自動車組立設備及び自動車組立方法
【課題】サイクルタイムの延長を招くことなく、空になった台車を排出位置まで返送する。
【解決手段】リフタ20に、第1の台車31を牽引するための牽引手段(係合部40)を設け、次に組み付ける部品E’を搭載した新たな台車31’の下方に昇降台21を配置したときに、牽引手段で牽引された第1の台車31を、リフタ20の移動経路から排出する排出位置に配置するようにした。
【解決手段】リフタ20に、第1の台車31を牽引するための牽引手段(係合部40)を設け、次に組み付ける部品E’を搭載した新たな台車31’の下方に昇降台21を配置したときに、牽引手段で牽引された第1の台車31を、リフタ20の移動経路から排出する排出位置に配置するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車組立設備及び自動車組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されている自動車組立設備は、図14に示すように、車体Bを吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベア110と、車体Bの下方で、車体Bの搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタ120と、リフタ120に設けられた昇降台121、122と、部品E(エンジン)及び部品R(リアアクスル)をリフタ120の移動経路内に搬入する台車131、132とを備える。この自動車組立設備では、部品E及び部品Rをそれぞれ搭載した台車131、132の下方に昇降台121、122を配置し(図14参照)、この状態で昇降台121、122を上昇させることにより、部品E及び部品Rを昇降台121、122に搭載する(図15参照)。このとき、部品Eは台車131と共に昇降台121に搭載され、部品Rは台車132から分離されて昇降台122に搭載される。その後、部品E及び部品Rを搭載したリフタ120を車体Bと同期させて下流側に搬送しながら、部品E及び部品Rを車体Bの下方から組み付ける(図16参照)。
【0003】
そして、図17に示すようにリフタ120が下流端まで搬送されたら、昇降台121,122を中間位置まで降下させ、リフタ120を停止させる。その後、リフタ120を上流側に搬送し、台車131の排出位置で一旦停止させる(図18参照)。この排出位置でリフタ120の昇降台121,122を下限位置まで降下させ、台車131を接地させる(図19参照)。その後、リフタ120をさらに上流側に搬送して、次に組み付けられる部品E’及びR’を搭載した台車131’,132’の下方に潜りこませると共に、排出位置に残された台車131をリフタ120の移動経路から排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−110636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の自動車組立設備では、空になった台車131を排出位置に配置するために、リフタ120を上流側に返送する途中で一旦停止させる必要があり(図19参照)、サイクルタイムの延長を招いていた。
【0006】
例えば、リフタ120を下流側端部で停止させたとき(図17参照)に、昇降台121を下限位置まで降下させて台車131を接地させ、この位置から台車131を排出すれば、リフタ120を返送途中で一旦停止させる必要は無くなる。しかし、リフタ120の移動経路の下流側端部は、作業者が部品E及び部品Rを車体Bに組み付ける作業エリアとなっているため、この作業エリア内を横切って台車131を排出することはできない。このため、空になった台車131を排出する排出位置は、リフタ120の移動経路の上流側端部付近に設ける必要がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、サイクルタイムの延長を招くことなく、空になった台車を排出位置まで返送することを解決すべき技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明は、車体を吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベアと、オーバーヘッドコンベアの下方で、車体の搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタと、リフタに設けられ、車体に組み付ける部品を昇降可能に支持する昇降台とを備え、部品を搭載した台車の下方に昇降台を配置した状態で、昇降台を上昇させることにより、部品を台車と共に持ち上げて昇降台に搭載し、昇降台に搭載した部品を、車体と同期させて下流側に搬送しながら車体の下方から組み付ける自動車組立設備であって、リフタに、接地した状態の台車を上流側に牽引する牽引手段を設け、部品を搭載した一の台車の下方に昇降台を配置した状態で、リフタに牽引された他の台車を、リフタの移動経路から排出するための排出位置に配するようにしたものである。
【0009】
また、本発明は、車体を吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベアと、オーバーヘッドコンベアの下方で、車体の搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタと、リフタに設けられ、車体に組み付ける部品を昇降可能に支持する昇降台とを備えた自動車組立設備を用いて行われる自動車組立方法であって、部品を搭載した台車の下方に昇降台を配置する搭載準備工程と、昇降台を上昇させることにより、部品を台車と共に持ち上げて昇降台に搭載する部品搭載工程と、昇降台に搭載した部品を車体と同期させて下流側に搬送しながら車体の下方から組み付ける組付工程と、昇降台を降下させて台車を接地させる台車接地工程と、接地させた台車を牽引しながらリフタを上流側に搬送する返送工程と、リフタに牽引された台車を、リフタの移動経路から排出するための排出位置に配置する排出準備工程とを有し、排出準備工程と搭載準備工程とを同時に完了させるものである。
【0010】
このように、本発明では、部品を搭載した台車の下方に昇降台を配した状態で、リフタで牽引された台車が排出位置に配置されるようにし、リフタで牽引した空の台車を排出位置に配置する排出準備工程と、部品を搭載した台車の下方に昇降台を配置する搭載準備工程とを同時に完了させるようにした。これにより、空の台車を排出位置に配置するために、リフタを返送途中で一旦停止させる必要がなくなり、リフタを下流側端部から上流側端部までノンストップで搬送することができるため、サイクルタイムの短縮が図られる。
【0011】
牽引手段は、例えば、台車と係合して上流側に牽引する係合部で構成することができる。この場合、排出位置から台車を排出する際に、台車と係合部とが干渉して排出に支障を来たす恐れがある。従って、係合部は、台車と係合して上流側に牽引可能な係合位置と、台車の排出方向で台車と干渉しない退避位置との間で切換可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、リフタを途中で一旦停止させることなく上流側端部まで搬送すると共に、リフタで牽引した空の台車を排出位置に配置することができるため、サイクルタイムの短縮が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車組立設備の側面図である(搭載準備工程)。
【図2】上記自動車組立設備の平面図である。
【図3】第1の台車の斜視図である。
【図4】第2の台車の斜視図である。
【図5】退避位置に配した係合部の平面図である。
【図6】係合位置に配した係合部の平面図である。
【図7】上記自動車組立設備の側面図である(部品搭載工程)。
【図8】上記自動車組立設備の側面図である(組付工程)。
【図9】上記自動車組立設備の側面図である(台車接地工程)。
【図10】上記自動車組立設備の側面図である(返送工程)。
【図11】上記自動車組立設備の側面図である(排出準備工程及び搭載準備工程)。
【図12】係合部の他の例を示す平面図である。
【図13】係合部の他の例を示す平面図である。
【図14】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図15】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図16】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図17】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図18】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図19】従来の自動車組立設備の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る自動車組立設備は、図1及び図2に示すように車体Bに部品E(エンジン)及び部品R(リアアクスル)を下方から組付けるためのものである。この自動車組立設備は、車体Bを吊り下げ搬送するオーバーヘッドコンベア10と、一対の昇降台21,22を備えたリフタ20と、リフタ20を車体Bの搬送方向と同方向で往復動させる駆動手段(コンベアC)とを備える。コンベアCによるリフタ20の往復動、昇降台21,22の昇降、及び、後述する係合部40の回転は、制御部(図示省略)により制御される。尚、以下の説明では、オーバーヘッドコンベア10による車体Bの搬送方向を単に「搬送方向」と言い、搬送方向下流側(図1及び図2の左側)を「下流側」、搬送方向上流側(図1及び図2の右側)を「上流側」と言う。また、搬送方向と直交する水平方向(図2の上下方向)を幅方向と言う。
【0016】
部品E及び部品Rは、それぞれ第1の台車31及び第2の台車32に搭載された状態で、リフタ20の移動経路内に搬入される。第1の台車31は、昇降台21の上昇により部品Eと共に持ち上げられる構成を成している(図7参照)。本実施形態では、図3に示すように、矩形の天板31aと、天板31aから下方に延びる脚部31bと、脚部31bの下端に設けられた車輪31cとを有し、天板31aの上に部品Eが搭載される。一方、第2の台車32は、昇降台22の上昇により部品Rのみが持ち上げられる構成を成している(図7参照)。本実施形態では、図4に示すように、幅方向に離隔した一対の支持梁32aと、支持梁32aから下方に延びる脚部32bと、脚部32bの下端に設けられた車輪32cとを有し、一対の支持梁32aの上に部品Rが幅方向に掛け渡された状態で搭載される。
【0017】
リフタ20は、ベース23と、ベース23の上に設けられた昇降台21、22とを有する(図1参照)。ベース23は、地面に設けられたコンベアCにより搬送方向に往復動可能とされる。昇降台21、22は、昇降シリンダ(図示省略)により昇降駆動される。昇降台21、22は、例えばパンタグラフ機構を介して平行且つ無段階に昇降可能であり、水平に維持した状態で任意の高さで停止させることができる。
【0018】
リフタ20には、第1の台車31を牽引するための牽引手段が設けられる。牽引手段は、リフタ20の上流側への移動と共に第1の台車31を上流側に移動させるためのものであり、本実施形態では、図5に示すように、一対の係合部40、40で牽引手段が構成される。一対の係合部40、40は、リフタ20の下流側端部に設けられ、第1の台車31に下流側から係合可能とされる。図示例では、係合部40が平面視で半円弧形状を成している。係合部40は、第1の台車31に下流側から係合可能な係合位置と、第1の台車31と幅方向で係合しない退避位置との間で切換可能とされる。本実施形態では、各係合部40の一端41をリフタ20のベース23に鉛直軸周りに回転可能に取り付け、この係合部40を図示しない駆動手段で回転駆動することにより、係合部40の他端42を第1の台車31の脚部31bの下流側に配した係合位置(図6参照)と、係合部40の他端42を脚部31bよりも上流側に退避させた退避位置(図5参照)との間で切り換えられる。図示例では、係合位置の係合部40はベース23から下流側に突出し(図6参照)、退避位置の係合部40はベース23の下流側端部よりも上流側に配される(図5参照)。
【0019】
以下、上記の自動車組立設備による車体Bへの部品E及び部品Rの組付工程を説明する。
【0020】
まず、部品Eを搭載した第1の台車31及び部品Rを搭載した第2の台車32がリフタ20の移動経路内に搬入され、この台車31、32の下方にリフタ20を潜り込ませて、昇降台21、22をそれぞれ台車31、32の下方に配置する(搭載準備工程、図1及び図2参照)。その後、図7に示すように、昇降台21、22を上昇させて部品E及び部品Rを持ち上げ、部品E及び部品Rを昇降台21、22の上に搭載する(部品搭載工程)。本実施形態では、部品Eは第1の台車31と共に昇降台21の上に搭載され、部品Rは第2の台車32から分離されて昇降台22の上に搭載される。
【0021】
次に、部品E及び部品Rを搭載したリフタ20を、オーバーヘッドコンベア10により搬送される車体Bと同期させて下流側に搬送する(図8の矢印A1参照)。これと共に、リフタ20の昇降台21,22をさらに上昇させ、部品E及び部品Rを車体Bの所定位置に組み付ける(組付工程)。部品Rと分離されて空になった第2の台車32は、図示しない駆動手段でリフタ20の搬送経路から排出される(図8の矢印A2参照)。
【0022】
リフタ20が下流側端部に達したら、コンベアCによるリフタ20の搬送を停止させる。そして、この位置で、昇降台21,22を降下させて第1の台車31を接地させる(台車接地工程、図9参照)。その後、係合部40を介して第1の台車31を牽引しながら、リフタ20を上流側に返送する(返送工程、図10参照)。この返送工程を詳しく説明する。まず、昇降台21、22を降下させて第1の台車31を接地させた後、係合部40を退避位置(図5参照)に配した状態でリフタ20の上流側への搬送を開始する。その後、係合部40が第1の台車31の下流側の脚部31b(A)を通過したら、図5に矢印で示すように係合部40を回転させて、図6で示す係合位置に配置する。さらにリフタ20を上流側へ搬送すると、係合位置の係合部40が第1の台車31の上流側の脚部31b(B)に下流側から係合し、これにより第1の台車31が係合部40を介してリフタ20により牽引される。このとき、第1の台車31は、リフタ20のベース23と搬送方向で離隔した状態で牽引される。
【0023】
第1の台車31を牽引したリフタ20が上流側端部に達するまでに、次に組み付ける部品E’及び部品R’を搭載した台車31’、32’がリフタ20の移動経路の上流側端部に搬入される。そして、この新たな台車31’、32’の下方にリフタ20を潜りこませ、リフタ20及び第1の台車31を停止させる(図11参照)。これにより、昇降台21、22をそれぞれ新たな台車31’、32’の下方に配置する(搭載準備工程)と同時に、リフタ20で牽引された第1の台車31を、リフタ20の移動経路から排出するための排出位置に配置する(排出準備工程)。換言すると、リフタ20を移動経路の上流側端部で停止させたときに、このリフタ20で牽引される第1の台車31が排出位置に配置されるように、係合部30の形状及び大きさが設定される。
【0024】
このように、リフタ20で牽引した第1の台車31を排出位置に配置する排出準備工程と、昇降台21、22を新たな台車31’、32’の下方へ配置する搭載準備工程とを同時に完了させることにより、組付工程の後、リフタ20を下流側端部(図9参照)から上流側端部(図11参照)までノンストップで搬送することが可能となるため、サイクルタイムの短縮が図られる。
【0025】
その後、係合部40を回転させて退避位置(図5参照)に切り換え、第1の台車31をリフタ20の移動経路から図示しない排出手段で排出することにより、図1及び図2に示す状態となる。本実施形態では、第1の台車31を幅方向に排出する。このとき、係合部40が図6に示す係合位置のままであると、係合部40と第1の台車31の上流側の脚部31b(B)とが幅方向で干渉するため、第1の台車31を幅方向に排出することはできないが、本実施形態では、上記のように係合部40を退避位置に切り換えることで、係合部40を排出位置の台車31よりも上流側に退避させ、第1の台車31の上流側の脚部31b(B)との幅方向での干渉を回避できる。以上の工程を繰り返すことにより、オーバーヘッドコンベア10で搬送させる車体B、B’・・・に対して、部品E、E’・・・、及び部品R、R’・・・が順次組み付けられる。
【0026】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、係合部40が平面視で半円形状を成しているが、これに限らず、例えば図12に示すように平面視で略コの字形状としたり、図13に示すように平面視で略L字形状としたりしてもよい。
【0027】
また、上記の実施形態では、係合部40を回転させることで係合位置と退避位置とを切換可能としているが、これに限らず、例えば直線的な駆動手段(エアシリンダ等)により係合部40を切換可能としてもよい。
【0028】
また、上記の実施形態では、牽引手段として、台車に下流側から係合して牽引する係合部が示されているが、これに限らず、例えばマグネットなどで台車を吸着して牽引する牽引手段を採用してもよい。
【0029】
また、上記の実施形態では、リフタ20に二つの昇降台21、22が設けられた場合を示しているが、これに限らず、例えばリフタに昇降台を一つだけ設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 オーバーヘッドコンベア
20 リフタ
21 昇降台
22 昇降台
23 ベース
31 第1の台車
32 第2の台車
40 係合部(牽引手段)
B 車体
C コンベア
E 部品(エンジン)
R 部品(リアアクスル)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車組立設備及び自動車組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されている自動車組立設備は、図14に示すように、車体Bを吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベア110と、車体Bの下方で、車体Bの搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタ120と、リフタ120に設けられた昇降台121、122と、部品E(エンジン)及び部品R(リアアクスル)をリフタ120の移動経路内に搬入する台車131、132とを備える。この自動車組立設備では、部品E及び部品Rをそれぞれ搭載した台車131、132の下方に昇降台121、122を配置し(図14参照)、この状態で昇降台121、122を上昇させることにより、部品E及び部品Rを昇降台121、122に搭載する(図15参照)。このとき、部品Eは台車131と共に昇降台121に搭載され、部品Rは台車132から分離されて昇降台122に搭載される。その後、部品E及び部品Rを搭載したリフタ120を車体Bと同期させて下流側に搬送しながら、部品E及び部品Rを車体Bの下方から組み付ける(図16参照)。
【0003】
そして、図17に示すようにリフタ120が下流端まで搬送されたら、昇降台121,122を中間位置まで降下させ、リフタ120を停止させる。その後、リフタ120を上流側に搬送し、台車131の排出位置で一旦停止させる(図18参照)。この排出位置でリフタ120の昇降台121,122を下限位置まで降下させ、台車131を接地させる(図19参照)。その後、リフタ120をさらに上流側に搬送して、次に組み付けられる部品E’及びR’を搭載した台車131’,132’の下方に潜りこませると共に、排出位置に残された台車131をリフタ120の移動経路から排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−110636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の自動車組立設備では、空になった台車131を排出位置に配置するために、リフタ120を上流側に返送する途中で一旦停止させる必要があり(図19参照)、サイクルタイムの延長を招いていた。
【0006】
例えば、リフタ120を下流側端部で停止させたとき(図17参照)に、昇降台121を下限位置まで降下させて台車131を接地させ、この位置から台車131を排出すれば、リフタ120を返送途中で一旦停止させる必要は無くなる。しかし、リフタ120の移動経路の下流側端部は、作業者が部品E及び部品Rを車体Bに組み付ける作業エリアとなっているため、この作業エリア内を横切って台車131を排出することはできない。このため、空になった台車131を排出する排出位置は、リフタ120の移動経路の上流側端部付近に設ける必要がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、サイクルタイムの延長を招くことなく、空になった台車を排出位置まで返送することを解決すべき技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明は、車体を吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベアと、オーバーヘッドコンベアの下方で、車体の搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタと、リフタに設けられ、車体に組み付ける部品を昇降可能に支持する昇降台とを備え、部品を搭載した台車の下方に昇降台を配置した状態で、昇降台を上昇させることにより、部品を台車と共に持ち上げて昇降台に搭載し、昇降台に搭載した部品を、車体と同期させて下流側に搬送しながら車体の下方から組み付ける自動車組立設備であって、リフタに、接地した状態の台車を上流側に牽引する牽引手段を設け、部品を搭載した一の台車の下方に昇降台を配置した状態で、リフタに牽引された他の台車を、リフタの移動経路から排出するための排出位置に配するようにしたものである。
【0009】
また、本発明は、車体を吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベアと、オーバーヘッドコンベアの下方で、車体の搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタと、リフタに設けられ、車体に組み付ける部品を昇降可能に支持する昇降台とを備えた自動車組立設備を用いて行われる自動車組立方法であって、部品を搭載した台車の下方に昇降台を配置する搭載準備工程と、昇降台を上昇させることにより、部品を台車と共に持ち上げて昇降台に搭載する部品搭載工程と、昇降台に搭載した部品を車体と同期させて下流側に搬送しながら車体の下方から組み付ける組付工程と、昇降台を降下させて台車を接地させる台車接地工程と、接地させた台車を牽引しながらリフタを上流側に搬送する返送工程と、リフタに牽引された台車を、リフタの移動経路から排出するための排出位置に配置する排出準備工程とを有し、排出準備工程と搭載準備工程とを同時に完了させるものである。
【0010】
このように、本発明では、部品を搭載した台車の下方に昇降台を配した状態で、リフタで牽引された台車が排出位置に配置されるようにし、リフタで牽引した空の台車を排出位置に配置する排出準備工程と、部品を搭載した台車の下方に昇降台を配置する搭載準備工程とを同時に完了させるようにした。これにより、空の台車を排出位置に配置するために、リフタを返送途中で一旦停止させる必要がなくなり、リフタを下流側端部から上流側端部までノンストップで搬送することができるため、サイクルタイムの短縮が図られる。
【0011】
牽引手段は、例えば、台車と係合して上流側に牽引する係合部で構成することができる。この場合、排出位置から台車を排出する際に、台車と係合部とが干渉して排出に支障を来たす恐れがある。従って、係合部は、台車と係合して上流側に牽引可能な係合位置と、台車の排出方向で台車と干渉しない退避位置との間で切換可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、リフタを途中で一旦停止させることなく上流側端部まで搬送すると共に、リフタで牽引した空の台車を排出位置に配置することができるため、サイクルタイムの短縮が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車組立設備の側面図である(搭載準備工程)。
【図2】上記自動車組立設備の平面図である。
【図3】第1の台車の斜視図である。
【図4】第2の台車の斜視図である。
【図5】退避位置に配した係合部の平面図である。
【図6】係合位置に配した係合部の平面図である。
【図7】上記自動車組立設備の側面図である(部品搭載工程)。
【図8】上記自動車組立設備の側面図である(組付工程)。
【図9】上記自動車組立設備の側面図である(台車接地工程)。
【図10】上記自動車組立設備の側面図である(返送工程)。
【図11】上記自動車組立設備の側面図である(排出準備工程及び搭載準備工程)。
【図12】係合部の他の例を示す平面図である。
【図13】係合部の他の例を示す平面図である。
【図14】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図15】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図16】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図17】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図18】従来の自動車組立設備の側面図である。
【図19】従来の自動車組立設備の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明の一実施形態に係る自動車組立設備は、図1及び図2に示すように車体Bに部品E(エンジン)及び部品R(リアアクスル)を下方から組付けるためのものである。この自動車組立設備は、車体Bを吊り下げ搬送するオーバーヘッドコンベア10と、一対の昇降台21,22を備えたリフタ20と、リフタ20を車体Bの搬送方向と同方向で往復動させる駆動手段(コンベアC)とを備える。コンベアCによるリフタ20の往復動、昇降台21,22の昇降、及び、後述する係合部40の回転は、制御部(図示省略)により制御される。尚、以下の説明では、オーバーヘッドコンベア10による車体Bの搬送方向を単に「搬送方向」と言い、搬送方向下流側(図1及び図2の左側)を「下流側」、搬送方向上流側(図1及び図2の右側)を「上流側」と言う。また、搬送方向と直交する水平方向(図2の上下方向)を幅方向と言う。
【0016】
部品E及び部品Rは、それぞれ第1の台車31及び第2の台車32に搭載された状態で、リフタ20の移動経路内に搬入される。第1の台車31は、昇降台21の上昇により部品Eと共に持ち上げられる構成を成している(図7参照)。本実施形態では、図3に示すように、矩形の天板31aと、天板31aから下方に延びる脚部31bと、脚部31bの下端に設けられた車輪31cとを有し、天板31aの上に部品Eが搭載される。一方、第2の台車32は、昇降台22の上昇により部品Rのみが持ち上げられる構成を成している(図7参照)。本実施形態では、図4に示すように、幅方向に離隔した一対の支持梁32aと、支持梁32aから下方に延びる脚部32bと、脚部32bの下端に設けられた車輪32cとを有し、一対の支持梁32aの上に部品Rが幅方向に掛け渡された状態で搭載される。
【0017】
リフタ20は、ベース23と、ベース23の上に設けられた昇降台21、22とを有する(図1参照)。ベース23は、地面に設けられたコンベアCにより搬送方向に往復動可能とされる。昇降台21、22は、昇降シリンダ(図示省略)により昇降駆動される。昇降台21、22は、例えばパンタグラフ機構を介して平行且つ無段階に昇降可能であり、水平に維持した状態で任意の高さで停止させることができる。
【0018】
リフタ20には、第1の台車31を牽引するための牽引手段が設けられる。牽引手段は、リフタ20の上流側への移動と共に第1の台車31を上流側に移動させるためのものであり、本実施形態では、図5に示すように、一対の係合部40、40で牽引手段が構成される。一対の係合部40、40は、リフタ20の下流側端部に設けられ、第1の台車31に下流側から係合可能とされる。図示例では、係合部40が平面視で半円弧形状を成している。係合部40は、第1の台車31に下流側から係合可能な係合位置と、第1の台車31と幅方向で係合しない退避位置との間で切換可能とされる。本実施形態では、各係合部40の一端41をリフタ20のベース23に鉛直軸周りに回転可能に取り付け、この係合部40を図示しない駆動手段で回転駆動することにより、係合部40の他端42を第1の台車31の脚部31bの下流側に配した係合位置(図6参照)と、係合部40の他端42を脚部31bよりも上流側に退避させた退避位置(図5参照)との間で切り換えられる。図示例では、係合位置の係合部40はベース23から下流側に突出し(図6参照)、退避位置の係合部40はベース23の下流側端部よりも上流側に配される(図5参照)。
【0019】
以下、上記の自動車組立設備による車体Bへの部品E及び部品Rの組付工程を説明する。
【0020】
まず、部品Eを搭載した第1の台車31及び部品Rを搭載した第2の台車32がリフタ20の移動経路内に搬入され、この台車31、32の下方にリフタ20を潜り込ませて、昇降台21、22をそれぞれ台車31、32の下方に配置する(搭載準備工程、図1及び図2参照)。その後、図7に示すように、昇降台21、22を上昇させて部品E及び部品Rを持ち上げ、部品E及び部品Rを昇降台21、22の上に搭載する(部品搭載工程)。本実施形態では、部品Eは第1の台車31と共に昇降台21の上に搭載され、部品Rは第2の台車32から分離されて昇降台22の上に搭載される。
【0021】
次に、部品E及び部品Rを搭載したリフタ20を、オーバーヘッドコンベア10により搬送される車体Bと同期させて下流側に搬送する(図8の矢印A1参照)。これと共に、リフタ20の昇降台21,22をさらに上昇させ、部品E及び部品Rを車体Bの所定位置に組み付ける(組付工程)。部品Rと分離されて空になった第2の台車32は、図示しない駆動手段でリフタ20の搬送経路から排出される(図8の矢印A2参照)。
【0022】
リフタ20が下流側端部に達したら、コンベアCによるリフタ20の搬送を停止させる。そして、この位置で、昇降台21,22を降下させて第1の台車31を接地させる(台車接地工程、図9参照)。その後、係合部40を介して第1の台車31を牽引しながら、リフタ20を上流側に返送する(返送工程、図10参照)。この返送工程を詳しく説明する。まず、昇降台21、22を降下させて第1の台車31を接地させた後、係合部40を退避位置(図5参照)に配した状態でリフタ20の上流側への搬送を開始する。その後、係合部40が第1の台車31の下流側の脚部31b(A)を通過したら、図5に矢印で示すように係合部40を回転させて、図6で示す係合位置に配置する。さらにリフタ20を上流側へ搬送すると、係合位置の係合部40が第1の台車31の上流側の脚部31b(B)に下流側から係合し、これにより第1の台車31が係合部40を介してリフタ20により牽引される。このとき、第1の台車31は、リフタ20のベース23と搬送方向で離隔した状態で牽引される。
【0023】
第1の台車31を牽引したリフタ20が上流側端部に達するまでに、次に組み付ける部品E’及び部品R’を搭載した台車31’、32’がリフタ20の移動経路の上流側端部に搬入される。そして、この新たな台車31’、32’の下方にリフタ20を潜りこませ、リフタ20及び第1の台車31を停止させる(図11参照)。これにより、昇降台21、22をそれぞれ新たな台車31’、32’の下方に配置する(搭載準備工程)と同時に、リフタ20で牽引された第1の台車31を、リフタ20の移動経路から排出するための排出位置に配置する(排出準備工程)。換言すると、リフタ20を移動経路の上流側端部で停止させたときに、このリフタ20で牽引される第1の台車31が排出位置に配置されるように、係合部30の形状及び大きさが設定される。
【0024】
このように、リフタ20で牽引した第1の台車31を排出位置に配置する排出準備工程と、昇降台21、22を新たな台車31’、32’の下方へ配置する搭載準備工程とを同時に完了させることにより、組付工程の後、リフタ20を下流側端部(図9参照)から上流側端部(図11参照)までノンストップで搬送することが可能となるため、サイクルタイムの短縮が図られる。
【0025】
その後、係合部40を回転させて退避位置(図5参照)に切り換え、第1の台車31をリフタ20の移動経路から図示しない排出手段で排出することにより、図1及び図2に示す状態となる。本実施形態では、第1の台車31を幅方向に排出する。このとき、係合部40が図6に示す係合位置のままであると、係合部40と第1の台車31の上流側の脚部31b(B)とが幅方向で干渉するため、第1の台車31を幅方向に排出することはできないが、本実施形態では、上記のように係合部40を退避位置に切り換えることで、係合部40を排出位置の台車31よりも上流側に退避させ、第1の台車31の上流側の脚部31b(B)との幅方向での干渉を回避できる。以上の工程を繰り返すことにより、オーバーヘッドコンベア10で搬送させる車体B、B’・・・に対して、部品E、E’・・・、及び部品R、R’・・・が順次組み付けられる。
【0026】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、係合部40が平面視で半円形状を成しているが、これに限らず、例えば図12に示すように平面視で略コの字形状としたり、図13に示すように平面視で略L字形状としたりしてもよい。
【0027】
また、上記の実施形態では、係合部40を回転させることで係合位置と退避位置とを切換可能としているが、これに限らず、例えば直線的な駆動手段(エアシリンダ等)により係合部40を切換可能としてもよい。
【0028】
また、上記の実施形態では、牽引手段として、台車に下流側から係合して牽引する係合部が示されているが、これに限らず、例えばマグネットなどで台車を吸着して牽引する牽引手段を採用してもよい。
【0029】
また、上記の実施形態では、リフタ20に二つの昇降台21、22が設けられた場合を示しているが、これに限らず、例えばリフタに昇降台を一つだけ設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 オーバーヘッドコンベア
20 リフタ
21 昇降台
22 昇降台
23 ベース
31 第1の台車
32 第2の台車
40 係合部(牽引手段)
B 車体
C コンベア
E 部品(エンジン)
R 部品(リアアクスル)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベアと、オーバーヘッドコンベアの下方で、車体の搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタと、前記リフタに設けられ、車体に組み付ける部品を昇降可能に支持する昇降台とを備え、
前記部品を搭載した台車の下方に前記昇降台を配置した状態で、前記昇降台を上昇させることにより、前記部品を台車と共に持ち上げて前記昇降台に搭載し、前記昇降台に搭載した前記部品を、車体と同期させて下流側に搬送しながら車体の下方から組み付ける自動車組立設備であって、
前記リフタに、接地した状態の台車を上流側に牽引する牽引手段を設け、
前記部品を搭載した一の台車の下方に前記昇降台を配置した状態で、前記リフタに牽引された他の台車を、前記リフタの移動経路から排出するための排出位置に配置するようにした自動車組立設備。
【請求項2】
車体を吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベアと、オーバーヘッドコンベアの下方で、車体の搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタと、前記リフタに設けられ、車体に組み付ける部品を昇降可能に支持する昇降台とを備えた自動車組立設備を用いて行われる自動車組立方法であって、
前記部品を搭載した台車の下方に前記昇降台を配置する搭載準備工程と、前記昇降台を上昇させることにより、前記部品を台車と共に持ち上げて前記昇降台に搭載する部品搭載工程と、前記昇降台に搭載した前記部品を車体と同期させて下流側に搬送しながら車体の下方から組み付ける組付工程と、前記昇降台を降下させて台車を接地させる台車接地工程と、接地させた台車を牽引しながら前記リフタを上流側に搬送する返送工程と、前記リフタに牽引された台車を、前記リフタの移動経路から排出するための排出位置に配置する排出準備工程とを有し、
前記排出準備工程と前記搭載準備工程とを同時に完了させる自動車組立方法。
【請求項1】
車体を吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベアと、オーバーヘッドコンベアの下方で、車体の搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタと、前記リフタに設けられ、車体に組み付ける部品を昇降可能に支持する昇降台とを備え、
前記部品を搭載した台車の下方に前記昇降台を配置した状態で、前記昇降台を上昇させることにより、前記部品を台車と共に持ち上げて前記昇降台に搭載し、前記昇降台に搭載した前記部品を、車体と同期させて下流側に搬送しながら車体の下方から組み付ける自動車組立設備であって、
前記リフタに、接地した状態の台車を上流側に牽引する牽引手段を設け、
前記部品を搭載した一の台車の下方に前記昇降台を配置した状態で、前記リフタに牽引された他の台車を、前記リフタの移動経路から排出するための排出位置に配置するようにした自動車組立設備。
【請求項2】
車体を吊り下げ状態で搬送するオーバーヘッドコンベアと、オーバーヘッドコンベアの下方で、車体の搬送方向と同方向で往復移動可能なリフタと、前記リフタに設けられ、車体に組み付ける部品を昇降可能に支持する昇降台とを備えた自動車組立設備を用いて行われる自動車組立方法であって、
前記部品を搭載した台車の下方に前記昇降台を配置する搭載準備工程と、前記昇降台を上昇させることにより、前記部品を台車と共に持ち上げて前記昇降台に搭載する部品搭載工程と、前記昇降台に搭載した前記部品を車体と同期させて下流側に搬送しながら車体の下方から組み付ける組付工程と、前記昇降台を降下させて台車を接地させる台車接地工程と、接地させた台車を牽引しながら前記リフタを上流側に搬送する返送工程と、前記リフタに牽引された台車を、前記リフタの移動経路から排出するための排出位置に配置する排出準備工程とを有し、
前記排出準備工程と前記搭載準備工程とを同時に完了させる自動車組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−10435(P2013−10435A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144686(P2011−144686)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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