説明

自己免疫疾患を治療または予防するための2,4−ピリミジンジアミン化合物

本発明は、式(I)の3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物、および関連組成物、ならびにさまざまな自己免疫疾患を治療する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物、該化合物、中間体を含む薬学的組成物、および同化合物を作製する合成法、および同化合物を使用する方法、ならびに、さまざまな疾患の治療または予防などの、さまざまな状況における組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
IgEに対する高親和性受容体(FcεRI)、および/またはIgGに対する高親和性受容体(FcγRI)などのFc受容体が架橋されると、マスト細胞、好塩基球、および他の免疫細胞において、数多くの有害事象に関与する化学メディエーターの放出につながるシグナル伝達カスケードが活性化される。例えば、このような架橋は、I型(即時型)のアナフィラキシー過敏反応の、前もって作られたメディエーター(ヒスタミンなど)の、顆粒中の保存部位からの、脱顆粒を介した放出につながる。また架橋は、炎症反応に重要な役割を果たす、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ならびに血小板活性化因子(PAF)を含む他のメディエーターの合成および放出にもつながる。Fc受容体の架橋に伴って合成されて放出される他のメディエーターは、サイトカインおよび酸化窒素を含む。
【0003】
FcεRIおよび/またはFcγRIなどのFc受容体の架橋によって活性化されるシグナル伝達カスケードは、一連の細胞タンパク質を含む。最も重要な細胞内シグナルプロパゲータはチロシンキナーゼである。FcεRI受容体および/またはFcγRI受容体の架橋と関連するシグナル伝達経路、ならびに他のシグナル伝達カスケードに関与する重要なチロシンキナーゼはSykキナーゼである(総説として、Valent et al., 2002, Intl. J. Hematol 75(4):257-362(非特許文献1)を参照)。
【0004】
最近、FcεRIおよび/またはFcγRIのシグナル伝達カスケードを阻害し、ならびに数多くの治療用途を有する、さまざまなクラスの2,4-ピリミジンジアミン化合物が発見されている。これについては例えば、2003年1月31日に出願された米国特許出願第10/355,543号(US 2004/0029902A1)(特許文献1)、2003年1月31日に出願された国際出願番号PCT/US03/03022(WO 03/063794)(特許文献2)、2003年7月29日に出願された米国特許出願第10/631,029号(特許文献3)、国際出願番号PCT/US03/24087(WO 2004/014382)(特許文献4)、2004年に7月30日に出願された米国特許出願第10/903,263号(US2005/0234049)(特許文献5)、国際出願番号PCT/US2004/24716(特許文献6)、2004年7月30日に出願された米国特許出願第10/903,870号(特許文献7)を参照されたい。
【0005】
FcεRI受容体およびFcγRI受容体の架橋の結果として放出されるメディエーターは、数多くの有害事象の発現に関与したり、重要な役割を果たしたりするので、それらの放出に関与するシグナル伝達カスケードを阻害可能な化合物が入手できることは極めて望ましいと言える。さらにSykキナーゼが、これらの受容体シグナル伝達カスケード、および他の受容体シグナル伝達カスケードに重要な役割を果たすことから、Sykキナーゼを阻害可能な化合物が利用できることも非常に望ましいと言える。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第10/355,543号(US 2004/0029902A1)
【特許文献2】国際出願番号PCT/US03/03022(WO 03/063794)
【特許文献3】米国特許出願第10/631,029号
【特許文献4】国際出願番号PCT/US03/24087(WO 2004/014382)
【特許文献5】米国特許出願第10/903,263号(US2005/0234049)
【特許文献6】国際出願番号PCT/US2004/24716
【特許文献7】米国特許出願第10/903,870号
【非特許文献1】Valent et al., 2002, Intl. J. Hematol 75(4):257-362
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、式Iの化合物、その立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、またはプロドラッグに関する:

式中、Yは、S、O、SO、SO2、およびC(R7)2からなる群より選択され;
個々のR35は独立に、水素、(C1-C4)アルキル、およびハロからなる群より選択されるか、または両方のR35は、これらが結合する炭素とともにカルボニル基を形成し;
Wは、C=O、C=S、C=NH、C(R7)2、およびNR37からなる群より選択され;
Zは、C=OまたはNR37であり、ZおよびWの両方ともがNR37である訳ではないならば、ならびにZがC=Oならば、WはC(R7)2またはNR37であり;
Xは、CHまたはNであり;
個々のR31は独立に(C1-C4)アルキルであるか、または両方のR31はともに、任意で1〜2個の(C1-C4)アルキル基で置換されるか、または1個の(C3-C7)スピロシクロアルキル基で置換される(C1-C2)アルキレノ基を形成し;
個々のR7は独立に、水素または(C1-C4)アルキルであり;ならびに
R37は、任意でフェニルまたはピリジルで置換される水素またはメチルであり、該フェニルまたはピリジルは任意で(C1-C4)アルコキシで置換される。
【0008】
本発明は、以下の詳細な説明から容易に理解されると考えられる、式Iおよび式IIの化合物と関連する方法、組成物、ならびに使用などの、さまざまな関連する特性にも関する。
【0009】
当業者であれば、上記のように要約された実施が、上記には明示的に表現されていない実施を成功させるために、任意の適切な組み合わせによって使用可能なこと、およびこのような実施が、本発明の一部であると見なされることを理解するであろう。
【0010】
詳細な説明
本出願の全体を通じて、本文は、本発明の化合物、組成物、および方法の、さまざまな態様に言及する。説明される多様な態様は、さまざまな説明目的の例を提供することを意図し、別の種に関する説明を制限する意図はない。むしろ、本明細書で提供される、さまざまな態様の記述は、重複する範囲がある場合があることを含みおかれたい。本明細書で論じられた態様は、単に説明目的で供されるものであり、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0011】
定義
特に明記した部分を除いて、本明細書では、以下の定義が適用される。
【0012】
「アルキル」または「アルカニル」そのもの、または別の置換基の一部としての「アルキル」または「アルカニル」は、記載された数の炭素原子(すなわちC1-C4は1〜4個の炭素原子を意味する)を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を意味する。この表現は例として、メチル(CH3-)、エチル(CH3CH2-)、n-プロピル(CH3CH2CH2-)、イソプロピル((CH3)2CH-)、n-ブチル(CH3CH2CH2CH2-)、イソブチル((CH3)2CHCH2-)、sec-ブチル((CH3)(CH3CH2)CH-)、t-ブチル((CH3)3C-)、n-ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2-)、およびネオペンチル((CH3)3CCH2-)などの、直鎖および分岐鎖のヒドロカルビル基を含む。
【0013】
「ベンジル」そのもの、または別の置換基の一部としての「ベンジル」は、基(C6H5)CH2-を意味する。
【0014】
「カルボニル」は、基>C=Oを意味する。「チオカルボニル」は、基>C=Sを意味する。
【0015】
「シアノ」そのもの、または別の置換基の一部としての「シアノ」は、基-CNを意味する。
【0016】
「ハロゲン」もしくは「ハロ」そのもの、または別の置換基の一部としての「ハロゲン」もしくは「ハロ」は、特に明記しない限り、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0017】
「ハロアルキル」そのもの、または別の置換基の一部としての「ハロアルキル」は、1つもしくは複数の水素原子がハロゲンと置換されたアルキル基を意味する。したがって、「ハロアルキル」という表現は、モノハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキルなどを、最高でパーハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「(C1-C2)ハロアルキル」という表現は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1-フルオロエチル、1,1-ジフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、1,1,1-トリフルオロエチル、パーフルオロエチルなどを含む。
【0018】
「ニトロ」そのもの、または別の置換基の一部としての「ニトロ」は、-NO2を意味する。
【0019】
上記のように定義された基は、他の、よく知られた置換基を作るために、当技術分野で一般的に使用される接頭辞および/または接尾辞を含む場合がある。例として、「アルキルオキシ」または「アルコキシ」は、式-OR"の基(R"はアルキル)を意味し、ならびにメトキシやエトキシなどのアルコキシ基を含む。別の例として、「ハロアルコキシ」または「ハロアルキルオキシ」は、式-OR"'の基(R"'はハロアルキル)を意味する。他の例では、「4-メトキシベンジル」は、4-パラ位におけるベンジルとメトキシの置換を意味し、および「2-ピリジルメチル」は、メチルの2-ピリジル基での置換を意味する。
【0020】
「アルケニル」そのもの、または別の置換基の一部としての「アルケニル」は、親アルケンの1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来する、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、不飽和の分岐鎖、直鎖、または環状のアルキルを意味する。この基は、二重結合に関してシスまたはトランスのコンホメーションを取り得る。典型的なアルケニル基は、エテニル;プロプ-1-エン-1-イル、プロプ-1-エン-2-イル、プロプ-2-エン-1-イル、プロプ-2-エン-2-イル、シクロプロプ-1-エン-1-イル、シクロプロプ-2-エン-1-イルなどのプロペニル;ブト-1-エン-1-イル、ブト-1-エン-2-イル、2-メチル-プロプ-1-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブト-1-エン-1-イル、シクロブト-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イルなどのブテニルなどを含むが、これらに限定されない。本明細書で用いる「低級アルケニル」は、(C2-C8)アルケニルを意味する。
【0021】
「アルキニル」そのもの、または別の置換基の一部としての「アルキニル」は、親アルキンの1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来する、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和の分岐鎖、直鎖、または環状のアルキルを意味する。典型的なアルキニル基は、エテニル;プロプ-1-イン-1-イル、プロプ-2-イン-1-イルなどのプロピニル;ブト-1-イン-1-イル、ブト-1-イン-3-イル、ブト-3-イン-1-イルなどのブチニルなどを含むが、これらに限定されない。本明細書で用いる「低級アルキニル」は、(C2-C8)アルキニルを意味する。
【0022】
「アルキルジイル」そのもの、または別の置換基の一部としての「アルキルジイル」は、親アルカン、親アルケン、もしくは親アルキンの個々の2個の異なる炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来する、または親アルカン、親アルケン、もしくは親アルキンの1個の炭素原子からの2個の水素原子の除去に由来する、記載された数の炭素原子(すなわちC1-C6は1〜6個の炭素原子を意味する)を有する、飽和もしくは不飽和の分岐鎖、直鎖、または環状の二価の炭化水素基を意味する。2個の一価のラジカル中心もしくは二価のラジカル中心の個々の原子価は、同じか、または異なる原子と結合を形成し得る。典型的なアルキルジイル基は、メタンジイル;エタン-1,1-ジイル、エタン-1,2-ジイル、エテン-1,1-ジイル、エテン-1,2-ジイルなどのエチルジイル;プロパン-1,1-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、シクロプロパン-1,1-ジイル、シクロプロパン-1,2-ジイル、プロプ-1-エン-1,1-ジイル、プロプ-1-エン-1,2-ジイル、プロプ-2-エン-1,2-ジイル、プロプ-1-エン-1,3-ジイル、シクロプロプ-1-エン-1,2-ジイル、シクロプロプ-2-エン-1,2-ジイル、シクロプロプ-2-エン-1,1-ジイル、プロプ-1-イン-1,3-ジイルなどのプロピルジイル;ブタン-1,1-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,1-ジイル、2-メチル-プロパン-1,2-ジイル、シクロブタン-1,1-ジイル、シクロブタン-1,2-ジイル、シクロブタン-1,3-ジイル、ブト-1-エン-1,1-ジイル、ブト-1-エン-1,2-ジイル、ブト-1-エン-1,3-ジイル、ブト-1-エン-1,4-ジイル、2-メチル-プロプ-1-エン-1,1-ジイル、2-メタニリデン-プロパン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,2-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,3-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,4-ジイル、シクロブト-1-エン-1,2-ジイル、シクロブト-1-エン-1,3-ジイル、シクロブト-2-エン-1,2-ジイル、シクロブタ-1,3-ジエン-1,2-ジイル、シクロブタ-1,3-ジエン-1,3-ジイル、ブト-1-イン-1,3-ジイル、ブト-1-イン-1,4-ジイル、ブタ-1,3-ジイン-1,4-ジイルなどのブチルジイルなどを含むが、これらに限定されない。特定のレベルの飽和が意図される場合は、アルカニルジイル、アルケニルジイル、および/またはアルキニルジイルという名称が使用される。2つの原子価が同じ炭素原子上に存在することが特に意図される場合は、「アルキリデン」という名称が使用される。いくつかの態様では、アルキルジイル基は(C1-C8)アルキルジイルである。特定の態様は、ラジカル中心が末端の炭素に位置する飽和非環式アルカニルジイル基、例えばメタンジイル(メタノ);エタン-1,2-ジイル(エタノ);プロパン-1,3-ジイル(プロパノ);ブタン-1,4-ジイル(ブタノ)など(以下に定義するアルキレノとも呼ばれる)を含む。
【0023】
「アルキレノ」そのもの、または別の置換基の一部としての「アルキレノ」は、直鎖の親アルカン、親アルケン、または親アルキンの2個の末端のそれぞれの炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来する、2個の末端の一価のラジカル中心を有する、直鎖の飽和もしくは不飽和のアルキルジイル基を意味する。特定のアルキレノ中の二重結合または三重結合のロカント(存在する場合)は括弧内に示される。典型的なアルキレノ基は、メタノ;エタノ、エテノ、エチノなどのエチレノ;プロパノ、プロプ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロプ[1]イノなどのプロピレノ;ブタノ、ブト[1]エノ、ブト[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブト[1]イノ、ブト[2]イノ、ブタ[1,3]ジイノなどのブチレノなどを含むが、これらに限定されない。特定のレベルの飽和が意図される場合は、アルカノ、アルケノ、および/またはアルキノという名称が使用される。いくつかの態様では、アルキレノ基は、(C1-C8)アルキレノまたは(C1-C3)アルキレノである。特定の態様は、直鎖飽和アルカノ基、例えばメタノ、エタノ、プロパノ、ブタノなどを含む。
【0024】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルカニル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」、「ヘテロアルキルジイル」、および「ヘテロアルキレノ」そのもの、または別の置換基の一部としての「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルカニル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」、「ヘテロアルキルジイル」、および「ヘテロアルキレノ」はそれぞれ、1個もしくは複数の炭素原子がそれぞれ独立に、同じか、または異なるヘテロ原子もしくはヘテロ原子基と置換されたアルキル基、アルカニル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルジイル基、およびアルキレノ基を意味する。炭素原子と置換可能な典型的なヘテロ原子および/またはヘテロ原子基は、-O-、-S-、-S-O-、-NR'-、-PH-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)NR'-、-S(O)2NR'-などを含む(これらの組み合わせも含む)が、これらに限定されない(個々のR'は独立に、水素もしくは(C1-C8)アルキルである)。
【0025】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」そのもの、または別の置換基の一部としての「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」はそれぞれ、環状バージョンの「アルキル」基および「ヘテロアルキル」基を意味する。ヘテロアルキル基に関しては、ヘテロ原子は、分子の残りの部分に結合される位置を占める場合がある。典型的なシクロアルキル基は、シクロプロピル;シクロブタニルやシクロブテニルなどのシクロブチル;シクロペンタニルやシクロペンテニルなどのシクロペンチル;シクロヘキサニルやシクロヘキセニルなどのシクロヘキシルなどを含むが、これらに限定されない。典型的なヘテロシクロアルキル基は、テトラヒドロフラニル(例えば、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イルなど)、ピペリジニル(例えば、ピペリジン-1-イル、ピペリジン-2-イルなど)、モルホリニル(例えば、モルホリン-3-イル、モルホリン-4-イルなど)、ピペラジニル(例えば、ピペラジン-1-イル、ピペラジン-2-イルなど)などを含むが、これらに限定されない。
【0026】
「非環式ヘテロ原子基の架橋」は、バックボーンの原子がもっぱらヘテロ原子および/またはヘテロ原子基である二価の架橋を意味する。典型的な非環式ヘテロ原子架橋は、-O-、-S-、-S-O-、-NR'-、-PH-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)NR'-、-S(O)2NR'-など(組み合わせも含む)を含むが、これらに限定されない(個々のR'は独立に、水素または(C1-C8)アルキルである)。
【0027】
「親芳香環系」は、π電子共役系を有する不飽和の環系または多環系を意味する。「親芳香環系」の定義には特に、例えばフルオレン、インダン、インデン、フェナレン、テトラヒドロナフタレンなどの、1個もしくは複数の環が芳香族であり、および1個もしくは複数の環が飽和または不飽和である融合環系が含まれる。典型的な親芳香環系は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピランスレン、ルビセン、テトラヒドロナフタレン、トリフェニレン、トリナフタレンなどを含むが、これらに限定されない。
【0028】
「アリール」そのもの、または別の置換基の一部としての「アリール」は、親芳香環系の1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来する、記載された数の炭素原子(すなわちC6-C15は6〜15個の炭素原子を意味する)を有する一価の芳香族炭化水素基を意味する。典型的なアリール基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなど、ならびに、これらのさまざまなヒドロ異性体に由来する基を含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、アリール基は(C6-C15)アリールであり、(C6-C10)が、より典型的である。特定の例示的なアリールは、フェニルおよびナフチルを含む。
【0029】
「アリールアリール」そのもの、または別の置換基の一部としての「アリールアリール」は、2個もしくはそれ以上の同一または非同一の親芳香環系が、ともに単結合によって直接連結された、環系の1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来する、一価の炭化水素基を意味する(このような直接的な環の結合の数は、関与する親芳香環系の数より1つ少ない)。典型的なアリールアリール基は、ビフェニル、トリフェニル、フェニル-ナフチル、ビナフチル、ビフェニル-ナフチルなどを含むが、これらに限定されない。アリールアリール基中の炭素原子の数が特定される場合、その数は、個々の親芳香環を含む炭素原子を意味する。例えば(C6-C15)アリールアリールは、個々の芳香環が、6〜15個の炭素を含む、例えばビフェニル、トリフェニル、ビナフチル、フェニルナフチルなどのアリールアリール基である。いくつかの態様では、アリールアリール基の個々の親芳香環系は独立に(C6-C15)芳香族、より好ましくは(C6-C10)芳香族である。特定の例示的なアリールアリール基は、親芳香環系の全てが同一なアリールアリール基、例えばビフェニル、トリフェニル、ビナフチル、トリナフチルなどを含む。
【0030】
「ビアリール」そのもの、または別の置換基の一部としての「ビアリール」は、単結合によって、ともに直接連結された2個の同一な親芳香族系を有するアリールアリール基を意味する。典型的なビアリール基は、ビフェニル、ビナフチル、ビアントラシルなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では、芳香環系は(C6-C15)芳香環、より典型的には(C6-C10)芳香環である。特定の例示的なビアリール基は、ビフェニルである。
【0031】
「アリールアルキル」そのもの、または別の置換基の一部としての「アリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端炭素もしくはsp3炭素原子に結合した水素原子の1個がアリール基と置換された非環状アルキル基を意味する。典型的なアリールアルキル基は、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどを含むが、これらに限定されない。特定のアルキル部分が意図される場合は、アリールアルカニル、アリールアルケニルおよび/またはアリールアルキニルという表記が使用される。いくつかの態様では、アリールアルキル基は(C7-C21)アリールアルキルであり、例えばアリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分、またはアルキニル部分は(C1-C6)であり、およびアリール部分は(C6-C15)である。いくつかの特定の態様では、アリールアルキル基は(C7-C13)であり、例えばアリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分、またはアルキニル部分は(C1-C3)であり、およびアリール部分は(C6-C10)である。
【0032】
「親芳香族複素環系」は、1個もしくは複数の炭素原子が独立に、同じか、または異なるヘテロ原子もしくはヘテロ原子基と置換された親芳香環系を意味する。炭素原子と置換される典型的なヘテロ原子またはヘテロ原子基は、N、NH、P、O、S、S(O)、S(O)2、Siなどを含むが、これらに限定されない。「親芳香族複素環系」の定義には特に、例えばベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどの、1個もしくは複数の環が芳香族であり、および1個もしくは複数の環が飽和もしくは不飽和である融合環系が含まれる。例えばベンゾピロンや1-メチル-1,2,3,4-テトラゾールなどの共通の置換基を含むことが認識されている環も、「親芳香族複素環系」の定義に含まれる。環状ポリエチレングリコールなどの環状ポリアルキレングリコールと融合したベンゼン環は、「親芳香族複素環系」の定義から特に除外される。典型的な親芳香族複素環系は、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサシン(benzoxaxine)、ベンゾキサゾール、ベンゾキサゾリン、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどを含むが、これらに限定されない。
【0033】
「ヘテロアリール」そのもの、または別の置換基の一部としての「ヘテロアリール」は、親芳香族複素環系の1個の炭素原子からの1個の水素原子の除去に由来する、記載された数の環原子(例えば「5-14員」は、5〜14個の環原子を意味する)を有する一価の芳香族複素基を意味する。典型的なヘテロアリール基は、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサジン、ベンゾキサゾール、ベンゾキサゾリン、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどに由来する基、ならびに、これらのさまざまなヒドロ異性体を含むが、これらに限定されない。好ましい態様では、ヘテロアリール基は5〜14員のヘテロアリールであり、5〜10員のヘテロアリールが特に好ましい。
【0034】
「ヘテロアリール-ヘテロアリール」そのもの、または別の置換基の一部としての「ヘテロアリール-ヘテロアリール」は、2個もしくはそれ以上の同一または非同一な親芳香族複素環系がともに単結合によって直接連結された環系の1個の原子からの1個の水素原子の除去に由来する一価の芳香族複素基を意味する(このような直接的な環の結合の数は、関与する親芳香族複素環系の数より1つ少ない)。典型的なヘテロアリール-ヘテロアリール基は、ビピリジル、トリピリジル、ピリジルプリニル、ビプリニルなどを含むが、これらに限定されない。原子の数が特定される場合、その数は、個々の親芳香族複素環系を含む原子の数を意味する。例えば、5〜15員のヘテロアリール-ヘテロアリールは、個々の親芳香族複素環系が、5〜15個の原子を含むヘテロアリール-ヘテロアリール基、例えばビピリジル、トリプリジルなどである。いくつかの態様では、個々の親芳香族複素環系は独立に5〜15員の芳香族複素環系であり、より典型的には5〜10員の芳香族複素環系である。特定の例示的なヘテロアリール-ヘテロアリール基は、全ての親芳香族複素環系が同一な基を含む。
【0035】
「ビヘテロアリール」そのもの、または別の置換基の一部としての「ビヘテロアリール」は、ともに単結合によって直接連結された2個の同一な親芳香族複素環系を有するヘテロアリール-ヘテロアリール基を意味する。典型的なビヘテロアリール基は、ビピリジル、ビプリニル、ビキノリニルなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では、芳香族複素環系は、5〜15員の芳香族複素環であり、より典型的には5〜10員の芳香族複素環である。
【0036】
「ヘテロアリールアルキル」そのもの、または別の置換基の一部としての「ヘテロアリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端炭素もしくはsp3炭素原子に結合した水素原子の1個がヘテロアリール基と置換された非環状アルキル基を意味する。特定のアルキル部分が意図される場合は、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル、および/またはヘテロアリールアルキニルという呼称が使用される。いくつかの態様では、ヘテロアリールアルキル基は6〜21員のヘテロアリールアルキルであり、例えばヘテロアリールアルキルのアルカニル部分、アルケニル部分、またはアルキニル部分は(C1-C6)アルキルであり、およびヘテロアリール部分は5〜15員のヘテロアリールである。いくつかの特定の例示的な態様では、ヘテロアリールアルキルは6〜13員のヘテロアリールアルキルであり、例えばアルカニル部分、アルケニル部分、またはアルキニル部分は(C1-C3)アルキルであり、およびヘテロアリール部分は5〜10員のヘテロアリールである。
【0037】
「ハロゲン」または「ハロ」そのもの、または別の置換基の一部としての「ハロゲン」または「ハロ」は、特に明記しない限り、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0038】
「(C3-C7)スピロシクロアルキル」は、以下のC3構造で例示される、スピロユニオン(環の唯一の共通の成員である単一の原子によって形成されるユニオン)を有する、3〜7員のシクロアルキル環を有する3〜7個の炭素原子の二価の環状基を意味する:

【0039】
特定の基またはラジカルを修飾する際に使用される、「置換型」という表現は、特定の基またはラジカルの1個もしくは複数の水素原子がそれぞれ独立に相互に同じか、または異なる置換基により置換されることを意味する。特定の基またはラジカル中の飽和炭素原子上の水素との置換に有用な置換基は、-R60、ハロ、-O-M+、=O、-OR70、-SR70、-S-M+、=S、-NR80R80、=NR70、=N-OR70、トリハロメチル、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2R70、-S(O)2O-M+、-S(O)2OR70、-OS(O)2R70、-OS(O)2O-M+、-OS(O)2OR70、-P(O)(O-)2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)(OR70)、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)O-M+、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)O-M+、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70C(O)O-M+、-NR70C(O)OR70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70、および-NR70C(NR70)NR80R80を含むが、これらに限定されない(式中、R60は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルからなる群より選択され:個々のR70は独立に、水素もしくはR60であり;個々のR80は独立にR70であるか、または、あるいは2個のR80は、それらが結合する窒素原子とともに、任意で、O、N、およびSからなる群より選択される、1〜4個の同じか、または異なる追加のヘテロ原子を含む場合のある、5員、6員、もしくは7員のシクロヘテロアルキルを形成し;ならびに個々のM+は、陽性電荷を有する対イオン、例えばK+、Na++N(R60)4、およびLi+から独立に選択される陽性電荷であるか、または2個のM+が結合して二価の対イオン、例えばCa2+、Mg2+、およびBa2+から選択される二価の対イオンを形成する)。特定の例として、-NR80R80は、-NH2、-NH-アルキル、N-ピロリジニル、およびN-モルホリニルを含むことを意味する。
【0040】
同様に、特定の基またはラジカル中の不飽和炭素原子上の水素の置換に有用な置換基は、-R60、ハロ、-O-M+、-OR70、-SR70、-S-M+、-NR80R80、トリハロメチル、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、-N3、-S(O)2R70、-S(O)2O-M+、-S(O)2OR70、-OS(O)2R70、-OS(O)2O-M+、-OS(O)2OR70、-P(O)(O-)2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)(OR70)、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)O-M+、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)O-M+、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70C(O)O-M+、-NR70C(O)OR70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70、および-NR70C(NR70)NR80R80を含むが、これらに限定されない(式中、R60、R70、R80、およびM+については既に定義された通りである)。
【0041】
ヘテロアルキル基およびシクロヘテロアルキル基中の窒素原子上の水素の置換に有用な、Rp以外の置換基は、-R60、-O-M+、-OR70、-SR70、-S-M+、-NR80R80、トリハロメチル、-CF3、-CN、-NO、-NO2、-S(O)2R70、-S(O)2O-M+、-S(O)2OR70、-OS(O)2R70、-OS(O)2O-M+、-OS(O)2OR70、-P(O)(O-)2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)(OR70)、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70C(O)OR70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70、および-NR70C(NR70)NR80R80を含むが、これらに限定されない(式中、R60、R70、R80、およびM+については既に定義された通りである)。
【0042】
「置換型」と表記される、他の基または原子を置換するのに有用な上記リストの置換基は、当業者に明らかであると考えられる。
【0043】
「保護基」は、分子中の反応性官能基に結合した時に、官能基の反応性をマスクする、減じる、または妨げる原子団を意味する。典型的には保護基は、望ましいならば、合成過程中に選択的に除去され得る。保護基の例は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Chemistry, 3rd Ed., 1999, John Wiley & Sons, NY、およびHarrison et al., Compendium of Synthetic Organic Methods, Vols. 1-8, 1971-1996, John Wiley & Sons, NYに記載されている。代表的なアミノ保護基は、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert-ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「TES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロベラチルオキシカルボニル(「NVOC」)などを含むが、これらに限定されない。代表的なヒドロキシル保護基は、ベンジルおよびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMS基やTIPPS基)、およびアリルエーテルなどの、ヒドロキシル基がアシル化またはアルキル化された基を含むが、これらに限定されない。
【0044】
「Fc受容体」は、免疫グロブリンのFc部分(特定の定常領域を含む)に結合する細胞表面分子のファミリーのメンバーを意味する。個々のFc受容体は、特定のタイプの免疫グロブリンに結合する。例えば、Fcα受容体(「FcαR」)はIgAに結合し、FcεRはIgEに結合し、およびFcγRはIgGに結合する。
【0045】
FcαRファミリーは、IgA/IgMの上皮への輸送に関与する多量体Ig受容体、ミエロイド特異的受容体RcαRI(CD89とも呼ばれる)、Fcα/μR、および少なくとも2つの別のIgA受容体を含む(最近の総説として、Monteiro & van de Winkel, 2003, Annu. Rev. Immunol, advanced e-publicationを参照)。FcαRIは、好中球、好酸球、単球/マクロファージ、樹状細胞、およびクッパー細胞上で発現される。FcαRIは、1本のα鎖、および細胞質ドメイン中に活性化モチーフ(ITAM)を有し、かつSykキナーゼをリン酸化するFcRγのホモ二量体を含む。
【0046】
FcεRファミリーは、FcεRIおよびFcεRII(CD23とも呼ばれる)と命名された2つのタイプを含む。FcεRIは、単量体IgEを細胞表面に係留するマスト細胞、好塩基球、および好酸球上に存在する高親和性受容体である(IgEと約1010M-1の親和性で結合する)。FcεRIは、上述した1本のα鎖、1本のβ鎖、およびγ鎖のホモ二量体を有する。FcεRIIは、単核食細胞、Bリンパ球、好酸球、および血小板上で発現される低親和性受容体である。FcεRIIは、1本のポリペプチド鎖を含み、γ鎖のホモ二量体を含まない。
【0047】
FcγRファミリーは、FcγRI(CD64としても知られる)、FcγRII(CD32としても知られる)、およびFcγRIII(CD16としても知られる)と命名された3つのタイプを含む。FcγRIは、単量体IgGを細胞表面に係留するマスト細胞、好塩基球、単核球、好中球、好酸球、樹状細胞、および食細胞上に存在する高親和性受容体である(IgG1と108 M-1の親和性で結合する)。FcγRIは、1本のα鎖、ならびにFcαRIおよびFcεRIと共通のγ鎖の二量体を含む。
【0048】
FcγRIIは、好中球、単球、好酸球、血小板、およびBリンパ球上で発現される低親和性受容体である。FcγRIIは、1本のα鎖を含み、上記のγ鎖のホモ二量体を含まない。
【0049】
FcγRIIIは、NK細胞、好酸球、マクロファージ、好中球、およびマスト細胞上で発現される低親和性(IgG1と5×105 M-1の親和性で結合する)である。FcγRIIIは、1本のα鎖、ならびにFcαRI、FcεRI、およびFcγRIと共通のγ鎖のホモ二量体を含む。
【0050】
当業者であれば、これらの多様なFc受容体のサブユニット構造および結合特性、ならびにこれらを発現する細胞タイプの特性が完全に明らかにされているわけではないことを理解するであろう。以上の説明は、これらの受容体に関する現在の状況を単に反映したものに過ぎず(例えば、Immunobiology: The Immune System in Health & Disease, 5th Edition, Janeway et al., Eds, 2001, ISBN 0-8153-3642-x、pp.371の図9.30を参照)、および本明細書に記載されたプロドラッグによって調節され得る数多くの受容体シグナル伝達カスケードに関して制限することは意図されない。
【0051】
「Fc受容体を介した脱顆粒」または「Fc受容体誘導性脱顆粒」は、Fc受容体の架橋によって開始されるFc受容体シグナル伝達カスケードを介して進行する脱顆粒を意味する。
【0052】
「IgE誘導性脱顆粒」または「FcεRIを介した脱顆粒」は、FcεRI結合性IgEの架橋によって開始されるIgE受容体シグナル伝達カスケードを介して進行する脱顆粒を意味する。架橋は、IgE特異的アレルゲン、または抗IgE抗体などの他の多価結合剤によって誘導され得る。マスト細胞および/または好塩基球では、脱顆粒に至るFcεRIシグナル伝達カスケードは、上流と下流の2段階に分けられる。上流の段階は、カルシウムイオンの動員に先だって生じる全ての過程を含む。下流の段階は、カルシウムイオンの動員、およびこの下流の全ての過程を含む。FcεRIを介した脱顆粒を阻害する化合物は、FcεRIを介したシグナル伝達カスケードの任意の点で作用する可能性がある。FcεRIを介した脱顆粒の上流を選択的に阻害する化合物は、カルシウムイオンの動員が誘導される時点の上流で、FcεRIシグナル伝達カスケードの一部を阻害するように作用する。細胞ベースのアッセイ法では、FcεRIを介した脱顆粒の上流を選択的に阻害する化合物は、IgE特異的アレルゲンまたは結合剤(抗IgE抗体など)によって活性化または刺激されるマスト細胞や好塩基球などの細胞の脱顆粒を阻害するが、例えばカルシウムイオノフォアであるイオノマイシンやA23187などの、FcεRIシグナル伝達経路を迂回する脱顆粒剤によって活性化または刺激される細胞の脱顆粒を感知可能なほどには阻害しない。
【0053】
「IgG誘導性脱顆粒」または「FcγRIを介した脱顆粒」は、FcγRI結合性IgGの架橋によって開始されるFcγRIシグナル伝達カスケードを介して進行する脱顆粒を意味する。架橋は、IgG特異的アレルゲン、または抗IgG抗体や抗体断片などの他の多価結合剤によって誘導され得る。マスト細胞および好塩基球におけるFcεRIシグナル伝達カスケードと同様に、FcγRIシグナル伝達カスケードも、上流と下流の同じ2つの段階に分けることが可能な脱顆粒に至る。FcεRIを介した脱顆粒と同様に、FcγRIを介した脱顆粒の上流を選択的に阻害する化合物は、カルシウムイオンの動員が誘導される時点の上流で作用する。細胞ベースのアッセイ法では、FcγRIを介した脱顆粒の上流を選択的に阻害する化合物は、IgG特異的アレルゲンまたは結合剤(抗IgG抗体や断片など)によって活性化または刺激されるマスト細胞や好塩基球などの細胞の脱顆粒を阻害するが、例えばカルシウムイオノフォアであるイオノマイシンやA23187などの、FcγRIシグナル伝達経路を迂回する脱顆粒剤によって活性化または刺激される細胞の脱顆粒を感知可能なほどには阻害しない。
【0054】
「イオノフォア誘導性脱顆粒」または「イオノフォアを介した脱顆粒」は、例えばイオノマイシンやA23187などのカルシウムイオノフォアの曝露に伴って生じる、マスト細胞や好塩基球などの細胞の脱顆粒を意味する。
【0055】
「Sykキナーゼ」は、B細胞および他の造血細胞で発現される、周知の72 kDaの非受容体型(細胞質)脾臓タンパク質チロシンキナーゼを意味する。Sykキナーゼは、リン酸化された免疫受容体チロシン活性化モチーフ(「ITAM」)、「リンカー」ドメイン、および触媒ドメインに結合する2か所のコンセンサスのSrc-ホモロジー2(SH2)ドメインをタンデムに含む(Sykキナーゼの構造および機能に関する総説として、Sada et al., 2001, J. Biochem. (Tokyo) 130:177-186を参照;Turner et al., 2000, Immunology Today 21:148-154も参照)。Sykキナーゼは、B細胞受容体(BCR)のシグナル伝達のエフェクターとして詳細な研究が行われている(Turner et al., 2000、前記)。Sykキナーゼは、Ca2+動員や分裂促進物質活性化プロテイン質キナーゼ(MAPK)カスケードおよび脱顆粒などの、免疫受容体からの重要な経路を調節する多数のタンパク質のチロシンリン酸化にも重要である。Sykキナーゼは、好中球におけるインテグリンシグナル伝達にも重要な役割を果たす(例えば、Mocsai et al. 2002, Immunity 16: 547-558を参照)。
【0056】
本明細書で用いられるように、Sykキナーゼは、Sykファミリーに属すると認識されている、ヒト、サル、ウシ、ブタ、齧歯類などを含むが、これらに限定されない任意の種の動物に由来するキナーゼを含む。特に、イソ型、スプライス異型、対立遺伝子異型、天然および人工の両方の変異体が含まれる。このようなSykキナーゼのアミノ酸配列は公知であり、およびGENBANKから入手できる。ヒトSykキナーゼの多様なイソ型をコードするmRNAの特定の例は、参照により本明細書に組み入れられる、GENBANKアクセッション番号gi|21361552|ref|NM_003177.2|、gi|496899|emb|Z29630.1|HSSYKPTK[496899]、およびgi|15030258|gb|BC011399.1|BC011399[15030258]に登録されている。
【0057】
当業者であれば、他のファミリーに属するチロシンキナーゼが、Sykの活性部位または結合ポケットと3次元構造が似た活性部位または結合ポケットを有する可能性があることを理解するであろう。こうした構造上の類似性の結果として、本明細書で「Syk模倣体(Syk mimics)」と呼ばれる、このようなキナーゼは、Sykによってリン酸化される基質のリン酸化を触媒することが予想される。したがって、このようなSyk模倣体、このようなSyk模倣体が役割を果たすシグナル伝達カスケード、ならびに、このようなSyk模倣体、およびSyk模倣体依存性のシグナル伝達カスケードによって可能となる生物学的反応が、本明細書に記載された多くのプロドラッグによって調節され得る(特に阻害され得る)ことは明らかである。
【0058】
「Syk依存性シグナル伝達カスケード」は、Sykキナーゼが役割を果たすシグナル伝達カスケードを意味する。このようなSyk依存性シグナル伝達カスケードの非制限的な例は、FcαRI、FcεRI、FcγRI、FcγRIII、BCR、およびインテグリンのシグナル伝達カスケードを含む。
【0059】
「自己免疫疾患」は、一般に内因性起源および/または外因性起源の1種類もしくは複数の免疫原性物質に対する対象自身の液性および/または細胞性の免疫応答の結果として生じる、非アナフィラキシー過敏反応(II型、III型、および/またはIV型の過敏反応)と一般に関連する疾患を意味する。このような自己免疫疾患は、アナフィラキシー(I型またはIgE介在性の)過敏反応と関連する疾患とは区別される。
【0060】
「プロドラッグ」は、活性2,4-ピリミジンジアミン薬剤またはその活性代謝物が放出されるために、体内などの使用条件で変換されることを必要とする活性2,4-ピリミジンジアミン化合物(薬剤)の誘導体を意味する。プロドラッグは、活性薬剤に変換されるまでは、薬理学的に不活性である可能性が高いが、必ずしも薬理学的に不活性ではない。プロドラッグは典型的には、プロ基(progroup)(以下に定義)によって、活性に部分的に必要であると考えられる、2,4-ピリミジンジアミン剤中の1つもしくは複数の官能基をマスクして、特定の使用条件で切断などの変換を受けて官能基、ひいては活性2,4-ピリミジンジアミン剤を放出するプロ部分(promoiety)を形成することで得られる。プロ部分の切断は、加水分解反応などによって自然に進行する場合があるほか、酵素などの他の薬剤によって、光によって、酸もしくは塩基によって、または温度変化などの物理的もしくは環境パラメーターの変化または曝露によって触媒されたり誘導されたりする場合がある。薬剤は、プロドラッグが投与される細胞中に存在する酵素、もしくは胃の酸性条件など、使用条件に対して内因性であるか、または外因的に供給される。
【0061】
活性2,4-ピリミジンジアミン化合物中の官能基をマスクしてプロドラッグを生じるのに適した、さまざまなプロ基、ならびに結果として生じるプロ部分は、当技術分野で周知である。例えばヒドロキシル官能基は、インビボで加水分解されてヒドロキシル基を生じ得るスルホン酸塩、エステル、または炭酸塩のプロ部分としてマスク可能である。アミノ官能基は、インビボで加水分解されてアミノ基を生じ得る、アミド、カルバミン酸塩、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスホリル、またはスルフェニルのプロ部分としてマスク可能である。カルボキシル基は、インビボで加水分解されてカルボキシル基を生じ得るエステル(シリルエステルおよびチオエステルを含む)、アミド、またはヒドラジドのプロ部分としてマスク可能である。本発明の窒素保護基および窒素プロドラッグは、低級アルキル基、ならびにアミド、カルバミン酸塩などを含む場合がある。適切なプロ基、および個々のプロ部分の他の特定の例は、当業者に明らかであろう。
【0062】
「プロ基」は、活性2,4-ピリミジンジアミン剤中の官能基をマスクしてプロ部分を形成する際に使用時に、薬剤をプロドラッグに変換するタイプの保護基を意味する。プロ基は典型的には、薬剤の官能基に、特定の使用条件下で切断され得る結合を介して結合されている。したがってプロ基は、特定の使用条件下で切断されて官能基を放出するプロ部分の一部である。特定の例として、式-NH-C(O)CH3で表されるアミドプロ部分は、プロ基-C(O)CH3を含む。
【0063】
したがって本発明は、式Iの化合物、またはその立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、もしくはプロドラッグに関する:

式中、Yは、S、O、SO、SO2、およびC(R7)2からなる群より選択され;
個々のR35は独立に、水素、(C1-C4)アルキル、およびハロからなる群より選択されるか、または両方のR35は、これらが結合する炭素とともにカルボニル基を形成し;
Wは、C=O、C=S、C=NH、C(R7)2、およびNR37からなる群より選択され;
Zは、C=OまたはNR37であり、ZおよびWの両方ともがNR37である訳ではないならば、ならびにZがC=Oならば、WはC(R7)2であり;
Xは、CHまたはNであり;
個々のR31は独立に(C1-C4)アルキルであるか、または両方のR31はともに、任意で1〜2個の(C1-C4)アルキル基で置換されるか、または1個の(C3-C7)スピロシクロアルキル基で置換される(C1-C2)アルキレノ基を形成し;
個々のR7は独立に、水素または(C1-C4)アルキルであり;ならびに
R37は、任意でフェニルまたはピリジルで置換される水素またはメチルであり、該フェニルまたはピリジルは任意で(C1-C4)アルコキシで置換される。
【0064】
1つの態様では、Yは、OまたはSである。いくつかの局面では、YはOである。
【0065】
別の態様では、Yは、S、またはスルホキシドSOもしくはスルホンSO2などの酸化型のSである。
【0066】
さらに別の態様では、YはC(R7)2である。いくつかの局面では、YはC(Me)2である。
【0067】
1つの態様では、両方のR35は同じである。いくつかの局面では、両方のR35はメチルである。さらに他の局面では、両方のR35は水素であるか、またはいずれもフルオロである。別の局面では、両方のR35は、これらが結合する炭素とともにカルボニル基を形成する。
【0068】
1つの態様では、Wは、C=OまたはC=Sである。いくつかの局面では、WはC=Oである。
【0069】
別の態様では、WはC(R7)2である。いくつかの局面では、WはCH2である。
【0070】
さらに別の態様では、WはNR37である。いくつかの局面では、WはNHである。
【0071】
1つの態様では、ZはNR37である。いくつかの局面では、R37は水素であるのでZはNHとなる。他の局面では、R37は、メチル、2-ピリジルメチル、または4-メトキシベンジルである。
【0072】
別の態様では、ZはC=Oである。
【0073】
1つの態様では、XはNである。
【0074】
1つの態様では、個々のR31は独立に(C1-C2)アルキルである。いくつかの局面では、両方のR31はメチルである。
【0075】
別の態様では、両方のR31はともに、任意で1〜2個の(C1-C4)アルキル基と置換されるか、または1個の(C3-C7)スピロシクロアルキル基で置換される(C1-C2)アルキレノ基を形成する。いくつかの態様では、両方のR31が結合して、アセタール炭素またはケタール炭素を形成する。両方のR31がともに(C1-C2)アルキレノ基を形成する場合、二環融合環系が、-OR31基を有するフェニル基によって形成される。いくつかの態様では、二環融合環系は、以下の構造を含む(個々のRは(C1-C4)アルキルであるか、または2個のRは結合して(C3-C7)スピロシクロアルキルを形成する):


【0076】
さらに別の態様では、本発明は、以下からなる群より選択される化合物、その立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、またはプロドラッグに関する:
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン;
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-[2,2-ジフルオロ-3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン;
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-4-(2-ピリジルメチル)-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-(3,4-ジヒドロ-2H-2,2-ジメチル-5-ピリド[1,4]オキサジン-6-イル)-N2-[3,4-ジメトキシフェニル-5-ヒドロキシフェニル]-5-フルオロ-2,4-ピリミジンジアミン;
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(1,3-(2H)-4,4-ジメチルイソキノリンジオン-7-イル)-2,4-ピリミジンジアミン;
(R/S)-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[2-メチル-3-オキソ-4-(4-メトキシベンジル)-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
(R/S)-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[2-メチル-3-オキソ-4-(4-メトキシベンジル)-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(2,2,4-トリメチル-1,1,3-トリオキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル)-2,4-ピリミジンジアミン;および
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(4-メチル-3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル)-2,4-ピリミジンジアミン。
【0077】
当業者であれば、本明細書に記載された3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物が、プロ基によってマスクされてプロドラッグを形成し得る官能基を含む場合があることを理解するであろう。このようなプロドラッグは通常、それらの薬剤の活性型に変換されるまでは薬理学的に不活性であるが、必ずしも薬理学的に不活性である必要はない。例えばエステル基は一般に、胃の酸性条件に曝露されると、酸触媒によって加水分解されて親カルボン酸を生じ、または腸もしくは血液の塩基性条件に曝露されると、塩基触媒によって加水分解される。したがって、対象に経口投与されると、エステル部分を含む3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミンは、エステル型が薬理学的に活性か否かにかかわらず、それらの対応するカルボン酸のプロドラッグであると見なされる場合がある。
【0078】
本発明のプロドラッグでは、任意の利用可能な官能基部分が、プロ基によってマスクされてプロドラッグを生じ得る。このような官能基をマスクして、望ましい使用条件下で切断され得るプロ部分を生じるのに適した数多くのプロ基は、当技術分野で公知である。このようなのプロ基は全て、単独で、または組み合わせて、本発明のプロドラッグに含まれ得る。
【0079】
1つの態様では、本発明のプロドラッグは、式IIを有する式Iの化合物である:

式中、Wは、C=O、C=S、C=NH、C(R7)2、およびNP1からなる群より選択され;
Zは、C=O、NR37、およびNP1からなる群より選択され;ZがC=Oならば、WはC(R7)2またはNP1であり、ならびにWおよびZの両方ともがNR37またはNP1の1つである訳ではないならば;
Y、R35、X、およびR31は、式Iに関して既に定義されており;ならびに
P1、P2、P3、およびP4の少なくとも1つがプロ基ならば、P1、P2、P3、およびP4は独立に、水素またはプロ基Rpである。
【0080】
式IIの化合物のいくつかの態様では、P3はプロ基Rpである(P3、およびこれが結合する酸素は、エステル、チオエステル、炭酸、またはカルバミン酸のプロ部分を形成する)。いくつかの局面では、-OP3プロ部分はエステルである。
【0081】
式IIの化合物のいくつかの態様では、2-アミノ基、4-アミノ基、またはZ=N基は、プロ基Rpに結合している。いくつかの局面では、ZはN-Rpである。
【0082】
前述の態様の一部では、プロ基Rpは、リンを含むプロ基である。
【0083】
前述の態様の一部では、プロ基Rpは、使用条件で代謝されて、不安定なα-ヒドロキシメチル中間体、α-アミノメチル中間体、またはα-チオメチル中間体を生じ、後にインビボでさらに代謝されて、活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン剤を生じる基もしくは部分を含む。いくつかの態様では、プロ基は、使用条件で代謝されて活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン剤を生じる、α-ヒドロキシアルキル部分、α-アミノアルキル部分、またはα-チオアルキル部分、例えばα-ヒドロキシメチル部分、α-アミノメチル部分、α-チオメチル部分を含む。例えば、いくつかの態様では、プロ基Rpは、個々のRdが他とは独立に、水素、シアノ、任意で置換される(C1-C20)アルキル、(C1-C20)パーフルオロアルキル、任意で置換される(C7-C30)アリールアルキル、および任意で置換される6〜30員のヘテロアリールアルキルから選択される、式-CRdRd-AR3で表される(個々の任意の置換基は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロアルキルから独立に選択され、または、あるいは2個のRdは、これらが結合する炭素原子とともに、3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキルを形成し;Aは、O、S、およびNR50から選択され(R50は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、およびシクロヘテロアルキルから選択されるか、またはあるいはR3と結合し、ならびにこれらが結合する窒素とともに3〜7員環を形成する);ならびにR3は、インビボで代謝されて式-CRdRd-AHの基を生じ得る基である(RdおよびAについては既に定義された通りである))。
【0084】
望ましい使用条件で、例えば胃内の酸性条件で、および/またはインビボに存在する酵素によって代謝されて、式-CRdRd-AHの基(AおよびRdについては既に定義された通りである)を生じ得るのであれば、R3の種類は重要ではない。したがって当業者であれば、R3が、実質的にすべての公知の、または後に発見されるヒドロキシル保護基、アミン保護基、またはチオール保護基を含み得ることを理解するであろう。適切な保護基の非制限的な例は例えば、内容が参照により本明細書に組み入れられる、Protective Groups in Organic Synthesis, Greene & Wuts, 2nd Ed., John Wiley & Sons, New York, 1991(特に10〜142ページ(アルコール)、277〜308ページ(チオール)、および309〜405ページ(アミン))に記載されている。
【0085】
特定の態様では、R3は、Aとともに、エーテル、チオエーテル、シリルエーテル、シリルチオエーテル、エステル、チオエステル、アミド、炭酸塩、チオ炭酸塩、カルバミン酸塩、チオカルバミン酸塩、または尿素結合、-OCH2SO3Rを含む(Rは、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、または金属塩(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム));-GCH2+N(R51)3M-(Gは存在しないか、-OPO3-、OSO3-、または-CO2-であり、R51は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロヘテロアルキル、またはシクロヘテロアルキルアルキルであり、およびM-は、通常はハライドイオンまたは同様の化合物などの対イオン(酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)である。特定の例示的な態様は、R3が、Rf、-C(O)Rf、-C(O)ORf、-C(O)NRfRf、および-SiRfRfRfから選択されるプロ基Rpを含むが、これらに限定されない(個々のRfは独立に、水素、任意で置換された低級アルキル、任意で置換された低級ヘテロアルキル、任意で置換された低級シクロアルキル、任意で置換された低級ヘテロシクロアルキル、任意で置換された(C6-C10)アリール、任意で置換された5〜10員のヘテロアリール、任意で置換された(C7-C18)アリールアルキル、および任意で置換された6〜18員のヘテロアリールアルキルから選択される)。特定の態様では、個々のRfは同じである。
【0086】
プロ基Rpの種類は、特定の投与様式に対して最適化される、基礎となる活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物の水溶性および他の特性を合わせるように選択され得る。それは例えば、消化管内、血中、および/または血清中で、または肝臓などの特定の器官中に存在する酵素を介して、体内の特定の器官および/または組織における除去が可能となるようにも選択され得る。
【0087】
いくつかの態様では、リンを含むプロ基であるプロ基Rpは、インビトロでエステラーゼ、リパーゼ、および/またはホスファターゼなどの酵素によって切断され得るリン酸部分を含む。このような酵素は体中に、例えば胃および消化管中に、血液および/または血清中に、ならびに事実上全ての組織および器官中に多く存在する。このようなリン酸を含むプロ基Rpは一般に、もとの活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物の水溶性を高め、このようなリン酸を含むプロドラッグを、例えば経口、口内、静脈内、筋肉内、および眼内への投与様式などの、水溶性であることが望ましい投与様式に理想的に適したものとする。
【0088】
いくつかの態様では、プロドラッグ中の個々のリン酸を含むプロ基Rpは、式-(CRdRd)y-O-P(O)(OH)(OH)、またはその塩である(Rdについては既に定義された通りであり、およびyは1〜3の整数であり、典型的には1もしくは2である)。1つの特定の態様では、個々のRdは他と独立に、水素、置換型または非置換型の低級アルキル、置換型または非置換型のフェニル、置換型または非置換型のメチル、および置換型または非置換型のベンジルから選択される。別の特定の態様では、個々のRdは他と独立に、水素および非置換型の低級アルキルから選択される。特定の例示的なリン酸を含むプロ基Rpは、-CH2-O-P(O)(OH)(OH)および-CH2CH2-O-P(O)(OH)(OH)、ならびに/または対応する塩を含む。
【0089】
任意のオペレーション理論に拘泥することを意図しない一方で、例示的なリン酸を含むプロ基Rp中でyが1であれば、リン酸を含むプロドラッグはインビボで、ホスファターゼ、リパーゼ、および/またはエステラーゼなどの酵素によって、対応するヒドロキシメチルアミンに変換され、後にインビボで、ホルムアルデヒドの除去によってさらに代謝されて、活性2,4-ピリミジンジアミン剤化合物を生じると考えられる。リン酸およびホルムアルデヒドの代謝副産物は無害である。
【0090】
例示的なリン酸を含むプロドラッグ中でyが2の場合、プロドラッグはインビボで、エノールリン酸の除去によって、活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン剤化合物に代謝され、さらにアセトアルデヒドおよびリン酸塩に代謝されると考えられる。リン酸およびアセトアルデヒドの代謝副産物は無害である。
【0091】
当業者であれば、あるタイプの前駆体が、インビボでリン酸基に変換され得ることを理解するであろう。このような前駆体は例として、リン酸エステル、亜リン酸塩、および亜リン酸エステルを含むが、これらに限定されない。例えば亜リン酸塩はインビボでリン酸塩に酸化され得る。リン酸エステルはインビボでリン酸塩に加水分解され得る。亜リン酸エステルはインビボでリン酸エステルに酸化され、次にインビボでリン酸塩に加水分解され得る。これらのリン酸塩前駆体基がインビボでリン酸に変換する能力のために、プロドラッグは、このようなリン酸塩前駆体を含むプロ基を含む場合もある。いくつかの態様では、リン酸塩前駆体基は、最初にリン酸塩プロドラッグに変換されることなく、活性2,4-ピリミジンジアミン剤に直接代謝され得る。他の態様では、このようなリン酸塩前駆体を含むプロ基を含むプロドラッグは最初に、対応するリン酸塩プロドラッグに代謝され、これが後に、上述したように、ヒドロキシメチルアミンを介して活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン剤に代謝される。
【0092】
いくつかの態様では、このようなリン酸塩前駆体基はリン酸エステルである。リン酸エステルは、非環状または環状の場合があり、およびリン酸トリエステルまたはリン酸ジエステルの場合がある。このようなエステルは一般に、対応するリン酸塩プロドラッグおよび対応する活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物より水溶性が低く、ならびにしたがって典型的には例として、吸入による投与を含むが、これに限定されない、低い水溶性が望ましい活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物のプロドラッグを送達する様式に適切である。プロドラッグの溶解性は、リン酸エステル中のエステル化基の数および種類の適切な選択によって、特定の投与様式に対して特異的に合わせることができる。
【0093】
リン酸エステル基が、対応するリン酸基に代謝される機構は、エステル化部分を適切に選択することで制御可能である。例えば、一部のエステルが酸(または塩基)に不安定であり、胃や消化管中に見られる酸性条件で、対応するリン酸塩を生じることは周知である。リン酸エステルのプロドラッグが、消化管中で、対応するリン酸塩プロドラッグに代謝されることが望ましい場合(例えば、プロドラッグが経口投与される場合など)は、酸に不安定なリン酸エステルのプロ基が選択され得る。他のタイプのリン酸エステルは、酸および塩基に安定であり、身体の一部の組織および器官中に存在する酵素を介して、対応するリン酸塩に変換される(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Erion et al., 2004, J. Am. Chem. Soc. 126: 5154-5163に記載された、さまざまな環状リン酸エステルを参照)。体内の望ましい標的組織または標的部位内で、リン酸エステルのプロドラッグを、対応するリン酸塩プロドラッグに変換することがことが望ましい場合は、所望の代謝特性を有するリン酸エステルが選択され得る。
【0094】
いくつかの態様では、プロドラッグ中の個々のリン酸エステルを含むプロ基Rpは、式-(CRdRd)y-O-P(O)(OH)(ORe)もしくは-(CRdRd)y-O-P(O)(ORe)(ORe)で表される非環状リン酸エステル、またはこれらの塩である(個々のReは独立に、置換型もしくは非置換型の低級アルキル、置換型もしくは非置換型の(C6-C14)アリール(例えば、フェニル、ナフチル、4-低級アルコキシフェニル、4-メトキシフェニル)、置換型もしくは非置換型の(C7-C20)アリールアルキル(例えば、ベンジル、1-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエタン-1-イル)、-(CRdRd)y-ORf、-(CRdRd)y-O-C(O)Rf、-(CRdRd)y-O-C(O)ORf、-(CRdRd)y-S-C(O)Rf、-(CRdRd)y-S-C(O)ORf、-(CRdRd)y-NH-C(O)Rf、-(CRdRd)y-NH-C(O)ORf、および-Si(Rd)3から選択される(式中、Rd、Rf、およびyについては既に定義された通りである)。特定の態様では、個々のRdは、水素および非置換型の低級アルキルから選択され、および/または個々のReは、非置換型の低級アルカニルもしくはベンジルである。特定の例示的なリン酸エステルのプロ基は、-CH2-O-P(O)(OH)(ORe)、-CH2CH2-O-P(O)(OH)(ORe)、-CH2-O-P(O)(ORe)(ORe)、および-CH2CH2-O-P(O)(ORe)(ORe)を含むが、これらに限定されない(式中、Reは低級アルカニル、i-プロピル、およびt-ブチルから選択される)。
【0095】
他の態様では、個々のリン酸エステルを含むプロ基Rpは、以下の式の環状リン酸エステルである:

式中、個々のRgは他とは独立に、水素および低級アルキルから選択され;個々のRhは他とは独立に、水素、置換型または非置換型の低級アルキル、置換型または非置換型の低級シクロヘテロアルキル、置換型または非置換型の(C6-C14)アリール、置換型または非置換型の(C7-C20)アリールアルキル、および置換型または非置換型の5〜14員のヘテロアリールから選択され;zは0〜2の整数であり;ならびにRdおよびyについては既に定義された通りである。特定の態様では、個々のリン酸エステルを含むプロ基Rpは、以下の式の環状リン酸エステルである:

式中、Rd、Rh、およびyについては既に定義された通りである。
【0096】
このような環状リン酸エステルプロ基を含む環状リン酸エステルのプロドラッグがインビボで活性薬剤化合物に代謝される機構は、部分的には、Rh置換基の種類に依存する。例えば、個々のRhが独立に、水素および低級アルキルから選択される環状リン酸エステルのプロ基は、インビボでエステラーゼによって切断される。したがって、いくつかの態様では、環状リン酸エステルのプロ基は、インビボでエステラーゼによって切断され得るものが選択される。このような環状リン酸エステルのプロ基の特定の例は、以下から選択されるプロ基を含むが、これらに限定されない:


【0097】
あるいは、Rh置換基が置換型または非置換型のアリール基、アリールアルキル基、およびヘテロアリール基であるプロ基を有する環状リン酸エステルのプロドラッグは典型的には、エステラーゼによって切断されないが、肝臓中に存在するシトクロムP450酵素などの酵素によって活性プロドラッグに代謝される。例えば、もっぱら肝臓で発現されるシトクロムP450酵素(CYP)によって触媒される酸化的切断反応を受ける一連の環状リン酸エステルのヌクレオチドのプロドラッグについては、Erion et al., 2004, J. Am. Chem. Soc. 126:5154-5163に記載されている。いくつかの態様では、環状リン酸エステルプロ基は、肝臓で発現されるCYP酵素によって切断されるものが選択される。このような環状リン酸エステルを含むプロ基Rpの特定の例示的な態様は、以下の式を有するプロ基を含むが、これに限定されない:

式中、Rhは、フェニル、3-クロロフェニル、4-ピリジル、および4-メトキシフェニルから選択される。
【0098】
当業者であれば理解するように、亜リン酸塩および亜リン酸エステルは、インビボで酸化を受けて、対応するリン酸塩およびリン酸エステルの類似体を生じる可能性がある。このような反応はインビボで、例えばオキシダーゼ酵素、酸化還元酵素、および他の酸化酵素によって行われ得る。したがって、リンを含むプロ基Rpは、上記の任意のリン酸塩およびリン酸エステルのプロ基の亜リン酸塩および亜リン酸エステルの類似体を含む場合もある。いくつかの態様では、リンを含むプロ基Rpは、式-(CRdRd)y-O-P(OH)(OH)、-(CRdRd)y-O-P(OH)(ORe)、および-(CRdRd)y-O-P(ORe)(Re)の基、またはこれらの塩を含むが、これらに限定されない(Rd、Re、およびyについては既に定義された通りである)。特定の例示的な態様は、個々のRdが他と独立に、水素および非置換型の低級アルキルから選択され、および/または個々のReが他と独立に、非置換型の低級アルカニルおよびベンジルから選択される基を含む。特定の例示的な非環状の亜リン酸塩および亜リン酸エステルのプロ基は、-CH2-O-P(OH)(OH)、-CH2CH2-O-P(OH)(OH)、-CH2-O-P(OH)(ORe)、および-CH2CH2-O-P(ORe)(ORe)を含むが、これらに限定されない(個々のReは、低級アルカニル、i-プロピル、およびt-ブチルから選択される)。特定の例示的な環状の亜リン酸エステルのプロドラッグは、上記の環状リン酸エステルプロ基の亜リン酸塩類似体を含む。概念的には、このような亜リン酸塩および/または亜リン酸エステルのプロ基を含むプロドラッグ化合物は、対応するリン酸塩のプロドラッグ、およびリン酸エステルプロドラッグであると考えられる。
【0099】
上述したように、リン酸を含む一部のプロドラッグは、インビボで、対応するヒドロキシメチルアミンを介して代謝されると考えられている。このようなヒドロキシメチルアミンは、インビボで、対応する活性3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物に代謝されるが、これらはpH 7で安定であり、ならびにヒドロキシアルキルを含むプロドラッグとして調製して投与可能である。いくつかの態様では、このようなプロドラッグの個々のヒドロキシアルキルを含むプロ基Rpは、式-CRdRd-OHで表される(Rdについては既に定義された通りである)。特定の例示的なヒドロキシアルキルを含むプロ基Rpは-CH2OHである。
【0100】
1つの態様では、Rpは、式-(CRdRd)y-O-P(O)(OH)2、またはこの塩を有し(yは1〜3の整数);個々のRdは独立に、水素、任意で置換された低級アルキル、任意で置換された(C6-C14)アリール、および任意で置換された(C7-C20)アリールアルキルから選択され;任意の置換基は相互に独立に、ヒドロキシル、低級アルコキシ、(C6-C14)アリールオキシ、低級アルコキシアルキル、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、エトキシエチル、およびハロゲンから選択されるか、または、あるいは同じ炭素原子に結合した2個のRdは、これらが結合する炭素原子とともに、3〜8個の炭素原子を含むシクロアルキル基を形成する。
【0101】
1つの態様では、Rpは、-CH2-O-P(O)(OH)2および-CH2CH2-O-P(O)(OH2)、およびこれらの塩から選択される。
【0102】
1つの態様では、Rpはリン酸エステル基を含む。
【0103】
1つの態様では、Rpは、-(CRdRd)y-O-P(O)(ORe)(OH)、-(CRdRd)y-O-P(O)(ORe)(ORe)、


およびこれらの塩から選択される(個々のReは他と独立に、置換型または非置換型の低級アルキル、置換型または非置換型の(C6-C14)アリール(例えば、フェニル、ナフチル、4-低級アルコキシフェニル、4-メトキシフェニル)、置換型または非置換型の(C7-C20)アリールアルキル(例えば、ベンジル、1-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエタン-1-イル)、-(CRdRd)y-ORf、-(CRdRd)y-O-C(O)Rf、-(CRdRd)y-O-C(O)ORf、-(CRdRd)y-S-C(O)Rf、-(CRdRd)y-S-C(O)ORf、-(CRdRd)y-NH-C(O)Rf、-(CRdRd)y-NH-C(O)ORf、および-Si(Rd)3から選択され(個々のRfは他と独立に、水素、非置換型または置換型の低級アルキル、置換型または非置換型の(C6-C14)アリール、および置換型または非置換型の(C7-C20)アリールアルキルから選択される);個々のRgは他と独立に、水素および低級アルキルから選択され;個々のRhは他と独立に、水素、置換型または非置換型の低級アルキル、置換型または非置換型の低級シクロヘテロアルキル、置換型または非置換型の(C6-C14)アリール、置換型または非置換型の(C7-C20)アリールアルキル、および置換型または非置換型の5〜14員のヘテロアリールから選択され;zは0〜2の整数であり;ならびにRdおよびyについては既に定義された通りである)。
【0104】
1つの態様では、Rpは、-CH2-O-P(O)(OH)2、-CH2CH2-O-P(O)(OH)2、-CH2OH、およびこれらの塩から選択される。このようないくつかの局面では、ZはN-Rpである。
【0105】
別の態様では、本発明は、式Iまたは式IIの化合物、および担体、賦形剤、または希釈剤を含む組成物を提供する。
【0106】
当業者であれば、本明細書に具体的に記載および/または説明された本発明の化合物およびプロドラッグ、ならびにさまざまな化合物種の多くが、互変異性、コンホメーション異性、幾何異性、および/または光学異性の現象を示す可能性があることを理解するであろう。例えば、本発明の化合物およびプロドラッグは、1つもしくは複数の不斉中心および/または二重結合を含む場合があり、ならびに結果として、二重結合異性体(すなわち幾何異性体)、エナンチオマー、およびジアステレオマー、ならびにラセミ混合物などのこれらの混合物などの立体異性体として存在する可能性がある。別の例として、本発明の化合物およびプロドラッグは、エノール形、ケト形、およびこれらの混合物を含む複数の互変異性の形状で存在する場合がある。本明細書および特許請求の範囲に含まれる、さまざまな化合物の名称、式、および化合物の図は、取り得る互変異性、コンホメーション異性、光学異性、または幾何異性の形状の1つのみを示す場合があるが、本発明は、本明細書に記載された1つもしくは複数の有用性を有する化合物もしくはプロドラッグの任意の互変異性、コンホメーション異性、光学異性、および/または幾何異性の形状、ならびにこれらの多種多様な異性体の形状の混合物を包含すると理解されたい。2,4-ピリミジンジアミンのコア構造の周囲の回転が制限される場合は、アトロプ異性体も可能であり、および特に本発明の化合物にも含まれる。
【0107】
さらに当業者であれば、代替の置換基のリストが、原子価の要件または他の理由のために、特定の基の置換に使用不可能な成員を含む場合に、リストが、特定の基の置換に適したリストの成員を含む文脈で読まれると意図されることを理解するであろう。例えば当業者であれば、列挙されたRbの全ての代替物がアルキル基の置換に使用可能な一方で、=Oなどの一部の代替物がフェニル基との置換に使用不可能なことを理解するであろう。置換基の対の可能な組み合わせのみが意図されることを理解されたい。
【0108】
本発明の化合物および/またはプロドラッグは、それらの化学構造またはそれらの化学名のいずれかによって同定され得る。化学構造と化学名が食い違う場合は、化学構造が、特定の化合物の種類を決定する。
【0109】
さまざまな置換基の性質に依存して、本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物およびプロドラッグは、塩の形状を取り得る。このような塩は、薬学的な用途に適した塩(「薬学的に許容される塩」)、獣医学的な用途に適した塩などを含む。このような塩は、当技術分野で周知なように、酸または塩基に由来する場合がある。
【0110】
1つの態様では、塩は、薬学的に許容される塩である。一般に、薬学的に許容される塩は、親化合物の実質的に1つもしくは複数の望ましい薬理活性を保持し、およびヒトへの投与に適した塩である。薬学的に許容される塩は、無機酸または有機酸によって作られる酸付加塩を含む。薬学的に許容される酸付加塩を形成するのに適した無機酸は例として、ハロゲン酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、硫酸、硝酸、リン酸などを含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される酸付加塩を形成するのに適した有機酸は例として、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸など)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、シクロアルキルスルホン酸(例えば、カンファースルホン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などを含むが、これらに限定されない。
【0111】
薬学的に許容される塩は、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、もしくはアルミニウムイオン)、アンモニウムイオンにより置換されるか、または有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)と配位結合するかのいずれかによって形成される塩も含む。
【0112】
本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物、ならびにこれらの塩は、当技術分野で周知なように、水和物、溶媒和化合物、およびN-オキシドの形状も取り得る。1つの実施では、本発明は、表Iから選択される化合物、またはその立体異性体、互変異性体、プロドラッグ、溶媒和化合物、または薬学的に許容される塩を提供する。
【0113】
【表I】


【0114】
合成法
本発明の化合物およびプロドラッグは、市販の出発材料、および/または従来の合成法で作製された出発材料を使用して、多様な合成経路を介して合成可能である。本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物およびプロドラッグの合成にルーチンに適用可能な適切な例示的な方法は、内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,958,935号、2003年1月31日に出願された米国特許出願第10/355,543号(US Publication US20040029902-A1)、2003年8月1日に公開されたWO 03/063794、2003年7月29日に出願された米国特許出願第10/631,029号、および2004年2月19日に公開されたWO 2004/014382、ならびに2004年7月30日に出願された米国特許出願第10/903,870号に記載されている。構造式(I)および(II)の全ての化合物は、これらの方法のルーチンな適合により作製することができる。
【0115】
本発明の3-ヒドロキシ-2,4-ピリミジンジアミン化合物の合成に使用可能な、さまざまな例示的な合成経路を、以下のスキーム(I)〜(II)に示す。これらの方法をルーチンに適合させることで、構造式(III)および(IV)のプロドラッグを合成することが可能である。
【0116】
1つの例示的な態様では、化合物は、以下のスキーム(I)に示されるように、置換型または非置換型のウラシルまたはチオウラシルから合成可能である:

【0117】
スキーム(I)で、R35、R31、Y、W、Z、およびXは、構造式(I)に関して既に定義された通りであり、X'はハロゲン(例えば、F、Cl、Br、またはI)であり、ならびにQおよびQ'はそれぞれ相互に独立に、OおよびSからなる群より選択される。スキーム(I)により、ウラシルまたはチオウラシル2は、標準的な条件下で標準的なハロゲン化剤POX3(または他の標準的なハロゲン化剤)を使用して、2位および4位でジハロゲン化されて2,4-ビスハロピリミジン4が得られる。典型的には、ピリミジン4では、C4位におけるハライドは、C2位におけるハライドより、求核試薬に対する反応性が高い。この反応性の差は、2,4-ビスハロピリミジン4を1等量のアミン10と最初に反応させて、4N-置換-2-ハロ-4-ピリミジンアミン8を得た後にアミン6と反応させて構造式(I)の2,4-ピリミジンジアミンを得ることで構造式(I)の2,4-ピリミジンジアミンを合成する際に利用することができる。
【0118】
典型的には、C4ハライドは、スキームに説明されているように、求核試薬に対する反応性が高い。しかしながら、当業者であれば理解するように、反応の位置選択性は、当技術分野で周知なように、溶媒および他の合成条件(温度など)を調節することで制御可能である。
【0119】
スキーム(I)に記載された反応は、反応混合物をマイクロ波で加熱すると、より速やかに進む場合がある。このような加熱時には、以下の条件を使用するとよい:密封チューブ(20気圧)中のSmith Reactor(Personal Chemistry)中でエタノール中で、5〜60分間かけて175℃〜185℃に加熱。
【0120】
出発材料であるウラシルまたはチオウラシル2は、業者から購入すること可能なほか、有機化学の標準的な手法で作製することができる。スキーム(I)における出発材料として使用可能な市販のウラシルおよびチオウラシルは例として、ウラシル(Aldrich #13,078-8;CAS番号66-22-8);2-チオ-ウラシル(Aldrich #11,558-4;CAS番号141-90-2);2,4-ジチオウラシル(Aldrich #15,846-1;CAS番号2001-93-6);5-アセトウラシル(Chem. Sources Int'l 2000;CAS番号6214-65-9);5-アジドウラシル;5-アミノウラシル(Aldrich #85,528-6;CAS番号932-52-5);5-ブロモウラシル(Aldrich #85,247-3;CAS番号51-20-7);5-(トランス-2-ブロモビニル)-ウラシル(Aldrich #45,744-2;CAS番号69304-49-0);5-(トランス-2-クロロビニル)-ウラシル(CAS番号81751-48-2);5-(トランス-2-カルボキシビニル)-ウラシル;ウラシル-5-カルボン酸(2,4-ジヒドロキシピリミジン-5-カルボン酸水和物;Aldrich #27,770-3;CAS番号23945-44-0);5-クロロウラシル(Aldrich #22,458-8;CAS番号1820-81-1);5-シアノウラシル(Chem. Sources Int'l 2000;CAS番号4425-56-3);5-エチルウラシル(Aldrich #23,044-8;CAS番号4212-49-1);5-エテニルウラシル(CAS番号37107-81-6);5-フルオロウラシル(Aldrich #85,847-1;CAS番号51-21-8);5-ヨードウラシル(Aldrich #85,785-8;CAS番号696-07-1);5-メチルウラシル(チミン;Aldrich #13,199-7;CAS番号65-71-4);5-ニトロウラシル(Aldrich #85,276-7;CAS番号611-08-5);ウラシル-5-スルファミン酸(Chem. Sources Int'l 2000;CAS番号5435-16-5);5-(トリフルオロメチル)-ウラシル(Aldrich #22,327-1;CAS番号54-20-6);5-(2,2,2-トリフルオロエチル)-ウラシル(CAS番号155143-31-6);5-(ペンタフルオロエチル)-ウラシル(CAS番号60007-38-3);6-アミノウラシル(Aldrich #A5060-6;CAS番号873-83-6);ウラシル-6-カルボン酸(オロト酸;Aldrich #0-840-2;CAS番号50887-69-9);6-メチルウラシル(Aldrich #D11,520-7;CAS番号626-48-2);ウラシル-5-アミノ-6-カルボン酸(5-アミノオロト酸;Aldrich #19,121-3;CAS番号#7164-43-4);6-アミノ-5-ニトロソウラシル(6-アミノ-2,4-ジヒドロキシ-5-ニトロソピリミジン;Aldrich #27,689-8;CAS番号5442-24-0);ウラシル-5-フルオロ-6-カルボン酸(5-フルオロオロト酸;Aldrich #42,513-3;CAS番号00000-00-0);ならびにウラシル-5-ニトロ-6-カルボン酸(5-ニトロオロト酸;Aldrich #18,528-0;CAS番号600779-49-9)を含むが、これらに限定されない。他の5-置換、6-置換、および5,6-置換型のウラシルおよび/またはチオウラシルは、General Intermediates of Canada, Inc., Edmonton, Alberta, CA(www.generalintermediates.com)、および/またはInterchim, France(www.interchim.com)から入手可能なほか、標準的な手法で作製することができる。適切な合成法について説明した数多くの教科書に記載された参考文献については後述する。
【0121】
アミン6およびアミン10は、業者から購入可能なほか、標準的な手法で合成することができる。例えば適切なアミンを、標準的な化学的手法でニトロ前駆体から合成することができる。特定の例示的な反応については、実施例セクションに記載されている。Vogel, 1989, Practical Organic Chemistry, Addison Wesley Longman, Ltd. and John Wiley & Sons, Incも参照されたい。
【0122】
当業者であれば、場合によっては、ウラシルまたはチオウラシル2上のアミン6(3-ヒドロキシ部分など)およびアミン10、および/または他の置換基が、合成中に保護を必要とする官能基を含む場合があることを理解するであろう。使用される任意の保護基の正確な種類は、保護される官能基の種類に依存し、および当業者に明らかである。適切な保護基を選択するための手引き、ならびに保護基の結合および除去のための合成戦略は例えば、Greene & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3d Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York (1999)、および同論文に引用された参考文献(以下、「Greene & Wuts」と呼ぶ)に記載されている。
【0123】
出発材料として5-フルオロウラシル(Aldrich #32,937-1)を使用するスキーム(I)の特定の態様を、以下のスキーム(II)で説明する:

【0124】
スキーム(II)で、Y、Z、およびXは、スキーム(I)に関して既に定義された通りである。スキーム(II)では、5-フルオロウラシル3はPOCl3によってハロゲン化されて、2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン5を生じ、これが次に1等量のアミン10'と反応して(2-クロロ-N4-置換-5-フルオロ-4-ピリミジンアミン8'を生じ)、次に1等量もしくは複数の等量のアミン6と反応させて、式(II)の化合物を得る。
【0125】
構造式(II)で表されるプロドラッグは、上記の方法のルーチンな改変により作製可能である。あるいは、このようなプロドラッグは、構造式(I)で表される、適切に保護された2,4-ピリミジンジアミンを適切なプロ基と反応させることで作製可能である。このような反応を実施する条件、ならびに生成物を脱保護して、式(III)および式(IV)のプロドラッグを得るための条件は周知であり、ならびに例えば、それぞれが参照により、全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2006-0211657号、PCT Publication WO 2006/078846に、および2005年12月6日に出願された米国特許出願第11/295,752号に記載されている条件を含む。
【0126】
別の態様では、式Vのプロドラッグ

(式中、Y、Z、およびXは、式Iに関して既に定義された通りであり、ならびにP3およびこれが結合する酸素原子はエステルプロ部分を形成する)は、式Vの3-ヒドロキシフェニル化合物を反応させることによって作製される(P3は、適切な酸ハライドまたは無水物を伴う水素であり、および任意でアミンなどの塩基の存在下で)。別の態様では、このような化合物を、酸触媒またはカップリング試薬の存在下で、適切な酸と反応させる。いくつかの態様では、酸触媒は硫酸またはHClである。他の態様では、カップリング試薬は、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミドであるか、または1,1'-カルボニルジイミダゾールである。
【0127】
ピリミジンの合成に有用な方法が一般的に教示された数多くの参考文献、ならびにスキーム(I)〜(II)に記載された出発材料は、当技術分野で公知である。具体的な手引きに関しては、Brown, D.J.、「The Pyrimidines」, in The Chemistry of Heterocyclic Compounds, Volume 16 (Weissberger, A., Ed.), 1962, Interscience Publishers, (A Division of John Wiley & Sons), New York (「Brown I」);Brown, D. J.、「The Pyrimidines」, in The Chemistry of Heterocyclic Compounds, Volume 16, Supplement I (Weissberger, A. and Taylor, E. C., Ed.), 1970, Wiley-Interscience, (A Division of John Wiley & Sons), New York (「Brown II」);Brown, D. J., 「The Pyrimidines」, in The Chemistry of Heterocyclic Compounds, Volume 16, Supplement II (Weissberger, A. and Taylor, E. C., Ed.), 1985, An Interscience Publication (John Wiley & Sons), New York (「Brown III」);Brown, D. J., 「The Pyrimidines」 in The Chemistry of Heterocyclic Compounds, Volume 52 (Weissberger, A. and Taylor, E. C., Ed.), 1994, John Wiley & Sons, Inc., New York, pp.1-1509 (「Brown IV」);Kenner, G. W. and Todd, A., in Heterocyclic Compounds, Volume 6, (Elderfield, R. C., Ed.), 1957, John Wiley, New York, Chapter 7 (pyrimidines);Paquette, L. A., Principles of Modern Heterocyclic Chemistry, 1968, W. A. Benjamin, Inc., New York, pp.1-401(ウラシルの合成についてはpp.313, 315;ピリミジンの合成についてはpp.313-316;アミノピリミジンの合成についてはpp.315);Joule, J. A., Mills, K. and Smith, G. F., Heterocyclic Chemistry, 3rd Edition, 1995, Chapman and Hall, London, UK, pp.1-516;Vorbruggen, H. and Ruh-Pohlenz, C., Handbook of Nucleoside Synthesis, John Wiley & Sons, New York, 2001, pp.1-631(保護アシル化によるピリミジンについてはpp.90-91;ピリミジンのシリル化についてはpp.91-93);Joule, J. A., Mills, K. and Smith, G. F., Heterocyclic Chemistry, 4th Edition, 2000, Blackwell Science, Ltd, Oxford, UK, pp.1-589;および、Comprehensive Organic Synthesis, Volumes 1-9 (Trost, B. M. and Fleming, I., Ed.), 1991, Pergamon Press, Oxford, UKを参照されたい。
【0128】
Fc受容体シグナルカスケードの阻害
本発明の活性2,4-ピリミジンジアミン化合物は、特に細胞の脱顆粒に至るFc受容体シグナル伝達カスケードを阻害する。特定の例として、このような化合物は、好中球、好酸球、マスト細胞、および/または好塩基球などの免疫細胞の脱顆粒に至るFcεRIおよび/またはFcγRIのシグナルカスケードを阻害する。マスト細胞と好塩基球はいずれも、例えばアレルギー性の鼻炎や喘息を含むアレルゲン誘導型の疾患に重要な役割を果たす。特に花粉や寄生生物の場合のあるアレルゲンへの曝露に伴い、IL-4(もしくはIL-13)、およびIgEクラスの特異的抗体の合成へ切り替える他のメッセンジャーによって活性化されたB細胞によってアレルゲン特異的なIgE抗体が合成される。これらのアレルゲン特異的なIgEは、高い親和性でFcεRIに結合する。抗原との結合によって、FcεR1結合性IgEは架橋され、およびIgE受容体シグナル伝達経路が活性化され、これが細胞の脱顆粒と、ひいては結果的に、ヒスタミン、プロテアーゼ(例えば、トリプターゼやキマーゼ)、ロイコトリエン(例えばLTC4)、血小板活性化因子(PAF)、およびプロスタグランジン(例えばPGD2)などの脂質メディエーター、ならびにTNF-α、IL-4、IL-13、IL-5、IL-6、IL-8、GMCSF、VEGF、およびTGF-βを含む一連のサイトカインを含む多くの化学メディエーターの放出および/または合成に至る。マスト細胞および/または好塩基球からのメディエーターの放出および/または合成は、アレルゲンによって誘導される初期段階および後期段階の反応の要因となり、ならびに持続的な炎症性状態に至る下流の事象と直接結びつく。
【0129】
脱顆粒を介した、あらかじめ形成されたメディエーターの放出ならびに他の化学メディエーターの放出および/または合成に至るFcεRIシグナル伝達経路における分子事象は周知である。FcεRIは、IgE結合性のαサブユニット、βサブユニット、および2つのγサブユニット(γホモ二量体)を含むヘテロ四量体の受容体である。多価結合剤(例えば、IgE特異的アレルゲンまたは抗IgE抗体もしくは断片を含む)によるFcεRI結合性IgE架橋は、Src関連キナーゼLynの速やかな結合および活性化を誘導する。Lynは、細胞内のβサブユニットおよびγサブユニット上の免疫受容体チロシン活性化チーフ(ITAM)をリン酸化し、これは追加的なLynのβサブユニットへの動員、およびSykキナーゼのγホモ二量体への動員に至る。分子内および分子間のリン酸化によって活性化される、このような受容体結合キナーゼは、Btkキナーゼ、LAT、およびホスホリパーゼC-γ PLC-γなどの経路の他の成分をリン酸化する。活性化型のPLC-γは、いずれも脱顆粒に必要な、タンパク質キナーゼCの活性化およびCa2+の動員(いずれも脱顆粒に必要)に至る経路を開始する。FcεR1の架橋は、3つの主要なクラスの分裂促進物質活性化タンパク質(MAP)キナーゼ、すなわちERK1/2、JNK1/2、およびp38も活性化する。これらの経路の活性化は、TNF-αやIL-6などの炎症誘導性メディエーター、ならびに脂質メディエーターであるロイコトリエンCA(LTC4)の転写調節に重要である。
【0130】
説明はしないが、FcγRIシグナル伝達カスケードは、いくつかの共通の因子をFcεRIシグナル伝達カスケードと共有すると考えられている。重要な点は、FcγRIは、FcεRIと同様に、リン酸化されてSykを動員するγホモ二量体を含むこと、およびFcεRIと同様に、FcγRIシグナル伝達カスケードの活性化が特に脱顆粒に至ることである。γホモ二量体を共有し、および活性2,4-ピリミジンジアミン化合物によって調節され得る他のFc受容体は、FcαRIおよびFcγRIIIを含むが、これらに限定されない。
【0131】
本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物が、Fc受容体シグナル伝達カスケードを阻害する能力は、インビトロアッセイ法で簡便に決定または確認され得る。FcεRIを介した脱顆粒の阻害を確認するための適切なアッセイ法については、実施例セクションで説明する。1つの典型的なアッセイ法では、マスト細胞や好塩基球などの、FcεRIを介した脱顆粒を受けることが可能な細胞を最初に、IL-4、幹細胞因子(SCF)、IL-6、およびIgEの存在下で成長させてFcεRIの発現を高め、本発明の2,4-ピリミジンジアミン試験化合物に曝露させ、ならびに抗IgE抗体(または、あるいはIgE特異的アレルゲン)で刺激する。インキュベーション後に、FcεRIシグナル伝達カスケードの活性化の結果として放出および/または合成された化学メディエーターまたは他の化学薬剤の量を標準的な手法で定量し、および対照細胞(すなわち刺激されるが、試験化合物に曝露されない細胞)から放出されたメディエーターまたは薬剤の量と比較することができる。対照細胞と比較して測定されるメディエーターまたは薬剤の量に関して50%の減少を生じる試験化合物の濃度が、試験化合物のIC50となる。アッセイ法に使用されるマスト細胞または好塩基球の起源は部分的に、化合物の所望の使用に依存し、および当業者に明らかであると考えられる。例えば、仮に化合物が、ヒトの特定の疾患の治療もしくは予防に使用されるならば、マスト細胞もしくは好塩基球の好都合な供給源は、ヒト、または特定の疾患に関して受入れられている臨床モデルもしくは公知の臨床モデルを構成する他の動物である。したがって、特定の適用に依存して、マスト細胞または好塩基球は、例えばマウスやラットなどの低級哺乳動物から、イヌ、ヒツジ、および臨床検討に広く使用されている他の哺乳動物、サル、チンパンジー、および類人猿などの高等哺乳等物、ヒトに至る、多様な動物供給源に由来する場合がある。インビトロアッセイ法の実施に適した細胞の特定の例は、齧歯類もしくはヒトの好塩基球、ラットの好塩基球性白血病細胞系列、マウスの初代マスト細胞(骨髄由来マウスマスト細胞「BMMC」など)、および臍帯血(「CHMC」)または肺などの他の組織から単離されたヒト初代マスト細胞を含むが、これらに限定されない。これらの細胞タイプを単離して培養する方法は周知であるか、または実施例セクションに記載されている(例えば、内容が参照により本明細書に組み入れられる、Demo et al., 1999, Cytometry 36(4):340-348、および2001年11月8日に出願された同時係属の出願番号第10/053,355号を参照)。例えば好酸球を含む、FcεRIシグナル伝達カスケードの活性化に伴って脱顆粒する他のタイプの免疫細胞も使用可能なことは言うまでもない。
【0132】
当業者であれば理解するように、定量されるメディエーターまたは薬剤は重要ではない。唯一の要件は、メディエーターまたは薬剤が、Fc受容体シグナル伝達カスケードの開始もしくは活性化の結果として放出および/または合成されることである。例えば、マスト細胞および/または好塩基球におけるFcεRIシグナル伝達カスケードの活性化は、数多くの下流の事象に至る。例えばFcεRIシグナルカスケードの活性化は、脱顆粒を介した、さまざまな形成済みの化学メディエーターおよび薬剤の即時放出(すなわち受容体活性化後の1〜3分以内)に至る。したがって1つの態様では、定量されたメディエーターまたは薬剤は、(一般に細胞質中ではなく顆粒中に存在する)顆粒に特異的な場合がある。本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物の活性を決定および/または確認するために定量可能な顆粒特異的なメディエーターまたは薬剤の例は、ヘキソサミニダーゼやトリプターゼなどの顆粒特異的な酵素、およびヒスタミンやセロトニンなどの顆粒特異的な成分を含むが、これらに限定されない。このような因子を定量するアッセイ法は周知であり、および多くの場合、市販されている。例えば、トリプターゼおよび/またはヘキソサミニダーゼの放出は、細胞を、切断されると蛍光を発する切断可能な基質とともにインキュベートし、および発生した蛍光の量を従来の手法で定量することで定量可能である。このような切断可能な蛍光発生基質は市販されている。例えば、蛍光発生基質Z-Gly-Pro-Arg-AMC(Z=ベンジルオキシカルボニル;AMC=7-アミノ-4-メチルクマリン;BIOMOL Research Laboratories, Inc., Plymouth Meeting, PA 19462、カタログ番号P-142)、およびZ-Ala-Lys-Arg-AMC(ICN Biomedicals, Inc., Livermore, CA 94550の一部門であるEnzyme Systems Products、カタログ番号AMC-246)を使用して、放出されたトリプターゼを定量することができる。蛍光発生基質である4-メチルウンベリフェリル-N-アセチル-β-D-グルコサミニド(Sigma, St. Louis, MO、カタログ番号69585)を使用して、放出されたヘキソサミニダーゼを定量することができる。ヒスタミンの放出は、Immunotech社のヒスタミンELISAアッセイ法#IM2015(Beckman-Coulter, Inc.)などの市販の酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)を使用して定量することができる。トリプターゼ、ヘキソサミニダーゼ、およびヒスタミンの放出を定量する特定の方法は、実施例セクションに記載されている。これらの任意のアッセイ法で、本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物の活性を決定または確認することができる。
【0133】
脱顆粒は、FcεRIシグナル伝達カスケードによって開始される複数の反応の1つに過ぎない。加えて、このシグナル伝達経路の活性化は、IL-4、IL-5、IL-6、TNF-α、IL-13、およびMIP1-αなどのサイトカインおよびケモカインのデノボ合成および放出、ならびにロイコトリエン(例えばLTC4)、血小板活性化因子(PAF)、およびプロスタグランジンなどの脂質メディエーターの放出に至る。したがって、本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物は、活性化された細胞によって放出および/または合成されるこれらの1種類もしくは複数のメディエーターを定量することで、活性に関しても評価される。
【0134】
上記の顆粒特異的成分とは異なり、このような「後期」メディエーターは、FcεRIシグナル伝達カスケードの活性化の直後には放出されない。したがって、これらの後期メディエーターの定量時は、活性化細胞の培養物が、定量対象のメディエーターの合成(必要であれば)および放出に至るための十分な時間にわたってインキュベートされることを確実にするように注意すべきである。一般に、PAF、およびロイコトリエンC4などの脂質メディエーターは、FcεRIの活性化の3〜30分以内に放出される。サイトカインおよび他の後期メディエーターは、FcεRIの活性化の約4〜8時間以内に放出される。特定のメディエーターに適したインキュベーション時間は当業者に明らかである。特定の手引きおよびアッセイ法は、実施例セクションに記載されている。
【0135】
放出された特定の後期メディエーターの量は、任意の標準的な手法で定量することができる。1つの態様では、量はELISAアッセイ法で定量できる。放出されたTNFα、IL-4、IL-5、IL-6、および/またはIL-13の定量に適したELISAアッセイ法用のキットは例えば、Biosource International, Inc., Camarillo, CA 93012から入手できる(例えば、カタログ番号KHC3011、KHC0042、KHC0052、KHC0061、およびKHCO132を参照)。細胞から放出されたロイコトリエンC4(LTC4)の定量に適切なELISAアッセイ法用のキットは、Cayman Chemical Co., Ann Arbor, MI 48108から入手できる(例えば、カタログ番号520211を参照)。
【0136】
典型的には、本発明の活性2,4-ピリミジンジアミン化合物は、上述の、実施例セクションに記載されたインビトロアッセイ法の1つのようなインビトロアッセイ法で測定される、約20μMまたはそれ未満の、FcεRIを介した脱顆粒および/またはメディエーターの放出もしくは合成に関するIC50を示す。当業者であれば、より低いIC50、例えば10μM、1μM、100 nM、10 nM、1 nM、またはさらに低い濃度のオーダーのIC50を示す化合物が特に有用なことを理解することは言うまでもない。
【0137】
当業者であれば、上記の多様なメディエーターが、さまざまな有害作用を誘導するか、または同じ有害作用に関して、さまざまな力価を示す場合があることも理解するであろう。例えば、脂質メディエーターLTC4は、強力な血管収縮因子であり、血管収縮の誘導に関して、ヒスタミンより約1000倍、強力である。別の例として、アトピー反応またはI型過敏反応に関与することに加えて、サイトカインは組織リモデリングおよび細胞増殖を引き起こす場合もある。したがって、既に挙げた化学メディエーターのいずれか1つの放出および/または合成を阻害する化合物は有用であるものの、当業者であれば、複数の、またはさらには全ての前述のメディエーターの放出および/または合成を阻害する化合物は、そのような化合物が特定のメディエーターによって誘導される複数の、ひいては全ての有害作用の全体的な改善もしくは回避に有用であることから、特定の用途を有することを理解するであろう。例えば、全3タイプのメディエーター(顆粒特異的、脂質、およびサイトカイン)の放出を阻害する化合物は、即時型のI型過敏反応、ならびにこれに伴う慢性症状の治療または予防に有用である。
【0138】
複数のタイプのメディエーター(例えば、顆粒特異的または後期)の放出を阻害可能な本発明の化合物は、個々のクラスを代表するメディエーターに関するIC50を、上述のさまざまなインビトロアッセイ法(または他の等価のインビトロアッセイ法)で決定することで同定可能である。複数のタイプのメディエーターの放出を阻害可能な本発明の化合物は典型的には、約20μM未満で検討される各タイプのメディエーターのIC50を示す。例えば、ヒスタミン放出に関して1μMのIC50(IC50ヒスタミン)を示し、ならびにロイコトリエンLTC4の合成および/または放出に関して1 nMのIC50(IC50LTC4)を示す化合物は、即時型(顆粒特異的)と後期のメディエーターの放出の両方を阻害する。別の特定の例として、10μMのIC50トリプターゼ、1μMのIC50LTC4、および1μMのIC50IL-4を示す化合物は、即時型(顆粒特異的)、脂質、およびサイトカインのメディエーターの放出を阻害する。上記の特定の例は、各クラスの1つの代表的なメディエーターのIC50を使用するが、当業者であれば、1つもしくは複数のクラスを含む複数の、ひいては全てのメディエーターのIC50が得られる可能性があることを理解するであろう。そのIC50データが、特定の化合物および適用に関して確認されるべきであるメディエーターの量および種類は、当業者には明らかであろう。
【0139】
ルーチンな改変を加えた類似のアッセイ法を用いて、FcαRI、FcγRI、および/またはFcγRIIIのシグナル伝達などの他のFc受容体によって開始されるシグナル伝達カスケードの阻害を確認することができる。例えば、化合物がFcγRIシグナル伝達を阻害する能力は、上記のアッセイ法に類似のアッセイ法で確認することができる(ただし、FcγRIシグナル伝達カスケードが例えば、細胞をIgEおよびIgEに特異的なアレルゲンまたは抗体ではなく、IgGおよびIgGに特異的なアレルゲンまたは抗体をインキュベートすることで活性化される点を除く)。適切な細胞タイプ、活性化剤、およびγホモ二量体を含むFc受容体などの他のFc受容体の阻害を確認するために定量する薬剤は、当業者には明らかであろう。
【0140】
1つの特に有用なクラスの化合物は、即時型の顆粒特異的メディエーター、および後期メディエーターの放出を、ほぼ等価のIC50で阻害する2,4-ピリミジンジアミン化合物を含む。ほぼ等価であるとは、各タイプのメディエーターのIC50が相互に約10倍の範囲内にあることを意味する。別の特に有用なクラスの化合物は、ほぼ等しいIC50で即時型の顆粒特異的メディエーター、脂質メディエーター、およびサイトカインメディエーターの放出を阻害する2,4-ピリミジンジアミン化合物を含む。特定の態様では、このような化合物は、以下のメディエーターの放出を、ほぼ等価のIC50で阻害する:ヒスタミン、トリプターゼ、ヘキソサミニダーゼ、IL-4、IL-5、IL-6、IL-13、TNFα、およびLTC4。このような化合物は、アトピー反応または即時型のI型過敏反応と関連する初期と後期の両方の反応の全体的な改善または回避に特に有用である。
【0141】
あらゆる望ましいタイプのメディエーターの放出を阻害する能力が、1つの化合物中に存在することが理想である。しかしながら、同じ結果を達成する化合物の混合物も同定され得る。例えば、顆粒特異的メディエーターの放出を阻害する第1の化合物を、サイトカインメディエーターの放出および/または合成を阻害する第2の化合物と組み合わせて使用することができる。
【0142】
上記のFcεRIまたはFcγRIの脱顆粒経路に加えて、マスト細胞および/または好塩基球の脱顆粒を他の薬剤によって誘導することができる。例えば、細胞のFcεRIまたはFcγRIのシグナル伝達機構の初期を迂回するカルシウムイオノフォアであるイオノマイシンは、脱顆粒を引き起こすカルシウムフラックスを直接誘導する。活性化されたPLCγは、特にカルシウムイオンの動員と、これに続く脱顆粒に至る経路を開始する。説明したように、このCa2+動員は、FcεRIシグナル伝達経路の後期に引き起こされる。上述したように、イオノマイシンは、脱顆粒に至るCa2+動員およびCa2+フラックスを直接誘導する。このように脱顆粒を誘導する他のイオノフォアはA23187を含む。イオノマイシンなどの顆粒化誘導性のイオノフォアが、FcεRIおよび/またはFcγRIのシグナル伝達カスケードの初期段階を迂回する能力を、上述したように、FcεRIまたはFcγRIのシグナル伝達カスケードの初期をブロックまたは阻害することで、脱顆粒阻害活性を特異的に発揮する本発明の活性化合物を同定する対抗スクリーニングとして使用することができる。このようなFcεRIまたはFcγRIを介した脱顆粒の初期を特異的に阻害する化合物は、脱顆粒と、これに続くヒスタミン、トリプターゼ、および他の顆粒成分の迅速な放出を阻害するだけでなく、TNFα、IL-4、IL-13、およびLTC4などの脂質メディエーターの放出を引き起こす炎症誘導性の活性化経路も阻害する。したがって、このようなFcεRIおよび/またはFcγRIを介した脱顆粒の初期を特異的に阻害する化合物は、急性アトピー反応もしくはI型過敏反応だけでなく、多数の炎症メディエーターが関与する後期反応もブロックまたは阻害する。
【0143】
FcεRIおよび/またはFcγRIを介した脱顆粒の初期を特異的に阻害する本発明の化合物は、FcεRIおよび/またはFcγRIを介した脱顆粒を阻害する(例えば、顆粒特異的メディエーター、またはIgEもしくはIgG結合剤で刺激された細胞を対象としたインビトロアッセイ法で測定される成分の放出に関して約20μM未満のIC50を有する)が、イオノフォア誘導型の脱顆粒をそれほど阻害しない化合物である。1つの態様では化合物は、インビトロアッセイ法で測定されるように、約20μMを上回るイオノフォア誘導型の脱顆粒のIC50を示す場合に、イオノフォア誘導型の脱顆粒をそれほど阻害しないと見なされる。イオノフォア誘導型の脱顆粒の、より高いIC50を示す活性化合物、またはイオノフォア誘導型の脱顆粒を全く阻害しない活性化合物が特に有用なことは言うまでもない。別の態様では、化合物は、インビトロアッセイ法で測定される、FcεRIおよび/またはFcγRIを介した脱顆粒、ならびにイオノフォア誘導型の脱顆粒のIC50に関して10倍を上回る差を示す場合に、イオノフォア誘導型の脱顆粒をそれほど阻害しないと見なされる。イオノフォア誘導型の脱顆粒のIC50の決定に適したアッセイ法は、細胞が抗IgE抗体またはIgE特異的アレルゲンではなく、イオノマイシンやA23187(A.G. Scientific, San Diego, CA)などの脱顆粒誘導性のカルシウムイオノフォアによって刺激されるか、または活性化されるように改変された、任意の前述の脱顆粒アッセイ法を含む。本発明の特定の2,4-ピリミジンジアミン化合物が、イオノフォア誘導型の脱顆粒を阻害する能力を評価する特定のアッセイ法は、実施例セクションに記載されている。
【0144】
当業者であれば理解するように、FcεRIを介した脱顆粒に高度の選択性を示す化合物は、このような化合物がFcεRIカスケードを選択的に標的とし、他の脱顆粒機構には干渉しないことから、特定の用途がある。同様に、FcγRIを介した脱顆粒に高度の選択性を示す化合物も特定の用途がある。なぜならこのような化合物は、FcγRIカスケードを選択的に標的とし、他の脱顆粒機構には干渉しないからである。高度の選択性を示す化合物は一般に、イオノマイシン誘導型の脱顆粒などのイオノフォア誘導型の脱顆粒と比較して、FcεRIまたはFcγRIを介した脱顆粒に対して、10倍またはそれ以上の選択性を有する。
【0145】
したがって、本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物の活性を、Sykキナーゼ活性の生化学的または細胞学的なアッセイ法で確認することもできる。マスト細胞および/または好塩基球におけるFcεRIシグナル伝達カスケードでは、Sykキナーゼは、特に脱顆粒に至るLATやPLC-γ1をリン酸化する。これらの活性のいずれかを利用して、本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物の活性を確認することができる。1つの態様では、活性は、単離されたSykキナーゼ、またはこの活性断片に2,4-ピリミジンジアミン化合物を、Sykキナーゼ基質(例えば、シグナル伝達カスケード中のSykによってリン酸化されることが公知である合成のペプチドもしくはタンパク質)の存在下で接触させ、Sykキナーゼが基質をリン酸化するか否かを評価することで確認される。あるいは、Sykキナーゼを発現する細胞を対象にアッセイ法を実施することができる。このような細胞は、Sykキナーゼを内因的に発現する場合があるほか、組換え型のSykキナーゼを発現するように作製できる。このような細胞は任意でSykキナーゼ基質も発現する可能性がある。このような確認目的のアッセイ法、ならびに適切な細胞の作製法を実施する際に適した細胞は、当業者に明らかであろう。2,4-ピリミジンジアミン化合物の活性の確認に適した生化学的および細胞学的なアッセイ法の特定の例は、実施例セクションに記載されている。
【0146】
一般に、Sykキナーゼ阻害剤である化合物は、Sykキナーゼが合成基質または内因性基質をリン酸化する能力などのSykキナーゼ活性に関して、インビトロアッセイ法または細胞学的アッセイ法で、約20μMまたはそれ未満の範囲のIC50を示す。当業者であれば、10μM、1μM、100 nM、10 nM、1 nM、またはさらに低い範囲などの、より低いIC50を示す化合物が特に有用なことを理解するであろう。
【0147】
使用および組成物
上述したように、本発明の活性化合物は、特に脱顆粒もしくは他の過程のいずれかを介した、細胞からの化学メディエーターの放出および/または合成に至る、FcεRIおよび/またはFcγRIのシグナル伝達カスケードなどのFc受容体シグナル伝達カスケード(特にγホモ二量体を含むFc受容体のシグナル伝達カスケード)を阻害する。また既に説明したように、活性化合物はSykキナーゼの強力な阻害剤でもある。これらの活性の結果、本発明の活性化合物は、Sykキナーゼ、Sykキナーゼが役割を果たすシグナル伝達カスケード、Fc受容体シグナル伝達カスケード、およびこのようなシグナル伝達カスケードによって惹起される生物学的反応を調節または阻害するために、さまざまなインビトロ、インビボ、およびエクスビボの状況で使用することができる。例えば1つの態様では、このような化合物を使用して、Sykキナーゼを発現する実質的にすべての細胞タイプにおいて、インビトロまたはインビボのいずれかでSykキナーゼを阻害することができる。それらを使用して、Sykキナーゼが役割を果たすシグナル伝達カスケードを調節することもできる。このようなSyk依存性のシグナル伝達カスケードは、FcεRI、FcγRI、FcγRIII、BCR、およびインテグリンのシグナル伝達カスケードを含むが、これらに限定されない。このような化合物は、このようなSyk依存性のシグナル伝達カスケードによって惹起される細胞学的または生物学的な反応を調節する(特に阻害する)ために、インビトロでもインビボでも使用することもできる。このような細胞学的または生物学的な反応は、呼吸バースト、細胞接着、細胞の脱顆粒、細胞伸展、細胞移動、細胞凝集、食作用、サイトカインの合成および放出、細胞の成熟、ならびにCa2+フラックスを含むが、これらに限定されない。重要な点は、Sykキナーゼ活性を利用して、Sykキナーゼ活性の全体または一部が関与する疾患の治療もしくは予防に対する治療アプローチとして、このような化合物を使用して、Sykキナーゼをインビボで阻害することが可能な点である。このような化合物による治療または予防が可能な、Sykキナーゼが関与する疾患の非制限的な例について、以下に詳述する。
【0148】
別の態様では、活性化合物を使用して、Fc受容体シグナル伝達カスケードの化学メディエーターの放出もしくは合成、または脱顆粒を特徴とする、起因する、および/または関連する疾患の、治療または予防への治療アプローチとして、Fc受容体シグナル伝達カスケードならびに/またはFcεRIおよび/もしくはFcγRIを介した脱顆粒を調節もしくは阻害することができる。このような治療は、獣医学的な状況で動物を対象に、またはヒトを対象に実施することができる。このようなメディエーターの放出、合成、または脱顆粒を特徴とする、起因する、または関連する疾患、ひいては活性化合物によって治療もしくは予防が可能な疾患は例として、アトピー反応もしくはアナフィラキシー過敏反応もしくはアレルギー反応、アレルギー(例えば、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、および食物アレルギー)、低悪性度の瘢痕(例えば、強皮症、線維形成増加、ケロイド、手術創、肺線維症、血管攣縮、偏頭痛、再潅流傷害、および心筋梗塞後症候群によるもの)、組織破壊と関連する疾患(例えば、COPD、心臓・気管支炎(cardiobronchitis)、および心筋梗塞後症候群)、組織炎症と関連する疾患(例えば、過敏性腸症候群、痙攣性結腸、および炎症性腸疾患)、炎症、ならびに瘢痕を含むが、これらに限定されない。
【0149】
上記の多数の疾患に加えて、細胞および動物を対象とした経験的データによって、本明細書に記載された2,4-ピリミジンジアミン化合物が、自己免疫疾患、ならびに、このような疾患に伴うさまざまな症状の治療または予防にも有用なことが確認されている。2,4-ピリミジンジアミン化合物によって治療もしくは予防が可能な自己免疫疾患のタイプは一般に、内因性および/または外因性起源の免疫原もしくは抗原に対する液性および/または細胞介在性の反応の結果として生じる組織損傷を含む疾患を含む。このような疾患は、非アナフィラキシー型(すなわちII型、III型、および/またはIV型の)過敏反応を含む疾患と呼ばれることが多い。
【0150】
既に説明したように、I型の過敏反応は一般に、特異的な外因性抗原との接触後のマスト細胞および/または好塩基球からの、ヒスタミンなどの薬理活性物質の放出によって生じる。上述したように、このようなI型反応は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎などを含む数多くの疾患に役割を果たす。
【0151】
II型過敏反応(細胞障害性、細胞溶解性の補体依存性または細胞刺激性の過敏反応とも呼ばれる)は、免疫グロブリンが、細胞もしくは組織の抗原性成分と、または細胞もしくは組織と密接に結合する抗原もしくはハプテンと反応すると生じる。II型過敏反応と通常関連する疾患は、自己免疫性溶血性貧血、胎児赤芽球症、およびグッドパスチャー病を含むが、これらに限定されない。
【0152】
III型過敏反応(毒性複合体、可溶性複合体、または免疫複合体による過敏反応とも呼ばれる)は、血管中または組織中における可溶性の循環性の抗原-免疫グロブリン複合体の沈着(免疫複合体の沈着部位における急性炎症反応を伴う)によって生じる。プロトタイプのIII型反応の疾患の非制限的な例は、アルツス反応、関節リウマチ、血清病、全身性エリテマトーデス、一部のタイプの糸球体腎炎、多発性硬化症、および水疱性類天疱瘡を含む。
【0153】
IV型過敏反応(細胞性、細胞媒介性、遅延型、またはツベルクリン型の過敏反応と呼ばれることが多い)は、特異的な抗原との接触に起因する感作Tリンパ球によって引き起こされる。IV型反応を含むと言われる疾患の非制限的な例には、接触皮膚炎や同種移植片拒絶反応がある。
【0154】
上記の任意の非アナフィラキシー過敏反応と関連する自己免疫疾患は、本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物による治療または予防が可能である。特に、本方法で、以下を含むが、これらに限定されない、1つの器官または1つの細胞タイプの自己免疫疾患として特徴づけられることの多い自己免疫疾患の治療もしくは予防が可能である:橋本甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、悪性貧血、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性睾丸炎、グッドパスチャー病、自己免疫性血小板減少症、交感性眼炎、重症筋無力症、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、劇症慢性肝炎、潰瘍性大腸炎および膜性白糸球体症(membranous glomerulopathy)、ならびに以下を含むが、これらに限定されない全身性自己免疫疾患の関与を特徴とすることの多い自己免疫疾患:全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、シェーグレン症候群、ライター症候群、多発性筋炎・皮膚筋炎、全身性硬化症、結節性多発性動脈炎、多発性硬化症、および水疱性類天疱瘡。
【0155】
当業者であれば、上記の多くの自己免疫疾患が重篤な症状を伴い、その改善が、病因となる自己免疫疾患が改善しない可能性があっても、大きな治療的有用性をもたらすことを理解するであろう。このような症状、ならびにそれらの基礎疾患状態の多くは、単球におけるFcγRシグナル伝達カスケードの活性化の結果として生じる。本明細書に記載された2,4-ピリミジンジアミン化合物は、単球および他の細胞における、このようなFcγRシグナル伝達の強力な阻害剤であるので、本方法は、上記の自己免疫疾患に伴う多数の有害な症状の治療および/または予防に有用である。
【0156】
具体的な例として、関節リウマチ(RA)は典型的には、標的関節の腫脹、疼痛、運動障害、および圧痛を身体全体に生じる。RAは、リンパ球が密集する慢性的に炎症を生じた滑膜を特徴とする。典型的には1細胞の厚みの滑膜は、強く細胞性となり、および樹状細胞、T細胞、B細胞、およびNK細胞、マクロファージ、および血漿細胞のクラスターを含むリンパ組織に似た形状をとると考えられる。この過程、ならびに抗原-免疫グロブリン複合体の形成を含む多数の免疫病理学的な機構は最終的に、関節または関節近傍における変形、機能の恒久的喪失、および/または骨侵食につながる、関節の全体性の破壊を生じる。本方法を用いて、RAのこれらの症状の任意の1つ、複数、または全てを治療または改善することができる。したがって、RAに関しては、本方法は、治療が、基礎となるRAの併用治療、および/または循環性のリウマチ因子(「RF」)の量の減少につながるか否かにかかわらず、RAに一般に伴う任意の症状の低下または改善が達成される場合に、治療的有用性(一般的に後述)を提供すると見なされる。
【0157】
別の特定の例として、全身性エリテマトーデス(「SLE」)は典型的には、発熱、関節の痛み(関節痛)、関節炎、および漿膜炎(肋膜炎または心膜炎)などの症状を伴う。SLEに関しては、本方法は、治療が、基礎となるSLEの併用療法につながるか否かにかかわらず、SLEに一般に伴う任意の症状の低下または改善が達成される場合に、治療的有用性を提供すると見なされる。
【0158】
別の特定の例として、多発性硬化症(「MS」)によって患者は、視力の低下;二重視の刺激;歩行および手の動きに影響する運動機能の障害;尿便失禁の発生;痙攣;ならびに知覚障害(触覚、疼痛、および温度感受性)によって不自由を覚える。MSに関しては、本方法は、治療が、基礎となるMSの併用療法につながるか否かにかかわらず、MSに一般に伴う肢体不自由を生じる任意の1つもしくは複数の作用の進行の改善または低下が達成された場合に、治療的有用性を提供すると見なされる。
【0159】
このような疾患の治療もしくは予防に使用される際に、活性化合物は単独で投与可能なほか、1種類もしくは複数の活性化合物の混合物として投与可能であり、またはこのような疾患、および/またはこのような疾患に伴う症状の治療に有用な他の薬剤との混合物もしくは組み合わせによって投与可能である。活性化合物は、混合物として投与することも可能なほか、ステロイド、膜安定剤、5LO阻害剤、ロイコトリエンの合成および受容体の阻害剤、IgEイソタイプスイッチもしくはIgE合成、IgGイソタイプスイッチもしくはIgG合成の阻害剤、β-アゴニスト、トリプターゼ阻害剤、アスピリン、COX阻害剤、メトトレキセート、抗TNF剤、リツキシマブ、PD4阻害剤、p38阻害剤、PDE4阻害剤、および抗ヒスタミン剤ほかの、他の疾患もしくは病気の治療に有用な薬剤と組み合わせて投与することもできる。活性化合物は、プロドラッグの形状で、そのものを投与可能なほか、活性化合物もしくはプロドラッグを含む薬学的組成物として投与することができる。
【0160】
本発明の活性化合物(または、そのプロドラッグ)を含む薬学的組成物は、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣化、粉末化、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥の過程の手段で作製することができる。本組成物は、活性化合物の、薬学的に使用可能な調製物への加工を容易にする、1種類もしくは複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、添加剤、または補助剤を使用する従来の様式で製剤化することができる。
【0161】
活性化合物またはプロドラッグは、薬学的組成物そのものに製剤化が可能なほか、既に述べたように、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、または薬学的に許容される塩の形状に製剤化することができる。典型的には、このような塩は、対応する遊離酸および遊離塩基より水溶液への可溶性が高いが、対応する遊離酸および遊離塩基より低い溶解性を有する塩も生成可能である。
【0162】
本発明の薬学的組成物は、例えば局所、眼内、経口、口内、全身、鼻内、注射、経皮、直腸内、膣内ほかを含む、実質的にすべての投与様式に適した形状、または、吸入または通気による投与に適した形状を取り得る。
【0163】
局所投与に関しては、活性化合物またはプロドラッグを、当技術分野で周知のように、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化することができる。
【0164】
全身用製剤は、例えば皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、または腹腔内への注射による投与を目的として設計された製剤、ならびに経皮、経粘膜、経口、または肺を介した投与用に設計された製剤を含む。
【0165】
有用な注射用調製物は、水性または油性のビヒクル中における活性化合物の無菌性の懸濁液、溶液、または乳濁液を含む。組成物は、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化用剤を含む場合もある。注射用の製剤を、単位投与剤形で、例えばアンプル中に、または複数回分の薬剤の入った容器中で呈示することが可能であり、および追加の保存剤を含めることができる。
【0166】
あるいは注射用製剤を、使用前に、無菌性の発熱物質を含まない水、緩衝液、デキストロース溶液などを含むが、これらに限定されない、適切なビヒクルによる再構成用の粉末状として提供することができる。この目的を達成するために、活性化合物を、凍結乾燥などの当技術分野で公知の任意の手法で乾燥させて、使用前に再構成することができる。
【0167】
経粘膜投与に関しては、透過防御に適した浸透剤が製剤化に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で公知である。
【0168】
経口投与に関しては、薬学的組成物は例えば、結合剤(例えば、α化(pregelatinised)トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶性セルロース、もしくはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、もしくはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン、もしくはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの、薬学的に許容される添加剤と共に従来の手段で作製されたトローチ剤、錠剤、またはカプセル剤の形状を取り得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法によって、例えば糖、フィルム、または腸溶コーティング剤でコーティングすることができる。
【0169】
経口投与用の液体調製物は、例えばエリキシル、溶液、シロップ、もしくは懸濁液の形状を取り得るほか、使用前における水や他の適切なビヒクルによる再構成用の乾燥生成物として存在することができる。このような液体調製物は、従来の手段で、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンやアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、cremophore(商標)、または分留(fractionated)植物油);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp-ヒドロキシ安息香酸プロピル、またはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加剤によって調製することができる。このような調製物には、適切であれば、緩衝塩、保存剤、香味剤、着色剤、および甘味剤を含めることもできる。
【0170】
経口投与用の調製物は適切には、当技術分野で周知なように、活性化合物またはプロドラッグの制御放出が可能となるように製剤化することができる。
【0171】
口内投与の場合は、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形状とすることができる。
【0172】
直腸内および膣内への投与経路の場合は、活性化合物は、溶液(停留浣腸剤用)、坐剤、またはカカオバターや他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む軟膏として製剤化することができる。
【0173】
経鼻投与、または吸入もしくは通気による投与の場合は、活性化合物またはプロドラッグは好都合には、エアロゾルスプレーの形状で加圧容器またはネブライザーから、適切な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、過フッ化炭化水素、二酸化炭素、または他の適切な気体を使用して送達することができる。加圧されたエアロゾルの場合は、単位投与量は、計量された量を送達するバルブを付与することで決定することができる。吸入器または注入器に使用されるカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンを含むカプセル剤およびカートリッジ)は、化合物の粉末混合物、および乳糖やデンプンなどの適切な粉末基剤を含むように製剤化することができる。
【0174】
市販の経鼻噴霧装置を使用する、経鼻投与に適した水性懸濁製剤の特定の例は、以下の成分を含む:活性化合物またはプロドラッグ(0.5〜20 mg/ml);塩化ベンザルコニウム(0.1〜0.2 mg/mL);ポリソルベート80(TWEEN(登録商標) 80;0.5〜5 mg/ml);カルボキシメチルセルロースナトリウムまたは微結晶性セルロース(1〜15 mg/ml);フェニルエタノール(1〜4 mg/ml);およびデキストロース(20〜50 mg/ml)。最終懸濁物のpHは、約pH 5〜pH 7の範囲に調節することが可能であり、約pH 5.5のpHが典型的である。
【0175】
吸入を介した化合物の投与、特に本発明の化合物の、このような投与に適した水性懸濁物の別の特定の例は、1〜20 mg/mLの化合物もしくはプロドラッグ、0.1〜1% (v/v)のポリソルベート80(TWEEN(登録商標) 80)、50 mMのクエン酸、および/または0.9%の塩化ナトリウムを含む。
【0176】
眼内投与の場合は、活性化合物またはプロドラッグを、眼への投与に適した溶液、乳濁液、懸濁液などとして製剤化することができる。眼への化合物の投与に適した、さまざまなビヒクルは当技術分野で公知である。特定の非制限的な例は、米国特許第6,261,547号;米国特許第6,197,934号;米国特許第6,056,950号;米国特許第5,800,807号;米国特許第5,776,445号;米国特許第5,698,219号;米国特許第5,521,222号;米国特許第5,403,841号;米国特許第5,077,033号;米国特許第4,882,150号;および米国特許第4,738,851号に記載されている。
【0177】
持続的な送達の場合は、活性化合物またはプロドラッグを、埋め込みまたは筋肉内注射による投与用のデポー製剤として製剤化することができる。活性成分は、適切な高分子材料もしくは疎水性材料によって(例えば、許容される油中の乳濁液として)、またはイオン交換樹脂によって、または、ある程度の可溶性を有する誘導体によって、例えばある程度の可溶性を有する塩として製剤化することができる。あるいは、経皮吸収用の活性化合物を徐々に放出する接着性のディスクまたはパッチとして作製された経皮送達系を使用することができる。この目的を達成するために、活性化合物の皮膚からの浸透を高めるために、浸透促進剤を使用することができる。適切な経皮パッチは例えば、米国特許第5,407,713号;米国特許第5,352,456号;米国特許第5,332,213号;米国特許第5,336,168号;米国特許第5,290,561号;米国特許第5,254,346号;米国特許第5,164,189号;米国特許第5,163,899号;米国特許第5,088,977号;米国特許第5,087,240号;米国特許第5,008,110号;および米国特許第4,921,475号に記載されている。
【0178】
または、他の薬学的送達系を使用することができる。リポソームおよび乳濁液は、活性化合物またはプロドラッグの送達に使用可能な送達用ビヒクルの周知の例である。ジメチルスルホキシド(DMSO)などの特定の有機溶媒も、通常は、より大きな毒性にもかかわらず使用される。
【0179】
薬学的組成物は、望ましいならば、活性化合物を含む1種類もしくは複数の他の単位投与剤形を含めることが可能なパックまたはディスペンサー装置中に収めることができる。このようなパックには例えば、金属またはプラスチック製のフォイル(ブリスターパックなど)を含めることができる。パックまたはディスペンサー装置には、投与に関する指示書を添付することができる。
【0180】
有効投与量
本発明の活性化合物またはプロドラッグ、またはこれらの組成物は一般に、意図された結果を達成するのに有効な量で、例えば治療対象となる特定の疾患を治療もしくは予防するのに有効な量で使用される。本発明の活性化合物は、治療的有用性を達成するために治療目的で、または予防的な利益を達成するために予防目的で投与され得る。治療的有用性という表現は、治療対象となる基礎疾患の除去もしくは改善、および/または、基礎疾患に未だ罹患しているにもかかわらず、感情もしくは状態の改善について患者が報告するような、基礎疾患に伴う1つもしくは複数の症状の除去もしくは改善を意味する。例えば、アレルギー患者への化合物の投与によって、基礎となるアレルギー反応が除去または改善される場合だけでなく、重症度の低下、またはアレルゲンへの曝露後のアレルギーに伴う症状の期間の短縮を患者が報告する場合にも、治療的有用性がもたらされる。別の例として、喘息における治療的有用性は、喘息発作の発生後における呼吸の改善、または喘息エピソードの頻度もしくは重症度の低下を含む。治療的有用性は、改善が見られるか否かにかかわらず、疾患の進行の停止または減速も含む。
【0181】
予防的投与の場合は、本活性化合物を、既に記載された疾患の1つを発症するリスクのある患者に投与することができる。例えば仮に、患者が特定の薬剤に対するアレルギーを有することが不明な場合は、薬剤に対するアレルギー反応を回避または改善するために、薬剤の投与前に化合物を投与することができる。あるいは、基礎疾患であると診断された患者における症状の発現を避けるために、予防的投与を実施することができる。例えば、化合物をアレルギー患者に、推定されるアレルゲン曝露の前に投与することができる。化合物は、疾患の発症を予防するために、上記の病気の1つであることが公知の薬剤に繰返し曝露された健常個体に予防的に投与することもできる。例えば化合物を、アレルギーの発生を予防するために、アレルギーを誘発することが公知であるアレルゲン(ラテックスなど)に繰返し曝露された健常者に投与することができる。あるいは化合物を喘息患者に、喘息エピソードの重症度を和らげるか、または全て避けるために、喘息発作を引き起こす活動に参加する前に投与することができる。
【0182】
投与される化合物の量は例えば、治療対象の特定の徴候、投与様式、所望の利益が予防的または治療的か、治療対象の徴候の重症度、ならびに患者の年齢および体重、特定の活性化合物の生物学的利用能などを含む、さまざまな因子に依存する。有効投与量の決定は、当業者の能力の十分な範囲内にある。
【0183】
有効投与量は、最初にインビトロアッセイ法で推定することができる。例えば、動物に使用するための初期投与量は、インビトロのCHMCまたはBMMC、および実施例セクションに記載された他のインビトロアッセイ法などのインビトロアッセイ法で測定される特定の化合物のIC50か、それを上回る活性化合物の循環血中濃度または血清濃度が達成されるように製剤化することができる。特定の化合物の生物学的利用能を考慮した、このような循環血中濃度または血清濃度を達成するための投与量を計算することは、当業者の能力の十分な範囲内にある。手引きに関しては、Fingl & Woodbury、「General Principles」、In: Goodman and Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics、第1章、pp.1〜46、最新版、Pagamonon Press、および同文献に引用された参考文献を参照されたい。
【0184】
初期投与量は、動物モデルなどのインビボデータから推定することもできる。上記のさまざまな疾患の治療用または予防用の化合物の有効性の検討に有用な動物モデルは当技術分野で周知である。過敏症またはアレルギー反応の適切な動物モデルは、Foster, 1995, Allergy 50(21 Suppl):6-9, discussion 34-38、およびTumas et al., 2001, J. Allergy Clin. Immunol. 107(6):1025-1033に記載されている。アレルギー性鼻炎の適切な動物モデルについては、Szelenyi et al., 2000, Arzneimittelforschung 50(11):1037-42;Kawaguchi et al., 1994, Clin. Exp. Allergy 24(3):238-244、およびSugimoto et al., 2000, Immunopharmacology 48(1):1-7に記載されている。アレルギー性結膜炎の適切な動物モデルについては、Carreras et al., 1993, Br. J. Ophthalmol. 77(8):509-514;Saiga et al., 1992, Ophthalmic Res. 24(1):45-50;およびKunert et al., 2001, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 42(11):2483-2489に記載されている。全身肥満細胞症の適切な動物モデルについては、O'Keefe et al., 1987, J. Vet. Intern. Med. 1(2):75-80、およびBean-Knudsen et al., 1989, Vet. Pathol. 26(1):90-92に記載されている。高IgE症候群の適切な動物モデルについては、Claman et al., 1990, Clin. Immunol. Immunopathol. 56(1):46-53に記載されている。B細胞リンパ腫の適切な動物モデルについては、Hough et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13853-13858、およびHakim et al., 1996, J. Immunol. 157(12):5503-5511に記載されている。アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹、およびアトピー性喘息などのアトピー性疾患の適切な動物モデルについては、Chan et al., 2001, J. Invest. Dermatol. 117(4):977-983、およびSuto et al., 1999, Int. Arch. Allergy Immunol. 120(Suppl 1):70-75に記載されている。当業者であれば、このような情報をルーチンに適合させて、ヒトへの投与に適切な投与量を決定することができる。他の適切な動物モデルは、実施例セクションに記載されている。
【0185】
投与量は典型的には、約0.0001 mg/kg/日または0.001 mg/kg/日または0.01 mg/kg/日〜約100 mg/kg/日の範囲にあるが、他の因子、化合物の活性、その生物学的利用能、投与様式、および上記のさまざまな因子に依存して、より多いか、またはより少ない場合がある。治療効果または予防効果を十分維持するための化合物の血漿レベルを提供するために、投与量および投与間隔は個別に調節することができる。例えば化合物を、特に投与様式、治療対象の特定の徴候、および処方する医師の判断を考慮して、週に1回、週に数回(例えば、1日おき)、1日に1回、または1日に数回、投与することができる。局所・局部投与(local topical administration)などの局所投与または選択的な取り込みの場合は、活性化合物の有効局所濃度を血漿濃度に関連づけることができる。当業者であれば、有効局所投与量を、過度の実験を行うことなく最適化することができるであろう。
【0186】
好ましくは化合物は、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療的または予防的な利益を提供する。化合物の毒性は、標準的な薬学的手順で見極めることができる。毒性作用と治療効果(または予防効果)間の用量比が治療係数である。高い治療係数を示す化合物が好ましい。
【0187】
本発明の、前述のおよび他の局面は、以下の代表的な実施例と関連してよりよく理解することができる。
【0188】
実施例
実施例1.5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン

700μLのEtOH中の、40 mgの2-クロロ-5-フルオロ-N4-[3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-4-ピリミジンアミンと、48 mgの3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシアニリン塩酸塩の混合物をマイクロ波で180℃で1時間、加熱した。生じた沈殿を吸引濾過して回収し、乾燥し、脱イオン水に懸濁し、およびpHを希炭酸水素ナトリウム溶液でpH 5に調整し、鹹水を添加し、および懸濁物を短時間、超音波処理した後に、固形分を吸引濾過して回収し、乾燥し、25 mgの収率43%の所望の生成物である5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミンを得た。

【0189】
実施例2〜13は、実施例1に記載の手順で作製した。
【0190】
実施例2.N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン


【0191】
実施例3.N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン


【0192】
実施例4.N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン


【0193】
実施例5.5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン


【0194】
実施例6.N4-[2,2-ジフルオロ-3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン


【0195】
実施例7.5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-4-(2-ピリジルメチル)-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン


【0196】
実施例8.5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(1,3-(2H)-4,4-ジメチルイソキノリンジオン-7-イル)-2,4-ピリミジンジアミン


【0197】
実施例9.(R/S)-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[2-メチル-3-オキソ-4-(4-メトキシベンジル)-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン


【0198】
実施例10.(R/S)-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[2-メチル-3-オキソ-4-(4-メトキシベンジル)-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン


【0199】
実施例11.5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(2,2,4-トリメチル-1,1,3-トリオキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル)-2,4-ピリミジンジアミン


【0200】
実施例12.5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(4-メチル-3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル)-2,4-ピリミジンジアミン


【0201】
実施例13.N4-(3,4-ジヒドロ-2H-2,2-ジメチル-5-ピリド[1,4]オキサジン-6-イル)-N2-[3,4-ジメトキシフェニル-5-ヒドロキシフェニル]-5-フルオロ-2,4-ピリミジンジアミン


【0202】
FcεRI受容体を介した脱顆粒の阻害
本発明の2,4-ピリミジンジアミン化合物が、IgEによる脱顆粒を阻害する能力は、ヒトの培養マスト細胞(CHMC)および/またはマウスの骨髄由来細胞(BMMC)を対象とした、さまざまな細胞学的アッセイ法で明らかにされる。脱顆粒の阻害は、顆粒特異的因子であるトリプターゼ、ヒスタミン、およびヘキソサミニダーゼの放出を定量することで、低細胞密度と高細胞密度の両方において測定される。脂質メディエーターの放出および/または合成の阻害は、ロイコトリエンLTC4の放出を測定することで評価され、ならびにサイトカインの放出および/または合成の阻害は、TNF-α、IL-6、およびIL-13を定量することでモニタリングされる。トリプターゼおよびヘキソサミニダーゼは、個々の実施例に記載された手順で、蛍光発生基質を使用して定量される。ヒスタミン、TNFα、IL-6、IL-13、およびLTC4は、以下の市販のELISAキットを使用して定量される:ヒスタミン(Immunotech #2015, Beckman Coulter)、TNFα(Biosource #KHC3011)、IL-6(Biosource #KMC0061)、IL-13(Biosource #KHC0132)、およびLTC4(Cayman Chemical #520211)。さまざまなアッセイ法のプロトコルを以下に示す。
【0203】
ヒトのマスト細胞および好塩基球の培養
ヒトのマスト細胞および好塩基球をCD34陰性の前駆細胞から、以下の手順で培養する(内容が参照により本明細書に組み入れられる、2001年11月8日に出願された同時係属の米国特許出願第10/053,355号に記載された方法も参照)。
【0204】
STEMPRO-34完全培地の作製
STEMPRO-34完全培地(「CM」)を作製するために、250 mLのSTEMPRO-34(商標)無血清培地(「SFM」;GibcoBRL、カタログ番号10640)を濾過フラスコに添加した。これに13 mLのSTEMPRO-34 Nutrient Supplement(「NS」;GibcoBRL、カタログ番号10641)(以下に詳述する手順で作製)を添加した。NS容器を約10 mLのSFMで洗浄し、洗浄液を濾過フラスコに添加した。5 mLのL-グルタミン(200 mM;Mediatech、カタログ番号MT 25-005-CI)、および5 mLの100×ペニシリン/ストレプトマイシン(「pen-strep」;HyClone、カタログ番号SV30010)の添加後に、容積をSFMで500 mLに調整し、溶液を濾過した。
【0205】
CMの作製時の最も可変的な局面は、NSを溶解して混合してからSFMを添加する方法である。NSは、37℃の水浴中で溶解し、完全に溶解するまで、ボルテックスミキサーによる攪拌や振盪ではなく、弱く攪拌すべきである。弱い攪拌中は、任意の脂質が溶液中に残存していないか否か注意する。仮に脂質が存在し、およびNSの外見が均一でなければ、これを水浴に戻し、外見が均一になるまで弱い攪拌過程を繰り返す。この成分は、場合によっては直ちに、場合によっては数回の弱い攪拌サイクル後に溶液中に移り、また場合によっては全く移らない。仮に、数時間を経過してもNSが溶液中に移らない場合は、これを廃棄し、新鮮なユニットを溶解する。溶解後に均一に見えないNSは使用すべきでない。
【0206】
CD34+細胞の増殖
比較的少数(1〜5×106細胞)のCD34陽性(CD34+)細胞の開始時の集団を、後述する培地および方法を使用して、比較的多数のCD34陰性前駆細胞(約2〜4×109細胞)に増殖した。CD34+細胞(1人のドナーに由来)は、Allcells(Berkeley, CA)から入手した。Allcells製のCD34+細胞の質および数には、ある程度のばらつきがあるので、新規に提供された細胞を15 mLのコニカルチューブに移し、使用前にCMで10 mLに調整した。
【0207】
0日目に、生存(位相輝形)細胞の数を測定し、および細胞を1200 rpmで遠心分離して沈殿を得た。細胞を、200 ng/mLの組換えヒト幹細胞因子(「SCF」;Peprotech、カタログ番号300-07)および20 ng/mLのヒトflt-3リガンド(Peprotech、カタログ番号300-19)(「CM/SCF/flt-3培地」)を含むCM中に、275,000細胞/mLの密度となるように再懸濁した。約4日目または約5日目に、培養物の密度を、細胞数を測定することで確認し、および培養物を、275,000細胞/mLの密度となるように、新鮮なCM/SCF/flt-3培地で希釈した。約7日目に、培養物を滅菌済みのチューブに移して細胞数を測定した。細胞を1200 rpmで遠心分離し、および275,000細胞/mLの密度となるように、新鮮なCM/SCF/flt-3培地中に懸濁した。
【0208】
このサイクルを0日目から開始して、増殖期間中に計3〜5回、繰り返した。
【0209】
培養が大規模で、かつ複数のフラスコ中に維持され、および再懸濁される場合は、全てのフラスコの内容物を1つの容器にまとめてから細胞数を測定する。こうすることで正確な細胞数が測定され、および集団全体に関して、処理のある程度の均一性が提供される。集団全体の混入汚染を避けるために、各フラスコを混入に関して個別に顕微鏡下でチェックしてから混合する。
【0210】
17〜24日目に培養物は減少を始める場合があり(すなわち細胞総数の約5〜10%が死滅する)、以前ほど速やかに増殖しなくなる。培養の完全な失敗は、最短で24時間以内に生じる場合があるため、次に細胞を、この期間中、毎日モニタリングする。低下が始まったら細胞数を測定し、850 rpmで15分間、遠心分離し、CM/SCF/flt-3培地に、350,000細胞/mLの密度となるように再懸濁し、さらに1回または2回の培養物の分裂を誘導する。細胞を毎日モニタリングすることで、培養の失敗を避ける。
【0211】
前駆細胞の培養で15%を上回る細胞死が明らかになり、および培養物中に残渣が見られるようになれば、CD34陰性の前駆細胞は分化を開始する状態にある。
【0212】
CD34陰性前駆細胞の粘膜マスト細胞への分化
増殖したCD34陰性前駆細胞を、分化型の粘膜マスト細胞に変換するために、第2の相を実施する。このような粘膜の培養ヒトマスト細胞(「CHMC」)は、臍帯血から単離されたCD34+細胞に由来し、および上述した手順で、CD34陰性前駆細胞の増殖集団を形成するように処理される。CD34陰性前駆細胞を作製するために、培養の再懸濁サイクルは、培養物が425,000細胞/mLの密度の時点で添加され、および約4日目または約5日目に、細胞数の測定を行うことなく、15%の追加の培地が添加される点を除いて上記と同じとした。また培地のサイトカイン組成物を、SCF(200 ng/mL)および組換えヒトIL-6(200 ng/mL;Peprotech、カタログ番号200-06を、滅菌済みの10 mM酢酸で100μg/mLに再構成したもの)(「CM/SCF/IL-6」培地)を含むように改変した。
【0213】
第I相と第II相は合計して約5週間を要する。培養物中の、ある程度の細胞死および残渣は第1〜3週間中に明らかとなり、および第2〜5週間中に、培養物の少パーセンテージは懸濁物中から消失して、培養容器の壁面に張り付く。
【0214】
第I相中では、各サイクルの7日目に培養物を再懸濁するので、集団全体の均一性を図るために、全フラスコの内容物を1つの容器にまとめた後に細胞数を測定する。集団全体の混入を避けるために、各フラスコを対象に、顕微鏡下で混入汚染に関して個別にチェックを行ってからまとめる。
【0215】
フラスコをまとめる際、容積の約75%を共同の容器(communal container)に移し、約10 mL程度をフラスコ内に残す。残分を含むフラスコを強く横からラッピングし(rap)、張り付いた細胞を剥がす。ラッピングを、最初のラップに対して直角の方向に繰り返すことで、細胞を完全に剥がす。
【0216】
フラスコを45度の角度に数分間、傾けた後に、残分を測定用容器へ移した。細胞を950 rpmで15分間、遠心分離後に、1つのフラスコあたり35〜50 mLとなるように添加した(425,000細胞/mLの密度)。
【0217】
CD34陰性前駆細胞の、結合組織型マスト細胞への分化
CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記の手順で調製し、およびトリプターゼ/キマーゼ陽性(結合組織)の表現型が得られるように処理する。この方法は、粘膜のマスト細胞に対する上記の手順で実施する(ただし培地中のIL-6はIL-4と交換)。得られた細胞は、典型的な結合組織のマスト細胞である。
【0218】
CD34陰性前駆細胞の好塩基球への分化
CD34陰性前駆細胞の増殖集団を上記の手順で調製し、および好塩基球の増殖集団を形成するために使用する。CD34陰性細胞を、粘膜のマスト細胞に対する上記の手順で処理する(ただし培地中のIL-6はIL-3(20〜50 ng/mL)と交換)。
【0219】
CHMCの低細胞密度IgE活性化:トリプターゼおよびLTC4アッセイ法
二つ組の96ウェルのU底プレート(Costar 3799)に、2% MeOHおよび1% DMSOを含むMT[137 mM NaCl、2.7 mM KCl、1.8 mM CaCl2、1.0 mM MgCl2、5.6 mMグルコース、20 mM Hepes(pH 7.4)、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma A4503)]で調製した、65μlの化合物希釈物または対照試料を添加する。CHMC細胞(980 rpm、10分間)を沈殿させ、および保温済みのMTに再懸濁する。65μlの細胞を各96ウェルプレートに添加する。個々の特定のCHMCドナーの脱顆粒活性に依存して、ウェルあたり1000〜1500個の細胞をロードする。4回の混合後に、37℃で1時間のインキュベーションを行う。1時間のインキュベーション中に、6×抗IgE溶液[MT緩衝液で1:167に希釈したウサギ抗ヒトIgE(1 mg/ml、Bethyl Laboratories A80-109A)]を調製する。25μlの6×抗IgE溶液を適切なプレートに添加して細胞を刺激する。非刺激対照ウェルには25μlのMTを添加する。2回の混合後に抗IgEを添加する。37℃で30分間、インキュベートする。30分間のインキュベーション中に、20 mMのトリプターゼ基質ストック溶液[(Z-Ala-Lys-Arg-AMC2TFA;Enzyme Systems Products, #AMC-246)]を、トリプターゼアッセイ法緩衝液[0.1 M Hepes(pH 7.5)、10% w/vグリセロール、10μMヘパリン(Sigma H-4898) 0.01% NaN3]で1:2000に希釈する。プレートを1000 rpmで10分間、遠心分離して細胞を沈殿させる。25μlの上清を96ウェルの黒底プレートに移し、100μlの新鮮な希釈済みトリプターゼ基質溶液を各ウェルに添加する。プレートを室温で30分間、インキュベートする。プレートの光学密度を、分光光度計プレートリーダーで355 nm/460 nmで読みとる。
【0220】
ロイコトリエンC4(LTC4)も、適切に希釈された上清試料(試料の測定値が標準曲線上に乗るように、各ドナー細胞集団に関して経験的に決定される)を対象に、ELISAキットを使用して、サプライヤーの指示書に従って定量する。
【0221】
CHMCの高細胞密度IgE活性化:脱顆粒(トリプターゼ、ヒスタミン)、ロイコトリエン(LTC4)、およびサイトカイン(TNFalpha, IL-13)アッセイ法
培養ヒトマスト細胞(CHMC)を、IL-4(20 ng/ml)、SCF(200 ng/ml)、IL-6(200 ng/ml)、およびヒトIgE(Cortx Biochem社のCP 1035K、世代にあわせて100〜500 ng/ml)を含むCM培地で、5日間かけて感作する。感作後、細胞数を測定し、ペレットを得て(1000 rpm、5〜10分)、MT緩衝液に1〜2×106細胞/mlとなるように再懸濁する。100μlの細胞懸濁物を各ウェルに、および100μlの化合物希釈物に添加する。最終ビヒクル濃度は0.5% DMSOとする。37℃(5% CO2)で1時間インキュベートする。1時間の化合物の処理後に、細胞を6×抗IgEで刺激する。細胞を含むウェルを混合し、プレートを37℃(5% CO2)で1時間インキュベートする。1時間のインキュベーション後に、細胞を沈殿させ(10分、1000 RPM)、上清を1ウェルあたり200μlを、ペレットが剥がれないように注意しながら回収する。上清を含むプレートを氷上に移す。7時間の過程(後述)中に、1:500に希釈済みの上清を対象に、トリプターゼアッセイ法を実施する。細胞ペレットを、0.5% DMSOおよび対応する濃度の化合物を含む240μlのCM培地に再懸濁する。CHMC細胞を7時間、37℃(5% CO2)でインキュベートする。インキュベーション後に、細胞を沈殿させ(1000 RPM、10分)、および1ウェルあたり225μlを回収し、ならびにELISAの実施まで-80℃で保存する。適切に希釈された試料(各ドナー細胞集団について、試料の測定値が標準曲線に乗るように経験的に決定)を対象に、ELISAをサプライヤーの指示書に従って実施する。
【0222】
上流IgE受容体カスケードの阻害
イオノマイシン誘導型のマスト細胞の脱顆粒に関するアッセイ法を、CHMCの低密度IgE活性化アッセイ法に関して記載された手順で実施する(ただし1時間のインキュベーション中は、6×イオノマイシン溶液[MT緩衝液(最終2μM)で1:416.7となるように希釈したMeOH(ストック)中の5 mMイオノマイシン(Sigma I-0634)]を調製し、および細胞を、25μlの6×イオノマイシン溶液を適切なプレートに添加することで刺激する)。
【0223】
生化学的アッセイ法におけるSykキナーゼの阻害
化合物を、Sykキナーゼを使用する生化学的な蛍光偏光アッセイ法で、ペプチド基質のリン酸化を触媒するSykキナーゼを阻害する能力に関して検討する。この実験では、化合物をキナーゼ緩衝液(20 mM HEPES、pH 7.4、5 mM MgCl2、2 mM MnCl2、1 mM DTT、0.1 mg/mLアセチル化ウシγグロブリン)中で1% DMSOとなるように希釈する。1% DMSO(最終0.2% DMSO)中の化合物をATP/基質溶液と室温で混合する。Sykキナーゼ(Upstate, Lake Placid NY)を、20μLの最終反応容積に添加し、反応物を室温で30分間インキュベートした。最終的な酵素反応条件は、20 mM HEPES、pH 7.4、5 mM MgCl2、2 mM MnCl2、1 mM DTT、0.1 mg/mLアセチル化ウシγグロブリン、0.125 ng Syk、4μM ATP、2.5μMペプチド基質(ビオチン-EQEDEPEGDYEEVLE-CONH2、SynPep Corporation)とした。反応を停止するために、EDTA(最終10 mM)/抗ホスホチロシン抗体(最終1×)/蛍光ホスホペプチドトレーサー(最終0.5×)をFP希釈緩衝液に計40μLとなるように、製造業者(PanVera Corporation)の指示書に従って添加する。プレートを遮光下で室温で30分間インキュベートする。プレートをPolarion蛍光偏光プレートリーダー(Tecan)で読みとる。データを、Tyrosine Kinase Assay Kit, Green(PanVera Corporation)に付属のホスホペプチド競合分子との競合によって作製された較正曲線を使用して、存在するホスホペプチド量に変換する。
【0224】
LDトリプターゼアッセイ法で検討時に、実施例1〜13の3-ヒドロキシフェニル-2,4-ピリミジンジアミン化合物は全て、以下の表1に示すように、アッセイ法で5μM未満の活性を有することが判明した(表中、Aは1μM未満の活性を示し、およびBは5μM未満の活性を示す)。さらに、3,4,5-トリメトキシフェニル対応分子に対して検討された2-ヒドロキシフェニル化合物から、約10%〜約500%の力価の改善が判明した。
【0225】
【表1】

【0226】
前述の発明は、理解を促すために、ある程度詳細に説明したが、ある程度の変更および修正が、添付の特許請求の範囲内で実施可能なことは明らかであろう。したがって、記載された態様は、説明的であり制限的ではないと見なされ、ならびに本発明は、本明細書に記載された詳細に制限されず、添付の特許請求の範囲内および等価物内で修正される場合がある。
【0227】
本出願で引用された全ての文献および特許関連の参考文献は、全ての目的に関して、参照により本出願に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、またはその立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、もしくはプロドラッグ:

式中、Yは、S、O、SO、SO2、およびC(R7)2からなる群より選択され;
個々のR35は独立に、水素、(C1-C4)アルキル、およびハロからなる群より選択されるか、または両方のR35は、これらが結合する炭素とともにカルボニル基を形成し;
Wは、C=O、C=S、C=NH、C(R7)2、およびNR37からなる群より選択され;
Zは、C=OまたはNR37であり、ZおよびWの両方ともがNR37である訳ではないならば、ならびにZがC=Oならば、WはC(R7)2またはNR37であり;
Xは、CHまたはNであり;
個々のR31は独立に(C1-C4)アルキルであるか、または両方のR31はともに、任意で1〜2個の(C1-C4)アルキル基で置換されるか、または1個の(C3-C7)スピロシクロアルキル基で置換される(C1-C2)アルキレノ基を形成し;
個々のR7は独立に、水素または(C1-C4)アルキルであり;ならびに
R37は、任意でフェニルまたはピリジルで置換される水素またはメチルであり、該フェニルまたはピリジルは任意で(C1-C4)アルコキシで置換される。
【請求項2】
YがOまたはSである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
YがOである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
両方のR35が同じである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
両方のR35がメチルである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
WがC=OまたはC=Sである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
WがC=Oである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
ZがNR37である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
ZがNHである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
XがNである、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
R31がメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
ZがNR37であり、かつR37がメチル、2-ピリジルメチル、または4-メトキシベンジルである、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
以下からなる群より選択されるか、またはその立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、もしくはプロドラッグである、請求項1記載の化合物:
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-[2,2-ジメチル-3-オキソ-ピリド[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン;
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-[2,2-ジフルオロ-3-オキソ-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-2,4-ピリミジンジアミン;
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[3-オキソ-4-(2-ピリジルメチル)-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
N4-(3,4-ジヒドロ-2H-2,2-ジメチル-5-ピリド[1,4]オキサジン-6-イル)-N2-[3,4-ジメトキシフェニル-5-ヒドロキシフェニル]-5-フルオロ-2,4-ピリミジンジアミン;
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(1,3-(2H)-4,4-ジメチルイソキノリンジオン-7-イル)-2,4-ピリミジンジアミン;
(R/S)-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[2-メチル-3-オキソ-4-(4-メトキシベンジル)-ベンズ[1,4]オキサジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
(R/S)-5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-[2-メチル-3-オキソ-4-(4-メトキシベンジル)-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル]-2,4-ピリミジンジアミン;
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(2,2,4-トリメチル-1,1,3-トリオキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル)-2,4-ピリミジンジアミン;および
5-フルオロ-N2-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-N4-(4-メチル-3-オキソ-ベンゾ[1,4]チアジン-6-イル)-2,4-ピリミジンジアミン。
【請求項14】
請求項1記載の化合物、その立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、またはプロドラッグ、および担体、賦形剤、または希釈剤を含む組成物。
【請求項15】
細胞に、シグナル伝達カスケードを阻害するのに有効な量の、請求項1記載の化合物、その立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、またはプロドラッグを接触させる段階を含む、IgE受容体を発現する細胞のIgEシグナル伝達カスケードを阻害する方法。
【請求項16】
Fc受容体シグナル伝達カスケードを阻害するのに有効な、請求項1記載の化合物、その立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、またはプロドラッグを対象に投与する段階を含む、対象におけるFc受容体シグナル伝達カスケードを阻害する方法。
【請求項17】
Fc受容体が、FcαRI、FcγRI、FcγRIII、およびFcεRIから選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
以下の段階を含む、マスト細胞または好塩基球の脱顆粒を特徴とする疾患を治療する方法:そのような疾患に罹患した対象に、疾患を治療するのに有効な量の、請求項1記載の化合物、その立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、またはプロドラッグを投与する段階。
【請求項19】
疾患が、組織炎症と関連する疾患である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
組織炎症と関連する疾患が、過敏性腸症候群、痙攣性結腸、または炎症性腸疾患である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
疾患にSykキナーゼが影響する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
対象の自己免疫疾患を治療もしくは予防するのに有効な量の、請求項1記載の化合物、その立体異性体、塩、水和物、溶媒和化合物、N-オキシド、またはプロドラッグを対象に投与する段階を含む、対象の自己免疫疾患および/またはそれに伴う1つもしくは複数の症状を治療または予防する方法。
【請求項23】
自己免疫疾患が、1つの器官または1つの細胞タイプの自己免疫疾患であるとしばしば称される自己免疫疾患、および全身性自己免疫疾患を含むとしばしば称される自己免疫疾患から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
医用薬剤を製造するための、請求項1〜13のいずれか一項記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−527496(P2009−527496A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555516(P2008−555516)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/062311
【国際公開番号】WO2007/120980
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(504294145)ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (63)
【Fターム(参考)】