説明

自動車の車体構造

【課題】車体の側面部から離れた位置に配設された乗員用シートへの乗り込み動作を円滑に行わせる。
【解決手段】車体1の側面部から所定距離離れた位置に配設された乗員用シート(10)と、この乗員用シート(10)への乗降口として上記車体1の側面部に形成された側面開口部5と、この側面開口部5を開閉するサイドドア14とを備えた自動車の車体構造において、車室フロア3のうち上記乗員用シート(10)と側面開口部5との間に、上記側面開口部5を通じて上記乗員用シート(10)に乗り込もうとする乗員の足場となるフロアサイド部20を形成し、このフロアサイド部20に踏み込むべき側の足を示す標識(40)を車室内の特定箇所に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側面部から離れた位置に乗員用シートが配設された自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の節減等の要求から、コンパクトで軽量な自動車が求められている。このような自動車では、狭い車室内において乗員のためのスペースをできるだけ広く確保するための工夫が必要となる。例えば、下記特許文献1では、車室内の車幅方向中央付近、すなわち、車体の左右両側部から離れた位置に乗員用シート(運転席)を配置することにより、乗員(運転者)の左右に広いスペースを確保することが行われている。
【特許文献1】特開平7−156807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に開示された自動車の車体構造では、車体の側面部から離れた位置に乗員用シートが配設されているため、車体の左右両側部にそれぞれ近接して乗員用シート(例えば運転席および助手席)が配設された通常の自動車とは異なり、車体の左右に設けられたサイドドアの開口部を通じて上記乗員用シートに乗り込もうとする際に、上記乗員用シートとサイドドアとの間の車室フロア上に一旦片方の足を載置し、その足を基点としてもう片方の足を進めることによって上記乗員用シートの着座位置まで移動する必要がある。
【0004】
ところが、このように複数の歩数で乗員用シートに乗り込む必要がある場合、車室内に最初に踏み込む側の足(左足または右足)によっては、乗員用シートに着座するときに足がもつれてしまうということが、本願発明者等の研究から判明した。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車体の側面部から離れた位置に配設された乗員用シートへの乗り込み動作を円滑に行わせることのできる自動車の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車体の側面部から所定距離離れた位置に配設された乗員用シートと、この乗員用シートへの乗降口として上記車体の側面部に形成された側面開口部と、この側面開口部を開閉するサイドドアとを備えた自動車の車体構造であって、上記側面開口部を通じて上記乗員用シートに乗り込もうとする乗員の足場となるフロアサイド部が、車室フロアのうち上記乗員用シートと側面開口部との間に形成されており、このフロアサイド部に踏み込むべき側の足を示す標識が、車室内の特定箇所に設けられていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、車体の側面部から離れた位置に配設された乗員用シートに乗り込もうとする乗員のために、乗員用シートと側面開口部との間のフロアサイド部に踏み込むべき側の足(左足または右足)を示す標識を設けたため、このフロアサイド部に適正な足を踏み込ませて当該足を基点とした自然な体勢で乗員を上記乗員用シートに移動させることができる。この結果、乗員用シートへの乗り込み時に乗員の足がもつれてしまう事態を効果的に回避して乗員の乗り込み動作をより円滑化することができる。
【0008】
具体的に、例えば車体の左側から上記乗員用シートに乗り込む場合について考えると、まず上記フロアサイド部に左足から踏み込むようにすれば、そこから自然な体勢で上記乗員用シートの着座位置まで移動することができる。すなわち、車体の左側のフロアサイド部から乗員用シートの前方に移動して着座する際には、右足をシート前方に進めてその右足を軸足として着座姿勢に移るのが自然であるため、その一歩手前のフロアサイド部に左足から踏み込んでおけば、その左足を基点として反対側の右足を上記シート着座時の足位置に自然に進めることができる。したがって、車室内の左側領域に上記標識が設けられている場合、当該標識は、上記フロアサイド部に踏み込むべき側の足として左足を示すように構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0009】
このようにすれば、車体の左側から乗員用シートに乗り込もうとする乗員の乗り込み動作を円滑に行わせることができる。
【0010】
同様に、車室内の右側領域に上記標識が設けられている場合、当該標識は、上記フロアサイド部に踏み込むべき側の足として右足を示すように構成されていることが好ましい(請求項3)。
【0011】
また、上記標識は、上記フロアサイド部の上面部に設けられていることが好ましい(請求項4)。
【0012】
このように、乗員が足を踏み込むフロアサイド部に直接上記標識を設けるようにした場合には、当該標識を乗員に容易に認識させて乗員用シートへの乗り込み動作をより円滑に行わせることができるという利点がある。
【0013】
この場合、上記標識は、上記フロアサイド部の上面に別体に敷設されるフロアマットの上面部に設けられていることが好ましい(請求項5)。
【0014】
このようにすれば、例えばユーザが上記標識を不要と感じた場合に、フロアマットを交換するだけで容易に上記標識を取り去ることができる。また、上記標識の内容を自動車の仕向け先や仕様に応じた適切な内容に容易に変更できるという利点もある。
【0015】
またこの場合、上記標識は、乗員が足を載置する位置に表示された左足または右足の形をした足型であることが好ましい(請求項6)。
【0016】
このように、左足または右足の形をした足型からなる標識を上記フロアサイド部に設け、この足型の上に乗員の足を載置させるようにした場合には、フロアサイド部に踏み込むべき側の足(左足または右足)だけでなく、その足の踏み込み位置および踏み込み角度についても乗員に明確に指示できるため、乗員用シートへの乗り込み動作をより円滑に行わせることができるという利点がある。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の自動車の車体構造によれば、車体の側面部から離れた位置に配設された乗員用シートへの乗り込み動作を円滑に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本考案の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1〜図3は、本発明の一実施形態にかかる自動車の車体構造を示している。この自動車の車体構造は、車体1の室内(車室内)の床面部分を構成する車室フロア3と、この車室フロア3上の車幅方向中央付近に配設された運転席シート10と、この運転席シート10の左右両側の斜め後方に配設された左右一対の後席シート12,12と、上記運転席シート10や後席シート12への乗り込み口として車体1の左右両側部に形成された側面開口部5,5と、この側面開口部5,5を開閉するためのドアとして設置され、前端部が車体1に枢着されたヒンジ式のサイドドア14,14とを有している。上記運転席シート10の前方側にはステアリングホイール32が設置されており、このステアリングホイール32は、車室内の前端部に設置されたインストルメントパネル30の車幅方向中央部分から後方に延びるように設置されている。
【0020】
上記車室フロア3は、図4および図5に示すように、車体1の左右両側辺部に設置されたサイドシル2,2に沿って前後方向に延びる左右一対のフロアサイド部20,20と、車体1の幅方向中央部分において上記フロアサイド部20よりも上方に突出するように設置されたフロアトンネル22と、これらフロアサイド部20およびフロアトンネル22の後方側に設置された略平坦面からなるフロア後方部24とを有している。このフロア後方部24は、上記フロアサイド部20の後端部よりも高い位置に設置されており、上記フロアサイド部20の後端部から上方に立ち上がる段差部25を介して、上記フロアサイド部20およびフロアトンネル22とつながっている。なお、このフロア後方部24の下方側に形成された空間内には、燃料タンク36が設置されている。
【0021】
上記フロアトンネル22は、図2および図5に示すように、車体1の後方側に至るほど幅寸法が小さくなる平面視で後窄まりの形状に形成されている。一方、これに対応して、上記フロアサイド部20は、車体1の後方側に至るほど幅寸法が大きくなる平面視で後拡がりの形状に形成されている。
【0022】
上記フロアサイド部20は、図4に示すように、ダッシュパネル7の下端部から後下がりの傾斜状態で車体の後方側に延びるように設置されている。これに対し、上記フロアトンネル22の上面部は、車体1の前後方向に亘って略水平に延びるように設置されている。このため、フロアトンネル22は、その突出高さ(左右の段差部の高さ)が前方に至るほど低く、後方に至るほど高くなるように形成されている。
【0023】
上記運転席シート10は、図2および図4に示すように、シートクッション101とシートバック102とを有しており、このうちのシートクッション101の下面部に設けられたブラケット101aを介して上記フロアトンネル22の上面部に固定されている。また、上記左右一対の後席シート12,12は、シートクッション121とシートバック122とをそれぞれ有しており、このうちのシートクッション121の下面部に設けられたブラケット121aを介して上記フロア後方部24の上面部に固定されている。そして、この左右一対の後席シート12,12は、それぞれが車幅方向外側の斜め前方を向くように平面視で逆ハ字状に配設されるとともに、各後席シート12のシートクッション121の前端部が上記運転席シート10のシートクッション101の後端部と側面視で重複するようにその前後位置が設定されることにより、上記運転席シート10の後端部を左右から挟み込むような状態で配設されている。また、後席シート12は、図2に示すように、後窄まりに形成された車室後端部の左右角部に存在するホイールハウスの張り出し部34を避けるような状態で配設されている。
【0024】
図2および図3に示すように、上記フロアサイド部20は、車体1の側面開口部5と運転席シート10との間に設置されていることから、上記側面開口部5を通じて運転席シート10に乗り込もうとする乗員(運転者)の足場となる。そして、このフロアサイド部20の上面部には、上記運転席シート10に乗り込もうとする乗員に対してフロアサイド部20に踏み込むべき側の足(左足または右足)等を指示する標識としての足型40が設けられている。
【0025】
この足型40は、車体1の左側のフロアサイド部20上では左足の形に、車体1の右側のフロアサイド部20上では右足の形にそれぞれ描かれている。そして、足型40は、運転席シート10に乗り込もうとする乗員が足を載置する位置に設けられることにより、上記乗員に対してフロアサイド部20に踏み込むべき側の足(左足または右足)を指示するとともに、その足の踏み込み位置および踏み込み角度についても指示するように構成されている。なお、上記足型40をフロアサイド部20に表示する方法は、上記のような描画によるものに限らない。例えば足型のシールを貼り付けたり、周囲よりも凹んだ足型の凹部を形成したりすることによって上記足型40を表示するようにしてもよい。
【0026】
また、上記足型40は、上記フロアサイド部20の上面部に直接設けてもよいが、このフロアサイド部20上に別体に敷設されるフロアマットがある場合には、このフロアマットの上面部に設けることがより好ましい。このようにすれば、例えばユーザが足型40を不要と感じた場合に、フロアマットを交換するだけで容易に上記足型40を取り去ることができる。また、上記足型40からなる標識の内容を、自動車の仕向け先や仕様に応じた適切な内容に容易に変更できるという利点もある。
【0027】
以上のように構成された足型40の存在により、乗員は、運転席シート10への乗り込み動作を円滑に行うことが可能になる。次に、この乗員の乗り込み動作について図6を用いて説明する。具体的に、この図6では、車体1の左側から運転席シート10に乗り込む場合について説明する。
【0028】
運転席シート10に乗り込もうとする乗員は、まず、図6(a)に示すように、車体1の左側のサイドドア14を開く。そして、このヒンジ式のサイドドア14の後端部と車体1との隙間を通って、車体1の左側部に形成された側面開口部5に斜め後方から接近する。
【0029】
次いで、乗員は、図6(b)に示すように、車体1の斜め後方からサイドシル2を跨ぐようにして(サイドシル2上方の側面開口部5を通じて)、車体1の左側のフロアサイド部20に足を踏み入れるとともに、車体1のルーフ部に頭が当たらないように身をかがめながら、上半身を車室内に進入させる。具体的には、上記左側のフロアサイド部20に設けられた左足用の足型40を視認した上で、この左足用の足型40に合わせて左足Lを持ち上げ、この左足Lの足裏を上記足型40の上に載置することにより、上記フロアサイド部20に左足Lを踏み入れる。このとき、乗員の足が載置される上記足型40の設置位置と設置角度が図2に示したような状態に設定されていることが、乗員に円滑な乗り込み動作を行わせる上で好ましい。すなわち、図2の例では、足型40の向きが車幅方向内側の斜め前方を向いているため、車体1の斜め後方から車室内に進入する乗員は、この足型40の向きに合わせて無理なくフロアサイド部20に踏み込むことができる。さらに、足型40の前後位置が運転席シート10のシートクッション101の前端部と並ぶような位置に設定されているため、乗員は後述する運転席シート10への着座動作に容易に移ることができる。
【0030】
次いで、乗員は、上記フロアサイド部20に踏み込んだ左足Lを基点として、反対側の右足Rを、運転席シート10のシートクッション101の前方まで進める。そして、図6(c)に示すように、この右足Rを軸足としてシートクッション101上に腰を下ろすとともに、残った左足Lを上記右足R側に引き寄せれば、運転席シート10への着座が完了する。
【0031】
このような一連の動作により、乗員は、自然な体勢で円滑に運転席シート10に乗り込むことができる。すなわち、乗員は、車体1の左側のフロアサイド部20に、このフロアサイド部20上に設けられた左足用の足型40に合わせて左足Lから踏み込んだことで、シートクッション101上に腰を下ろす際に軸足となるべき右足R(シートに着座しようとする乗員から見てシートクッション101の奥側に配置される足)をシート前方に踏み込み動作を、上記左足Lを基点とした自然な体勢で行うことができ、それによって運転席シート10への乗り込み動作を円滑に行うことができる。一方、これとは逆に、上記左側のフロアサイド部20に右足Rから踏み込んだ場合には、その踏み込み動作に続けてすぐに同じ右足Rを上記シート着座時の足位置まで進めることができず、足がもつれてしまう。しかもこのような事態は、図6(b)のように身をかがめて車室内に進入せざるを得ない状況下では、体勢の著しい不安定化を招くことになる。これに対し、上記のように左側のフロアサイド部20に左足Lから踏み込むようにすれば、身をかがめながら行う必要のある上記運転席シート10への乗り込み動作を、自然な体勢で円滑に行うことができるのである。
【0032】
なお、上記図6の例では、車体1の左側から運転席シート10に乗り込む場合について説明したが、これとは反対に車体1の右側から運転席シート10に乗り込む場合には、右側のフロアサイド部20に右足Rから踏み込むようにすれば、上記と同様の円滑な乗り込み動作を行うことができる。
【0033】
以上説明したように、上記構成によれば、車室内の車幅方向中央付近に配設された運転席シート10に乗り込もうとする乗員(運転者)のために、運転席シート10左右のフロアサイド部20に踏み込むべき側の足(左足または右足)を示す標識としての足型40を設けたため、このフロアサイド部20に適正な足を踏み込ませて当該足を基点とした自然な体勢で乗員を上記運転席シート10に移動させることができる。この結果、運転席シート10への乗り込み時に乗員の足がもつれてしまう事態を効果的に回避して乗員の乗り込み動作をより円滑化することができる。
【0034】
具体的に、上記実施形態では、車体1の左右のフロアサイド部20に左足用と右足用の足型40をそれぞれ設け、左側のフロアサイド部20には左足Lを踏み込ませ、右側のフロアサイド部20には右足Rを踏み込ませるようにしたため、先の図6にて説明したように、車体1の左側または右側から乗り込もうとする乗員の乗り込み動作をそれぞれ円滑に行わせることができる。しかも、足型40の上に乗員の足を載置させるようにしたため、フロアサイド部20に踏み込むべき側の足(左足または右足)だけでなく、その足の踏み込み位置および踏み込み角度についても乗員に明確に指示できるため、運転席シート10への乗り込み動作をより円滑に行わせることができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、フロアサイド部20に踏み込むべき側の足を指示する標識として足型40を設けたが、同様の指示を行える標識であればこのような足型40に限らず、例えば「右」「左」などの文字表示等からなる標識を設けるようにしてもよい。また、この標識の配設箇所についても、上記実施形態のようなフロアサイド部20の上面部に限らず、車室内の適宜の箇所に設定することが可能であり、例えばインストルメントパネル30の前面部等に上記標識を設けてもよい。ただしこのようにした場合には、その配設箇所の如何により標識を認識しづらくなるおそれがある。これに対し、上記実施形態のように、乗員が足を踏み込むフロアサイド部20に直接上記標識(足型40)を設けるようにした場合には、当該標識を乗員に容易に認識させて運転席シート10への乗り込みをより円滑に行わせることができるという利点がある。
【0036】
また、上記実施形態では、運転席シート10の左右両側の斜め後方に左右一対の後席シート12,12をそれぞれ配設するとともに、この各後席シート12の前後位置を、その前端部が上記運転席シート10の後端部と側面視で重複するような位置に設定したため、上記運転席シート10および後席シート12を配設するのに要する室内スペースの前後長を短くすることができ、これに応じて車体1をよりコンパクト化・軽量化することができる。しかも、運転席シート10が上面部に設置されるフロアトンネル22の平面形状を、車体1の後方側に至るほど幅寸法が小さくなる後窄まりの形状に形成したため、後席シート12に着座した乗員の足元部のスペースが上記フロアトンネル22によって大きく狭められる事態を効果的に回避できるとともに、運転席シート10に着座した乗員の足元部のスペースをより広く確保することができる。すなわち、フロアトンネル22を平面視で後窄まりの形状に形成し、これに応じてフロアサイド部20を平面視で後拡がりの形状に形成したことにより、図7に示すように、前席(運転席)乗員の足元部のスペースとなるフロアトンネル22の前方部の幅寸法Aと、後席乗員の足元部のスペースとなるフロアサイド部20の後方部の幅寸法Bとを、ともに広く確保することができる。この結果、乗員のためのスペースを必要充分に確保しながら、車体1のコンパクト化・軽量化を効果的に図ることのできる自動車の車体構造を実現することができる。
【0037】
また、上記実施形態のように、左右一対の後席シート12,12を、それぞれが車幅方向外側の斜め前方を向くように配設した場合には、各後席シート12とその斜め後方のホイールハウスの張り出し部34との干渉を避けながら後席シート12の幅寸法をより広く確保できるという利点がある。すなわち、図8に示すように、後席シート12を真っ直ぐ前方に向けて配設した場合には(図中の二点鎖線参照)、後方側にある上記ホイールハウスの張り出し部34と前方側にある運転席シート10の後端部との両方を避けた状態において比較的小さい寸法Dしかシート幅を確保できないのに対し、上記のように後席シート12を車幅方向外側の斜め前方に向けて配設した場合には、シート幅として上記寸法Dよりも相対的に大きい寸法Cを確保することができるのである。
【0038】
さらには、上記後席シート12を車幅方向外側の斜め前方に向けて配設したことにより、図7に示すように、後席シート12に着座した乗員の足を、平面視で後窄まりに形成されるフロアトンネル22の側辺部と略平行に配置させることができるため、このフロアトンネル22の側辺部が後席乗員の足元に近接する事態を回避することができ、後席乗員の足元部のスペースを左右略均等に確保できるという利点もある。
【0039】
また、上記実施形態では、車体1の後方側に至るほど高さが低くなる後下がりの傾斜状態でフロアサイド部20を設置したため、このフロアサイド部20の後方部の上面、すなわち、後席乗員の足元が載置される面の高さを低くすることができ、その結果図9に示すように、後席乗員の膝の折り曲げ角度Eを相対的に小さくして着座姿勢をより安楽なものにすることができる。また、このフロアサイド部20とフロアトンネル22との段差部の高さ(フロアトンネル22の側辺部の高さ)を、上記のようなフロアサイド部20の傾斜に応じて、車体1の前方に至るほど低くするようにしたため、上記フロアトンネル22の側辺部が後席乗員へ与える圧迫感を、後席乗員が足を延ばした状態(図9の二点鎖線参照)においてある程度緩和できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動車の車体構造の全体構成を示す図である。
【図2】車室内の状況を示す平面図である。
【図3】車体の側面開口部周辺の斜視図である。
【図4】車室内の状況を示す側面図である。
【図5】車室フロアの形状を示す斜視図である。
【図6】運転席シートに乗り込もうとする乗員の動作を説明するための図である。
【図7】運転席シートおよび後席シートに乗員が着座した状態における車室内の状況を説明するための図である。
【図8】後席シートの配設方向とシート幅の関係について説明するための図である。
【図9】後席シートに乗員が着座した状態における車室内の状況を説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 車体
3 車室フロア
5 側面開口部
10 運転席シート(乗員用シート)
14 サイドドア
20 フロアサイド部
40 足型(標識)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面部から所定距離離れた位置に配設された乗員用シートと、この乗員用シートへの乗降口として上記車体の側面部に形成された側面開口部と、この側面開口部を開閉するサイドドアとを備えた自動車の車体構造であって、
上記側面開口部を通じて上記乗員用シートに乗り込もうとする乗員の足場となるフロアサイド部が、車室フロアのうち上記乗員用シートと側面開口部との間に形成されており、このフロアサイド部に踏み込むべき側の足を示す標識が、車室内の特定箇所に設けられていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の車体構造において、
上記標識は、車室内の左側領域に設けられており、上記フロアサイド部に踏み込むべき側の足として左足を示すように構成されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項3】
請求項1記載の自動車の車体構造において、
上記標識は、車室内の右側領域に設けられており、上記フロアサイド部に踏み込むべき側の足として右足を示すように構成されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項4】
請求項2または3記載の自動車の車体構造において、
上記標識は、上記フロアサイド部の上面部に設けられていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項5】
請求項4記載の自動車の車体構造において、
上記標識は、上記フロアサイド部の上面に別体に敷設されるフロアマットの上面部に設けられていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項6】
請求項4又は5記載の自動車の車体構造において、
上記標識は、乗員が足を載置する位置に表示された左足または右足の形をした足型であることを特徴とする自動車の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−230481(P2007−230481A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57587(P2006−57587)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】