説明

自動車用アンテナの伝送装置

【課題】自動車に搭載されるアンテナに接続されると共に、平衡−不平衡変換器を介して受信機の基板回路に接続されるツイストペア電線の曲げを防止する。
【解決手段】自動車に搭載されるアンテナに接続したツイストペア電線と、受信機に収容した基板の回路とを平衡−不平衡変換器を介して接続しており、前記平衡−不平衡変換器は環状コアを備え、該環状コアの一方側に、前記基板の通信回路とアース回路にコネクタを介して接続する不平衡側巻線を巻回している一方、前記環状コアの他方側に、前記ツイストペア電線の両端末にコネクタを介して接続する平衡側巻線を巻回し、前記平衡側巻線は前記ツイストペア電線の配線方向に応じて前記環状コアに沿って移動可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用アンテナの伝送装置に関し、詳しくは、自動車用アンテナに接続されるツイストペア電線の曲げを防止するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用アンテナに接続されるアンテナコードとして、ノイズ遮断性能を高めるために、特開2006−197371号公報(特許文献1)に示されるようなツイストペア電線を用いる場合がある。
また、本出願人は、特開2005−204199号公報(特許文献2)において、アンテナコードとしてツイストペア電線1を用いると共に、該ツイストペア電線1の両端に平衡−不平衡変換器4(4a、4b)を接続することにより、アンテナ2で受信し増幅器3で増幅された不平衡信号を平衡−不平衡変換器4aで平衡信号に変換してツイストペア電線1で平衡伝送し、該平衡伝送された平衡信号を平衡−不平衡変換器4bで再度不平衡信号に変換して受信機5で受信できるようにしている(図3参照)。前記のような平衡−不平衡変換器4を用いることにより、アンテナコードとして同軸線を用いる場合と共通の機器を使用しながら、広い周波数帯域にわたってノイズ混入の少ない信号の伝送が可能となる。
【0003】
しかし、前記平衡−不平衡変換器4は、インスツルメントパネル内部に設ける受信機5の背面側やピラー内部に設ける増幅器3の近傍など、配線経路が屈曲されやすい狭い空間内に取り付けなければならない。したがって、前記平衡−不平衡変換器4に接続されるツイストペア電線1は、該平衡−不平衡変換器4の配置によって配線スペースがさらに小さくなるため、アンテナコードとして同軸線6を用いる場合より電線の曲げ度合いが一層強くなるという問題がある[図4(A)、(B)参照]。即ち、ツイストペア電線が強く曲げられることによって、ツイストペア電線の対称性が崩れて平衡度が悪化し、ツイストペア電線本来の耐ノイズ特性が劣化するおそれがあり、この点については改良の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−197371号公報
【特許文献2】特開2005−204199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、自動車用アンテナに接続されると共に、平衡−不平衡変換器を介して受信機の基板回路に接続されるツイストペア電線の曲げを防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、自動車に搭載されるアンテナに接続したツイストペア電線と、受信機に収容した基板の回路とを平衡−不平衡変換器を介して接続しており、
前記平衡−不平衡変換器は環状コアを備え、該環状コアの一方側に、前記基板の通信回路とアース回路にコネクタを介して接続する不平衡側巻線を巻回している一方、
前記環状コアの他方側に、前記ツイストペア電線の両端末にコネクタを介して接続する平衡側巻線を巻回し、
前記平衡側巻線は前記ツイストペア電線の配線方向に応じて、前記環状コアに沿って移動可能としていることを特徴とする自動車用アンテナの伝送装置を提供している。
【0007】
前記のように、平衡−不平衡変換器として、環状コアに不平衡側巻線と平衡側巻線とを巻回させたバラン(トランス)を用い、ツイストペア電線とコネクタ接続される前記平衡側巻線を、該ツイストペア電線の配線方向に応じて前記環状コアに沿って移動可能とさせている。したがって、配線スペース等の関係上、前記平衡−不平衡変換器に接続されるツイストペア電線の配線方向を変える必要がある場合でも、該ツイストペア電線がコネクタ接続される平衡側巻線を環状コアに沿って配線方向側へ移動させることで、前記ツイストペア電線自体の曲げを大幅に抑制することができる。
【0008】
よって、前記平衡−不平衡変換器の不平衡側巻線を、受信機に収容された基板の通信回路とアース回路にコネクタ接続して、前記受信機背面側の狭いスペースに前記平衡−不平衡変換器を取り付けた場合でも、ツイストペア電線の曲げを防止しつつ該ツイストペア電線を適正な方向に配線することができ、ツイストペア電線の曲げが防止されることで該電線の対称性が保持され、高いノイズ遮断特性を保つことができる。
【0009】
前記のように、平衡−不平衡変換器の平衡側巻線を環状コアに沿って移動可能とするために、前記平衡側巻線を環状コアに適度な緩みを持たせて巻回することが好ましく、具体的には、緩みを持たせて巻回したときの直径が、緩みを持たせずに巻回した場合の直径より1〜5%程度大きくなるように、該平衡側巻線を環状コアに巻回することが好ましい。 前記環状コアの材質としてはフェライトを用いると共に、前記平衡側巻線および不平衡側巻線の材質としては、例えば、エナメル線(ポリイミド被覆電線)等を用いることが好ましい。
【0010】
前記環状コアは円環形状であり、前記平衡側巻線は所要角度範囲で環状コアの周方向に移動可能としていることが好ましい。
【0011】
前記平衡側巻線の移動可能な角度範囲は、環状コアに巻回される平衡側巻線や不平衡側巻線の巻線数などによっても異なり、前記不平衡側巻線に平衡側巻線が接触しないように移動可能な角度範囲を適宜設定することが好ましい。通常のラジオ受信機の背面側に設ける平衡−不平衡変換器であれば、前記平衡側巻線の移動可能な角度範囲として、例えば、45〜180度程度とすることができる。
【0012】
前記円環形状の環状コアを略半円形状のケース内に固定して収容し、該ケースの円弧状周壁に円弧形状の開口を設け、該開口にツイストペア電線と接続したコネクタを周方向に回転可能に取り付ける一方、
前記ケースの平坦状の周壁に開口を設け、該開口より前記不平衡側巻線と接続した同軸コネクタを引き出しており、該同軸コネクタを前記基板を収容した受信機の前記ケースの開口に面して固定した基板側コネクタと嵌合接続する構成としていることが好ましい。
【0013】
前記のように、環状コアを略半円形状のケース内に収容固定し、該ケースの円弧状周壁に設けた円弧形状の開口に、前記ツイストペア電線と接続したコネクタを周方向に回転可能に取り付けることにより、前記コネクタを配線方向に合わせてスライドさせるだけで、該コネクタに接続されるツイストペア電線を曲げることなくスムーズに所要の配線方向に配線することができ、撚り合わされる2本の電線の対称性をしっかりと保持することができる。
【0014】
また、前記ケースの平坦状周壁に設けた開口より、不平衡側巻線と接続した同軸コネクタを引き出すと共に、該同軸コネクタを前記開口に面して固定した受信機の基板側コネクタと嵌合接続する構成とすることにより、平衡−不平衡変換器と受信機とをコンパクトに接続して一体化させることができる。
【0015】
なお、前記構成の平衡−不平衡変換器は、ツイストペア電線のアンテナ側他端と、アンテナに設ける増幅器との間に設けることも可能である。
【発明の効果】
【0016】
前述したように、本発明では、平衡−不平衡変換器として、環状コアに不平衡側巻線と平衡側巻線とを巻回させたバラン(トランス)を用い、ツイストペア電線とコネクタ接続される前記平衡側巻線を、該ツイストペア電線の配線方向に応じて前記環状コアに沿って移動可能とさせているため、前記平衡−不平衡変換器に接続されるツイストペア電線の配線方向を変える必要がある場合でも、該ツイストペア電線がコネクタ接続される前記平衡側巻線を環状コアに沿って配線方向側へ移動させることで、前記ツイストペア電線自体の曲げを大幅に抑制することができる。したがって、ツイストペア電線の撚りの乱れを防止し対称性を保つことができるため、高いノイズ遮断特性を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態におけるアンテナ伝送装置の概略斜視図である。
【図2】平衡−不平衡変換器の内部の様子を示す分解斜視図である。
【図3】従来例を示す図である。
【図4】従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1および図2に本発明の実施形態を示す。
本実施形態では、自動車に搭載されるアンテナ(図示せず)にアンテナコードとしてツイストペア電線10を接続し、該ツイストペア電線10をバラン(トランス)からなる平衡−不平衡変換器12を介して、ラジオ受信機11(以下、受信機という)の基板回路(図示せず)と接続している。
【0019】
前記平衡−不平衡変換器12は、略半円形状のケース13内に、図2に示すような円環形状の環状コア14を収容固定している。環状コア14はフェライトからなり、環状コア14の一方側には、受信機11に収容した基板(図示せず)の通信回路およびアース回路とコネクタ接続される不平衡側巻線15を巻回している一方、環状コア14の他方側には、前記ツイストペア電線10とコネクタ接続される平衡側巻線16を巻回している。なお、本実施形態では、不平衡側巻線15および平衡側巻線16として、ポリイミド電線を用いている。
【0020】
平衡側巻線16を環状コア14に緩みを持たせて巻回し、平衡側巻線16を環状コア14に沿って所定角度範囲で移動可能としている。本実施形態では、平衡側巻線16を環状コア14に巻回したときの直径が、緩みを持たせずに巻回したときの直径より5%程度大きくなるように巻回している。平衡側巻線16の両端末にコネクタ17を接続してケース13の円弧状周壁に設けた円弧状の開口13aに取り付け、周方向に回転可能としている。また、ツイストペア電線10の両端末にコネクタ18を接続し、前記平衡側巻線16のコネクタ17と嵌合接続させている。即ち、コネクタ18に接続するツイストペア電線10の配線方向に応じて、嵌合したコネクタ17、18が開口13aに沿って回転でき、コネクタ17に接続した平衡側巻線16も環状コア14に沿って移動できる構造としている。なお、本実施形態では、平衡側巻線16の移動可能な角度範囲を約180度とし、前記嵌合したコネクタ17、18が円弧状開口13aの両端縁に当接することで、移動範囲を前記角度範囲内に規制できるようにしている。
【0021】
一方、不平衡側巻線15の両端末に同軸コネクタ19を接続し、ケース13の平坦状周壁の開口13bより該同軸コネクタ19を引き出している。また、受信機11に収容された基板の通信回路とアース回路に接続した基板側コネクタ20を、前記ケース13の開口13bに面して受信機11に固定し、前記同軸コネクタ19と嵌合接続させている。
【0022】
前記のように、平衡−不平衡変換器12として、環状コア14に不平衡側巻線15と平衡側巻線16とを巻回させたバラン(トランス)を用い、ツイストペア電線10とコネクタ接続される平衡側巻線16を、ツイストペア電線10の配線方向に応じて環状コア14に沿って移動可能とさせている。よって、配線スペース等の関係上、平衡−不平衡変換器12に接続されるツイストペア電線10の配線方向を変える必要がある場合でも、該ツイストペア電線10がコネクタ接続される平衡−不平衡変換器12の平衡側巻線16を環状コア14に沿って配線方向側へ移動させることで、ツイストペア電線10自体の曲げを大幅に抑制することができる。したがって、ツイストペア電線10の撚りの乱れを防止し2本の電線の対称性を保つことができるため、高いノイズ遮断特性を保持することが可能となる。
【0023】
特に、前記のように、環状コア14を略半円形状のケース13内に収容固定し、該ケース13の円弧状周壁に設けた円弧形状の開口13aに、ツイストペア電線10と接続したコネクタ18と平衡側巻線16と接続したコネクタ17を嵌合させて周方向に回転可能に取り付けているため、前記コネクタ17、18を配線方向に合わせてスライドさせるだけで、該コネクタに接続されるツイストペア電線10を曲げることなくスムーズに所要の配線方向に配線することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 ツイストペア電線
11 受信機
12 平衡−不平衡変換器
13 ケース
13a、13b 開口
14 環状コア
15 不平衡側巻線
16 平衡側巻線
17、18 コネクタ
19 同軸コネクタ
20 基板側コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載されるアンテナに接続したツイストペア電線と、受信機に収容した基板の回路とを平衡−不平衡変換器を介して接続しており、
前記平衡−不平衡変換器は環状コアを備え、該環状コアの一方側に、前記基板の通信回路とアース回路にコネクタを介して接続する不平衡側巻線を巻回している一方、
前記環状コアの他方側に、前記ツイストペア電線の両端末にコネクタを介して接続する平衡側巻線を巻回し、
前記平衡側巻線は前記ツイストペア電線の配線方向に応じて、前記環状コアに沿って移動可能としていることを特徴とする自動車用アンテナの伝送装置。
【請求項2】
前記環状コアは円環形状であり、前記平衡側巻線は所要角度範囲で環状コアの周方向に移動可能としている請求項1に記載の自動車用アンテナの伝送装置。
【請求項3】
前記円環形状の環状コアを略半円形状のケース内に固定して収容し、該ケースの円弧状周壁に円弧形状の開口を設け、該開口にツイストペア電線と接続したコネクタを周方向に回転可能に取り付ける一方、
前記ケースの平坦状の周壁に開口を設け、該開口より前記不平衡側巻線と接続した同軸コネクタを引き出しており、該同軸コネクタを前記基板を収容した受信機の前記ケースの開口に面して固定した基板側コネクタと嵌合接続する構成としている請求項2に記載の自動車用アンテナの伝送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−212960(P2010−212960A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56372(P2009−56372)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】