b フランジ
42 レイン前側縦壁部(前側縦壁部)
44 レイン後側縦壁部(後側縦壁部)
8 コーナーガセット
81 ガセット下壁部
84 ガセット後側縦壁部
8C 延出部
86 ガセット下壁延出部
87 ガセット後側縦壁延出部
9 コーナーガセット
91 ガセット下壁部
92 ガセット前側縦壁部
94 ガセット後側縦壁部
9C 前側延出部
96 ガセット前側下壁延出部
97 ガセット前側縦壁延出部
9D 後側延出部
98 ガセット後側下壁延出部
99 ガセット後側縦壁延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下壁部と、該下壁部の前端から上方へ立ち上がる前側縦壁部と、該下壁部の後端から上方へ立ち上がる後側縦壁部とを有して車幅方向に延びて形成されると共に、該下壁部の車幅方向外端部に作業孔が設けられているフロントヘッダと、上記フロントヘッダの車幅方向外側で前後方向に延びて形成されるピラーと、内端部が上記フロントヘッダの下壁部と上記作業孔よりも車幅方向外側で接合される一方、外端部が上記ピラーと接合されるコーナーガセットとを備える自動車の上部車体構造であって、
上記コーナーガセットの内端部には、上記フロントヘッダの上記作業孔の後方において車幅方向内方へ延びる延出部が設けられ、
上記コーナーガセットは、上記延出部が上記フロントヘッダとさらに接合されることを特徴とする自動車の上部車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の上部車体構造において、
上記コーナーガセットの内端部は、少なくとも、上記フロントヘッダの下壁部と上記作業孔よりも車幅方向外側で接合されるガセット下壁部と、該ガセット下壁部の後端から上方へ立ち上がるガセット後側縦壁部とを有し、
上記延出部は、上記フロントヘッダの上記作業孔の後方において、上記ガセット後側縦壁部から車幅方向内方へ延び且つ、上記フロントヘッダの後側縦壁部と接合されるガセット後側縦壁延出部を有することを特徴とする自動車の上部車体構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車の上部車体構造において、
上記延出部は、上記フロントヘッダの上記作業孔の後方において、上記ガセット下壁部から車幅方向内方へ延び且つ、その後端が上記ガセット後側縦壁延出部と連続すると共に、上記フロントヘッダの下壁部と上記作業孔の後方で接合されるガセット下壁延出部をさらに有することを特徴とする自動車の上部車体構造。
【請求項4】
下壁部と、該下壁部の前端から上方へ立ち上がる前側縦壁部と、該下壁部の後端から上方へ立ち上がる後側縦壁部とを有して車幅方向に延びて形成されると共に、該下壁部の車幅方向外端部に作業孔が設けられているルーフレインフォースメントと、上記ルーフレインフォースメントの車幅方向外側で前後方向に延びて形成されるピラーと、上記ピラーから下方に延びて形成されるセンタピラーと、内端部が上記ルーフレインフォースメントの下壁部と上記作業孔よりも車幅方向外側で接合される一方、外端部が上記ピラーの、上記センタピラーが連結された部分と前後方向において同じ位置に接合されるコーナーガセットとを備える自動車の上部車体構造であって、
上記コーナーガセットの内端部には、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の前方において車両幅方向内方へ延びる前側延出部と、該作業孔の後方において車幅方向内方へ延びる後側延出部とが設けられ、
上記コーナーガセットは、上記前側及び後側延出部が上記ルーフレインフォースメントとさらに接合されることを特徴とする自動車の上部車体構造。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車の上部車体構造において、
上記コーナーガセットの内端部は、少なくとも、上記ルーフレインフォースメントの下壁部と上記作業孔よりも車幅方向外側で接合されるガセット下壁部と、該ガセット下壁部の前端から上方へ立ち上がるガセット前側縦壁部と、該ガセット下壁部の後端から上方へ立ち上がるガセット後側縦壁部とを有し、
上記前側延出部は、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の前方において、上記ガセット前側縦壁部から車幅方向内方へ延び且つ、上記ルーフレインフォースメントの前側縦壁部と接合されるガセット前側縦壁延出部を有し、
上記後側延出部は、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の後方において、上記ガセット後側縦壁部から車幅方向内方へ延び且つ、上記ルーフレインフォースメントの後側縦壁部と接合されるガセット後側縦壁延出部を有することを特徴とする自動車の上部車体構造。
【請求項6】
請求項5に記載の自動車の上部車体構造において、
上記前側延出部は、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の前方において、上記ガセット下壁部から車幅方向内方へ延び且つ、その前端が上記ガセット前側縦壁延出部と連続すると共に、上記ルーフレインフォースメントの下壁部と上記作業孔の前方で接合されるガセット前側下壁延出部をさらに有し、
上記後側延出部は、上記ルーフレインフォースメントの上記作業孔の後方において、上記ガセット下壁部から車幅方向内方へ延び且つ、その後端が上記ガセット後側縦壁延出部と連続すると共に、上記ルーフレインフォースメントの下壁部と上記作業孔の後方で接合されるガセット後側下壁延出部をさらに有することを特徴とする自動車の上部車体構造。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか1つに記載の自動車の上部車体構造において、
上記ルーフレインフォースメントには、上記作業孔の開口縁部にフランジが形成されていることを特徴とする自動車の上部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−30716(P2007−30716A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217995(P2005−217995)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】