説明

自動車用ウェザーストリップ

【課題】ドアガラスを開閉する際のキュー音を効果的に低減することが可能な自動車用ウェザーストリップを提供する。
【解決手段】自動車に装着される本体部10と、本体部10に一体成形され、開閉されるドアガラスGに摺接する摺接部20,20とを有する自動車用ウェザーストリップ101において、摺接部20,20の少なくとも一部を、制振性を有する材料で形成する。また、摺接部20,20の少なくとも一部を、本体部10よりも損失弾性率が大きな材料で形成する。また、摺接部20,20の少なくとも一部を、20℃雰囲気温度の損失弾性率(1kHz〜4kHzの平均値)が、30MPa以上である材料で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ウェザーストリップに関する。より詳しくは、自動車の窓枠に取り付けられ、開閉されるドアガラスに摺接して窓枠とドアガラスの間をシールする自動車用ウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図16に示すような自動車のフロントドア1及びリアドア2の窓枠には、自動車用ウェザーストリップであるグラスラン100が取り付けられ、開閉されるドアガラスGに摺接して窓枠とドアガラスGの間をシールするようになっている。
図17は、図16のA−A拡大断面図であり、フロントドア1の窓枠に取り付けられたグラスラン100を示している。グラスラン100は主として、ドアサッシュ3に装着される本体部70と、本体部70に一体成形され、ドアガラスGに摺接する摺接部であるリップ部80,80から構成されている。
【0003】
本体部70は、底壁部71と底壁部71の両端から延びる両側壁部72,72を有し、断面略コ字状の溝部4が形成されて、ドアガラスGを案内するようになっている。また、両側壁部72,72からそれぞれ外側に向けて折曲して延びる両モール部73,73が形成されており、側壁部72とモール部73でドアサッシュ3のフランジを挟み込むようになっている。
さらに、両側壁部72,72からそれぞれ内側に向けて折曲して延びる両リップ部80,80が形成されている。
以上の構成により、開閉時にドアガラスGが両リップ部80,80に摺接するようになっている。
【0004】
ところで、ドアガラスGを開閉する際には、ドアガラスGと両リップ部80,80の間の摩擦のためにスティックスリップ(付着すべり)現象が生じ、これにより、いわゆるキュー音が発生することが問題となっていた。
このキュー音を低減するために、リップ部に塗布する塗膜材を改善してスティックスリップを抑えたり、リップ反力を考慮することによりドアガラスの押さえ方を改善して振動を抑えたりすることが行われていた。
【0005】
一方、特許文献1や特許文献2には、本体部と摺接部(摺動部,シール形成層)を異なる材質により形成した自動車用ウェザーストリップに関する発明が開示されている。
【特許文献1】特開平9−76765号公報
【特許文献2】特開平11−20479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リップ部に塗布する塗膜材を改善してスティックスリップを抑えたり、リップ反力を考慮することによりドアガラスの押さえ方を改善して振動を抑えたりする方法では、キュー音の低減効果は限定的なものであり、改善の余地がある。
また、特許文献1や特許文献2に開示された発明によれば、自動車用ウェザーストリップを折り曲げて搬送・保管した際にしわが残らないという効果があるものの、キュー音の低減という効果は得られない。
【0007】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、ドアガラスを開閉する際のキュー音を効果的に低減することが可能な自動車用ウェザーストリップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る発明の自動車用ウェザーストリップは、自動車に装着される本体部(10)と、前記本体部(10)に一体成形され、開閉されるドアガラス(G)に摺接する摺接部(20,20)とを有する自動車用ウェザーストリップ(101)において、前記摺接部(20,20)の少なくとも一部を、制振性を有する材料で形成したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明の自動車用ウェザーストリップは、自動車に装着される本体部(10)と、前記本体部(10)に一体成形され、開閉されるドアガラス(G)に摺接する摺接部(20,20)とを有する自動車用ウェザーストリップ(101)において、前記摺接部(20,20)の少なくとも一部を、前記本体部(10)よりも損失弾性率(E”)が大きな材料で形成したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明の自動車用ウェザーストリップは、自動車に装着される本体部(10)と、前記本体部(10)に一体成形され、開閉されるドアガラス(G)に摺接する摺接部(20,20)とを有する自動車用ウェザーストリップ(101)において、前記摺接部(20,20)の少なくとも一部を、20℃雰囲気温度の損失弾性率(E”)(1kHz〜4kHzの平均値)が、30MPa以上である材料で形成したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一つに記載の発明において、自動車のドアサッシュ(3)に装着されるグラスラン(101)であって、前記本体部(10)がドアガラス(G)を案内する断面略コ字状の溝部(4)を形成する底壁部(11)と前記底壁部(11)の両端から延びる両側壁部(12,12)とからなり、前記摺接部(20,20)が前記両側壁部(12,12)からそれぞれ内側に折曲して延びる両リップ部(20,20)とからなることを特徴とする。
【0012】
なお、括弧内の記号は、発明を実施するための最良の形態および図面に記載された対応要素または対応事項を示す。
また、損失弾性率における1kHz〜4kHzの平均値とは、周波数1kHz〜4kHzの測定値の、(最大値+最小値)/2より算出される値である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、自動車用ウェザーストリップが、自動車に装着される本体部と、開閉されるドアガラスに摺接する摺接部から構成されており、このうち摺接部の少なくとも一部を、制振性を有する材料で形成したので、ドアガラスを開閉する際に摺接部に生じる振動を抑制して、キュー音を効果的に低減することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、自動車用ウェザーストリップが、自動車に装着される本体部と、開閉されるドアガラスに摺接する摺接部から構成されており、このうち摺接部の少なくとも一部を、本体部よりも損失弾性率が大きな材料で形成したので、摺接部に振動が生じたときの損失エネルギーを増加させて振動を抑制することにより、キュー音を効果的に低減することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、自動車用ウェザーストリップが、自動車に装着される本体部と、開閉されるドアガラスに摺接する摺接部から構成されており、このうち摺接部の少なくとも一部を、20℃雰囲気温度の損失弾性率(1kHz〜4kHzの平均値)が、30MPa以上である材料で形成したので、摺接部に振動が生じたときの損失エネルギーを増加させて振動を抑制することにより、キュー音を効果的に低減することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一つに記載の発明の作用効果に加えて、自動車用ウェザーストリップが自動車のドアサッシュに装着されるグラスランであり、ドアガラスを案内する断面略コ字状の溝部を形成する底壁部と底壁部の両端から延びる両側壁部とからなる本体部と、両側壁部からそれぞれ内側に折曲して延びる両リップ部とからなる摺接部により構成されているので、両リップ部の少なくとも一部の材料を工夫して、ドアガラスと両リップ部の間に生じるキュー音を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図1乃至図7及び図16を参照して、本発明の実施形態1に係る自動車用ウェザーストリップについて説明する。実施形態1に係る自動車用ウェザーストリップは、図16に示す自動車のフロントドア1及びリアドア2の窓枠に取り付けられるグラスランである。
【0018】
図1は、実施形態1に係るグラスラン101を示す断面図であり、図16のA−A拡大断面図に相当する。グラスラン101は主として、ドアサッシュ3に装着される本体部10と、本体部10に一体成形され、ドアガラスGに摺接する摺接部であるリップ部20,20から構成されている。
本体部10は、底壁部11と底壁部11の両端から延びる両側壁部12,12を有し、断面略コ字状の溝部4が形成されて、ドアガラスGを案内するようになっている。また、両側壁部12,12からそれぞれ外側に向けて折曲して延びる両モール部13,13が形成されており、側壁部12とモール部13でドアサッシュ3のフランジを挟み込むようになっている。
さらに、両側壁部12,12からそれぞれ内側に向けて折曲して延びる両リップ部20,20が形成されている。
以上の構成により、開閉時にドアガラスGが両リップ部20,20に摺接するようになっている。
【0019】
本体部10は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム)等により形成されている。一方、両リップ部20,20は、EPDM等に制振材を添加した材料で形成され、制振性を有するようになっている。
ここで、制振材としては、ポリスチレンとビニル−ポリイソプレンが結合したトリブロック共重合体(SIS、例:クラレ製ハイブラー5127)や、これを水素添加したSEPS(例:クラレ製ハイブラー7125)、ノルボルネンゴム(例:日本ゼオン製ノーソレックス)等を用いるとよい。
【0020】
また、両リップ部20,20が制振材を添加した材料で形成されているので、両リップ部20,20の損失弾性率は、本体部10の損失弾性率よりも大きくなっている。
両リップ部20,20の損失弾性率を大きくすることにより、両リップ部20,20とドアガラスGが摺接して振動が生じたときの損失エネルギーを増加させて振動を抑制することができる。この点については後述する。
【0021】
なお、図1には、両リップ部20,20の全体を制振材を添加して損失弾性率を高めた材料で形成した構成を示したが、必ずしも両リップ部20,20の全体である必要はなく、両リップ部20,20の少なくとも一部を制振材を添加して損失弾性率を高めた材料で形成すればよい。
例えば、図2に示すグラスラン102は、両リップ部20,20のうちドアガラスGと接触する接触面21,21を同材料で形成したものである。
また、図3に示すグラスラン103は、両リップ部20,20のうち付け根部22,22を同材料で形成したものである。
また、図4に示すグラスラン104は、本体部10を含めたグラスラン全体を同材料で形成したものである。
【0022】
次に、制振材を添加して損失弾性率を高めた材料により形成することで、両リップ部20,20とドアガラスGが摺接して振動が生じたときの損失エネルギーを増加させて振動を抑制することができる点について説明する。
【0023】
一般に、粘弾性体に正弦的振動歪みγを与えると、位相角δだけ進んだ応力σが生じる。このときσとγの比を複素弾性率といい、
*(複素弾性率)=E’(貯蔵弾性率)+iE”(損失弾性率)
E”/E’=tanδ(損失正接)
で表される。
ここで、振動時における損失エネルギーΔWは、
ΔW=πγ2E”
となるから、歪みγが一定と考えると、振動を抑える(損失エネルギーを増加させる)には、損失弾性率E”を大きくすることが効果的であることがわかる。
【0024】
以下に、本発明者らが、損失弾性率の測定、及びキュー音の測定について行った実験結果を示す。
【0025】
(1)試料の成形
本実験に用いた試料の配合・物性は、表1に示すとおりである。
【0026】
【表1】

【0027】
まず、従来例としては、EPDMを100重量部としたものをシート状に成形した。
次に、実施例1として、EPDM90重量部とポリスチレンとビニル−ポリイソプレンが結合したトリブロック共重合体(クラレ製ハイブラー5127)10重量部を配合したものをシート状に成形した。また、実施例2として、EPDM70重量部とポリスチレンとビニル−ポリイソプレンが結合したトリブロック共重合体(クラレ製ハイブラー5127)30重量部を配合したものをシート状に成形した。また、実施例3として、EPDM50重量部とポリスチレンとビニル−ポリイソプレンが結合したトリブロック共重合体(クラレ製ハイブラー5127)50重量部を配合したものをシート状に成形した。
【0028】
次に、成形したシートからそれぞれ、厚さ2mm、長さ20mm、幅4mmの試験片を切り出して試料とした。
【0029】
(2)損失弾性率の測定
次に、それぞれの試料について、損失弾性率E”を測定した。
ここで、本発明者らが事前に行った実験により、グラスランのキュー音が発生している材料では、1000,2000,3000,4000Hz前後で振動のピークがあることが判明した。そこで、1000〜4000Hzでの損失弾性率E”を測定することとした。
しかし、本実験に用いた機器による損失弾性率E”の測定可能範囲は1〜100Hzであるため、1〜100Hzで測定したデータに時間―温度換算則(William−Landcl−Ferry(W.L.F式))を適用して、20℃の雰囲気温度における、1〜10000Hzの損失弾性率E”を算出した。測定・算出方法は以下のとおりである。
【0030】
試験機として、「DMS粘弾性試験機(SEIKO電子製)」を用いた。測定は、試料を長手方向に引っ張り、その時の応力を観測し種々の物性値を算出するというものである。
試料に生じさせる振動の振動数は5種(1,3,10,29,100Hz)とし、測定中は、一定の歪み(伸びしろ10μm)が維持されるようにした。
また、測定時の雰囲気温度は、−80℃から50℃間を10℃間隔で変更して実施した。
そして、上記測定したデータに時間―温度換算則(W.L.F式)を適用した。
【0031】
ここで、時間―温度換算則(W.L.F式)について説明する。
時間―温度換算則(W.L.F式)は、低温のデータを高周波数に、高温のデータを低周波数にずらすことにより、広範囲の周波数帯域の値に換算する方法である。
図5は、時間―温度換算則(W.L.F式)による、損失弾性率E”の換算方法を示す図である。1〜100Hzの周波数における損失弾性率E”を雰囲気温度ごとにプロットすると、図5(a)に示すグラフが得られる。次に、低温のデータを高周波数に、高温のデータを低周波数にずらして換算すると、図5(b)に示すグラフが得られる。これにより、1〜10000Hzの損失弾性率E”を算出することができる。
【0032】
本実験からは、20℃の雰囲気温度で、1000〜4000Hzにおいて、各試料から3ないし4ポイントのデータが得られ、その損失弾性率E”の値は以下のとおりとなった。単位はMPa(メガパスカル)である。なお平均値は、(最大値+最小値)/2より算出した。
最小値 最大値 平均値
従来例 : 22.9 33.4 28.2
実施例1: 32.0 41.7 36.9(従来例の1.2〜1.4倍)
実施例2: 67.3 75.3 71.3(従来例の2.3〜2.9倍)
実施例3: 141 186 164(従来例の5.6〜6.2倍)
【0033】
(3)キュー音の測定
次に、上記各試料について、キュー音を測定した。図6は、本実験のキュー音の測定装置を示す図である。
横方向へ定速移動できる試験機(例えばヘイドン摩擦測定機)に冶具を装着し、試料上部に時計皿のガラスを接触させ、ガラスと試料の間に水を1滴(約0.1cc)垂らし、おもり9.8N(1kgf)を載せた。
次に、ヘイドン(スライド部)を動かしてキュー音を発生させ、マイクから音を測定した。このとき、摺動速度は6000mm/分(ヘイドンの最大速度)とし、実車の摺動速度(約8000mm/分)に近い値を設定した。
以上の測定を、実施例1〜実施例3について行い、3kHz以下のキュー音の持続時間を得た。
【0034】
得られたキュー音の持続時間は以下のとおりである。
(測定1)従来例:0.6S 実施例1(制振材10重量部):0.5 S
(測定2)従来例:0.6S 実施例2(制振材30重量部):0.1 S
(測定3)従来例:0.6S 実施例3(制振材50重量部):0.05S
この結果を、図7のグラフに示す。なお、図7における横軸の損失弾性率(MPa)は、1000〜4000Hzの平均値である。
【0035】
上記測定結果に示すように、従来例と比較して、すべての実施例でキュー音持続時間が短くなり、キュー音を低減することができた。特に、実施例2及び実施例3では従来例と比較して顕著な効果が得られた。
具体的には図7のグラフに示すように、損失弾性率E”が30MPa以上であれば従来例と比較してキュー音低減の効果があり、さらに70MPa以上であれば従来例と比較して顕著な効果があることがわかる。従って、両リップ部20,20を形成する材料の損失弾性率E”は、20℃雰囲気温度で1kHz〜4kHzの平均値が30MPa以上であることが好ましい。さらに好ましくは、70MPa以上である。
【0036】
実施形態1に係るグラスラン101,102,103,104によれば、自動車に装着される本体部10と、開閉されるドアガラスGに摺接する両リップ部20,20から構成されており、このうち両リップ部20,20の少なくとも一部を、制振性を有する材料で形成したので、ドアガラスGを開閉する際にリップ部20,20に生じる振動を抑制して、ドアガラスGと両リップ部20,20の間に生じるキュー音を効果的に低減することができる。
【0037】
また、実施形態1に係るグラスラン101,102,103によれば、両リップ部20,20の少なくとも一部を、本体部10よりも損失弾性率E”が大きな材料で形成したので、両リップ部20,20に振動が生じたときの損失エネルギーを増加させて振動を抑制することにより、ドアガラスGと両リップ部20,20の間に生じるキュー音を効果的に低減することができる。
【0038】
また、実施形態1に係るグラスラン101,102,103,104によれば、両リップ部20,20の少なくとも一部を、20℃雰囲気温度の損失弾性率(1kHz〜4kHzの平均値)が、30MPa以上である材料で形成したので、両リップ部20,20に振動が生じたときの損失エネルギーを増加させて振動を抑制することにより、ドアガラスGと両リップ部20,20の間に生じるキュー音を効果的に低減することができる。
【0039】
次に、図8乃至図11を参照して、本発明の実施形態2に係る自動車用ウェザーストリップについて説明する。実施形態2に係る自動車用ウェザーストリップは、ハードトップ型車両のルーフ側に取り付けられる、ハードトップ用ウェザーストリップである。
【0040】
図8は、実施形態2に係るハードトップ用ウェザーストリップ201を示す断面図であり、図16に示す自動車がハードトップ型車両である場合のA−A拡大断面図に相当する。ハードトップ用ウェザーストリップ201は主として、ボディに形成されたリテーナ5に装着される本体部30と、本体部30に一体成形され、ドアガラスGに摺接する摺接部である中空シール部40から構成されている。
以上の構成により、開閉時にドアガラスGが中空シール部40に摺接するようになっている。
【0041】
実施形態1と同様に、ハードトップ用ウェザーストリップ201の本体部30は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム)等により形成されている。一方、中空シール部40は、EPDM等に制振材を添加した材料で形成され、制振性を有するようになっている。
【0042】
なお、図8には、中空シール部40の全体を制振材を添加して損失弾性率を高めた材料で形成した構成を示したが、必ずしも中空シール部40の全体である必要はなく、中空シール部40の少なくとも一部を制振材を添加して損失弾性率を高めた材料で形成すればよい。
例えば、図9に示すハードトップ用ウェザーストリップ202は、中空シール部40のうちドアガラスGと接触する接触面41を同材料で形成したものである。
また、図10に示すハードトップ用ウェザーストリップ203は、中空シール部40のうち付け根部42,42を同材料で形成したものである。
また、図11に示すハードトップ用ウェザーストリップ204は、本体部30を含めたハードトップ用ウェザーストリップ全体を同材料で形成したものである。
【0043】
実施形態2に係るハードトップ用ウェザーストリップ201,202,203,204によれば、実施形態1に係るグラスランと同様に、ドアガラスGと中空シール部40の間に生じるキュー音を効果的に低減することができる。
【0044】
次に、図12乃至図16を参照して、本発明の実施形態3に係る自動車用ウェザーストリップについて説明する。実施形態3に係る自動車用ウェザーストリップは、図16に示す自動車のフロントドア1及びリアドア2のベルトラインに取り付けられるベルトライン用ウェザーストリップである。
【0045】
図12は、実施形態3に係るベルトライン用ウェザーストリップ301を示す断面図であり、図16のB−B拡大断面図に相当する。ベルトライン用ウェザーストリップ301は主として、本体部50と、本体部50に一体成形され、ドアガラスGに摺接する摺接部であるリップ部60から構成されている。そして、2つのベルトライン用ウェザーストリップ301の本体部10,10がそれぞれ、ドアのインナーパナル6とアウターパネル7に装着されるとともに、リップ部60,60,60,60が、ドアガラスGと摺接する位置に突出している。
以上の構成により、開閉時にドアガラスGがリップ部60,60,60,60に摺接するようになっている。
【0046】
実施形態1と同様に、ベルトライン用ウェザーストリップ301の本体部50は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム)等により形成されている。一方、リップ部60は、EPDM等に制振材を添加した材料で形成され、制振性を有するようになっている。
【0047】
なお、図12には、ベルトライン用ウェザーストリップ301のリップ部60の全体を制振材を添加して損失弾性率を高めた材料で形成した構成を示したが、必ずしもリップ部60の全体である必要はなく、リップ部60の少なくとも一部を制振材を添加して損失弾性率を高めた材料で形成すればよい。
例えば、図13に示すベルトライン用ウェザーストリップ302は、リップ部60のうちドアガラスGと接触する接触面61を同材料で形成したものである。
また、図14に示すベルトライン用ウェザーストリップ303は、リップ部60のうち付け根部62を同材料で形成したものである。
また、図15に示すベルトライン用ウェザーストリップ304は、本体部50を含めたベルトライン用ウェザーストリップ全体を同材料で形成したものである。
【0048】
実施形態3に係るベルトライン用ウェザーストリップ301,302,303,304によれば、実施形態1に係るグラスランと同様に、ドアガラスGとリップ部60の間に生じるキュー音を効果的に低減することができる。
【0049】
なお、本発明の実施形態に係る自動車用ウェザーストリップは、ガラスと摺接する部位の少なくとも一部が制振性を有する材料で構成されていることを特徴としており、この材料を製品に成形するには、押出成形もしくは塗料の一部として液体状の資材をスプレー塗装することにより行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態1に係るグラスランを示す断面図である。
【図2】実施形態1に係るグラスランの他の形態を示す断面図である。
【図3】実施形態1に係るグラスランの他の形態を示す断面図である。
【図4】実施形態1に係るグラスランの他の形態を示す断面図である。
【図5】損失弾性率の換算方法を示す図である。
【図6】キュー音の測定装置を示す図である。
【図7】キュー音の測定結果を示すグラフである。
【図8】実施形態2に係るハードトップ用ウェザーストリップを示す断面図である。
【図9】実施形態2に係るハードトップ用ウェザーストリップの他の形態を示す断面図である。
【図10】実施形態2に係るハードトップ用ウェザーストリップの他の形態を示す断面図である。
【図11】実施形態2に係るハードトップ用ウェザーストリップの他の形態を示す断面図である。
【図12】実施形態3に係るベルトライン用ウェザーストリップを示す断面図である。
【図13】実施形態3に係るベルトライン用ウェザーストリップの他の形態を示す断面図である。
【図14】実施形態3に係るベルトライン用ウェザーストリップの他の形態を示す断面図である。
【図15】実施形態3に係るベルトライン用ウェザーストリップの他の形態を示す断面図である。
【図16】自動車を示す側面図である。
【図17】従来例に係るグラスランを示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 フロントドア
2 リアドア
3 ドアサッシュ
4 溝部
5 リテーナ
6 インナーパネル
7 アウターパネル
10 本体部
11 基底部
12 側壁部
13 モール部
20 リップ部
21 接触面
22 付け根部
30 本体部
40 中空シール部
41 接触面
42 付け根部
50 本体部
60 リップ部
61 接触面
62 付け根部
100 グラスラン
101 グラスラン
102 グラスラン
103 グラスラン
104 グラスラン
201 ハードトップ用ウェザーストリップ
202 ハードトップ用ウェザーストリップ
203 ハードトップ用ウェザーストリップ
204 ハードトップ用ウェザーストリップ
301 ベルトライン用ウェザーストリップ
302 ベルトライン用ウェザーストリップ
303 ベルトライン用ウェザーストリップ
304 ベルトライン用ウェザーストリップ
G ドアガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に装着される本体部と、前記本体部に一体成形され、開閉されるドアガラスに摺接する摺接部とを有する自動車用ウェザーストリップにおいて、
前記摺接部の少なくとも一部を、制振性を有する材料で形成したことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項2】
自動車に装着される本体部と、前記本体部に一体成形され、開閉されるドアガラスに摺接する摺接部とを有する自動車用ウェザーストリップにおいて、
前記摺接部の少なくとも一部を、前記本体部よりも損失弾性率が大きな材料で形成したことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項3】
自動車に装着される本体部と、前記本体部に一体成形され、開閉されるドアガラスに摺接する摺接部とを有する自動車用ウェザーストリップにおいて、
前記摺接部の少なくとも一部を、20℃雰囲気温度の損失弾性率(1kHz〜4kHzの平均値)が、30MPa以上である材料で形成したことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項4】
自動車のドアサッシュに装着されるグラスランであって、前記本体部がドアガラスを案内する断面略コ字状の溝部を形成する底壁部と前記底壁部の両端から延びる両側壁部とからなり、前記摺接部が前記両側壁部からそれぞれ内側に折曲して延びる両リップ部とからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一つに記載の自動車用ウェザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−6968(P2008−6968A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179576(P2006−179576)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】