説明

自動車の側部構造

【課題】側突時のドアの車室内側への回動を抑制し、インパクトバーの変形によるエネルギ吸収を促進し、ドアの車室内側への侵入量を抑制する自動車の側部構造を提供する。
【解決手段】ドアアウタパネル14と、ドアインナパネル15と、インパクトバー19と、を備えるドア13が、ヒンジ21を介してヒンジピラー5に取付けられる自動車の側部構造であって、ドアインナパネル15と対向するヒンジピラー部6cから該インナパネル15に向けて立設され、ドア閉位置からドア13の車室内側への回動を規制する規制部材27が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアアウタパネルと、ドアインナパネルと、インパクトバーと、を備えるドアが、ヒンジを介してヒンジピラーに開閉可能に取付けられたような自動車の側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の自動車の側部構造としては、例えば、特許文献1に開示された構造がある。
すなわち、ドアアウタパネルとドアインナパネルとから形成され、内部にインパクトバーを備えたドアを設けると共に、このドアを任意の位置で停止させるドアチェッカを備えたものであって、このドアチェッカはその一端がドアに固定され、他端部はヒンジピラーに固定されたキャッチの貫通穴に対して挿通され、該他端部の端部にストッパを設けたものである。
【0003】
上述のドアのドアインナパネルと、ヒンジピラーのヒンジピラーアウタ(またはキャブサイドパネル)との間にはドア組付け性を考慮して隙間が形成されている。また該ドアの枢支側はドアヒンジを介して上記ヒンジピラーに開閉可能に枢支されている。
【0004】
この特許文献1に開示されたものは、側突時においてドア内部に設けられたインパクトバーが引っ張られて、ドアがセンタピラー側へ移動しようとする時、ドアチェッカ他端部のストッパを、ヒンジピラーに固定されたキャッチに係合させて、該ドアがセンタピラー側へ移動するのを防止するものであるがドアインナパネルとヒンジピラーアウタとの間には上述の隙間が形成されているため、車両の側突時において、ドアに対して側突荷重が入力されると、該ドアはドアヒンジのヒンジピンを中心として車室内側へ回動し、該ドアで衝撃エネルギを吸収することなく、ドアが車室内側へ侵入するという問題点があった。
【特許文献1】実開平4−115919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、ドアインナパネルと対向するヒンジピラー部から該ドアインナパネルに向けて立設され、通常のドア閉位置から側突時における該ドアの車室内側への回動を規制する規制部材を設けることで、側突時のドアの車室内側への回動を抑制し、インパクトバーの変形によるエネルギ吸収を促進することができ、ドアの車室内側への侵入量を抑制することができる自動車の側部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による自動車の側部構造は、ドアアウタパネルと、ドアインナパネルと、インパクトバーと、を備えるドアが、ヒンジを介してヒンジピラーに取付けられる自動車の側部構造であって、上記ドアインナパネルと対向するヒンジピラー部から該ドアインナパネルに向けて立設され、通常のドア閉位置から側突時における該ドアの車室内側への回動を規制する規制部材が設けられたものである。
【0007】
上記構成によれば、車両の側突時にヒンジのヒンジピンを中心としてドアがその閉位置から車室内側へ回動しようとする場合、上記ヒンジピラー部に設けた規制部材がドアインナパネルに当接して、ドアのそれ以上の回動を規制するので、側突時のドアの車室内側への回動を抑制することができる。
この結果、インパクトバーの変形によるエネルギ吸収(側突荷重の吸収)を促進することができ、ドアの車室内側への侵入量を抑制することができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記規制部材と対向するドアインナパネル部に開口孔を形成すると共に、上記規制部材の先端には該開口孔に侵入し上記ドアがセンタピラー側に移動した時、該開口孔と係合する係合部を備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、車両の側突時にはドアアウタパネルを介してインパクトバーが車室内方に押圧され、このインパクトバーに作用する力によりドアはセンタピラー側へ引き込まれようとするが、この場合、規制部材の先端に設けた係合部がドアインナパネルの開口孔と係合して、ドアがセンタピラー側へ引き込まれるのを防止するので、該ドアのセンタピラー側への移動を防止することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、インストルメントパネルメンバが取付けブラケットを介して左右のヒンジピラー間に取付けられる構造であって、上記規制部材が上記取付けブラケットに接続されたものである。
【0011】
上記構成によれば、上述の規制部材は取付けブラケットを介して車幅方向に延びるインストルメントパネルメンバに接続されているので、側突時にはドアから入力される側突荷重をヒンジピラーのみならずインストルメントパネルメンバでも受け止めることができ、これによりドアの車室内側への侵入量をより一層抑制することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記インストルメントパネルメンバの取付けブラケットが、車外側からヒンジピラー内に備わるカラーに挿過されるボルトにより該ヒンジピラーに締結される構造であって、上記規制部材が車外側から上記カラーに挿通され上記取付けブラケットをヒンジピラーに取付けるボルト状の部材から構成されたものである。
【0013】
上記構成によれば、規制部材による側突時のドアの車室内側への回動を抑制しつつ、該規制部材はインストルメントパネルメンバの取付けブラケットをヒンジピラーに取付けるボルト状の部材で構成したので、インストルメントパネルメンバのヒンジピラーに対する取付け剛性の向上を図ることができ、また上記ボルト状の部材で、取付けブラケットの締結と、ドアの車室内側への侵入量抑制との両作用を兼ねることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、外端が上記インパクトバーの取付け部に接合され、内端が上記規制部材と対向するドアインナパネルまで連続して延びて、接合されたレインフォースメントを設けたものである。
【0015】
上記構成によれば、インパクトバーをドア内部の外方側へ配置しつつ、上記レインフォースメントにより規制部材と対向するドアインナパネルの剛性を高めることができるので、側突時に規制部材はドア剛性が高い部分に当接し、ドアの車室内側への回動を確実に抑制することができる。
この発明の一実施態様においては、上記レインフォースメントと、上記ドアインナパネルの前面部と、の間で閉断面が形成されたものである。
【0016】
上記構成によれば、上記閉断面によりドアの車幅方向の剛性を向上させることができる。つまり、側突時において規制部材が当接するドア剛性を高めることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記規制部材は、ヒンジピラーアウタのドアインナパネルと対向する部位に上記ドアの車室内側への回動を規制する規制部を備え、該規制部の外形寸法は上記開口孔の孔径よりも大きく形成されたものである。
【0018】
上記構成によれば、規制部の外形寸法を開口孔の孔径よりも大きく形成したので、側突時においてドアインナパネルの開口孔の孔縁に対して上記規制部が確実に当接し、ドアの車室内側への回動を確実に抑制することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記規制部材の先端がドアインナパネルに形成された開口孔を介してドア内に挿入される一方、外端がインパクトバーの取付け部に接合され、内端が上記規制部材と対向するドアインナパネルまで連続して延びて接合されたレインフォースメントを設け、上記レインフォースメントにはドアがセンタピラー側に移動した時、上記規制部材の先端と当接するストッパが一体成形されたものである。
上記構成によれば、ドアインナパネルに形成する開口孔の孔径設定の自由度が拡大すると共に、上記規制部材の構造の簡略化を図ることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記インストルメントパネルメンバの取付けブラケットが、該取付けブラケットに固定されるナットに対し車外側からヒンジピラーを貫通して上記ナットに螺合するボルトによりヒンジピラーに締結される構造であって、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとの間に第2のナットが固定されるヒンジピラーレインフォースメントを備え、上記ボルトが第2のナットとも螺合されるものである。
上記構成によれば、ヒンジピラーそれ自体の剛性向上を図ることができると共に、ボルトのヒンジピラーに対する取付け強度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ドアインナパネルと対向するヒンジピラー部から該ドアインナパネルに向けて立設され、通常のドア閉位置から側突時における該ドアの車室内側への回動を規制する規制部材を設けたので、側突時のドアの車室内側への回動を抑制し、インパクトバーの変形によるエネルギ吸収を促進することができ、ドアの車室内側への侵入量を抑制することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
側突時のドアの車室内側への回動を抑制し、ドアの車室内側への侵入量を抑制するという目的を、ドアアウタパネルと、ドアインナパネルと、インパクトバーと、を備えるドアが、ヒンジを介してヒンジピラーに取付けられる自動車の側部構造において、上記ドアインナパネルと対向するヒンジピラー部から該ドアインナパネルに向けて立設され、通常のドア閉位置から側突時における該ドアの車室内側への回動を規制する規制部材を設けるという構成にて実現した。
【実施例】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図1はドアを取外した状態で示すボディ側の側面図、図2はドアアウタパネルを取外した状態で示すドアの側面図、図3は図1の構造を車室内側から見た状態で示す側面図、図4は図3の斜視図、図5は図3のA−A線矢視断面図、図6は図3のB−B線矢視断面図である。
【0024】
図1、図4に示すように、エンジンルームとその後方の車室とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル1を設け、このダッシュロアパネル1の上部には車幅方向に延びるダッシュアッパパネル2を接合固定している。
【0025】
また、上述のダッシュアッパパネル2の上部および前部には車幅方向に延びるカウルパネル3を接合固定し、このカウルパネル3と上述のダッシュアッパパネル2との間には、車幅方向に延びるカウル閉断面を形成している。
【0026】
図1に示すように、上述のカウルパネル3の左右両側部(但し、図面では右側のみを示す)にはカウルサイドパネル4を接合固定している。
【0027】
また、図1、図3、図4、図5に示すように、上下方向に延びるヒンジピラー5を設けている。このヒンジピラー5はヒンジピラーアウタ6とヒンジピラーインナ7とを接合して上下方向に延びるヒンジピラー閉断面8を備えた車体剛性部材である。
【0028】
このヒンジピラー5の上部には、前部が低く、後部が高くなるように前低後高状に傾斜したフロントピラー9を一体的に接合固定し、ヒンジピラー5の下部には車室の下部左右両サイド(但し、図面では右側のみを示す)において車両の前後方向に延びるサイドシル10を一体的に接合固定している。
【0029】
このサイドシル10は、サイドシルインナとサイドシルアウタとを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体剛性部材であるが、図1では図示の便宜上、サイドシルインナのみを示している。
【0030】
上述のヒンジピラー5と、フロントピラー9と、サイドシル10と、図2に示すセンタピラー11とで、乗員昇降口(この実施例では前席乗員の昇降口)としてのドア開口部12を構成している。
【0031】
ここで、図3、図4に示すように、上述のダッシュロアパネル1の側部折曲げ部1aは、ヒンジピラー5におけるヒンジピラーインナ7の車室内側面に接合固定されている。また図1に示すように、カウルサイドパネル4の後部4aは、ヒンジピラー5におけるヒンジピラーアウタ6の車室外側面に接合固定されている。
【0032】
図2、図5に示すように、上述のドア開口部12を開閉可能に覆うドア13を設けている。このドア13は、ドアアウタパネル14と、ドアインナパネル15とでドア本体を形成すると共に、ドア本体の上部には、その前後にウインドガラスの昇降を案内するガイド部材16,17を備えたドアサッシュ18が取付けられている。
また、図2、図5に示すように、ドア13の内部、詳しくはドア本体の内部には車両の前後方向に延びる2本のインパクトバー19,20を設けている。
【0033】
これら各インパクトバー19,20は、図5に示すようにドアアウタパネル14に近接する位置においてドアインナパネル15に接合固定されたものであって、上側のインパクトバー19は主としてドアアウタパネル14の張り剛性を確保するものであり、下側のインパクトバー20は主として側突時におけるドア13の車室内側への侵入を防止するものである。
【0034】
上述のドア13は、図2、図5に示すように、上下のヒンジ21,21を介してヒンジピラー5に取付けられている。上述のヒンジ21は、図5に示すように、ドアインナパネル15の前面部15aにボルト22、ナット23等の取付け部材を用いて固定されたドア側のヒンジブラケット24と、ヒンジピラーアウタ6の前後方向に指向する外側面部6aにボルト、ナット等の取付け部材を用いて固定されたボディ側のヒンジブラケット25と、これら両ヒンジブラケット24,25を連結するヒンジピン26と、を備えている。
【0035】
図5に示すように、ボディ側のヒンジブラケット25が固定されたヒンジピラーアウタ6の外側面部6aの後端には、車幅方向に指向する後面部6bが形成され、この後面部6bの内端から後方に向けて延び、ドアインナパネル15の前側とオーバラップし、かつ対向するように対向面部6cが形成されている。
そして、この対向面部6cには、ドアインナパネル15に向けて立設された規制部材としてのボルト部材27が設けられている。
【0036】
このボルト部材27は、本来、インストメントパネルメンバ30(以下、単にインパネメンバ30と略記する)を、取付けブラケット31を介して左右のヒンジピラー5,5(但し、図面では右側のヒンジピラーのみを示す)間に取付けるためのボルト状の部材である。
【0037】
図3、図4、図6に示すように、上述のインパネメンバ30の取付けブラケット31は、該ボルト部材27を含む合計3本のボルト部材27,28,29を用いてヒンジピラー5におけるヒンジピラーインナ7の車室内側面に取付けられている。
【0038】
すなわち、図6に示すように、ヒンジピラー5内には予めカラー32…を介設する一方、取付けブラケット31の車室内側面には予めナット33…を溶接固定しており、車外側からヒンジピラー5内のカラー32に挿通させる上述の各ボルト部材27,28,29を、上記ナット33に締結することで、取付けブラケット31をヒンジピラーインナ7に取付けたものである。なお、上述のカラー32はヒンジピラーアウタ6とヒンジピラーインナ7とを接合する前段階において、ヒンジピラーアウタ6またはヒンジピラーインナ7に溶接固定される。
【0039】
インパネメンバ30の上方に位置する上側のボルト部材28は、軸部28aの車外側に六角頭部28bを有し、軸部28aの車内側には上記ナット33に螺合するネジ部28cを有するものである。
【0040】
同様に、インパネメンバ30の下方に位置する下側のボルト部材29は、軸部29aの車外側に六角頭部29bを有し、軸部29aの車内側には上記ナット33に螺合するネジ部29cを有するものである。
【0041】
インパネメンバ30の直下部に位置する規制部材としてのボルト部材27は、軸部27aの車外側に六角柱状の規制部27bを有し、この規制部27bのさらに車外側には係合部27dを有する一方、軸部27aの車内側には上記ナット33に螺合するネジ部27cを有し、これら各要素27a,27b,27c,27dを一体形成したものである。
【0042】
上述のインパネメンバ30の取付けブラケット31をヒンジピラー5に締結固定する合計3本のボルト部材27,28,29のうち、インパネメンバ30直下部の1つのボルト部材27を、規制部材として有効利用するものである。
規制部材として用いる上述のボルト部材27は、通常のドア閉位置から側突時における該ドア13の車室内側への回動を規制するためのものである。
【0043】
図5に示すように、上述のボルト部材27の六角柱状の規制部27bと対向するドアインナパネル15の対向面部15bには、開口孔15cを形成している。ここで、上述の規制部27bの車外側の面と、ドアインナパネル15の対向面部15bの車内側の面との間のクリアランスを可及的小さく設定する。
【0044】
また、同図に示すように、ドア13内の前部には、その外端が上側のインパクトバー19の取付け部19aの近傍位置19bに接合され、中間部がボルト22、ナット23によりドアインナパネル15の前面部15aと共締めされ、内端がボルト部材27と対向するドアインナパネル15の対向面部15bの車外側面まで連続して延びて接合されたレインフォースメント34を設けている。
【0045】
そして、このレインフォースメント34と、ドアインナパネル15の前面部15aと、の間には閉断面35を形成する一方、該レインフォースメント34の対向面部15bに対する接合部には、上記開口孔15cと一致し、かつ同一開口径の開口孔34aを形成している。
【0046】
上述のボルト部材27の車外側先端に一体形成された係合部27dは、これらの各開口孔15c,34aに侵入し、側突時においてドア13がセンタピラー11(図2参照)側に移動した時、該開口孔15c,34aと係合して、それ以上のドア13のセンタピラー11側への移動を阻止する係合手段である。
しかも、上述のボルト部材27における六角柱状の規制部27bの外形寸法は、上記各開口孔15c,34aの孔径よりも大きく形成されている。
【0047】
なお、図2において15dはドアインナパネル15に形成されたドアモジュール組付け用の開口部、15eはドアインナパネル15に形成されたスピーカ組付け用の開口部である。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印OUTは車両外方を示し、矢印INは車両内方を示す。
【0048】
このように構成した自動車の側部構造において、自車両の側面に対して他車両が衝突する側突時には、図5に矢印Xで示す側突荷重がドア13に入力されるので、ヒンジ21のヒンジピン26を回動中心として該ドア13はその通常の閉位置から車室内側へ回動しようとするが、この場合、上述のヒンジピラー5の対向面部6cに設けたボルト部材27の規制部27bが、レインフォースメント34により剛性が高められたドアインナパネル15の対向面部15bに当接して、ドア13のそれ以上の回動を規制することができる。
【0049】
また、上述の側突荷重の入力時には、インパクトバー19,20が車室内方側に押圧されるので、これらインパクトバー19,20に作用する力により、ドア13は図5に矢印Yで示すようにセンタピラー11側へ引き込まれようとするが、この場合、ボルト部材27の車幅方向外方の先端に設けた係合部27dが、ドアインナパネル15の開口孔15bおよびレインフォースメント34の開口孔34aの孔縁と係合するので、ドア13がセンタピラー側へ引き込まれるのを防止することができる。
【0050】
このように、図1〜図6で示した実施例の自動車の側部構造は、ドアアウタパネル14と、ドアインナパネル15と、インパクトバー19と、を備えるドア13が、ヒンジ21を介してヒンジピラー5に取付けられる自動車の側部構造であって、上記ドアインナパネル15と対向するヒンジピラー部(対向面部6c参照)から該ドアインナパネル15に向けて立設され、通常のドア13閉位置(図5に示す実線位置)から側突時における該ドア13の車室内側への回動を規制する規制部材(ボルト部材27参照)が設けられたものである(図5参照)。
【0051】
この構成によれば、車両の側突時にヒンジ21のヒンジピン26を中心としてドア13がその閉位置から車室内側へ回動しようとする場合、上記ヒンジピラー部(対向面部6c参照)に設けた規制部材(ボルト部材27)がドアインナパネル15に当接して、ドア13のそれ以上の回動を規制するので、側突時のドア13の車室内側への回動を抑制することができる。
この結果,インパクトバー19,20の変形によるエネルギ吸収(側突荷重の吸収)を促進することができ、ドア13の車室内側への侵入量を抑制することができる。
【0052】
また、上記規制部材(ボルト部材27参照)と対向するドアインナパネル部(ドアインナパネル15の対向面部15b参照)に開口孔15cを形成すると共に、上記規制部材(ボルト部材27)の先端(車幅方向外方の先端)には該開口孔15cに侵入し上記ドア13がセンタピラー11側に移動した時、該開口孔15cと係合する係合部27dを備えたものである(図2、図5参照)。
【0053】
この構成によれば、車両の側突時にはドアアウタパネル14を介してインパクトバー19,20が車室内方に押圧され、このインパクトバー19,20に作用する力によりドア13はセンタピラー11側へ引き込まれようとするが、この場合、規制部材(ボルト部材27)の先端に設けた係合部27dがドアインナパネル15の開口孔15cと係合して、ドア13がセンタピラー11側へ引き込まれるのを防止するので、該ドア13のセンタピラー11側への移動を防止することができる。
【0054】
さらに、インパネメンバ30が取付けブラケット31を介して左右のヒンジピラー5,5間に取付けられる構造であって、上記規制部材(ボルト部材27参照)が上記取付けブラケット31に接続されたものである(図5参照)。
【0055】
この構成によれば、上述の規制部材(ボルト部材27)は取付けブラケット31を介して車幅方向に延びるインパネメンバ30に接続されているので、側突時にはドア13から入力される側突荷重をヒンジピラー5のみならずインパネメンバ30でも受け止めることができ、これによりドア13の車室内側への侵入量をより一層抑制することができる。また、この構成はヒンジピラーアウタ6とヒンジピラーインナ7との間にカラー32が存在していても成立する構成である。
【0056】
加えて、上記インパネメンバ30の取付けブラケット31が、車外側からヒンジピラー5内に備わるカラー32に挿過されるボルト(ボルト部材27参照)により該ヒンジピラー5に締結される構造であって、上記規制部材(ボルト部材27参照)が車外側から上記カラー32に挿通され上記取付けブラケット31をヒンジピラー5に取付けるボルト状の部材から構成されたものである(図5参照)。
【0057】
この構成によれば、規制部材(ボルト部材27参照)による側突時のドア13の車室内側への回動を抑制しつつ、該規制部材はインパネメンバ30の取付けブラケット31をヒンジピラー5に取付けるボルト状の部材で構成したので、インパネメンバ30のヒンジピラー5に対する取付け剛性の向上を図ることができ、また上記ボルト状の部材(ボルト部材27参照)で、取付けブラケット31の締結と、ドア13の車室内側への侵入量抑制との両作用を兼ねることができる。
【0058】
また、外端が上記インパクトバー19の取付け部19aに接合され、内端が上記規制部材(ボルト部材27参照)と対向するドアインナパネル15まで連続して延びて、接合されたレインフォースメント34を設けたものである(図5参照)。
【0059】
この構成によれば、インパクトバー19をドア13内部の外方側へ配置しつつ、上記レインフォースメント34により規制部材(ボルト部材27)と対向するドアインナパネル15の剛性を高めることができるので、側突時に規制部材(ボルト部材27)はドア剛性が高い部分に当接し、ドア13の車室内側への回動を確実に抑制することができる。
さらに、上記レインフォースメント34と、上記ドアインナパネル15の前面部15aと、の間で閉断面35が形成されたものである(図5参照)。
【0060】
この構成によれば、上記閉断面35によりドア13の車幅方向の剛性を向上させることができる。つまり、側突時において規制部材(ボルト部材27参照)が当接するドア剛性を高めることができる。
【0061】
加えて、上記規制部材(ボルト部材27参照)は、ヒンジピラーアウタ6のドアインナパネル15と対向する部位(対向面部6c参照)に上記ドア13の車室内側への回動を規制する規制部27bを備え、該規制部27bの外形寸法は上記開口孔15cの孔径よりも大きく形成されたものである(図5参照)。
【0062】
この構成によれば、規制部27bの外形寸法を開口孔15cの孔径よりも大きく形成したので、側突時においてドアインナパネル15の開口孔15cの孔縁に対して上記規制部27bが確実に当接し、ドア13の車室内側への回動を確実に抑制することができる。
【0063】
図7は自動車の側部構造の他の実施例を示し、規制部材としてのボルト部材27の上下に位置する他の2つのボルト部材28,29の六角頭部28b,29bを、ボルト部材27の規制部27bと略同等の大きさの六角柱状に構成して、インパネメンバ30の取付けブラケット31をヒンジピラー5に取付ける複数、この実施例では合計3本の各ボルト部材27,28,29の規制部27bおよび六角頭部28b,29bにより、側突時においてドアインナパネル15を受け止め、ドア13の車室内側への回動を抑制するように構成したものである。
【0064】
このように構成すると、図6で示した実施例に対して、側突時においてドアインナパネル15を受け止める面積が増加するので、部品点数の増加を招くことはなく、側突時のドア13の車室内側への回動をより一層良好に抑制することができる。
【0065】
図7で示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例と同様であるから、図7において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0066】
図8は自動車の側部構造のさらに他の実施例を示し、規制部材としてのボルト部材27の係合部27dを省略し、該ボルト部材27において規制部27bを隔てて軸部29aの反対側つまり各開口孔15c,34a側へ突出する延長軸部27eを設ける一方、レインフォースメント34には、その開口孔34aを形成する時に、該開口孔34aの前側に位置するように切起こし舌片状のストッパ(34b)を一体に切り起こし形成し、車両側突時に延長軸部27eとストッパ34bとを係合させて、ドア13がセンタピラー11側へ引き込まれるのを防止すべく構成したものである。
このように構成すると、各開口孔15c,34aの孔径設定の自由度が拡大する。
【0067】
要するに、図8で示した実施例は、上記規制部材(ボルト部材27)の先端がドアインナパネル15に形成された開口孔15cを介してドア13内に挿入される一方、外端がインパクトバー19の取付け部に接合され、内端が上記規制部材と対向するドアインナパネル15まで連続して延びて接合されたレインフォースメント34を設け、上記レインフォースメント34にはドア13がセンタピラー11側に移動した時、上記規制部材(ボルト部材27)の先端と当接するストッパ34bが一体成形されたものである。
上記構成によれば、側突時にボルト部材27の先端を上記ストッパ34bに係合させて、ドア13がセンタピラー11側へ引き込まれるのを防止することができ、また、ドアインナパネル15に形成する開口孔15cの孔径設定の自由度が拡大すると共に、上記規制部材の構造の簡略化を図ることができる。
【0068】
図8で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図8において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0069】
図9は自動車の側部構造のさらに他の実施例を示し、ヒンジピラー5のヒンジピラーアウタ6とヒンジピラーインナ7との間に介設するカラー32を省略する一方、これらのヒンジピラーアウタ6とヒンジピラーインナ7との間には、ヒンジピラーレインフォースメント36を接合固定し、規制部材としてのボルト部材27の配設部に対応して、上記ヒンジピラーレインフォースメント36の車室側面には予めナット37を溶接固定し、ボルト部材27で取付けブラケット31をヒンジピラー5に取付ける際、該ボルト部材27のネジ部27cを車外側からまず上記ナット37に螺合させ、その後、ナット37から車内側へ突出したネジ部27cの端部を上述のナット33に螺合させて、取付けブラケット31をヒンジピラーインナ7に固定するように構成したものである。
【0070】
このように構成すると、ヒンジピラー5それ自体の剛性向上を図ることができると共に、ボルト部材27のヒンジピラー5に対する取付け強度の向上を図ることができる。
【0071】
要するに、図9で示した実施例においては、上記インパネメンバ30の取付けブラケット31が、該取付けブラケット31に固定されるナット33に対し車外側からヒンジピラー5を貫通して上記ナット33に螺合するボルト部材27によりヒンジピラー5に締結される構造であって、ヒンジピラーインナ7とヒンジピラーアウタ6との間に第2のナット37が固定されるヒンジピラーレインフォースメント36を備え、上記ボルト部材27が第2のナット37とも螺合されるものである。
この構成によれば、ヒンジピラー5それ自体の剛性向上を図ることができると共に、ボルト部材27のヒンジピラー5に対する取付け強度の向上を図ることができる。
【0072】
図9で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図9において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0073】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の規制部材は、実施例のボルト部材27に対応し、
以下同様に、
ドアインナパネルと対向するヒンジピラー部は、対向面部6cに対応し、
規制部材と対向するドアインナパネル部は、対向面部15bに対応し、
インストルメントパネルメンバは、インパネメンバ30に対応し、
ヒンジピラーアウタのドアインナパネルと対向する部位は、対向面部6cに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記実施例においては、ドア13としてフロントドアを例示したが、本発明の自動車の側部構造はフリースタイル構造いわゆる観音開き構造のリヤドアや他のリヤドアに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の自動車の側部構造を示すボディ側の側面図
【図2】ドアアウタパネルを省略して示すドアの側面図
【図3】自動車の側部構造を車室内側から見た状態で示す側面図
【図4】図3の構造を車両後方かつ上方から見た状態で示す斜視図
【図5】図3のA−A線矢視断面図
【図6】図3のB−B線矢視断面図
【図7】自動車の側部構造の他の実施例を示す断面図
【図8】自動車の側部構造のさらに他の実施例を示す平面図
【図9】自動車の側部構造のさらに他の実施例を示す平面図
【符号の説明】
【0076】
5…ヒンジピラー
6…ヒンジピラーアウタ
6c…対向面部
7…ヒンジピラーインナ
11…センタピラー
13…ドア
14…ドアアウタパネル
15…ドアインナパネル
15a…前面部
15b…対向面部
15c…開口孔
19…インパクトバー
21…ヒンジ
27…ボルト部材(規制部材)
27b…規制部
27d…係合部
30…インパネメンバ(インストルメントパネルメンバ)
31…取付けブラケット
32…カラー
34…レインフォースメント
34b…ストッパ
35…閉断面
36…ヒンジピラーレインフォースメント
37…第2のナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアアウタパネルと、ドアインナパネルと、インパクトバーと、を備えるドアが、ヒンジを介してヒンジピラーに取付けられる自動車の側部構造であって、
上記ドアインナパネルと対向するヒンジピラー部から該ドアインナパネルに向けて立設され、通常のドア閉位置から側突時における該ドアの車室内側への回動を規制する規制部材が設けられたことを特徴とする
自動車の側部構造。
【請求項2】
上記規制部材と対向するドアインナパネル部に開口孔を形成すると共に、
上記規制部材の先端には該開口孔に侵入し上記ドアがセンタピラー側に移動した時、該開口孔と係合する係合部を備えたことを特徴とする
請求項1記載の自動車の側部構造。
【請求項3】
インストルメントパネルメンバが取付けブラケットを介して左右のヒンジピラー間に取付けられる構造であって、上記規制部材が上記取付けブラケットに接続されたことを特徴とする
請求項1または2記載の自動車の側部構造。
【請求項4】
上記インストルメントパネルメンバの取付けブラケットが、車外側からヒンジピラー内に備わるカラーに挿通されるボルトにより該ヒンジピラーに締結される構造であって、
上記規制部材が車外側から上記カラーに挿通され上記取付けブラケットをヒンジピラーに取付けるボルト状の部材から構成されたことを特徴とする
請求項3記載の自動車の側部構造。
【請求項5】
外端が上記インパクトバーの取付け部に接合され、内端が上記規制部材と対向するドアインナパネルまで連続して延びて接合されたレインフォースメントを設けたことを特徴とする
請求項1〜4の何れか1に記載の自動車の側部構造。
【請求項6】
上記レインフォースメントと、上記ドアインナパネルの前面部と、の間で閉断面が形成されたことを特徴とする
請求項5記載の自動車の側部構造。
【請求項7】
上記規制部材は、ヒンジピラーアウタのドアインナパネルと対向する部位に上記ドアの車室内側への回動を規制する規制部を備え、
該規制部の外形寸法は上記開口孔の孔径よりも大きく形成されたことを特徴とする
請求項2〜6の何れか1に記載の自動車の側部構造。
【請求項8】
上記規制部材の先端がドアインナパネルに形成された開口孔を介してドア内に挿入される一方、
外端がインパクトバーの取付け部に接合され、内端が上記規制部材と対向するドアインナパネルまで連続して延びて接合されたレインフォースメントを設け、
上記レインフォースメントにはドアがセンタピラー側に移動した時、上記規制部材の先端と当接するストッパが一体成形されたことを特徴とする
請求項1記載の自動車の側部構造。
【請求項9】
上記インストルメントパネルメンバの取付けブラケットが、該取付けブラケットに固定されるナットに対し車外側からヒンジピラーを貫通して上記ナットに螺合するボルトによりヒンジピラーに締結される構造であって、
ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとの間に第2のナットが固定されるヒンジピラーレインフォースメントを備え、
上記ボルトが第2のナットとも螺合されることを特徴とする
請求項3または4記載の自動車の側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−265693(P2008−265693A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115078(P2007−115078)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】