説明

自動車用ガラスラン

【課題】軽量化の効果が大きく、ドアガラスの昇降時においても、充分な強度を有する球体セル入りのオレフィン系熱可塑性エラストマー製のガラスランを提供する。
【解決手段】ガラスラン10Aの本体は、オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂10〜14重量部と、マイクロカプセル1〜3重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物で形成され、少なくともガラスラン10Aの本体は、比重が0.6〜0.8、引張強度が4.5〜8Mpa、破断伸びが400〜550%の物性を有し、平均セル径が40〜120μmの球体セルを有していることを特徴とする自動車用ガラスランである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内するガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、自動車のドア1のドアフレーム2の内周にドアガラス5の昇降を案内するガラスラン110が取付けられている。その従来のガラスラン110の全体を図3に示し、従来のガラスラン110がドアフレーム2の直線状部に取付けた状態の断面図を図5〜図7に示す。
【0003】
従来、ガラスラン110は、図4に示すように、ドアフレーム2のチャンネル内に取付けられて、ドアガラス5の昇降を案内するとともに、ドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。さらに、ガラスラン110は、図3に示すように、押出成形により成形された直線状部111からなるドアフレーム2の上辺部と、同じく押出成形されたフロント側縦辺部及びリヤ側縦辺部を、型成形によってドアフレーム2のコーナー部2bの形状に合わせて形成されたコーナー部112で接続している。
なお、ドア1と車体との間のシールは、ドアパネルおよびドアフレーム2の外周に取付けられたドアウエザストリップ(図示せず)および/または車体の開口部のフランジに取付けられたオープニングトリムウエザストリップ(図示せず)によりなされている。
【0004】
ガラスラン110の直線状部111の本体は、図5に示すように、車外側側壁120と、車内側側壁130と、底壁140からなる断面略コ字状をなしている。車外側側壁120の先端付近から車外側シールリップ121が本体の断面略コ字状の内側に向けて延出するように設けられている。また、車内側側壁130にもその先端付近から車内側シールリップ131が断面略コ字状の内側に向けて延出するように設けられている。
【0005】
ガラスラン110の本体の車外側側壁120、車内側側壁130と底壁140はドアフレーム2に設けられたチャンネル103内に挿入され、各壁の外面の少なくとも一部がチャンネル103の内面に圧接され、ガラスラン110を保持している。なお、図5に示すように、チャンネル103は、ドアフレーム2を折り曲げて形成される場合や、別部材で形成されたチャンネルをドアフレーム2部位に嵌め込んで形成される場合がある。
【0006】
ドアガラス5は、このガラスラン110の本体の断面略コ字状の内側を摺動するとともに、上記車外側シールリップ121と車内側シールリップ131によってドアガラス5の端部の両側面がシールされて保持されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、チャンネル103内にガラスラン110を装着したときに、チャンネル103内にガラスラン110を係止して保持するために、ガラスラン110の直線状部では、車内側側壁130と車外側側壁120にそれぞれ車内側保持リップ134と車外側保持リップ124が設けられている。
【0007】
このガラスラン110の本体の車外側側壁120、車内側側壁130と底壁140は、通常のゴムのソリッド材で形成されており比重が1.1〜1.3程度と大きく、また、車外側シールリップ121と車内側シールリップ131を微発泡させても比重が0.9〜1.0程度にしかならなかった。このため、ガラスラン110の全体の重量が大きくなり、近年の車輌の軽量化の要請を満たしていないこととなっている。
【0008】
そのため、図6に示すように、ガラスラン210の本体である車外側側壁220、車内側側壁230、及び底壁240を押出成形時に超臨界流体等で発泡させた発泡ゴムで形成し、車外側シールリップ221と車内側シールリップ231をソリッドゴムで形成したものがある(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【0009】
しかしながら、このガラスラン210は、押出成形に伴い発泡セルが押出方向に長径となる発泡状態となるため、押出方向(長手方向)に対して、その垂直断面方向での剛性が不足し、長手方向に沿って変形し易くなっていた。そのため、ドアフレーム2の湾曲に伴って、湾曲させた場合には、両側壁等が倒れるように変形しやすくなっていた。
また、ガラスラン210の成形材料として動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)のソリッドを用いるものもあるが、超臨界流体や化学発泡剤等を均質に分散混合させることが難しく、均質な発泡セルが得られないため、ガラスラン210全体を均質発泡させることが困難であった。
【0010】
そのため、図7に示すように、ガラスラン310において、車外側側壁320、車内側側壁330と底壁340、車外側シールリップ321、車内側シールリップ331等をEPDMゴムを主成分にする組成物に、マイクロカプセル311を発泡剤として混入させたものを使用して形成するものがある(例えば、特許文献4参照。)。
この場合は、組成物がEPDMゴムを主成分とするものであり、マイクロカプセルのセルの直径は、組成物に混入時には、5〜8μmであり、ゴムの加硫の熱を利用して膨張させた発泡セルの直径は30〜50μmである。
【0011】
しかしながら、ゴムを主成分とした場合、押出時には、加硫を避けるために、押出速度を比較的低く(100℃以下)で押出し、その後の加硫槽内で加熱し、加硫させるとともに、発泡させるのであるから、マイクロカプセル311をEPDMゴムの中に均一に分散させた場合に、表面付近のマイクロカプセルが先に発泡(膨張)し、後から内部のマイクロカプセルが発泡するような形になる。しかし、ゴムの加硫は加熱時間に影響され、表面付近の加硫が十分でない時の発泡は大きくなり、内部の加硫が十分な部位では発泡しにくくなるので、発泡セル径を均一にするため、ある程度加硫が進行した状態で発泡できるマイクロカプセルを選択しなければならず、結果として微発泡のゴム製のガラスランしか得られなかった。
【0012】
微発泡のため、発泡後の比重は0.92と、比重が大きく、ガラスラン310の軽量化への貢献は少なかった。なお、マイクロカプセル311のセルの直径を大きくすれば、微発泡であっても、軽量化に貢献することができるが、直径の大きなマイクロカプセル311は、混入時にマイクロカプセル311のセルが破れてしまう恐れがあり、EPDMゴムの中に均一に分散させることが難しくなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−349869号公報
【特許文献2】特開2005−88718号公報
【特許文献3】特開2005−88328号公報
【特許文献4】特開平6−183305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、軽量化の効果が大きく、ドアガラスの昇降時においても、充分な強度を有するオレフィン系熱可塑性エラストマー製のガラスランを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランにおいて、
ガラスランの本体は、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略コ字形をなし、車外側側壁と車内側側壁には、それぞれ本体の断面略コ字状の本体の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、車外側シールリップと車内側シールリップによりドアガラスの端部の車外側面及び車内側面をシールし、
ガラスランの本体は、オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂5〜14重量部と、マイクロカプセル1〜3重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物で形成され、かつ、少なくともガラスランの本体は、比重が0.6〜0.8、引張強度が4.5〜8Mpa、破断伸びが400〜550%の物性を有し、
平均発泡カプセル径が40〜120μmの球体セルを有していることを特徴とする自動車用ガラスランである。
【0016】
ガラスランの本体は、オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂5〜14重量部と、マイクロカプセル1〜3重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物で形成されている。このため、押出機のシリンダー内でオレフィン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系熱可塑性樹脂を溶融させて、かつ、マイクロカプセルを混入分散させることができ、混入作業が容易であり、押出後には、均一な発泡体を得ることができる。また、ガラスランの本体に平均発泡セル径が40〜120μmの球体セルを有するように、均一なマイクロカプセルの分散が可能となった。さらに、オレフィン系熱可塑性樹脂を混合させたので、ガラスランの剛性を維持することができる。
【0017】
また、化学発泡剤で発泡させた場合と比べて、マイクロカプセルによる発泡のため、発泡ガスが逃げにくく、発泡倍率を上げて比重を下げることができるとともに、表面からガスが逃げないので表面肌をきれいにすることができる。さらに、化学発泡剤で発泡させた場合、押出成形等により発泡した泡が引っ張られて、長手方向に長球状(ラクビーボール形状)に形成されるが、マイクロカプセルが膨張時には略球状に膨らみ、どの方向の変形に対しても力が偏ることがないため、均一な剛性とシール性を得ることができる。
【0018】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系熱可塑性樹脂を有するため、ガラスランをドアフレームに保持するための所定の剛性を有するとともに、弾性に優れているので、ガラスランがドアガラスの昇降に応じて、ドアガラスを保持して、シールすることができる。また、オレフィン系熱可塑性樹脂の混入割合を変化させて、マイクロカプセル発泡組成物の強度を調整することができる。
【0019】
マイクロカプセル発泡によるガラスランは、比重が0.6〜0.8、引張強度が4.5〜8MPa、破断伸びが400〜550%の物性を有する。このため、ガラスランを充分に軽量化することができるとともに、引張強度と破断伸びに優れたガラスランを得ることができる。
【0020】
比重が0.6未満では、ガラスランの引張強度や剛性が低下してしまい、0.8を超える場合には、ガラスランの軽量化に貢献することが少ない。
引張強度が4.5MPa未満では、引張強度が不足してガラスラン本体が変形したり、シールリップが変形したりしてシール性が低下し、8MPaを超える場合は、剛性が大きくなり柔軟性が低下し、ガラスランをドアフレームに沿って装着しにくくなる。
破断伸びが400%未満では、柔軟性が小さく、550%を超える場合には、柔軟性が大きくなり、ガラスラン本体がドアフレームから外れやすくなる。
【0021】
マイクロカプセルは、膨張後に40〜120μmの直径の発泡セルを形成可能であるため、マイクロカプセル発泡組成物の比重を低下させることができ、ガラスランの軽量化に貢献することができる。
マイクロカプセルによる発泡セルの直径が40μm未満では、ガラスランの比重を低下させることが少なく、軽量化の貢献が少なく、120μmを超える場合には、マイクロカプセル間の距離が短くなり、所定の剛性を得られなくなる恐れがある。。
【0022】
請求項2の本発明は、マイクロカプセルは、マイクロカプセル発泡組成物であるマイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマーに混入時には、15〜40μmの球体であり、膨張後に平均発泡セル径40〜120μmの球体セルを形成させるものである自動車用ガラスランである。
【0023】
請求項2の本発明では、マイクロカプセルは、マイクロカプセル発泡組成物であるマイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマーに混入時には、15〜40μmの球体であり、膨張後に平均発泡セル径40〜120μmの球体セルを形成させるものであるため、オレフィン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系熱可塑性樹脂に、マイクロカプセルを混入するときに、混入作業が容易であり、ガラスランの成形後ではマイクロカプセルが膨張して、マイクロカプセル発泡組成物の剛性を維持しつつ、比重を充分に低下させることができる。
【0024】
請求項3の本発明は、車内側側壁と車外側側壁の先端にドアフレームの先端をカバーするカバーリップを形成し、カバーリップと車外側シールリップと車内側シールリップは、ガラスランの本体と同じマイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成され、カバーリップの表面に、表面部材層が形成され、表面部材層は、マイクロカプセルを含有しないオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成された自動車用ガラスランである。
【0025】
請求項3の本発明では、車内側側壁と車外側側壁の先端にドアフレームの先端をカバーするカバーリップを形成したため、ドアフレーム又はチャンネルをカバーリップで覆い、見栄えを良くするとともに、カバーリップが車内側側壁と車外側側壁とでドアフレームの先端を挟持して、ガラスランをドアフレーム又はチャンネルに保持することができる。
【0026】
カバーリップと車外側シールリップと車内側シールリップは、ガラスランの本体と同じマイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマーマ組成物で形成されたため、ガラスラン本体と併せて、ガラスラン全体の重量を低下させることができ、車両の軽量化に貢献することができるとともに、ガラスラン全体が同一の材料で形成することができ、押出成形が容易であり、生産性がよい。
カバーリップの表面に、表面部材層が形成され、表面部材層は、マイクロカプセルを含有しないオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成されたため、カバーリップの表面の発泡の凹凸を覆うことができ表面が円滑で、カバーリップの見栄えを良くすることができる。
【0027】
請求項4の本発明は、車内側側壁と車外側側壁の先端にドアフレームの先端をカバーするカバーリップを形成し、カバーリップ、車外側シールリップと車内側シールリップは、マイクロカプセルを含有しないオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成された自動車用ガラスランである。
【0028】
請求項4の本発明では、車内側側壁、車外側側壁の先端にドアフレームの先端をカバーするカバーリップを形成し、カバーリップと車外側シールリップと車内側シールリップは、マイクロカプセルを含有しないオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成された。このため、カバーリップ、車外側シールリップと車内側シールリップは表面に発泡の凹凸がなく表面が円滑で見栄えがよい。また、車外側シールリップと車内側シールリップの剛性が大きく、シール性も良い。
【0029】
請求項5の本発明は、表面部材層の表面粗さは、5〜20μmであり、マイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の表面粗さは、20〜70μmである自動車用ガラスランである。
【0030】
請求項5の本発明では、表面部材層の表面粗さは、5〜20μmであり、マイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の表面粗さは、20〜70μmであるため、マイクロカプセル発泡組成物の表面を表面部材層で覆い、見栄えを向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマーに発泡剤としてマイクロカプセルと補強材としてオレフィン系熱可塑性樹脂を有するため、剛性を有するとともに、弾性に優れており、オレフィン系熱可塑性樹脂の混入割合を変化させて、マイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の強度を調整することができる。
このマイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物性のガラスラン本体は、比重が0.6〜0.8、引張強度が4.5〜8MPa、破断伸びが400〜550%の物性を有するため、ガラスランを充分に軽量化することができるとともに、引張強度と破断伸びに優れている。
また、ガラスランは、平均セル径が40〜120μmの球体セルを有しているため、その比重を低下させることができ、ガラスランの軽量化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるドアフレームの縦辺部にガラスランを装着した状態の断面図であり、図4におけるA−Aに沿った断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態であるドアフレームの縦辺部にガラスランを装着した状態の断面図であり、図4におけるA−Aに沿った断面図である。
【図3】本発明の実施の形態であるガラスランの正面図である。
【図4】自動車ドアの正面図である。
【図5】従来のガラスランを装着した状態の断面図である。
【図6】従来の他のガラスランを装着する前の状態の断面図である。
【図7】従来の他のガラスランの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を、図1〜図4に基づき説明する。
図4は、自動車のフロントのドア1の正面図であり、図3は、ドア1のドアフレーム2に取付けるフロントドアのガラスラン10の正面図である。図4に示すように、ドア1の上部にはドアフレーム2が設けられ、ドアガラス5が昇降自在に取付けられる。すなわち、ドアフレーム2の内周には、ガラスラン10が取付けられ、ドアガラス5の昇降を案内するとともに、ドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。
【0034】
ガラスラン10は、図3に示すように、全体として押出成形で形成された直線状部11と、ドアフレーム2のコーナー部2bに取付けられ、上記の直線状部11を接続し、型成形で形成されるコーナー部12からなる。
直線状部11は、ドアフレーム2の上辺部に取付けられる部分と、ドアフレーム2のリヤ側縦辺部に取付けられる部分と、ドアフレーム2のフロント側縦辺部をなすディビジョンサッシュに取付けられる部分とからなる。
【0035】
これらの押出成形部分をドアフレーム2に対応した形状となるように、フロント側とリヤ側のそれぞれのコーナー部分において、型成形により成形して直線状部11を接続してコーナー部12が形成されている。なお、ガラスラン10のコーナー部12は、ドアフレーム2のコーナー部2bの部分に装着される。
【0036】
以下に、フロント側のドア1の縦辺部に装着されるガラスラン10を例に取り説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態であるプレスドアタイプのドアフレーム2の縦辺に取付けられたガラスラン10(10A)の図4のA−A線に沿った断面図であり、図2は、本発明の第2のガラスラン10(10B)の図4のA−A線に沿った断面図である。
まず、本発明の第1の実施の形態であるガラスラン10(10A)について説明し、本発明の第2の実施の形態のガラスラン10(10B)については後述する。
【0037】
ドアフレーム2の縦辺部に取付けられるガラスラン10Aの直線状部11の断面形状は、図1に示すように、ガラスラン10Aの本体が車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40とから断面略コ字状に形成されている。
ガラスラン10Aの本体は、ドアフレーム2の上辺部に取付けられる部分も縦辺部に取付けられる部分も基本的には、ほぼ同様な断面略コ字形の断面形状を有している。
【0038】
ドアフレーム2は、内部にチャンネル3を有し、チャンネル3は、断面略コ字形に形成される。ドアフレーム2のアウターパネル2cとドアインナーパネル2dのそれぞれの先端にチャンネル3の側壁部が溶接等により固着されている。その断面略コ字形の内部にガラスラン10Aの本体が嵌挿されて、車外側側壁20と、車内側側壁30と、底壁40がチャンネル3のそれぞれの内面に当接している。
【0039】
車外側側壁20と車内側側壁30のそれぞれの先端の内側から車外側シールリップ21と車内側シールリップ31が、ガラスラン10A本体の断面略コ字状の内側に向けて延設されている。車外側シールリップ21と車内側シールリップ31により、ドアガラス5の先端部の両側面を保持する。また、ドアガラス5の昇降に応じて、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31がドアガラス5の両側面に当接して、ドアガラス5の昇降をガイドするとともに、ドアフレーム2とドアガラス5との間のシールをすることができる。
【0040】
車内側側壁30の内面には、車内側シールリップ31の内面に当接する車内側突起リップ33が形成されている。車内側突起リップ33により、ドアガラス5が本体内で車内側に大きく変位したときに、車内側シールリップ31が車内側側壁30に密着することを防止して、異音の発生防止と、ドアガラス5の側端部を保持することができる。また、ドアガラス5を車外側に位置させることができる。
【0041】
車外側側壁20と車内側側壁30のそれぞれの先端の外側から、それぞれ車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32が外側横方向に、車外側側壁20と車内側側壁30に沿って延設されている。車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32が、チャンネル3の車外側と車内側の側壁のそれぞれの先端をカバーしている。
【0042】
車外側側壁20の先端にドアフレーム2の先端をカバーする車外側カバーリップ22を形成し、車内側側壁30の先端に車内側カバーリップ32を形成したため、ドアフレーム2を両カバーリップで覆い、見栄えを良くするとともに、車外側側壁20と車外側カバーリップ22でドアフレーム2のアウターパネル2cの先端とチャンネル3の車外側側壁20を挟持し、車内側側壁30と車内側カバーリップ32でドアフレーム2のドアインナーパネル2dの先端とチャンネル3の車内側側壁30を挟持して、ガラスラン10Aをドアフレーム2に保持することができる。
【0043】
本実施の形態では、ガラスラン10Aの車内側側壁30と車内側シールリップ31は、それぞれ車外側側壁20と車外側シールリップ21よりも大きく、肉厚に形成される。このため、ドアガラス5を確実に保持できるとともに、ドアガラス5を車外方向に位置させることができ、ドアガラス5とドアフレーム2との間の段差を小さくすることができ、風切り音を小さくして、見栄えを良くすることができる。また、ドアフレーム2又はドアモールの車外側の面積を小さくすることができ、デザイン的にも好ましい。
【0044】
車外側側壁20は車外側連結部26で、車内側側壁30は車内側連結部36とそれぞれ底壁40と連結されている。車外側連結部26と車内側連結部36は、車内側側壁30および車外側側壁20との連続部では屈曲が容易にできるように溝部が形成されている。そのため、製造時に、車外側側壁20と車内側側壁30が底壁40とハ字形に開いていても、チャンネル3内へガラスラン10Aを取付けるときに、車外側側壁20及び車内側側壁30と底壁40の間が撓みやすくなり、取付けが容易になる。
【0045】
底壁40は、略板状に形成され、底壁40の外面には凸部44が形成され、チャンネル3の内面に当接して、ドアフレーム2とガラスラン10Aの間をシールしている。また、底壁40の外面の中央部には凹部45が形成され、底壁40が幅方向に撓みやすく形成されて、チャンネル3に挿入しやすくなり、軽量化にも貢献している。
【0046】
車外側側壁20と底壁40との連結部分の外面には、底壁第1保持リップ41が形成され、チャンネル3の車外側側壁側の屈曲部に係止されている。車内側側壁30と底壁40との連結部分の外面には、底壁第2保持リップ42が形成され、チャンネル3の車内側側壁側の屈曲部に係止され、車内側側壁30の外面には、車内側保持リップ34が形成され、チャンネル3内でガラスラン10A本体を保持している。
【0047】
底壁40のガラスラン10Aの本体の断面略コ字形の内面には、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31に設けられている低摺動部材層と同様に底壁低摺動部材層43が形成することが好ましい。その場合、ドアガラス5との摺動抵抗を減少させることができる。底壁低摺動部材層43は、短繊維の植毛で形成することもできる。
【0048】
ガラスラン10Aの本体である車外側側壁20、車内側側壁30及び底壁40と、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31、車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32は、オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂5〜14重量部と、マイクロカプセル1〜3重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物で形成されている。
【0049】
上記のオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリプロピレンからなる樹脂分が25%〜35%であり、EPDMゴムを主材とするゴム分が75%〜65%であるものを使用することが好ましい。本実施の形態では、EPDM成分が75部とポリプロピレン成分が25部を含有する熱可塑性エラストマー100重量部に対して、オレフィン系熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン樹脂を12重量部と、発泡剤としての熱膨張タイプのマイクロカプセルを2重量部を含有したマイクロカプセル発泡組成物を使用する。
【0050】
この場合には、ガラスラン10Aの本体が剛性を有するとともに、弾性に優れているので、ガラスラン10Aがドアガラス5の昇降に応じて、ドアガラス5を保持して、シールすることができる。また、ドアフレーム2の湾曲形状に応じて、ガラスラン10Aを湾曲させて嵌め込むことができる。
【0051】
上記マイクロカプセルは、熱可塑性高分子の球状のセルの中に低沸点の炭化水素を封じ込めた粒径15〜40の微粒子である。セルの材質としては、熱可塑性樹脂を使用し、例えば、アクリロニトリル共重合体を使用することができる。
マイクロカプセルとしては、例えば、積水化学工業株式会社製のADVANCELL(登録商標)、松本油脂製薬株式会社のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)、日本フィライト株式会社のEXPANCEL(登録商標)等を使用することができる。
【0052】
なお、マイクロカプセルは、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂を混練したものに混入してもよいが、まず、熱可塑性樹脂にマイクロカプセルを混入したペレットを作成し、このペレットと熱可塑性エラストマーを混練すると、マイクロカプセルが均一に分散することができる。このため、混入作業が容易であり、均一な微発泡体を得ることができるため、ガラスラン10Aの剛性を維持することができる。
【0053】
上記マイクロカプセルの直径は、上記のようにマイクロカプセル発泡組成物に混入時には、15〜40μmであるが、ガラスラン10Aを押出成形した後は、押出成形時に上記組成物が溶融するときの熱で加熱され、平均発泡セル径が40〜120μmに膨張して球状セルを形成する。このため、オレフィン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系熱可塑性樹脂に、マイクロカプセルを混入するときに、混入作業が容易であり、ガラスランの成形後ではその比重を充分に低下させることができる。
【0054】
さらに、マイクロカプセルによる発泡のため、化学発泡剤で発泡させた場合と比べて、発泡ガスが逃げにくく、発泡倍率を上げることができる。さらに、化学発泡剤で発泡させた場合、押出成形等により発泡した泡が引っ張られて、長手方向に長球状に形成されるが、マイクロカプセルの膨張時には、セルが略球状に膨らみ、どの方向の変形に対しても力が偏ることがない。そのため、ガラスラン10Aの本体や車外側シールリップ21と車内側シールリップ31の弾性と剛性を確保することができる。
【0055】
なお、膨張後のマイクロカプセルの平均発泡セル径は40〜120μmであるため、マイクロカプセル発泡組成物の比重を低下させることができ、ガラスラン10Aの軽量化に貢献することができる。
平均発泡セル径が40μm未満では、その比重を低下させることが少なく、120μmを超える場合には、マイクロカプセル間の距離が短くなり、所定の剛性が得られなくなる恐れがある。本実施の形態では、100μmである。
【0056】
そして、マイクロカプセル発泡組成物は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系熱可塑性樹脂を有するため、オレフィン系熱可塑性樹脂の混入割合を変化させて、マイクロカプセル発泡組成物の強度を調整することができる。このため、マイクロカプセル発泡組成物は、剛性を有するとともに、マイクロカプセルによる発泡により、その弾性に優れているので、ガラスラン10Aがドアガラス5の昇降に応じて、ドアガラス5を保持して、シールすることができる。
【0057】
マイクロカプセル発泡組成物は、上記のように、マイクロカプセルを膨張させて、比重が0.6〜0.8とすることができるとともに、オレフィン系熱可塑性樹脂を混入させて引張強度が4.5〜8MPa、破断伸びが400〜550%の物性を有することができる。このため、ガラスラン10Aを充分に軽量化することができるとともに、化学発泡剤と比べて方向性がなく、引張強度と破断伸びに優れたガラスラン10Aを得ることができる。
本実施の形態では、比重が0.7、引張強度が4.7MPa、破断伸びが420%であった。
【0058】
比重が0.6未満では、ガラスラン10Aの引張強度や剛性が低下し、0.8を超える場合には、ガラスラン10Aの軽量化に貢献することが少ない。
引張強度が4.5MPa未満では、引張強度が不足してガラスラン10Aの本体が変形したり、シールリップが変形したりしてシール性が低下し、8MPaを超える場合は、剛性が大きくなり柔軟性が低下し、ガラスラン10Aをドアフレーム2に沿って装着しにくくなる。
破断伸びが400%未満では、柔軟性が小さく、550%を超える場合には、柔軟性が大きくなり、ガラスラン10Aの本体がドアフレーム2から外れやすくなる。
【0059】
車外側カバーリップ22、車内側カバーリップ32、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31は、マイクロカプセル発泡組成物で形成されたため、ガラスラン10Aの本体と併せて、ガラスラン10A全体の重量を低下させることができ、車両の軽量化に貢献することができるとともに、ガラスラン10A全体が同一の材料で形成することができ、押出成形が容易であり、生産性がよい。
【0060】
外側から見える部分である車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32の表面に、それぞれマイクロカプセルを含有しない材料、例えば、ソリッドの熱可塑性エラストマーで、車外側表面部材層27と車内側表面部材層37とを同時押出成形により厚さ0.1〜0.5mm程度に形成することができる。この場合は、車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32の表面の発泡の凹凸を覆うことができ、カバーリップの見栄えを良くすることができる。本実施の形態では、車外側表面部材層27と車内側表面部材層37とを厚さ0.5mm程度に形成している。
【0061】
この場合には、車外側表面部材層27と車内側表面部材層37の表面粗さは、5〜20μmである。一方、マイクロカプセル発泡組成物表面粗さは、マイクロカプセルを含有しているため、20〜70μmであり、マイクロカプセル発泡組成物の表面を表面部材層で覆い、見栄えを向上させることができる。本実施の形態では、マイクロカプセル発泡組成物表面粗さは、60μmである。
【0062】
また、ドアガラス5が摺接する車外側シールリップ21及び車内側シールリップ31の表面に、上記したように、それぞれ車外側低摺動部材層28と車内側低摺動部材層38を形成することができる。この場合、ドアガラス5がガラスラン10の本体内に進入し、摺動しても、車外側シールリップ21及び車内側シールリップ31とドアガラス5との摺動抵抗を減少させることができ、ドアガラス5のスムースな昇降を維持することができる。
【0063】
低摺動部材層は、オレフィン系熱可塑性エラストマーの樹脂部分の比率が多い摺動抵抗の少ない材料を、車外側シールリップ21及び車内側シールリップ31の表面に0.1mm程度の厚さで同時押出して形成したり、シリコン樹脂やウレタン樹脂を塗布したりして形成することができる。
【0064】
なお、車外側シールリップ21の内面、又は車外側側壁20の内面に低摺動部材層や突条を形成することもできる。この場合には、ドアガラス5がガラスラン10Aの本体内部に進入したときに、車外側側壁20と車外側シールリップ21が密着することを防止でき、異音の発生の防止とシール性の確保ができる。
【0065】
次に、第2の実施の形態について、図2の基づき説明する。
第2の実施の形態のガラスラン10Bは、ガラスラン10Bの本体である車外側側壁20、車内側側壁30及び底壁40は、オレフィン系熱可塑性樹脂を10重量部、マイクロカプセル3重量部を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されている点は第1の実施の形態と同様であるが、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31、車外側カバーリップ22と車内側カバーリップ32は、マイクロカプセルを含有しないオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されている点が異なる。第1の実施の形態と異なる部分を説明し、第1の実施の形態と同様な点の説明は省略する。
【0066】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、ガラスラン10Bの本体はマイクロカプセル発泡組成物で形成されているため、ガラスラン10Bを軽量化に貢献することができる。さらに、オレフィン系熱可塑性樹脂の混入割合を変化させて、マイクロカプセル発泡組成物の強度を調整することができる。このため、マイクロカプセル発泡組成物は、剛性を有するとともに、弾性に優れている。また、ガラスラン10Bがドアガラス5の昇降に応じて、ドアガラス5を保持して、シールすることができる。
本第2の実施の形態では、平均発泡セル径が120μm、本体部分の比重が0.6、引張強度が4.5MPa、破断伸びが400%である。
【0067】
そして、車外側カバーリップ22、車内側カバーリップ32、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31は、マイクロカプセルを含有しないオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成されている。このため、車外側表面部材層27と車内側表面部材層37を形成しなくても、車外側カバーリップ22、車内側カバーリップ32、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31は表面に発泡の凹凸がなく見栄えがよい。また、車外側シールリップ21と車内側シールリップ31の剛性が大きく、ドアガラス5に確実に摺接して、シール性も良い。
【符号の説明】
【0068】
2 ドアフレーム
10 ガラスラン
20 車外側側壁
21 車外側シールリップ
22 車外側カバーリップ
27 車外側表面部材層
30 車内側側壁
31 車内側シールリップ
32 車内側カバーリップ
37 車外側表面部材層
40 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ドアのドアフレームの内周に取付け、ドアガラスの昇降を案内する自動車用ガラスランにおいて、
上記ガラスランの本体は、車外側側壁と、車内側側壁と、底壁とからなる断面略コ字形をなし、上記車外側側壁と車内側側壁には、それぞれ上記本体の断面略コ字状の本体の内側に向かって延出する車外側シールリップと車内側シールリップを設け、該車外側シールリップと車内側シールリップにより上記ドアガラスの端部の車外側面及び車内側面をシールし、
上記ガラスランの本体は、オレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部と、オレフィン系熱可塑性樹脂5〜14重量部と、マイクロカプセル1〜3重量部とを含有するマイクロカプセル発泡組成物で形成され、かつ、少なくとも上記ガラスランの本体は、比重が0.6〜0.8、引張強度が4.5〜8Mpa、破断伸びが400〜550%の物性を有し、平均発泡カプセル径が40〜120μmの球体セルを有していることを特徴とする自動車用ガラスラン。
【請求項2】
上記マイクロカプセルは、上記マイクロカプセル発泡組成物であるマイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマーに混入時には、15〜40μmの球体であり、膨張後に平均発泡セル径40〜120μmの球体セルを形成させるものである請求項1に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項3】
上記車内側側壁と車外側側壁の先端に上記ドアフレームの先端をカバーするカバーリップを形成し、該カバーリップと上記車外側シールリップと車内側シールリップは、上記ガラスランの本体と同じ上記マイクロカプセル含有のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成され、上記カバーリップの表面に、表面部材層が形成され、該表面部材層は、上記マイクロカプセルを含有しない上記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成された請求項1又は請求項2に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項4】
上記車内側側壁と車外側側壁の先端に上記ドアフレームの先端をカバーするカバーリップを形成し、該カバーリップ、上記車外側シールリップと車内側シールリップは、上記マイクロカプセルを含有しない上記オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物で形成された請求項1又は請求項2に記載の自動車用ガラスラン。
【請求項5】
上記表面部材層の表面粗さは、5〜20μmであり、上記マイクロカプセル含有のオレフィン系熱エラストマー組成物の表面粗さは、20〜70μmである請求項3に記載の自動車用ガラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−178199(P2011−178199A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41835(P2010−41835)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】