説明

自動車の前部構造

【課題】ヘッドランプユニットの光軸調整部に対する工具のアクセス動作を簡単な構成でより確実に案内できるようにする。
【解決手段】ヘッドランプユニット3の光軸を調整するための光軸調整部29がフェンダパネル1の下方に配設されるとともに、上記光軸調整部29に対する調整操作がエンジンルーム側から工具Tを介して行われるように構成された自動車の前部構造において、上記ヘッドランプユニット3に対し車幅方向内側に離間したエンジンルーム内の特定部位に、車幅方向に所定の幅を有した車両用部品としてのサブタンク17を配設するとともに、このサブタンク17の外壁面のうち車幅方向外端寄りの領域を、上記光軸調整部29に接近する上記工具Tの軌道に沿った傾斜面部41とし、この傾斜面部41の一部を含んでなる工具用ガイド部43により、上記光軸調整部29に対する工具Tのアクセス動作が案内されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプユニットの光軸を調整するための光軸調整部が、エンジンルームの側辺部に沿って延びるフェンダパネルの下方に配設されるとともに、上記光軸調整部に対する調整操作がエンジンルーム側から工具を介して行われるように構成された自動車の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、エンジンルームにブラケットを介してインバータが取り付けられた車両において、上記エンジンルームの内側に、ヘッドランプユニットの光軸を調整するための光軸調整部を設けるとともに、上記インバータ取付用のブラケットに、上記光軸調整部に対しその調整用の工具(例えばドライバー)をアクセス可能とするための開口部を設けることが行われている。
【0003】
この特許文献1に開示された技術によれば、上記ブラケットの下方等に上記光軸調整部が隠れるような状況下でも、上記ブラケットに設けられた開口部を通じて上記工具を光軸調整部に接近させることができるため、上記ヘッドランプの光軸調整を容易に行えるという利点がある。
【特許文献1】特開2004−231115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、一般にプレス加工等によって成形される薄板状のブラケットに開口部が設けられ、この開口部を通じて上記光軸調整部に対する工具のアクセスがなされる構成であるため、この工具を上記光軸調整部まで確実に接近させることが困難になる場合があった。すなわち、上記光軸調整部の設置部からある程度距離が離れた位置に上記開口部が設けられている場合には、上記工具を当該開口部に挿入しつつ上記光軸調整部まで接近させようしたときに、上記開口部の内壁面と工具との隙間等に起因して工具の向きが充分な精度で定まらず、この工具の先端部を上記光軸調整に確実に到達させることができないおそれがあった。
【0005】
もちろん、例えば上記開口部が設けられる部分のブラケットの厚みを厚くするとともに、この厚板部を貫通するように設けられる上記開口部の内壁面を上記工具の軌道に沿ったものとすることにより、上記工具が光軸調整部まで確実に案内されるように構成することも可能であるが、そのためには上記厚板部の厚みをかなり厚くする必要があり、上記ブラケットの重量の増大やコストアップ等を招く結果となる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ヘッドランプユニットの光軸調整部に対する工具のアクセス動作を簡単な構成でより確実に案内することが可能な自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、ヘッドランプユニットの光軸を調整するための光軸調整部が、エンジンルームの側辺部に沿って延びるフェンダパネルの下方に配設されるとともに、上記光軸調整部に対する調整操作がエンジンルーム側から工具を介して行われるように構成された自動車の前部構造であって、上記ヘッドランプユニットに対し車幅方向内側に離間したエンジンルーム内の特定部位に、車幅方向に所定の幅を有した車両用部品が配設されるとともに、上記車両用部品の外壁面のうち車幅方向外端寄りの領域が、上記光軸調整部に接近する上記工具の軌道に沿った傾斜面部とされ、この傾斜面部の一部を含んでなる工具用ガイド部により、上記光軸調整部に対する工具のアクセス動作が案内されるように構成されたことを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、車幅方向に所定の幅を有した車両用部品の外壁面の一領域を、光軸調整部に接近する工具の軌道に沿った傾斜面部とし、この傾斜面部の一部を含んでなる工具用ガイド部により、上記工具のアクセス動作が案内されるように構成したため、従来のように板状のブラケットに工具用の開口部を設けただけの構成と異なり、上記工具の軌道を上記傾斜面部に沿ったより安定した軌道に維持することができ、フェンダパネルの下方にかくれるように配置される上記光軸調整部に上記工具の先端部が確実に到達するように工具を案内することができる。しかも、上記サブタンクの外壁面に形成された傾斜面部を利用した簡単な構成で、上記工具のアクセス動作を案内するようにしたため、部品重量の増大やコストアップ等の問題が生じるのを有効に回避しながら上記ヘッドランプユニットの光軸調整をより容易化できるという利点がある。
【0009】
上記工具用ガイド部は、上記車両用部品の傾斜面部の一部であって車体前後方向に所定の幅を有した底壁部と、この底壁部の前後端部から上方に突出して上記工具の車体前後方向の移動を規制する前後一対の縦壁部とを有することが好ましい(請求項2)。
【0010】
この構成によれば、工具用ガイド部の縦壁部によって上記工具の車体前後方向の移動を規制することにより、上記光軸調整部に対する工具のアクセス動作をより正確な精度で案内することができ、ヘッドランプユニットに対する光軸調整の作業性をより効果的に向上させることができるというという利点がある。
【0011】
この場合、上記工具用ガイド部が、上記一対の縦壁部の上端部どうしを連結する上壁部を有し、この上壁部によって上記工具の車幅方向外側への移動が規制されるように構成されていることがより好ましい(請求項3)。
【0012】
このようにすれば、上記工具用ガイド部の上壁部によって上記工具の車幅方向外側への移動を規制することができ、上記光軸調整部に対する工具のアクセス動作をさらに正確な精度で案内できるという利点がある。
【0013】
上記車両用部品が樹脂製である場合、上記工具用ガイド部はこの樹脂製の車両用部品と一体的に形成されていることが好ましい(請求項4)。
【0014】
このようにすれば、上記車両用部品と工具用ガイド部とを樹脂の一体成形によって同時に形成することができるため、上記工具用ガイド部を追設することによるコストの上昇を最小限に抑制できるという利点がある。
【0015】
また、上記構成においては、上記工具用ガイド部の前後一対の縦壁部どうしの間隔、または上記底壁部と上壁部との間隔が、上記工具の軸径よりも所定量大きく設定されるとともに、上記光軸調整部に、上記工具用ガイド部の設置部の方向に向かって延びる先拡がり状の誘い込み部が設けられていることが好ましい(請求項5)。
【0016】
このようにすれば、上記車両用部品の組み付け誤差等に起因して上記工具用ガイド部と光軸調整部との位置関係にある程度のずれが生じたような場合でも、上記光軸調整部に上記工具の先端部を確実に到達させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の自動車の前部構造によれば、ヘッドランプユニットの光軸調整部に対する工具のアクセス動作を簡単な構成でより確実に案内することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜図3は、本発明にかかる自動車の前部構造の一実施形態を示している。この自動車の前部構造は、車体前部(フロントボディ)の左右両側の外板面を構成する一対のフェンダパネル1,1と、車体の前端部の外板面を構成するバンパーフェース2と、上記各フェンダパネル1,1の前方に配設された左右一対のヘッドランプユニット3,3とを有している。なお、図1において符号4はボンネットフード、5はフロントグリルである。
【0019】
上記フェンダパネル1は、エンジンルームの側辺部に沿って車体の前後方向に延びるように設置され、その前方部に、上記ヘッドランプユニット3の上辺部に沿うような形状に形成された延出部1aを有している。この延出部1aの下方(裏面側)には、主に図3に示すように(図3ではフェンダパネル1は取り外されている)、シュラウド支持メンバ7が配設されており、このシュラウド支持メンバ7の前端部に、上記延出部1aの前端部がボルト締結等の手段によって固定されるようになっている。
【0020】
図2および図3に示すように、エンジンルームの前端部には、ラジエータ等からなる熱交換器(図示省略)を支持するためのシュラウドパネル11が設置されている。上記シュラウド支持メンバ7は、このシュラウドパネル11の上部側方を支持するものであり、エンジンルームの側辺部に沿って延びる強度部材としてのエプロンアッパメンバ13の前端部からヘッドランプユニット3の上部後方を通って車体の前方側に延びるように設置され、その前端部が上記シュラウドパネル11の上部側方にボルト締結等の手段によって固定されている。なお、図2および図3において符号15は、フロントサスペンションの上端部が取り付けられるフロントサスタワーである。
【0021】
上記シュラウド支持メンバ7近傍のエンジンルーム内には、上記熱交換器(図示省略)に用いられる冷却水を一時的に貯蔵するためのサブタンク17が、上記ヘッドランプユニット3に対し車幅方向内側に離間した状態で配設されている。このサブタンク17は、その前端部および後端部に取付辺部18,19を有しており、これら各取付辺部18,19が、上記シュラウド支持メンバ7およびフロントサスタワー15に対しボルト締結等の手段によって固定されることにより、エンジンルーム内においてこれら両部材7,15の間を橋渡すような状態で取り付けられている。なお、サブタンク17の外壁部の所定部位には、上記熱交換器から延びる配管20,21がそれぞれ接続されており、これら各配管20,21を介して、上記サブタンク17と熱交換器との間で冷却水が循環するようになっている。
【0022】
図4〜図6に示すように、上記サブタンク17は、アッパーケース39とロアケース40とを有した上下2分割構造とされ、その内部に上記冷却水を貯蔵するための貯蔵空間を有している。これらアッパーケース39およびロアケース40は、樹脂製の一体成形品によって構成されている。
【0023】
上記サブタンク17のアッパーケース39は、図3〜図6に示すように、その外壁面における車幅方向外端寄りの領域に、外端側に至るほど高さが低くなるように形成された傾斜面部41を有している。この傾斜面部41は、上記ヘッドランプユニット3の光軸調整用に設けられる後述する光軸調整部29の設置部に向かって斜め下方に延びており、エンジンルーム側から上記光軸調整部29に接近する工具T(図例ではドライバー)の軌道に沿うように形成されている。そして、上記アッパーケース39には、この傾斜面部41の一部を含んだ所定の壁部(詳細は後述する)からなるトンネル状の工具用ガイド部43が設けられており、上記光軸調整部29に接近する工具Tの軸部Taがこの工具用ガイド部43に挿入されることにより、上記光軸調整部29に対する工具Tのアクセス動作が案内されるようになっている。
【0024】
図8に示すように、上記ヘッドランプユニット3は、車体の前方側に開口する断面視コ字状のヘッドランプハウジング22と、このヘッドランプハウジング22の前方側に取り付けられたガラス製もしくは透明樹脂製のアウターレンズ23とを有している。上記ヘッドランプハウジング22の内部には、ハロゲン電球もしくはHIDバルブ等からなる発光バルブ24と、この発光バルブ24の周囲を取り囲むリフレクタ25とが配設されており、上記発光バルブ24からの光が上記リフレクタ25の内壁面で反射されつつ開口部26を通じて前方に照射されるようになっている。また上記リフレクタ25は、上記ヘッドランプハウジング23の内部に図略のピボット機構等を介して揺動自在に支持されている。
【0025】
このように構成されたヘッドランプユニット3は、上述したように、その光軸が光軸調整部29によって調整される。この光軸調整部29は、図3〜図6および図8に示すように、上記ヘッドランプハウジング22の後壁部から後方側に突出して上記フェンダパネル1およびシュラウド支持メンバ7の下方に位置するように配設されており、エンジンルーム内のサブタンク17側から延びる上記工具Tによって操作される。そして、光軸調整部29は、当該工具Tによる操作に応じて上記ヘッドランプユニット3のリフレクタ25を揺動変位させ、これによって上記ヘッドランプユニット3の光軸を上下もしくは左右に変化させるように構成されている。
【0026】
具体的に、上記光軸調整部29は、上記工具Tによって回転駆動される第1のかさ歯車31およびこれと連動可能に噛み合わされた第2のかさ歯車32等からなるギア機構と、このギア機構を収容するギアケース33と、上記第2のかさ歯車32の中心部に止着されてこれと一体に回転する回転軸35とを有している。なお図7では、第1のかさ歯車31を省略して示している。上記回転軸35は、ヘッドランプハウジング22の後壁部を貫通してその内部まで延びており、この回転軸35の回転に応じて進退駆動される図略のプッシュロッド等を介して上記リフレクタ25の特定部位を押し引きするように構成されている。そして、このようにリフレクタ25がプッシュロッドを介して駆動されることにより、このリフレクタ25が揺動変位してその開口部26の向きが上下もしくは左右に変化するようになっている。
【0027】
図4、図6、および図7に示すように、上記サブタンク17のアッパーケース39に設けられた上記工具用ガイド部43は、アッパーケース39に形成された上記傾斜面部41の一部であって車体前後方向に所定の幅を有した底壁部45と、この底壁部45の前後端部から上方に突出する前後一対の縦壁部46,46と、これら一対の縦壁部46,46の上端部どうしを連結する上壁部47とを有したトンネル状の部材からなり、これら各壁部45〜47によって囲まれた空間に上記工具Tの軸部Taが挿入されるようになっている。このような工具用ガイド部43は、樹脂成形品からなる上記アッパーケース39と一体的に形成されている。
【0028】
なお、上記工具用ガイド部43は、図6に示すように、上記各縦壁部46,46を延長するように形成された一対の延出部46a,46aを有している。これら一対の延出部46a,46aは、上面視でハ字形の先拡がり状に形成されて車幅方向の内方側へと延びており、上記各壁部45〜47によって囲まれた空間に上記工具Tを誘い込む役割を果たすように構成されている。
【0029】
上記工具Tは、その軸部Taが上記のように工具用ガイド部43に挿入されることにより、上記傾斜面部41に沿って一定の軌道を通りながら上記光軸調整部29にアクセスするように案内される。具体的に、上記工具用ガイド部43に挿入された工具Tは、その軸部Taの車体前後方向への移動が上記一対の縦壁部46,46によって規制されるとともに、上記軸部Taの車幅方向外側への移動が上記上壁部47によって規制されることにより、上記光軸調整部29に向かって一定の軌道を通るように案内される。
【0030】
ただし、図7に示すように、上記工具用ガイド部43における上記一対の縦壁部46,46どうしの間隔、および、上記底壁部45と上壁部47との間隔は、上記工具Tの軸部Taの軸径よりも所定量大きく設定されており、これら各壁部45〜47と上記軸部Taとの間にある程度の隙間が形成されるようになっている。したがって、上記各壁部45〜47に囲まれた空間内に上記軸部Taが挿入された状態においても、上記工具Tは径方向にある程度移動することが可能である。
【0031】
図4〜図6に示すように、上記光軸調整部29のギアケース33には、上記工具用ガイド部43の設置部の方向に向かって延びる先拡がり状の誘い込み部52が設けられている。具体的に、この誘い込み部52は、上記ギアケース33の内部に連通する孔を有しており、その孔の口径が先端側に至るほど大きくなるように形成された漏斗状の部材によって構成されている。このような構造の誘い込み部52は、上記工具用ガイド部43を通過しながら径方向にある程度の誤差範囲をもって接近してくる上記工具Tに対し、その軸部Taの先端部を上記ギアケース33の内部に誘い込んで上記第1のかさ歯車31の設置部に案内する役割を果たすように構成されている。
【0032】
上記のようにヘッドランプユニット3の光軸を調整するための光軸調整部29が、エンジンルームの側辺部に沿って延びるフェンダパネル1の下方に配設されるとともに、上記光軸調整部29に対する調整操作がエンジンルーム側から工具Tを介して行われるように構成された自動車の前部構造において、上記ヘッドランプユニット3に対し車幅方向内側に離間したエンジンルーム内の特定部位に、車幅方向に所定の幅を有したサブタンク17を配設するとともに、このサブタンク17の外壁面のうち車幅方向外端寄りの領域を、上記光軸調整部29に接近する上記工具Tの軌道に沿った傾斜面部41とし、この傾斜面部41の一部を含んでなる工具用ガイド部43により、上記光軸調整部29に対する工具Tのアクセス動作が案内されるようにした上記実施形態の構成によれば、上記光軸調整部29に対する工具Tのアクセス動作を簡単な構成でより確実に案内できるという利点がある。
【0033】
すなわち、上記実施形態によれば、車幅方向に所定の幅を有したサブタンク17のアッパーケース39における外壁面の一領域を、光軸調整部29に接近する工具Tの軌道に沿った傾斜面部41とし、この傾斜面部41の一部を含んでなる工具用ガイド部43より、上記工具Tのアクセス動作が案内されるように構成したため、従来のように板状のブラケットに工具用の開口部を設けただけの構成と異なり、上記工具Tの軌道を上記傾斜面部41に沿ったより安定した軌道に維持することができ、フェンダパネル1の下方にかくれるように配置される上記光軸調整部29に上記工具Tの先端部が確実に到達するように工具Tを案内することができる。しかも、上記サブタンク17の外壁面に形成された傾斜面部41を利用した簡単な構成で、上記工具Tのアクセス動作を案内するようにしたため、部品重量の増大やコストアップ等の問題が生じるのを有効に回避しながら上記ヘッドランプユニット3の光軸調整をより容易化できるという利点がある。
【0034】
特に、上記実施形態のように、工具用ガイド部43を、上記アッパーケース39の傾斜面部41の一部であって車体前後方向に所定の幅を有した底壁部45と、この底壁部45の車後端部から上方に突出する前後一対の縦壁部46,46とを有するように構成し、上記縦壁部46,46によって工具Tの車体前後方向の移動を規制するようにした場合には、上記光軸調整部29に対する工具Tのアクセス動作をより正確な精度で案内することができ、ヘッドランプユニット3に対する光軸調整の作業性をより効果的に向上させることができるというという利点がある。
【0035】
さらに、上記実施形態では、工具用ガイド部43に、その前後一対の縦壁部46,46の上端部どうしを連結する上壁部47を設けたため、上記工具Tが車幅方向外側に移動するのをこの上壁部47によって規制することができ、上記光軸調整部29に対する工具Tのアクセス動作をさらに正確な精度で案内できるという利点がある。
【0036】
また、上記実施形態のように、サブタンク17のアッパーケース39を樹脂製部材によって構成し、この樹脂製のアッパーケース39と一体的に上記工具用ガイド部43を形成した場合には、これらアッパーケース39と工具用ガイド部43とを樹脂の一体成形によって同時に形成することができるため、上記工具用ガイド部43を追設することによるコストの上昇を最小限に抑制できるという利点がある。
【0037】
また、上記実施形態では、上記工具用ガイド部43の前後一対の縦壁部46,46どうしの間隔、および底壁部45と上壁部47との間隔を、上記工具Tにおける軸部Taの軸径よりも所定量大きく設定するとともに、上記光軸調整部29に、上記工具用ガイド部43の設置部の方向に向かって延びる先拡がり状の誘い込み部52を設けたため、サブタンク17の組み付け誤差等に起因して上記工具用ガイド部43と光軸調整部29との位置関係にある程度のずれが生じたような場合でも、上記工具用ガイド部43の各壁部45〜47と工具Tとの径方向の隙間を利用して上記のような位置ずれを吸収することができるとともに、このように工具用ガイド部43を通過しながら径方向にある程度の誤差範囲をもって接近してくる上記工具Tの先端部を、上記誘い込み部52によって誘い込みながら上記光軸調整部29に確実に到達させることができる。
【0038】
すなわち、上記工具用ガイド部43が設けられるサブタンク17の組み付け位置と、上記光軸調整部29の設置部との相対的な位置関係は、サブタンク17の組み付け誤差等によってある程度ずれることがあるため、上記工具用ガイド部43の縦壁部46,46どうしの間隔や底壁部45と上壁部47との間隔が上記軸部Taの軸径と略同一に設定されると、上記工具Tの軌道を径方向にほとんど修正することができず、上記組み付け誤差の大きさ等によっては、上記光軸調整部29に工具Tの先端部を到達させることができなくなる。これに対し、上記のように工具用ガイド部43の各壁部の間隔を上記軸部Taの軸径よりも所定量大きくして両者の間にある程度の隙間が生じるようにした場合には、上記工具Tの軌道を径方向にある程度修正しながらこの工具Tを上記光軸調整部29に接近させることができるため、上記のような位置ずれが存在する状況下でも、上記工具Tの先端部を光軸調整部29に問題なく到達させることができる。
【0039】
しかもこの場合において、上記工具Tの先端部を誘い込むための誘い込み部52を上記光軸調整部29に設け、工具Tの最終的な位置決めをこの光軸調整部29の直近で行うようにしたため、上記のように工具用ガイド部43を通過しながら径方向にある程度の誤差範囲をもって接近してくる上記工具Tの先端部を、上記誘い込み部52によって誘い込みながら上記光軸調整部29に確実に到達させることができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、熱交換器用のサブタンク17に上記工具用ガイド部43を設けたが、このような工具用ガイド部43は、ヘッドランプユニット3近傍のエンジンルーム内に配設される車両用部品であればこのようなサブタンク17に限らず、各種部品に設けることが可能である。例えば、フロントウィンドガラスを洗浄するウォッシャー液を貯蔵するためのウォッシャータンクが上記サブタンク17と同様の箇所に配設される場合には、このウォッシャータンクに上記工具用ガイド部43を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動車の前部構造が適用された車両の外観を示す斜視図である。
【図2】上記自動車の前部構造の全体構成を示す平面図である。
【図3】上記自動車の前部構造における要部を拡大して示す平面図であり、図2においてフェンダパネルを取り外した状態を示す図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】ヘッドランプユニットとサブタンクとを後方側から見た図である。
【図6】サブタンクの斜視図である。
【図7】図3のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 フェンダパネル
3 ヘッドランプユニット
17 サブタンク(車両用部品)
29 光軸調整部
41 傾斜面部
43 工具用ガイド部
45 底壁部
46 縦壁部
47 上壁部
52 誘い込み部
T 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプユニットの光軸を調整するための光軸調整部が、エンジンルームの側辺部に沿って延びるフェンダパネルの下方に配設されるとともに、上記光軸調整部に対する調整操作がエンジンルーム側から工具を介して行われるように構成された自動車の前部構造であって、
上記ヘッドランプユニットに対し車幅方向内側に離間したエンジンルーム内の特定部位に、車幅方向に所定の幅を有した車両用部品が配設されるとともに、
上記車両用部品の外壁面のうち車幅方向外端寄りの領域が、上記光軸調整部に接近する上記工具の軌道に沿った傾斜面部とされ、この傾斜面部の一部を含んでなる工具用ガイド部により、上記光軸調整部に対する工具のアクセス動作が案内されるように構成されたことを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の前部構造において、
上記工具用ガイド部が、上記車両用部品の傾斜面部の一部であって車体前後方向に所定の幅を有した底壁部と、この底壁部の前後端部から上方に突出して上記工具の車体前後方向の移動を規制する前後一対の縦壁部とを有することを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項3】
請求項2記載の自動車の前部構造において、
上記工具用ガイド部が、上記一対の縦壁部の上端部どうしを連結する上壁部を有し、この上壁部によって上記工具の車幅方向外側への移動が規制されるように構成されたことを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項4】
請求項2または3記載の自動車の前部構造において、
上記車両用部品が樹脂製であり、この樹脂製の車両用部品と一体的に上記工具用ガイド部が形成されたことを特徴とする自動車の前部構造。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の自動車の前部構造において、
上記工具用ガイド部の前後一対の縦壁部どうしの間隔、または上記底壁部と上壁部との間隔が、上記工具の軸径よりも所定量大きく設定されるとともに、上記光軸調整部に、上記工具用ガイド部の設置部の方向に向かって延びる先拡がり状の誘い込み部が設けられたことを特徴とする自動車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−230325(P2008−230325A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70015(P2007−70015)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】