説明

自動車の開閉構造

【課題】この発明は、ロック/アンロック機構を電気的に駆動させるために設けられる部材と、キーシリンダとを開閉体に取付けたとしても、部品点数の増加を抑制しつつ、意匠性の悪化を抑制できる自動車の開閉構造を提供することを目的とする。
【解決手段】トランクリッド1をロック/アンロックするラッチユニット3と、ラッチユニット3を電気的に駆動させるための押しボタン7とを備え、トランクリッド1の上部の後面に開口部1bを形成し、該開口部1bにオーナメント6と押しボタン7とを取付けた。さらに、トランクリッド1に対して着脱可能とされ、ラッチユニット3を電気的に駆動させるための押しボタン7を備え、トランクリッド1に装着された押しボタン7の内側にキーシリンダ11を配設し、該キーシリンダ11を、トランクリッド1から押しボタン7が取外された状態にて操作可能とすべくトランクリッド1に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の開閉構造に関し、特に、車体に形成した開口を覆う開閉体と、該開閉体をロック/アンロックするロック/アンロック機構とを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンキーを用いずに車体の開閉体をアンロック操作できるスマートエントリーシステムが広く知られている。
【0003】
また、リヤゲートやトランクリッド等といった開閉体を備え、前記スマートエントリーシステムを採用したものにおいて、ロック/アンロック機構の操作に関するスイッチを後部開閉体のフィニッシャーに取付け、車両後部側から操作可能にしたものも知られている(特許文献1参照)。
【0004】
前記特許文献1では、上述したように、後部開閉体のフィニッシャーに前記スイッチを取付けることにより、スイッチをフィニッシャーと一体化させて目立たなくすることができるとしている。
【0005】
ところで、このようなスマートエントリーシステムにおいて、バッテリ容量の低下等により電力供給が困難となった場合でも開閉体のロック/アンロック機構の操作が行えるように、非常用としてキーシリンダを並設することが考えられる。
【0006】
そこで、前記特許文献1におけるスイッチと同様に、キーシリンダを、特許文献2に開示されているように開閉体のガーニッシュ(フィニッシャー)に取付けて、キーシリンダをも目立たなくすることも考えられる。
【0007】
【特許文献1】特開2005−22438号公報
【特許文献2】特開2001−26220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スイッチ、キーシリンダを、例えガーニッシュ、フィニッシャー等の装飾部材に取付けたとしても、これらをともに開閉体の外表面上に並設すると、開閉体の外観を損ねてしまい、意匠性を悪化させてしまうおそれがある。
【0009】
この発明は、ロック/アンロック機構を電気的に駆動させるために設けられる部材と、キーシリンダとを開閉体に取付けたとしても、部品点数の増加を抑制しつつ、意匠性の悪化を抑制できる自動車の開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の自動車の開閉構造は、車体に形成した開口を覆う開閉体と、該開閉体をロック/アンロックするロック/アンロック機構と、上記開閉体に対して着脱可能とされ、上記ロック/アンロック機構を電気的に駆動させるためのロック/アンロック機構操作部材とを備え、上記開閉体に装着された上記ロック/アンロック機構操作部材の内側にキーシリンダを配設し、該キーシリンダを、上記開閉体から上記ロック/アンロック機構操作部材が取外された状態にて操作可能とすべく上記開閉体に固定したことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、バッテリ容量の低下等の事態が生じ、キーシリンダを操作する必要性が生じた場合を除けば、ロック/アンロック機構操作部材でキーシリンダを隠蔽することができるため、意匠性の悪化を抑制できる。
【0012】
さらに、ロック/アンロック機構操作部材を利用してキーシリンダを隠蔽することにより、別途カバー部材を設ける必要がなくなるため、部品点数の増加を抑制できる。
【0013】
なお、本発明において「内側」とは、車両外部から見て、開閉体内側、車室内側を意味する。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記ロック/アンロック機構操作部材に電気ケーブルの一端を接続するとともに、該電気ケーブルの他端を前記開閉体内に配索したことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ロック/アンロック機構操作部材を取外した時、開閉体の内側まで配索される電気ケーブルによりロック/アンロック機構操作部材の落下を防止できるため、ロック/アンロック機構操作部材の紛失といったトラブルを防止できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記開閉体にオーナメントを備え、前記ロック/アンロック機構操作部材を上記オーナメントに取付けたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、オーナメントにロック/アンロック機構操作部材を取付けることにより、ロック/アンロック機構操作部材が開閉体外表面において、外観上孤立することが防止され、意匠性の悪化をより抑制できる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記オーナメントは、前記開閉体に固着した平面状のベース部と、該ベース部とともに同一面を形成し、且つ上記ベース部に対し着脱自在な平面状のキャップ部と、造形ラインが該キャップ部の縁を沿うように上記ベース部に固着した造形部とを備え、前記ロック/アンロック機構操作部材を、押圧操作により上記キャップ部に対して変位可能に取付けたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ベース部とキャップ部との境界を、造形部の造形ラインに合わせているため、キャップ部の存在を目立たなくすることができ、意匠性の悪化をより抑制できる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記キャップ部に、前記ロック/アンロック機構操作部材の取付け部位の周囲を囲み、他の部位に対して内側に突出する突出部を形成し、前記ベース部に、上記突出部に隣接する位置まで延びる延出部と、該延出部内側端部から延び、上記突出部と嵌合する嵌合部とを形成し、上記突出部の外周と上記嵌合部との間にシール部材を設けたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、突出部の外周にシール部材を設けることにより、キーシリンダの先端を可及的に開閉体外側へ位置させることができるため、キーシリンダの操作性の悪化を抑制できる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、前記嵌合部から内側に連続的に延び、前記キーシリンダをガイドし、位置決めするガイド部を形成したことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、キーシリンダの開閉体への取付け時において、オーナメントのベース部に形成されたガイド部にキーシリンダを挿通させることにより、キーシリンダを、車両外側より回転操作可能な所定位置に確実にガイド、位置決めすることができる。
【0024】
この発明の自動車の開閉構造は、車体に形成した開口を覆う開閉体と、該開閉体をロック/アンロックするロック/アンロック機構と、上記開閉体に対して着脱可能とされ、上記ロック/アンロック機構を電気的に駆動させるための操作信号を受信するロック/アンロック機構操作信号受信部とを備え、上記開閉体に装着された上記ロック/アンロック機構操作信号受信部の内側にキーシリンダを配設し、該キーシリンダを、上記開閉体から上記ロック/アンロック機構操作信号受信部が取外された状態にて操作可能とすべく上記開閉体に固定したことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、バッテリ容量の低下等の事態が生じ、キーシリンダを操作する必要性が生じた場合を除けば、ロック/アンロック機構操作信号受信部でキーシリンダを隠蔽することができるため、意匠性の悪化を抑制できる。
【0026】
さらに、ロック/アンロック機構操作信号受信部を利用してキーシリンダを隠蔽することにより、別途カバー部材を設ける必要がなくなるため、部品点数の増加を抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、ロック/アンロック機構を電気的に駆動させるためのロック/アンロック機構操作部材を開閉体に対して着脱可能とし、該ロック/アンロック機構操作部材の内側にキーシリンダを配設することにより、ロック/アンロック機構操作部材でキーシリンダを隠蔽することができるため、部品点数の増加を抑制しつつ、意匠性の悪化を抑制できる。
【0028】
また、この発明によれば、ロック/アンロック機構を電気的に駆動させるための操作信号を受信するロック/アンロック機構操作信号受信部を開閉体に対して着脱可能とし、該ロック/アンロック機構操作信号受信部の内側にキーシリンダを配設することにより、ロック/アンロック機構操作信号受信部でキーシリンダを隠蔽することができるため、部品点数の増加を抑制しつつ、意匠性の悪化を抑制できる。
【0029】
また、ロック/アンロック機構操作信号受信部を開閉体に備えたことにより、ロック/アンロック機構操作信号受信部と開閉体の外表面とで連続的な外表面を形成できるため、意匠性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図6に示す第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る開閉構造を有する車両後部を示す斜視図であり、図2は、トランクリッド1のオーナメント6を示す斜視図であり、図2(a)は、キャップ部62をベース部61に装着した状態を示し、図2(b)は、キャップ部62がベース部61から取外された状態を示し、図2(c)は、キャップ部62の内側面を示す斜視図である。図3は、図2におけるA−A線矢視断面図、図4は、トランクリッド1のインナパネル1cを車両前側から見た図であり、トランクリッド1における配線並びに、スマートエントリーシステムを示す系統図である。図5は、トランクリッド1における、オーナメント6、キーシリンダ11の取付け構造を示す側断面図であり、図6は、キーシリンダ11の、トランクリッド1への取付け構造を示す分解斜視図である。なお、図中において矢印(F)は車両前方を示し、矢印(R)は車両後方を示す。
【0031】
車両後部には、図1に示すように、前端部に設けられたヒンジ(不図示)を支点にして開閉自在とされるトランクリッド(後部開閉体)1を備えており、このトランクリッド1を、車体2に閉止させた状態(以下、閉状態と略記する。)に保持できる機構を備えており、主に、トランクリッド1の下端近傍に設けられるラッチユニット3と、車体2の後部開口部下縁に設けられるストライカ4とから構成される。
【0032】
ストライカ4は、トランクリッド1の閉動作時において、ラッチユニット3と係合され、互いの係合状態を保持することで、トランクリッド1の閉状態をロックできるように構成されている。
【0033】
ところで、車両後部には、ストップランプ、ウィンカーランプ等を一体的に備えたテールランプ5、トランクリッド1の後面の略中央部に、車両の車種や製造社名等を一瞥して認識できるように、車種名などを示す英字や数字、あるいはエンブレム等がデザインされたオーナメント6が取付けられている。
【0034】
オーナメント6は、トランクリッド1のアウタパネル1aの略中央部に、開口部1bに嵌め込まれるようにして取付けられている。そして、このオーナメント6の一端には、ラッチユニット3を電気的に駆動するための押しボタン7(以下、ボタン7と略記する。)が一体的に設けられている。
【0035】
ボタン7は、上述したスマートエントリーシステムに適用することができる。例えば、図示のものは、トランクリッド1がロックされている状態で、携帯用送受信機8(以下、携帯機8と略記する。)を携帯した乗員(利用者)がボタン7押すと、車両に搭載された車載送信アンテナ9からリクエスト信号rが送信されて、それに対応して携帯機8の送信アンテナ8aから送信されるID信号iを車載受信アンテナ10で受信し、そのIDコードの認証を行った後、即ち、ID信号i中のIDコードが車両内の制御ユニットに登録されているIDコードと一致した後、ラッチユニット3とストライカ4との係合状態を解除し、アンロック状態とするようなシステムである。
【0036】
このように、トランクリッド1の後面の略中央部の開口部1bに、オーナメント6とともに、ラッチユニット3を電気的に駆動するためのボタン7を取付けたことにより、ボタン7の位置が乗員の手の届き易い位置となり、ボタン7の操作性が維持される。
【0037】
なお、開閉体にフィニッシャーを設けたものにおいては、前記特許文献1にも開示があるように、その下部に凹部が形成され、フィニッシャーと凹部とにより後部開閉体を開操作するためのハンドル部を構成する場合が多いが、本実施形態においては、フィニッシャーを不要とすることができるため、上記凹部を省略することができる。従って、車両後部における凹凸部位を減らすことにより意匠性を向上させることもできる。ここで、本実施形態のように、フィニッシャーを設けない場合は、上記ハンドル部の代わりに、トランクリッド1のアンロック状態において、該トランクリッド1を持ち上げる、特開平1−223283号公報に開示されているようなリフトアップ部材を設け、トランクリッド1と車体2の後部開口部下縁との間に隙間を形成できるようにすればよい。
【0038】
ところで、本実施形態においては、ボタン7によるラッチユニット3の電気的な駆動のみならず、例えば、バッテリ容量の低下等により電力供給が困難となる事態を考慮して、アウタパネル1aの、オーナメント6、ボタン7の内側の部位には、図2にも示すように、キーの差込み、回転操作によって、ラッチユニット3を機械的に駆動できるキーシリンダ11が配設されている。
【0039】
次に、図2〜図5に基づいて本実施形態における、オーナメント6、ボタン7、キーシリンダ11の構造について説明する。
オーナメント6は、図2に示すように、トランクリッド1のアウタパネル1aに固着された平面状のベース部61と、該ベース部61とともに同一面を形成し、且つ上記ベース部61に対し着脱自在とされる平面状のキャップ部62と、英字の「M」の字を形成する造形ライン(図示のものはマツダ株式会社の登録商標)が、該キャップ部62の縁を沿うように形成され、ベース部61に固着された造形部63とを備えている。ここで、造形部63によって囲まれた領域が形成されていることにより着脱自在のキャップ部62を設けることができ、しかも、ベース部61とキャップ部62との境界が造形部63の造形ラインに合わされているため、キャップ部62の存在を目立たなくすることができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、造形部63を、英字の「M」の字を表すものとしているが必ずしもこれに限定されない。上述したように、オーナメント6内に、造形部63で囲まれた領域が形成されるものであればよい。
【0041】
キャップ部62は、アウタパネル1aに対して着脱可能とされおり、図2(a)示すように、ベース部61に装着された状態から、図2(b)に示すように、キャップ部62をベース部61(トランクリッド1)から取外すことができる。この時、図示のようにキーシリンダ11がオーナメント6内の外表面に現れ、差込み口11aへのキーの差込みが可能な状態となる。
【0042】
また、キャップ部62を取外した時には、図示のように、ベース部61の挿通孔61aに挿通されてアウタパネル1aの内側へ配索されるハーネス14がスイッチ12に接続されていることにより、キャップ部62の落下は防止される。従って、キャップ部62の紛失といったトラブルを確実に防止できる。
【0043】
ここで、キャップ部62には、図2(c)に示すように、その内側において、キーシリンダ11側に延びる筒状の突出部62aが形成されており、該突出部62aの内部には、前記スイッチ12が内蔵されている。スイッチ12は、ボタン7の押圧操作の有無を電気信号に変換する適宜の出力回路(不図示)が内蔵された部材である。なお、突出部62aの外周面に取付けられた環状の部材15はラバー材質からなるOリングである。
【0044】
ボタン7は、図3に示すように、キャップ部62に一体的に取付けられたラバー材質からなるカバー体であり、乗員がボタン7を押圧操作した時、ボタン7が弾性変形を伴って、スイッチ12のボタン12aをベース12bに対して変位させ、前記出力回路にて電気信号を生成させるようになっている。
【0045】
ここで、キャップ部62がベース部61に装着された状態においては、図示のように、ボタン7、スイッチ12の内側において、キーシリンダ11が配設される位置関係となっており、キャップ部62によってキーシリンダ11の差込み口11a側が被覆される構成となっている。これにより、バッテリ容量の低下等の事態が生じ、キーシリンダ11を操作する必要性が生じる場合を除けば、ボタン7、スイッチ12(キャップ部62)によりキーシリンダ11を隠蔽することができるため、意匠性の悪化を抑制できる。
【0046】
また、キャップ部62に取付けられたボタン7を利用してキーシリンダ11を被覆することにより、別途カバー部材を設ける必要がなくなるため、部品点数の増加を抑制できるという効果も奏する。
【0047】
また、オーナメント6内にボタン7を取付けることにより、ボタン7がトランクリッド1のアウタパネル1a上において、外観上孤立することが防止されている。即ち、ボタン7をアウタパネル1a上において、より目立たなくすることができ、意匠性の悪化がより抑制されている。
【0048】
ところで、オーナメント6のベース部61においては、キーシリンダ11の先端から車両後方に延びる延出部61bが形成されている。この延出部61bの内周には、車両外側からキーシリンダ11へのアクセスを可能とし、且つ、キャップ部62の突出部62aと嵌合可能な嵌合孔部61cが形成されている。さらに、ベース部61には、嵌合孔部61cから車両前方に延びるガイド部61dが形成されている。このガイド部61dは、キーの差込み口11aを含む中心部分の回転体11bと、該回転体11bの外周を覆う非回転の外筒11cとを収納したケース16を嵌め込むことができる程度の孔径を有している。
【0049】
ここで、キャップ部62の突出部62aと、ベース部61側の延出部61bとを嵌合させた状態においては、突出部62aの外周と嵌合孔部61cとの間にシール部材としてのOリング15を介在させた状態となっている。このOリング15により、スイッチ12、ハーネス14が配索されるアウタパネル1aの内側を雨水等から保護できる。
【0050】
また、Oリング15を突出部62aの先端に取付けた場合、その分、キーシリンダ11の差込み口11a側がアウタパネル1aの内側の奥まった位置に配設されることとなり、キーの差込み操作の操作性を悪化させるおそれがあるが、本実施形態においては、突出部62aの側面の外周に取付けているため、キーシリンダ11の差込み口11a側を可及的に後方(アウタパネル1a外側)へ位置させることができ、上述したような操作性の悪化が抑制されている。
【0051】
また、Oリング15は、突出部62aの外周と嵌合孔部61cとの間に挟まれることにより、嵌合孔部61cに対して突出部62aの位置がずれることを抑制しており、これにより、特別な係止部材を形成することなく簡素な構成でキャップ部62が抜け落ちることを防止している。
【0052】
なお、図3に示すように、造形部63(またはベース部61)とキャップ部62の縁部との間に隙間Gを形成してもよい。この隙間Gの幅は、乗員の指先を引っ掛けることができる程度に広く、且つ、車両後部における外観を損なわない程度に狭く形成されているものが好ましく、これにより、キーシリンダ11の操作を行うためのキャップ部62の取外し操作を行い易くすることができる。
【0053】
ところで、スイッチ12に接続されるハーネス14は、挿通孔61aに挿通され、図4に示すように、車幅方向に配索されるハーネス17に接続されている。このハーネス17は、一端が前記ラッチユニット3等の各補機を制御するためのコントロールユニット18に接続されている。なお、上記各ハーネス14、17は、コントロールユニット18により各種制御を行うための信号線と、不図示の電源から電力を各補機に供給する電力線とにより構成されている。なお、不正にトランクリッド1が開けられたか否かを検出すべく専用の検出手段を設けたものにおいては、ハーネス17、19に、上記検出手段による検出結果をコントロールユニット18へ出力することができる信号線を配索してもよい。
【0054】
ここで、トランクリッド1が閉じられ、ロックされた状態でボタン7(図3参照)を押圧操作すると、その操作信号はコントロールユニット18に入力されて、該コントロールユニット18からの出力信号に基づいて車載送信アンテナ9から車外に向かってリクエスト信号rが送信される。そして、該リクエスト信号rに対して車外の携帯機8の送信アンテナ8aからID信号iが送信されると、そのID信号iは車載受信アンテナ10で受信されて、コントロールユニット18に入力される。このID信号iに含まれているIDコードの認証が得られれば、ハーネス17は、一端がラッチユニット3と接続されるハーネス19とも接続されているため、コントロールユニット18からラッチユニット3内に設けられたモータ31へラッチ開信号がハーネス17、19を介して送信され、モータ31を通電制御できる。
【0055】
モータ31は、上記通電制御により回転駆動を開始し、このモータ31の回転駆動力がラッチユニット3内のフック32に伝達されることで、フック32は、枢軸33を中心に回動するようになっている。そして、このフック32の回動により、ストライカ4とフック32との係合は解除され、アンロック状態とすることができる。
【0056】
ここで、逆に、トランクリッド1のアンロック状態においてボタン7を押圧操作した場合は、ストライカ4とフック32とが係合し、ロック状態とすることができる。
【0057】
なお、本実施形態で説明したスマートエントリーシステムはあくまでも一例であり、例えば、短時間周期毎に常時リクエスト信号rを車両側から発信するものであってもよい。この場合、携帯機8を携帯した乗員がトランクリッド1に接近し、上記発信されたリクエスト信号rを携帯機8が受信すると、自動的にIDコードの認証のステップに入ることができる。
【0058】
ここで、本実施形態においては、キャップ部62(図3参照)が取外された状態でキーシリンダ11の回転操作によりラッチユニット3を駆動することができるが、このキーシリンダ11は、図4、図5に示すように、前記ケース16が、トランクリッド1のインナパネル1cに溶着されたレインフォースメント20に、ボルト21B、ナット21Nで締結されることにより、トランクリッド1に固定されている。
【0059】
さらに、キーシリンダ11には、差込み口11a側と反対側にて第1操作ロッド22が取付けられ、キーの回転操作によって回転体11bとともに回動可能となっている。そして、第1操作ロッド22は、連結部材23を介して、第2操作ロッド24に連結され、キーシリンダ11での回転操作による回転駆動力を、ラッチユニット3に対して伝達できるようになっている。ラッチユニット3には、モータ31、フック32、枢軸33の他、伝達レバー34が備えられ、第2操作ロッド24の一端に連結されている。
【0060】
従って、乗員がキーを用いてキーシリンダ11の回転体11bを回動操作すると、このような、第1、第2操作ロッド22、24、連結部材23により、ラッチユニット3の伝達レバー34を介してフック32に駆動力が伝達され、フック32を、枢軸33を中心に回動させることができ、このフック32の回動により、ストライカ4とフック32との係合を解除して、アンロック状態とすることができる。
【0061】
ところで、キーシリンダ11は、上述したように、レインフォースメント20に、ボルト21B、ナット21Nで締結されているが、その取付けにあたっては、図6に示すように、先ず、キーシリンダ11のケース16が、レインフォースメント20に形成された開口部20aに挿通され、レインフォースメント20のボルト孔20b、20bと、ケース16の平板部16a、16bに形成されたボルト孔16c、16dとの位置合わせが行われる。
【0062】
この位置合わせ時には、キーシリンダ11の先端を、オーナメント6のベース部61に形成されたガイド部61dに挿通させることができるようになっている。これにより、キーシリンダ11の取付け時において、該キーシリンダ11を車両外側より回転操作可能な所定位置に確実にガイド、位置決めすことが可能になる。
【0063】
また、ケース16のボルト孔16c、16dは、ボルト21B、ボルト孔20b、20bに対して遊びを有する形状をなしている。これにより、レインフォースメント20の開口部20a等に成形誤差(公差)が生じていたとしても、これを上記遊びにより吸収することができるため、キーシリンダ11の取付け作業の作業性を向上させることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、図7に示す第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態に係る、開閉構造における接触センサ107の取付け構造を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
上述した第1実施形態では、トランクリッド1のラッチユニット3を電気的に駆動する操作部材として、押圧操作によりスイッチ12のベース12bに対して変位可能なボタン7を設ける構成としたが、本発明においては必ずしもこれに限定されない。例えば、上記ボタン7に代わりに、オーナメント106のキャップ部162には、乗員の指が触れたことを検出する接触センサ107を設けることもできる。
【0066】
接触センサ107としては、乗員が指を触れた際、その押圧力を検出する圧力検出センサで構成することができる。この場合、例えば、ベース112には、検出した押圧力の値を電気信号に変換する変換回路を設けることができ、コントロールユニット18(図4参照)にて予め押圧力の閾値を記憶させることにより、接触センサ107の検出結果と上記閾値とを比較し、押圧力の検出値が閾値を超えると、モータ31(図4参照)へラッチ開信号を出力するようにすることができる。
【0067】
このように、操作部材を接触センサ107で構成することにより、第1実施形態におけるボタン7に比べて、キャップ部162から突出する操作部材の突出量を抑えることができるため、車両を後方から見た際の見映えへの影響をより少なくすることができ、意匠性をより向上させることができる。
【0068】
また、上記接触センサ107は、指紋検出機能を有するものであってもよい。この場合、乗員が前記IDコードを記憶させた携帯機8を携帯していなくても、接触センサ107に指を触れるだけで、車両の所有者か否かが識別され、適宜の認証手段による認証のステップを経てトランクリッド1を操作することができる。
【0069】
なお、図7に示す本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、オーナメント106は、ベース部161と、キャップ部162と、造形部163とから構成され、ベース112のハーネス114は、ベース部161の挿通孔161aに挿通され、キャップ部162の突出部162aは、延出部161bの内周に形成された嵌合孔部161cと嵌合している。さらに、キーシリンダ11は、第1実施形態と同様に、ガイド部161dに嵌め込まれている。
【0070】
(第3実施形態)
次に、図8に示す第3実施形態について説明する。図8は、第3実施形態に係る開閉構造におけるオーナメント206を示す斜視図である。なお、上述した実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
上述した各実施形態では、乗員がオーナメントの操作部材に直接触れることで操作を行うこととしていたが、本発明においては必ずしもこれに限定されない。例えば、図8に示すように、オーナメント206のキャップ部262の内側に車載受信アンテナ210を取付け、携帯機208からの無線操作信号(ID信号i)を、キャップ部262の外表面に取付けられた受信ヘッド207で受信するようにしてもよい。
【0072】
この場合、例えば、携帯機208側に、ラッチユニット3(図1参照)を電気的に駆動するためのスイッチ208bを設け、乗員は該スイッチ208bを操作すると、送信アンテナ208aから前記無線操作信号が出力されるようになっている。ここで、トランクリッド(図1参照)が閉じられロック状態とされている時、乗員がスイッチ208bを操作すると、上記無線操作信号を車載受信アンテナ210が受信し、以降、上述した各実施形態と同様に、コントロールユニット18(図4参照)に操作信号が入力され、ラッチユニット3とストライカ4との係合を解除してアンロック状態とすることができる。
【0073】
このように、オーナメント206のキャップ部262の外表面に、受信ヘッド207に取付けたことにより、ラッチユニット3(図1参照)の駆動を遠隔操作で行わせることができる。さらに、ラッチユニット3を電気的に駆動させるための操作信号を受信する受信ヘッド207をトランクリッド1に対して着脱可能とし、該受信ヘッド207の内側にキーシリンダ11を配設することにより、受信ヘッド207でキーシリンダ11を隠蔽することができるため、部品点数の増加を抑制しつつ、意匠性の悪化を抑制できる。
【0074】
また、受信ヘッド207とオーナメント206のキャップ部262ひいては、アウタパネル1aとで連続的な外表面を形成することができるため、第1の実施形態においてボタン7を取付けた場合に比べて車両後部における意匠性を向上させることができる。
【0075】
なお、本実施形態においても、上述した各実施形態と同様に、造形部263によって囲まれた領域が形成されていることにより着脱自在のキャップ部262を設けることができ、しかも、ベース部261とキャップ部262との境界が造形部263の造形ラインに合わされているため、キャップ部262の存在を目立たなくすることができる。
【0076】
(第4実施形態)
次に、図9に示す第4実施形態について説明する。図9は、第4実施形態に係る開閉構造における押しボタン307の取付け構造を示す断面図である。なお、上述した実施形態と同様の構成要素については、その説明を省略する。
【0077】
上述した各実施形態では、前記ボタン7、接触センサ107をオーナメント6のキャップ部62、受信ヘッド207をオーナメント206のキャップ部262に取付けることとしていたが、本発明においては必ずしもこれに限定されない。例えば、オーナメントに関わらず、図9に示すように、押しボタン307(以下、ボタン307と略記する。)の内側にキーシリンダ11を配設した構造であればよい。
【0078】
例えば、本実施形態においては、ボタン307が、アウタパネル301aとともに、車両後部の外表面に露出しており、乗員により直接押圧操作されるキャップ部307aと、アウタパネル301aに形成された開口部301bに嵌め込まれ、内側に押圧片307b1が形成された可動筒307bとにより構成される。
【0079】
キャップ部307aは、二点鎖線で示すように、可動筒307b(アウタパネル301a)に対して着脱自在とされ、可動筒307bに装着した状態においては、可動筒307bの外側開口部を被覆するようになっている。また、可動筒307bは、乗員によるキャップ部307aの押圧操作によりアウタパネル301aの内側へ変位可能となっている。ここで、可動筒307bの外周と開口部301bとの間には、アウタパネル1aの内側をシールする弾性変形可能なシールリング315が取付けられ、可動筒307bが一端変位したとしても、押圧力から開放されると、元の位置に復帰できるようになっている。
【0080】
さらに、ボタン307のキャップ部307aの内側には、キーシリンダ11が配設されており、キャップ部307aの可動筒307bからの取外しにより、キーシリンダ11が現れ、差込み口11aへのキーの差込みが可能な状態となる。
【0081】
キーシリンダ11から離れた位置には、可動筒308bの変位により、押圧片307b1によって押圧操作されるスイッチ312が設けられている。スイッチ312は、押圧片の307b1の押圧操作によって変位可能なボタン312aと、該ボタン312aの押圧操作の有無を電気信号に変換する適宜の出力回路(不図示)が内蔵されたベース312bとから構成される。
【0082】
このように、可動筒308bに対してキャップ部307aが着脱可能とされていることにより、上述した実施形態と同様に、ボタン307の操作のみならす、キャップ部307aの取外しにより、キーシリンダ11の差込み口11aへのキーの差込みをも行うことができる。
【0083】
なお、スイッチ312と、キーシリンダ11との間には、ボタン307のキャップ部307aが取外された状態を考慮して、適宜シール部材を配設することが好ましい。
【0084】
(その他の実施形態)
上述した各実施形態においては、車室の後側で、後方に突出するように荷室が設けられたセダンタイプの車両を示しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、リヤハッチ(リヤゲート)を車両後部に備えたワゴン、ミニバンタイプの車種に本発明を適用してもよい。さらに、車室の後側の後部開閉体のみならず、ボンネット等、車室の前側の前部開閉体に本発明を適用してもよい。
【0085】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のロック/アンロック機構は、ラッチユニット3に対応し、
以下同様に、
ロック/アンロック機構操作部材は、押しボタン7、307、スイッチ12、312、接触センサ107、ベース112に対応し、
電気ケーブルは、ハーネス14、17、19、114に対応し、
シール部材は、Oリング15に対応し、
ロック/アンロック機構操作信号受信部は、受信ヘッド207に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態に係る開閉構造を有する車両後部を示す斜視図。
【図2】トランクリッドのオーナメントを示す斜視図であり、(a)キャップ部をベース部に装着した状態を示す斜視図、(b)キャップ部がベース部から取外された状態を示す斜視図、(c)キャップ部の内側面を示す斜視図。
【図3】図2におけるA−A線矢視断面図。
【図4】トランクリッドのインナパネルを車両前側から見た図であり、トランクリッドにおける配線並びに、スマートエントリーシステムを示す系統図。
【図5】トランクリッドにおける、オーナメント、キーシリンダの取付け構造を示す側断面図。
【図6】キーシリンダ1の、トランクリッドへの取付け構造を示す分解斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る、開閉構造における接触センサの取付け構造を示す断面図。
【図8】本発明の第3実施形態に係る開閉構造におけるオーナメントを示す斜視図。
【図9】本発明の第4実施形態に係る開閉構造における押しボタンの取付け構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0087】
1、301…トランクリッド
3…ラッチユニット
6、206、306…オーナメント
7、307…押しボタン
11…キーシリンダ
12、312…スイッチ
14、17、19、114…ハーネス
15…Oリング
61、261…ベース部
62、262…キャップ部
63、263…造形部
107…接触センサ
112…ベース
207…受信ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の開閉構造において、
車体に形成した開口を覆う開閉体と、
該開閉体をロック/アンロックするロック/アンロック機構と、
上記開閉体に対して着脱可能とされ、上記ロック/アンロック機構を電気的に駆動させるためのロック/アンロック機構操作部材とを備え、
上記開閉体に装着された上記ロック/アンロック機構操作部材の内側にキーシリンダを配設し、
該キーシリンダを、上記開閉体から上記ロック/アンロック機構操作部材が取外された状態にて操作可能とすべく上記開閉体に固定した
自動車の開閉構造。
【請求項2】
前記ロック/アンロック機構操作部材に電気ケーブルの一端を接続するとともに、該電気ケーブルの他端を前記開閉体内に配索した
請求項1記載の自動車の開閉構造。
【請求項3】
前記開閉体にオーナメントを備え、
前記ロック/アンロック機構操作部材を上記オーナメントに取付けた
請求項1または2記載の自動車の開閉構造。
【請求項4】
前記オーナメントは、前記開閉体に固着した平面状のベース部と、
該ベース部とともに同一面を形成し、且つ上記ベース部に対し着脱自在な平面状のキャップ部と、
造形ラインが該キャップ部の縁を沿うように上記ベース部に固着した造形部とを備え、
前記ロック/アンロック機構操作部材を、押圧操作により上記キャップ部に対して変位可能に取付けた
請求項3記載の自動車の開閉構造。
【請求項5】
前記キャップ部に、前記ロック/アンロック機構操作部材の取付け部位の周囲を囲み、他の部位に対して内側に突出する突出部を形成し、
前記ベース部に、上記突出部に隣接する位置まで延びる延出部と、該延出部内側端部から延び、上記突出部と嵌合する嵌合部とを形成し、
上記突出部の外周と上記嵌合部との間にシール部材を設けた
請求項4記載の自動車の開閉構造。
【請求項6】
前記嵌合部から内側に連続的に延び、前記キーシリンダをガイドし、位置決めするガイド部を形成した
請求項5記載の自動車の開閉構造。
【請求項7】
自動車の開閉構造において、
車体に形成した開口を覆う開閉体と、
該開閉体をロック/アンロックするロック/アンロック機構と、
上記開閉体に対して着脱可能とされ、上記ロック/アンロック機構を電気的に駆動させるための操作信号を受信するロック/アンロック機構操作信号受信部とを備え、
上記開閉体に装着された上記ロック/アンロック機構操作信号受信部の内側にキーシリンダを配設し、
該キーシリンダを、上記開閉体から上記ロック/アンロック機構操作信号受信部が取外された状態にて操作可能とすべく上記開閉体に固定した
自動車の開閉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−211475(P2007−211475A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31914(P2006−31914)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】