説明

自動車の動作方法及びその自動車

【課題】 自動車の動作方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、燃料タンク(7)から燃料が供給される内燃機関(2)を備え、かつ燃料タンク(7)からの燃料蒸気を回収する再生処理可能なフィルタ装置(6)を備えた自動車の動作方法に関する。自動車の動作中の燃料蒸気保持システムの特性をさらに向上させるために、燃料補給作業の直後に、フィルタ装置(6)を再生処理するべく内燃機関(2)の強制始動を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクから燃料が供給される内燃機関を備え、かつ燃料タンクから燃料蒸気を回収する再生処理可能なフィルタ装置を備えた自動車の動作方法及びその自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、例えば、フィルタ装置の捕集状態に応じて内燃機関を作動させるなどして、内燃機関および燃料蒸気を回収するフィルタ装置を備えたハイブリッド車の動作中の燃料蒸気保持システムの特性を向上させる様々な方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007002188A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、自動車の動作中、特にハイブリッド車または始動・停止装置を備えた車両の動作中の燃料蒸気保持システムの特性をさらに向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、燃料タンクから燃料が供給される内燃機関を備え、かつ燃料タンクからの燃料蒸気を回収する再生処理可能なフィルタ装置を備えた自動車の動作方法であって、燃料補給作業の直後に、フィルタ装置を再生処理するために内燃機関の強制始動を行う、方法で達成される。フィルタ装置は、例えば、捕集段階で炭化水素蒸気を吸着する活性炭フィルタを備え、この炭化水素蒸気は、再生処理段階で外気での掃気によって脱着される。この場合、活性炭フィルタに結合された燃料蒸気が、内燃機関で燃焼させて活性炭フィルタを空にするために内燃機関に送られる。本発明の1つの必須の態様によると、内燃機関は、内燃機関の始動自体を必要としないときにも始動される。燃料補給作業後の内燃機関の強制始動により、確実にフィルタ装置が掃気される。
【0006】
本方法の好ましい例示的な実施形態は、自動車が、内燃機関を使用しないで他の方法、例えば、電気モード単独で動作されるときにも、内燃機関の強制始動を行うことを特徴とする。自動車は、内燃機関に加えて、例えば、自動車を単独で駆動することができる電気モータなどのさらなる駆動モータも備えたハイブリッド車であるのが好ましい。
【0007】
本方法のさらなる好ましい例示的な実施形態は、燃料タンクが、燃料補給中の完全には満たされていないとき、むしろ燃料が部分的にしか満たされていないときにも、内燃機関の強制始動を行うことを特徴とする。これにより、燃料タンクがまだ完全に満たされていないときにも、確実にフィルタ装置が掃気される。
【0008】
本方法のさらなる好ましい例示的な実施形態は、燃料補給作業が検出された後に、内燃機関の強制始動を行うことを特徴とする。強制始動は、燃料補給作業の直後に、またはその後まもなく開始される。
【0009】
本方法のさらなる好ましい例示的な実施形態は、燃料補給作業を検出して内燃機関の強制始動を開始するために、燃料タンクのタンク閉鎖を監視することを特徴とする。タンク閉鎖は、開状態が監視されるタンク弁を備えることができる。
【0010】
本方法のさらなる好ましい例示的な実施形態は、燃料補給作業を検出して内燃機関の強制始動を開始するために、充填レベルセンサ信号を監視することを特徴とする。燃料タンクの充填レベルは、充填レベルセンサ信号を出力する充填レベルセンサで監視することができる。
【0011】
本方法のさらなる好ましい例示的な実施形態は、フィルタ装置を再生処理するために、内燃機関のさらなる強制始動を固定時間間隔で、またはフィルタ装置の状態に応じてのいずれか一方または両方で行う。フィルタ装置の状態は、例えば、燃料タンク中の炭化水素濃度または圧力のいずれか一方または両方を検出できるセンサ装置を用いて監視することができる。
【0012】
本方法のさらなる好ましい例示的な実施形態は、内燃機関の強制始動が行われるときに、掃気効果を向上させるために掃気ポンプまたはベンチュリノズルのいずれか一方または両方を作動させることを特徴とする。これにより、掃気作業を迅速化することができる。
【0013】
本方法のさらなる好ましい例示的な実施形態は、自動車が、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、または始動・停止装置を備えた自動車のいずれかまたはすべてであることを特徴とする。ハイブリッド車は、内燃機関および電気機械を備えるのが好ましい。家庭用電源への電気プラグ型の接続によって充電できるハイブリッド車は、プラグインハイブリッド車と呼ばれる。始動・停止装置は、例えば、信号機で停止した後に、例えば、自動車のクラッチが作動されると、自動車を自動的に始動させる役割を果たす。
【0014】
本方法のさらなる好ましい例示的な実施形態は、燃料タンクが、加圧タンクとして具現されることを特徴とする。用語、加圧タンクは、例えば、自動車の動作中に圧力密閉式または蒸気密閉式に遮断される燃料タンクを指す。
【0015】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、様々な例示的な実施形態を図面を参照して詳細に記載する以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法によって動作することができる自動車のタンク換気システムを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1では、ハイブリッド車(不図示)のハイブリッド駆動機構1は、内燃機関2および電気モータ(同様に不図示)を備えている。ハイブリッド車は、本明細書では、内燃機関モード単独の他、電気モータモード単独でも動作できる完全なハイブリッド車として具現されるのが好ましい。
【0018】
内燃機関2は、吸気部3を備え、排気系4に接続されている。吸気部3は、燃料/空気混合気を内燃機関2に送り、この混合気が内燃機関2で燃焼される。その後、燃焼生成物が、内燃機関2を出て、排気系4を通って周囲に放出される。
【0019】
吸い込みライン5は、その他端部でフィルタ装置6に接続され、吸気部3に開口している。吸い込みライン5およびフィルタ装置6は、燃料タンク7も含むタンク換気システムの構成要素である。フィルタ装置6は、再生処理可能な、または掃気可能なフィルタ材8を備え、燃料タンク7から周囲に導くタンク換気ライン10に配置されており、タンク換気ライン10は、弁装置9によって遮断することができる。さらなる弁装置9’が、内燃機関2の吸気部3とフィルタ装置6との間の吸い込みライン5に配置されている。
【0020】
燃料から蒸発する炭化水素は、タンク換気ライン10を通ってフィルタ装置6に入り、フィルタ材8、例えば、活性炭フィルタなどによって周囲に流出するのが防止される。フィルタ材8が炭化水素で飽和されると、フィルタ材の掃気または再生処理が必要となるため、制御装置11が設けられている。制御装置11は、必要に応じて、弁装置9、9’を作動させる、すなわち前記弁装置9、9’を開け、これにより周囲空気を、フィルタ材8および吸い込みライン5を介して吸気部3に送る。タンク換気ライン10およびフィルタ材8を通る周囲空気による掃気の結果として、フィルタ材8が再生処理され、燃料から蒸発した炭化水素の新たな回収の準備が整う。
【0021】
しかしながら、ハイブリッド駆動機構1では、内燃機関2が停止されて、自動車が電気モータモード単独で駆動されている動作状態が発生する。この動作状態では、吸気部3からフィルタ装置6にかけての圧力勾配がないため、フィルタ装置6を掃気できなくなり、結果として、炭化水素がタンク換気ライン10を通って周囲に流出するほど、フィルタ材8が炭化水素で完全に満たされるリスクがある。しかしながら、これは、すべての状況下で防止されるべきである。このため、制御装置11は、ハイブリッド車が電気動作の場合には、前記制御装置11が、フィルタ装置6の捕集状態に応じて内燃機関2を作動させ、これにより吸気部3に除去される炭化水素をフィルタ材8から燃焼室に送ることができるように具現されている。
【0022】
本発明の1つの必須の態様によると、燃料補給時の放出物を、燃料補給作業の直後に、内燃機関2の強制始動によってフィルタ装置6から除去する動作方法が提案されている。内燃機関2の強制始動は、ハイブリッド車が電気モード単独で動作されるとき、またはその可能性があるときは必ず行われる。内燃機関2の強制始動は、燃料タンク7が燃料で完全には満たされなかったとき、または部分的にしか満たされなかったときにも必ず行われる。
【0023】
燃料補給作業は、充填レベルセンサ信号の変化によって検出される。加圧タンクを備えた車両の場合には、燃料補給作業は、タンク弁の解放によって検出することもできる。燃料補給作業が検出されると、対応する信号が、本発明による動作方法に使用される制御ユニットに送信される。
【0024】
本発明による動作方法は、特に、米国で動作され、燃料補給時のガスがフィルタ装置6に送られる自動車では、フィルタ装置6の炭化水素の収容能力または吸収能力が、可能な限り迅速に再び完全に利用できるようになるという利点を有する。結果として、炭化水素の環境または周囲への望ましくない流出が確実に防止される。この場合、内燃機関2の強制始動による燃料消費のわずかな増加の形態の小さな不利益は、あえて許容する。
【0025】
本発明による動作方法の結果として、フィルタ装置6、特にフィルタ装置6中の活性炭フィルタの捕集レベルを低く保つことができる。この結果、特に米国の法的規則の順守が簡単になる。さらに、自動車における望ましくない燃料臭の発生を防止することができる。
【0026】
本発明による動作方法は、例えば、内燃機関2の強制始動またはさらなる強制始動が、例えば、1週間後などの固定時間間隔後に、またはフィルタ装置6の捕集レベルに応じて、特に活性炭フィルタの機能停止が間近であることを検出したときに行われるという事実によって拡大することができる。
【0027】
加えて、内燃機関モードで走行中のフィルタ装置6の活性炭フィルタの再生処理のために、掃気ポンプを使用して、またはターボチャージャー付きエンジンの場合にはベンチュリノズルを使用して掃気効果を向上させることができる。本発明による動作方法は、一方で、簡易加圧タンクシステムの使用も可能にする。さらに、適切な場合には、加圧タンクシステムを完全に省くことも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ハイブリッド駆動機構
2 内燃機関
3 吸気部
4 排気系
5 吸い込みライン
6 フィルタ装置
7 燃料タンク
8 フィルタ材
9、9’ 弁装置
10 タンク換気ライン
11 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(7)から燃料が供給される内燃機関(2)を備え、かつ前記燃料タンク(7)からの燃料蒸気を回収する再生処理可能なフィルタ装置(6)を備えた自動車の動作方法であって、
燃料補給作業の直後に、前記フィルタ装置(6)を再生処理するために前記内燃機関(2)の強制始動を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記自動車が、前記内燃機関(2)を使用しないで他の方法、例えば、電気モード単独で動作されるときにも、前記内燃機関(2)の前記強制始動を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃料タンク(7)が、燃料補給中の完全には満たされていないとき、むしろ燃料が部分的にしか満たされていないときにも、前記内燃機関(2)の前記強制始動を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
燃料補給作業が検出された後に、前記内燃機関(2)の前記強制始動を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
燃料補給作業を検出して前記内燃機関(2)の前記強制始動を開始するために、前記燃料タンク(7)のタンク閉鎖を監視することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
燃料補給作業を検出して前記内燃機関(2)の前記強制始動を開始するために、充填レベルセンサ信号を監視することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルタ装置(6)を再生処理するために、前記内燃機関(2)のさらなる強制始動を固定時間間隔で、または前記フィルタ装置の状態に応じてのいずれか一方または両方で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記内燃機関(2)の強制始動が行われるときに、掃気効果を向上させるために掃気ポンプまたはベンチュリノズルのいずれか一方または両方を作動させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記自動車が、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、または始動・停止装置を備えた自動車のいずれかまたはすべてであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記燃料タンク(7)が、加圧タンクとして具現されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
燃料タンクから燃料が供給される内燃機関を備え、かつ前記燃料タンクからの燃料蒸気を回収する再生処理可能なフィルタ装置を備えた自動車であって、
燃料補給作業の直後に、前記フィルタ装置を再生処理するために前記内燃機関の強制始動を行うことを特徴とする自動車。
【請求項12】
前記燃料タンクが、燃料補給中の完全には満たされていないとき、むしろ燃料が部分的にしか満たされていないときにも、前記内燃機関の前記強制始動を行うことを特徴とする請求項11に記載の自動車。

【図1】
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【公開番号】特開2012−102727(P2012−102727A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−240159(P2011−240159)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】