説明

自動車の可動フロア装置

【課題】可動ボードの下降時の設置高さをより低くすることが可能で、より幅広い着座姿勢に対応することのできる自動車の可動フロア装置を提供する。
【解決手段】乗員用シート4に着座した乗員の足元部に設置された可動ボード5と、上記乗員用シート4の下方に設置された電動モータ6(駆動源)と、該電動モータ6の駆動力に応じて上記可動ボード5の後端部に車体の前後方向の力を入力する駆動力伝達機構7とを設け、上記可動ボード5を、上記駆動力伝達機構7から入力される前後方向の力に応じて昇降変位するように支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員用シートに着座した乗員の足元部に、車体フロアの上面を覆う昇降可能な可動ボードが設置された自動車の可動フロア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に示されるように、車体の床面部分を構成する車体フロア(フロアパネル)と、この車体フロア上であってブレーキペダル等の足踏みペダルの下方に位置する領域に配設された可動ボード(可動フロア)と、このフロアボードを上記車体フロアに対して昇降駆動するダブルリンク構造の昇降駆動機構(可動フロア調整機構)とを備えた可動フロア装置が提案されている。この特許文献1に開示された可動フロア装置によれば、乗員の体格等に応じて可動ボードを昇降変位させることにより足踏みペダルの操作性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2005−271829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
具体的に、上記特許文献1では、ダブルリンク構造の昇降駆動機構を可動ボードの下方(車体フロアと可動ボードとの間)に設置し、シート調整用レバーの操作に応じて上記昇降駆動機構のリンクを立ち上げたり倒伏させたりすることにより、上記可動ボードを昇降変位させるようにしている。しかしながら、昇降駆動機構を上記のように可動ボードの下方に設置した場合には、可動ボードの設置高さがこの昇降駆動機構の占有スペースの分だけ高くなることが避けられず、特に体格の大きい乗員が適正な着座姿勢をとることが困難になるおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、乗員用シートに着座した乗員の足元部に設置される昇降可能な可動ボードの下降時の設置高さをより低くすることが可能で、より幅広い着座姿勢に対応することのできる自動車の可動フロア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、乗員用シートに着座した乗員の足元部に、車体フロアの上面を覆う昇降可能な可動ボードが設置された自動車の可動フロア装置であって、上記乗員用シートの下方に設置された駆動源と、該駆動源の駆動力に応じて上記可動ボードの後端部に車体の前後方向の力を入力する駆動力伝達機構とを備え、上記可動ボードは、上記駆動力伝達機構から入力される前後方向の力に応じて昇降変位するように支持されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、乗員の足元部に設置された可動ボードの後端部に、駆動力伝達機構を介して車体の前後方向の力を入力し、これに応じて上記可動ボードを昇降変位させるようにしたため、昇降駆動用のリンク機構を可動ボードの下方に設けた上記特許文献1記載の可動フロア装置と異なり、可動ボードの下方に何ら特別な機構を設けることなくこの可動ボードを昇降変位させることができる。この結果、可動ボードの下降時の設置高さをより低くすることが可能で、より幅広い着座姿勢に対応することのできる可動フロア装置を実現することができる。
【0007】
上記可動ボードは、車体フロア上に立設された左右一対の支持部材によって左右両側部が支持されており、上記支持部材は、上記駆動力伝達機構から前後方向の力を受けた可動ボードが同方向に移動しつつ昇降するように案内するガイド手段を有することが好ましい(請求項2)。
【0008】
このように、左右一対の支持部材によって可動ボードの左右両側部を支持し、この支持部材に設けられたガイド手段によって上記可動ボードの昇降動作を案内するようにした場合には、簡単かつコンパクトな構成で可動ボードを支持できるとともに、上記ガイド手段に沿って可動ボードを安定した状態で確実に昇降変位させることができるという利点がある。
【0009】
より具体的に、上記可動ボードは、車幅方向に延びてその左右両端部が上記支持部材に支持される支軸を有し、上記ガイド手段は、上記支軸を摺動自在に支持する前上がりに傾斜したガイド溝であることが好ましい(請求項3)。
【0010】
このようにすれば、前上がりに傾斜したガイド溝に可動ボードの支軸を摺動自在に支持させるだけの簡単な構成で、上記可動ボードの昇降動作を確実に案内できるという利点がある。
【0011】
上記構成とは別の態様として、上記可動ボードの支軸の左右両端部に、支軸が挿通される筒状のスリーブを取り付けるとともに、上記スリーブの軸方向内端面および外周面にそれぞれ摺接する摺接面を有した前上がりに傾斜するスリーブ用ガイド溝によって上記ガイド手段を構成し、さらに上記スリーブと支軸の先端部との間に、上記支軸の軸方向中心部側にスリーブを付勢する付勢手段を設けるようにしてもよい(請求項4)。
【0012】
このように、可動ボードの支軸の左右両端部に取り付けられた筒状のスリーブ(支軸よりも大径のスリーブ)を、その軸方向内端面および外周面にそれぞれ摺接する摺接面を有したスリーブ用ガイド溝内において支持し、このスリーブを介して上記支軸および可動ボードを昇降可能に支持した場合には、相対的に小径な支軸を直接摺動支持するよりもより安定した状態で支軸を支持することができ、これに応じて可動ボードをより円滑に昇降変位させることができる。さらには、上記支軸の軸方向中心部側にスリーブを付勢する付勢手段を設けたため、上記左右の支持部材の取付誤差等に起因して上記スリーブ用ガイド溝の車幅方向の設置位置が支軸に対して多少ばらついたとしても、このスリーブ用ガイド溝の摺接面に上記スリーブを適正な力で確実に接触させることができ、このスリーブを介して摺動支持される上記支軸および可動ボードをよりスムーズかつ安定した状態で昇降変位させることができるという利点がある。
【0013】
上記乗員用シートが、車体側に固定されるとともに車体の前後方向に延びる左右一対のロアレールと、このロアレールに沿って摺動可能に支持された左右一対のアッパレールと、車幅方向に延びて上記一対のロアレールを互いに連結する車幅方向メンバとを有する場合、上記駆動力伝達機構は、上記車幅方向メンバに支持されていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このように、左右一対のロアレールと、これに摺動可能に支持されたアッパレールとのうち、車体側に固定された上記一対のロアレールを車幅方向メンバによって連結し、この車幅方向メンバに上記駆動力伝達機構を支持させた場合には、駆動力伝達機構の取付剛性を比較的大きく確保できるとともに、乗員用シート下方のデッドスペースを有効に利用して上記駆動力伝達機構を効率よく配置できるという利点がある。
【0015】
上記駆動力伝達機構は、車体の前後方向に延びてその前端部が上記可動ボードの後端部に連結されたロッドと、このロッドと上記駆動源の出力軸とを連動連結するギアボックスとを備え、上記駆動源の駆動力に応じて上記ロッドが前後方向に進退することにより、上記可動ボードに前後方向の力を入力するように構成されていることが好ましい(請求項6)。
【0016】
このように、ギアボックスを介して駆動源と連動連結されたロッドを上記可動ボードの後端部に連結し、このロッドの進退動作に応じて上記可動ボードの後端部に前後方向の力を入力するようにした場合には、伝達ロスの少ない簡単な構成で上記駆動源の駆動力を可動ボードに確実に伝達できるという利点がある。
【0017】
上記車体フロア上に、車幅方向に延びるとともに上記乗員用シートの前端部が支持されるクロスメンバが突設されている場合、上記ロッドは、このクロスメンバの上方を跨いで下方に垂下する連結部材を介して上記可動ボードの後端部に連結されていることが好ましい(請求項7)。
【0018】
このように、車体フロア上に突設されたクロスメンバの上方を跨いで下方に垂下する連結部材を、上記ロッドと可動ボードとの間に介在させることにより、上記クロスメンバの設置部を回避した状態で上記ロッドと可動ボードとを連結するようにした場合には、これら両部材を連結するためにクロスメンバ等の既存の構造物に改造を加える必要がなく、簡単かつ合理的な構成で、上記駆動源の駆動力を可動ボードに伝達できるという利点がある。
【0019】
ところで、上記可動ボードの昇降変位に伴って、この可動ボードの後端部に連結部材を介して連結される上記ロッドの先端部も昇降する。そこで、上記駆動力伝達機構は、上記車幅方向メンバ上に設置された揺動支持機構に支持されており、該揺動支持機構は、上記ロッドの側面視での設置角度の変化を許容しながら上記駆動力伝達機構を支持するように構成されていることが好ましい(請求項8)。
【0020】
このように、上記ロッドの側面視での設置角度の変化を許容する揺動支持機構に駆動力伝達機構を支持させた場合には、可動ボードの昇降変位に伴って上記駆動力伝達機構の支持支点の高さを変化させるといった必要がなく、簡単かつ合理的な構成で、昇降変位する可動ボードに駆動力を伝達できるという利点がある。
【0021】
上記ロッドは、その側面視での設置角度が上記可動ボードに対して相対変位するのを許容する屈曲許容部を介して上記可動ボードの後端部に連結されていることが好ましい(請求項9)。
【0022】
このように、ロッドと可動ボードとを屈曲許容部を介して連結した場合には、上記ロッドの設置角度の変化にかかわらず可動ボードの設置角度を一定に維持できるため、例えば可動ボードを水平向きに維持したまま円滑に昇降変位させることが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、乗員用シートに着座した乗員の足元部に設置される昇降可能な可動ボードの下降時の設置高さをより低くすることが可能で、より幅広い着座姿勢に対応することのできる自動車の可動フロア装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
図1および図2は、本発明の第1の実施形態にかかる可動フロア装置を示している。この可動フロア装置は、運転席等からなる乗員用シート4に着座した乗員の足元部に位置する車体フロア3の上面を覆うように設置された昇降可能な可動ボード5と、この可動ボード5を昇降させる駆動源として上記乗員用シート4の下方に設置された電動モータ6と、この電動モータ6の駆動力を上記可動ボード5に伝達する駆動力伝達機構7とを備えている。
【0025】
上記車体フロア3は、図1〜図3に示すように、車体の左右両側辺部において前後方向に延びるように設置されたサイドシル1と、車体の幅方向中央部おいて前後方向に延びるように設置されたフロアトンネル2との間に形成された略平坦なパネルによって構成されている。この車体フロア3の上面部には、車幅方向に延びて上記サイドシル1とフロアトンネル2とを連結するとともに、上記乗員用シート4の前端部が支持されるクロスメンバ11が突設されており、このクロスメンバ11よりも前方に位置するフロア前方部13上に、上記可動ボード5が設置されている。
【0026】
上記フロア前方部13の前端部からは、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル15の下端部に接合されるフロアキックアップ部14が、前上がりの傾斜状態で車体の前方側に延びており、このフロアキックアップ部14の上方に、運転者により操作されるアクセルペダルやブレーキペダル等からなる足踏みペダル20が設置されている。また、上記ダッシュパネル15の下方部には、後下がりの傾斜状態で車体の後方側に延びる下部傾斜部16が形成されており、この下部傾斜部16と上記フロアキックアップ部14とが、部分的に重なり合う状態でスポット溶接等により接合されている。
【0027】
図3に示すように、上記車体フロア3上には、サイドシル1およびフロアトンネル2の側壁と、クロスメンバ11の前壁と、フロアキックアップ部14とに囲まれ、上記フロア前方部13を底部とする凹部17が形成されている。この凹部17内には、図1〜図5に示すように、その凹形状に対応した形状を有するパレット8が配設され、このパレット8の内部に、上記可動ボード5が昇降可能な状態で設置されるようになっている。
【0028】
上記パレット8は、図2〜図5に示すように、上記可動ボード5を収容するための凹部46が形成された樹脂製の一体成形品からなり、上記凹部46の底部を構成する底面部35と、この底面部35の左右両端部から略垂直に立ち上がる側壁面部36,36と、上記底面部35の前端部からフロアキックアップ部14に沿って前上がりの傾斜状態で車体の前方側に延びる前方傾斜面部38と、上記底面部35の後端部からクロスメンバ11の前壁に沿って立ち上がる後面部39と、サイドシル1側の側壁面部36の上端部から車幅方向外側に向かって略水平に延びる棚部40と、フロアトンネル2側の側壁面部36の上端部から車幅方向内側の斜め上方に延びる傾斜付き棚部41と、上記前方傾斜面部38の車幅方向内方寄りの前端部から斜め上方に突設され、乗員の左足が載置される載置面45aを有したフットレスト部45と、上記後面部39の上端部からクロスメンバ11の上面部に沿って車体の後方側に延びる後方延出部42と、この後方延出部42の左右両側部に突設された隆起部43,43とを有している。上記棚部40および傾斜付き棚部41は、左右の側壁面部36,36の上端部からそれぞれサイドシル1およびフロアトンネル2の側壁に近接する位置まで延びており、これらサイドシル1およびフロアトンネル2と上記各側壁面部36,36との隙間を覆うように設置されている。
【0029】
図2および図3に示すように、上記パレット8の側壁面部36には、前上がりに傾斜した前後一対のスライド孔44a,44bが形成されており、可動ボード5に設けられた前後一対の支軸28a,28b(詳細は後述する)が、上記スライド孔44a,44bを通って外部に突出した状態で支持されるようになっている。
【0030】
具体的に、上記パレット8の左右両外側部には、図1および図3に示す左右一対の支持部材30,30が設置されており、これら各支持部材30,30により、上記スライド孔44a,44bを通ってパレット8の外部に突出した上記支軸28a,28bの左右両端部が支持されている。すなわち、支持部材30は、上記可動ボード5との間にパレット8の側壁面部36を介在させた状態で可動ボード5を支持している。
【0031】
上記支持部材30は、図3〜図5に示すように、フロア前方部13の上面部から略垂直方向に立ち上がり、上記パレット8の側壁面部36の外面に沿うように設置された垂直壁部31と、この垂直壁部31を支持するとともに上記フロア前方部13の上面にボルト等により固定される脚部32とを有している。上記垂直壁部31には、上記パレット8の各スライド孔44a,44bに対応する部位に、上記可動ボード5の支軸28a,28bがそれぞれ挿通される前後一対のガイド溝33a,33bが形成されている。
【0032】
上記ガイド溝33a,33bは、垂直壁部31の下方部前後位置からそれぞれ車体の前方側の斜め上方に延び、その傾斜角度が互いに一致する状態で設置されている。詳細は後述するが、これらガイド溝33a,33bに各支軸28a,28bが挿通された上記可動ボード5には、上記駆動力伝達機構7を介して車体の前後方向の力が入力されるようになっており、この前後方向の力に応じて上記可動ボード5がガイド溝33a,33bに沿って前後方向に移動しつつ昇降するようになっている。すなわち、上記駆動力伝達機構7から前後方向の力を受けた可動ボード5が同方向に移動しつつ昇降するように案内するガイド手段が、前上がりに傾斜する上記ガイド溝33a,33bによって構成されている。
【0033】
図6に示すように、上記パレット8の側壁面部36の外側面には、上記支持部材30の垂直壁部31に形成された係合孔部80と係合する係合爪部47が形成されており、これら係合爪部47と係合孔部80とが係合した状態で、上記パレット8が支持部材30に係脱可能に取り付けられるようになっている。上記係合爪部47は、上記パレット8の側壁面部36から外側に突出するベース部48aとその先端から下方に延びるフック部48bとからなる第1係合爪48と、この第1係合爪48を挟んだ前後両側2箇所に形成された楔状体からなる第2係合爪49,49とを有している。一方、上記係合孔部80は、上記第1係合爪48に対応した位置に形成された矩形状の孔からなる挿通部81aが上側に、これよりも幅狭のスリット部81bが下側に形成された第1係合孔81と、上記スリット81bを挟んだ前後両側2箇所であって上記第2係合爪49に対応する位置に形成された第2係合孔82,82とを有している。なお、上記第1係合爪48のフック部48bの裏面には、上記第1係合孔81のスリット部81bと略同一の幅を有して組付け時にこれに嵌挿される突起(図示省略)が設けられている。以上のような係合爪部47および係合孔部80を有したパレット8および支持部材30の組み付けは、フロア前方部13上に上記支持部材30が固定される前に行われる。具体的に、上記組み付けは、図7(a)に示すように、フロア前方部13上に固定される前の支持部材30に対し、その第1係合孔81の挿通部81aと上記第1係合爪48のフック部48bとを位置合わせした状態で、パレット8の側壁面部36を押し付け、さらにこの状態から上記第1係合爪48のフック部48bを第1係合孔81の挿通部81aに挿通させるように、上記パレット8を弾性変形させつつ下方に押し下げることによって行うことができる。これにより、図7(b)に示すように、第1係合爪48のフック部48bの裏面と第1係合孔81のスリット部81bの周縁部とが係合するとともに、第2係合爪49の上面部と第2係合孔82の上辺部とが係合し、これに応じて上記パレット8の支持部材30に対する上下方向および左右方向の相対移動が規制されることになる。
【0034】
上記のようにして互いに組み付けられたパレット8と支持部材30とは、このうちの支持部材30の脚部32がフロア前方部13の上面部にボルト締結されることにより、フロア前方部13上に固定される。そして、上記脚部32のボルト締結作業を容易化するためのものとして、上記パレット8の底面部35には、図3に示すように、その四隅の所定範囲を切り欠いてなる複数の作業用孔37が形成されている。すなわち、上記支持部材30の脚部32をフロア前方部13上にボルト締結する際には、上記脚部32の上面を覆うパレット8の底面部35が邪魔になるため、この底面部35のうち上記脚部32のボルト締結部(脚部32に設けられたボルト穴設置部)に対応する部分に、それぞれ上記作業用孔37が設けられている。これにより、上記脚部32のボルト締結作業をこの作業用孔37を通じて容易に行うことが可能になる。
【0035】
上記可動ボード5は、図3に示すように、乗員の踵部が載置される平板状のボード部材22と、このボード部材22を支持するベース部材23とから構成されている。このうちベース部材23は、矩形枠状のフレーム24と、このフレーム24の対向する辺どうしを連結する第1および第2の補強プレート26,27と、上記フレーム24の四隅に配設され、その隣接する辺どうしを連結する4つの連結金具25とを有しており、上記補強プレート26,27および連結金具25の上面に、上記ボード部材22が支持されるようになっている。
【0036】
上記フレーム24の前後2箇所には、車幅方向に延びる支軸28a,28bが溶接により固定されている。この支軸28a,28bは、その左右両端部が上記フレーム24の左右両側辺部よりも外側に突出する状態で取り付けられており、この支軸28a,28bの左右両端部が、上記支持部材30のガイド溝33a,33bに挿通されて支持されるようになっている。また、各支軸28a,28bには、上記ガイド溝33a,33bに挿通された後の各支軸28a,28bの両端部に係止される着脱可能なスピードナット29が取り付けられており、このスピードナット29が上記ガイド溝33a,33bの周縁部に当接することにより、上記各支軸28a,28bの車幅方向の移動が規制されるようになっている。
【0037】
図1および図3に示すように、上記可動ボード5は、クロスメンバ11の上方を跨いで下方に垂下する側面視逆L字状体からなる連結部材57を介して上記駆動力伝達機構7に連結されている。この連結部材57は、図8および図9に示すように、クロスメンバ11の上方を覆うように水平に延びる水平面部58と、この水平面部58の前端部からクロスメンバ11の前壁に沿って下方に延びる垂下部59と、この垂下部59の下端部に設置され、上記支軸28aが挿通される筒状のボス部60とを有しており、このボス部60に挿通される支軸28aを支点に回動可能な状態で上記可動ボード5と駆動力伝達機構7とを連結している。図9においてハッチングで示す部位Wは溶接ビードを表わしており、この溶接ビードWを介して上記支軸28aとフレーム24の後辺部とが並列状態で互いに接合されるようになっている。なお、上記連結部材57のボス部60とフレーム24とは溶接されておらず、上記支軸28aに対してボス部60が自由に相対回転できるようになっている。このように構成された可動ボード5および連結部材57は、上記パレット8および支持部材30とともにあらかじめ車外で組み付けられた状態でフロア前方部13上に設置される。
【0038】
図2および図3に示すように、上記可動ボード5と駆動力伝達機構7とを連結する連結部材57の上方には、その連結部周辺を隠蔽するためのカバー部材90が設置されている。このカバー部材90は、上記パレット8後端の左右両側部に形成された隆起部43,43の間に位置して両部材の間の空間を埋めるように設置されている。
【0039】
上記乗員用シート4は、図1に示すように、車室前部の運転席側および助手席側にそれぞれ個別に設置されたセパレートタイプのシートであり、乗員の着座面を構成するシートクッション61と、このシートクッション61の後端部から上方に立ち上がるシートバック62と、このシートバック62の上端部に取り付けられたヘッドレスト63とを備えている。上記シートクッション61は、その本体部(クッション材)を下方から覆うような状態で支持するクッションフレーム64を有し、このクッションフレーム64の下方には、車体の前後方向に延びるシートスライドレール65が配設されている。そして、上記乗員用シート4は、このシートスライドレール65を介して前後方向に移動可能な状態で車体フロア3上に支持されている。
【0040】
上記シートスライドレール65は、前上がりの傾斜状態で車体側に固定された断面C字状部材等からなる左右一対のロアレール67と、このロアレール67に沿って摺動可能に支持された左右一対のアッパレール66とを有し、上記アッパレール66がロアレール67に対して相対変位するのに応じて、上記乗員用シート4が前後方向に移動するようになっている。
【0041】
また、上記シートスライドレール65の後方部には、上記アッパレール66の前後移動に応じて上記乗員用シート4の後方部を昇降させるチルト機構50が設けられている。このチルト機構50は、上記クッションフレーム64の後方部とシートスライドレール65との間に設置された後方リンク部材54と、上記ロアレール67の後方部に固定されて上記後方リンク部材54をスライド自在に支持する支持プレート51とを備えている。また、上記シートスライドレール65の前方部には、アッパレール66とクッションフレーム64とにそれぞれ両端部が枢支された前方リンク部材56が設置されている。
【0042】
上記後方リンク部材54は、側面から見て三角形状に形成された板状の部材であり、その各頂点部A〜Cが、上記アッパレール66に突設された突板55と、上記クッションフレーム64の後方部と、支持プレート51とにそれぞれ枢支されている。また、上記支持プレート51には、シートスライドレール65よりも急角度で前上がりに傾斜したスライド溝52が形成されており、上記後方リンク部材54の下側の頂点部Cがこのスライド溝52に沿ってスライド自在に支持されている。これにより、上記乗員用シート4の前後移動時に、後方リンク部材54が上記アッパレール66の突板55との枢支点(頂点部A)を支点に揺動変位して上記クッションフレーム64の後部が昇降されるようになっている。
【0043】
具体的に、例えば乗員用シート4のクッションフレーム64がシートスライドレール65に沿って図1に示す後端位置から図13に示す前端位置に移動した場合には、支持プレート51に支持された後方リンク部材54の頂点部Cが、スライド溝52に沿って急角度で斜め上方に移動する一方、アッパレール66の突板55に枢支された頂点部Aは、アッパレール66の設置角度に沿って緩やかな角度で斜め上方に移動する。これにより、後方リンク部材54が上記頂点部Aを支点としてクッションフレーム64との枢支点である頂点部Bを上方に変位させるように揺動変位し、これに応じて図13に示すように、クッションフレーム64の後方部が所定距離上方に押し上げられることになる。
【0044】
以上のような乗員用シート4には、上記可動ボード5を昇降駆動するための電動モータ6とは別体のシート駆動用モータと、このシート駆動用モータの駆動力を上記シートスライドレール65のアッパレール66に伝達することにより、このアッパレール66を前後方向に駆動するスライド駆動機構(いずれも図示省略)とが設けられており、上記シート駆動用モータが正転または逆転作動するのに応じて、クッションフレーム64がロアレール67に沿って前後方向に移動するとともに、上記後方リンク部材54等からなるチルト機構50によってクッションフレーム64の後方部が押し上げられるようになっている。
【0045】
例えば、上記乗員用シート4に背の低い乗員Sが着座する際に、図外の操作スイッチを操作して上記シート駆動用モータを正転させることにより、乗員用シート4を車体の前方側にスライド変位させると、図13に示すようにシートクッション61の前方部がロアレール67に沿って上昇するとともに、シートクッション61の後方部が押し上げられることになるため、シートクッション61に対する乗員Sの着座中心を表すヒップポイントが、乗員Sの身長に対応して前部上方に移動することにより、この乗員Sの視線が適正ラインLに一致することになる。また、上記乗員用シート4の前方移動に応じてシートクッション61の後端部が押し上げられて、その設置角度が水平に近い状態となることにより、足の長さが相対的に短くなる低身長者Sが、膝を大きく折り曲げてその膝下部を所定角度で垂下させた状態で着座できるようになるため、この低身長者Sの足先が床面から離間した状態となることが防止される。
【0046】
一方、上記乗員用シート4に背の高い乗員Tが着座する際に、上記シート駆動用モータを逆転させて乗員用シート4を車体の後方側にスライド変位させると、図1に示すように、シートクッション61の前方部がロアレール67に沿って下降するとともに、シートクッション61の後方部が押し下げられることになるため、シートクッション61に対する乗員Tの着座中心を表すヒップポイントが、乗員Tの身長に対応して後部下方に移動することにより、この乗員Tの視線が適正ラインLに一致することになる。また、上記乗員用シート4の後方移動に応じてシートクッション61が前上がりの傾斜状態となることにより、足の長さが相対的に長くなる高身長者Tが、膝の折曲げ角度を小さくしてその膝下部を前方に延ばした状態で着座できるようになるため、この高身長者Tの着座姿勢が窮屈な状態になることが防止される。
【0047】
図1および図2に示すように、上記乗員用シート4には、車幅方向に延びて左右一対のロアレール67,67の下面部どうしを連結する車幅方向メンバ68が設置されており、この車幅方向メンバ68上に、上記電動モータ6の駆動力を可動ボード5に伝達する駆動力伝達機構7が支持されている。この駆動力伝達機構7およびその支持部を図10に示す。本図に示すように、上記車幅方向メンバ68の中央部付近には所定距離下方に凹入する凹入部68aが形成され、この凹入部68a上に設置された揺動支持機構79を介して、上記駆動力伝達機構7が揺動自在に支持されている。
【0048】
上記揺動支持機構79は、上記車幅方向メンバ68の凹入部68a上に立設された左右一対の固定プレート69,69と、平面視コ字状体からなるとともにその左右両側辺部が上記固定プレート69,69にピポットPを介してそれぞれ枢支された揺動ブラケット76とを有しており、このうちの揺動ブラケット76の前端面が駆動力伝達機構7の第2のギアボックス78(詳細は後述する)の後面側に締結固定された状態で、上記駆動力伝達機構7を揺動自在に支持している。
【0049】
上記駆動力伝達機構7は、図1〜3および図10に示すように、車体の前後方向に延びてその前端部が上記連結部材57を介して可動ボード5の後端部に連結されるロッド73と、このロッド73と上記電動モータ6の出力軸とを連動連結する第1および第2のギアボックス77,78とを有している。このうち第2のギアボックス78の前面側には、図10に示すように、平面視で縦長の逆コ字状体からなるとともに、上記ロッド73を案内するためのガイド溝75(以下、ロッド用ガイド溝75と称する。)が左右両側部に形成されたガイドブラケット74が締結固定されている。
【0050】
上記ロッド73は、上記第2のギアボックス78内のウォームナット87(図12参照;詳細は後述する)によりねじ送りされて前後方向に進退するねじ軸70と、このねじ軸70の前端部に締結ピン72を介して接続された延長ロッド71とから構成されている。図11は図10のXI−XI線に沿った断面を表わしており、この図11に示すように、上記延長ロッド71は、ねじ軸70の前端部を内部に収容する断面視コ字状体からなり、その左右両側辺部を貫通するとともに上記ねじ軸70の周面の対向する2箇所に嵌着される左右一対の締結ピン72,72を介してねじ軸70に接続されている。
【0051】
図3に示すように、上記延長ロッド71の前端部には、上記連結部材57に対応するように幅広に形成された連結部材対応部88が形成されており、この連結部材対応部88が図1および図8に示すように連結部材57の裏面に重ね合わされて取付ビス等で締結されることにより、上記延長ロッド71が連結部材57を介して可動ボード5の後端部に連結されるようになっている。
【0052】
上記第1のギアボックス77は、複数のピニオン歯車等からなる減速ギア機構(図示省略)を内部に備えており、この減速ギア機構を介して上記電動モータ6の出力軸の回転速度を減速しつつその駆動力を上記第2のギアボックスに伝達するように構成されている。一方、図12に示すように、上記第2のギアボックス78は、上記第1のギアボックス77の出力側から延びる軸部85と一体に回転するようにこれに止着されたウォーム軸86と、このウォーム軸86と回転中心が直交する状態で噛み合わされるウォーム歯面を外周面に有するとともに上記ロッド73のねじ軸70が嵌合される雌ねじを内周面に有したウォームナット87とを内部に備えており、上記ウォーム軸86によりウォームナット87が回転駆動されるのに応じて、このウォームナット87に嵌合されたねじ軸70をねじ送りして前後方向に移動させるように構成されている。
【0053】
上記のようにウォームナット87の回転駆動に応じてねじ軸70がねじ送りされると、このねじ軸70および上記延長ロッド71からなるロッド73から可動ボード5の後端部に、連結部材57を介して車体の前後方向の力が入力され、これに応じて上記可動ボード5がその両側の支持部材30に形成されたガイド溝33a,33bに案内されながら昇降変位することになる。例えば、可動ボード5が図1および図8に示す下降位置にあるときに、上記電動モータ6が正転して上記ねじ軸70が前方にねじ送りされ、これに応じて可動ボード5の後端部に前方向きの力が入力されると、この可動ボード5の支軸28a,28bが上記ガイド溝33a,33bに沿って斜め上方に移動することにより、可動ボード5が図13に示す上昇位置に変位する。このとき、上記各支軸28a,28bをそれぞれ案内するガイド溝33a,33bの傾斜角度が互いに一致していることから、可動ボード5はその設置角度を略水平向きに維持したまま上記ガイド溝33a,33bに沿って上昇することになる。一方、この状態から上記電動モータ6が逆転して上記ねじ軸70が後方にねじ送りされ、これに応じて可動ボード5の後端部に後方向きの力が入力されると、上記各支軸28a,28bがガイド溝33a,33bに沿って斜め下方に移動することにより、可動ボード5が図1に示す下降位置に変位することになる。
【0054】
図1および図13を比較すると分かるように、上記可動ボード5の後端部に連結部材57を介して連結されたロッド73の側面視での設置角度は、上記可動ボード5の昇降変位に伴って所定の角度範囲で変化する。例えば、可動ボード5が図1に示す下降位置にあるときのロッド73の設置角度は略水平向きとされているが、この状態から可動ボード5が図13に示す上昇位置に変位し、この可動ボード5に連結されたロッド73の前端部が上昇すると、これに応じてロッド73が上記揺動支持機構79のピポットP(図12)を支点に揺動変位して斜め上方に傾斜した状態に移行することにより、当該ロッド73の側面視での設置角度が所定角度だけ変化する。これに対し、可動ボード5は上記のように水平向きの設置角度を維持したまま上昇するため、この可動ボード5と上記ロッド73との設置角度の差(相対角度)がある程度変化することになるが、このような相対角度の変化は、ロッド73と可動ボード5とを連結する連結部材57が上記可動ボード5との連結点である支軸28aを支点に回動変位することで吸収されるようになっている。すなわち、上記可動ボード5に対してロッド73の設置角度が相対変位するのを許容する屈曲許容部が、上記支軸28aとこの支軸28aが挿通される連結部材57のボス部60とによって構成されている。一方、上記ロッド73を含んだ駆動力伝達機構7を支持する揺動支持機構79は、上記のような可動ボード5の昇降変位に伴い、図12(a)(b)に示すように、揺動ブラケット76を固定プレート69に対してピポットPを支点に回動変位させ、これに応じて上記ロッド73の設置角度を変化させる。すなわち、上記揺動支持機構79は、上記可動ボード5の昇降変位に伴うロッド73の設置角度の変化を許容しながら上記駆動力伝達機構7を支持するように構成されている。
【0055】
上記のような駆動力伝達機構7を介して昇降駆動される可動ボード5は、乗員用シート4の前後移動に連動して昇降するように構成されている。すなわち、乗員用シート4を前後方向に移動させるために乗員が図外の操作スイッチを操作すると、可動ボード5駆動用の電動モータ6も作動し、これに応じて可動ボード5が昇降駆動されるようになっている。例えば、低身長者Sが乗員用シート4に着座する際に、図外の操作スイッチを操作して乗員用シート4を車体の前方側に移動させると、これに連動して電動モータ6が正転するとともに駆動力伝達機構7のロッド73が前方に押し出され、これに応じて可動ボード5が図13に示す上昇位置に変位する。一方、高身長者Tが乗員用シート4に着座する際に、乗員用シート4を車体の後方側に移動させると、これに連動して電動モータ6が逆転するとともに駆動力伝達機構7のロッド73が後退し、これに応じて可動ボード5が図1に示す下降位置に変位する。これにより、乗員の踵部が載置される上記可動ボード5の設置高さが、乗員S,Tの足の長さに適した位置に調節されるようになっている。
【0056】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、乗員の足元部に設置された可動ボード5の後端部に、駆動力伝達機構7を介して車体の前後方向の力を入力し、これに応じて上記可動ボード5を昇降変位させるようにしたため、昇降駆動用のリンク機構を可動ボードの下方に設けた上記特許文献1記載の可動フロア装置と異なり、可動ボード5の下方に何ら特別な機構を設けることなくこの可動ボード5を昇降変位させることができる。この結果、可動ボード5の下降時の設置高さをより低くすることが可能で、より幅広い着座姿勢に対応することのできる可動フロア装置を実現することができる。
【0057】
すなわち、上記第1実施形態では、可動ボード5の支軸28a,28bを支持部材30に設けられたガイド溝33a,33bによって摺動自在に支持するとともに、電動モータ6の作動に応じて進退する駆動力伝達機構7のロッド73と可動ボード5の後端部とを連結部材57を介して連結し、上記ロッド73が進退して可動ボード5の後端部に車体の前後方向の力が入力されるのに応じて、上記可動ボード5をガイド溝33a,33bに沿って案内しながら昇降変位させるようにしたため、可動ボード5の下方に昇降駆動用のリンク機構等を設けなくても可動ボード5を昇降させることができ、その分だけ可動ボード5の下降時の設置高さを低くすることができる。これにより、特に体格の大きい乗員の着座姿勢が窮屈になるのを効果的に防止でき、体格に応じたより広範囲な着座姿勢を乗員にとらせることが可能になる。
【0058】
また、上記第1実施形態のように、可動ボード5の左右両側に一対の支持部材30,30を設置し、この支持部材30に設けられたガイド溝33a,33bに上記可動ボード5の支軸28a,28bを摺動自在に支持させた場合には、簡単かつコンパクトな構成で可動ボード5を支持できるとともに、この可動ボード5を上記ガイド溝33a,33bに沿って案内しながら安定した状態で確実に昇降変位させることができるという利点がある。さらには、可動ボード5の昇降動作を案内するガイド手段として、前上がりに傾斜する上記ガイド溝33a,33bを設けたことで、このガイド溝33a,33bに上記支軸28a,28bの両端部を挿通させて支持するだけの簡単な構成で、上記可動ボード5の昇降動作を確実に案内できるという利点がある。
【0059】
また、上記第1実施形態のように、乗員用シート4の下方に設けられた左右一対のロアレール67と、これに摺動可能に支持されたアッパレール66とのうち、車体側に固定された上記一対のロアレール67を車幅方向メンバに68によって連結し、この車幅方向メンバ68に上記駆動力伝達機構7を支持させた場合には、駆動力伝達機構7の取付剛性を比較的大きく確保できるとともに、乗員用シート4下方のデッドスペースを有効に利用して上記駆動力伝達機構7を効率よく配置できるという利点がある。
【0060】
また、上記第1実施形態のように、車体の前後方向に延びてその前端部が連結部材57を介して可動ボード5の後端部に連結されたロッド73と、このロッド73と電動モータ6の出力軸とを連動連結する第1および第2のギアボックス77,78とによって上記駆動力伝達機構7を構成し、上記ロッド73の進退動作に応じて上記可動ボード5の後端部に車体の前後方向の力を入力するようにした場合には、伝達ロスの少ない簡単な構成で上記電動モータ6の駆動力を可動ボード5に確実に伝達できるという利点がある。
【0061】
また、上記第1実施形態のように、車体フロア3上に突設されたクロスメンバ11の上方を跨いで下方に垂下する連結部材57を、上記ロッド73と可動ボード5との間に介在させることにより、上記クロスメンバ11の設置部を回避した状態で上記ロッド73と可動ボード5とを連結するようにした場合には、これら両部材を連結するためにクロスメンバ11等の既存の構造物に改造を加える必要がなく、簡単かつ合理的な構成で、上記電動モータ6の駆動力を可動ボード5に伝達できるという利点がある。すなわち、例えばクロスメンバ11を貫通する状態でロッド73を設置することにより、このロッド73と可動ボード5とを直接連結することも可能であるが、このようにした場合には、クロスメンバ11に貫通孔を設ける等の大幅な改造が必要になるため、コストアップ等の問題が生じてしまう。これに対し、クロスメンバ11を避けてロッド73と可動ボード5とを連結した上記第1実施形態によれば、より簡単な構成で上記ロッド73と可動ボード5とを連結でき、電動モータ6の駆動力をより合理的に可動ボード5に伝達できるという利点がある。
【0062】
また、上記第1実施形態のように、上記ロッド73の側面視での設置角度の変化を許容する揺動支持機構79に駆動力伝達機構7を支持させた場合には、上記可動ボード5の昇降変位に伴って上記駆動力伝達機構7の支持支点の高さを変化させるといった必要がなく、簡単かつ合理的な構成で、昇降変位する可動ボード5に駆動力を伝達できるという利点がある。すなわち、上記可動ボード5の昇降変位に伴って、この可動ボード5の後端部に連結部材57を介して連結される上記ロッド73の先端部も昇降するため、これに対応すべく例えば駆動力伝達機構7の支持支点の高さを変化させるように構成することも可能であるが、このようにした場合には、上記支持支点の高さを変化させるための機構が複雑になり、コストアップ等の問題が生じてしまう。これに対し、固定プレート69とこれに枢支された揺動ブラケット76とからなる揺動支持機構79に駆動力伝達機構7を支持させた上記第1実施形態によれば、上記ロッド73の側面視での設置角度の変化を許容しながらこれを支持することができるため、駆動力伝達機構7の支持支点の高さを変化させることなく簡単な構成で上記ロッド73と可動ボード5との連結状態を維持することができ、昇降変位する可動ボード5に電動モータ6の駆動力をより合理的に伝達できるという利点がある。
【0063】
また、上記第1実施形態のように、可動ボード5後端の支軸28aとこれに挿通される連結部材57のボス部60とにより、上記可動ボード5に対するロッド73の側面視での設置角度の相対変位を許容する屈曲許容部を構成し、この屈曲許容部を介してロッド73と可動ボード5とを連結した場合には、上記ロッド73の設置角度の変化にかかわらず可動ボード5の設置角度を一定に維持できるため、例えば可動ボード5を水平向きに維持したまま円滑に昇降変位させることが可能になる。
【0064】
(実施形態2)
上記第1実施形態では、可動ボート5の昇降動作を案内するガイド手段として、支持部材30の垂直壁部31に、可動ボード5の支軸28a,28bが挿通されるガイド溝33a,33bを形成するとともに、上記支軸28a,28bの左右両端部にスピードナット29を取り付け、各支軸28a,28bの車幅方向の移動をこのスピードナット29により規制するように構成したが、このような構成では、上記支持部材30の車体フロア3上での取付位置がずれてその垂直壁部31に形成された上記ガイド溝33a,33bの車幅方向の設置位置にばらつきが発生したときに、上記支軸28a,28bが車幅方向にガタをもって支持されてその支持状態が不安定になったり、ガイド溝33a,33bの周縁部に対してスピードナット29が必要以上の力で当接したりして、上記支軸28a,28bがガイド溝33a,33bに沿って円滑に移動できなくなることが懸念される。もちろん、上記支持部材30の取付位置等を調整すればこのような問題は生じないが、生産効率をより向上させる点からは、このような微調整を生産現場で行わずに済む構造が望まれる。そこで、本発明の第2の実施形態は、このような点を改善すべく案出されたものであり、その具体的構造を図14および図15に基づいて以下に説明する。
【0065】
これら図14および図15に示される本発明の第2実施形態では、支軸28aの両端部に、この支軸28aが挿通される筒状のスリーブ92が取り付けられているとともに、上記支持部材30の垂直壁部31の外側面に、上記スリーブ92を摺動自在に支持するスリーブ用ガイド溝94を有した断面視略コ字状体からなるスリーブガイド93が溶接により(溶接ビードWを介して)固定されている。このスリーブガイド93は、上記ガイド溝33aに対応する長孔95aを有して上記垂直壁部31の外側面に沿って設置されたベースプレート95と、このベースプレート95の短辺方向の両側辺部から外側に向けて突出する一対の横プレート96,97とを備えており、これら各プレート95〜97と摺接する状態で上記スリーブ92が支持されるようになっている。すなわち、ベースプレート95の外側面がスリーブ92の軸方向内端面と摺接するとともに、横プレート96,97の上下面がスリーブ92の外周面と摺接するようになっており、これら各摺接面により上記スリーブ用ガイド溝94が形成されている。
【0066】
そして、上記スリーブ用ガイド溝94が図示のように前上がりの傾斜状態で設置されることにより、その設置方向に沿って摺動するスリーブ92を介して、上記支軸28aおよび可動ボード5が昇降可能に支持されている。すなわち、この第2実施形態では、可動ボード5の昇降動作を案内するガイド手段が、上記スリーブ用ガイド溝94によって構成されている。なお、上記支持部材30に設けられたガイド溝33aと支軸28aとの間には、図15に示すように、ある程度の隙間が形成されるようになっており、このことから、上記ガイド溝33aは支軸28aの移動軌跡を規定する機能は有しておらず、上記スリーブ用ガイド溝94が専らガイド手段として機能するように構成されている。
【0067】
上記支軸28aの先端部にはナット98が嵌着されており、このナット98と上記スリーブ92との間には、支軸28aの軸方向中心部側にスリーブ92を付勢する付勢手段としてのコイルバネ99が設けられている。なお、以上の説明では可動ボード5の前後の支軸28a,28bのうち、後方側の支軸28aの支持構造について説明したが、前方側の28bについても同様である。
【0068】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、可動ボード5の支軸の左右両端部に取り付けられた筒状のスリーブ92(支軸よりも大径のスリーブ92)を、その軸方向内端面および外周面にそれぞれ摺接する摺接面を有したスリーブ用ガイド溝94内において支持し、このスリーブ92を介して上記支軸28a,28bおよび可動ボード5を昇降可能に支持したため、相対的に小径な支軸28a,28bを直接摺動支持するよりもより安定した状態で支軸28a,28bを支持することができ、これに応じて可動ボード5をより円滑に昇降変位させることができる。さらには、上記支軸28a,28bの軸方向中心部側にスリーブ92を付勢するコイルバネ99を設けたため、上記左右の支持部材30の取付誤差等に起因して上記スリーブ用ガイド溝94の車幅方向の設置位置が支軸28a,28bに対して多少ばらついたとしても、このスリーブ用ガイド溝94の摺接面に上記スリーブ92を適正な力で確実に接触させることができ、両者の間に隙間(ガタ)が生じてスリーブ92の支持状態が不安定になり、このスリーブ92がスリーブ用ガイド溝94に沿って円滑に移動できなくなる事態を確実に防止することができる。そして、このようにスリーブ用ガイド溝94に沿って円滑に移動可能なスリーブ92を介して上記支軸28a,28bを摺動支持することにより、可動ボード5をよりスムーズかつ安定した状態で昇降変位させることができるという利点がある。
【0069】
(実施形態3)
上記第1実施形態では、平板状の可動ボード5の後端部に駆動力伝達機構7を介して車体の前後方向の力を入力し、これに応じて可動ボード5を水平向きに維持したまま昇降変位させるように構成したが、例えば図16に示す本発明の第3の実施形態のように、ヒンジ部材103を介して車体フロア3のフロアキックアップ部14に前端部が枢支された前側パネル101と、その後端部にヒンジ部材104を介して折曲可能に連結された後側パネル102とを有した可動ボード100の後端部に、ロッド73および連結部材57を介して車体の前後方向の力を入力することにより、後側パネル102の後端部を車両の前後方向に移動させつつこの後側パネル102と上記前側パネル101の連結部を昇降変位させ、これに応じて可動ボード100の設置高さを調整するように構成してもよい。なお、この第3実施形態において、後側パネル102の後端部下面には、この後側パネル102後端の車体フロア3上でのスライド変位を円滑化するためのローラ105が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る自動車の可動フロア装置の全体構成を示す図である。
【図2】上記可動フロア装置の要部の構成を示す斜視図である。
【図3】上記可動フロア装置の要部の構成を示す分解斜視図である。
【図4】可動ボードを収容するパレットの形態等を示す側面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】上記パレットと支持部材との取付構造を示す分解斜視図である。
【図7】(a)はパレットと支持部材とを組み付ける手順の前半部分を示す図、(b)は当該組み付けが完了した状態を示す図である。
【図8】駆動力伝達機構のロッドと上記可動ボードとの連結構造を説明するための図である。
【図9】同構造を説明するための斜視図である。
【図10】駆動力伝達機構の具体的構成を示す斜視図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】上記駆動力伝達機構の動作を説明するための図であり、(a)は可動ボード下降時の状態、(b)は可動ボード上昇時の状態を示している。
【図13】乗員用シートを前方に移動させるとともに上記可動ボードを上昇させた状態を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態にかかる可動フロア装置を説明するための図である。
【図15】図14のXV−XV線に沿った断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態にかかる可動フロア装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0071】
3 車体フロア
4 乗員用シート
5 可動ボード
6 電動モータ(駆動源)
7 駆動力伝達機構
11 クロスメンバ
28a,28b 支軸
30 支持部材
33a,33b ガイド溝(ガイド手段)
57 連結部材
66 アッパレール
67 ロアレール
68 車幅方向メンバ
73 ロッド
77,78 ギアボックス
79 揺動支持機構
92 スリーブ
94 スリーブ用ガイド溝
99 コイルバネ(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員用シートに着座した乗員の足元部に、車体フロアの上面を覆う昇降可能な可動ボードが設置された自動車の可動フロア装置であって、
上記乗員用シートの下方に設置された駆動源と、
該駆動源の駆動力に応じて上記可動ボードの後端部に車体の前後方向の力を入力する駆動力伝達機構とを備え、
上記可動ボードは、上記駆動力伝達機構から入力される前後方向の力に応じて昇降変位するように支持されていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の可動フロア装置において、
上記可動ボードは、車体フロア上に立設された左右一対の支持部材によって左右両側部が支持されており、
上記支持部材は、上記駆動力伝達機構から前後方向の力を受けた可動ボードが同方向に移動しつつ昇降するように案内するガイド手段を有することを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動車の可動フロア装置において、
上記可動ボードは、車幅方向に延びてその左右両端部が上記支持部材に支持される支軸を有し、
上記ガイド手段は、上記支軸を摺動自在に支持する前上がりに傾斜したガイド溝であることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項4】
請求項2記載の自動車の可動フロア装置において、
上記可動ボードは、車幅方向に延びてその左右両端部が上記支持部材に支持される支軸を有し、
上記支軸の左右両端部には、支軸が挿通される筒状のスリーブが取り付けられており、
上記ガイド手段は、上記スリーブの軸方向内端面および外周面にそれぞれ摺接する摺接面を有した前上がりに傾斜するスリーブ用ガイド溝であり、
上記スリーブと支軸の先端部との間には、上記支軸の軸方向中心部側にスリーブを付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置において、
上記乗員用シートは、車体側に固定されるとともに車体の前後方向に延びる左右一対のロアレールと、このロアレールに沿って摺動可能に支持された左右一対のアッパレールと、車幅方向に延びて上記一対のロアレールを互いに連結する車幅方向メンバとを有し、
上記駆動力伝達機構は、上記車幅方向メンバに支持されていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動車の可動フロア装置において、
上記駆動力伝達機構は、車体の前後方向に延びてその前端部が上記可動ボードの後端部に連結されたロッドと、このロッドと上記駆動源の出力軸とを連動連結するギアボックスとを備え、上記駆動源の駆動力に応じて上記ロッドが前後方向に進退することにより、上記可動ボードに前後方向の力を入力するように構成されていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項7】
請求項6記載の自動車の可動フロア装置において、
上記車体フロア上には、車幅方向に延びるとともに上記乗員用シートの前端部が支持されるクロスメンバが突設されており、
上記ロッドは、このクロスメンバの上方を跨いで下方に垂下する連結部材を介して上記可動ボードの後端部に連結されていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の自動車の可動フロア装置において、
上記駆動力伝達機構は、上記車幅方向メンバ上に設置された揺動支持機構に支持されており、
該揺動支持機構は、上記ロッドの側面視での設置角度の変化を許容しながら上記駆動力伝達機構を支持するように構成されていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項9】
請求項8記載の自動車の可動フロア装置において、
上記ロッドは、その側面視での設置角度が上記可動ボードに対して相対変位するのを許容する屈曲許容部を介して上記可動ボードの後端部に連結されていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−49920(P2008−49920A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229779(P2006−229779)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(000109738)デルタ工業株式会社 (150)
【出願人】(000151760)株式会社東洋シート (142)
【Fターム(参考)】