説明

自己流動性水硬性組成物、モルタル及び床の施工方法

【課題】 本発明は、硬化時に長さ変化が小さく、特に硬化時に膨張−収縮の変化の小さなセルフレベリング性を有する水硬性組成物、及びこの水硬性組成物を用いる床の施工方法及び改修方法を提案することである。
【解決手段】 アルミナセメント30〜70質量部、ポルトランドセメント0〜45質量部(但し0質量部を除く)及び石膏15〜50質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる水硬性成分と、凝結調整剤と、流動化剤と、増粘剤とを含む自己流動性水硬性組成物であり、
凝結調整剤は、リチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩を含むことを特徴とする自己流動性水硬性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化時の長さ変化、特に収縮の小さなアルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の水硬性成分を含むセルフレベリング材として用いることができる自己流動性水硬性組成物及び、これら組成物と水とを混練して得られるモルタルに関する。
さらに本発明は、モルタルを打設する床の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己流動性水硬性組成物として、特許文献1にアルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏、高炉スラグからなる水硬性成分と、リチウム塩とホウ酸化合物よりなる凝結調整剤と、減水剤と、増粘剤とからなる組成物が開示されている。
特許文献2には、アルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏、高炉スラグからなる水硬性成分と、減水剤と、増粘剤とからなる組成物が開示されている。
【0003】
床の補修方法として、特許文献3には、ポルトランドモルタルとアルミナモルタルとを主材とする粉体と、アスフアルト系エマルジョンと合成樹脂系エマルジョンとからなる混和液と、を含有する助材を床面に直接に塗布し、その上に、仕上げモルタルを塗布すること、を特徴とする床の補修工法が開示されています。
また、特許文献4には、コンクリートまたはモルタルの床面の、補修を要する領域に、当該床面に対して浸透性を有する樹脂溶液と、エポキシ樹脂系の接着剤とをこの順に塗布し、次いで接着剤が完全に硬化する前の状態で、その上に樹脂モルタルを塗り重ねて仕上層を形成することを特徴とする床面の補修方法が開示されています。
【0004】
【特許文献1】特開2000−211961号公報
【特許文献2】特開2000−302519号公報
【特許文献3】特開平11−049550号公報
【特許文献4】特開平10−299266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セルフレベリング性の水硬性組成物は、水と混練して流し込むだけで面精度の優れた平面を形成できるので、その自己平滑性を利用してコンクリート構造物の表面仕上げ作業の省力化、効率化のため、建築用左官工事仕上げ工法を主体として広く普及している。
タイル、大理石、人工石などの無機材料、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの樹脂性材料、コンパネなどの木製材料、鋼板などの金属製材料、又はこれらが複数混在している新設又は既設の床面に、粘着剤層と布層とを両外層に有する積層シートを貼り付け、その上面に、直接速硬性のアルミナセメント系のセルフレベリング材を施工する方法が提案されている。この施工方法は、床材などの産業廃棄物量を抑制し、早期に新たな床を施工できる。
この施工方法では、セルフレベリング材を積層シートの上に直接打設するため、セルフレベリング材の硬化時に長さ変化が大きいと、積層シートが床面より剥がれたり、一部膨れが起きる場合が考えられ、特に硬化時に最大膨張したところより収縮が大きい場合に影響が大きい。
本発明は、硬化時に長さ変化が小さく、特に硬化時に膨張−収縮の変化の小さなセルフレベリング性を有する水硬性組成物と、これらと水とを混練して得られるモルタル、さらに新設及び/又は既設の床面に、粘着剤層と布層とを両外層に有する少なくとも2層に積層された粘着シートの粘着剤層を貼り付け、その上面に、硬化時に長さ変化の小さなセルフレベリング性を有するモルタルを打設する床の施工方法及び改修方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一は、アルミナセメント30〜70質量部、ポルトランドセメント0〜45質量部(但し0質量部を除く)及び石膏15〜50質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる水硬性成分と、凝結調整剤と、流動化剤と、増粘剤とを含む自己流動性水硬性組成物であり、
凝結調整剤は、リチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩を含むことを特徴とする自己流動性水硬性組成物である。
【0007】
本発明の第ニは、本発明の自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルである。
【0008】
本発明の第三は、自己流動性水硬性組成物と水との配合物を硬化させて得られる硬化物である。
【0009】
本発明の第四は、粘着剤層と布層とを両外層に有する少なくとも2層に積層された粘着シートを用い、
床の上面に、粘着シートの粘着剤層を貼り付けた後、
粘着シートの布層側にモルタルを打設することを特徴とする床の施工方法であり、
モルタルが本発明のモルタルを用いることを特徴とする床の施工方法である。
【0010】
本発明の自己流動性水硬性組成物の好ましい態様を以下に示す。好ましい態様は複数組み合わせることができる。
1)水硬性成分は、アルミナセメント35〜50質量部、ポルトランドセメント25〜42質量部及び石膏20〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)であること。
1)酒石酸塩及び重炭酸塩は、酒石酸ニアルカリ金属塩及び重炭酸ナトリウムであること。
2)リチウム塩は、炭酸リチウムであること。
3)自己流動性水硬性組成物は、無機成分を含むこと、さらに無機成分は水硬性成分100質量部に対して、30〜350質量部を含むこと、特に無機成分は高炉スラグであること。
4)自己流動性水硬性組成物は、水硬性成分100質量部に対して、細骨材60〜300質量部を含むこと。
5)自己流動性水硬性組成物は、消泡剤を含むこと。
6)自己流動性水硬性組成物は、硬化時の長さ変化率の収縮が−0.08〜0%の範囲であること。
7)自己流動性水硬性組成物は、水と混練してフロー値200mm以上のモルタルを得ることができること。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自己流動性水硬性組成物は、セルフレベリング性を有するモルタルを製造することができ、硬化時の長さ変化が小さく、特に硬化時の最大膨張から材齢28日目までの収縮の変化が小さい。
本発明の自己流動性水硬性組成物は、セルフレベリング性を有するモルタルを製造することができ、硬化時の長さ変化の収縮が小さいために、粘着シート工法による床の施工方法(改修方法)に用いることができ、粘着シートの剥がれや膨れを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
水硬性成分は、アルミナセメント30〜70質量部、ポルトランドセメント0〜45質量部及び石膏15〜50質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、さらに好ましくはアルミナセメント30〜50質量部、ポルトランドセメント23〜45質量部及び石膏15〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、より好ましくはアルミナセメント35〜50質量部、ポルトランドセメント25〜42質量部及び石膏20〜27質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成を用いることにより、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化の少ない硬化物を得ることができるために好ましい。
【0013】
アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、何れも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
【0014】
ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメントなどを用いるができる。
【0015】
石膏は、無水、半水等の各石膏がその種を問わず1種又は2種以上の混合物として使用できる。石膏は、硬化後の寸法安定性保持成分として働くものである。
【0016】
自己流動性水硬性組成物は、必要に応じてさらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカなどの無機成分を含むことができ、特に高炉スラグを含むことにより、乾燥収縮による硬化体の耐クラック性を高めることができる。
自己流動性水硬性組成物において、無機成分の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜350質量部、より好ましくは30〜200質量部、さらに好ましくは40〜150質量部、特に好ましくは50〜130質量部とするのが好ましい。
【0017】
自己流動性水硬性組成物において、高炉スラグの添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜350質量部、より好ましくは30〜200質量部、さらに好ましくは40〜150質量部、特に好ましくは50〜130質量部とするのが好ましく、少なすぎると収縮が大きくなり、多すぎると強度低下を招くことがある。
高炉スラグは、JIS・A−6206に規定されるブレーン比表面積3000cm/g以上のものを用いることができる。
【0018】
自己流動性水硬性組成物は、必要に応じてさらに細骨材を含むことができる。
細骨材は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは50〜500質量部、より好ましくは70〜400質量部、さらに好ましくは90〜300質量部、特に好ましくは100〜200質量部の範囲が好ましい。
細骨材としては、粒径2mm以下の骨材、好ましくは粒径0.0075〜1.5mmの骨材、さらに好ましくは粒径0.1〜1mmの骨材、特に好ましくは0.15〜0.85mmの骨材を主成分としている。
細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、アルミナクリンカー、シリカ粉、粘土鉱物、廃FCC触媒、石灰石などの無機質材、ウレタン砕、EVAフォーム、発砲樹脂などの樹脂粉砕物などを用いることができる。
特に細骨材としては、砂類、石英粉末、アルミナクリンカーなどが好ましく用いることが出来る。
細骨材の粒径は、JIS・Z−8801で規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
【0019】
自己流動性水硬性組成物は、必要に応じてさらに樹脂粉末を含むことができる。
樹脂粉末としては、樹脂の粉末化方法などの製法については特に限定されず、公知の製造方法で製造されたものを用いることができる。また樹脂粉末としては、ブロッキング防止剤を主に樹脂粉末の表面に付着しているものを用いることができる。
樹脂粉末は、水性ポリマーディスパーションを噴霧やフリーズドライなどの方法で、溶媒を除去し乾燥した再乳化型の樹脂粉末を用いることが好ましい。
樹脂粉末の粒子径は、315μmふるい上残分が3%以下、さらに300μmふるい上残分が3%以下、特にさらに300μmふるい上残分が2%以下のものを好ましく用いることが出来る。
樹脂粉末は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.1〜40質量部、さらに好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは5〜25質量部を配合したものを用いることができる。
【0020】
樹脂粉末としては、アクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステルなどの成分を一種単独又は二種以上より得られる樹脂の粉末状のものを用いることができる。
樹脂粉末は、酢酸ビニル及びバーサチック酸ビニルエステルから選ばれる少なくとも1種又は2種を含む成分から得られる樹脂粉末が好ましく、特に、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステル/エチレン、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/アクリル酸エステル/エチレン、バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステルなどの共重合物を好ましく用いることが出来る。
【0021】
凝結調整剤は、少なくともリチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩の3成分を含むものである。
自己流動性水硬性組成物は、凝結調整剤としてリチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩の3成分の配合割合を適宜調節することにより、速硬性で、硬化時の長さ変化を小さくすることができる。
凝結調整剤は、水硬性成分100質量部中に、
リチウム塩を好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.02〜0.3質量部、特に好ましくは0.02〜0.2質量部であり、
酒石酸塩を好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜0.9質量部、さらに好ましくは0.2〜0.8質量部、特に好ましくは0.3〜0.6質量部であり、
重炭酸塩を好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜0.9質量部、さらに好ましくは0.2〜0.8質量部、特に好ましくは0.3〜0.6質量部であることが好ましい。
【0022】
自己流動性水硬性組成物は、必要に応じてリチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩を除く他の凝結調整剤、消泡剤などを、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0023】
リチウム塩は、凝結促進の性質を有するもので、公知の凝結促進の性質を有するリチウム塩を用いることが出来る。リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸などの、無機リチウム塩や有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
凝結促進剤としては、特性を妨げない粒径を用いることが好ましく、粒径は50μm以下にするのが好ましい。
特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
【0024】
酒石酸塩は、酒石酸一ナトリウム、酒石酸一カリウムなどの酒石酸一アルカリ金属塩、酒石酸ニナトリウム、酒石酸ニカリウム、酒石酸ナトリウムカリウムなどの酒石酸ニアルカリ金属塩を用いることが出来、さらに酒石酸ニナトリウム、酒石酸ニカリウム、酒石酸ナトリウムカリウムなどの酒石酸ニアルカリ金属塩が好ましく、特に酒石酸ニナトリウムを好ましく用いることができる。
【0025】
重炭酸塩は、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、炭酸水素カリウム(重炭酸カリウム)などの重炭酸のアルカリ金属塩を用いることが出来、特に重炭酸ナトリウムが好ましい。
【0026】
凝結調整剤は、リチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩を除き、他の凝結調整を目的とする成分を含むことができ、例えば、硫酸アルミニウム、ミョウバン類、硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムなどの無機硫酸塩類、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムなどの炭酸塩類、アルミン酸ナトリウム及びアルミン酸カリウムなどのアルカリアルミン酸塩類、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム及び硝酸カルシウムなどの硝酸塩類、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム及び亜硝酸カルシウムなどの亜硝酸塩類、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム及びギ酸カルシウムなどのギ酸塩類、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム及び乳酸カルシウムなどの乳酸塩類、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及び酢酸カルシウムなどの酢酸塩類、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム及びチオシアン酸カルシウムなどのチオシアン酸塩類、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム及びチオ硫酸カルシウムなどのチオ硫酸塩類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類、オキシカルボン酸及びその塩などを挙げることができる。
【0027】
オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸などの脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等の芳香族オキシ酸等を挙げることができる。
オキシカルボン酸の塩としては、クエン酸塩を除く、例えばオキシカルボン酸のアルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩など)、アルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩など)などを挙げることができる。
【0028】
自己流動性水硬性組成物は、材料分離を抑制しつつ適度の流動性を確保する流動化剤(高性能減水剤などの減水剤)を含むことができる。
水硬性成分であるアルミナセメントの発現強度は、水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水効果を有する流動化剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが不可欠である。
流動化剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販のものが、その種類を問わず使用できる。
流動化剤は、用いる水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、自己流動性水硬性組成物100質量部中に、0.001〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部、より好ましくは0.15〜0.6質量部、特に好ましくは0.2〜0.5質量部であり、添加量が余り少ないと十分な効果が発現せず、また多すぎても添加量に見合った効果は期待できず単に不経済であるだけでなく、所要の流動性を得るための混練水量が増大し、同時に粘稠性も大きくなり、充填性が悪化する場合が考えられる。
【0029】
増粘剤は、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、及び水溶性ポリマー系などを用いることが出来、特にセルロース系などを用いることが出来る。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、自己流動性水硬性組成物100質量部中に、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1質量部、より好ましくは0.01〜0.5質量部、特に0.04〜0.2質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、流動性の低下を招く恐れがあるために好ましい範囲で用いることが好ましい。
増粘剤及び消泡剤を併用して用いることは、水硬性成分や細骨材などの骨材分離の抑制、気泡発生の抑制、硬化体表面の改善に好ましい効果を与え、水硬性組成物の硬化物の特性を向上させるために好ましい。
【0030】
消泡剤は、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル系などの合成物質又は植物由来の天然物質など、公知のものを用いることが出来る。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、特に0.02〜0.5質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、上記範囲内が、消泡効果が認められるために好ましい。
【0031】
自己流動性水硬性組成物は、各成分の配合割合を調整することにより、硬化時の長さ変化量の収縮が−0.08〜0%までの範囲で、セルフレベリング性のSL値(L0)が、190mm以上のセルフレベリング材を得ることができる。
【0032】
自己流動性水硬性組成物を構成する好適な配合成分としては、
アルミナセメント30〜70質量部、ポルトランドセメント0〜45質量部(但し0質量部を除く)及び石膏15〜50質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる水硬性成分と、無機成分と、細骨材と、凝結調整剤と、流動化剤と、増粘剤と、消泡剤とを含む自己流動性水硬性組成物であり、
凝結調整剤は、リチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩を含むことを特徴とする自己流動性水硬性組成物である。
【0033】
自己流動性水硬性組成物は、水とを混練してモルタルを製造することができ、水の添加量を調整することにより、流動性、可使時間、材料分離、硬化体の強度などを調整することができる。
水の添加量は、自己流動性水硬性組成物100質量部に対し、好ましくは20〜200質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、より好ましくは40〜120質量部、特に好ましくは50〜100質量部加えて用いることが好ましい。
【0034】
水硬性成分と、リチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩と、流動化剤と、増粘剤と、必要に応じて配合する無機成分、細骨材、リチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩を除く凝結調整剤、消泡剤、樹脂粉などを混合機で混合し、自己流動性水硬性組成物のプレミックス粉体を得ることができる。
自己流動性水硬性組成物のプレミックス粉体は、所定量の水と混合、攪拌して、スラリー状のセルフレベリング性を有するモルタルを製造することができ、その後モルタルを硬化させて自己流動性水硬性組成物の硬化物を得ることができる。
【0035】
自己流動性水硬性組成物は、公知の方法でセルフレベリング材として施工することが出来る。例えば施工の一例として、特開2001−040862号公報などに開示されている。
【0036】
自己流動性水硬性組成物は、コンクリートの表面仕上げ材として広く使用することができ、一般の建築用左官材料、例えばP−タイル貼、長尺シート、じゅうたん、ウレタン等の合成樹脂塗り床の下地の施工にも使用することができる。
自己流動性水硬性組成物は、学校、マンション、コンビニエンスストア、病院、ベランダ、屋上などの一般建築物の床下地材、壁下地材などのセルフレベリング材に用いることが出来る。
【0037】
本発明の自己流動性水硬性組成物より得られるモルタルは、以下の流動特性を有することが好ましい。
1)フロー値(mm)は、好ましくは190mm以上、さらに好ましくは200mm以上である。
2)SL値(L0)は、好ましくは300mm以上、さらに好ましくは400mm以上である。
3)SL値(L30)は、好ましくは200mm以上、さらに好ましくは300mm以上である。
4)流動時間は、好ましくは3〜20(秒/200mm)であり、さらに好ましくは 4〜15(秒/200mm)である。
【0038】
本発明の自己流動性水硬性組成物より得られるモルタルは、水引時間が好ましくは
40〜150分、さらに好ましくは50〜120分である。
【0039】
本発明の自己流動性水硬性組成物より得られるモルタルは、以下に示す硬化時の長さ変化率或いは長さ変化率の差の特徴を少なくとも1つ有することが好ましい。
1)初期に最も収縮する長さ変化率(a)は、好ましくは0×10−4〜−5×10−4、さらに好ましくは0×10−4〜−3×10−4、特に好ましくは0×10−4〜−2×10−4の範囲である。
2)最も膨張する長さ変化率(b)は、好ましくは−5×10−4〜+10×10−4、さらに好ましくは−5×10−4〜+7×10−4、特に好ましくは−5×10−4〜+5×10−4の範囲である。
3)材齢72時間の長さ変化率(c)は、好ましくは−5×10−4〜+10×10−4、さらに好ましくは−4×10−4〜+5×10−4、特に好ましくは−2×10−4〜+3×10−4の範囲である。
4)材齢28日の長さ変化率(d)は、好ましくは−5×10−4〜+10×10−4、さらに好ましくは−3×10−4〜+5×10−4、特に好ましくは0×10−4〜+2×10−4の範囲である。
5)長さ変化率の差(A=b−a)は、好ましくは0×10−4〜+10×10−4、さらに好ましくは0×10−4〜+7×10−4、特に好ましくは0×10−4〜+2×10−4の範囲である。
6)長さ変化率の差(B=b−c)は、好ましくは0×10−4〜+5×10−4、さらに好ましくは0×10−4〜+2×10−4、特に好ましくは0×10−4〜+1×10−4の範囲である。
7)長さ変化率の差(C=b−d)は、好ましくは0×10−4〜+8×10−4、さらに好ましくは0×10−4〜+5×10−4、特に好ましくは0×10−4〜+3×10−4の範囲である。
【0040】
自己流動性水硬性組成物は硬化時の長さ変化の収縮が小さいため、自己流動性水硬性組成物より得られるモルタルは、粘着剤層と布層とを両外層に有する少なくとも2層に積層された粘着シートを用い、
床の上面に、粘着シートの粘着剤層を貼り付けた後、
粘着シートの布層側にモルタルを打設することを特徴とする床の施工方法に用いることができる。
【0041】
床の施工方法について説明する。
図1は、床の施工方法より得られる床構造体の一実施態様を示し、床を垂直方向に切断した部分断面図を示す。
図1では、床構造体11は、床12の上面に粘着シート13の粘着剤層の側を配置し、粘着シート13の布層の上面にセルフレベリング材層14を設けている。
図2は、粘着シート13の一実施態様の部分断面図を示す。粘着シート13は、粘着剤層15と布層16とを両外層に有する少なくとも2層に積層されているシートである。
セルフレベリング材層14は、本発明の自己流動性水硬性組成物より得られるモルタルを打設し、硬化させて得られる層である。
【0042】
本発明の床構造体の施工方法は、粘着剤層と布層とを両外層に有する少なくとも2層に積層された粘着シートを用い、
床面に極端な不陸部及び/又は損傷部がある場合、必要に応じてそれを調整し、
必要に応じて床面を清掃し、
必要に応じて新設及び/又既設の床の上面の全面又は一部にプライマー層を形成し、
その上面の全面又は一部に粘着シートの粘着剤層を貼り付けた後、
粘着シートの布層側に本発明のモルタルを打設し、必要に応じてコテ、機械等で仕上げ、セルフレベリング材層を形成させる又は設ける方法である。
本発明の床構造体の施工方法は、新設及び/又は既設の床をはがすことなく、新設及び/又は既設の床面の上にセルフレベリング材層を形成させる施工方法である。
【0043】
本発明の床構造体の改修方法は、粘着剤層と布層とを両外層に有する少なくとも2層に積層された粘着シートを用い、
床面に極端な不陸部及び/又は損傷部がある場合、必要に応じてそれを調整し、
必要に応じて床面を清掃し、
必要に応じて新設及び/又は既設の床の上面の全面又は一部にプライマー層を形成し、
その上面の全面又は一部に粘着シートの粘着剤層を貼り付けた後、
粘着シートの布層側に本発明のモルタルを打設し、必要に応じてコテ、機械等で仕上げ、セルフレベリング材層を形成させる又は設ける方法である。
本発明の床構造体の改修方法は、新設及び/又は既設の床をはがすことなく、新設及び/又は既設の床面の上にセルフレベリング材層を形成させる改修方法である。
【0044】
本発明の床構造体の施工方法(改修方法)は、新設及び/又は既設の床の一部又は全部をはがすことなく行うことができる。
【0045】
床12は、新設及び/又は既設の床で、床の一部又は全部をはがしていない床であり、無機製材料、樹脂製材料、木製材料及び金属製材料などから選ばれた少なくとも一種の床であり、これら材料が複数混在している床である。
無機製材料は、コンクリート、ALC材、タイル、大理石、人工石などから選ばれた少なくとも一種の無機製材料である。
樹脂製材料は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどから選ばれた少なくとも一種の樹脂製材料である。
木製材料は、コンパネ、フローリングなどから選ばれた少なくとも一種の木製材料である。
金属製材料は、縞鋼板などの鋼材、鉄板などの鉄材、銅板などの銅材などの金属部材から選ばれた少なくとも一種の金属製材料である。
【0046】
粘着シート13は、粘着剤層と布層とを両外層に有する少なくとも2層に積層されたシートである。
粘着シートは、粘着剤層と布層との間に合成樹脂製のフィルムや金属層を設けることが出来る。
金属層は、金属箔や金属の蒸着した層であり、金属としてアルミニウム、銅、銀、金などを用いることが出来る。
粘着シートは、合成樹脂製のフィルム、金属層、改質アスファルト系の粘着剤層を有することにより、防水性を付与することが出来る。
粘着シートは、防音性、防水性及び制振性などから選択される性質を有する粘着シートを用いることにより、選択された性質を得られる床の構造体に付与することが出来る。
【0047】
粘着シートの布層16は、織物、編物、組み物、不織布などの樹脂製繊維から製造される布を用いることが出来る。
粘着シートの布層16は、防音性を有することが、施工後の床が防音性を有するために好ましい。
布層としては、フェルト、パイル編、二重織りなどの厚みを有するものを好ましく用いることが出来る。
【0048】
布は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂から製造されるものが好ましい。
【0049】
合成樹脂製のフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリスルホンなどの熱可塑性樹脂から製造されるものが好ましい。
【0050】
粘着シートの粘着剤層15は、改質アスファルト系の粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ゴム系の粘着剤などから構成されたものであり、特に改質アスファルト系の粘着剤が、防水性に優れるために好ましい。
【0051】
改質アスファルト系の粘着剤としては、アスファルト25〜45質量%、軟化剤20〜40質量%、ゴム分5〜15質量%、無機充填剤10〜25質量%、粘着付与剤0〜10質量%を全体が100質量%となるように添加、混合して得られる改質アスファルト組成物が好適に使用出来る。
改質アスファルト系の粘着剤層は、防水性、制振性、防音性などに優れるために好ましく用いることが出来る。
【0052】
改質アスファルト系の粘着剤のアスファルトとしては、天然アスファルトやアスファルタイトなど天然に産するもの、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、カットバックアスファルト等の石油アスファルト、又はこれらのアスファルトの混合物等が好ましい。
【0053】
改質アスファルト系の粘着剤のゴム分としては、天然ゴム、合成ゴム、例えばポリブタジエン、エチレンプロピレンジエン共重合ゴム、スチレンブタジエンランダム共重合体ゴムなどのゴム、及びスチレンブタジエントリブロック共重合体熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0054】
改質アスファルト系の粘着剤の粘着付与剤としては、クマロン樹脂、フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂等が挙げられる。また軟化剤としては、プロセスオイル、ポリブテン等が用いられる。
【0055】
改質アスファルト系の粘着剤の無機充填材としては、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、クレー、カーボンブラック、タルク、マイカ、硫酸バリウム、珪藻土、シリカ等の粒子状無機充填材、石綿やガラス繊維などの繊維状無機充填材を用いることができる。
【0056】
ゴム系粘着剤としては、ブチルゴム系粘着剤などを用いることが出来る。
【0057】
プライマー層としては、公知の建材又は建築用のポリエステル系、ポリアクリル系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル系などのプライマーを用いることが出来る。
プライマー層は、必要に応じて塗布、吹き付け、散布などの方法で床面に形成することができるが、特にコンパネ、コンクリート、ALC板などの表面の水分吸い込みのある床の場合、床の上面に形成させることが好ましい。
【0058】
本発明の床の施工方法及び改修方法は、学校、マンション、コンビニエンスストア、病院、ベランダ、屋上などの高層又は低層の建築物の床や、地下の床であればどの階でも問題ないが、防音性などに優れるために特に2階以上であることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
【0060】
(1)硬化時の長さ変化率の測定法: 硬化時の長さ変化率の測定は、図3に示す装置を用いる。長さ変化の測定は、混練直後のモルタルを型内部の型枠の高さまで打設し、打設直後より長さ変化の測定を開始し、測定間隔は5分毎で行い、材齢28日まで測定する。測定条件は、20℃、RH65%の気中で行う。
モルタルの硬化時の長さ変化率は、図3(a)のSUS製円盤5bの変化量(mm)を、SUS製円盤5aとSUS製円盤5cの長さ480mmで除した値とする。
図4は、モルタルの硬化時の長さ変化と材齢との関係を示す図である。ほとんどのモルタルは、図4と同様の傾向を示すと考える。図4において、初期に最も収縮する長さ変化率をaとし、最も膨張する長さ変化率をbとし、材齢72時間の長さ変化率をcとし、材齢28日の長さ変化率をdとする。
長さ変化率の差Aは(b−a)の値とし、長さ変化率の差Bは(b−c)の値とし、長さ変化率の差Cは(b−d)の値とする。硬化時の初期に収縮しない場合は、aは0とする。
【0061】
図3に示すモルタルの硬化時の長さ変化率の測定装置を詳細に説明する。図3(a)は、測定装置1の上面の模式図であり、図3(b)は、測定装置1のMM線で切断される縦断面の模式図である。
図3(a)において、測定装置1は、SUS製型枠2と、SUS製円盤5a、5b、5cと緩衝材(スポンジ)3と、渦電流式変位センサー4と、SUS製型枠とSUS製円盤5cを連結するSUS棒6bと、SUS製円盤5aとSUS製円盤5bとを連結するSUS棒6aとを有している。SUS製円盤5cは、SUS棒6bによりSUS製型枠2に固定されている。SUS製円盤5a及びSUS製円盤5bは、SUS製型枠2に固定されておらず、型枠内部10にモルタルを充填し、モルタルの硬化時の膨張或いは収縮と共に、移動する。SUS製円盤5a及びSUS製円盤5bは、膨張の場合矢印y方向に移動し、収縮の場合x方向に移動する。渦電流式変位センサー4は、SUS製円盤5bのx方向或いはy方向の移動の変位量を測定するセンサーである。
図3(b)において、型枠2は、枠の内面にテフロンシート7を設けている。
図3(a)及び図3(b)において、aは520mm、bは480mm、cは20mm、dは40mmである。
【0062】
緩衝材3は、幅10mmで、モルタルの硬化時の膨張或いは収縮に影響を与えない材料、例えば樹脂製スポンジなどを用いることができる。
SUS製円盤5a、5b、5cは、厚み2mmで15mmφのSUS板である。
SUS棒6bは、長さ20mmで2mmφである。
【0063】
(2)スラリーの評価:
・フロー値: JASS・15M−103に準拠して測定する。厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ51mmの塩化ビニル製パイプ(内容積100ml)を置き練り混ぜたコンクリート組成物を充填した後、パイプを引き上げる。広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とする。
評価条件は、温度20℃、湿度65%の環境下で行う。
【0064】
・セルフレベリング性(SL値及び流動時間): 図5に示すSL測定器を使用し、幅30mm×高さ30mm×長さ750mmのレールに、先端より長さ150mmのところに堰板を設け、混練直後のスラリーを所定量満たして成形する。成形直後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL0とする。
同様に成形後30分後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL30とする。さらに成形後40分後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL40とする。
流動時間の測定方法は、堰板を引き上げてから、スラリーが標点(堰板の設置部)より200mm地点を通過するまでの時間とする。
評価条件は、温度20℃、湿度65%の環境下で行う。
【0065】
(3)表面状態(水引時間、粉化の有無、凹凸):
水引時間、粉化の有無、凹凸は上記(2)で得られるスラリーを190mm×130mm×15mmのPP製容器へ厚さ10mmで流し込み、硬化終了後、目視で観察した。評価は以下の通りとした。
粉化、凹凸:○;無し、×;有り。
水引時間:スラリーを容器に流し込んでから、スラリー表面の水浮が無くなるまでの時間
評価条件は、温度20℃、湿度65%の環境下で行う。
【0066】
原料は以下のものを使用した。
1)水硬性成分
・アルミナセメント(フォンジュ、ラファージュアルミネート社製、ブレーン比表面積3100cm/g)。
・ポルトランドセメント(早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm/g)。
・石膏:II型無水石膏(セントラル硝子社製、ブレーン比表面積3460cm/g)。
2)細骨材
・珪砂:6号珪砂。
3)無機成分
・高炉スラグ(リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm/g)。
4)凝結調整剤:
・重炭酸Na:重炭酸ナトリウム(東ソー社製)。
・酒石酸Na:L−酒石酸ニナトリウム(扶桑化学工業社製)。
・グルコン酸Na:グルコン酸ナトリウム(富田製薬社製)。
・炭酸Li:炭酸リチウム(本荘ケミカル社製)。
5)混和剤
・流動化剤:ポリカルボン酸系流動化剤(花王社製)。
・増粘剤:ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤(マーポローズMX−30000、松本油脂社製)。
・消泡剤A:ポリエーテル系消泡剤(サンノプコ社製)。
・消泡剤B:特殊非イオン界面活性剤(旭電化社製)
6)樹脂粉
・樹脂粉:(クラリアントポリマー社製)。
【0067】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
(セルフレベリング材の調整)
表1に示す水硬性成分、細骨材、高炉スラグ、流動化剤、増粘剤、凝結調整剤及び消泡剤(総量:1.5kg)を、ケミスタラーを用いて混練して水硬性組成物を調整し、さらに所定量の水を加えて3分間混練して、モルタルを得た。水硬性組成物及びスラリーの調整は、温度20℃、湿度65%の雰囲気下で行った。
【0068】
得られたモルタルを用いて、フロー値及びSL値の流動性と、硬化時の長さ変化率を測定し、結果を表2及び表3に示す。硬化後の表面状態を目視で観察し、結果を表2に示す。
実施例1及び比較例1の長さ変化の測定結果を表6に、実施例2、比較例2及び比較例3の長さ変化の測定結果を表7に、実施例3及び実施例4の長さ変化の測定結果を表8に、それぞれ示した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
(実施例5:床の施工)
既設のタイルとコンクリートとが混在する床面に、粘着シート(RAシート、宇部興産社製)の改質アスファルト系の粘着剤を貼り付け、ポリエステル製不織布の上面に、
実施例1で得たモルタルを打設し、硬化させた。
打設28日後、モルタルを施工した床を目視で観察したところ、粘着シートの膨れや剥がれは認められなかった。
【0073】
(実施例6:床の施工)
既設のタイルとコンクリートとが混在する床面に、粘着シート(RAシート、宇部興産社製)の改質アスファルト系の粘着剤を貼り付け、ポリエステル製不織布の上面に、
実施例2で得たモルタルを打設し、硬化させた。
打設28日後、モルタルを施工した床を目視で観察したところ、粘着シートの膨れや剥がれは認められなかった。
【0074】
(実施例7:床の施工)
既設のタイルとコンクリートとが混在する床面に、粘着シート(RAシート、宇部興産社製)の改質アスファルト系の粘着剤を貼り付け、ポリエステル製不織布の上面に、
実施例3で得たモルタルを打設し、硬化させた。
打設28日後、モルタルを施工した床を目視で観察したところ、粘着シートの膨れや剥がれは認められなかった。
【0075】
(実施例8:床の施工)
既設のタイルとコンクリートとが混在する床面に、粘着シート(RAシート、宇部興産社製)の改質アスファルト系の粘着剤を貼り付け、ポリエステル製不織布の上面に、
実施例4で得たモルタルを打設し、硬化させた。
打設28日後、モルタルを施工した床を目視で観察したところ、粘着シートの膨れや剥がれは認められなかった。
【0076】
(比較例4:床の施工)
既設のタイルとコンクリートとが混在する床面に、粘着シート(RAシート、宇部興産社製)の改質アスファルト系の粘着剤を貼り付け、ポリエステル製不織布の上面に、
比較例1で得たモルタルを打設し、硬化させた。
打設7日後、モルタルを施工した床を目視で観察したところ、粘着シートの一部に膨れや剥がれが認められた。
【0077】
(比較例5:床の施工)
既設のタイルとコンクリートとが混在する床面に、粘着シート(RAシート、宇部興産社製)の改質アスファルト系の粘着剤を貼り付け、ポリエステル製不織布の上面に、
比較例2で得たモルタルを打設し、硬化させた。
打設1日後、モルタルを施工した床を目視で観察したところ、粘着シートの一部に膨れや剥がれが認められた。
【0078】
(比較例6:床の施工)
既設のタイルとコンクリートとが混在する床面に、粘着シート(RAシート、宇部興産社製)の改質アスファルト系の粘着剤を貼り付け、ポリエステル製不織布の上面に、
比較例3で得たモルタルを打設し、硬化させた。
打設1日後、モルタルを施工した床を目視で観察したところ、粘着シートの一部に膨れや剥がれが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の床構造体の一実施形態の部分断面図である。
【図2】粘着シートの一実施態様の部分断面図である。
【図3】モルタルの硬化時の長さ変化の測定装置の模式図である
【図4】モルタルの硬化時の長さ変化の一例を示す模式図である。
【図5】SL測定器を用いて、モルタルのセルフレベリング性評価の概略示す図である。
【図6】実施例1及び比較例1のモルタルの材齢28日までの硬化時の長さ変化の測定結果である。
【図7】実施例2、比較例2及び比較例3のモルタルの材齢28日までの硬化時の長さ変化の測定結果である。
【図8】実施例3及び実施例4のモルタルの材齢28日までの硬化時の長さ変化の測定結果である。
【符号の説明】
【0080】
1:長さ変化測定装置、2:型枠、3:緩衝材、4:渦電流式変位センサー、5:SUS製円盤、6:SUS棒、7:テフロンシート、
11:床構造体、12:床、13:粘着シート、14:セルフレベリング材層、15:粘着剤層、16:布層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメント30〜70質量部、ポルトランドセメント0〜45質量部(但し0質量部を除く)及び石膏15〜50質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる水硬性成分と、凝結調整剤と、流動化剤と、増粘剤とを含む自己流動性水硬性組成物であり、
凝結調整剤は、リチウム塩、酒石酸塩及び重炭酸塩を含むことを特徴とする自己流動性水硬性組成物。
【請求項2】
酒石酸塩及び重炭酸塩は、酒石酸ニアルカリ金属塩及び重炭酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項3】
自己流動性水硬性組成物は、細骨材を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項4】
自己流動性水硬性組成物は、無機成分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自己流動性水硬性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタル。
【請求項6】
請求項1〜4に記載の自己流動性水硬性組成物と水との配合物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項7】
粘着剤層と布層とを両外層に有する少なくとも2層に積層された粘着シートを用い、
床の上面に、粘着シートの粘着剤層を貼り付けた後、
粘着シートの布層側にモルタルを打設することを特徴とする床の施工方法であり、
モルタルが請求項5に記載のモルタルであることを特徴とする床の施工方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−84359(P2007−84359A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272506(P2005−272506)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】