説明

自動車内装材用基材及び自動車内装材

【課題】 ビニロン繊維を用いて、軽量化と形態安定性を両立できる自動車内装材を製造できる自動車内装材用基材、及び軽量かつ形態安定性を両立した自動車内装材を提供すること。
【解決手段】 本発明の自動車内装材用基材は、多孔性ベース材の片面又は両面に、ビニロン繊維が集束したストランドを含む不織布が積層されている。また、本発明の自動車内装材は、前記自動車用内装基材を備えている。好ましい自動車内装材は表皮材を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車内装材用基材及び自動車内装材に関する。より具体的には、天井材、リアパッケージトレイ、ドアトリム、フロアインシュレータ、トランクトリム、ダッシュインシュレータなどの自動車内装材、及び自動車内装材の構成材料である自動車内装材用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソフトな風合を有し、優れた外観を有する自動車内装材として、絡合不織布からなる表皮材と、この表皮材を補強するためのベース基材とを接着一体化したものが知られている。例えば、ベース基材としてポリウレタン発泡体層の両面にガラス繊維層を有するものを使用し、表皮材としてニードルパンチ絡合不織布を使用し、前記ベース基材と表皮材とをホットメルトフィルムによって融着一体化した自動車内装材が知られている。しかしながら、このような自動車内装材はガラス繊維を用いているが故に、焼却処分すると残渣が発生するという問題、内装材製造時に、ガラス繊維が作業者に刺さり、チクチクするという問題、更には、形態安定性を付与するために、ガラス繊維量が大量に必要であり、内装材の重量が重くなる結果、自動車の燃費が悪くなるという問題、等が指摘されていた。
【0003】
このような問題点を解決できる車両用ルーフトリム材として、「補強用の繊維層を有する基材と、この基材の下面に設けられた表皮材とを備えた車両用ルーフトリム材において、上記繊維層を構成する繊維として樹脂繊維(ビニロン繊維)が用いられた車両用ルーフトリム材」が提案されている(特許文献1)。このルーフトリム材によれば、焼却処分により残渣が発生せず、また、製造時における作業環境を改善できるものであったが、このような樹脂繊維(ビニロン繊維)を繊維層に用いた場合、軽量化のために繊維量を少なくすると内装材の形態安定性が不十分であり、繊維量を多くすると重くなり、軽量化と形態安定性の両立が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−74287号公報(請求項1、2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、ビニロン繊維を用いて、軽量化と形態安定性を両立できる自動車内装材を製造できる自動車内装材用基材、及び軽量かつ形態安定性を両立した自動車内装材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1にかかる発明は、「多孔性ベース材の片面又は両面に、ビニロン繊維が集束したストランドを含む不織布が積層されていることを特徴とする、自動車内装材用基材」である。
【0007】
本発明の請求項2にかかる発明は、「請求項1に記載の自動車用内装基材を備えている自動車内装材」である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1にかかる発明は、ビニロン繊維が集束したストランドを含む不織布は軽量であるにもかかわらず、多孔性ベース材に積層することによって、十分な形態安定性を付与できる自動車用内装基材であることを見出したものである。
【0009】
本発明の請求項2にかかる発明は、前記自動車用内装基材を備えているため、軽量かつ形態安定性を両立した自動車内装材である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自動車内装材の断面模式図
【図2】別の自動車内装材の断面模式図
【図3】別の自動車内装材の断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は多孔性ベース材を補強する不織布として、ビニロン繊維が集束したストランドを含んでいる点に特徴がある。このビニロン繊維が集束したストランドを含む不織布は軽量であっても、多孔性ベース材に積層することによって、自動車用内装基材(以下、単に「内装基材」と表記することがある)に十分な形態安定性を付与することができる。
【0012】
このビニロン繊維は、ポリビニルアルコールをアセタール化して製造した繊維であり、繊維自体の強度が優れているため、内装基材、ひいては自動車内装材の形態安定性を高めることができる。また、焼却処分しても残渣が生じず、更に、内装基材又は自動車内装材を製造する際に刺さることもないため、製造環境を良くすることができる。
【0013】
本発明においては、このようなビニロン繊維を集束したストランドの状態で含んでいることによって、軽量であっても内装基材又は自動車内装材の形態安定性を高めることができる。このストランドはビニロン繊維が集束していれば良く、撚りがかかっていても、撚りがかかっていない繊維同士が互いに平行な状態にあっても良い。また、集束の程度は特に限定するものではないが、幅0.3mm以上のストランドが存在しているのが好ましく、幅0.5mm以上のストランドが存在しているのがより好ましく、幅0.7mm以上のストランドが存在しているのが更に好ましい。また、多孔性ベース材を補強し、内装基材又は自動車内装材の形態安定性を高めやすいように、ストランドは不織布構成繊維全体の20mass%以上を占めているのが好ましく、30mass%以上を占めているのがより好ましく、40mass%以上を占めているのがより好ましい。
【0014】
なお、ビニロン繊維の繊度は特に限定するものではないが、補強効果を高める上では、1dtex以上であるのが好ましく、3dtex以上であるのがより好ましい。他方、均質な地合いであることができるように、100dtex以下であるのが好ましく、50dtex以下であるのがより好ましく、30dtex以下であるのがより好ましく、10dtex以下であるのが更に好ましい。また、ビニロン繊維の繊維長も特に限定するものではないが、補強効果を高める上では、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、ビニロン繊維のストランドが均一に分散することができず、繊維がもつれ、繊維塊となる傾向が強いため、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。
【0015】
本発明の不織布はビニロン繊維のストランドを含むものであるが、それ以外に、ストランド状態にはないビニロン繊維、熱融着性繊維等を含んでいることができる。前者のストランド状態にはないビニロン繊維を含んでいることによって、不織布の地合いが均一となり、また、ビニロン繊維自体が強度的に優れているため、不織布の強度を高めることができる。このビニロン繊維の繊度、繊維長はストランド構成ビニロン繊維と同様の範囲のものを使用できる。
【0016】
また、熱融着性繊維は繊維同士を熱融着することによって、不織布に強度と形態安定性を付与し、毛羽立ちや繊維の飛散を抑制できる。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。この熱融着性繊維を構成する樹脂は熱融着の際の熱によってビニロン繊維に悪影響を及ぼさないものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂など)などがあり、これら樹脂1種類以上から構成することができる。これらの中でも、ビニロン繊維との溶融温度の違いによる生産適合性、接着剤としての融着性能、後述の多孔性ベース材との接着に液状バインダを使用した場合のバインダとの親和性を考慮すると、低融点ポリエステル系樹脂を含む熱融着性繊維を好適に使用することができる。
【0017】
なお、熱融着性繊維の繊度は特に限定するものではないが、ビニロン繊維の繊度に合わせて選択するのが好ましい。つまり、効率的に融着交点を形成できるように、ビニロン繊維の繊度の1/10以上であるのが好ましい。他方、均一に融着できるように、ビニロン繊維の繊度の10倍以下であるのが好ましい。また、熱融着性繊維の繊維長も特に限定するものではないが、ビニロン繊維間の融着交点を形成しやすいように、1mm以上であるのが好ましく、3mm以上であるのがより好ましい。他方、均一に分散し、ビニロン繊維ともつれないように、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましく、30mm以下であるのが更に好ましい。
【0018】
本発明の不織布はビニロン繊維のストランド、ビニロン繊維、熱融着性繊維を含んでいることができるが、(ビニロン繊維のストランド):(ビニロン繊維):(熱融着性繊維)=20〜70:25〜75:5〜20の質量比で含んでいるのが好ましい。なお、本発明の不織布においては、前述のようなビニロン繊維のストランド、ビニロン繊維、熱融着性繊維以外に、不織布の補強作用を損なわない範囲内で、別の繊維を含んでいることもできる。
【0019】
本発明の不織布はビニロン繊維のストランドを含んでいることによって、優れた強度を有するものであるため、軽量で多孔性ベース材を補強し、形態安定性を付与することができる。具体的には、目付35〜80g/mであるにもかかわらず、十分な形態安定性を付与することができ、好ましくは40〜60g/mの目付を有する。なお、不織布の厚さは特に限定するものではないが、0.1〜0.7mmであるのが好ましく、0.3〜0.5mmであるのがより好ましい。
【0020】
このような不織布は、例えば、ビニロン繊維のストランド、熱融着性繊維を用いて、乾式法又は湿式法によりビニロン繊維のストランドを含む繊維ウエブを形成した後に、熱融着性繊維の融着作用により繊維同士を融着して製造することができる。
【0021】
より具体的な繊維ウエブの形成方法として、(1)ビニロン繊維のストランドと熱融着性繊維を、クリアランスを大きくとった開繊機により開繊不良を生じさせながら繊維ウエブを形成する方法、(2)ビニロン繊維のストランドを接着剤などで固定した後、熱融着性繊維とともに開繊機により繊維ウエブを形成する方法、(3)繊維ウエブ(好適には、熱接着性繊維を含む繊維ウエブ)上にビニロン繊維のストランドを散布した後、開繊機により繊維ウエブを形成する方法、などの乾式法、(4)ビニロン繊維のストランドと熱融着性繊維とを含むスラリーの攪拌時間、白水の粘度等を調節し、ビニロン繊維のストランドが残存する状態で抄き上げて繊維ウエブを形成する方法、などの湿式法を例示できる。これらの中でも、湿式法によると、不織布の地合いが均一で、多孔性ベース材全体を均一に補強できるため、好適な繊維ウエブの形成方法である。
【0022】
なお、いずれの方法により繊維ウエブを形成する場合にも、原料として投入したビニロン繊維のストランドがある程度ばらけ、投入時よりも集束の程度が低くなるため、そのばらける程度を考慮した上で、投入するビニロン繊維のストランドの集束の程度を決定する。なお、ビニロン繊維のストランドからばらけたビニロン繊維は繊維ウエブ及び不織布の地合いの向上に寄与し、結果として、内装基材の形態安定性向上に寄与する。
【0023】
また、ビニロン繊維のストランドと熱融着性繊維の投入質量比率は特に限定するものではないが、ビニロン繊維のストランドによる補強効果及び熱融着性繊維による強度と形態安定性に優れるように、(ビニロン繊維のストランド):(熱融着性繊維)=80〜95:20〜5であるのが好ましい。
【0024】
次いで、熱融着性繊維の融着作用により繊維同士を融着して不織布を製造できる。この熱融着性繊維の融着はビニロン繊維に悪影響を及ぼすことなく行えば良く、特に限定するものではないが、ビニロン繊維の軟化点220〜230℃よりも10℃以上低い温度であるのが好ましく、20℃以上低い温度であるのがより好ましい。なお、熱融着性繊維が確実に熱融着するように、熱融着性繊維の融点よりも10℃以上高い温度であるのが好ましく、20℃以上高い温度であるのがより好ましい。また、熱処理時間は熱融着性繊維が十分に溶融し、融着する時間であり、熱融着性繊維によって異なるため特に限定するものではない。
【0025】
なお、熱融着性繊維の融着作用を発揮させる方法は熱融着性繊維が融着する方法であれば良く、特に限定するものではないが、例えば、対流伝達熱によって融着する方法、輻射熱によって融着する方法、伝導熱によって融着する方法、などを挙げることができ、これらの中でも、対流伝達熱により熱融着性繊維を融着させると、空隙が多く、樹脂の含浸性に優れる不織布を製造できる。このように樹脂の含浸性に優れていると、後述の多孔性ベース材との接着に液状バインダを使用したとしても、効率よく浸透し、効率的に積層一体化することができる。
【0026】
より具体的には、対流伝達熱による融着は、繊維ウエブに対して熱風を供給することによって実施できる。熱風を供給する際には、熱風を吸引することもできるが、熱風を吸引することによって空隙が少なくなり、樹脂の含浸性が低下する傾向があるため、熱風を吸引することなく融着するのが好ましい。このような好ましい熱風を吸引することなく融着を実施できる装置として、例えば、金網や多孔板で構成されるバンド上に繊維ウエブを載置した状態で、繊維ウエブの上方及び/又は下方から熱風を送るバンド型通気乾燥機を挙げることができる。
【0027】
なお、前述のような熱融着性繊維の融着に替えて、又は加えて、液状バインダによる接着、ニードルや流体流(特に水流)などによる絡合により結合し、不織布とすることもできる。
【0028】
ここで、本発明の内装基材の一例について、自動車内装材(以下、単に「内装材」と表記することがある)の断面模式図である図1をもとに説明する。
【0029】
図1における内装材1は、多孔性ベース材11、多孔性ベース材11の両面にバインダ層13、13’を介して積層された前述の不織布12、12’からなる内装基材10、この内装基材10の片面にフィルム層30を介して積層された繊維シート40、及び内装基材10の他面に表皮材20が積層されている。
【0030】
この内装基材10を構成する多孔性ベース材11は内装基材10及び内装材1に強度を付与する作用を奏し、軽量化のために多孔性である。この多孔性ベース材11は従来から公知の材料を使用することができ、特に限定するものではないが、例えば、ウレタン発泡体などの発泡体、ポリエステル繊維などの有機繊維からなる不織布、などを使用することができる。なお、この多孔性ベース材11も軽量化に寄与できるように、目付は150〜500g/mであるのが好ましく、厚さは3〜10mmであるのが好ましい。
【0031】
図1における内装基材10は上記多孔性ベース材11の両面に、バインダ層13、13’を介して前述の不織布12、12’が積層されている。不織布12、12’は前述の通り、軽量かつ形態安定性に優れたものであるため、この不織布12、12’を積層した内装基材10は、軽量かつ形態安定性に優れたものである。なお、図1においては、多孔性ベース材11の両面に不織布を積層しているが、両面である必要はなく片面であっても良い。しかしながら、両面に積層した方が、バランス良く内装基材10に形態安定性を付与することができる。なお、両面に積層する場合、同じ不織布であっても良いし、ビニロン繊維のストランド量が異なる、目付が異なる、厚さが異なる、製法が異なるなど、異なる不織布の組み合わせであっても良い。
【0032】
また、図1においては、バインダ層13、13’を介して不織布12、12’が積層されているが、バインダ層13、13’を介することなく、積層しても良い。例えば、多孔性ベース基材及び/又は不織布の融着性を利用したり、多孔性基材と不織布とを絡合することによって積層することもできる。なお、本発明の不織布は前述の通り、樹脂の含浸性に優れているため、効率的に液状バインダが浸透し、効果的かつ強固に多孔性ベース材11と不織布とが積層した内装基材10とすることができる。図1のように、バインダ層13、13’を介して積層している場合、バインダ層13、13’は同じ組成のバインダから構成されていても良いし、異なる組成のバインダから構成されていても良いが、同じ組成のバインダから構成されている方が、製造上、好適である。
【0033】
なお、本発明における「積層」とは、単に多孔性ベース材と不織布とを積層した、結合していない状態も含む概念であるが、取り扱い性に優れているように、多孔性ベース材と不織布とが結合し、一体化した状態にあるのが好ましい。
【0034】
図1の内装材1においては、前述のような内装基材10の片面にフィルム層30を介して繊維シート40が積層されている。このフィルム層30は繊維シート40の内装基材10への接着作用を奏する。このフィルム層30のフィルムが非通気性である場合には、内装材1における通気を抑制し、内装材1が汚れるのを抑制することができる。このようなフィルムとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又は変性ポリアミドの単層構造からなるホットメルトフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン又は変性ポリアミドを表層とし、ポリアミドを内層とする三層構造からなるホットメルトフィルムを挙げることができる。
【0035】
なお、繊維シート40は車体や車体に付随する配線類などの部品との擦れによる異音の発生を防止する作用を奏する。このような繊維シート40として、例えば、ポリエステル繊維等からなるスパンボンド不織布、ポリエステル繊維等からなるニードルパンチ不織布や水流絡合不織布などの絡合不織布を挙げることができる。
【0036】
図1の内装材1においては、前述のような内装基材10の他面に、表皮材20が積層され、意匠性を高めている。この表皮材20は従来から公知のもので構成することができ、例えば、不織布、織物、編物等を挙げることができる。このような表皮材20は、例えば、ホットメルト樹脂粉末の融着作用によって、或いは溶融状態のホットメルト樹脂を塗布することによって、内装基材10と積層一体化することができる。
【0037】
このような図1の内装材1は表皮材側から音が進入したとしても、フィルム層30までは通気性があり、音を反射しないため、吸音性を有する内装材である。
【0038】
図1のような内装材1は、例えば、以下のような方法で製造することができる。まず、不織布12、12’の片面に、イソシアネートなどの液状バインダを塗工した後、多孔性ベース材11の両面に前記塗工面が当接するように重ね合わせ、多孔性ベース材11を挟んでサンドイッチ状に積層した状態で、液状バインダの接着能を発揮させる(例えば、加熱により硬化させる)ことにより、内装基材10を形成することができる。
【0039】
次いで、内装基材10の片面に、フィルム30と繊維シート40を順に積層し、加熱することによりフィルムの融着能を発揮させ、繊維シート40がフィルム層30を介して内装基材10と一体化する。
【0040】
そして、内装基材10の他面に、ホットメルト樹脂粉末を介して表皮材20を積層し、加熱することによりホットメルト樹脂粉末の融着能を発揮させ、表皮材20を一体化できる。また、ホットメルト樹脂粉末に替えて溶融状態のホットメルト樹脂を塗布し、表皮材20を積層して一体化することもできる。なお、繊維シート40の一体化と表皮材20の一体化の順序は逆であっても良いし、同時に行うこともできる。
【0041】
図2は別の内装材1の模式的断面図である。図2の内装材1は、内装基材10と表皮材20との間にフィルム層30’を備えていること以外は、図1の内装材1と全く同様の構造である。この図2の内装材1においては、表皮材20に隣接してフィルム層30’を備えているため、図1の内装材1のような十分な吸音性能は発揮できないものの、通気を確実に抑制できるため、図1の内装材1よりも汚れ防止性に優れている。このフィルム層30’は図1の内装材1を構成するフィルム層30と同様の構成であることができるため、詳細な説明は割愛する。なお、フィルム層30’はフィルム層30と同じフィルムであっても良いし、樹脂組成、層数などの点で異なるフィルムであっても良い。
【0042】
この図2の内装材1は繊維シート40の上に、フィルム層30を構成するフィルム、内装基材10、フィルム層30’を構成するフィルム、表皮材20を順に積層した後、フィルム層30を構成するフィルム及びフィルム層30’を構成するフィルムが融着する温度で加熱することによって製造することができる。なお、一度に積層するのではなく、内装基材10の片面にフィルム層30を構成するフィルムを介して繊維シート40を積層した後に、内装基材10の他面にフィルム層30’を構成するフィルムを介して表皮材20を積層することもできるし、また、その逆の順序で積層して、内装材1を製造することもできる。
【0043】
図3は更に別の内装材1の模式的断面図である。図3の内装材1は、内装基材10と表皮材20のみからなり、フィルム層を備えていない構造を有する。この内装材1は構成材料が少ないため軽量な内装材である。図3の内装材1は図1の内装材1よりも構成材料が少ないこと以外は全く同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0044】
この図3の内装材1は内装基材10にホットメルト樹脂粉末を介して表皮材20を積層し、加熱することによりホットメルト樹脂粉末の融着能を発揮させ、表皮材20を一体化して製造できる。また、ホットメルト樹脂粉末に替えて溶融状態のホットメルト樹脂を塗布し、表皮材20を積層して製造することもできる。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、目付は200mm×200mmの試験片を採取し、天秤を用いて重量を測定した後、この重量をもとに1m当たりの重量に換算した値である。
【0046】
(実施例1)
ビニロン繊維(繊度:6.7dtex、繊維長:30mm、単繊維強度:11cN/dtex)が互いに平行に収束した繊度2500dtexのストランドを用意した。また、低融点ポリエステル(融点:130℃)からなる全融着型熱融着性繊維(繊度:6.4dtex、繊維長:5mm)を用意した。
【0047】
次いで、前記ストランド対全融着型熱融着性繊維の乾燥質量比率が90:10で白水に投入して分散させ、スラリーを形成した後、このスラリーを長網式抄紙機で抄造し、前記ストランドと、ストランドからばらけて発生したビニロン繊維と、全融着型熱融着性繊維とが分散した湿式繊維ウエブを形成した。なお、スラリーを形成する際に、ストランドを構成するビニロン繊維が完全にばらけてしまうことがないよう、かつ全融着型熱融着性繊維が均一に分散するように、40秒間だけ攪拌した。
【0048】
そして、この湿式繊維ウエブをバンド型通気乾燥機へ供給し、温度160℃の熱風を、湿式繊維ウエブの上方及び下方から1分間作用させることにより、全融着型熱融着性繊維のみを融着させるとともに乾燥して、湿式不織布(目付:50g/m、厚さ:0.3mm)を製造した。この湿式不織布においては、幅0.3mm〜2.0mmのストランドが40mass%、ストランドからばらけて発生したビニロン繊維50mass%及び全融着型熱融着性繊維10mass%が存在した状態にあった。
【0049】
この湿式不織布から、200mm×200mmの湿式不織布を2枚採取し、それぞれの片面に対して、イソシアネート樹脂を20g/m塗工した。その後、発泡ウレタンシート(厚さ:5mm、目付:165g/m)の両面に、前記湿式不織布の塗工面が当接するように重ね合わせ、発泡ウレタンシートを挟んでサンドイッチ状に積層した状態で加熱し、硬化させることにより、内装基材を製造した。
【0050】
次いで、この内装基材の片面に、ポリオレフィン製ホットメルトフィルム(厚さ:20μm、目付:30g/m)、ポリエステルスパンボンド不織布(目付:30g/m)を順に積層した後、120℃の温度で加熱することにより前記ホットメルトフィルムを融着させ、内装基材の片面にフィルム層を介してポリエステルスパンボンド不織布が融着一体化した、不織布付内装基材(目付:365g/m)を製造した。
【0051】
(比較例1)
スラリーを形成する際の攪拌時間を180秒としたこと以外は実施例1と同様にして、湿式不織布(目付:50g/m、厚さ:0.25mm)を製造した。この湿式不織布においては、ストランドが存在しておらず、ストランドからばらけて発生したビニロン繊維90mass%と全融着型熱融着性繊維10mass%が均一に分散した状態にあった。
【0052】
その後、実施例1と同様にして、内装基材を製造した後に不織布付内装基材(目付:365g/m)を製造した。
【0053】
(比較例2)
市販されているガラスチョップドストランドマット(目付:100g/m)を2枚用意し、ビニロン繊維のストランドを含む湿式不織布に替えて使用したこと以外は、実施例1と同様にして、不織布付内装基材(目付:465g/m)を製造した。
【0054】
(形態安定性の評価)
実施例1及び比較例1〜2の不織布付内装基材から、幅50mm×長さ150mmの試験片を採取し、JIS K7171に準じて曲げ弾性勾配を測定した。つまり、島津(株)製オートグラフD2000を用い、100mmの距離をおいて配置した支持台に各試験片を配置し、その中心点に対して、R3.2mmのくさびを用い、50mm/分の速度で荷重をかけていき、その荷重と歪の関係を示す曲線を得た。この得られた測定チャート曲線の加圧初期での直線部分における歪量と曲げ加重から、歪量1cm当たりの曲げ荷重を算出し、曲げ弾性勾配とした。この結果は表1に示す通りであった。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果から明らかなように、本発明の内装基材を使用した不織布付内装基材は、軽量であるにもかかわらず従来のガラス繊維を使用した不織布付内装基材と同等の高い曲げ弾性勾配を示すものであり、軽量化と形態安定性を両立したものであった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の自動車内装材は、例えば、天井材、リアパッケージトレイ、ドアトリム、フロアインシュレータ、トランクトリム、ダッシュインシュレータなどとして使用することができる。また、本発明の自動車内装材用基材はこのような自動車内装材の構成材料として使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 内装材
10 内装基材
11 多孔性ベース材
12、12’ 不織布
13、13’ バインダ層
20 表皮材
30、30’ フィルム層
40 繊維シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性ベース材の片面又は両面に、ビニロン繊維が集束したストランドを含む不織布が積層されていることを特徴とする、自動車内装材用基材。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用内装基材を備えている自動車内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−188894(P2010−188894A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36146(P2009−36146)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】