説明

自動車用嵩上げ材

【課題】 部分的にかかる集中荷重に対応する所要の強度を確保でき、しかも一層の軽量化を実現することができる自動車用嵩上げ材を提供する。
【解決手段】 自動車のフロアパンに設置して床面を所要の高さにするための嵩上げ材である。嵩上げ材は、車両のダッシュボード下方の前方壁面とそれに連なるフロア面の凹部とにわたって配置して、座席に座った搭乗者が足を載せて楽な姿勢を保たせるための嵩上げ材1である。フロア面の凹部に対応する衝撃吸収部7と、ダッシュボードの下方の前方壁面に対応する足載せ部8と、その間を繋いでいる屈曲部9とが一体となった中空二重壁構造体をなす。中空二重壁構造体の中空部11には、足載せ部8の裏面に芯材12を融着させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロアパンに設置して床面を所要の高さにするための自動車用嵩上げ材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアパンに設置して床面を所要の高さにするための自動車用フロア嵩上げ材としては、フロアパンとカーペットとの間に介在させて床面を嵩上げするものであって、射出成形により成形された発泡倍率が20〜45倍の発泡プラスチック製のものは、特開2001−347872号公報に記載されている。
【0003】
また、硬質発泡プラスチックからなるフロア嵩上げ材であって、表面が発泡体がであり、裏面側にリブまたは突起を形成して軽量でかつ高い剛性を有するものとしては、特開2003−127796号公報に記載されている。
【0004】
また、特開2005−153757公報には、ブロー成形による中空二重壁構造体で、表側に細いスリットリブで補強したものが紹介されている。
【特許文献1】特開2001−347872公報
【特許文献2】特開2003−127796公報
【特許文献3】特開2005−153757公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車のフロアは、フロアパンの上にフロア嵩上げ材を設置してその上にカーペットを敷いた構成となっているが、フロア嵩上げ材には部分的に大荷重がかかることがあり、このような場合には、荷重の集中によって亀裂等の基材破壊の生じることが指摘されている。
【0006】
また、前掲の特開2005−153757公報において紹介されている嵩上げ材は、その表面にスリットリブが細い溝として残り、靴のヒールが挟まるなどの不都合がある。
【0007】
フロア嵩上げ材においては、その全体の強度を増して剛性を高くすれば荷重の集中による基材破壊を防ぐことができるが、この種のフロア嵩上げ材は一方において軽量化も要求されるので、所要の強度を確保しつつ一層の軽量化も進めなければならない。加えて靴のヒールが挟まるなどの問題点の解消も重要である。
【0008】
そこで、本発明は、嵩上げ材を構成する中空二重壁構造体の中空部に、表壁の裏面に芯材を融着させることにより、部分的にかかる集中荷重に対応する所要の強度を確保でき、しかも一層の軽量化を実現することができるとともに、加えて靴のヒールが挟まるなどの問題点を解消することができる自動車用嵩上げ材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係る自動車用嵩上げ材は、自動車のフロアパンに設置して床面を所要の高さにするための嵩上げ材であって、間隔をおいて相対する表壁および裏壁を有する中空二重壁構造体をなし、前記中空二重壁構造体の中空部に、表壁の裏面に芯材を融着させてなることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の自動車用嵩上げ材は、請求項3に記載するように、車両のダッシュボード下方の前方壁面とそれに連なるフロア面の凹部とにわたって配置して、座席に座った搭乗者が足を載せて楽な姿勢を保たせるためのフットレストを一体として、フロア面の凹部に対応する衝撃吸収部と、ダッシュボードの下方の前方壁面に対応する足載せ部と、その間を繋いでいる屈曲部とが一体となった中空二重壁構造体をなし、前記中空二重壁構造体の中空部には、前記足載せ部および衝撃吸収部またはそのいずれか一方の表側壁の裏面に芯材を融着させてなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る自動車用嵩上げ材において、芯材としてハニカム構造の補強体を備えていることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、嵩上げ材を構成する中空二重壁構造体の中空部に、表壁の裏面に芯材を融着させることにより、部分的にかかる集中荷重に対応する所要の強度を確保でき、しかも一層の軽量化を実現することができるとともに、加えて靴のヒールが挟まるなどの問題点を解消することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面は本発明の一実施の形態に係る自動車用嵩上げ材を例示しており、図1は嵩上げ材の断面図、図2は嵩上げ材の他の形態を示す断面図、図3は嵩上げ材の使用態様を示す一部の側面図である。
【0014】
嵩上げ材1は、図3に示すように、自動車2のダッシュボード3の下方の前方壁面4とそれに連なるフロア面5の凹部6とにわたって配置して使用するものである。
【0015】
前記嵩上げ材1は中空二重壁構造体でなり、フロア面5の凹部6に対応する衝撃吸収部7と、ダッシュボード3の下方の前方壁面4に対応する足載せ部8と、その間を繋いでいる屈曲部9とを有して一体に構成されている。
【0016】
嵩上げ材1は、衝撃吸収部7の前端部を屈曲部9として、足載せ部8を前記屈曲部9から斜め上方に立ち上がった形状に衝撃吸収部7と一体に形成して成り、その衝撃吸収部7をフロア面5の凹部6に嵌め込み、かつ足載せ部8をダッシュボード3の下方の前方壁面4に接した状態で必要に応じて固定する。衝撃吸収部7にはその裏壁に複数の補強リブ10を有している。
【0017】
嵩上げ材1の中空部11には、図1に示すように、足載せ部8の裏面の全面または一部に芯材12融着させて足載せ部8の補強している、この芯材12はハニカム構造の補強体である。図2に示すように、芯材12は衝撃吸収部7の裏面に融着してもよく、必要に応じて芯材12を足載せ部8と衝撃吸収部7の両方に設けてもよい。13はカーペットである。図3に示すように、自動車2の座席14に着座した搭乗者15は、その足16を嵩上げ材1の足乗せ部8に載せて楽な姿勢を保つことができる。
【0018】
芯材12は、多数の空隙を有するハニカム構造であるが、そのハニカム構造としては、多数の微小凹部からなる筒状、多数の空隙からなるハニカム状の補強構造をなしていること、および中空部に対向する壁間にわたるリブを形成してあることが好適である。
【0019】
芯材12は樹脂芯材であるが、その樹脂材料としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル誘導体、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン−ジエン類等のターポリマー、ABS樹脂、変性ポリオレフィンオキサイド系樹脂、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、これらは一種類を単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。特に、熱可塑性樹脂のなかでもでオレフィン系樹脂またはオレフィン系樹脂を主体にした樹脂、ポリプロピレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を主体にした樹脂が、繊維層との溶着性、機械的強度および成形性のバランスに優れている点で好ましい。樹脂芯材は、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
【0020】
嵩上げ材1の表壁の裏面とそれに融着するハニカム構造体の芯材12との間には、不織布や織布若しくは熱溶着性のシートやホットメルトタイプの接着剤を介在させると、嵩上げ材1の表壁に対する芯材12の融着強度が向上する。
【0021】
嵩上げ材1の中空二重壁構造体の外壁は、ABS樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂で構成される。嵩上げ材1と樹脂芯材12と介在物とが同質の材料であると、各部材間の溶着による補強性の点からも、また、廃棄においては同質である為に分別が必要なく、環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動車用嵩上げ材を例示する断面図である。
【図2】嵩上げ材の他の形態を示す断面図である。
【図3】嵩上げ材の使用態様を示す一部の側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 嵩上げ材
2 自動車
3 ダッシュボード
4 前方壁面
5 フロア面
6 凹部
7 衝撃吸収部
8 足載せ部
9 屈曲部
10 補強リブ
11 中空部
12 芯材
13 カーペット
14 座席
15 搭乗者
16 足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロアパンに設置して床面を所要の高さにするための嵩上げ材であって、
間隔をおいて相対する表壁および裏壁を有する中空二重壁構造体をなし、
前記中空二重壁構造体の中空部に、表壁の裏面に芯材を融着させてなる
ことを特徴とする自動車用嵩上げ材。
【請求項2】
芯材としてハニカム構造の補強体を備えていることを特徴とする請求項1記載の自動車用嵩上げ材。
【請求項3】
嵩上げ材は、車両のダッシュボード下方の前方壁面とそれに連なるフロア面の凹部とにわたって配置して、座席に座った搭乗者が足を載せて楽な姿勢を保たせるためのフットレストを一体として、
フロア面の凹部に対応する衝撃吸収部と、ダッシュボードの下方の前方壁面に対応する足載せ部と、その間を繋いでいる屈曲部とが一体となった中空二重壁構造体をなし、
前記中空二重壁構造体の中空部には、前記足載せ部および衝撃吸収部またはそのいずれか一方の表側壁の裏面に芯材を融着させてなる
ことを特徴とする自動車用嵩上げ材。
【請求項4】
芯材としてハニカム構造の補強体を備えていることを特徴とする請求項3記載の自動車用嵩上げ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−6194(P2010−6194A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166645(P2008−166645)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】