説明

自動車運転席のフロア構造

【課題】運転者の体格に応じてその足裏寸法が変化した場合でも、適正にペダル操作を行い得るようにする。
【解決手段】下端ヒンジ部16を支点に揺動可能に支持されたオルガン式のアクセルペダル4と、その側方に配設されて上端枢支部を支点に揺動可能に支持された吊りペダル式のブレーキペダルと、運転席シートの前方部に位置するフロアパネル9の上面を覆うように設置されるフロアマット12とを有する自動車運転席のフロア構造において、上記フロアマット12には、アクセルペダル4の踏面板13よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を前上がりに傾斜させた傾斜面部14を形成する傾斜面形成部材44が配設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下端ヒンジ部を支点に揺動可能に支持されたオルガン式のアクセルペダルと、その側方に配設されて上端部を支点に揺動可能に支持された吊りペダル式のブレーキペダルと、運転席シートの前方部に位置するフロアパネルの上面を覆うように設置されるフロアマットとを有する自動車運転席のフロア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車体フロア部の運転席側に配設されたオルガン式の車両用ペダルにおいて、運転者の踏力が付与されるペダル踏面の側面形状を、靴裏の凸面形状に対応した曲率半径を有する円弧面(凹面)形状とすることにより、ペダル操作時に運転者の靴裏面を上記ペダル踏面にピッタリとフィットさせて足踏ペダルのコントロール性を向上させるように構成された車両用ペダルが知られている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、下端部を回転中心として車両の前方かつ下方に回転運動する足踏み式ペダルの下部に位置するとともに、車室のフロア部に設置されてペダル操作足の踵部が載置される踏み台を設け、この踏み台に上記足踏み式ペダルの可動範囲の全域でペダル操作足の踵部を支持状態に維持する踏込み支持形状部を設けることにより、ペダル操作足の踵部が踏み台から浮き上がるのを防止して優れたペダル操作性が得られるように構成された足踏み式ペダルの操作補助装置が知られている。
【0004】
さらに、下記特許文献3に示されるように、車両の衝突時等において、運転者の下肢に与える傷害値を低減することを目的として、車両におけるペダル近傍のフロアに、足がペダルに対して横方向へ移動する挙動、あるいは足先が踵を中心として横方向へ移動する挙動などを抑制する足挙動抑制部を設けるとともに、この足挙動抑制部に、エネルギー吸収機能を有する踵受承部を設けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−59202号公報
【特許文献2】特開2007−109162号公報
【特許文献3】特開2001−1827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された車両用ペダルでは、ペダル踏面の側面形状を凹面形状としてペダル踏面と運転者の靴裏面とを面当たり状態とすることにより、運転者がペダル踏面を踏み込む際にその操作性を向上させることができる。しかし、車両の運転席には種々の体格を有する運転者が着座する可能性があり、その全ての者に対して上記ペダル踏面を構成する凹面の曲率を適合させることは不可能である。例えば、足裏寸法が短い低身長者が運転席に着座した場合には、ペダル踏面の適正位置の下方に拇子球部が当接し、充分なレバー比が得られないことに起因して操作力不足が生じ、逆に足裏寸法が長い高身長者が運転席に着座した場合には、ペダル本体の上端部が靴裏面に当接し、ペダル操作足の拇子球部をペダル踏面に当接させることが困難となって運転者が不快感を受けるとともに、ペダル操作性が悪化する等の問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に開示されているように、足踏み式ペダルの下部に設置された踏み台の上面に第1の踏面および第2の踏面を有する踏込み支持形状部を設けた構成によれば、足踏み式ペダルの踏込操作時に、上記踏込み支持形状部からなる係止部により、ペダル操作足の踵部が車両の前方側へ移動するのを阻止して足踏み式ペダルの操作性を安定させることができる等の利点がある。しかし、上記のように踏込み支持形状部からなる係止部を、足踏ペダルの下端部に設けられた揺動支点と、ペダル操作足の踵部との間に配設した場合には、車室フロア部上に載置された踵部を中心に揺動変位する靴裏面の揺動軌跡と、下端部に設けられたヒンジピンを中心に揺動変位するペダル踏面の揺動軌跡とを一致させることができないため、上記のように下端部を中心に揺動変位する所謂オルガン式の足踏ペダルを用いたにも拘わらず、足踏ペダルの操作に応じてペダル踏面に対する靴裏面の当接位置が足先側にずれることが避けられないため、ペダル操作性が極端に悪化し易いという問題があった。
【0008】
さらに、上記特許文献3に示すように、軟質のエネルギー吸収材により所定の肉厚に形成されてエネルギーの吸収機能を備えた踵受承部を足挙動抑制部に設けた場合には、車両の衝突時等に際して右足から膝部の下端向けて作用する曲げモーメントと捩りモーメントとを低減することができるとともに、踵部から膝部に向けて作用する軸力を低減できるという利点がある。しかし、上記特許文献3に係る発明においても、例えば足裏寸法の短い低身長者が運転席シートに着座した場合に、その靴裏面の揺動軌跡とペダル踏面の揺動軌跡とが顕著に変化することに起因してペダル操作性が極端に悪化するという点に何ら考慮されておらず、この点を改善することが望まれていた。
【0009】
上記足踏ペダルは、通常、平均的身長を有するものが適正角度で容易にペダル操作を行い得る位置に配設されているため、例えば高身長者に比べて足裏寸法および下肢長が短い傾向にある低身長者がペダル操作を行う場合に、足首角度または足裏の傾斜角度が適正角度から大きくずれて迅速なペダル操作が困難となり、あるいはペダル操作を行う足の踵部がフロア面から浮き上がった状態で不安定なアクセルペダルが操作行われて微妙なペダル操作を行うことができない等の問題があった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み、下端ヒンジ部を支点に揺動可能に支持されたオルガン式のアクセルペダル等を備えた自動車運転席のフロア構造において、運転者の体格に応じてその足裏寸法が変化した場合でも、適正にペダル操作を行うことができる自動車運転席のフロア構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、下端ヒンジ部を支点に揺動可能に支持されたオルガン式のアクセルペダルと、その側方に配設されて上端枢支部を支点に揺動可能に支持された吊りペダル式のブレーキペダルと、運転席シートの前方部に位置するフロアパネルの上面を覆うように設置されるフロアマットとを有する自動車運転席のフロア構造において、上記フロアマットには、アクセルペダルの踏面板よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を前上がりに傾斜させた傾斜面部を形成する傾斜面形成部材が配設されたものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車運転席のフロア構造において、上記傾斜面形成部材は、ブレーキペダルの踏込部よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を、上記アクセルペダル側の踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させるように、アクセルペダル側の踵載置領域からブレーキペダルの踵載置領域へと延設されるとともに、このブレーキペダル側の踵載置領域よりも前方側領域の上面を、上記踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させるブレーキペダル側延長部を備えたものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の自動車運転席のフロア構造において、上記踵載置領域上面の傾斜角度が13.5°〜23.5°の範囲内に設定されたものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車運転席のフロア構造において、上記傾斜面形成部材は、通常時に運転者が載置するペダル操作足の踵部を支持し得る程度の剛性と、衝突時にペダル操作足の踵部に作用する衝撃エネルギーを吸収し得る程度の弾性とを有するパッド材により形成されたものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車運転席のフロア構造において、アクセルペダルの踏面板には、その踏込操作時に運転者の拇子球当接部が当接する領域を車両の後方側に向けて突出させた凸状面部からなる踏込部が形成されたものである。
【0016】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車運転席のフロア構造において、上記運転席シートを前後移動させるとともに、この運転席シートの前方移動に応じてそのシートクッションの後傾角度を低減するシート調整機構を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、運転席シートの前方部に位置するフロアパネルの上面を覆うように設置されるフロアマットに、アクセルペダルの踏面板よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を前上がりに傾斜させた傾斜面部を形成する傾斜面形成部材を配設したため、平均身長者に比べて足裏寸法の短い低身長者であっても、ペダル操作足の踵下端部を上記傾斜面部上に載置した状態で、その足首角度および足裏の傾斜角度を適正角度に維持しつつ、ペダル操作足の拇子球部をアクセルペダルに設けられた踏込部の適正位置に当接させることができる。したがって、低身長者がペダル操作足の踵下端部をフロア面から離間させた状態で、アクセルペダルの踏込操作を行うことに起因して微妙なペダル操作が不可能となったり、足首角度および足裏の傾斜角度が適正角度から大きくずれることに起因してアクセルペダルの迅速な踏込操作が困難となったりすることなく、低身長者がその踵下端部を上記傾斜面部上に載置して踏面板の下端ヒンジ部に近接させた状態で、上記拇子球部を踏込部の適正位置に当接させることにより、アクセルペダルを適正なレバー比で容易かつ正確に踏込操作できるという利点がある。
【0018】
請求項2に係る発明では、上記傾斜面形成部材をアクセルペダル側の踵載置領域からブレーキペダルの踵載置領域へと延設することにより、ブレーキペダルの踏込部よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を、上記アクセルペダル側の踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させたため、平均身長者に比べて足裏寸法の短い低身長者がブレーキ操作を行う際に、ペダル操作足の踵下端部を上記傾斜面部上に載置した状態で、その足首角度および足裏の傾斜角度を適正角度に維持しつつ、その拇子球部をブレーキペダルに設けられた踏込部の適正位置に当接させることができるとともに、ペダル操作足の踵下端部を上記傾斜面部上に載置した状態で、その足先部をアクセルペダルからブレーキペダルへと、あるいはその逆方向に移動させることにより、ペダルの踏み換え操作を容易に行うことができる。しかも、上記ブレーキペダル側の踵載置領域よりも前方側領域の上面を、上記踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させるブレーキペダル側延長部を上記傾斜面形成部材に設けたため、例えば急ブレーキ操作の途中でペダル操作足の踵部が上記傾斜面部上から離間するのを防止でき、常にペダル操作足の踵部を上記傾斜面部上に載置した状態でブレーキペダルの踏込操作を安定して行うことができるという利点がある。
【0019】
請求項3に係る発明では、上記傾斜面部の水平面に対する傾斜角度を13.5°〜23.5°の範囲内に設定したため、低身長者等の踵下端部が上記傾斜面部上から離間することを効果的に防止しつつ、ペダル操作足の踵下端部を上記傾斜面部上に安定して載置した状態で、その拇子球部をアクセルペダルの踏込部に当接させることにより、アクセルペダル4を適正に踏込操作できるという利点がある。
【0020】
請求項4に係る発明では、上記傾斜面形成部材を、通常時に運転者が載置するペダル操作足の踵部を支持し得る程度の剛性と、衝突時にペダル操作足の踵部に作用する衝撃エネルギーを吸収し得る程度の弾性とを有するパッド材により形成したため、通常時におけるペダル操作性を維持しつつ、車両の衝突時に作用する慣性力に応じて運転者の体が車両の前方側に付勢され、アクセルペダルまたはブレーキペダル等の踏込状態にあるペダル操作足の踵部に上記付勢力に対応した反力が作用した場合に、上記傾斜面形成部材を変形させることにより、フロア部等から踵部に作用する衝撃荷重を効果的に緩和できるという利点がある。
【0021】
請求項5に係る発明では、踏面板の上部に配設された踏込部を、側面視で車両の後方側へ突出するように湾曲した円弧状の凸状面部により形成したため、この凸状面部からなる踏込部の一点に対して靴裏面が線当たり状態で当接することになる。したがって、仮に高身長者等がペダル操作足の踵下端部を踏面板の枢支部から所定距離だけ車体の後方側に位置させた状態でアクセルペダルを踏み込んだ場合においても、その踏込量が変化するのに応じ、上記踏込部に対する靴裏面の当接位置を滑らか、かつ連続的に変化させることにより、運転者が違和感を受けるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0022】
請求項6に係る発明では、上記運転席シートを前後移動させるとともに、この運転席シートの前方移動に応じてそのシートクッションの後傾角度を低減するシート調整機構を設けたため、運転席シートに着座する運転者が、その身長等に応じて運転者の着座姿勢を維持しつつ、そのアイポイントを適正ラインに一致させるとともに、優れたハンドル操作性およびペダル操作性が得られるように、運転席シートの前後位置およびシートクッションの傾斜角度等を自動的に調整できるという利点がある。そして、上記運転席シートの前後位置およびシートクッションの傾斜角度の調整動作に応じて運転席シートに着座した運転者の着座位置等が変化した場合においても、運転者の足元部に位置するフロアパネル上に傾斜面部を形成することにより、足裏寸法の短い低身長者がペダル操作足の踵下端部を上記傾斜面部上に載置した状態で、足首角度および足裏の傾斜角度を、アクセルペダル等の操作に適した角度に維持しつつ、上記低身長者の拇子球部をアクセルペダルの踏込部に当接させてペダル操作性を確保できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る自動車のペダル装置の実施形態を示す説明図である。
【図2】ペダルの配設構造を示す背面断面図である。
【図3】アクセルペダルの具体的構成を示す図2のIII−III線断面図である。
【図4】アクセルペダルの具体的構成を示す斜視図である。
【図5】ベース部材の取付構造を示す平面断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】シート調整機構の具体的構成を示す側面図である。
【図8】シート調整機構の具体的構成を示す斜視図である。
【図9】図7のIX−IX線断面図である。
【図10】傾斜角度調整機構の具体的構成を示す側面断面図である。
【図11】傾斜角度調整機構の具体的構成を示す平面断面図である。
【図12】シートクッションを車両の前方側に移動させた状態を示す側面図である。
【図13】平均身長者および低身長者の着座状態を示す側面図である。
【図14】平均身長者および低身長者の踵載置状態を示す説明図である。
【図15】高身長者および平均身長者の着座状態を示す側面図である。
【図16】高身長者の踵載置状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜図6は、本発明に係る自動車のペダル装置の実施形態を示している。この自動車には、その車室内に配設された運転席シート1のシートクッション1aをスライド変位させてその前後位置を調整する前後位置調整機構2と、上記シートクッション1aの傾斜角度を調整する傾斜角度調整機構3とを有するシート調整機構が設けられている。また、上記車室の前部には、運転席シート1に着座した運転者により踏込操作されるアクセルペダル4とブレーキペダル5とクラッチペダル6とが配設されている。上記自動車の車体には、エンジンルームと車室とを区画するダッシュパネル7と、このダッシュパネル7の下端部から後下がりの傾斜状態で車体の後方側に延びるキックアップパネル8と、その後端部に連続して車体の後方側に延びる略平坦な車室のフロアパネル9とが設けられている。
【0025】
上記フロアパネル9の上面には、防振、遮音および断熱機能等を有するメルシート、フェルト材またはグラスウール等を主体とした裏打ち補助材10と、その上面を被覆するパイル地等からなる表層材11とを備えた従来周知のフロアマット12が設置されている。また、上記フロアマット12には、後述するようにアクセルペダル4の踏面板13よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を前上がりに傾斜させた傾斜面部14を形成する傾斜面形成部材44が配設されている。
【0026】
上記アクセルペダル4は、フロアパネル9の前方に配設されたキックアップパネル8に固定されたベース部材15と、このベース部材15により支持されるとともに、運転者の踏込操作に応じて下端ヒンジ部16を支点に揺動する踏面板13と、この踏面板13を後方側に付勢する圧縮コイルばね等からなる付勢部材17と、踏面板13の揺動変位を検出して図外の制御部に検出信号を出力するアクセルペダル操作検出部とを備えたオルガン式のペダルユニットからなっている。上記踏面板13は、合成樹脂製の板状成形体等からなり、その下端部に薄肉の下端ヒンジ部16と、上記ベース部材15の後部上面に係止される係止部19とが設けられている。上記踏面板13の上部には、運転者の足裏拇子球部が当接する領域を、側面視から見て所定の曲率半径で車両の後方側へ円弧状に突出させた凸状面部からなる踏込部20が設けられている。
【0027】
また、上記踏面板13の裏面には、ベース部材15の前部上面に設けられたストッパ部21に当接して踏面板13の前方移動を規制する突部22と、上記付勢部材17の上端部を支持する上端支持部23と、ベース部材15の中央部上面に設けられた係止フック部24に係合されることにより踏面板13の後方移動を規制する抜け止め部25と、上記アクセルペダル操作検出部を構成する操作ロッド26が回動可能に枢支される枢支部27とが設けられている。そして、上記踏面板13は、その下端部に設けられた係止部19がベース部材15に係止された状態で、上記下端ヒンジ部16を支点として揺動可能に支持されるとともに、通常時(非操作時)には、上記付勢部材17の付勢力に応じ、水平線に対して所定角度の傾斜状態で保持されるようになっている。
【0028】
ベース部材15は、上記キックアップパネル8に取り付けられる第1,第2取付部28,29が設けられた固定基板30を有している。この固定基板30の上面には、上記アクセルペダル操作検出部を構成するリニアセンサが配設されたコントロールボックス31の収容部32と、上記付勢部材17の下端部を支持する下端支持部33と、上記操作ロッド26の下端部に連結された可撓性を有する線条体等からなる連結部材34を摺動可能に支持するガイド部35とが設けられている。
【0029】
また、上記コントロールボックス31の収容部32には、その前面に図外のハーネスをコントロールボックス31に接続するためのカプラー36が取り付けられるとともに、上記踏面板13の突部22が当接するストッパ部21が上面に突設されている。さらに、上記ガイド部35の前方側には、踏面板13の抜け止め部25が係止される係止フック部24が突設され、かつ上記固定基板30の後端部には、踏面板13の係止部19が係合される係合溝を有する係合部37が形成されている。
【0030】
上記固定基板30の前部左側辺には側方延出部38が形成されるとともに、この側方延出部38に下方へ凹入した凹入部が形成され、この凹入部により上記第1取付部28が構成されている。この凹入部からなる第1取付部28の底面には、締結ボルト39の挿通孔が形成されている。また、上記固定基板30の後端部裏面には、下方へ凹入した凹入部40が形成され、その下面に突設された一対のクリップ係止部29a,29bにより上記第2取付部29が構成されている(図5参照)。この第2取付部29のうち一方のクリップ係止部29aは、縦方向(車両前後方向)に延びるように設置されるとともに、他方のクリップ係止部29b横方向(車幅)に延びるように設置され、両クリップ係止部29a,29bがキックアップパネル8に固定されることにより、上記固定基板30を、がたつかせることなく、安定して車体に固定できるように構成されている。
【0031】
上記ベース部材15が取り付けられるキックアップパネル8には、固定基板30の第1,第2取付部28,29が固定されるハット型の第1,第2被取付部41,42が設けられるとともに、第1,第2取付部28,29の設置孔が上記フロアマット12に形成されている。そして、上記第1被取付部41の上壁下面に予め固着されたウェルドナット43に上記第1取付部28の締結ボルト39が螺着されるとともに、上記第2被取付部41に形成された係止孔に上記第2取付部29、具体的にはクリップ係止部29a,29bが挿入されることにより、上記ベース部材15がキックアップパネル8に取り付けられるとともに、運転席シート1の右側前方に上記アクセルペダル4の踏面板13が配設されるようになっている。
【0032】
また、上記アクセルペダル4の左側方には、吊りペダル式のブレーキペダル5が所定間隔を置いて配設されるとともに、運転席シート1の左側前方には、吊りペダル式のクラッチペダル6が配設されている。これらのブレーキペダル5およびクラッチペダル6は、上記ダッシュパネル7に設けられた上端枢支部45,46を支点としてそれぞれ揺動可能に支持されている。
【0033】
上記運転席シート1の前方部に位置するフロアパネル9の上面を覆うように設置されたフロアマット12には、その表層材11の下方に上記傾斜面形成部材44が配設されることにより、アクセルペダル4の踏面板13よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面(表層材11)を前上がりに傾斜させた傾斜面部14が形成されている。上記傾斜面形成部材44は、通常時に運転者が載置するペダル操作足の踵部を支持し得る程度の剛性と、衝突時にペダル操作足の踵部に作用する衝撃エネルギーを吸収し得る程度の弾性とを有する発泡ウレタンまたは合成ゴム等のパッド材により、前方部に至る程、その厚みが大きく設定された形状、つまり側面視で上面が、水平線に対して13.5°〜23.5°範囲内の傾斜角度αで前上がりに傾斜した形状に形成されている。
【0034】
また、上記傾斜面形成部材44は、ブレーキペダル5の踏込部5aよりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を、上記アクセルペダル4側の踵載置領域と同一角度αで前上がりに傾斜させた傾斜面部14を形成するように、アクセルペダル4側の踵載置領域からブレーキペダル5の踵載置領域へと延設されている。このブレーキペダル5側の踵載置領域に位置する傾斜面形成部材44の前方部、つまり通常に運転者が操作足の踵部を載置する可能性がある領域よりも前方側に位置する領域には、図6に示すように、当該前方側領域の上面を上記踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させるブレーキペダル側延長部47が連設されている。さらに、上記傾斜面形成部材44の後方部には、上面が水平に形成された後方延長部49が連設されている。
【0035】
そして、上記傾斜面形成部材44の設置部に位置するフロアマット12の裏打ち補助材10が切除されることにより形成された空隙部に傾斜面形成部材44が装着されてフロアパネル9の上面に接着されるととともに、この傾斜面形成部材44の上面を覆うように表層材11が設置される。これにより上記アクセルペダル4の踏面板13およびブレーキペダル5の踏込部5aよりも後方の踵載置領域に位置するフロアマット12の上面が所定角度αで前上がりに傾斜し、かつ上記ブレーキペダル5側の踵載置領域よりも前方側領域の上面が、当該踵載置領域と同一角度αで前上がりに傾斜した傾斜面部14が形成されている。
【0036】
上記構成において、傾斜面部14上に踵部を載置した運転者の足裏拇子球部を上記踏面板13の踏込部20に当接させた状態で、この踏面板13を運転者が踏込操作すると、上記付勢部材17の付勢力に抗して踏面板13が下端ヒンジ部16を支点に車両の前方側へ揺動変位するように駆動される。この踏面板13に入力された駆動力が上記操作ロッド26および連結部材34を介してコントロールボックス31のリニアセンサに伝達されることにより、上記踏面板13の操作量が検出され、その検出信号がコントロールボックス31から上記カプラー36および図外のハーネスを介してエンジン制御ユニットに出力されるようになっている。
【0037】
上記運転席シート1の設置部には、図7〜図9に示すように、シートクッション1aを前後移動可能に支持する左右一対のシートスライドロアレール51が配設されるとともに、このシートスライドロアレール51に沿ってシートスライドアッパレール52がスライド変位可能に支持されている。上記シートスライドロアレール51は、上面が開口したC型鋼等からなり、その前後両端部には、取付ブラケット53,54が溶接される等により一体に接合されている。そして、上記取付ブラケット53,54が、クロスメンバ50の上面等に締結ボルト等を介して固定されることにより、上記シートスライドロアレール51がやや前上がりに傾斜した状態でフロアパネル9上に設置されている。
【0038】
上記左右のシートスライドロアレール51内には、図9に示すように、ねじ軸からなる回転軸55が回転自在に設置されるとともに、両シートスライドアッパレール52の前端部間には、駆動モータ56により回転駆動される駆動軸57およびこれを回転可能に支持する支持部材58が車幅方向に延びるように設置されている。また、上記駆動軸57の左右両端部には、その駆動力を上記回転軸55に伝達するベベルギア機構またはウォームホイールギア機構等からなる動力伝達部59が設けられている。
【0039】
上記シートスライドロアレール51、シートスライドアッパレール52、回転軸55、駆動モータ56、駆動軸57および動力伝達部59と、シートスライドロアレール51の底部に固定されて上記回転軸55が螺合するナットブロック51aとにより、上記運転席シート1のシートクッション1aをシートスライドロアレール51に沿ってスライド変位させて運転席シート1の前後位置を調整する前後位置調整機構2が構成されている。
【0040】
例えば、図外の前後調整スイッチが前進方向に操作された場合等には、上記駆動モータ56を正転させる制御信号が出力され、この制御信号に応じて駆動モータ56が正回転することにより、上記シートクッション1aを前進させる方向の駆動力が上記駆動軸57、動力伝達部59および回転軸55に伝達される。この回転軸55は、上記シートスライドロアレール51の底部に固定されたナットブロック51aによって支持された状態で、上記動力伝達部59から入力された駆動力により回転駆動されて車両の前方側に螺進することにより、上記シートスライドアッパレール52とともに運転席シート1のシートクッション1aが車両の前方側に駆動される。
【0041】
一方、上記前後調整スイッチが後退方向に操作された場合には、上記駆動モータ56を逆回転させる制御信号が出力され、この制御信号に応じて駆動モータ56が逆転することにより、上記シートクッション1aを後退させる方向の駆動力が上記駆動軸57、動力伝達部59および回転軸55に伝達され、この回転軸55が逆転駆動されて車体の後方側に螺進することにより、上記シートスライドアッパレール52および運転席シート1のシートクッション1aが車体の後方側に駆動されるように構成されている。
【0042】
また、上記シートスライドロアレール51は、前上がりに傾斜した状態で車体フロア上に設置されているため、上記前後位置調整機構2によりシートスライドアッパレール52および運転席シート1のシートクッション1aを、上記シートスライドロアレール51に沿って車両の前方側に移動させると、これに連動してシートクッション1aが上方に押し上げられることになる。逆に、上記前後位置調整機構2によりシートスライドアッパレール52および運転席シート1のシートクッション1aを、上記シートスライドロアレール51に沿って車体の後方側に移動させると、これに連動してシートクッション1aが下降するようになっている。
【0043】
また、上記シートスライドアッパレール52には、運転席シート1のシートクッション1aの傾斜角度を変化させる傾斜角度調整機構3が設けられている。この傾斜角度調整機構3は、図7および図8に示すように、シートクッション1aの左右両側辺部に設けられたクッションフレーム61と、シートスライドアッパレール52の前部上面に設置されて上記クッションフレーム61の前端部を支持する前部ブラケット62および前部リンク63と、シートスライドアッパレール52の後部上面に設置されて上記クッションフレーム61の後方部を支持する後部ブラケット64および三角形状の後部リンク65と、左右の後部リンク65の後端部同士および上記両クッションフレーム61の後方下端部同士を連結する連結軸66と、シートスライドアッパレール52の中央部上面に設置されて上記後部リンク65に駆動力を伝達する中央リンク67およびこれを支持する中央ブラケット68と、上記中央リンク67の上部を上記後部リンク65の前端部に連結する連結リンク69と、下記駆動軸70、駆動レバー71および傾動駆動部72とを有している。
【0044】
上記中央リンク67は、その下端部が車幅方向に延びる駆動軸70に固定されるとともに、この駆動軸70を介して上記中央ブラケット68に回動自在に支持されている。上記駆動軸70には、この駆動軸70を回動変位させる駆動レバー71が固定されている。また、左右一対のシートスライドアッパレール52の一方(車幅方向の外方側)に設けられた上記中央ブラケット68には、駆動軸70に固定された上記駆動レバー71を駆動する傾動駆動部72が設けられている。
【0045】
上記傾動駆動部72は、図10および図11に示すように、前端部が連結ピン73を介して上記駆動レバー71の先端部(下端部)に連結されたねじ軸74と、このねじ軸74を回転駆動する駆動モータ75およびギア機構76と、このギア機構76の前面に固着されたガイドブラケット77とを有し、このガイドブラケット77の基端部が支持ブラケット78を介して上記中央ブラケット68に支持されている。また、上記ギア機構76には、駆動モータ75の出力軸75aに固着されたウォームギア79と、このウォームギア79により回転駆動されるウォームナット80とが配設され、このウォームナット80には、上記ねじ軸74に螺合するねじ孔が形成されている。
【0046】
そして、上記駆動モータ75からウォームギア79を介して入力される駆動力により上記ウォームナット80が回転駆動されるのに応じ、このウォームナット80に螺合した上記ねじ軸74が回転してねじ送りされるようになっている。このねじ軸74がねじ送りされるのに応じ、その先端部に設けられた上記連結ピン73が、ガイドブラケット77に形成された支持溝81に沿って前後移動し、その駆動力が連結ピン73を介して上記駆動レバー71に伝達されることにより、この駆動レバー71が揺動変位して上記駆動軸70が回動駆動される。
【0047】
また、上記駆動軸70が回転駆動されるのに応じて上記中央リンク67が揺動変位するとともに、その駆動力が連結リンク69を介して上記後部リンク65に伝達され、この後部リンク65が揺動変位するとともに、これに対応して前部リンク63が揺動変位することにより、シートクッション1aの傾斜角度調節されるようになっている。すなわち、運転席シート1のシートクッション1aが車体の後方側に移動した後退位置では、図6に示すように、上記前部リンク63および中央リンク67が後傾した状態となるとともに、後部リンク65の後端部に設けられた連結軸66が下方に位置した状態となることにより、シートクッション1aの座面が大きく後傾した状態に保持されている。
【0048】
上記構成において、前後調整スイッチにより運転席シート1を車両の前方側に移動させる操作が行われた場合には、予め設定された駆動特性に基づき、上記傾斜角度調整機構3の駆動モータ75を正転駆動する制御信号が図外の制御手段から出力され、この駆動モータ75の正転駆動力が上記ギア機構76、ねじ軸74、連結ピン73、駆動レバー71および駆動軸70を介して中央リンク67に伝達され、この中央リンク67が、上記後傾状態から図12に示す起立状態に移行する。そして、上記中央リンク67が起立状態に移行するのに応じ、その駆動力が連結リンク69を介して後部リンク65に伝達され、この後部リンク65の前端部が車両の前方側に引っ張られることにより、後部リンク65の後端部に設けられた上記連結軸66が上昇するとともに、これに応じてシートクッション1aの後端部が押し上げられるように駆動される。
【0049】
また、上記後部リンク65の揺動変位に連動して前部リンク63が後傾状態から起立状態に移行するため、これに応じてシートクッション1aの前端部が押し上げられつつ前方に移動するように駆動され、このシートクッション1aが上記下方位置から図12に示す上方位置に変位する。さらに、上記シートクッション1aの前端部の上方移動量に比べて後端部の上方移動量が大きく設定されることにより、上記シートクッション1aの上方移動に応じてその座面の後傾角度が、次第に小さくなるように変化し、水平状態に近づくように構成されている。また、これに連動して上記シートバック1bの傾斜角度が変化し、鉛直状態に近付くように変位するようになっている。
【0050】
一方、前後調整スイッチにより運転席シート1を車体の後方側に移動させる操作が行われた場合には、予め設定された駆動特性に基づき、上記傾斜角度調整機構3の駆動モータ75を逆転駆動する制御信号が制御手段から出力され、この駆動モータ75の正転駆動力が上記ギア機構76、ねじ軸74、連結ピン73、駆動レバー71および駆動軸70を介して中央リンク67に伝達される。これにより上記シートクッション1aが上方位置から、図7に示す下方位置に変位し、このシートクッション1aの下方移動に応じてその座面の後傾角度が次第に大きくなるように変化するとともに、上記シートバック1bが大きく後傾した状態となるように構成されている。
【0051】
上記運転席シート1に着座する運転者が身長の異なる者に乗り換わると、その身長に略比例して運転者の座高、腕の長さおよび足の長さ等が変化するため、これに対応して運転席シート1に着座した運転者のアイポイントおよび足踏ペダル等に対する操作性も変化する。したがって、新たに運転席シート1に着座した運転者は、その安楽姿勢を維持しつつ、ステアリングハンドル83を適正状態で把持するとともに、アクセルペダル4を構成する踏面板13の踏込部20にペダル操作足の拇子球部を適正状態で当接させ、かつそのアイポイントを適正ラインLに一致させて前方視界を適正に確保できるように、上記前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3を作動させて運転席シート1の前後位置等を調整しようとする。
【0052】
上記運転席シート1には、身長が150cm以下の者から190cm以上の者まで様々な身長を有する運転者が着座する可能性があるため、これらの者が上記運転席シート1に安楽姿勢で着座して適正に運転操作を行い得るように構成する必要がある。例えば、運転席シート1に着座する機会が最も多い考えられる平均身長者Mの身長を174cmと設定し、この平均身長者Mの安楽姿勢を統計的に解析した結果、以下のようなデータが得られた。
【0053】
上記運転席シート1に着座した乗員の安楽姿勢とは、長期間に亘りその着座状態を維持できるとともに、ハンドル操作およびペダル操作等に適した着座姿勢である。具体的には、図13に示すように、ペダル操作足の足首角度θ1が85°〜95°程度、膝角度θ2が115°〜135°程度、腰骨部から肩部までの上半身と大腿部との折曲角度θ3が約95°である。また、上記平均身長者Mの場合には、水平線に対して太腿部がなす角度であるサイ角θ4の適正角度が、シートクッション1aの傾斜角度に約1.5°を加算した値であることが、人間工学的実験により確認されている。さらに、上記ステアリングハンドル83を適正に操作することができる肘角θ5は100°〜130°程度、脇角θ6は20°〜45°程度である。
【0054】
したがって、上記平均身長者Mが、例えば足首角度θ1を90°、膝角度θ2を125°、腰骨部から肩部までの上半身と大腿部との折曲角度θ3を95°に設定し、かつサイ角θ4を17°に設定して運転席シート1に着座した場合に、平均身長者MのアイポイントImを、例えば8°程度の角度で前下がりに傾斜する適正ラインLに一致させることができるように、上記シートクッション1aの前後基準位置、上下基準高さおよび基準傾斜角度が設定されている。
【0055】
この平均身長者Mの基準着座状態では、上記肘角θ5および脇角θ6が上記範囲内に設定されてステアリングハンドル83を適正に把持することができる。また、図14に示すように、ペダル操作足の足裏踵下端部Kmを、上記傾斜面部14上の所定位置に載置し、かつ水平線に対する足裏の傾斜角度θ7を例えば59.5°程度に設定した状態で、アクセルペダル4の踏面板13に設けられた踏込部20の適正位置、つまりこの踏込部20の上下方向中応部に足裏の拇子球部Bmを当接させることができる位置に上記アクセルペダル4が配設されている。
【0056】
なお、上記図13において、Hmは、運転席シート1に着座した平均身長者Mのヒップポイント(着座基準点)である。また、当実施形態では、図14の実線に示すように、平均身長者Mがペダル操作足の踵下端部Kmを載置する基準位置を、例えば上記傾斜面部14の下端部から5mm程度だけ上方に位置する部位、つまり上記傾斜面部14の後端部近傍位置に設定している。
【0057】
上記運転席シート1に着座する運転者が平均身長者Mから、図13の仮想線で示すように、女性ドライバー等からなる低身長者Sに乗り換わった場合、この低身長者Sは、上記ハンドル操作性およびペダル操作性を確保しつつ、アイポイントIsを適正ラインLに一致させ得るように、上記前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3を作動させて運転席シート1のシートクッション1aを前方に移動させるとともに、これに対応してシートクッション1aの設置高さを上昇させ、かつ水平線に対するシートクッション1aの傾斜角度を減少させる操作を行う。
【0058】
例えば、上記のように150cmの身長を有する低身長者Sが運転席シート1に着座した場合には、シートクッション1a上に位置するヒップポイントHsを、上記平均身長者M用の前後基準位置Hmから105mm程度前方に移動させるとともに、これに連動して上記ヒップポイントHsを25mm程度上方に移動させ、かつそのサイ角θ4を10.5°程度とするようにシートクッション1aの傾斜角度を変化させるように操作する。この結果、上記平均身長者Mに比べて腕の短い低身長者Sの上半身を前方に移動させて上記ステアリングハンドル83を適正状態で把持できるとともに、上記平均身長者Mに比べて座高の低い低身長者SのアイポイントIsを、車体の前部上方側に移動させることにより、適正ラインLに一致させることができる。
【0059】
また、上記シートクッション1aの前方移動および上方移動に応じて低身長者Sのペダル操作足が車体の前部上方に移動する傾向があるため、これに対応させて上記膝角度θ2を130°程度に増大させることにより、足首角度θ1を90°程度に維持しつつ、上記低身長者Sの拇子球部Bsをアクセルペダル4の踏込部20に当接させることが可能となる。
【0060】
上記低身長者Sの踵下端部Ksから拇子球部Bsまでの距離(160mm程度)は、平均身長者Mの同距離(190mm程度)に比べて30mm程度だけ短いため、上記低身長者Sの足裏傾斜角度θ7を、平均身長者と同角度(59.5°)に維持しつつ、ペダル操作足の拇子球部Bsをアクセルペダル4に設けられた踏込部20の適正位置に当接させようとすると、その踵下端部Ksが、平均身長者Mの踵下端部Kmよりも約26mm(=sin59.5°×30mm)だけ上方に位置することになる。このため、低身長者Sがペダル操作足の踵下端部Ksをフロアパネル9の上方に浮かせるようにしなければ、上記ペダル操作足の拇子球部Bsを踏込部20の適正位置に対して正確に当接させることができず、このようにペダル操作足の踵下端部Ksをフロアパネル9の上方に浮かせた場合には、この踵下端部Ksを支点とした微妙なペダル操作を行うことが困難となる。
【0061】
しかし、上記実施形態に示すように、上面が13.5°〜23.5°の傾斜角度α、例えば20°の角度で前上がりに傾斜した傾斜面部14を設けた場合には、図14の仮想線で示すように、低身長者Sが足裏の傾斜角度θ7を59.5°から67°程度に変化させるとともに、ペダル操作足の踵下端部Ksを上記傾斜面部14上の基準位置(平均身長者Mの踵下端部Kmの載置位置)よりも27mm程度前方に移動させることにより、上記踵下端部Ksをフロアパネル9から15mm程度上方に位置する傾斜面部14上に載置した状態で、その拇子球部Bsをアクセルペダル4に設けられた踏込部20の適正位置に当接させることができる。
【0062】
なお、上記足裏の傾斜角度θ7が59.5°から67°程度に変化するのに対応してペダル操作足の足首角度θ1が90°よりも小さくなる傾向があるが、上記足裏傾斜角度θ7の増大に応じ、低身長者Sは、その膝角度θ2を130°よりも大きくして膝を伸ばし気味状態とすることにより(図13の仮想線参照)、足首角度θ1が適正範囲を超えて小さくなること、例えば85°以下となることを防止することが可能である。
【0063】
一方、図15に示すように、例えば189cmの身長を有する高身長者Tが上記運転席シート1に着座した場合には、シートクッション1a上に位置するヒップポイントHtを、上記平均身長者M用の前後基準位置Hmから85mm程度後方に移動させるとともに、これに連動して上記ヒップポイントHsを20mm程度下方に移動させ、かつ上記サイ角θ4を20.0°程度とするようにシートクッション1aの傾斜角度を変化させるように操作する。これにより上記平均身長者Mに比べて腕の長い高身長者Tの上半身を後方に移動させて上記ステアリングハンドル83を適正状態で把持できるとともに、上記平均身長者Mに比べて座高の高い高身長者TのアイポイントItを、車体の後部下方側に移動させることにより、適正ラインLに一致させることができる。
【0064】
また、上記シートクッション1aの後方移動および下方移動に応じて高身長者Tのペダル操作足が車体の後部下方に移動する傾向があるため、これに対応させて上記膝角度θ2を120°程度に減少させることにより、高身長者Tは、その足首角度θ1を90°程度に維持しつつ、上記拇子球部Btをアクセルペダル4の踏込部20に当接させることが可能となる。
【0065】
上記高身長者Tの踵下端部Ktから拇子球部Btまでの距離(206mm程度)は、平均身長者Mの同距離(190mm程度)に比べて16mm程度だけ長いため、上記高身長者Tの足裏傾斜角度θ7を同角度(59.5°)に維持するとともに、その踵下端部Ktの載置位置を同位置に設定した場合には、アクセルペダル4の踏込部20に対する拇子球部Btの当接位置を、上記平均身長者Mよりも約14mm(=sin59.5°×16mm)だけ下方に変位させる必要がある。
【0066】
上記実施形態において、高身長者Tの足裏傾斜角度θ7を59.5°から57°程度に変化させるとともに、図16に示すように、その踵下端部Ktを、上記傾斜面部14の後端に位置する略水平面上、具体的には上記傾斜面形成部材44の後方延長部49上に移動させるようにすれば、高身長者Tの拇子球部Btをアクセルペダル4に設けられた踏込部20の適正位置に当接させた状態で、適正に踏込操作することが可能である。なお、上記足裏の傾斜角度θ7が59.5°から57°程度に変化するのに対応してペダル操作足の足首角度θ1が90°よりも大きくなる傾向があるが、上記足裏傾斜角度θ7の減少に対応して膝角度θ2を120°よりも小さくして膝を曲げ気味状態とすることにより(図15参照)、足首角度θ1が適正範囲を超えて大きくなること、例えば95°以上となることを防止することができる。
【0067】
上記のように下端ヒンジ部16を支点に揺動可能に支持されたオルガン式のアクセルペダル4と、その左側方に配設されて上端枢支部45を支点に揺動可能に支持された吊りペダル式のブレーキペダル5と、運転席シート1の前方部に位置するフロアパネル9の上面を覆うように設置されるフロアマット12とを有する自動車運転席のフロア構造において、上記フロアマット12には、アクセルペダル4の踏面板13よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を前上がりに傾斜させた傾斜面部14を形成する傾斜面形成部材44を配設したため、平均身長者Mに比べて足裏寸法の短い低身長者Sであっても、ペダル操作足の踵下端部Ksを上記傾斜面部14上に載置した状態で、その足首角度θ1および足裏の傾斜角度θ7を適正角度に維持しつつ、その拇子球部Bsをアクセルペダル4に設けられた踏込部20の適正位置に当接させることができる。
【0068】
したがって、上記低身長者Sがペダル操作足の踵下端部Ksをフロア面から離間させた状態で、アクセルペダル4等からなる足踏ペダルの踏込操作を行うことに起因して微妙なペダル操作が不可能となったり、足首角度θ1および足裏の傾斜角度θ7が適正角度から大きくずれることに起因して足踏ペダルの迅速な踏込操作が困難となったりすることなく、図14の仮想線に示すように、低身長者Sの踵下端部Ksを上記傾斜面部14上に載置して踏面板13の下端ヒンジ部16に近接させた状態で、上記拇子球部Bsを踏込部20の適正位置に当接させることにより、アクセルペダル4等を適正なレバー比で容易かつ正確に踏込操作できるという利点がある。
【0069】
一方、高身長者Tの場合は、図15および図16に示すように、ペダル操作足の足裏傾斜角度θ7を減少させるとともに、膝角度θ2を小さくすれば、その踵下端部Ktを下方に移動させることなく、ペダル操作足の拇子球部Btを上記踏込部20の適正位置に対して容易かつ適正に当接させることが可能である。したがって、上記高身長者Tがペダル操作足の踵下端部Ktを載置する領域を略水平なフロアマット12上に設定しても、上記アクセルペダル4の踏込操作性に悪影響が与えられることはない。さらに、高身長者Tがペダル操作足の踵下端部Ktを、上記傾斜面部14の後端部に位置するフロアパネル9上に設定することにより、この傾斜面部14の後端部がペダル操作足の踵下端部Ktを載置すべき領域であることを高身長者Tに容易に認識させることができる。
【0070】
上記実施形態では、ブレーキペダル5の踏込部5aよりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を、上記アクセルペダル4側の踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させるように、上記傾斜面形成部材44を、アクセルペダル4側の踵載置領域からブレーキペダル5の踵載置領域へと延設した構造としたため、平均身長者Mに比べて足裏寸法の短い低身長者Sが、ペダル操作足の踵下端部Ksを上記傾斜面部14上に載置した状態で、その足首角度θ1および足裏の傾斜角度θ7を適正角度に維持しつつ、その拇子球部Bsをブレーキペダル5に設けられた踏込部5aの適正位置に当接させることができる。
【0071】
したがって、上記低身長者Sがペダル操作足の踵下端部Ksをフロア面から離間させた状態で、ブレーキペダル5の踏込操作を行うことに起因して微妙なペダル操作が不可能となったり、足首角度θ1および足裏の傾斜角度θ7が適正角度から大きくずれることに起因して足踏ペダルの迅速な踏込操作が困難となったりすることなく、ブレーキペダル5を適正に踏込操作できるという利点がある。しかも、上記ペダル操作足の踵下端部Ksを上記傾斜面部14上に載置した状態で、その足先部をアクセルペダル4からブレーキペダル5へと、あるいはその逆方向に移動させることにより、ペダルの踏み換え操作を容易に行うこともできる。
【0072】
特に、上記実施形態では、ブレーキペダル5側の踵載置領域よりも前方側領域の上面を、当該踵載置領域と同一角度αで前上がりに傾斜させるブレーキペダル側延長部47を上記傾斜面形成部材44に設けた構造としたため、車両が前突する可能性がある緊急時等において運転者が急ブレーキ操作を行った場合に、図6の矢印Yに示すように運転者がペダル操作足の踵部を上記傾斜面部14上に載置した状態で、ブレーキペダル5を安定して踏込操作できるという利点がある。
【0073】
すなわち、上記ブレーキペダル側延長部47を省略し、仮にブレーキペダル5側の傾斜面部14をアクセルペダル4側と同一長さに設定した場合には、ペダル操作足の踵部を上記傾斜面部14上に載置しつつ、ブレーキペダル5の踏込部5aに拇子球部を当接させた状態で上記急ブレーキ操作を行うと、その途中でペダル操作足の踵部が上記傾斜面部14上から離間した状態となることにより、運転者が違和感を受けるとともに、上記踵部を支点とした安定したブレーキ操作を行うことが困難になるという問題がある。これに対して上記実施形態に示すように、ブレーキペダル5側の踵載置領域よりも前方側に上記ブレーキペダル側延長部47を設けた場合には、その途中でペダル操作足の踵部が上記傾斜面部14上から離間するのを防止でき、常にペダル操作足の踵部を上記傾斜面部14上に載置した状態でブレーキペダル5の踏込操作を安定して行うことができるという利点がある。
【0074】
なお、上記クラッチペダル6の踏込部よりも後方に位置して運転者の左足踵部が載置される踵載置領域の上面を、上記アクセルペダル4側の踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させるように、上記傾斜面形成部材44を、アクセルペダル4およびブレーキペダル5側の踵載置領域からクラッチペダル6の踵載置領域へと延設した構造とした構造としてもよい。さらに、クラッチペダル6の非操作時に運転者の左足が載置される領域を上方に膨出させる膨出部を上記傾斜面形成部材44と一体に形成することにより、フットレストを設けた構造とすることも可能である。
【0075】
上記実施形態に示すように、傾斜面部14の水平面に対する傾斜角度αを13.5°〜23.5°の範囲内に設定した場合には、低身長者S等の踵下端部Ksが傾斜面部14上から離間することを効果的に防止しつつ、ペダル操作足の踵下端部Ksを上記傾斜面部14上に安定して載置した状態で、その拇子球部Bsをアクセルペダル4の踏込部20に当接させることにより、アクセルペダル4を適正に踏込操作できるという利点がある。
【0076】
すなわち、上記傾斜面部14の上面の傾斜角度αが23.5°よりも大きいと、傾斜面部14上に載置されたペダル操作足の踵下端部Ksがペダル操作時の反力に応じて後方に滑り落ち易いため、上記傾斜角度αを23.5°以下に設定することにより、上記踵下端部Ksの滑り落ちを防止して安定した踵部の載置状態を得ることができる。また、上記傾斜面部14の上面の傾斜角度αを13.5°以上に設定することにより、その上面を上方に位置させることによる効果、つまり低身長者Sがペダル操作足の踵下端部Ksを上記傾斜面部14上に載置した状態で、その拇子球部Bsをアクセルペダル4に設けられた踏込部20の適正位置に当接させることを可能とする等の効果が得られるという利点がある。
【0077】
また、上記実施形態では、傾斜面形成部材44を、通常時に運転者が載置するペダル操作足の踵部を支持し得る程度の剛性と、衝突時にペダル操作足の踵部に作用する衝撃エネルギーを吸収し得る程度の弾性とを有する発泡ウレタンまたは合成ゴム等からなるパッド材により形成したため、車両の衝突時に作用する慣性力に応じて運転者の体が車両の前方側に付勢され、ブレーキペダル5等の踏込状態にあるペダル操作足の踵部に上記付勢力に対応した反力が作用した場合に、上記傾斜面形成部材44を変形させることにより、フロア部等踵部に作用する衝撃荷重を効果的に緩和できるという利点がある。
【0078】
上記傾斜面形成部材44を構成するパッド材の材質としては、PS/PE、つまりポリスチレンとポリエチレンを混合して20倍から30倍の発泡率で発泡させてなるいわゆる発泡スチロールが好ましい。ここで、ポリエチレンは、ポリスチレンの脆さを補うために配合されたものである。上記発泡率は、その値が大きいほど単位体積当たりの質量が小さくなり柔らかくなるが、実際の衝突実験を通じて、必要な衝撃吸収をなす厚さの確保や質量低減といった他の要件も含めて総合的に決定され、上記20〜30倍という発泡率は、通常の家電製品用梱包材として用いられる発泡スチロールよりもはるかに硬く、親指で強く押しても変形しない程度の硬度を有している。本発明は、そもそも傾斜面形成部材44用のパッド材が従来のものに比して前方ほど厚さが増大する形状であるため、その厚さが確保し易く、衝撃吸収性能の向上に有利である。そこで、パッド材の厚みが多少増すものの、40倍といった高い発泡率をもつパッド材を採用することにより、その軽量化を図ることも可能である。
【0079】
さらに、上記実施形態では、アクセルペダル4の踏面板13に、その踏込操作時に運転者の足裏拇子球部が当接する領域を、側面視から見て所定の曲率半径で車両の後方側へ円弧状に突出させた凸状面部からなる踏込部20を設けたため、運転者がペダル操作足の踵下端部を踏面板13の枢支部から所定距離だけ車体の後方側に位置させた状態でアクセルペダル4を踏み込むことにより、その踏込量が変化するのに応じて上記踏込部20に対する靴裏面の当接位置が上下にずれるような事態が生じた場合においても、運転者が違和感を受けるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0080】
例えば、上記踏面板13に対する踏込部20の設置高さを低身長者Sの足裏長さに適した位置に設定した場合、足裏寸法の大きい平均身長者Mまたは高身長者Tは、その踵下端部Km,Ktを後方に移動させることにより、拇子球部Bm,Btを上記踏込部20の適正位置(踏込部20)に当接させようとする(図14および図16参照)。しかし、上記のように運転者がペダル操作足の踵下端部Km,Ktを踏面板13の下端ヒンジ部16から所定距離だけ車体の後方側に位置させた状態で踏面板13の踏込操作を行った場合には、上記下端ヒンジ部16を支点として揺動変位する踏込部20の移動軌跡と、踵下端部Ktを支点とした揺動変位する拇子球部の移動軌跡とが顕著に異なる円弧を描くことになるため、踏面板13の踏込量が増大するのに応じてペダル踏面に対する靴裏面の当接位置が次第に足先側へずれることが避けられない。
【0081】
上記の場合において踏面板13の踏込部を直線状に形成し、あるいは靴裏面に合わせて側面視で車両の前方側へ突出させるように湾曲させた構造とすると、上記踏込部と靴裏面とが面当たりとなった状態で、踏面板13の踏込量が増大するのに応じてペダル踏面に対する靴裏面の当接位置が足先側へ断続的にスリップしつつ変化するため、この変化が運転者により明確に知覚されて顕著な違和感が与えられることになる。
【0082】
上記実施形態では、踏面板13の上部に配設された踏込部20を、側面視で車両の後方側へ突出するように湾曲した円弧状の凸状面部により形成したため、この凸状面部からなる踏込部20の一点に対して靴裏面が、線当たり状態で当接する。したがって、仮に高身長者T等がペダル操作足の踵下端部Ktを踏面板13の枢支部から所定距離だけ車体の後方側に位置させた状態でアクセルペダル4を踏み込んだ場合には、その踏込量が変化するのに応じ、上記踏込部20に対する靴裏面の当接位置が転がるように滑らか、かつ連続的に変化することとなって、運転者が違和感を受けるのを効果的に防止することができる。
【0083】
また、上記実施形態では、運転席シート1を前後移動させるとともに、この運転席シート1の前方移動に応じてそのシートクッション1aの後傾角度を低減する前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3等からなるシート調整機構を設けたため、運転席シート1に着座する運転者が、その身長に応じて上記前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3等の駆動特性を適正に設定することにより、運転者の着座姿勢を維持しつつ、そのアイポイントを適正ラインLに一致させるとともに、優れたハンドル操作性およびペダル操作性が得られるように、運転席シート1の前後位置およびシートクッション1aの傾斜角度等を自動的に調整できるという利点がある。
【0084】
そして、上記運転席シート1の前後位置およびシートクッション1aの傾斜角度の調整動作に応じて運転席シート1に着座した運転者の着座位置等が変化した場合においても、運転者の足元部に位置するフロアパネル9上に傾斜面部14を形成することにより、足裏寸法の短い低身長者Sがペダル操作足の踵下端部Ksを上記傾斜面部14上に載置した状態で、足首角度θ1および足裏の傾斜角度θ7を、アクセルペダル4等の操作に適した角度に維持しつつ、上記低身長者Sの拇子球部Bsをアクセルペダル4の踏込部20に当接させてペダル操作性を確保できる等の利点がある。
【0085】
なお、上記実施形態では、前後位置調整機構2および傾斜角度調整機構3等からなるシート調整機構により、運転者のスイッチ操作に応じて自動的に運転席シート1を前後移動させるとともに、この運転席シート1の前方移動に応じてそのシートクッション1aの後傾角度を低減するように構成した例について説明したが、運転者の手動操作で運転席シート1の前後位置およびシートクッション1aの後傾角度を変化させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 運転席シート
2 前後位置調整機構(シート位置調整機構)
3 傾斜角度調整機構(シート位置調整機構)
4 アクセルペダル
5 ブレーキペダル
12 フロアマット
13 踏面板
14 傾斜面部
44 傾斜面形成部材
47 ブレーキペダル側延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端ヒンジ部を支点に揺動可能に支持されたオルガン式のアクセルペダルと、その側方に配設されて上端枢支部を支点に揺動可能に支持された吊りペダル式のブレーキペダルと、運転席シートの前方部に位置するフロアパネルの上面を覆うように設置されるフロアマットとを有する自動車運転席のフロア構造において、上記フロアマットには、アクセルペダルの踏面板よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を前上がりに傾斜させた傾斜面部を形成する傾斜面形成部材が配設されたことを特徴とする自動車運転席のフロア構造。
【請求項2】
上記傾斜面形成部材は、ブレーキペダルの踏込部よりも後方に位置して運転者の踵部が載置される踵載置領域の上面を、上記アクセルペダル側の踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させるように、アクセルペダル側の踵載置領域からブレーキペダルの踵載置領域へと延設されるとともに、このブレーキペダル側の踵載置領域よりも前方側領域の上面を、上記踵載置領域と同一角度で前上がりに傾斜させるブレーキペダル側延長部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動車運転席のフロア構造。
【請求項3】
上記踵載置領域上面の傾斜角度が13.5°〜23.5°の範囲内に設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車運転席のフロア構造。
【請求項4】
上記傾斜面形成部材は、通常時に運転者が載置するペダル操作足の踵部を支持し得る程度の剛性と、衝突時にペダル操作足の踵部に作用する衝撃エネルギーを吸収し得る程度の弾性とを有するパッド材により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車運転席のフロア構造。
【請求項5】
アクセルペダルの踏面板には、その踏込操作時に運転者の拇子球当接部が当接する領域を車両の後方側に向けて突出させた凸状面部からなる踏込部が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車運転席のフロア構造。
【請求項6】
上記運転席シートを前後移動させるとともに、この運転席シートの前方移動に応じてそのシートクッションの後傾角度を低減するシート調整機構を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車運転席のフロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−247733(P2010−247733A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100689(P2009−100689)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】