説明

自動車の車体構造

【課題】車体の側面部から離れた位置に配設された乗員用シートに着座した状態で容易にサイドドアの開閉操作を行い得るようにする。
【解決手段】車室内の車幅方向中央付近に配設された運転席シート10と、この運転席シート10への乗降口として車体1の側面部に形成された側面開口部5とを備えた自動車の車体構造において、車体1のルーフ部8の所定範囲を上記側面開口部5と連続して切り欠くことによってルーフ切込み部9を形成するとともに、このルーフ切込み部9に対応して車幅方向内側に突出した形状を有するルーフ対応部54をサイドドア14の上端部に設け、該ルーフ対応部54の車内側面に、上記運転席シート10に着座した乗員が上記サイドドア14を開閉する際に手を掛けて操作するドア操作部60を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室フロア上の車幅方向中央部付近に運転席シートが配設された自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の節減等の要求から、コンパクトで軽量な自動車が求められている。このような自動車では、狭い車室内において乗員のためのスペースをできるだけ広く確保するための工夫が必要となる。例えば、下記特許文献1では、車室内の車幅方向中央付近、すなわち、車体の左右両側部に設置されたサイドドアから離れた位置に運転席シートを配設することにより、乗員(運転者)の左右に広いスペースを確保することが行われている。
【特許文献1】特開平7−156807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1のように、サイドドアから離れた位置に乗員用シートを配設した場合において、車内側から上記サイドドアを開閉操作するためのドア操作部を、通常の自動車と同様にドア本体の内側面に設けてしまうと、乗員が上記乗員用シートに着座した状態で当該ドア操作部を操作しようとしたときに、車幅方向の最も離れた位置である上記ドア本体の内側面まで手を伸ばさなければならないため、サイドドアの開閉操作を円滑に行うことができないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、車体の側面部から離れた位置に配設された乗員用シートに着座した状態で容易にサイドドアの開閉操作を行うことが可能な自動車の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、車体の側面部から所定距離離れた位置に乗員用シートが配設された自動車の車体構造であって、上記乗員用シートへの乗降口として車体の側面部に形成された側面開口部と、車体のルーフ部の所定範囲が上記側面開口部と連続して切り欠かれることによって形成されたルーフ切込み部と、前端部が車体に枢着されて上記側面開口部およびルーフ切込み部を開閉するサイドドアとを備え、上記サイドドアは、その上端部に、上記ルーフ切込み部に対応して車幅方向内側に突出した形状を有するルーフ対応部を有し、該ルーフ対応部の車内側面には、上記乗員用シートに着座した乗員が上記サイドドアを開閉する際に手を掛けて操作するドア操作部が設けられていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0006】
本発明によれば、車体のルーフ部の所定範囲を側面開口部と連続して切り欠くことによってルーフ切込み部を形成するとともに、このルーフ切込み部に対応してサイドドアの上端部に設けられたルーフ対応部の車内側面に、上記サイドドアを開閉するためのドア操作部を設けるようにしたため、サイドドア本体の内側面に比べてより車幅方向内側にあたる位置、すなわち、車体の側面部から離れた位置に配設された乗員用シートにより近い位置に上記ドア操作部を配置することができる。このため、当該乗員用シートに着座した乗員は、上記ドア操作部に容易に手を掛けてサイドドアの開閉操作を行うことが可能になる。また、車体のルーフ部に上記ルーフ切込み部を設けたため、背の高い乗員が車高の低い車両に乗り込む場合においても、ルーフ部に頭が当接するのを安易な体勢で回避しながら上記乗り込み動作を円滑に行うことができるという利点もある。
【0007】
上記サイドドアに、その閉止状態を保持するために車体側部材と係合可能に構成されたラッチ機構が設けられている場合、上記ドア操作部は、該ラッチ機構と連係されたハンドル部材を有し、該ハンドル部材は、車外側へ操作されるのに応じて上記ラッチ機構のロック状態を解除するように構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0008】
このように、サイドドアのラッチ機構を操作するためのハンドル部材を上記ドア操作部として設け、このハンドル部材が車外側へ操作されるのに応じて上記ラッチ機構のロック状態が解除されるように構成した場合には、当該ハンドル部材を車外側へ操作した状態でさらに同一方向に力を加えることにより上記サイドドアを開放状態に移行させることができるため、ラッチ機構のロック解除操作とサイドドアの開放操作とを同一方向の操作によって連続して行うことができ、当該サイドドアの開放操作をより容易に行うことができるという利点がある。
【0009】
上記ドア操作部は、開放状態にある上記サイドドアを車内側に引き寄せる際の手掛かりとなる手掛け部を有することが好ましい(請求項3)。
【0010】
このようにすれば、上記手掛け部に手を掛けた状態でサイドドアを車内側へ容易に引き寄せることができるため、サイドドアの閉止操作も容易に行うことができる。
【0011】
上記ハンドル部材は、上記ルーフ対応部の車内側面に設けられた凹部内に収容されており、上記手掛け部は、該凹部の内壁面によって構成されていることが好ましい(請求項4)。
【0012】
このように、上記ハンドル部材を凹部内に収容するようにした場合には、上記ルーフ対応部の内側表面からハンドル部材が突出してしまうことを回避して車室内の外観を良好に維持できるという利点がある。また、この凹部の内壁面によって上記手掛け部を構成したことにより、ハンドル部材を収容するために設けた当該凹部の内壁面を利用して、サイドドアを閉じる際の手掛かりとなる上記手掛け部を合理的に構成できるという利点がある。
【0013】
上記ハンドル部材は、上記ルーフ対応部の車内側面に軸回りに回転可能に取り付けられた回転軸部とこの回転軸部から車体の前後方向に延びるように設置された取手部とを有する回動レバーであり、上記取手部を把持した乗員によって車外方向に回動操作されるのに応じて上記ラッチ機構のロック状態を解除するように構成されていることも、また好ましい(請求項5)。
【0014】
このように、車体の前後方向に延びる取手部を有した回動レバーによって上記ハンドル部材を構成するとともに、この回動レバーが車外方向に回動操作されるのに応じて上記ラッチ機構のロック状態が解除されるように構成した場合には、上記回動レバーの取手部を把持した状態でサイドドアを押したり引いたりすることができるため、ラッチ機構のロック解除用に設けられた上記回動レバーの取手部を、サイドドアの開放操作や閉止操作を行う際の把持部として兼用できるという利点がある。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の自動車の車体構造によれば、車体の側面部から離れた位置に配設された乗員用シートに着座した状態で容易にサイドドアの開閉操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1および図2は、本発明の一実施形態にかかる自動車の車体構造を示している。この自動車の車体構造は、車室内への乗降口として車体1の左右両側部に形成された側面開口部5,5と、車体1のルーフ部8がこの側面開口部5,5と連続して切り欠かれることによって形成されたルーフ切込み部9,9と、これら側面開口部5およびルーフ切込み部9を開閉するためのドアであって前端部が車体1に枢着されたヒンジ式のサイドドア14,14とを有している。
【0018】
図2および図3に示すように、上記サイドドア14は、ドア本体50と、このドア本体50に昇降自在に支持されるドアガラス52と、このドアガラス52の昇降動作を案内するためにものとして上記ドア本体50の前後端部からそれぞれ上方に延びるように設置された前サッシュ56および後サッシュ57と、これら前・後サッシュ56,57の間に設置されたルーフ対応部54とを有している。このうちのルーフ対応部54は、上記ルーフ切込み部9に対応して上記前・後サッシュ56,57の上端部から車幅方向内側に突出するような形状に形成されており、このルーフ対応部54の裏面側(車内側)には、サイドドア14を車内側から開閉操作するためのドア操作部60が設けられている。また、上記ドア本体50の後端面には、側面開口部5の後辺部に設けられた図略のストライカと係合して上記サイドドア14を閉止状態に保持するラッチ機構51が設けられている。
【0019】
図3〜図5に示すように、上記ルーフ対応部54は、前後端部が上記前・後サッシュ56,57と一体に連結されたアウタパネル70と、このアウタパネル70の裏側面を覆うように取り付けられたインナパネル72とを有している。このうちインナパネル72の後方部位には、下面が開口した容器状の収容部材74が、上記インナパネル72の下面部が所定範囲に亘って切り欠かかれた部分を閉止するように取り付けられている。そして、この収容部材74の内壁面によって形成された凹部75内に、上記ドア操作部60を構成するハンドル部材76が収容されている。このハンドル部材76は、前後方向に延びる支軸76aを支点に車幅方向に回動可能に支持されており、乗員によって同方向に回動操作されるのに応じて、後述する機構により当該ハンドル部材76と連係された上記ラッチ機構51のロック状態を解除するように構成されている。
【0020】
上記収容部材74の車幅方向内側の内壁面74aには、後述するように、サイドドア14を閉めようとする乗員、つまり、開放状態にあるサイドドア14を車内側に引き寄せようとする乗員の手が掛けられるようになっている。すなわち、サイドドア14を車内側に引き寄せる際の手掛かりとなる手掛け部が、この収容部材74(の凹部75)の内壁面74aによって構成されている。そして、この内壁面74aからなる手掛け部と、上記ハンドル部材76とにより、上記ドア操作部60が構成されている。
【0021】
上記ルーフ対応部54の後端部近傍には、図4に示すリンク80が設けられており、このリンク80の基端部には、上記ハンドル部材76の支軸76aと一体に連結された支軸80aが固定されている。一方、このリンク80の他端側には、断面略コ字状に形成された上記後サッシュ57の内部に配索されるケーブル82の上端部が連結されている。このケーブル82は、その下端部が上記ドア本体14のラッチ機構51(図2)まで延びるように配索されており、このラッチ機構51と上記リンク80とを連動可能に連結している。そして、上記ハンドル部材76の下端部が車外側へ押動操作されると、当該ハンドル部材76とともに上記リンク80が回動変位し、これに応じてケーブル82が上方に引っ張り上げられることにより、このケーブル82と連結された上記ラッチ機構51のロック状態が解除されるように構成されている。
【0022】
また、図4および図5に示すように、上記ルーフ対応部54(のインナパネル72)における車幅方向外側の側縁部下面には、最も上側に上昇したドアガラス52の上端部をシールするためのシール部材84が取り付けられているとともに、後サッシュ57の前側の開口部には、上記ドアガラス52の後端部をシールするためのシール部材85が取り付けられている。なお、前サッシュ56(図2)にも、このシール部材85と同様のシール部材(図示省略)が取り付けられている。また、図5に示すように、車体1のルーフ部8の左右両側辺部を構成するルーフサイドレール8aには、閉止状態にあるサイドドア14のルーフ対応部54と当接してこれら両部材の隙間をシールするシール部材86が設けられている。
【0023】
次に、以上のように構成されたサイドドア14を車内側から開閉操作する手順について図6に基づき説明する。まず、サイドドア14を開けるには、図6(a)に示すように、ルーフ対応部54の車内側面に形成された上記凹部75内に手の先を挿入し、この凹部75内に収容されたハンドル部材76の下端部を車外側へ押動操作することにより、このハンドル部材76をその上端部の支軸76aを支点に回動変位させる。これにより、当該ハンドル部材76と連動する上記リンク80やケーブル82(図4)を介して上記ドア本体50のラッチ機構51を操作してそのロック状態を解除する。そして、この状態でさらに上記ハンドル部材76を車外側へ押動すれば、サイドドア14を開方向に回動変位させて(サイドドア14の後端部を車外側へ押し出すようにして)図2のような開放状態に移行させることができる。
【0024】
一方、サイドドア14を閉めるときには、図6(b)に示すように、上記凹部75の車幅方向内側の内壁面74a(手掛け部)に手を掛けてこの内壁面74aを車内側に引き寄せるようにする。これにより、開放状態にある上記サイドドア14が閉方向に回動変位する(サイドドア14の後端部が車内側へ引き寄せられる)とともに、これに応じて上記ドア本体50のラッチ機構51が車体1側のストライカと自動的に係合し、サイドドア14が閉止状態に保持される。
【0025】
次に、図7〜図9を用いて車室内の構造について説明する。図7に示すように、車室フロア3の車幅方向中央付近には、運転者が着座する運転席シート10が配設されており、この運転席シート10の左右両側の斜め後方に、左右一対の後席シート12,12が配設されている。また、上記運転席シート10の前方側にはステアリングホイール32が設置されており、このステアリングホイール32は、車室内の前端部に設置されたインストルメントパネル30の車幅方向中央部分から後方に延びるように設置されている。
【0026】
上記車室フロア3は、図8および図9に示すように、その上面部の車幅方向中央付近に突設されて前後方向に延びるフロアトンネル22と、車体1の左右両側辺部に設置されたサイドシル2,2とこのフロアトンネル22との間であってフロアトンネル22の上面部よりも低い位置に設置された左右一対のフロアサイド部20,20と、これらフロアトンネル22およびフロアサイド部20の後方側に設置された略平坦面からなるフロア後方部24とを有している。このフロア後方部24は、上記フロアサイド部20の後端部よりも高い位置に設置されており、上記フロアサイド部20の後端部から上方に立ち上がる段差部25を介して、上記フロアサイド部20およびフロアトンネル22とつながっている。なお、このフロア後方部24の下方側に形成された空間内には、燃料タンク36が設置されている。
【0027】
上記フロアトンネル22は、図7および図9に示すように、車体1の後方側に至るほど幅寸法が小さくなる平面視で後窄まりの形状に形成されている。一方、これに対応して、上記フロアサイド部20は、車体1の後方側に至るほど幅寸法が大きくなる平面視で後拡がりの形状に形成されている。
【0028】
上記フロアサイド部20は、図8に示すように、ダッシュパネル7の下端部から後下がりの傾斜状態で車体の後方側に延びるように設置されている。これに対し、上記フロアトンネル22の上面部は、車体1の前後方向に亘って略水平に延びるように設置されている。このため、フロアトンネル22の側壁面部の高さ、すなわち、フロアトンネル22の上面部とフロアサイド部20との間に形成された段差部21の高さは、車体1の前方側に至るほど低く、後方側に至るほど高くなるように形成されている。
【0029】
上記運転席シート10は、図7および図8に示すように、シートクッション101とシートバック102とを有しており、このうちのシートクッション101の下面部に設けられたブラケット101aを介して上記フロアトンネル22の上面部に固定されている。一方、上記左右一対の後席シート12,12は、シートクッション121とシートバック122とをそれぞれ有しており、このうちのシートクッション121の下面部に設けられたブラケット121aを介して上記フロア後方部24の上面部に固定されている。そして、これら左右一対の後席シート12,12は、それぞれの前面が車幅方向の斜め外側を向くように平面視で逆ハ字状に配設されるとともに、上記運転席シート10の後方部を左右から挟み込むような状態、すなわち、各後席シート12,12(のシートクッション121)の前方部が側面視で上記運転席シート10と部分的に重複するような状態で設置されている。また、後席シート12は、図7に示すように、後窄まりに形成された車室後端部の内壁面に突設される後輪用ホイールハウスの張り出し部34を避けるような状態で配設されている。
【0030】
以上説明したように、上記構成によれば、車体1のルーフ部8の所定範囲を側面開口部5と連続して切り欠くことによってルーフ切込み部9を形成するとともに、このルーフ切込み部9に対応してサイドドア14の上端部に設けられたルーフ対応部54の車内側面に、上記サイドドア14を開閉するためのドア操作部60を設けるようにしたため、図10に示すように、車幅方向中央付近(車体の側面部から離れた位置)に配設された運転席シート10により近い位置に上記ドア操作部60を配置することができ、このドア操作部60に手を掛けて行うサイドドア14の開閉操作をより円滑に行わせることができる。すなわち、通常の自動車と同様にドア本体50の内側面にドア操作部を設けた場合、運転席シート10に着座した状態でサイドドア14を開閉操作しようとする乗員(運転者)は、車幅方向の最も離れた位置である上記ドア本体50の内側面まで手を伸ばす必要が生じるが(図中の二点鎖線参照)、上記構成のように、ドア本体50よりも車幅方向内側に位置するルーフ対応部54にドア操作部60を設けた場合には、車幅方向中央付近に配設された上記運転席シート10に着座した乗員であっても容易にこのドア操作部60に手を伸ばしてサイドドア14を開閉操作することが可能となる。
【0031】
さらに、上記構成では、車体1のルーフ部8に上記ルーフ切込み部9を設けたため、背の高い乗員が車高の低い車両に乗り込む場合においても、ルーフ部8に頭が当接するのを安易な体勢で回避しながら上記乗り込み動作を円滑に行うことができるという利点もある。
【0032】
また、上記実施形態のように、サイドドア14のラッチ機構51を操作するためのハンドル部材76を上記ドア操作部60として設け、このハンドル部材76が車外側へ操作されるのに応じて上記ラッチ機構51のロック状態が解除されるように構成した場合には、当該ハンドル部材76を車外側へ操作した状態でさらに同一方向に力を加えることにより上記サイドドア14を開放状態に移行させることができるため、ラッチ機構51のロック解除操作とサイドドア14の開放操作とを同一方向の操作によって連続して行うことができ、当該サイドドア14の開放操作をより容易に行うことができるという利点がある。
【0033】
また、上記実施形態のように、ルーフ対応部54の車内側面(インナパネル72)に凹部75を設け、この凹部75内に上記ハンドル部材76を収容するようにした場合には、上記ルーフ対応部54のインナパネル72の表面からハンドル部材76が突出してしまうことを回避して車室内の外観を良好に維持できるという利点がある。また、図6(b)に示したように、開放状態にあるサイドドア14を車内側に引き寄せる際の手掛かり(手掛け部)として上記凹部75の内壁面74aを利用することができるため、サイドドア14を閉止する操作を容易に行うことができるという利点もある。
【0034】
なお、乗員が把持可能な取手等の部材を別途設けることにより、サイドドア14を車内側に引き寄せる際の手掛かりとなる上記手掛け部を構成することも可能である。ただしこのような構成よりも、ハンドル部材76を収容するための上記凹部75の内壁面74aを利用した方が、上記手掛け部を合理的に構成できる上に、車室内の外観を良好に維持できる点で有利である。
【0035】
また、上記ラッチ機構51のロック解除用に設けられた上記ハンドル部材76を、図14に示すような回動レバー176によって構成してもよい。この回動レバー176は、収容部材74の底面部に軸回りに回転可能に取り付けられた回転軸部176aと、この回転軸部176aから車両の前後方向に延びるように設置された取手部176bとを有しており、この取手部176bを把持した乗員によって車外方向に回動操作(取手部176bの先端側が車外側に揺動変位する方向に回動操作)されるのに応じて、上記ラッチ機構51のロック状態を解除するように構成されている。このような回動レバー176によれば、ラッチ機構51のロック状態を解除する操作だけでなく、サイドドア14を押したり引いたりする動作についても上記取手部176bを把持した状態で行うことができるため、ラッチ機構51のロック解除用に設けられたこの回動レバー176の取手部176bを、サイドドア14の開放操作や閉止操作を行う際の把持部として兼用できるという利点がある。
【0036】
また、上記実施形態では、車幅方向中央付近に配設された運転席シート10の左右両側の斜め後方に、左右一対の後席シート12,12を配設するとともに、これら左右一対の後席シート12,12の前後方向の設置位置を、各後席シート12,12の前方部が側面視で上記運転席シート10と部分的に重複するような位置に設定したため、上記運転席シート10および後席シート12を配設するのに要する室内スペースの前後長を短くすることができ、これに応じて車体1をよりコンパクト化・軽量化することができる。また、車室フロア3の上面部に突設されたフロアトンネル22上に上記運転席シート10を設置するとともに、このフロアトンネル22の平面形状を、その幅寸法が車体1の後方側に至るほど小さくなるように形成したため、後席シート12に着座した乗員の足元スペースが上記フロアトンネル22によって大きく狭められてしまうことを有効に回避しつつ、運転席シート10に着座した乗員の足元スペースをより広く確保することができる。すなわち、フロアトンネル22を平面視で後窄まりの形状に形成し、これに応じてフロアサイド部20を平面視で後拡がりの形状に形成したことにより、図11に示すように、前席(運転席)乗員の足元スペースとなるフロアトンネル22の前方部の幅寸法Aと、後席乗員の足元スペースとなるフロアサイド部20の後方部の幅寸法Bとを、ともに大きく確保することができる。この結果、運転席シート10および後席シート12に着座した乗員の足元スペースをともに必要充分に確保しながら、車体1のコンパクト化・軽量化を効果的に図ることのできる自動車の車体構造を実現することができる。
【0037】
また、上記実施形態のように、左右一対の後席シート12,12を、それぞれの前面が車幅方向の斜め外側を向くように配設した場合には、例えば後輪用ホイールハウスの張り出し部34のような障害物が車室後端部に存在するために後席シート12の後方部の設置スペースが制限されるような状況下においても、この後席シート12のシート幅を比較的広く確保しながら、上記障害物を避けた状態で当該後席シート12を問題なく設置できるという利点がある。すなわち、図12に示すように、後席シート12を真っ直ぐ前方に向けて配設した場合には(図中の二点鎖線参照)、後方側にある上記ホイールハウスの張り出し部34(および前方側にある運転席シート10の後端部)を避けた状態において比較的小さい幅寸法Dしかシート幅を確保できないのに対し、上記のように後席シート12を車幅方向外側の斜め前方を向けて配設した場合には、シート幅として上記幅寸法Dよりも相対的に大きい幅寸法Cを確保することができるのである。
【0038】
さらには、後席シート12を上記のような方向に配設することにより、図11に示すように、この後席シート12に着座した乗員に、平面視で後窄まりに形成された上記フロアトンネル22の側壁面部(すなわち段差部21)と略平行に足を配置させることができるため、当該後席乗員の足元に上記段差部21が近接してしまうことを回避することができ、後席乗員の足元スペースを略左右均等に確保できるという利点もある。
【0039】
また、上記実施形態のように、車体1の後方側に至るほど高さが低くなる後下がりの傾斜状態でフロアサイド部20を設置した場合には、後席乗員の足元が載置されるフロアサイド部20の後方部の設置高さを低くすることができ、その結果図13に示すように、後席乗員の膝の折り曲げ角度Eを相対的に小さくして当該乗員の着座姿勢をより安楽なものにすることができる。
【0040】
さらに、フロアサイド部20を上記のような後下がりの傾斜状態で設置したことにより、上記フロアトンネル22の側壁面部からなる段差部21の高さを車体1の前方側に至るほど低くできるため、乗員が運転席シート10(図11)への乗降時に跨ぐ必要のある上記段差部21の前方部の高さを相対的に低くでき、運転席シート10への乗降性を効果的に向上させることができる。さらには、このように段差部21の前方部の高さを低くしたことにより、この段差部21が後席乗員に与える圧迫感を、後席乗員が足を延ばした状態(図13の二点鎖線参照)においてある程度緩和できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動車の外観を示す平面図である。
【図2】サイドドアを開けた状態における自動車の斜視図である。
【図3】サイドドアのルーフ対応部の車内側を示す斜視図である。
【図4】サイドドアのルーフ対応部の一部切欠き斜視図であり、このルーフ対応部に設けられたドア操作部の構造を説明するための図である。
【図5】上記ルーフ対応部およびドア操作部の断面図である。
【図6】サイドドアを開閉操作する手順を説明するための図である。
【図7】車室内の状況を示す平面図である。
【図8】車室内の状況を示す側面図である。
【図9】車室フロアの形状を示す斜視図である。
【図10】運転席シートに着座した乗員が上記ドア操作部を操作する状況を説明するための図である。
【図11】運転席シートおよび後席シートに乗員が着座した状態における車室内の状況を説明するための図である。
【図12】後席シートの配設方向とシート幅の関係について説明するための図である。
【図13】後席シートに乗員が着座した状態における車室内の状況を説明するための図である。
【図14】上記ドア操作部の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
1 車体
5 側面開口部
8 ルーフ部
9 ルーフ切込み部
10 運転席シート(乗員用シート)
14 サイドドア
51 ラッチ機構
54 ルーフ対応部
60 ドア操作部
74a (凹部の)内壁面
75 凹部
76 ハンドル部材
176 回動レバー
176a 回転軸部
176b 取手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面部から所定距離離れた位置に乗員用シートが配設された自動車の車体構造であって、
上記乗員用シートへの乗降口として車体の側面部に形成された側面開口部と、
車体のルーフ部の所定範囲が上記側面開口部と連続して切り欠かれることによって形成されたルーフ切込み部と、
前端部が車体に枢着されて上記側面開口部およびルーフ切込み部を開閉するサイドドアとを備え、
上記サイドドアは、その上端部に、上記ルーフ切込み部に対応して車幅方向内側に突出した形状を有するルーフ対応部を有し、
該ルーフ対応部の車内側面には、上記乗員用シートに着座した乗員が上記サイドドアを開閉する際に手を掛けて操作するドア操作部が設けられていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の自動車の車体構造において、
上記サイドドアには、その閉止状態を保持するために車体側部材と係合可能に構成されたラッチ機構が設けられ、
上記ドア操作部は、該ラッチ機構と連係されたハンドル部材を有し、
該ハンドル部材は、車外側へ操作されるのに応じて上記ラッチ機構のロック状態を解除するように構成されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項3】
請求項2記載の自動車の車体構造において、
上記ドア操作部は、開放状態にある上記サイドドアを車内側に引き寄せる際の手掛かりとなる手掛け部を有することを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項4】
請求項2記載の自動車の車体構造において、
上記ハンドル部材は、上記ルーフ対応部の車内側面に設けられた凹部内に収容されており、
上記手掛け部は、該凹部の内壁面によって構成されていることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項5】
請求項2記載の自動車の車体構造において、
上記ハンドル部材は、上記ルーフ対応部の車内側面に軸回りに回転可能に取り付けられた回転軸部とこの回転軸部から車体の前後方向に延びるように設置された取手部とを有する回動レバーであり、上記取手部を把持した乗員によって車外方向に回動操作されるのに応じて上記ラッチ機構のロック状態を解除するように構成されていることを特徴とする自動車の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−245974(P2007−245974A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73465(P2006−73465)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】