説明

自動車の前部構造

【課題】本発明は、フロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルボックスを備えた自動車の前部構造において、車体全体の捩れ剛性を高めつつも、車体に衝突する衝突体への衝撃値を低減して、衝突体を保護することができる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】カウルグリル8を高い位置に設置して、その下方位置にワイパー支持ブラケット9を設置することで、カウルグリル8の変形挙動にワイパー支持ブラケット9が影響を与えないように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の前部構造に関し、特に、フロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルボックスを備えた自動車の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車体前部には、ダッシュパネルの上方でフロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルボックスを車幅方向に延びるように設置することが知られている。このカウルボックスは、空調装置等に対して外気を導入するエアボックスとしての機能やワイパー装置の収納空間として機能を有し、一般に上部を開放した所謂オープンカウル構造として構成される。
【0003】
ところで、近年、衝突安全性能の要請から、外部から衝突してくる衝突体への衝撃値を緩和して、衝突体を保護する車体構造を採用するニーズが高まっている。
【0004】
前述の自動車前部のカウルボックス近傍においても、こうした衝突体を保護する構造を採用することが多くなっている。
【0005】
たとえば、下記特許文献1では、フロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルボックスの車室内側に、脆弱なプレート部材(第1サポート)を設けて、車外から衝突体が干渉してきた場合に、プレート部材が折れ曲がり変形することでフロントウインドウガラスの下端部を後退させて、衝突体の衝撃値を緩和する自動車の前部構造が開示されている。
【0006】
また、この特許文献1には、カウルボックスの上方に合成樹脂製のカウルグリル(カウルトップ)を設けて、このカウルグリルでボンネット後端を支持する構造が開示されている。このカウルグリルではその前端のボンネット支持部を上下方向に延設する縦壁部として容易に変形するように構成して、ボンネット後端の下方へ変位を許容して、ボンネットに衝突体が衝突した場合における、衝突体の衝撃値を緩和する構造を採用している。
【0007】
【特許文献1】特開2000−38160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、フロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルボックスは、車体前部の上部で車幅方向に延びて左右の車体部材を繋ぐ車体の骨格部材としても機能している。このため、車体全体の捩れ剛性を高めるためには、カウルボックスの捩れ剛性を高めるのが有効であり、この捩れ剛性を高めるためには、カウルボックスの上部も鉄板等で覆って、閉断面構造(クローズドカウル構造)としてカウルボックスを構成するのが望ましい。
しかし、前述のように、衝突体の衝撃値を緩和する構造を採用することを考慮すると、カウルボックスを全体にわたり閉断面構造とした場合には、ボンネット後端の支持剛性やフロントウインドウガラス下端部の支持剛性が高まり過ぎてしまい、衝撃を緩和できなくなる可能性がある。
【0009】
また、カウルグリルについても、前述の特許文献1に開示されているように、前端のボンネット支持部を縦壁部として容易に変形するように構成することで、ボンネット後端の下方変位を許容して、衝撃を緩和する機能を確保することが求められる。
【0010】
そこで、本発明は、フロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルボックスを備えた自動車の前部構造において、車体全体の捩れ剛性を高めつつも、車体に衝突する衝突体への衝撃値を低減して、衝突体を保護することができる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の自動車の前部構造は、車幅方向にわたって形成されて、下部がダッシュロアパネルに接合されて上部でフロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルパネルと、該カウルパネルの下部から車両前方側に延びる横壁部と該横壁部の前端から上方に延びる縦壁部とを備えるカウルクロスメンバと、前記フロントウインドウガラスの下端部に当接する当接部から車両前方側に延びる横壁部と該横壁部の前端から下方に延びて前記カウルクロスメンバの縦壁部の上端に固定される縦壁部とを備える樹脂製のカウルグリルと、後端が前記カウルパネルに固定されて前端が前記カウルグリルよりも下方のカウルクロスメンバの縦壁部に固定されて、カウルグリルの下方に配置される補強ブラケットとを備えるものである。
【0012】
上記構成によれば、補強ブラケットの前端と後端によって、カウルパネルとカウルクロスメンバを連結することになるため、オープンカウル構造となったカウルボックスの前端と後端を補強ブラケットで繋ぐことでカウルボックスを一部閉断面構造に構成することができる。また、この補強ブラケットがカウルグリルよりも下方に配置されるため、樹脂製のカウルグリルの縦壁部がボンネット後端の下方変位を受けて変形する際の挙動を阻害するおそれもない。
【0013】
このため、補強ブラケットによってカウルボックスの捩れ剛性を高めることができ、また、補強ブラケットを設けたとしても、樹脂製カウルグリルにおける衝撃緩和機能を確保することができる。
【0014】
なお、前述の「補強ブラケット」は、前後方向に延びてカウルボックスの前端と後端を連結するものであれば、どのような形状のものであってもよい。またカウルボックスに対しては、締結固定で固定されるものであっても、接合固定で固定されるものであってもよい。
【0015】
さらに、前述の「カウルグリル」は、ボンネット後端を支持して、ボンネット後端が下方に変位する場合に、容易に変形して、衝突体の衝撃を緩和できるものであれば、どのような構造であってもよい。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記補強ブラケットがワイパー装置を支持するワイパー支持ブラケットであるものである。
上記構成によれば、カウルボックスの捩れ剛性を高める補強ブラケットによって、ワイパー装置も支持することになる。
このため、ワイパー支持ブラケットを補強ブラケットで兼ねることができ、別途ワイパー装置のための支持ブラケットを設定する必要がなくなる。
よって、部品点数の削減が図れ、また、カウルボックス内の構造も簡略化することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記カウルクロスメンバの上端に固定されて後方に延びる水平面部と、該水平面部の後端から下方に延びてカウルクロスメンバの横壁部に固定される縦壁部とを有し、該カウルクロスメンバとの間で第一閉断面を形成するカウルクロスレインフォースメントを備え、該カウルクロスレインフォースメントの水平面部に、前記補強ブラケットの前端を締結固定したものである。
上記構成によれば、補強ブラケットの前端を、第一閉断面を形成するカウルクロスレインフォースメントの水平面部に、締結固定することになる。
このため、補強ブラケットの締結作業の際に、カウルクロスレインフォースメントの水平面部を利用して締結できるため、補強ブラケットの締結作業が容易になり、カウルボックスへの組付け作業が容易になる。
また、第一閉断面を形成するカウルクロスレインフォースメントに補強ブラケットを締結固定することで、カウルボックスの強固な部分に補強ブラケットを固定するため、さらにカウルボックスの捩れ剛性を高めることができる。
よって、補強ブラケットの組付け作業性を向上することができつつも、カウルボックスの捩れ剛性を、さらに高めることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記カウルパネルの上部に上端が固定されてカウルパネルの下部に下端が固定されて、該カウルパネルとの間で第二閉断面を形成するダッシュアッパーパネルを備え、前記補強ブラケットを、前記第一閉断面と第二閉断面を前後方向に架渡すように固定したものである。
上記構成によれば、補強ブラケットによって、ダッシュアッパーパネルで形成される第二閉断面と、前述の第一閉断面とが連結されることになる。
このため、カウルボックスの前後位置でそれぞれ車幅方向に延びる第一閉断面と第二閉断面とが前後方向に延びる補強ブラケットによって連結されることになり、カウルボックス前後位置の車幅方向に延びる強固な閉断面同士が前後方向に延びる補強ブラケットを介して一体となり、よりカウルボックスの捩れ剛性を高めることができる。
よって、さらにカウルボックスの捩れ剛性を高めることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記補強ブラケットが、車両前後方向且つ略水平方向に延びる水平壁部と、該水平壁部の中央位置で上方に突出して車両前後方向に延びる突出部とを備えたものである。
上記構成によれば、補強ブラケットが水平壁部と突出部を備えることで、横断面形状を略ハット状として構成することになる。
このため、補強ブラケット自体の捩れ剛性を高めることができ、補強ブラケット自体を大きくしなくても、カウルボックスの捩れ剛性を向上できる。
よって、補強ブラケットのカウルボックス上部での占有領域を少なくしつつも、カウルボックスの捩れ剛性を向上でき、オープンカウル構造の衝撃緩和機能も十分に確保することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、補強ブラケットの前記突出部に、雨水を水平壁部に導く案内部を形成し、該水平壁部に第一排水穴を形成したものである。
上記構成によれば、補強ブラケットの上面に流れる雨水を、案内部によって水平壁部に案内して、その雨水を第一排水穴から下方に排水することになる。
このため、補強ブラケットを設けたことで、フロントウインドウガラス等からエンジンルーム内に流れ込みやすくなった雨水を、第一排水穴で補強ブラケット下方に排水でき、エンジンルーム側に流れ込まないようにすることができる。
よって、車体の捩れ剛性向上のためにカウルボックス上部に補強ブラケットを設けたとしても、エンジンルーム内に雨水が流れ込まないため、エンジンルーム内の防水性を高めることができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、前記案内部を、車両後方側のフロントウインドウガラスから流れ落ちる雨水を受ける傾斜面部と、該傾斜面部の下方で該雨水を左右に分岐する突起部と、該突起部の車両前方側の車幅方向側部で分岐した雨水を前記水平壁部に導く溝部と、で構成したものである。
上記構成によれば、フロントウインドウガラスから補強ブラケットの突出部上に流れる雨水を傾斜面部で受けて、雨水の流れを確実に前方に導き、その雨水の流れを利用して、突起部で雨水を左右に分岐させ、その分岐した雨水を溝部で水平壁部に案内することになる。
このため、補強ブラケットの突出部上に流れる雨水を、その流れを利用して効率的に左右に分岐して、その分岐した雨水を水平壁部に案内して排水することができる。
よって、補強ブラケットの突出部の排水性を、雨水の流れを利用して確実且つ効率的に高めることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記突出部の案内部の車両前方側に、第二排水穴を形成したものである。
上記構成によれば、案内部から水平壁部に案内できずに車両前方側に流れてしまった雨水を、第二排水穴を利用して排水することができる。
よって、補強ブラケットの突出部上に残留する雨水を、より確実に補強ブラケットから排水することができ、エンジンルーム内の防水性を高めることができる。
【0023】
この発明の一実施形態においては、前記水平壁部の第一排水穴の車両前方側に、雨水の流れを堰き止める堰部を設けたものである。
上記構成によれば、第一排水穴から排水されずに車両前方側に流れてしまった雨水を、堰部で堰き止めることで、車両前方側に流れ落ちないようにできる。
よって、より確実に、エンジンルーム内への雨水の流れ込みを防ぐことができ、第一排水穴から雨水を排水することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、補強ブラケットによってカウルボックスの捩れ剛性を高めることができつつも、補強ブラケットをカウルグリルの下方に配置したため、樹脂製カウルグリルにおける衝撃緩和機能を確保することができる。
よって、フロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルボックスを備えた自動車の前部構造において、車体全体の捩れ剛性を高めつつも、車体に衝突する衝突体への衝撃値を低減して衝突体を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
まず、図1、図2により、本発明の第一実施形態の全体構造について説明する。図1は自動車の前部構造の斜視図、図2はカウルボックス部分の分解斜視図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の自動車Vの前部には、エンジンルームERの上方を覆うボンネット1と、ボンネット1前方で車幅方向に配置されるフロントバンパー2と、車体側部の外表面を構成するフロントフェンダー3と、ボンネット1後方で前傾配置されるフロントウインドウガラス4と、フロントウインドウガラス4の両側で前傾配置されるフロントピラー5とを備えている。
【0027】
このうち、ボンネット1後端の下方位置には、フロントウインドウガラス4の下端部を車幅方向に延びて支持するカウルボックス6を設置している。
【0028】
このカウルボックス6は、図2に示すように、エンジンルームERの後方位置で車幅方向に延びて、上部を開放したいわゆるオープンカウル構造の略樋形状のボックス体で構成している。このカウルボックス6の後部上端において、フロントウインドウガラス4の下端部4aを車幅方向にわたって支持している。なお、このカウルボックス6の詳細構造は後述する。
【0029】
このカウルボックス6の内部及び上方には、ワイパー装置7とカウルグリル8を装着している。
【0030】
ワイパー装置7は、ワイパーモータ71と、左右のワイパーリンク72,72と、左右のピボットアーム73,73と、左右のワイパーピボット74,74と、左右のピボットホルダーブラケット75,75と、連結フレーム76とを備えており、このうち、左右のワイパーピボット74,74の先端に排水キャップ77,77を装着するとともに、ワイパーアーム78,78を嵌合装着することで、ワイパー装置7を構成している。
【0031】
このワイパー装置7は、後述するワイパー支持ブラケット9と、右側のサイドブラケット10に対して、左右のピボットホルダーブラケット75,75をそれぞれ固定するとともに、カウルボックス6の前部内壁をなすカウルクロスレイン64(図4参照)に、ワイパーモータ71のワイパー取付けボス部79を嵌合固定することで、カウルボックス6に対して三点支持により固定している。
【0032】
カウルグリル8は、オープンカウル構造のカウルボックス6の上部を覆うように車幅方向に延びる合成樹脂製の硬質部材で構成している。このカウルグリル8には、カウルボックス6内へ外気を取り入れるため、車幅方向の左右両側位置にそれぞれ網状の開口部81,81を形成している。また、左右のワイパーピボット74,74の挿通のために、右側側部と中央部にそれぞれピボット開口部82,82を形成している。
【0033】
このカウルグリル8は、その前端をカウルボックス6の前端部に図示しないクリップ部材等で係止固定され、その後端部をフロントウインドウガラス4の下端部4aに当接するようにして設置している。
【0034】
カウルボックス6について、図3、図4、図5で説明する。図3はカウルボックス6の全体斜視図、図4はカウルボックス6の分解斜視図、図5は図3のA-A線矢視断面図である。
【0035】
このカウルボックス6は、図4に示すように、車幅方向に延びて車室側上壁部を構成する断面略J字状のダッシュアッパーパネル61と、このダッシュアッパーパネル61の前方側で車幅方向に延びる断面逆L字状のカウルパネル62と、車幅方向に延びてエンジンルーム側壁部を構成する断面略L字状のカウルクロスメンバ63と、このカウルクロスメンバ63の後方側で車幅方向に延びる断面略クランク状のカウルクロスレイン64と、車幅方向中央位置で前後方向に延びてカウルボックス6の前端部と後端部を連結するワイパー支持ブラケット9と、車幅方向両端位置で前後方向に延びてカウルボックス6の両側の前端と後端を連結する左右のサイドブラケット10,11と、によって構成している。
【0036】
これらの部材のうち、図3に示すように、ダッシュアッパーパネル61にカウルパネル62の上端フランジ62aと下端フランジ62bを接合することで、「ボックス後部6B」を構成して、カウルクロスメンバ63にカウルクロスレイン64の上端フランジ64aと下端フランジ64b(図5参照)を接合することにより、「ボックス前部6A」を構成している。また、左右のサイドブラケット10,11をそれぞれダッシュアッパーパネル61の前部上端61a,61aと、カウルパネル62の前面とに接合することで、ボックス後部6Bの剛性を高めている。
【0037】
この実施形態では、エンジンルームER内のメンテナンス作業のため、「ボックス前部6A」のみを車体から着脱できるように、ボックス前部6Aをボックス後部6Bに対して締結固定している。13…がボックス前部6Aを着脱自在に固定する締結ボルトである。
【0038】
カウルボックス6の上部の車幅方向中央位置には、前述したワイパー支持ブラケット9を備えている。このワイパー支持ブラケット9は、その中央位置に、前述のワイパー装置7の中央側のピボットホルダーブラケット75(図2参照)を締結固定する固定穴91を形成している。また、前端部と後端部にそれぞれ2つずつのボルト貫通穴92,92,93,93(図4参照)を形成して、前端部を固定ボルト14,14でボックス前部6Aのカウルクロスレイン64に締結固定して、後端部を固定ボルト14,14でボックス後部6Bのカウルパネル62に締結固定している(図3参照)。
【0039】
ワイパー支持ブラケット9を固定した部分におけるカウルボックス6の断面構造は、図5に示すように構成している。
「ボックス後部6B」を構成するカウルパネル62とダッシュアッパーパネル61は、まず、カウルパネル62が、上端でフロントウインドウガラス4を支持する支持部62cと、その後方に水平方向に延びる上端フランジ62aと、支持部62cから下方に延び途中にブラケット座部62dを形成した縦壁部62eと、その下端で前方に水平方向に延びる下端フランジ62bとを有しており、また、ダッシュアッパーパネル61が、水平方向に延びる上部面61aと、その前端から下方に延びる縦壁面61bと、水平方向に延びる下部面61cとを有している。
そして、カウルパネル62の上端フランジ62aをダッシュアッパーパネル61の上部面61aに接合するとともに、カウルパネル62の下端フランジ62bをダッシュアッパーパネル61の下部面61cに接合することで、カウルパネル62とダッシュアッパーパネル61との間で車幅方向に延びる「第二閉断面β」を構成している。
【0040】
また、「ボックス前部6A」を構成するカウルクロスメンバ63とカウルクロスレイン64は、カウルクロスメンバ63が、前端で水平方向に延びる上部面63aと、その後端から下方に延びる縦壁面63bと、その下端で後方に水平方向に延びる下部面63cとを有しており、また、カウルクロスレイン64が、前端で水平方向に延びる上端フランジ64aと、そのまま後方に水平方向に延びるブラケット支持部64cと、その後端から下方に延びる縦壁部64dと、その下端から後方に延びる下端フランジ64bとを有している。
そして、カウルクロスレイン64の上端フランジ64aをカウルクロスメンバ63の上部面63aに接合するとともに、下端フランジ64bをカウルクロスメンバ63の下部面63cに接合することで、カウルクロスレイン64とカウルクロスレイン64との間で車幅方向に延びる「第一閉断面α」を構成している。
【0041】
こうして構成した第一閉断面αと第二閉断面βを、車両前後方向に延びるワイパー支持ブラケット9で連結固定している。すなわち、ワイパー支持ブラケット9の前端部9aを、カウルクロスレイン64のブラケット支持部64cに固定ボルト14とウェルドナット15で締結固定して、ワイパー支持ブラケット9の後端部9bを、カウルパネル62のブラケット座部62dに固定ボルト14とウェルドナット15で締結固定することで、カウルボックス6の前後位置に設けた車幅方向に延びる第一閉断面αと第二閉断面βを、車両前後方向に延びるワイパー支持ブラケット9で連結固定しているのである。
【0042】
また、ダッシュアッパーパネル61の下部面61cの下部には、車室CRとエンジンルームERを仕切る縦壁のダッシュロアパネル16を接合している。
【0043】
ところで、このダッシュロアパネル16の接合部16aの上方には、ボックス後部6Bとボックス前部6Aの「合わせ面CF」を設定している。この「合わせ面CF」であるカウルパネル62の下端フランジ62bとカウルクロスメンバ63の下部面63cとの間には、シール材17を介装することにより、この合わせ面CFからエンジンルームER内にカウルボックス6内の雨水等が漏れないように構成している。
【0044】
また、カウルボックス6の上方には、支持部62cに差込ピン41を介して支持されるフロントウインドウガラス4を設置して、その前方には、前述したカウルグリル8を設置している。
【0045】
このカウルグリル8は、前端部に車両前方且つ上方側に突出するボンネット受け部81を設けることで、カウルボックス6の前端6A1よりも比較的高い位置でボンネット後端1aを支持している。また、ボンネット受け部81の下方には、上下方向に延びる縦壁部82を設け、この縦壁部82の上下方向中間位置にノッチ部83を形成している。このノッチ部83を形成したことにより、ボンネット1が上方から荷重を受けた際に、合成樹脂製としたこととも相俟って、縦壁部82が折り曲がり易くなっている。
なお、この折れ曲がり構造は、例えば、車幅方向に延びる長穴等を形成することで、縦壁部82を脆弱にして縦壁部82を座屈するように構成してもよいし、ビート等を設けて、座屈するように構成してもよい。
【0046】
また、このカウルグリル8には、前後方向に略水平方向に延びるカバー部84を設け、その前部に、上方に突出する隆起部85を形成している。この隆起部85は、その後方のカバー部上面を雨水の樋として機能させるとともに、ボンネット1後方からの見栄えを向上する「目隠し」としても機能している。
【0047】
また、このカウルグリル8の下方には、前述したピボットホルダーブラケット75と排水キャップ77を、それぞれ車幅方向に延びるように設置している。
【0048】
次にワイパー支持ブラケット9について、図6、図7、図8で詳述する。図6はワイパー支持ブラケット9の単品斜視図、図7はワイパー支持ブラケット9の平面図、図8は図7の各線の横断面の断面図であり、B−B線,C−C線,D−D線,E−E線の各断面図である。
【0049】
ワイパー支持ブラケット9は、図6に示すように、車両前後方向に延びる略ハット断面の金属板で構成しており、中央位置には上方に突出する突出部21を設け、その両側位置には前後方向に延びる水平壁部22,23を設け、さらにその両側端には上方に立ち上がる側壁部24,25を設けている。また各部の後方側には上方に反るような形で傾斜する傾斜領域21a,22a,23aを形成している。
【0050】
このワイパー支持ブラケット9は、その水平壁部22,23の前端部と後端部に、それぞれ前述の固定ボルト14…を挿通するボルト穴92,92,93,93を4つ形成して、また、突出部21の後方の傾斜領域21aに、前述のピボットホルダーブラケット75の固定穴91を形成している。
【0051】
さらに、突出部21の中央には、横長楕円形状の中央排水穴26を形成し、さらにその前方には、円形の前部排水穴27を形成している。加えて左右両側の水平壁部22,23の中央には、円形の左側排水穴28と右側排水穴29をそれぞれ形成している。
【0052】
そして、ワイパー支持ブラケット9の突出部21には、その傾斜領域21aの下部に略菱形錐状に上方に隆起する分岐突起30を形成し、その前方の両側側方には突出部21の稜線から横方向に窪んだ溝凹部31,31を形成している。また、ワイパー支持ブラケット9の水平壁部22,23のボルト穴92,92の後方位置には、左右それぞれ一段高く隆起した堰部32,32を形成している。
【0053】
図8の断面図に示すように、ワイパー支持ブラケット9は、中央の突出部21と両側の水平壁部22,23と両側端の側壁部24,25とを有し、突出部21の上面に上方に突出する分岐突起30を形成し、突出部21の側面に内方に窪む溝凹部31,31を形成している。そして、突出部21の上面には、中央排水穴26を形成し、水平壁部22,23には、左側排水穴28と右側排水穴29を形成している。
【0054】
このようにして、中央の突出部21と両側の水平壁部22,23に、分岐突起30と溝凹部31,31と複数の排水穴26,27,28,29を形成することで、フロントウインドウガラス4等からワイパー支持ブラケット9の上面に流れ込む雨水を、カウルボックス6内に排水するように構成している。
【0055】
以上のように、本実施形態では、上方を開放したいわゆるオープンカウル構造のカウルボックス6において、その車幅方向中央の上方位置で、カウルボックス6の前端と後端を架渡すように前後方向に延びるワイパー支持ブラケット9を設けていることから(図3参照)、図示するように、カウルボックス6の車幅方向両端から捩れ方向の荷重が入力された場合でも、ワイパー支持ブラケット9の取付け部分で、閉断面γ(図5参照)を構成しているため、カウルボックス6の捩れ剛性を高めることができる。このようにカウルボックス6自体の捩れ剛性を高めていることにより、車体捩れ剛性も高めることができるのである。
【0056】
また、ワイパー支持ブラケット9も、前述のように断面略ハット形状に形成しているため、ブラケット自体の捩れ剛性も高く、カウルボックス6の車幅方向全域に設定することなく、車幅方向中央の一部分に設置するだけで、カウルボックス6の捩れ剛性を飛躍的に高めることができる。
【0057】
もっとも、このようにワイパー支持ブラケット9を設けた場合には、カウルボックス6付近に干渉する衝突体の衝撃を、カウルボックス6が緩和できなくなるおそれがある。特に、合成樹脂製のカウルグリル8の前端でボンネット後端1aを支持して衝突体の衝撃を緩和するように構成した衝撃緩和機能を阻害するおそれがある。
【0058】
そこで、本実施形態では、前述のカウルグリル8を高い位置に設置して、その下方位置にワイパー支持ブラケット9を設置することで、カウルグリル8の変形挙動にワイパー支持ブラケット9が影響を与えないように構成している。
図9のカウルグリル8等の変形模式図で、本実施形態のカウルグリル8の変形挙動を説明する。(a)が衝突後0ms(ミリ秒、以下、同様)を示した図、(b)が衝突後6msを示した図、(c)衝突後12msを示した図である。なお、Xはボンネット後端1aに衝突する衝突体である。各図の構成要素は、図5と同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0059】
まず、(a)に示すように、衝突体Xがボンネット後端1aに衝突してくると、そのボンネット後端1aを支持しているボンネット受け部81に下向きの荷重Fが作用する。このとき、ボンネット受け部81が前方且つ上方に位置していることで、カウルグリル8前端には、下方側へ落ち込むような荷重が作用する。
【0060】
その後、(b)に示すように、縦壁部82のノッチ部83が「きっかけ」となって、縦壁部82に逆くの字状の折り曲げ変形が生じる。これにより、ボンネット後端1aが拘束されることなく、下方に変位することになる。また、ボンネット後端1aの形状も、衝突体Xの衝突により閉断面が潰れる変形が生じる。
【0061】
さらに、時間が経過すると、(c)に示すように、縦壁部82には、大きく折れ曲げ変形が生じて、ボンネット後端1aが大きく下方に変位することになる。こうして、カウルグリル8が変形することにより、ボンネット1に衝突する衝突体Xに生じる衝撃を緩和することができる。
【0062】
このように、カウルグリル8が変形している間において、ワイパー支持ブラケット9は、カウルグリル8の変形挙動を阻害することがなく、カウルグリル8の衝撃緩和機能を阻害しない。
【0063】
これは、ワイパー支持ブラケット9を、カウルグリル8の下方位置、具体的には、(a)に示すように、カウルグリル8の縦壁部82下端とカバー部84後端との間を繋ぐ仮想線Lよりも下方位置に設置していることから、カウルグリル8の変形挙動を阻害しないのである。
【0064】
次に、ワイパー支持ブラケット9の上面を流れる雨水の流れについて、図10のワイパー支持ブラケット9の雨水流動説明図により説明する。なお、図6と同一の符号を付すことで、ワイパー支持ブラケット9の各部要素の説明は省略する。
まず、(1)に示すように、後方のフロントウインドウガラス4(図2参照)から流れ落ちる雨水Wは、突出部21の後部の傾斜領域21aに流れ落ち、傾斜領域21aに沿って車両前方下方側に流れ落ちる。そして、(2)に示すように、雨水Wは分岐突起30によって左右に分岐される。この分岐によって、雨水Wは、(3)に示すように、溝凹部31,31に案内されて、突出部21から水平壁部22,23に流れ落ちる。なお、この分岐突起30で分岐されても溝凹部31,31に案内されずに突出部21上面に残留する雨水Wはその前方に位置する中央排水穴26、さらには前部排水穴27から下方に排出される。
【0065】
こうして、水平壁部22,23に流れ落ちた雨水は、(4)に示すように、左側排水穴28及び右側排水穴29から下方に排水される。そして、この左側排水穴28及び右側排水穴29には、(5)に示すように、水平壁部22,23の後方の傾斜領域から流れ込む雨水も同時に排水する。そして、この左側排水穴28及び右側排水穴29を一旦通り過ぎた雨水Wも、(6)に示すように、堰部32で堰き止められることにより、再度後方に流れて左側排水穴28及び右側排水穴29から下方に排水されることになる。
【0066】
このようして、ワイパー支持ブラケット9の上面を流れる雨水は、全て、ワイパー支持ブラケット9の上面から下方に排水されることになる。
【0067】
よって、ワイパー支持ブラケット9をカウルボックス6上部に車両前後方向に延びるように設置したとしても、ワイパー支持ブラケット9の上面に沿って、雨水がエンジンルームER側に流れ落ちるのを防止することができるのである。
【0068】
次に、本実施形態の作用効果について、詳述する。
この実施形態の自動車の前部構造は、図5に示すように、車幅方向にわたって形成されて、下部がダッシュロアパネル16に接合されて支持部62cでフロントウインドウガラス4の下端部4aを支持するカウルパネル62と、そのカウルパネル62の下部から車両前方側に延びる下部面63cとその下部面63cの前端から上方に延びる縦壁面63bとを備えるカウルクロスメンバ63と、フロントウインドウガラス4の下端部4aに当接して車両前方側に延びるカバー部84とそのカバー部84の前端から下方に延びてカウルクロスメンバ63の上部面63にクリップ部材等(図示せず)によって固定される縦壁部82とを備える合成樹脂製のカウルグリル8と、後端がカウルパネル62に固定されて前端がカウルグリル8よりも下方のカウルクロスメンバ63等に固定されてカウルグリル8の下方に位置して前後方向に延びるワイパー支持ブラケット9とを備えている。
【0069】
これにより、ワイパー支持ブラケット9の前端9aと後端9bによって、カウルパネル62とカウルクロスメンバ63を連結することになるため、オープンカウル構造となったカウルボックス6の前端と後端をワイパー支持ブラケット9で繋ぐことでカウルボックスを一部、閉断面構造(閉断面γ)に構成することができる。また、このワイパー支持ブラケット9がカウルグリル8よりも下方に配置されるため、合成樹脂製のカウルグリル8の縦壁部がボンネット後端1aの下方変位を受けて変形する際の挙動を阻害するおそれもない。
【0070】
このため、ワイパー支持ブラケット9によってカウルボックス6の捩れ剛性を高めることができ、また、ワイパー支持ブラケット9を設けたとしても、樹脂製のカウルグリル8における衝撃緩和機能を確保することができる。
【0071】
よって、フロントウインドウガラス4の下端部4aを支持するカウルボックス6を備えた自動車の前部構造において、車体全体の捩れ剛性を高めつつも、車体に衝突する衝突体への衝撃値を低減して衝突体を保護することができる。
【0072】
なお、このワイパー支持ブラケット9の代わりに、単に、前後方向に延びてカウルボックス6の前端と後端を連結する連結ブラケットを設置してもよい。この場合も、カウルボックス6の捩れ剛性を高めることができ、同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、ワイパー支持ブラケット9は、この実施形態のようにカウルボックス6に対して締結固定でなく、溶接固定で固定するように構成してもよい。
【0074】
さらに、カウルグリル8の構造も、この実施形態の構造に限定されるものではなく、ボンネット後端1aを支持してボンネット後端1aが下方に変位する際に、容易に変形するものであれば、どのような構造のものであってもよい。
【0075】
また、この実施形態では、ワイパー支持ブラケット9というワイパー装置7を支持するブラケットでカウルボックス6の前端と後端を連結している。
これにより、カウルボックス6の捩れ剛性を高めるブラケット機能を、ワイパー装置7を支持するワイパー支持ブラケット9で兼ねさせることができる。
よって、部品点数の削減が図れ、また、カウルボックス6内の構造も簡略化することができる。
【0076】
また、この実施形態では、カウルクロスメンバ63の上部面に固定されて後方に水平方向に延びるブラケット支持部64cと、そのブラケット支持部64cの後端から下方に延びてカウルクロスメンバ63の下部面63cに固定される縦壁部64dとを有し、そのカウルクロスメンバ63との間で第一閉断面αを形成するカウルクロスレイン64を備え、そのカウルクロスレイン64のブラケット支持部64cに、ワイパー支持ブラケット9の前端部9aを締結固定している。
これにより、ワイパー支持ブラケット9の前端部9aを、第一閉断面αを形成するカウルクロスレイン64の水平方向に延びるブラケット支持部64cに、締結固定することになる。
このため、ワイパー支持ブラケット9の締結作業の際に、カウルクロスレイン64の水平方向に延びるブラケット支持部64cを利用して締結できるため、ワイパー支持ブラケット9の締結作業が容易になり、カウルボックス6への組付け作業が容易になる。
また、第一閉断面αを形成するカウルクロスレイン64にワイパー支持ブラケット9を締結固定することで、カウルボックス6の強固な部分にワイパー支持ブラケット9を固定するため、さらにカウルボックス6の捩れ剛性を高めることができる。
よって、ワイパー支持ブラケット9の組付け作業性を向上することができつつも、カウルボックス6の捩れ剛性を、さらに高めることができる。
【0077】
また、この実施形態では、カウルパネル62の上端フランジ62aに上部面61aが接合固定されてカウルパネル62の下端フランジ62bに下部面61cが接合固定されることで、カウルパネル62との間で第二閉断面βを形成するダッシュアッパーパネル61を備え、ワイパー支持ブラケット9を、第一閉断面αと第二閉断面βを車両前後方向で架渡すように締結固定している。
これにより、ワイパー支持ブラケット9によって、ダッシュアッパーパネル61で形成される第二閉断面βと、カウルクロスレイン64フォースメントで形成される第一閉断面αとが連結されることになる。
このため、カウルボックス6の前後位置でそれぞれ車幅方向に延びる第一閉断面αと第二閉断面βとが前後方向に延びるワイパー支持ブラケット9によって連結されることになり、カウルボックス6前後位置の車幅方向に延びる強固な閉断面同士(α、β)が前後方向に延びるワイパー支持ブラケット9を介して一体となり、よりカウルボックス6の捩れ剛性を高めることができる。
よって、さらにカウルボックス6の捩れ剛性を高めることができる。
【0078】
また、この実施形態では、ワイパー支持ブラケット9が、車両前後方向且つ略水平方向に延びる水平壁部22,23と、その水平壁部22,23の中央位置で上方に突出して車両前後方向に延びる突出部21とを備えている。
これにより、ワイパー支持ブラケット9が、横断面形状を略ハット状として構成されることになる。
このため、ワイパー支持ブラケット9自体の捩れ剛性を高めることができ、ワイパー支持ブラケット9自体を大きくしなくても、カウルボックス6の捩れ剛性を向上できる。
よって、ワイパー支持ブラケット9のカウルボックス6上部での占有領域を少なくしつつも、カウルボックス6の捩れ剛性を向上でき、オープンカウル構造の衝撃緩和機能も十分に確保することができる。
【0079】
また、この実施形態では、ワイパー支持ブラケット9の突出部21に、雨水を水平壁部22,23に導く分岐突起30と溝凹部31,31を形成し、水平壁部22,23に左側排水穴28と右側排水穴29を形成している。
これにより、ワイパー支持ブラケット9の上面に流れる雨水を、分岐突起30と溝凹部31,31によって水平壁部22,23に案内して、その雨水を左側排水穴28と右側排水穴29からワイパー支持ブラケット9下方に排水することになる。
このため、ワイパー支持ブラケット9を設けたことでフロントウインドウガラス4等からエンジンルームER内に流れ込みやすくなった雨水を、左側排水穴28と右側排水穴29でワイパー支持ブラケット9下方に排水でき、エンジンルームER側に流れ込まないようにすることができる。
よって、車体の捩れ剛性向上のためにカウルボックス6上部にワイパー支持ブラケット9を設けたとしても、エンジンルームER内に雨水が流れ込まないため、エンジンルームER内の防水性を高めることができる。
【0080】
また、この実施形態では、突出部21にフロントウインドウガラス4から流れ落ちる雨水を受ける傾斜領域21aを設け、その傾斜領域21aの下方に分岐突起30と溝凹部31,31を設けて雨水を水平壁部22,23に案内するように構成している。
これにより、フロントウインドウガラス4からワイパー支持ブラケット9に流れ落ちる雨水を傾斜領域21aで受けて、その雨水の流れを確実に前方に導き、その雨水の流れを利用して、分岐突起30で雨水を左右に分岐させ、その分岐した雨水を溝凹部31,31で水平壁部22,23に案内することになる。
このため、ワイパー支持ブラケット9の突出部21上に流れる雨水を、その流れを利用して効率的に左右に分岐して、その分岐した雨水を水平壁部22,23に案内して排水することができる。
よって、ワイパー支持ブラケット9の突出部21の排水性を、雨水の流れを利用して確実且つ効率的に高めることができる。
【0081】
また、この実施形態では、突出部21の分岐突起30と溝凹部31,31の車両前方側に、中央排水穴26を形成している。
これにより、突出部21の分岐突起30と溝凹部31,31で水平壁部22,23に案内できずに車両前方側に流れてしまった雨水を、中央排水穴26を利用して排水することができる。
よって、ワイパー支持ブラケット9の突出部21上に残留する雨水を、より確実にワイパー支持ブラケット9から下方に排水することができ、エンジンルームER内の防水性を高めることができる。
【0082】
また、この実施形態では、水平壁部22,23の左側排水穴28と右側排水穴29の車両前方側に、雨水の流れを堰き止める堰部32,32を設けている。
これにより、左側排水穴28と右側排水穴29から排水されずに車両前方側に流れてしまった雨水を、堰部32,32で堰き止めることで、車両前方側に流れ落ちないようにできる。
よって、より確実に、エンジンルームER内への雨水の流れ込みを防ぐことができ、左側排水穴28と右側排水穴29から雨水を排水することができる。
【0083】
さらに、この実施形態では、より確実にワイパー支持ブラケット9の排水性を高めるために、前部排水穴27を設けている。この前部排水穴27を設けたことで、中央排水穴26でも排水されなかった雨水がカウルボックス6内に排水されることになり、エンジンルームER内への雨水の浸入を防ぐことができる。
【0084】
次に、図11に示す第二実施形態について説明する。図11は、図3に対応するカウルボックス6の斜視図であり、同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
この第二実施形態は、連結ブラケット109、109を左右に二つ設けて、カウルボックス6の前端と後端をそれぞれ締結固定したものである。
【0086】
このように、連結ブラケット109,109を二つ設けて、カウルボックス6の前端と後端を連結することで、前述の第一実施形態よりも、カウルボックス6の捩れ剛性を高めることができる。
【0087】
すなわち、カウルボックス6の上部に連結ブラケット109,109を二つ、それも車幅方向左右に離間して設置することにより、カウルボックス6の第一閉断面αと第二閉断面β(図5参照)、さらには左側の連結ブラケット109と右側の連結ブラケット109によって、平面視で「井型」形状を構成することができる。このため、カウルボックス6の捩れ剛性を極めて高めることができるのである。
【0088】
なお、この実施形態の連結ブラケット109は、第一実施形態のワイパー支持ブラケット9と同様の形状としたが、必ずしも、この形状に限定されるものではなく、例えば、平板状のブラケットやメンバー状のブラケット等であってもよい。
その他の作用効果については、前述の第一実施形態と同様である。
【0089】
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の補強ブラケットは、ワイパー支持ブラケット9、連結ブラケット109に対応し、
以下、同様に、
カウルクロスレインフォースメントは、カウルクロスレイン64に対応し、
案内部は、傾斜領域21a、分岐突起30、溝凹部31に対応し、
第一排水穴は、左側排水穴28、右側排水穴29に対応し、
傾斜面部は、傾斜領域21aに対応し、
突起部は、分岐突起30に対応し、
溝部は、溝凹部31に対応し、
第二排水穴は、中央排水穴26に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる自動車の前部構造に適用する実施形態を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第一実施形態の自動車の前部構造の斜視図。
【図2】カウルボックス部分の分解斜視図。
【図3】カウルボックスの全体斜視図。
【図4】カウルボックスの分解斜視図。
【図5】図3のA-A線矢視断面図。
【図6】ワイパー支持ブラケットの単品斜視図。
【図7】ワイパー支持ブラケットの平面図。
【図8】図7のB−B線,C−C線,D−D線,E−E線の各矢視断面図。
【図9】カウルグリル等の変形模式図。
【図10】ワイパー支持ブラケットの雨水流動説明図。
【図11】第二実施形態のカウルボックスの全体斜視図。
【符号の説明】
【0091】
1…ボンネット
4…フロントウインドウガラス
6…カウルボックス
8…カウルグリル
9…ワイパー支持ブラケット
61…ダッシュアッパーパネル
62…カウルパネル
63…カウルクロスメンバ
64…カウルクロスレイン
109…連結ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の前部構造であって、
車幅方向にわたって形成されて、下部がダッシュロアパネルに接合されて上部でフロントウインドウガラスの下端部を支持するカウルパネルと、
該カウルパネルの下部から車両前方側に延びる横壁部と該横壁部の前端から上方に延びる縦壁部とを備えるカウルクロスメンバと、
前記フロントウインドウガラスの下端部に当接する当接部から車両前方側に延びる横壁部と該横壁部の前端から下方に延びて前記カウルクロスメンバの縦壁部の上端に固定される縦壁部とを備える樹脂製のカウルグリルと、
後端が前記カウルパネルに固定されて前端が前記カウルグリルよりも下方のカウルクロスメンバの縦壁部に固定されて、カウルグリルの下方に配置される補強ブラケットとを備える
自動車の前部構造。
【請求項2】
前記補強ブラケットがワイパー装置を支持するワイパー支持ブラケットである
請求項1記載の自動車の前部構造。
【請求項3】
前記カウルクロスメンバの上端に固定されて後方に延びる水平面部と、該水平面部の後端から下方に延びてカウルクロスメンバの横壁部に固定される縦壁部とを有し、該カウルクロスメンバとの間で第一閉断面を形成するカウルクロスレインフォースメントを備え、
該カウルクロスレインフォースメントの水平面部に、前記補強ブラケットの前端を締結固定した
請求項1又は2記載の自動車の前部構造。
【請求項4】
前記カウルパネルの上部に上端が固定されてカウルパネルの下部に下端が固定されて、該カウルパネルとの間で第二閉断面を形成するダッシュアッパーパネルを備え、
前記補強ブラケットを、前記第一閉断面と第二閉断面を前後方向に架渡すように固定した
請求項3記載の自動車の前部構造。
【請求項5】
前記補強ブラケットが、車両前後方向且つ略水平方向に延びる水平壁部と、
該水平壁部の中央位置で上方に突出して車両前後方向に延びる突出部とを備えた
請求項1〜4いずれか記載の自動車の前部構造。
【請求項6】
補強ブラケットの前記突出部に、雨水を水平壁部に導く案内部を形成し、
該水平壁部に第一排水穴を形成した
請求項5記載の自動車の前部構造。
【請求項7】
前記案内部を、車両後方側のフロントウインドウガラスから流れ落ちる雨水を受ける傾斜面部と、
該傾斜面部の下方で該雨水を左右に分岐する突起部と、
該突起部の車両前方側の車幅方向側部で分岐した雨水を前記水平壁部に導く溝部と、で構成した
請求項6記載の自動車の前部構造。
【請求項8】
前記突出部の案内部の車両前方側に、第二排水穴を形成した
請求項6又7記載の自動車の前部構造。
【請求項9】
前記水平壁部の第一排水穴の車両前方側に、雨水の流れを堰き止める堰部を設けた
請求項5〜8いずれか記載の自動車の前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−320464(P2007−320464A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154246(P2006−154246)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】