自食作用の強力な小分子阻害剤、およびそれの使用方法
本発明のある態様は、小分子自食作用阻害剤、ならびに癌および急性膵炎の治療および予防のためのそれらの使用に関する。本明細書に開示されるように、自食作用の小分子阻害剤は、公知の生物活性ライブラリーにおいて画像ベース選別から特定された。この自食作用阻害剤は、自食作用を開始するために必要とされるタイプIII P13キナーゼ錯体の分解を促進することによって機能することが分かった。医薬化学研究により、改善された効力および選択性を持った小分子自食作用阻害剤がもたらされた。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2010年1月20日出願の米国仮特許出願第61/296,735号明細書および2009年7月21日出願の米国仮特許出願第61/227,164号明細書に対する優先権を主張するものであり;それらの両方の内容はそれらの全体を参照することにより本明細書に援用される。
【政府支援】
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与されたPO1 AG027916、R37 AG012859およびDP1 OD000580の下での政府支援で行われた。
【技術分野】
【0003】
本発明は、自食作用の強力な小分子阻害剤、およびそれの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
Vps34(液胞タンパク質仕分け34)、タイプIII PtdIns3キナーゼ(ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ)は、酵母における液胞加水分解酵素仕分けの調整剤として最初に特定された(非特許文献1)。Vps34は、ホスファチジルイノシトール(PtdIns)のイノシトール環のD−3位を特異的にホスホリル化してPtdIns3Pを生成する(非特許文献2)。PtdIns3Pは、エンドソームからリソソームへの輸送、逆行エンドソームからGolgiへのトラフィック、多小胞体形成および自食作用を含む、多重の重要な細胞内膜トラフィッキング経路の制御に関与している(非特許文献3;非特許文献4)。PtdIns3Pは、自食作用、細胞内小器官および大きいタンパク質錯体のターンオーバーに関与する進化的に保存される異化作用機構の開始のために必要とされる。
【0005】
Vps34は、酵母における2つの錯体:自食作用に関与する錯体I(Vps34、Vps15、Vps30/Atg6、およびAtg14)、ならびに液胞タンパク質仕分け経路における錯体II(Vps34、Vps15、Vps30/Atg6、およびVps38)中に存在する(上に引用された、非特許文献4)。哺乳類細胞では、Vps34は、酵母においてそれらの同族の錯体と類似に機能する可能性がある、少なくとも2つのタンパク質錯体、Vps34錯体IおよびVps34錯体IIにおいて見いだされる。2つの哺乳類Vps34錯体は、それぞれ、酵母Vps34、Vps30/Atg6およびVps15と同族である、Vps34、ベクリン1(Beclin1)およびp150のコア成分を共有している。さらに、錯体IはAtg14L、飢餓中に分離膜/ファゴホアに限局され、そして自食胞形成に必須である、酵母Atg14Lの哺乳類相同分子種を含有し;一方、錯体IIは、主として後期エンドソームに限局される、UVRAG、酵母におけるVps38と同族体を含有する(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。興味深いことに、Vps34錯体の異なる成分の安定性は、一成分のノックダウンが錯体中のその他のもののレベルを多くの場合に下げるので互いに共依存性である(上に引用された、非特許文献5)。しかし、依然として、多重小胞トラフィッキング経路を調整するのに重要な役割を果たす可能性があるVps34錯体の安定性を調整する機構に関してほんのわずかなことしかわかっていない。
【0006】
自食作用は、リソソーム依存様式で細胞内構成要素のターンオーバーを仲介する異化プロセスである(非特許文献9)。自食作用は、自食胞と呼ばれる、二重膜小胞を形成することによって、大きいタンパク質錯体および欠陥がある細胞小器官を含む、細胞質の取込み部まで広がる、分離膜の形成により開始される。自食胞の中身は、リソソームとのその融合後にリソソームの加水分解酵素によって分解されてオートリソソームを形成する。自食作用は、遊離アミノ酸、脂肪酸およびヌクレオチドなどの自食分解の産物が栄養素制限条件下に生き延びるために構成要素またはエネルギー源として細胞によって使用され得るので、飢餓状態を生き延びるための戦略として単細胞真核生物において幅広く研究されてきた(非特許文献9;および非特許文献10)。
【0007】
自食作用のコア分子機構は、酵母から哺乳類へと進化的に保存された一群のATG遺伝子によってエンコードされたタンパク質産物によって制御される。自食小胞の核形成は、PtdIns3P、自食胞の形成を仲介するのに順次機能する、2つのユビキチン様分子、Atg12およびLC3(Atg8の同族体)だけでなく、ベクリン1(酵母Atg6の哺乳類同族体)およびVps34を含むタイプIII PI3キナーゼ錯体の産物を必要とする。第1のユビキチン化様反応において、Atg12はAtg5に接合し、自食胞の核形成を決定するのに重要な役割を果たす、大きい多量体タンパク質錯体を形成する。第2の反応において、LC3はホスファチジル−エタノールアミンに接合し、自食胞の伸びおよび閉鎖にとって重要な膜輸送をもたらす(非特許文献11;および非特許文献10)。
【0008】
後生動物においては、自食作用は、正常に動作しない、老化したまたは損傷したタンパク質および細胞小器官のターンオーバーを仲介することによって細胞恒常性に関与する本質的な細胞内異化機構として機能する(非特許文献10)。自食作用のダウンレギュレーションは、異常な折り畳み構造のタンパク質の蓄積を増やすことによって神経変性に関与する(非特許文献12;および非特許文献13)。自食作用はまた、DNA損傷、細胞内病原体によるERストレスおよび浸潤を含む、栄養素飢餓を越えて細胞ストレスの多くの形態への応答において活性化され得、先天性免疫および獲得免疫の両方(非特許文献14)に、ならびに腫瘍抑制(非特許文献15)に関与することが示されたきた。哺乳類細胞における自食作用を調整する機構の研究は始められたばかりである。
【0009】
自食作用は、細胞恒常性を調整するのに重要な役割を果たし、かつ、細胞生存、成長、分化およびホスト防御応答に関与する。自食作用の異常調整は、癌、神経変性、炎症性疾病および感染病を含む多数のヒト疾病にかかわっている。自食作用に関する最新知識のほとんどは、自食作用「Atg」遺伝子の特定へと至った酵母における見事な遺伝学研究に由来したものである。近年の研究は、酵母から哺乳類へのコア自食作用遺伝子の進化的保存を実証してきたが;哺乳類自食作用の機構および調整は、依然としてほとんどわかっていない複雑性の著しい増加を示してきた。
【0010】
自食作用は癌の進行および治療において複雑な役割を果たすことが提案されてきた。自食作用の活性化は、代謝的ストレス下に腫瘍細胞生存を助長し、そして腫瘍成長に有利に働く壊死細胞死およびその後の炎症を防止することによって腫瘍抑制機構として機能する可能性がある(非特許文献16)。他方で、自食作用の阻害は、癌のマルチプルラインにおけるベクリン1ヘテロ接合性の頻度の増加を説明し得る未知の機構を通じたゲノム不安定性(非特許文献17;および非特許文献18)、ならびに悪性上皮卵巣癌における自食作用関連タンパク質の発現の減少(非特許文献19)を引き起こす可能性がある。このように、自食作用の長期的抑制は腫瘍形成を刺激する可能性がある。
【0011】
抗癌治療における自食作用の提案された役割は、腫瘍形成中のものと反対である。いったん腫瘍が形成されると、自食作用の急性阻害は、放射線増感および化学増感を促進することによって治療目標にとって有益である可能性がある(非特許文献20)。癌治療の動物モデルにおいて、重要な自食作用遺伝子ATG5に抗するshRNAを使ってか抗マラリア薬物クロロキンを使ってかのどちらかの治療誘発自食作用の阻害は、活性化p53かアルキル化化学治療かのどちらかが腫瘍細胞死を推進するために用いらされた、Myc駆動腫瘍の細胞死および腫瘍退縮を高めた(非特許文献21)。クロロキンは、大きい自食小胞の用量依存性蓄積を引き起こし、アルキル化治療誘発細胞死をATG5のノックダウンと類似の程度まで高める。別の例において、TRAILに対する抵抗は、阻害のために、ベクリン1またはVps34などの、自食プロセスの特異的な成分を標的とするという一般的アプローチによって逆転されることが分かった(非特許文献22)。慢性の骨髄性白血病(CML)の場合に、クロロキンによる自食作用の阻害は、イマチニブによって誘発される、CML細胞株、K562の死を著しく高めた。さらに、イマチニブ抵抗性細胞株、BaF3/T315IおよびBaF3/E255Kは、イマチニブおよびクロロキンでの共治療によって死亡するように誘導することができる。こうして、自食作用の阻害は、腫瘍細胞をイマチニブ誘発細胞死に対して敏感にする。自食作用のブロックはCMLの治療のための新しい戦略であると提案されてきた(非特許文献23)。これらの研究は、自食作用がDNA損傷治療に対する耐性を促進し得ることを提案している。クロロキンはリソソームのブロッカーであるので、自食作用プロセスの異なるステップを標的とする特異的な阻害剤がまた、細胞ベースのアッセイおよび動物モデルにおいて化学療法の効果を高めるのに同じ効果を有するかどうかを見ることは興味深いであろう。
【0012】
さらに、自食作用はまた急性膵炎によって誘発される細胞損傷を仲介するのに重要な役割を果たすことが示されてきた。それ自体の時期尚早に活性化される消化プロテアーゼによる膵臓の自己消化が急性膵炎の開始における重要な事象であると考えられる。自食作用関連(Atg)遺伝子Atg5を膵臓腺房細胞において欠く条件付きノックアウトマウスは、セルレインによって誘発される急性膵炎の有意に減少した重症度を示してきた(非特許文献24)。したがって自食作用は、トリプシンへのトリプシノーゲンの活性化によって膵臓腺房細胞において有害な影響を与える。自食作用の阻害剤は、急性膵炎のための重要な新しい治療法を提供する可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Herman and Emr,1990
【非特許文献2】Schu,P.V.,Takegawa,K.,Fry,M.J.,Stack,J.H.,Waterfield,M.D.,and Emr,S.D.(1993)Phosphatidylinositol 3−kinase encoded by yeast VPS34 gene essential for protein sorting.Science 260,88−91
【非特許文献3】Herman,P.K.,and Emr,S.D.(1990).Characterization of VPS34,a gene required for vacuolar protein sorting and vacuole segregation in Saccharomyces cerevisiae.Mol Cell Biol 10,6742−6754
【非特許文献4】Kihara,A.,Noda,T.,Ishihara,N.,and Ohsumi,Y.(2001).Two distinct Vps34 phosphatidylinositol 3−kinase complexes function in autophagy and carboxypeptidase Y sorting in Saccharomyces cerevisiae.J Cell Biol 152,519−530
【非特許文献5】Itakura,E.,Kishi,C.,Inoue,K.,and Mizushima,N.(2008).Beclin 1 forms two distinct phosphatidylinositol 3−kinase complexes with mammalian Atg14 and UVRAG.Mol Biol Cell 19,5360−5372
【非特許文献6】Liang,C.,Feng,P.,Ku,B.,Dotan,I.,Canaani,D.,Oh,B.H.,and Jung,J.U.(2006).Autophagic and tumour suppressor activity of a novel Beclin1−binding protein UVRAG.Nat Cell Biol 8,688−699
【非特許文献7】Matsunaga,K.,Saitoh,T.,Tabata,K.,Omori,H.,Satoh,T.,Kurotori,N.,Maejima,I.,Shirahama−Noda,K.,Ichimura,T.,Isobe,T.,et al.(2009).Two Beclin 1−binding proteins,Atg14L and Rubicon,reciprocally regulate autophagy at different stages.Nat Cell Biol 11,385−396
【非特許文献8】Zhong,Y.,Wang,Q.J.,Li,X.,Yan,Y.,Backer,J.M.,Chait,B.T.,Heintz,N.,and Yue,Z.(2009).Distinct regulation of autophagic activity by Atg14L and Rubicon associated with Beclin 1−phosphatidylinositol−3−kinase complex.Nat Cell Biol 11(4),468−476
【非特許文献9】Levine,B.,and Klionsky,D.J.(2004).Development by self−digestion:molecular mechanisms and biological functions of autophagy.Dev Cell 6,463−477
【非特許文献10】Levine,B.,and Kroemer,G.(2008).Autophagy in the pathogenesis of disease.Cell 132,27−42
【非特許文献11】Fujita,N.,Itoh,T.,Omori,H.,Fukuda,M.,Noda,T.,and Yoshimori,T.(2008).The Atg16L Complex Specifies the Site of LC3 Lipidation for Membrane Biogenesis in Autophagy.Mol Biol Cell 19,2092−2100
【非特許文献12】Hara,T.,Nakamura,K.,Matsui,M.,Yamamoto,A.,Nakahara,Y.,Suzuki−Migishima,R.,Yokoyama,M.,Mishima,K.,Saito,I.,Okano,H.,et al.(2006).Suppression of basal autophagy in neural cells causes neurodegenerative disease in mice.Nature 441,885−889
【非特許文献13】Komatsu,M.,Waguri,S.,Chiba,T.,Murata,S.,Iwata,J.,Tanida,I.,Ueno,T.,Koike,M.,Uchiyama,Y.,Kominami,E.,et al.(2006).Loss of autophagy in the central nervous system causes neurodegeneration in mice.Nature 441,880−884
【非特許文献14】Schmid,D.,Dengjel,J.,Schoor,O.,Stevanovic,S.,and Munz,C.(2006).Autophagy in innate and adaptive immunity against intracellular pathogens.J Mol Med 84,194−202
【非特許文献15】Liang,X.H.,Jackson,S.,Seaman,M.,Brown,K.,Kempkes,B.,Hibshoosh,H.,and Levine,B.(1999).Induction of autophagy and inhibition of tumorigenesis by beclin 1.Nature 402,672−676
【非特許文献16】White,E.(2008).Autophagic cell death unraveled:Pharmacological inhibition of apoptosis and autophagy enables necrosis.Autophagy 4,399−401
【非特許文献17】Qu,X.,Yu,J.,Bhagat,G.,Furuya,N.,Hibshoosh,H.,Troxel,A.,Rosen,J.,Eskelinen,E.L.,Mizushima,N.,Ohsumi,Y.,et al.(2003).Promotion of tumorigenesis by heterozygous disruption of the beclin 1 autophagy gene.J Clin Invest 112,1809−1820
【非特許文献18】Yue,Z.,Jin,S.,Yang,C.,Levine,A.J.,and Heintz,N.(2003).Beclin 1,an autophagy gene essential for early embryonic development,is a haploinsufficient tumor suppressor.Proc Natl Acad Sci USA 100,15077−1508
【非特許文献19】Shen,Y.,Li,D.D.,Wang,L.L.,Deng,R.,and Zhu,X.F.(2008).Decreased expression of autophagy−related proteins in malignant epithelial ovarian cancer.Autophagy 4,1067−8
【非特許文献20】Amaravadi,R.K.,and Thompson,C.B.(2007).The roles of therapy−induced autophagy and necrosis in cancer treatment.Clin Cancer Res 13,7271−7279
【非特許文献21】Amaravadi,R.K.,Yu,D.,Lum,J.J.,Bui,T.,Christophorou,M.A.,Evan,G.I.,Thomas−Tikhonenko,A.,and Thompson,C.B.(2007).Autophagy inhibition enhances therapy−induced apoptosis in a Myc−induced model of lymphoma.J Clin Invest 117,326−336
【非特許文献22】Hou,W.,Han,J.,Lu,C.,Goldstein,L.A.,and Rabinowich,H.(2008).Enhancement of tumor−TRAIL susceptibility by modulation of autophagy.Autophagy 4,940−943
【非特許文献23】Mishima,Y.,Terui,Y.,Taniyama,A.,Kuniyoshi,R.,Takizawa,T.,Kimura,S.,Ozawa,K.,and Hatake,K.(2008).Autophagy and autophagic cell death are next targets for elimination of the resistance to tyrosine kinase inhibitors.Cancer Sci 99,2200−8
【非特許文献24】Ohmuraya,M.,and Yamamura,K.(2008).Autophagy and acute pancreatitis:a novel autophagy theory for trypsinogen activation.Autophagy 4,1060−1062
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
さらに、小分子阻害剤は、哺乳類細胞における細胞機構を探究する上で重要なツールである。しかし、自食作用の唯一利用可能な小分子阻害剤は、約10mMの作用濃度を有し、高度に非特異的である3−メチルアデニン(3−MA)である。それ故、哺乳類細胞における自食作用の研究を容易にするために使用することができる高度に特異的な小分子ツールを開発することが緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は一部分において、自食作用の阻害剤である化合物、そのような化合物を含む組成物、ならびにそのような化合物および組成物の使用方法に関する。
【0016】
本発明の一態様は、
nが0、1、2、3または4であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、または低級アルキニルであり;
R1が独立して、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CH3、−CF3、−C(=O)(低級アルキル)、−CN、−O(低級アルキル)、−O(低級フルオロアルキル)、−S(=O)(低級アルキル)、−S(=O)2(低級アルキル)および−C(=O)O(低級アルキル)からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、低級アルキル、低級フルオロアルキル、低級アルキニルおよび低級ヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−または−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−であり;
Zがフェニル、ピリジル、ビニル、モルフィニル、フェナンスロリニル、ナフチル、フリルまたはベンゾ[d]チアゾリルであり;そして−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されている、
式I:
【化1】
【0017】
の化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、単独でまたは別の治療薬と組み合わせて、式Iの化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体と、1つ以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物に関する。本発明のそのような医薬組成物は、典型的には、癌または膵炎に関連する状態および疾患の治療もしくは予防のための治療法の一環として、本発明の方法に従って投与することができる。
【0019】
本発明の別の態様は、治療効果のある量の、本発明の1つ以上の化合物または医薬組成物を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、癌、膵炎または細胞内病原体によって引き起こされる疾病の治療または予防方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】画像ベース選別による自食作用の小分子阻害剤の特定に関する。MBCQの構造。
【図1B】画像ベース選別による自食作用の小分子阻害剤の特定に関する。1細胞当たりのLC3−GFPスポット数(a)、1細胞当たりのスポットサイズ(b)、1細胞当たりのスポット強度(c)の定量的分析。データは、対照ビヒクル処理細胞の%として表される。H4−LC3細胞は、96ウェル−プレートに播種され、ビヒクル対照(1%DMSO)、10μMのMBCQありまたはなしの0.2μMラパマイシンで指示時間培養され、4%パラホルムアルデヒドで固定され、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、3μg/ml)で染色された。各化合物処理について1000細胞の画像が20×対物レンズのArrayScan HCS 4.0 Reader(Cellomics,Pittsburgh,Pennsylvania)によって解析された。
【図2】飢餓によって誘発される自食作用のMBCQ阻害に関する結果を図示する。HCSを用い、対照の%として表される、1細胞当たりのLC3−GFPスポット数(a)、1細胞当たりのスポットサイズ(b)および1細胞当たりのスポット強度(c)の定量的測定値。3−MA(10mM)またはウォルトマンニン(0.1μM)が陽性対照として使用された。
【図3】自食作用へのMBCQの影響の電子顕微鏡分析を図示する。H4細胞が0.1%DMSO(ビークル)、ラパマイシン(0.2μM)、MBCQ(10μM)、またはMBCQおよびラパマイシンで4時間処理された。細胞が処理され、EMによって画像形成された。
【図4A】MBCQ誘発体の創出アプローチを図示する。
【図4B】MBCQ誘発体の創出アプローチを図示する。
【図5A】MBCQの活性誘導体がMEF細胞においてLCSIIのレベルを下げることを示すことに関連する結果を図示する。MEF細胞がDMSO(1‰)、ラパマイシン(0.2μM)単独、もしくはMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはC71(10μM)と共に4時間処理された。細胞溶解物が抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングのために集められた。
【図5B】MBCQの活性誘導体がMEF細胞においてLCSIIのレベルを下げることを示すことに関連する結果を図示する。MEF細胞へのC43(spautin)の自食作用阻害効果の電子顕微鏡法確認。MEF細胞がビヒクル対照(1‰DMSO)、およびその他の示された化合物で4時間処理された。ラパマイシン(0.2μM)およびC43(spautin)(10μM)。次に、細胞がグルタルアルデヒドで固定され、EMアッセイ用のサンプルが調製された。バー、1:11,000。矢印は二重および多重膜オートファゴソミック小胞を示す。N:核。
【図6A】MBCQがH4細胞成長にほとんど影響を及ぼさないことを示す結果を図示する。H4細胞が5日間MBCQ(5μM)で処理され、トリパンブルーの存在下での細胞数計数のために毎日採取された。
【図6B】MBCQがH4細胞成長にほとんど影響を及ぼさないことを示す結果を図示する。H4細胞が24時間および48時間MBCQ(5μM)で処理され、次に細胞が70%エタノールで固定され、ヨウ化プロピジウム(40μg/mL)で染色され、RNase(200μg/mL)溶液で30分間培養された。細胞サイクルプロフィールおよび可能なアポトーシス細胞死がフローサイトメーターによって分析された。
【図7A】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下にMBCQ(10μM)、または3−MA(10mM)で8時間または24時間処理された。画像によって実証されるような細胞生存。
【図7B】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下にMBCQ(10μM)、または3−MA(10mM)で8時間または24時間処理された。MTTアッセイによって実証されるような細胞生存。
【図7C】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下にMBCQ(10μM)、または3−MA(10mM)で8時間または24時間処理された。細胞が抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングのために集められた。α−チューブリンが対照として使用された。
【図7D】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下に、spautin(10μM)、または示された濃度で8時間または指示時間処理された。画像によって実証されるような細胞生存。
【図7E】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下に、spautin(10μM)、または示された濃度で8時間または指示時間処理された。MTTアッセイによって実証されるような細胞生存。
【図7F】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下に、spautin(10μM)、または示された濃度で8時間または指示時間処理された。細胞が抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングのために集められた。α−チューブリンが対照として使用された。
【図8A】MBCQおよびC43(spautin)によりFYVE−RFPスポットが減るが、FYVE−RFPのタンパク質レベルにはまったく影響を及ぼさないことを示す結果を図示する。H4−FYVE細胞がDMSO(0.1%)、MBCQ(10μM)またはC43(spautin)(10μM)で指定時間処理された。画像が蛍光顕微鏡法によって解析され、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、そして4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、3μg/mL)で染色された後にHCSによって定量された。各化合物処理について1000細胞の画像が20×対物レンズのArrayScan HCS 4.0 Reader(Cellomics,Pittsburgh,Pennsylvania)によって解析された。
【図8B】MBCQおよびC43(spautin)によりFYVE−RFPスポットが減るが、FYVE−RFPのタンパク質レベルにはまったく影響を及ぼさないことを示す結果を図示する。H4−FYVE細胞がDMSO(0.1%)、MBCQ(10μM)またはC43(spautin)(10μM)で指定時間処理された。H4−FYVE細胞がDMSO(0.1%)、RAPA(0.2μM)単独、RAPA(0.2μM)ありまたはなしのMBCQ(10μM)またはC43(spautin)(10μM)で8時間処理された。細胞溶解物が抗RFPおよび負荷対照としての抗チューブリンを使用するウェスタンブロッティングのために集められた。
【図9A】MBCQおよびC43(spautin)がPtdIns3Pの細胞レベルを選択的に下げることを示す結果を図示する。MEF細胞がDMSO(0.1%)、RAPA(0.2μM)単独、RAPA(0.2μM)ありまたはなしのMBCQ(10μM)で3時間処理された。細胞PtdIns種が抽出され、フッ化ビニリデン膜上へ塗布された。PtdIns3PのレベルがGST−PXドメイン・タンパク質および抗GST抗体を使用して検出された。
【図9B】MBCQおよびC43(spautin)がPtdIns3Pの細胞レベルを選択的に下げることを示す結果を図示する。MEF細胞がDMSO(0.1%)、RAPA(0.2μM)単独、RAPA(0.2μM)ありまたはなしのC43(spautin)(10μM)で3時間処理された。細胞PtdIns種が抽出され、フッ化ビニリデン膜上へ塗布された。PtdIns3PのレベルがGST−PXドメイン・タンパク質および抗GST抗体を使用して検出された。
【図10A】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。C43(spautin)はVps34酵素活性の直接阻害剤ではない。293Tからの抗HAを使用して免疫沈降された外因性HA−Vps34錯体が、指定濃度のC43(spautin)およびウォルトマンニン(10μM)の不在または存在下での32P−ATPの存在下にPtdInsで室温にて10分間培養された。この産物が薄層クロマトグラフィーおよびオートラジオグラフィーによって分析された。レーン1において、反応緩衝液がVps34/ベクリン−1錯体の代わりに陰性対照として使用された。
【図10B】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。MBCQ、C29およびC43(spautin)の処理は外因性Vps34およびベクリン1のレベルを下げた。293T細胞がHA−Vps34およびflag−ベクリン1発現ベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞が、示された化合物で12時間処理された。細胞溶解物が抗HA、抗flagまたは抗チューブリンを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10C】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。MBCQおよびC43(spautin)はGFP−P150タンパク質のレベルを下げる。293T細胞がGFP−P150ベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が抗GFPまたは抗チューブリンを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10D】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。MBCQおよびC43(spautin)はmyc−Atg14タンパク質のレベルを下げる。293T細胞がmyc−Atg14ベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が抗mycまたは抗チューブリンを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10E】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。H4細胞がC43(spautin)(10μM)または3−MA(10mM)ありまたはなしのラパマイシン(0.2μM)で4時間処理され、DMSO(1‰)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、抗ベクリン1、抗Atg14、抗Vps34および抗UVRAGを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図10F】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞がタンパク質合成を阻害するためのCHXの存在下にMBCQまたはspautinで指示時間処理され、細胞溶解物が抗ベクリン1を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。CHX(5μM)、MBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)。
【図10G】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。H4細胞がspautin(10μM)または3−MA(10mM)ありまたはなしのラパマイシン(0.2μM)で4時間処理され、DMSO(1‰)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、抗ベクリン1および抗LC3を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図10H】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10I】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10J】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10K】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10L】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10M】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図11A】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。BT549細胞が正常DMEM中で、示された濃度のC43で24時間処理された。
【図11B】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。血清を含まない条件下で、示された濃度のC43で24時間処理された。
【図11C】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。細胞生存度がMTTによってアッセイされるかまたは抗LC3でのウェスタンブロッティングアッセイ用に採取された。
【図11D】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。MCF−7細胞がDMSO(1‰)、グルコースありのDMEM中で、C43(10μM)で12時間処理された。
【図11E】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。MCF−7細胞がDMSO(1‰)、グルコースなしのDMEM中で、C43(10μM)で12時間処理された。
【図11F】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。細胞生存度がMTTまたは画像によってアッセイされた。
【図11G】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。細胞溶解物が抗LC3を使用するウェスタンブロッティングによって分析され、α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図11H】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。Bcap−37細胞が正常DMEM中で、示された濃度のC43で24時間処理された。
【図11I】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。Bcap−37細胞が血清を含まない条件下で、示された濃度のC43で24時間処理された。
【図11J】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。細胞生存度がMTTまたは画像によってアッセイされた。
【図11K】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。C43で処理されたBcap−37の細胞サイクルプロフィール。Bcap−37細胞がDMSO(0.1%)(上図)、C43(10μM)(下図)で12時間処理された。この細胞が次に70%エタノールで固定され、ヨウ化プロピジウム(PI、40μg/mL)で染色され、暗黒中、RNase酵素(200μg/mL)溶液で30分間処理された。細胞サイクルプロフィールおよび可能なアポトーシス死がフローサイトメーターによって統計的に分析された。
【図11L】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。そして細胞溶解物がC43で指示時間処理され、抗PARPを使用するウェスタンブロッティングによって分析され、α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図11M】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。そして細胞溶解物がC43で指示時間処理され、抗LC3を使用するウェスタンブロッティングによって分析され、α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図12A】spautinが非癌細胞においてアポトーシスを誘発しないことを示す実験の結果を図示する。MDCK細胞がDMSO(1‰)およびグルコースありまたはなしのDMEM中の示された濃度でのspautinで24時間処理された。画像によって実証されるような細胞生存。
【図12B】spautinが非癌細胞においてアポトーシスを誘発しないことを示す実験の結果を図示する。MDCK細胞がDMSO(1‰)およびグルコースありまたはなしのDMEM中の示された濃度でのspautinで24時間処理された。MTTアッセイによって実証されるような細胞生存。
【図12C】spautinが非癌細胞においてアポトーシスを誘発しないことを示す実験の結果を図示する。Hs578Bst細胞がDMSO(1‰)およびグルコースありまたはなしのDMEM中の示された濃度としてのC43で24時間処理された。画像によって実証されるような細胞生存。
【図12D】spautinが非癌細胞においてアポトーシスを誘発しないことを示す実験の結果を図示する。C〜D、Hs578Bst細胞がDMSO(1‰)およびグルコースありまたはなしのDMEM中の示された濃度としてのC43で24時間処理された。MTTアッセイによって実証されるような細胞生存。
【図13】MBCQおよび誘導体の生体内での効果を示す結果を図示する。(A)マウスが陽性対照としてのラパマイシン(10mg/kg)単独を、またはC43もしくはMBCQ(40mg/kg)を4時間の間1時間毎に腹腔内注射され、次に5時間目に犠牲にされた。肝臓における自食作用レベルが抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。(B)C43はセルレインによって誘発される自食作用のレベルを下げる。ラットがセルレイン(50μg/kg)単独をまたはC43(40mg/kg)を4時間の間1時間毎に腹腔内注射された。ラットは最後の注射の1時間後に犠牲にされ、膵臓が抗LC3および抗チューブリン(対照としての)を使用するウェスタンブロッティング分析のために単離された。
【図14−1】自食作用を阻害することができるMBCQ誘導体を図示する。EC50を計算するために、H4−LC3細胞が96ウェル−プレートに播種され、異なる濃度の化合物の存在下に24時間培養され、次にポリホルメート(polyformate)で固定され、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、3μg/ml)で染色された。画像データが、DAPI標識核およびGFP−LC3、自食作用のためのマーカーについて20×対物レンズのArrayScan HCS 4.0 Reader(Cellomics,Pittsburgh,Pennsylvania)で集められた。Spot Detector Bio−Applicationが、最適化後の画像を取得し、そして解析するために用いられた。各化合物処理について1000細胞の画像が1フィールド当たりの平均細胞数、蛍光スポット数、1細胞当たりのエリアおよび強度を得るために解析された。DMSOおよびラパマイシンが、それぞれ、陰性対照または陽性対照として使用された。LC3−GFPの変化の百分率がDMSO処理サンプルの百分率で割ることによって計算された。各処理は平均およびSDのために3通り行われた。画像はまた、目視検査用の従来型蛍光顕微鏡を用いて解析された。実験は3回繰り返された。
【図14−2】図14−1の続き。
【図14−3】図14−2の続き。
【図14−4】図14−3の続き。
【図14−5】図14−4の続き。
【図14−6】図14−5の続き。
【図15−1】自食作用を阻害する能力が低下した、またはまったくしないMBCQ誘導体を図示する。EC50を計算するために、H4−LC3細胞が96ウェル−プレートに播種され、異なる濃度の化合物の存在下に24時間培養され、次にポリホルメートで固定され、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、3μg/ml)で染色された。画像データが、DAPI標識核およびGFP−LC3、自食作用のためのマーカーについて20×対物レンズのArrayScan HCS 4.0 Reader(Cellomics,Pittsburgh,Pennsylvania)で集められた。Spot Detector Bio−Applicationが、最適化後の画像を取得し、そして解析するために用いられた。各化合物処理について1000細胞の画像が、1フィールド当たりの平均細胞数、蛍光スポット数、1細胞当たりのエリアおよび強度を得るために分析された。DMSOおよびラパマイシンが、それぞれ、陰性対照または陽性対照として使用された。LC3−GFPの変化の百分率がDMSO処理サンプルの百分率で割ることによって計算された。各処理は平均およびSDのために3通り行われた。画像はまた、目視検査用の従来型蛍光顕微鏡を用いて解析された。実験は3回繰り返された。
【図15−2】図15−1の続き。
【図15−3】図15−2の続き。
【図15−4】図15−3の続き。
【図15−5】図15−4の続き。
【図15−6】図15−5の続き。
【図16】spautinがプロテアソーム経路によるベクリン1の分解を促進することを示す実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−ベクリン1でトランスフェクトされ、そしてトランスフェクションの24時間後に、細胞が、示された化合物で追加の24時間処理された。DMSO(1‰)、MBCQ(10μM)、spautin(10μM)、NH4Cl(10mM)、MG132(5μM)。細胞溶解物が抗GFPを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2010年1月20日出願の米国仮特許出願第61/296,735号明細書および2009年7月21日出願の米国仮特許出願第61/227,164号明細書に対する優先権を主張するものであり;それらの両方の内容はそれらの全体を参照することにより本明細書に援用される。
【政府支援】
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与されたPO1 AG027916、R37 AG012859およびDP1 OD000580の下での政府支援で行われた。
【技術分野】
【0003】
本発明は、自食作用の強力な小分子阻害剤、およびそれの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
Vps34(液胞タンパク質仕分け34)、タイプIII PtdIns3キナーゼ(ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ)は、酵母における液胞加水分解酵素仕分けの調整剤として最初に特定された(非特許文献1)。Vps34は、ホスファチジルイノシトール(PtdIns)のイノシトール環のD−3位を特異的にホスホリル化してPtdIns3Pを生成する(非特許文献2)。PtdIns3Pは、エンドソームからリソソームへの輸送、逆行エンドソームからGolgiへのトラフィック、多小胞体形成および自食作用を含む、多重の重要な細胞内膜トラフィッキング経路の制御に関与している(非特許文献3;非特許文献4)。PtdIns3Pは、自食作用、細胞内小器官および大きいタンパク質錯体のターンオーバーに関与する進化的に保存される異化作用機構の開始のために必要とされる。
【0005】
Vps34は、酵母における2つの錯体:自食作用に関与する錯体I(Vps34、Vps15、Vps30/Atg6、およびAtg14)、ならびに液胞タンパク質仕分け経路における錯体II(Vps34、Vps15、Vps30/Atg6、およびVps38)中に存在する(上に引用された、非特許文献4)。哺乳類細胞では、Vps34は、酵母においてそれらの同族の錯体と類似に機能する可能性がある、少なくとも2つのタンパク質錯体、Vps34錯体IおよびVps34錯体IIにおいて見いだされる。2つの哺乳類Vps34錯体は、それぞれ、酵母Vps34、Vps30/Atg6およびVps15と同族である、Vps34、ベクリン1(Beclin1)およびp150のコア成分を共有している。さらに、錯体IはAtg14L、飢餓中に分離膜/ファゴホアに限局され、そして自食胞形成に必須である、酵母Atg14Lの哺乳類相同分子種を含有し;一方、錯体IIは、主として後期エンドソームに限局される、UVRAG、酵母におけるVps38と同族体を含有する(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。興味深いことに、Vps34錯体の異なる成分の安定性は、一成分のノックダウンが錯体中のその他のもののレベルを多くの場合に下げるので互いに共依存性である(上に引用された、非特許文献5)。しかし、依然として、多重小胞トラフィッキング経路を調整するのに重要な役割を果たす可能性があるVps34錯体の安定性を調整する機構に関してほんのわずかなことしかわかっていない。
【0006】
自食作用は、リソソーム依存様式で細胞内構成要素のターンオーバーを仲介する異化プロセスである(非特許文献9)。自食作用は、自食胞と呼ばれる、二重膜小胞を形成することによって、大きいタンパク質錯体および欠陥がある細胞小器官を含む、細胞質の取込み部まで広がる、分離膜の形成により開始される。自食胞の中身は、リソソームとのその融合後にリソソームの加水分解酵素によって分解されてオートリソソームを形成する。自食作用は、遊離アミノ酸、脂肪酸およびヌクレオチドなどの自食分解の産物が栄養素制限条件下に生き延びるために構成要素またはエネルギー源として細胞によって使用され得るので、飢餓状態を生き延びるための戦略として単細胞真核生物において幅広く研究されてきた(非特許文献9;および非特許文献10)。
【0007】
自食作用のコア分子機構は、酵母から哺乳類へと進化的に保存された一群のATG遺伝子によってエンコードされたタンパク質産物によって制御される。自食小胞の核形成は、PtdIns3P、自食胞の形成を仲介するのに順次機能する、2つのユビキチン様分子、Atg12およびLC3(Atg8の同族体)だけでなく、ベクリン1(酵母Atg6の哺乳類同族体)およびVps34を含むタイプIII PI3キナーゼ錯体の産物を必要とする。第1のユビキチン化様反応において、Atg12はAtg5に接合し、自食胞の核形成を決定するのに重要な役割を果たす、大きい多量体タンパク質錯体を形成する。第2の反応において、LC3はホスファチジル−エタノールアミンに接合し、自食胞の伸びおよび閉鎖にとって重要な膜輸送をもたらす(非特許文献11;および非特許文献10)。
【0008】
後生動物においては、自食作用は、正常に動作しない、老化したまたは損傷したタンパク質および細胞小器官のターンオーバーを仲介することによって細胞恒常性に関与する本質的な細胞内異化機構として機能する(非特許文献10)。自食作用のダウンレギュレーションは、異常な折り畳み構造のタンパク質の蓄積を増やすことによって神経変性に関与する(非特許文献12;および非特許文献13)。自食作用はまた、DNA損傷、細胞内病原体によるERストレスおよび浸潤を含む、栄養素飢餓を越えて細胞ストレスの多くの形態への応答において活性化され得、先天性免疫および獲得免疫の両方(非特許文献14)に、ならびに腫瘍抑制(非特許文献15)に関与することが示されたきた。哺乳類細胞における自食作用を調整する機構の研究は始められたばかりである。
【0009】
自食作用は、細胞恒常性を調整するのに重要な役割を果たし、かつ、細胞生存、成長、分化およびホスト防御応答に関与する。自食作用の異常調整は、癌、神経変性、炎症性疾病および感染病を含む多数のヒト疾病にかかわっている。自食作用に関する最新知識のほとんどは、自食作用「Atg」遺伝子の特定へと至った酵母における見事な遺伝学研究に由来したものである。近年の研究は、酵母から哺乳類へのコア自食作用遺伝子の進化的保存を実証してきたが;哺乳類自食作用の機構および調整は、依然としてほとんどわかっていない複雑性の著しい増加を示してきた。
【0010】
自食作用は癌の進行および治療において複雑な役割を果たすことが提案されてきた。自食作用の活性化は、代謝的ストレス下に腫瘍細胞生存を助長し、そして腫瘍成長に有利に働く壊死細胞死およびその後の炎症を防止することによって腫瘍抑制機構として機能する可能性がある(非特許文献16)。他方で、自食作用の阻害は、癌のマルチプルラインにおけるベクリン1ヘテロ接合性の頻度の増加を説明し得る未知の機構を通じたゲノム不安定性(非特許文献17;および非特許文献18)、ならびに悪性上皮卵巣癌における自食作用関連タンパク質の発現の減少(非特許文献19)を引き起こす可能性がある。このように、自食作用の長期的抑制は腫瘍形成を刺激する可能性がある。
【0011】
抗癌治療における自食作用の提案された役割は、腫瘍形成中のものと反対である。いったん腫瘍が形成されると、自食作用の急性阻害は、放射線増感および化学増感を促進することによって治療目標にとって有益である可能性がある(非特許文献20)。癌治療の動物モデルにおいて、重要な自食作用遺伝子ATG5に抗するshRNAを使ってか抗マラリア薬物クロロキンを使ってかのどちらかの治療誘発自食作用の阻害は、活性化p53かアルキル化化学治療かのどちらかが腫瘍細胞死を推進するために用いらされた、Myc駆動腫瘍の細胞死および腫瘍退縮を高めた(非特許文献21)。クロロキンは、大きい自食小胞の用量依存性蓄積を引き起こし、アルキル化治療誘発細胞死をATG5のノックダウンと類似の程度まで高める。別の例において、TRAILに対する抵抗は、阻害のために、ベクリン1またはVps34などの、自食プロセスの特異的な成分を標的とするという一般的アプローチによって逆転されることが分かった(非特許文献22)。慢性の骨髄性白血病(CML)の場合に、クロロキンによる自食作用の阻害は、イマチニブによって誘発される、CML細胞株、K562の死を著しく高めた。さらに、イマチニブ抵抗性細胞株、BaF3/T315IおよびBaF3/E255Kは、イマチニブおよびクロロキンでの共治療によって死亡するように誘導することができる。こうして、自食作用の阻害は、腫瘍細胞をイマチニブ誘発細胞死に対して敏感にする。自食作用のブロックはCMLの治療のための新しい戦略であると提案されてきた(非特許文献23)。これらの研究は、自食作用がDNA損傷治療に対する耐性を促進し得ることを提案している。クロロキンはリソソームのブロッカーであるので、自食作用プロセスの異なるステップを標的とする特異的な阻害剤がまた、細胞ベースのアッセイおよび動物モデルにおいて化学療法の効果を高めるのに同じ効果を有するかどうかを見ることは興味深いであろう。
【0012】
さらに、自食作用はまた急性膵炎によって誘発される細胞損傷を仲介するのに重要な役割を果たすことが示されてきた。それ自体の時期尚早に活性化される消化プロテアーゼによる膵臓の自己消化が急性膵炎の開始における重要な事象であると考えられる。自食作用関連(Atg)遺伝子Atg5を膵臓腺房細胞において欠く条件付きノックアウトマウスは、セルレインによって誘発される急性膵炎の有意に減少した重症度を示してきた(非特許文献24)。したがって自食作用は、トリプシンへのトリプシノーゲンの活性化によって膵臓腺房細胞において有害な影響を与える。自食作用の阻害剤は、急性膵炎のための重要な新しい治療法を提供する可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Herman and Emr,1990
【非特許文献2】Schu,P.V.,Takegawa,K.,Fry,M.J.,Stack,J.H.,Waterfield,M.D.,and Emr,S.D.(1993)Phosphatidylinositol 3−kinase encoded by yeast VPS34 gene essential for protein sorting.Science 260,88−91
【非特許文献3】Herman,P.K.,and Emr,S.D.(1990).Characterization of VPS34,a gene required for vacuolar protein sorting and vacuole segregation in Saccharomyces cerevisiae.Mol Cell Biol 10,6742−6754
【非特許文献4】Kihara,A.,Noda,T.,Ishihara,N.,and Ohsumi,Y.(2001).Two distinct Vps34 phosphatidylinositol 3−kinase complexes function in autophagy and carboxypeptidase Y sorting in Saccharomyces cerevisiae.J Cell Biol 152,519−530
【非特許文献5】Itakura,E.,Kishi,C.,Inoue,K.,and Mizushima,N.(2008).Beclin 1 forms two distinct phosphatidylinositol 3−kinase complexes with mammalian Atg14 and UVRAG.Mol Biol Cell 19,5360−5372
【非特許文献6】Liang,C.,Feng,P.,Ku,B.,Dotan,I.,Canaani,D.,Oh,B.H.,and Jung,J.U.(2006).Autophagic and tumour suppressor activity of a novel Beclin1−binding protein UVRAG.Nat Cell Biol 8,688−699
【非特許文献7】Matsunaga,K.,Saitoh,T.,Tabata,K.,Omori,H.,Satoh,T.,Kurotori,N.,Maejima,I.,Shirahama−Noda,K.,Ichimura,T.,Isobe,T.,et al.(2009).Two Beclin 1−binding proteins,Atg14L and Rubicon,reciprocally regulate autophagy at different stages.Nat Cell Biol 11,385−396
【非特許文献8】Zhong,Y.,Wang,Q.J.,Li,X.,Yan,Y.,Backer,J.M.,Chait,B.T.,Heintz,N.,and Yue,Z.(2009).Distinct regulation of autophagic activity by Atg14L and Rubicon associated with Beclin 1−phosphatidylinositol−3−kinase complex.Nat Cell Biol 11(4),468−476
【非特許文献9】Levine,B.,and Klionsky,D.J.(2004).Development by self−digestion:molecular mechanisms and biological functions of autophagy.Dev Cell 6,463−477
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
さらに、小分子阻害剤は、哺乳類細胞における細胞機構を探究する上で重要なツールである。しかし、自食作用の唯一利用可能な小分子阻害剤は、約10mMの作用濃度を有し、高度に非特異的である3−メチルアデニン(3−MA)である。それ故、哺乳類細胞における自食作用の研究を容易にするために使用することができる高度に特異的な小分子ツールを開発することが緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は一部分において、自食作用の阻害剤である化合物、そのような化合物を含む組成物、ならびにそのような化合物および組成物の使用方法に関する。
【0016】
本発明の一態様は、
nが0、1、2、3または4であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、または低級アルキニルであり;
R1が独立して、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CH3、−CF3、−C(=O)(低級アルキル)、−CN、−O(低級アルキル)、−O(低級フルオロアルキル)、−S(=O)(低級アルキル)、−S(=O)2(低級アルキル)および−C(=O)O(低級アルキル)からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、低級アルキル、低級フルオロアルキル、低級アルキニルおよび低級ヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−または−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−であり;
Zがフェニル、ピリジル、ビニル、モルフィニル、フェナンスロリニル、ナフチル、フリルまたはベンゾ[d]チアゾリルであり;そして−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されている、
式I:
【化1】
【0017】
の化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、単独でまたは別の治療薬と組み合わせて、式Iの化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体と、1つ以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物に関する。本発明のそのような医薬組成物は、典型的には、癌または膵炎に関連する状態および疾患の治療もしくは予防のための治療法の一環として、本発明の方法に従って投与することができる。
【0019】
本発明の別の態様は、治療効果のある量の、本発明の1つ以上の化合物または医薬組成物を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、癌、膵炎または細胞内病原体によって引き起こされる疾病の治療または予防方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】画像ベース選別による自食作用の小分子阻害剤の特定に関する。MBCQの構造。
【図1B】画像ベース選別による自食作用の小分子阻害剤の特定に関する。1細胞当たりのLC3−GFPスポット数(a)、1細胞当たりのスポットサイズ(b)、1細胞当たりのスポット強度(c)の定量的分析。データは、対照ビヒクル処理細胞の%として表される。H4−LC3細胞は、96ウェル−プレートに播種され、ビヒクル対照(1%DMSO)、10μMのMBCQありまたはなしの0.2μMラパマイシンで指示時間培養され、4%パラホルムアルデヒドで固定され、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、3μg/ml)で染色された。各化合物処理について1000細胞の画像が20×対物レンズのArrayScan HCS 4.0 Reader(Cellomics,Pittsburgh,Pennsylvania)によって解析された。
【図2】飢餓によって誘発される自食作用のMBCQ阻害に関する結果を図示する。HCSを用い、対照の%として表される、1細胞当たりのLC3−GFPスポット数(a)、1細胞当たりのスポットサイズ(b)および1細胞当たりのスポット強度(c)の定量的測定値。3−MA(10mM)またはウォルトマンニン(0.1μM)が陽性対照として使用された。
【図3】自食作用へのMBCQの影響の電子顕微鏡分析を図示する。H4細胞が0.1%DMSO(ビークル)、ラパマイシン(0.2μM)、MBCQ(10μM)、またはMBCQおよびラパマイシンで4時間処理された。細胞が処理され、EMによって画像形成された。
【図4A】MBCQ誘発体の創出アプローチを図示する。
【図4B】MBCQ誘発体の創出アプローチを図示する。
【図5A】MBCQの活性誘導体がMEF細胞においてLCSIIのレベルを下げることを示すことに関連する結果を図示する。MEF細胞がDMSO(1‰)、ラパマイシン(0.2μM)単独、もしくはMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはC71(10μM)と共に4時間処理された。細胞溶解物が抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングのために集められた。
【図5B】MBCQの活性誘導体がMEF細胞においてLCSIIのレベルを下げることを示すことに関連する結果を図示する。MEF細胞へのC43(spautin)の自食作用阻害効果の電子顕微鏡法確認。MEF細胞がビヒクル対照(1‰DMSO)、およびその他の示された化合物で4時間処理された。ラパマイシン(0.2μM)およびC43(spautin)(10μM)。次に、細胞がグルタルアルデヒドで固定され、EMアッセイ用のサンプルが調製された。バー、1:11,000。矢印は二重および多重膜オートファゴソミック小胞を示す。N:核。
【図6A】MBCQがH4細胞成長にほとんど影響を及ぼさないことを示す結果を図示する。H4細胞が5日間MBCQ(5μM)で処理され、トリパンブルーの存在下での細胞数計数のために毎日採取された。
【図6B】MBCQがH4細胞成長にほとんど影響を及ぼさないことを示す結果を図示する。H4細胞が24時間および48時間MBCQ(5μM)で処理され、次に細胞が70%エタノールで固定され、ヨウ化プロピジウム(40μg/mL)で染色され、RNase(200μg/mL)溶液で30分間培養された。細胞サイクルプロフィールおよび可能なアポトーシス細胞死がフローサイトメーターによって分析された。
【図7A】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下にMBCQ(10μM)、または3−MA(10mM)で8時間または24時間処理された。画像によって実証されるような細胞生存。
【図7B】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下にMBCQ(10μM)、または3−MA(10mM)で8時間または24時間処理された。MTTアッセイによって実証されるような細胞生存。
【図7C】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下にMBCQ(10μM)、または3−MA(10mM)で8時間または24時間処理された。細胞が抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングのために集められた。α−チューブリンが対照として使用された。
【図7D】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下に、spautin(10μM)、または示された濃度で8時間または指示時間処理された。画像によって実証されるような細胞生存。
【図7E】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下に、spautin(10μM)、または示された濃度で8時間または指示時間処理された。MTTアッセイによって実証されるような細胞生存。
【図7F】MBCQおよびC43(spautin)がエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を部分的に阻害することを示す結果を図示する。Bax/bak DKO細胞がエトポシド(8μM)の存在または不在下に、spautin(10μM)、または示された濃度で8時間または指示時間処理された。細胞が抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングのために集められた。α−チューブリンが対照として使用された。
【図8A】MBCQおよびC43(spautin)によりFYVE−RFPスポットが減るが、FYVE−RFPのタンパク質レベルにはまったく影響を及ぼさないことを示す結果を図示する。H4−FYVE細胞がDMSO(0.1%)、MBCQ(10μM)またはC43(spautin)(10μM)で指定時間処理された。画像が蛍光顕微鏡法によって解析され、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、そして4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、3μg/mL)で染色された後にHCSによって定量された。各化合物処理について1000細胞の画像が20×対物レンズのArrayScan HCS 4.0 Reader(Cellomics,Pittsburgh,Pennsylvania)によって解析された。
【図8B】MBCQおよびC43(spautin)によりFYVE−RFPスポットが減るが、FYVE−RFPのタンパク質レベルにはまったく影響を及ぼさないことを示す結果を図示する。H4−FYVE細胞がDMSO(0.1%)、MBCQ(10μM)またはC43(spautin)(10μM)で指定時間処理された。H4−FYVE細胞がDMSO(0.1%)、RAPA(0.2μM)単独、RAPA(0.2μM)ありまたはなしのMBCQ(10μM)またはC43(spautin)(10μM)で8時間処理された。細胞溶解物が抗RFPおよび負荷対照としての抗チューブリンを使用するウェスタンブロッティングのために集められた。
【図9A】MBCQおよびC43(spautin)がPtdIns3Pの細胞レベルを選択的に下げることを示す結果を図示する。MEF細胞がDMSO(0.1%)、RAPA(0.2μM)単独、RAPA(0.2μM)ありまたはなしのMBCQ(10μM)で3時間処理された。細胞PtdIns種が抽出され、フッ化ビニリデン膜上へ塗布された。PtdIns3PのレベルがGST−PXドメイン・タンパク質および抗GST抗体を使用して検出された。
【図9B】MBCQおよびC43(spautin)がPtdIns3Pの細胞レベルを選択的に下げることを示す結果を図示する。MEF細胞がDMSO(0.1%)、RAPA(0.2μM)単独、RAPA(0.2μM)ありまたはなしのC43(spautin)(10μM)で3時間処理された。細胞PtdIns種が抽出され、フッ化ビニリデン膜上へ塗布された。PtdIns3PのレベルがGST−PXドメイン・タンパク質および抗GST抗体を使用して検出された。
【図10A】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。C43(spautin)はVps34酵素活性の直接阻害剤ではない。293Tからの抗HAを使用して免疫沈降された外因性HA−Vps34錯体が、指定濃度のC43(spautin)およびウォルトマンニン(10μM)の不在または存在下での32P−ATPの存在下にPtdInsで室温にて10分間培養された。この産物が薄層クロマトグラフィーおよびオートラジオグラフィーによって分析された。レーン1において、反応緩衝液がVps34/ベクリン−1錯体の代わりに陰性対照として使用された。
【図10B】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。MBCQ、C29およびC43(spautin)の処理は外因性Vps34およびベクリン1のレベルを下げた。293T細胞がHA−Vps34およびflag−ベクリン1発現ベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞が、示された化合物で12時間処理された。細胞溶解物が抗HA、抗flagまたは抗チューブリンを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10C】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。MBCQおよびC43(spautin)はGFP−P150タンパク質のレベルを下げる。293T細胞がGFP−P150ベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が抗GFPまたは抗チューブリンを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10D】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。MBCQおよびC43(spautin)はmyc−Atg14タンパク質のレベルを下げる。293T細胞がmyc−Atg14ベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が抗mycまたは抗チューブリンを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10E】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。H4細胞がC43(spautin)(10μM)または3−MA(10mM)ありまたはなしのラパマイシン(0.2μM)で4時間処理され、DMSO(1‰)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、抗ベクリン1、抗Atg14、抗Vps34および抗UVRAGを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図10F】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞がタンパク質合成を阻害するためのCHXの存在下にMBCQまたはspautinで指示時間処理され、細胞溶解物が抗ベクリン1を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。CHX(5μM)、MBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)。
【図10G】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。H4細胞がspautin(10μM)または3−MA(10mM)ありまたはなしのラパマイシン(0.2μM)で4時間処理され、DMSO(1‰)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、抗ベクリン1および抗LC3を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図10H】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10I】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10J】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10K】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10L】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図10M】C43(SPAUTIN)およびその活性誘導体がベクリン1/Vps34/p150錯体の分解を選択的に促進することを示す結果を図示する。293T細胞が、示されたベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMBCQ(10μM)、C43(spautin)(10μM)またはラパマイシン(0.2μM)で追加の4時間処理された。細胞溶解物が、示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図11A】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。BT549細胞が正常DMEM中で、示された濃度のC43で24時間処理された。
【図11B】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。血清を含まない条件下で、示された濃度のC43で24時間処理された。
【図11C】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。細胞生存度がMTTによってアッセイされるかまたは抗LC3でのウェスタンブロッティングアッセイ用に採取された。
【図11D】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。MCF−7細胞がDMSO(1‰)、グルコースありのDMEM中で、C43(10μM)で12時間処理された。
【図11E】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。MCF−7細胞がDMSO(1‰)、グルコースなしのDMEM中で、C43(10μM)で12時間処理された。
【図11F】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。細胞生存度がMTTまたは画像によってアッセイされた。
【図11G】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。細胞溶解物が抗LC3を使用するウェスタンブロッティングによって分析され、α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図11H】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。Bcap−37細胞が正常DMEM中で、示された濃度のC43で24時間処理された。
【図11I】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。Bcap−37細胞が血清を含まない条件下で、示された濃度のC43で24時間処理された。
【図11J】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。細胞生存度がMTTまたは画像によってアッセイされた。
【図11K】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。C43で処理されたBcap−37の細胞サイクルプロフィール。Bcap−37細胞がDMSO(0.1%)(上図)、C43(10μM)(下図)で12時間処理された。この細胞が次に70%エタノールで固定され、ヨウ化プロピジウム(PI、40μg/mL)で染色され、暗黒中、RNase酵素(200μg/mL)溶液で30分間処理された。細胞サイクルプロフィールおよび可能なアポトーシス死がフローサイトメーターによって統計的に分析された。
【図11L】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。そして細胞溶解物がC43で指示時間処理され、抗PARPを使用するウェスタンブロッティングによって分析され、α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図11M】選択された癌細胞株がグルコースを含まない条件下にMBCQおよびその活性誘導体に対して敏感であることを示す結果を図示する。そして細胞溶解物がC43で指示時間処理され、抗LC3を使用するウェスタンブロッティングによって分析され、α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図12A】spautinが非癌細胞においてアポトーシスを誘発しないことを示す実験の結果を図示する。MDCK細胞がDMSO(1‰)およびグルコースありまたはなしのDMEM中の示された濃度でのspautinで24時間処理された。画像によって実証されるような細胞生存。
【図12B】spautinが非癌細胞においてアポトーシスを誘発しないことを示す実験の結果を図示する。MDCK細胞がDMSO(1‰)およびグルコースありまたはなしのDMEM中の示された濃度でのspautinで24時間処理された。MTTアッセイによって実証されるような細胞生存。
【図12C】spautinが非癌細胞においてアポトーシスを誘発しないことを示す実験の結果を図示する。Hs578Bst細胞がDMSO(1‰)およびグルコースありまたはなしのDMEM中の示された濃度としてのC43で24時間処理された。画像によって実証されるような細胞生存。
【図12D】spautinが非癌細胞においてアポトーシスを誘発しないことを示す実験の結果を図示する。C〜D、Hs578Bst細胞がDMSO(1‰)およびグルコースありまたはなしのDMEM中の示された濃度としてのC43で24時間処理された。MTTアッセイによって実証されるような細胞生存。
【図13】MBCQおよび誘導体の生体内での効果を示す結果を図示する。(A)マウスが陽性対照としてのラパマイシン(10mg/kg)単独を、またはC43もしくはMBCQ(40mg/kg)を4時間の間1時間毎に腹腔内注射され、次に5時間目に犠牲にされた。肝臓における自食作用レベルが抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。(B)C43はセルレインによって誘発される自食作用のレベルを下げる。ラットがセルレイン(50μg/kg)単独をまたはC43(40mg/kg)を4時間の間1時間毎に腹腔内注射された。ラットは最後の注射の1時間後に犠牲にされ、膵臓が抗LC3および抗チューブリン(対照としての)を使用するウェスタンブロッティング分析のために単離された。
【図14−1】自食作用を阻害することができるMBCQ誘導体を図示する。EC50を計算するために、H4−LC3細胞が96ウェル−プレートに播種され、異なる濃度の化合物の存在下に24時間培養され、次にポリホルメート(polyformate)で固定され、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、3μg/ml)で染色された。画像データが、DAPI標識核およびGFP−LC3、自食作用のためのマーカーについて20×対物レンズのArrayScan HCS 4.0 Reader(Cellomics,Pittsburgh,Pennsylvania)で集められた。Spot Detector Bio−Applicationが、最適化後の画像を取得し、そして解析するために用いられた。各化合物処理について1000細胞の画像が1フィールド当たりの平均細胞数、蛍光スポット数、1細胞当たりのエリアおよび強度を得るために解析された。DMSOおよびラパマイシンが、それぞれ、陰性対照または陽性対照として使用された。LC3−GFPの変化の百分率がDMSO処理サンプルの百分率で割ることによって計算された。各処理は平均およびSDのために3通り行われた。画像はまた、目視検査用の従来型蛍光顕微鏡を用いて解析された。実験は3回繰り返された。
【図14−2】図14−1の続き。
【図14−3】図14−2の続き。
【図14−4】図14−3の続き。
【図14−5】図14−4の続き。
【図14−6】図14−5の続き。
【図15−1】自食作用を阻害する能力が低下した、またはまったくしないMBCQ誘導体を図示する。EC50を計算するために、H4−LC3細胞が96ウェル−プレートに播種され、異なる濃度の化合物の存在下に24時間培養され、次にポリホルメートで固定され、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、3μg/ml)で染色された。画像データが、DAPI標識核およびGFP−LC3、自食作用のためのマーカーについて20×対物レンズのArrayScan HCS 4.0 Reader(Cellomics,Pittsburgh,Pennsylvania)で集められた。Spot Detector Bio−Applicationが、最適化後の画像を取得し、そして解析するために用いられた。各化合物処理について1000細胞の画像が、1フィールド当たりの平均細胞数、蛍光スポット数、1細胞当たりのエリアおよび強度を得るために分析された。DMSOおよびラパマイシンが、それぞれ、陰性対照または陽性対照として使用された。LC3−GFPの変化の百分率がDMSO処理サンプルの百分率で割ることによって計算された。各処理は平均およびSDのために3通り行われた。画像はまた、目視検査用の従来型蛍光顕微鏡を用いて解析された。実験は3回繰り返された。
【図15−2】図15−1の続き。
【図15−3】図15−2の続き。
【図15−4】図15−3の続き。
【図15−5】図15−4の続き。
【図15−6】図15−5の続き。
【図16】spautinがプロテアソーム経路によるベクリン1の分解を促進することを示す実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−ベクリン1でトランスフェクトされ、そしてトランスフェクションの24時間後に、細胞が、示された化合物で追加の24時間処理された。DMSO(1‰)、MBCQ(10μM)、spautin(10μM)、NH4Cl(10mM)、MG132(5μM)。細胞溶解物が抗GFPを使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
nが0、1、2、3または4であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−CH3、低級フルオロアルキル、−CH2F、−CHF2、−CF3、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、または低級アルキニルであり;
R1が独立して、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CH3、−CF3、−C(=O)(低級アルキル)、−CN、−O(低級アルキル)、−O(低級フルオロアルキル)、−S(=O)(低級アルキル)、−S(=O)2(低級アルキル)および−C(=O)O(低級アルキル)からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、低級アルキル、低級フルオロアルキル、低級アルキニルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−または−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−であり;
Zがフェニル、ピリジル、ビニル、モルフィニル、フェナンスロリニル、ナフチル、フリルまたはベンゾ[d]チアゾリルであり;そして−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されている、
式I:
【化1】
で表されることを特徴とする化合物またはそれの、製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体;
ただし、前記化合物は、
【化2】
(式中、JはCl、OCHF2、OCH2CH3、OCH2CF3、O(CH2)2CH3、OCH(CH3)2、O(CH2)3CH3、またはO(シクロペンチル)である)
ではない。
【請求項2】
Yが−C(R1)=であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが存在し、Yが−N=であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが−Hであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
少なくとも1つのR1が−NH2、−Cl、−NO2、−I、または−OMeであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
少なくとも1つのR1が−NH2、−Cl、−NO2、−I、または−OMeであり;少なくとも2つのR1が−Hであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R2が−CH3であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R2が−Hであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R3が−CH3であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R3が−Hであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−または−CH2−であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Xが−N(H)−または−N(低級アルキル)−であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Xが−N(H)−であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
nが0、1、または2であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−CH3、低級フルオロアルキル、−CH2F、−CHF2、または−CF3であり;
R1が独立して、−H、−F、−Cl、−Br、−Iまたは−NO2からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3または−CH(CH3)2からなる群から選択され;
R4、R5およびR8が独立して、−H、−CH3、−CF3、−OCH3、−OCF3、−F、−Cl、−Brまたは−Iからなる群から選択され;
R6およびR7が独立して、−H、−CH3、−CF3、−OCH3、−OCF3、−F、−Cl、−Br、またはIからなる群から選択されるか;またはR6およびR7が一緒になって−OCH2O−である、
【化3】
で表されることを特徴とする化合物またはそれの、製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体;
ただし、前記化合物は
【化4】
ではない。
【請求項16】
Yが−C(R1)=であることを特徴とする請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Yが−N=であることを特徴とする請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
nが存在し、Rが−H、−CH3、−CH2F、−CHF2または−CF3であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
RがHであることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
Rが−CH2F、−CHF2または−CF3であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
R1が−F、−Cl、−Brまたは−Iであることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
R1が−CH3であることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
R1が−NO2であることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
R2が−Hであることを特徴とする請求項15〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
R2が−CH3であることを特徴とする請求項15〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
R3が−Hであることを特徴とする請求項15〜25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
R3が−CH3であることを特徴とする請求項15〜25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
R4が−Hであることを特徴とする請求項15〜27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
R4が−F、−Cl、−CH3または−OCH3であることを特徴とする請求項15〜27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
R5が−Hであることを特徴とする請求項15〜29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
R5が−F、−Cl、−CH3または−CF3であることを特徴とする請求項15〜29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
R6が−Hであることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
R6が−F、−Clまたは−Brであることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
R6が−CH3または−CF3であることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
R6が−OCH3または−OCF3であることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
R6およびR7が一緒になって−OCH2O−であることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
R7が−Hであることを特徴とする請求項15〜36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
R8が−Hであることを特徴とする請求項15〜37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
【化5−1】
【化5−2】
【化5−3】
【化5−4】
からなる群から選択されることを特徴とする化合物、またはそれの製薬上許容される塩。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか一項に記載の化合物、またはそれの、製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体と;製薬上許容される希釈剤または担体とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項41】
請求項1〜39のいずれか一項に記載の、治療効果のある量の1つ以上の化合物、または請求項40に記載の医薬組成物を、それを必要としている対象に投与する工程を含むことを特徴とする、癌、膵炎、神経変性、炎症性疾病、感染病、または細胞内病原体によって引き起こされた感染の治療方法。
【請求項42】
癌を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌が、白血病、非小細胞肺癌、大腸癌、中枢神経系癌、メラノーマ、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、および乳癌からなる群から選択されることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
膵炎を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項45】
神経変性を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項46】
血管性認知症、初老期認知症、ダウン症候群における神経変性、およびHIV関連認知症からなる群から選択される神経変性状態を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項47】
神経変性を治療するためであり;そして前記神経変性状態を有する前記対象において認知を高めるかまたは認知低下を阻害することを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項48】
細胞内病原体によって引き起こされた感染を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記感染が細菌またはウィルスによって引き起こされることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含むことを特徴とする請求項41〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が請求項1〜39のいずれか一項に記載の前記1つ以上の化合物、または請求項40に記載の医薬組成物と同時に投与されることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が請求項1〜39のいずれか一項に記載の前記1つ以上の化合物、または請求項40に記載の医薬組成物と順次投与されることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が抗血管新生薬であることを特徴とする請求項51または請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗血管新生薬が、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、カルボキシアミドトリアゾール、TNP−470、CM101、IFN−α、IL−12、血小板因子−4、スラミン、SU5416、トロンボスポンジン、VEGFR拮抗薬、ヘパリンと一緒の血管新生抑制ステロイド、軟骨由来血管新生阻害因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、アンギオスタチン、エンドスタチン、2−メトキシエストラジオール、テコガラン、トロンボスポンジン、プロラクチン、αVβ3阻害剤およびリノミドからなる群から選択されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が、解糖依存性癌を解糖できない細胞に変換する抗癌化合物であることを特徴とする請求項51または請求項52に記載の方法。
【請求項56】
解糖依存性癌を解糖できない細胞に変換する前記抗癌化合物が、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、カルマスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、ミトキサントロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、gleevac、イレッサ、タルセバ、ハーセプチン、アバスチン、L−アスパラギナーゼおよびトレチノインからなる群から選択されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体を請求項1〜39のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物と接触させる工程を含むことを特徴とする脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の不活性化方法であって、前記脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体がUSP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18を含む方法。
【請求項1】
nが0、1、2、3または4であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−CH3、低級フルオロアルキル、−CH2F、−CHF2、−CF3、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、または低級アルキニルであり;
R1が独立して、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CH3、−CF3、−C(=O)(低級アルキル)、−CN、−O(低級アルキル)、−O(低級フルオロアルキル)、−S(=O)(低級アルキル)、−S(=O)2(低級アルキル)および−C(=O)O(低級アルキル)からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、低級アルキル、低級フルオロアルキル、低級アルキニルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−または−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−であり;
Zがフェニル、ピリジル、ビニル、モルフィニル、フェナンスロリニル、ナフチル、フリルまたはベンゾ[d]チアゾリルであり;そして−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されている、
式I:
【化1】
で表されることを特徴とする化合物またはそれの、製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体;
ただし、前記化合物は、
【化2】
(式中、JはCl、OCHF2、OCH2CH3、OCH2CF3、O(CH2)2CH3、OCH(CH3)2、O(CH2)3CH3、またはO(シクロペンチル)である)
ではない。
【請求項2】
Yが−C(R1)=であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが存在し、Yが−N=であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rが−Hであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
少なくとも1つのR1が−NH2、−Cl、−NO2、−I、または−OMeであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
少なくとも1つのR1が−NH2、−Cl、−NO2、−I、または−OMeであり;少なくとも2つのR1が−Hであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R2が−CH3であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R2が−Hであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R3が−CH3であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R3が−Hであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−または−CH2−であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Xが−N(H)−または−N(低級アルキル)−であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Xが−N(H)−であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
nが0、1、または2であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−CH3、低級フルオロアルキル、−CH2F、−CHF2、または−CF3であり;
R1が独立して、−H、−F、−Cl、−Br、−Iまたは−NO2からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3または−CH(CH3)2からなる群から選択され;
R4、R5およびR8が独立して、−H、−CH3、−CF3、−OCH3、−OCF3、−F、−Cl、−Brまたは−Iからなる群から選択され;
R6およびR7が独立して、−H、−CH3、−CF3、−OCH3、−OCF3、−F、−Cl、−Br、またはIからなる群から選択されるか;またはR6およびR7が一緒になって−OCH2O−である、
【化3】
で表されることを特徴とする化合物またはそれの、製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体;
ただし、前記化合物は
【化4】
ではない。
【請求項16】
Yが−C(R1)=であることを特徴とする請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Yが−N=であることを特徴とする請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
nが存在し、Rが−H、−CH3、−CH2F、−CHF2または−CF3であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
RがHであることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
Rが−CH2F、−CHF2または−CF3であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
R1が−F、−Cl、−Brまたは−Iであることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
R1が−CH3であることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
R1が−NO2であることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
R2が−Hであることを特徴とする請求項15〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
R2が−CH3であることを特徴とする請求項15〜23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
R3が−Hであることを特徴とする請求項15〜25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
R3が−CH3であることを特徴とする請求項15〜25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
R4が−Hであることを特徴とする請求項15〜27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
R4が−F、−Cl、−CH3または−OCH3であることを特徴とする請求項15〜27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
R5が−Hであることを特徴とする請求項15〜29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
R5が−F、−Cl、−CH3または−CF3であることを特徴とする請求項15〜29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
R6が−Hであることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
R6が−F、−Clまたは−Brであることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
R6が−CH3または−CF3であることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
R6が−OCH3または−OCF3であることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項36】
R6およびR7が一緒になって−OCH2O−であることを特徴とする請求項15〜31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項37】
R7が−Hであることを特徴とする請求項15〜36のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項38】
R8が−Hであることを特徴とする請求項15〜37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
【化5−1】
【化5−2】
【化5−3】
【化5−4】
からなる群から選択されることを特徴とする化合物、またはそれの製薬上許容される塩。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか一項に記載の化合物、またはそれの、製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体と;製薬上許容される希釈剤または担体とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項41】
請求項1〜39のいずれか一項に記載の、治療効果のある量の1つ以上の化合物、または請求項40に記載の医薬組成物を、それを必要としている対象に投与する工程を含むことを特徴とする、癌、膵炎、神経変性、炎症性疾病、感染病、または細胞内病原体によって引き起こされた感染の治療方法。
【請求項42】
癌を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌が、白血病、非小細胞肺癌、大腸癌、中枢神経系癌、メラノーマ、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、および乳癌からなる群から選択されることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
膵炎を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項45】
神経変性を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項46】
血管性認知症、初老期認知症、ダウン症候群における神経変性、およびHIV関連認知症からなる群から選択される神経変性状態を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項47】
神経変性を治療するためであり;そして前記神経変性状態を有する前記対象において認知を高めるかまたは認知低下を阻害することを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項48】
細胞内病原体によって引き起こされた感染を治療するためであることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記感染が細菌またはウィルスによって引き起こされることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも1つの追加の治療薬を投与する工程をさらに含むことを特徴とする請求項41〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が請求項1〜39のいずれか一項に記載の前記1つ以上の化合物、または請求項40に記載の医薬組成物と同時に投与されることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が請求項1〜39のいずれか一項に記載の前記1つ以上の化合物、または請求項40に記載の医薬組成物と順次投与されることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が抗血管新生薬であることを特徴とする請求項51または請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗血管新生薬が、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、カルボキシアミドトリアゾール、TNP−470、CM101、IFN−α、IL−12、血小板因子−4、スラミン、SU5416、トロンボスポンジン、VEGFR拮抗薬、ヘパリンと一緒の血管新生抑制ステロイド、軟骨由来血管新生阻害因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、アンギオスタチン、エンドスタチン、2−メトキシエストラジオール、テコガラン、トロンボスポンジン、プロラクチン、αVβ3阻害剤およびリノミドからなる群から選択されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が、解糖依存性癌を解糖できない細胞に変換する抗癌化合物であることを特徴とする請求項51または請求項52に記載の方法。
【請求項56】
解糖依存性癌を解糖できない細胞に変換する前記抗癌化合物が、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、カルマスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、ミトキサントロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、gleevac、イレッサ、タルセバ、ハーセプチン、アバスチン、L−アスパラギナーゼおよびトレチノインからなる群から選択されることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体を請求項1〜39のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物と接触させる工程を含むことを特徴とする脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の不活性化方法であって、前記脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体がUSP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18を含む方法。
【図16】spautinがプロテアソーム経路によるベクリン1の分解を促進することを示す実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−ベクリン1およびHA−Ub発現ベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、細胞がMG132またはspautinで24時間処理された。細胞溶解物が抗GFP抗体で免疫沈降され、免疫錯体が抗HA抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図17】選択された自食作用タンパク質の安定性へのUSP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18のsiRNAノックダウンの影響を実証する実験の結果を図示する。H4細胞が、示されたsiRNAsで72時間トランスフェクトされ、ラパマイシン(0.2μM)またはspautin(10μM)で4時間処理され、非標的siRNA(N.T.siRNA)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、(Left):示されたタンパク質に対して特異的な抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図18】USPタンパク質の安定性へのUSP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18のsiRNAノックダウンの影響を実証する実験の結果を図示する。H4細胞が、示されたsiRNAsで72時間トランスフェクトされるか、ラパマイシン(0.2μM)またはspautin(10μM)で4時間処理され、非標的siRNA(N.T.siRNA)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、(Left):示されたタンパク質に対して特異的な抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図19】siRNAノックダウンのP53の安定性へのUSP3、USP10、USP13、USP16、USP18およびベクリン1の影響を実証する実験の結果を図示する。H4細胞が、示されたsiRNAs(各USPについて3つ)でトランスフェクトされ、ラパマイシン(0.2μM)で4時間処理され、DMSO(1%)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、抗p53抗体またはその他の示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図20】GFP−USP10およびMyc−USP13が実際に相互作用し得たことならびにこの相互作用がspautin処理細胞において阻害されたことを実証する実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−USP10(レーン1〜4)、Myc−USP13(レーン2〜4)、MG132(レーン3〜4)および/またはspautin(レーン4)でトランスフェクトされた。溶解物が抗GFP抗体で免疫沈降され、免疫錯体が、示された抗体を使ったウェスタンブロットによって分析された。
【図21】flag−USP10およびGFP−ベクリン1が実際に相互作用し得たことならびにこの相互作用がspautin処理細胞において阻害されたことを実証する実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−ベクリン1(レーン1)、GFP−ベクリン1およびFlag−USP10(レーン2〜4)プラスミドで12時間でトランスフェクトされ、spautin(10μM)ありまたはなしのMG132(10μM)で4時間培養され、細胞溶解物が抗GFP抗体で免疫沈降され、免疫錯体が抗Flag抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図22】flag−USP10およびGFP−ベクリン1が実際に相互作用し得たことならびにこの相互作用がspautin処理細胞においてはほとんど達成されなかったことを実証する実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−ベクリン1(レーン1)、GFP−ベクリン1およびMyc−USP13(レーン2〜4)プラスミドで12時間でトランスフェクトされ、spautin(10μM)ありまたはなしのMG132(10μM)で4時間培養され、細胞溶解物が抗GFP抗体で免疫沈降され、免疫錯体が抗Myc抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図23】A9の1H NMRスペクトルを図示する。
【図24】A30の1H NMRスペクトルを図示する。
【図25】A36の1H NMRスペクトルを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
自食作用、細胞異化プロセスは、リサイクリングのために細胞内構成要素のリソソーム依存性ターンオーバーを仲介することによって代謝ストレス条件下に細胞生存を促進するのに重要な役割を果たす。自食作用の阻害は、可能な新規癌治療として提案されてきた。
【0022】
自食作用の小分子調整剤のための画像ベース選別において、自食作用阻害剤、MBCQが特定された。MBCQの広範な医薬化学変性は、C43などの、新規誘導体を特定した。C43は細胞ベースのアッセイにおいて約0.8μMのIC50で自食作用を阻害することが開示される。本明細書においてある場合にはC43は「spautin」(特異的で強力な自食作用阻害剤)と言われる。約30nMのIC50のC43の誘導体もまた製造された。
【0023】
さらに、MBCQおよびspautinはVps34錯体(たとえば、その産物、PtdIns3Pが自食作用の開始のために必要とされる、ベクリン1/Vps34/p150を含むタイプIII PtdIns3キナーゼ錯体)の分解を促進し得ることが本明細書において開示される。Vps34錯体のユビキチン化および分解はUSP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18を含む脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体によって調整されることがさらに開示される。spautinが自食作用を阻害する機構は、哺乳類細胞におけるVps34錯体のターンオーバーを調整することに関与するUSP10およびUSP13を含む脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の崩壊であると本明細書において提案される。
【0024】
さらに、spautinは概して非細胞毒性であるが飢餓条件下に癌細胞の小集団のアポトーシスを誘発することが本明細書において開示される。さらに、spautinは膵炎の動物モデルにおいて生体内で自食作用を阻害することが本明細書において開示される。
【0025】
定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語がここに集められる。本明細書において定義され、使用されるような、すべての定義は、辞書の定義、参照により援用される公文書における定義、および/または定義される用語の普通の意味に優先する。
【0026】
冠詞「a」および「an」は、この冠詞の文法上の対象の1つをまたは2つ以上を(すなわち、少なくとも1つを)意味するために本明細書において使用される。例として、「an element(要素)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0027】
語句「および/または」は、本明細書においておよび特許請求の範囲においてここで使用される場合、そのように等位接続される要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し、別の場合には離接的に存在する要素の「どちらかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」を使ってリストアップされる複数の要素は、同じように、すなわち、要素の「1つ以上」がそのように等位接続されていると解釈されるべきである。具体的に特定されるそれらの要素に関係しているか関係していないかを問わず、「および/または」節によって具体的に特定される要素以外のその他の要素が任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む(comprising)」などの制約がない言語と連結して使用されるとき、一実施形態においては、Aのみ(B以外の要素を任意選択的に含んで)を;別の実施形態においては、Bのみ(A以外の要素を任意選択的に含んで)を;さらに別の実施形態においては、AおよびBの両方(その他の要素を任意選択的に含んで)などを意味することができる。
【0028】
本明細書においておよび特許請求の範囲においてここで使用される場合、「または」は、上に定義されたような「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。たとえば、リストにおいて項目を分離するとき、「または」または「および/または」は包括的である、すなわち、多数の要素またはリストの要素、および、任意選択的に、追加のリストアップされていない項目の、少なくとも1つの包含であるが、それらの2つ以上をまた包むと解釈されるものとする。「の1つだけ」もしくは「の厳密に1つ」、または特許請求の範囲において使用されるとき、「からなる」などの、それとは反対が明確に示された用語だけが、多数の要素またはリストの要素の厳密に1つの要素の包含を意味するであろう。一般に、用語「または」は本明細書において使用される場合、「どちらか」、「の1つ」、「のただ1つ」または「の厳密に1つ」などの、排他性の用語に先行されるとき、排他的な別の可能性(すなわち、「1つまたはその他、しかし両方ではない」)を示唆すると解釈されるにすぎないものとする。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用されるとき、特許法の分野において使用されるようなその普通の意味を有するものとする。
【0029】
本明細書においておよび特許請求の範囲において使用される場合、語句「少なくとも1つ」は、1つ以上の要素のリストに関連して、要素のリストにおける要素の任意の1つ以上から選択されるが、要素のリスト内に具体的にリストアップされたそれぞれの要素の少なくとも1つおよびあらゆる要素を必ずしも含まず、そして要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除しない少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきである。この定義はまた、具体的に特定されるそれらの要素に関係しているか関係していないかを問わず、語句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が任意選択的に存在してもよいことを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」または、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態においては、Bがまったく存在せずに(およびB以外の要素を任意選択的に含んで)、2つ以上を任意選択的に含む、少なくとも1つのAを;別の実施形態においては、Aがまったく存在せずに(およびA以外の要素を任意選択的に含んで)、2つ以上を任意選択的に含む、少なくとも1つのBを;さらに別の実施形態においては、2つ以上を任意選択的に含む、少なくとも1つのA、および2つ以上を任意選択的に含む(および他の要素を任意選択的に含んで)、少なくとも1つのBなどを意味することができる。
【0030】
それとは逆であると明らかに示されない限り、2つ以上の工程または行為を含む本明細書で特許請求されるあらゆる方法において、この方法の工程または行為の順番が、この方法の工程または行為が列挙される順番に必ずしも限定されないことがまた理解されるべきである。
【0031】
上の本明細書においてだけでなく、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「持っている(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「からなる(composed of)」などのすべての移行句は、制約がないこと、すなわち、それらを含むが、それらに限定されないことを意味することが理解されるべきである。移行句「からなる(consisting of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」だけは、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、Section 2111.03に明記されているように、それぞれ、制限されたまたは半制限された移行句であるものとする。
【0032】
各表現、たとえば、アルキル、m、nなどの定義は、それが任意の構造において2回以上現れるとき、同じ構造における他の場所でのその定義とは無関係であることを意図される。
【0033】
「置換」または「で置換された」が言外に含まれたものを含むこと、ただしそのような置換が、置換される原子および置換基の許される原子価に一致していること、そしてこの置換が安定な化合物、たとえば、転位、環化、脱離、またはその他の反応によってなどの変形を自発的に経ない化合物、をもたらすことが理解されるであろう。
【0034】
用語「置換(された)」はまた、有機化合物のすべての許容される置換基を含むと考えられる。広い見方において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式の、分枝および非分枝の、炭素環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、たとえば、下で本明細書に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物について1つ以上であっても同じまたは異なるものであってもよい。本発明の目的のためには、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物のあらゆる許容される置換基を有してもよい。本発明は、有機化合物の許容される置換基によっていかなる方法によっても制限されることを意図されない。「1つ以上の」置換基が示されるとき、たとえば、1、2、3、4または5つの置換基があってもよい。
【0035】
用語「低級」は、以下にリストアップされる基のいずれかに添えられる場合、それらの基が7個未満の炭素(すなわち、6個以下の炭素)を含有することを示す。たとえば「低級アルキル」は1〜6個の炭素を含有するアルキル基を意味する。
【0036】
本発明の目的のために、化学元素は、元素の周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics、67th Ed、1986−87、裏表紙に従って特定される。
【0037】
用語「アルキル」は、1〜20個、1〜15個、または1〜10個の炭素原子を含有する脂肪族または脂環式炭化水素を意味する。アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、イソブチル、第三ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルl、2−メチルシクロペンチル、および1−シクロヘキシルエチルが挙げられるが、それらに限定されない。用語「フルオロアルキル」は、1個以上の水素がフッ素で置き換えられているアルキルを意味する。
【0038】
用語「アルコキシ」は、酸素を経て親部分に結合したアルキル基を意味する。用語「フルオロアルコキシ」は、酸素を経て親部分に結合したフルオロアルキル基を意味する。
【0039】
選択される自食作用阻害剤
本発明の一態様は、
nが0、1、2、3または4であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−CH3、低級フルオロアルキル、−CH2F、−CHF2、−CF3、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、または低級アルキニルであり;
R1が独立して、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CH3、−CF3、−C(=O)(低級アルキル)、−CN、−O(低級アルキル)、−O(低級フルオロアルキル)、−S(=O)(低級アルキル)、−S(=O)2(低級アルキル)および−C(=O)O(低級アルキル)からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、低級アルキル、低級フルオロアルキル、低級アルキニルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−または−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−であり;
Zがフェニル、ピリジル、ビニル、モルフィニル、フェナンスロリニル、ナフチル、フリルまたはベンゾ[d]チアゾリルであり;そして−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されている、
式I:
【化2】
【0040】
で表される化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0041】
ある実施形態においては、本発明は、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関するが、ただしこの化合物は、
【化3】
【0042】
(式中、JはCl、OCHF2、OCH2CH3、OCH2CF3、O(CH2)2CH3、OCH(CH3)2、O(CH2)3CH3、またはO(シクロペンチル)である)
ではない。
【0043】
ある実施形態においては、本発明は、nが0である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが1である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが4である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0044】
ある実施形態においては、本発明は、Yが−C(R1)=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0045】
ある実施形態においては、本発明は、Yが−C(H)=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0046】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−N=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0047】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0048】
ある実施形態においては、本発明は、Rが低級アルキルまたは低級フルオロアルキルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0049】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0050】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−CH2F、−CHF2または−CF3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、1つのR1だけが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、2つのR1だけが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、3つのR1だけが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0051】
ある実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのR1が−NH2、−Cl、−NO2、−I、または−OMeである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのR1が−NH2、−Cl、−NO2、−I、または−OMeであり;少なくとも2つのR1が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0052】
ある実施形態においては、本発明は、R2が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2がヒドロキシアルキルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0053】
ある実施形態においては、本発明は、R3が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R3が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R3がヒドロキシアルキルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0054】
ある実施形態においては、本発明は、R2が−CH3であり;R3がHである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2が−Hであり;R3が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0055】
ある実施形態においては、本発明は、Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−または−CH2−である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、Xが−N(H)−または−N(低級アルキル)−である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、Xが−N(H)−である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0056】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Xが−N(H)−であり;R2が−Hであり;R3が−Hであり;Rが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0057】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された4−ピリジルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0058】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたモルフィニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0059】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された2−フリルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0060】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された1−ナフチルまたは2−ナフチルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0061】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたベンゾ[d]チアゾール−5−イルまたはベンゾ[d]チアゾール−6−イルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0062】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0063】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Xが−N(H)−であり;Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0064】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Xが−N(H)−であり;R2が−Hであり;R3が−Hであり;Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0065】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Xが−N(H)−であり;R2が−Hであり;R3が−Hであり;Rが−Hであり;Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0066】
本発明の一態様は、
nが0、1、2、3または4であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−CH3、低級フルオロアルキル、−CH2F、−CHF2、または−CF3であり;
R1が独立して、−H、−CH3、−F、−Cl、−Br、−Iまたは−NO2からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3または−CH(CH3)2からなる群から選択され;
R4、R5およびR8が独立して、−H、−CH3、−CF3、−OCH3、−OCF3、−F、−Cl、−Brまたは−Iからなる群から選択され;
R6およびR7が独立して、−H、−CH3、−CF3、−OCH3、−OCF3、−F、−Cl、−Brもしくは−Iからなる群から選択されるか;またはR6およびR7が一緒になって−OCH2O−である
式II:
【化4】
【0067】
で表される化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0068】
ある実施形態においては、本発明は、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する、ただしこの化合物は、
【化5】
【0069】
ではない。
【0070】
ある実施形態においては、本発明は、nが0である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが1である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが4である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0071】
ある実施形態においては、本発明は、Yが−C(R1)=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0072】
ある実施形態においては、本発明は、Yが−C(H)=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0073】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−N=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0074】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0075】
ある実施形態においては、本発明は、Rが低級アルキルまたは低級フルオロアルキルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0076】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0077】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−CH2F、−CHF2または−CF3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0078】
ある実施形態においては、本発明は、R1が−Fである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−Clである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−Brである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−Iである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−NO2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0079】
ある実施形態においては、本発明は、R2が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2が−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3または−CH(CH3)2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0080】
ある実施形態においては、本発明は、R3が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R3が−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3または−CH(CH3)2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R3が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0081】
ある実施形態においては、本発明は、R4が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R4が−Fである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R4が−Clである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R4が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R4が−OCH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0082】
ある実施形態においては、本発明は、R5が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R5が−Fである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R5が−Clである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R5が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R5が−OCH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0083】
ある実施形態においては、本発明は、R6が−H、−F、−Cl、−Brまたは−Iである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−Fである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−Clである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−Brである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−CF3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−OCH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−OCF3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0084】
ある実施形態においては、本発明は、R6およびR7が一緒になって−OCH2O−である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0085】
ある実施形態においては、本発明は、R7が−H、−F、−Cl、−Brまたは−Iである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R7が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0086】
ある実施形態においては、本発明は、R8が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0087】
本発明の一態様は、
【化6−1】
【化6−2】
【化6−3】
【化6−4】
【0088】
からなる群から選択される、化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0089】
本発明の一態様は、
【化7】
【0090】
またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0091】
ある実施形態においては、本発明は、化合物が自食作用阻害剤であり;そして自食作用阻害剤のEC50が約100nM未満である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0092】
ある実施形態においては、本発明は、約10μM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約5μM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約1μM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約750nM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約500nM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約250nM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約100nM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。
【0093】
ある実施形態においては、本発明は、自食作用の阻害剤であり;そしてPDE5を阻害しない、前述の化合物のいずれか1つに関する。
【0094】
ある実施形態においては、本発明は、自食作用およびPDE5の両方を阻害し;約0.001μM〜約10μMの自食作用IC50を有し;そしてPDE5 IC50対自食作用IC50の比が約10〜約50である、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、自食作用およびPDE5の両方を阻害し;約0.001μM〜約10μMの自食作用IC50を有し;そしてPDE5 IC50対自食作用IC50の比が約50〜約100である、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、自食作用およびPDE5の両方を阻害し;約0.001μM〜約10μMの自食作用IC50を有し;そしてPDE5 IC50対自食作用IC50の比が約100〜約1,000である、前述の化合物のいずれか1つに関する。
【0095】
酸性置換基を有する本発明のある化合物は、製薬上許容される塩基との塩として存在してもよい。本発明はそのような塩を包含する。そのような塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リジン塩およびアルギニン塩が挙げられる。これらの塩は、当業者に公知の方法によって製造されてもよい。
【0096】
本発明のある化合物およびそれらの塩は、2つ以上の結晶形で存在してもよく、本発明は、各結晶形およびそれの混合物を包含する。
【0097】
本発明のある化合物およびそれらの塩はまた、溶媒和物、たとえば水和物の形態で存在してもよく、本発明は、各溶媒和物およびそれの混合物を包含する。
【0098】
本発明のある化合物は、1つ以上のキラル中心を含有し、異なる光学活性形で存在してもよい。本発明の化合物が1つのキラル中心を含有するとき、化合物は2つのエナンチオマー形態で存在し、本発明は、両方のエナンチオマーおよびラセミ混合物などのエナンチオマーの混合物を包含する。エナンチオマーは、当業者に公知の方法によって、たとえば、たとえば結晶化によって分離することができるジアステレオマー塩の形成;たとえば結晶化、気−液もしくは液体クロマトグラフィーによって分離することができるジアステレオマー誘導体もしくは錯体の形成;1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、たとえば酵素的エステル化;またはキラル環境における、たとえばキラル担体たとえばキラル配位子が結合したシリカ上でのもしくはキラル溶媒の存在下での、気−液もしくは液体クロマトグラフィーによって分割されてもよい。所望のエナンチオマーが、上記の分離手順の1つによって別の化学物質へ変換される場合、所望のエナンチオマー形態を遊離させるためにさらなる工程が用いられることは十分理解されるであろう。あるいは、特定のエナンチオマーが、光学活性の試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成により、または不斉転換によって1エナンチオマーを他のものへ変換することにより合成されてもよい。
【0099】
本発明の化合物が2つ以上のキラル中心を含有するとき、それはジアステレオマー形態で存在する可能性がある。ジアステレオマー化合物は、当業者に公知の方法、たとえばクロマトグラフィーまたは結晶化によって分離されてもよく、個々のエナンチオマーは上記の通り分離されてもよい。本発明は、本発明の化合物の各ジアステレオマーおよびそれらの混合物を包含する。
【0100】
本発明のある化合物は、異なる互変異性型でまたは異なる幾何異性体として存在する可能性があり、本発明は、本発明の化合物の各互変異性体および/または幾何異性体ならびにそれらの混合物を包含する。
【0101】
本発明のある化合物は、分離可能であり得る異なる安定な立体配座形態で存在する可能性がある。たとえば立体障害または環歪みのための、不斉単結合周りの制限された回転によるねじれ不斉は、異なる配座異性体の分離を可能にし得る。本発明は、本発明の化合物の各配座異性体およびそれらの混合物を包含する。
【0102】
本発明のある化合物は双性イオン形態で存在する可能性があり、本発明は、本発明の化合物の各双性イオン形態およびそれらの混合物を包含する。
【0103】
本明細書において使用される場合、用語「プロドラッグ」は、ある生理学的化学的プロセスによって親薬物に生体内で変換される試剤を意味する(たとえば、プロドラッグは、生理学的pHにされるとすぐに所望の薬物形態に変換される)。プロドラッグは、ある状況において、それらが親薬物より投与するのが容易であり得るので多くの場合に有用である。それらは、たとえば、経口投与によって生物学的に利用可能であり得るが、親薬物はそうではない。プロドラッグはまた、親薬物よりも薬理学的な組成物に改善された溶解性を有する可能性がある。限定なしに、プロドラッグの例は、水溶解性が有益ではない細胞膜を横切っての送達を容易にするエステル(「プロドラッグ」)としてそれが投与されるが、次に、水溶解性が有益である細胞内に入るとすぐにそれが代謝加水分解されてカルボン酸になる本発明の化合物であろう。プロドラッグは多くの有用な特性を有する。たとえば、プロドラッグは、究極的な薬物より水溶性であり、それによって薬物の静脈内投与を容易にする可能性がある。プロドラッグはまた、究極的な薬物より高いレベルの生物学的利用可能性を有する可能性がある。投与後に、プロドラッグは、血液または組織において酵素的にまたは化学的に開裂されて究極的な薬物を送達する。
【0104】
例示的なプロドラッグは、アミンの遊離水素が(C1〜C6)アルカノイルオキシメチル、1−((C1〜C6)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C1〜C6)アルカノイルオキシ)エチル、(C1〜C6)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C1〜C6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1〜C6)アルカノイル、α−アミノ(C1〜C4)アルカノイル、アリールアクチル(arylactyl)およびα−アミノアシル、またはα−アミノアシル−α−アミノアシル(ここで、前記α−アミノアシル部分は独立して、タンパク質中に見いだされる天然起源のL−アミノ酸のいずれかである)、−P(O)(OH)2、−P(O)(O(C1〜C6)アルキル)2またはグリコシル(炭水化物のヘミアセタールのヒドロキシルの脱離から生じるラジカル)に置き換えられている本発明の化合物のアミンを放出する。
【0105】
医薬組成物
本発明の1つ以上の化合物は、本明細書に記載されるような疾病もしくは病気を治療するもしくは改善するためにそれらだけでか、またはそれらが投与量で生物学的に好適な担体もしくは賦形剤と混合されている医薬組成物で、ヒト患者に投与することができる。これらの化合物の混合物はまた、単純混合物としてかまたは好適な調合医薬組成物で患者に投与することができる。たとえば、本発明の一態様は、治療効果のある用量の式IもしくはIIの化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体と、製薬上許容される希釈剤または担体とを含む医薬組成物に関する。
【0106】
本明細書において使用される場合、治療効果のある用量は、本明細書に記載されるような疾病または病気の予防または減衰をもたらすのに十分な1種または複数種の化合物の量を意味する。本出願の化合物の調合および投与技法は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Co,Easton,PA,最新版などの、当業者に周知の参考文献に見いだすことができる。
【0107】
投与の好適なルートとしては、たとえば、経口、点眼、直腸、経粘膜、局所、または腸内投与;くも膜下、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼球内注射だけでなく、筋肉内、皮下、脊髄内注射を含む、非経口投与が挙げられてもよい。
【0108】
あるいは、たとえば、多くの場合デポーまたは持続放出調合物で、浮腫性部位への化合物の直接注射によって、全身様式よりもむしろ局所様式で化合物を投与してもよい。
【0109】
さらに、標的薬物送達システムで、たとえば、内皮細胞特異的抗体で被覆されたリポソームにおいて薬物を投与してもよい。
【0110】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知である方法で、たとえば、従来型混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥方法を用いて製造されてもよい。
【0111】
本発明に従って使用するための医薬組成物はしたがって、賦形剤と薬剤的に使用することができる製剤への活性化合物の処理を容易にする助剤とを含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用する従来法で調合されてもよい。適切な調合物は、選択される投与のルートに依存する。
【0112】
注射のためには、本発明の試剤は、水溶液において、好ましくはハンクス(Hanks)液、リンゲル(Ringer)液、または生理食塩緩衝液などの生理学的に相溶性の緩衝液において調合されてもよい。経粘膜投与のためには、透過されるべきバリアに適切な浸透剤が調合物中に使用される。そのような浸透剤は当該技術分野において一般に公知である。
【0113】
経口投与のために、化合物は、当該技術分野において周知の製薬上許容される担体と活性化合物を組み合わせることによって容易に調合することができる。そのような担体は、本発明の化合物が、治療されるべき患者による経口摂取のための、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして調合されることを可能にする。経口使用のための医薬製剤は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、生じた混合物を任意選択的にすり潰し、必要ならば、好適な助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工することによって得ることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、サッカロース、マニトール、またはソルビトールを含む、糖類などの充填剤;たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース製剤、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。必要ならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤が添加されてもよい。
【0114】
糖衣錠コアは好適なコーティングが付いている。この目的のために、アラビヤゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶剤もしくは溶剤混合物を任意選択的に含有してもよい、高濃度の糖類溶液が使用されてもよい。染料または顔料が、同定のためにまたは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。
【0115】
経口で使用することができる医薬製剤としては、ゼラチンとグリセロールもしくはソルビトールなどの可塑剤とでできたソフトな、密封カプセルだけでなく、ゼラチンでできた押し込み式カプセルが挙げられる。押し込み式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどのバインダー、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤ならびに、任意選択的に、安定剤との混合剤中に活性原料を含有することができる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの、好適な液体に溶解されてもまたは懸濁されてもよい。さらに、安定剤が添加されてもよい。経口投与のためのすべての調合物は、そのような投与に好適な投与量にあるべきである。
【0116】
口腔投与のためには、組成物は、従来法で調合された錠剤またはトローチ剤の形態をとってもよい。
【0117】
吸入による投与のためには、本発明に従って使用するための化合物は、好適な噴射剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の好適なガスを使って、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレー・プレゼンテーションの形態で便利に送達される。加圧エアゾールの場合には投与量単位は、計量供給量を送達するためのバルブを提供することによって測定されてもよい。たとえば、吸入具または吸入器において使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の粉末ミックスとラクトースもしくはデンプンなどの好適な粉末基剤とを含有して調合されてもよい。
【0118】
化合物は、注射、たとえば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与のために調合することができる。注射用の調合物は、添加された保存剤入りの、単位投与量形態で、たとえば、アンプルでまたは多用量容器で提供されてもよい。組成物は、油状もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとってもよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの調合剤を含有してもよい。
【0119】
非経口投与のための医薬調合物としては、水溶性形態での活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液が適切な油状注射懸濁液として調製されてもよい。好適な親油性溶剤またはビヒクルとしては、ごま油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの、合成脂肪酸エステル、またはリボソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を高める物質を含有してもよい。任意選択的に、懸濁液はまた、好適な安定剤または高濃度溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を上げる試剤を含有してもよい。
【0120】
あるいは、活性原料は、使用前に、好適なビヒクル、たとえば、滅菌したピロゲンを含まない水で構成するための粉末形態にあってもよい。
【0121】
化合物はまた、たとえば、ココアバターまたはその他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を含有する、坐薬または保持浣腸などの直腸組成物に調合されてもよい。
【0122】
前に記載された調合物に加えて、化合物はまた、デポー製剤として調合されてもよい。そのような長時間効果のある調合物は、移植によって(たとえば皮下でもしくは筋肉内でまたは筋肉内注射によって)投与されてもよい。このように、たとえば、化合物は、好適なポリマー材料もしくは疎水性材料(たとえば許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を使って、または溶けにくい誘導体として、たとえば、溶けにくい塩として調合されてもよい。
【0123】
あるいは、疎水性医薬化合物のためのその他の送達システムが用いられてもよい。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物のための送達ビヒクルまたは担体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなどのある有機溶剤がまた、通常より大きい毒性という代償を払ってであるが、用いられてもよい。さらに、化合物は、治療薬を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの、持続放出システムを用いて送達されてもよい。様々な持続放出材料が確立されており、当業者によく知られている。持続放出カプセルは、それらの化学的性質に依存して、2、3週間から100日超まで化合物を放出することができる。治療用薬剤の化学的性質および生物学的安定性に依存して、タンパク質安定化のための追加の戦略が用いられてもよい。
【0124】
医薬組成物はまた、好適な固相もしくはゲル相担体または賦形剤を含んでもよい。そのような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0125】
本発明の化合物の多くは、製薬上相溶性の対イオンとの塩(すなわち、製薬上許容される塩)として提供されてもよい。「製薬上許容される塩」は、受容者への投与時に、直接にか間接にかのどちらかで、本発明の化合物または化合物のプロドラッグを提供することできるあらゆる非毒性塩を意味する。「製薬上許容される対イオン」は、受容者への投与時に塩から放出されるときに毒性でない塩のイオン性部分である。製薬上相溶性の塩は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むが、それらに限定されない、多くの酸を使って形成することができる。塩は、相当する遊離塩基形態より水性もしくはその他のプロトン性溶剤に可溶性である傾向がある。
【0126】
製薬上許容される塩を形成するために一般に用いられる酸としては、パラ−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、ビ酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸などの有機酸だけでなく、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびに関連無機酸および有機酸が挙げられる。そのような製薬上許容される塩としてはしたがって、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ベータ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩および同様な塩が挙げられる。好ましい製薬上許容される酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸で形成されるもの、そしてとりわけマレイン酸などの有機酸で形成されるものが挙げられる。
【0127】
酸性官能基と製薬上許容される塩を形成するための好適な塩基としては、ナトリウム、カリウム、およびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛などの、その他の金属の水酸化物;アンモニア、および非置換もしくはヒドロキシ置換モノ−、ジ−、またはトリアルキルアミンなどの、有機アミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−第三ブチルアミン、もしくはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどの、N,N−ジアルキル−N−(ヒドロキシアルキル)−アミン、またはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどの、モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミン);N−メチル−D−グルカミン;ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0128】
本発明において使用するのに好適な医薬組成物としては、活性原料がその意図される目的を達成するのに有効な量で含有される組成物が挙げられる。より具体的には、治療効果のある量は、治療中の対象の現存する症状の進行を防ぐためにまたは症状を軽減するために有効な量を意味する。有効量の決定は十分に当業者の能力内にある。
【0129】
選択される使用方法
本発明の一態様は、対象における自食作用活性が変えられ、そして治療または予防が達成されるように本発明の化合物を対象に投与する工程を含む、自食作用の阻害が有益である対象における自食作用の阻害方法を提供する。ある実施形態においては、対象はヒトである。
【0130】
用語「治療すること」は本明細書において使用される場合、病気の予防もしくは病気の管理、および/または病気の治療を提供するという目的のための、本明細書に記載される1つ以上の化合物の対象への投与および/または塗布を包含する。本開示の目的のための「治療」は、治療を提供してもよいが、提供しなければならないわけではなく;むしろ、「治療」は病気の管理の形態にあってもよい。本明細書に記載される化合物が、癌を含む、望まれていない増殖型細胞を治療するために使用されるとき、「治療」は、正常細胞への最小限の破壊影響で、望ましくない増殖型細胞の部分的または全面的破壊を含む。細胞レベルでの、癌細胞を含む、望まれていない急速増殖型細胞の治療の所望の機構はアポトーシスである。
【0131】
用語「予防すること」は本明細書において使用される場合、臨床的に明らかな望まれていない細胞増殖の開始を防ぐもしくは遅くすることか、危険にさらされた個体における望まれていない急速な細胞増殖の前臨床的に明らかな段階の開始を防ぐもしくは遅くすることかのどちらかを含む。悪性細胞の転移の防止もしくは鈍化または悪性細胞の進行を阻むかもしくは逆転させることもまたこの定義によって包含されることが意図される。これには、前癌状態および癌を進行させるという危険にされされているものの予防的治療が含まれる。血管形成またはステント手順を受けた対象における再狭窄の防止または鈍化もまたこの定義によって包含される。
【0132】
治療の目的のための用語「対象」には、自食作用の阻害が有益であろう、疾患ありと診断された、疾患の症状を有する、または疾患を進行させるという危険にさらされているあらゆるヒトまたは動物対象が含まれる。予防の方法のためには対象はあらゆるヒトまたは動物対象である。予防の目的上、例示するために、対象は、癌などの、望まれていない急速な細胞増殖によって特徴付けられる疾患にかかる危険にさらされているかまたは疾患に遺伝学的にかかりやすいヒト対象であってもよい。対象は、発癌物質への暴露のために、望まれていない急速な細胞増殖によって特徴付けられる疾患に遺伝学的にかかりやすいために危険にさらされているなどであってもよい。ヒト治療のために有用であることに加えて、本明細書に記載される化合物はまた、イヌ、ネコ、馬、乳牛、ヒツジ、および豚などの、しかしそれらに限定されない、ペットおよび家畜を含む、哺乳類の獣医治療のためにも有用である。
【0133】
本発明の一態様は、治療効果のある量の式IもしくはIIの1つ以上の化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、癌の治療または予防方法に関する。
【0134】
自食作用の抑制は、放射線増感および化学増感を促進することによる新しい抗癌治療であると提案されてきた。癌治療の動物モデルにおいて、重要な自食作用遺伝子ATG5に抗するshRNAを使ってか抗マラリア薬物クロロキンを使ってかのどちらかでの治療誘発自食作用の阻害は、活性化p53かアルキル化化学療法かのどちらかが腫瘍細胞を駆動するために使用されたMyc−駆動腫瘍の細胞死および腫瘍退縮を高めた(Amaravadi,R.K.,et al.,Autophagy inhibition enhances therapy−induced apoptosis in a Myc−induced model of lymphoma.J Clin Invest,2007.117(2):326−36ページ)。クロロキンは、大きい自食小胞の用量依存性蓄積を引き起こし、アルキル化治療誘発細胞死をATG5のノックダウンと類似の程度まで高める。慢性骨髄性白血病(CML)の場合には、クロロキンは、イマチニブによって誘発される、CML細胞株、K562の死を著しく高めた。さらに、イマチニブ抵抗性細胞株、BaF3/T315IおよびBaF3/E255Kは、イマチニブおよびクロロキンでの共治療によって死に誘導することができる。これらの研究は、自食作用の阻害が従来の化学療法を助長する可能性があることを示唆する。
【0135】
米国国立癌研究所(National Cancer Institute)の癌のアルファベット順リストには、急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、幼児期;急性骨髄白血病、成人;副腎皮質癌腫;副腎皮質癌腫、幼児期;エイズ関連リンパ腫;エイズ関連悪性腫瘍;肛門癌;星状細胞腫、幼児期小脳の;星状細胞腫、幼児期脳の;胆管癌、肝外の;膀胱癌;膀胱癌、幼児期;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫、幼児期;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、幼児期;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、幼児期;脳腫瘍、脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、幼児期;脳腫瘍、上衣腫、幼児期;脳腫瘍、髄芽腫、幼児期;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉腫瘍、幼児期;脳腫瘍、視経路および視床下部神経膠腫、幼児期;脳腫瘍、幼児期(その他);乳癌;乳癌および妊娠;乳癌、幼児期;乳癌、男性;気管支腺腫/カルチノイド、幼児期;カルチノイド腫瘍、幼児期;カルチノイド腫瘍、胃腸の;癌腫、副腎皮質の;癌腫、膵島細胞;原発不明の癌腫;中枢神経系リンパ腫;小脳星状細胞腫、幼児期;脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、幼児期;頸部癌;幼児期癌;慢性リンパ球白血病;慢性骨髄性白血病;慢性脊髄増殖性疾患;腱鞘の明細胞肉腫;大腸癌;結腸直腸癌、幼児期;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜癌;上衣腫、幼児期;上皮癌、卵巣の;食道癌;食道癌、幼児期;ユーイング腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍、幼児期;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼癌、眼球内メラノーマ;眼癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(胃袋)癌;胃(胃袋)癌、幼児期;胃腸カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外の、幼児期;胚細胞腫瘍、性腺外の;胚細胞腫瘍、卵巣の;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫、幼児期脳幹;神経膠腫、幼児期視経路および視床下部;毛様細胞白血病;頭頚部癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(原発性の);肝細胞(肝臓)癌、幼児期(原発性の);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、幼児期;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部および視経路神経膠腫、幼児期;眼球内メラノーマ;膵島細胞癌腫(内分泌膵臓);カポジ肉腫;腎臓癌;咽頭癌;咽頭癌、幼児期;白血病、急性リンパ芽球性の、成人;白血病、急性リンパ芽球性の、幼児期;白血病、急性骨髄の、成人;白血病、急性骨髄の、幼児期;白血病、慢性リンパ球の;白血病、慢性骨髄性の;白血病、毛様細胞;唇および口腔癌;肝臓癌、成人(原発性の);肝臓癌、幼児期(原発性の);肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ芽球性白血病、成人急性の;リンパ芽球性白血病、幼児期急性の;リンパ球白血病、慢性の;リンパ腫、エイズ関連の;リンパ腫、中枢神経系(原発性の);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキンの、成人;リンパ腫、ホジキンの、幼児期;リンパ腫、妊娠中のホジキンの;リンパ腫、非ホジキンの、成人;リンパ腫、非ホジキンの、幼児期;リンパ腫、妊娠中の非ホジキンの;リンパ腫、一次中枢神経系;マクログロブリン血症、ヴァルデンストレームの;男性乳癌;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、幼児期;悪性胸腺腫;髄芽腫、幼児期;メラノーマ;メラノーマ、眼球内の;メルケル細胞癌腫;中皮腫、悪性の;原発不明の転移性頚部偏平上皮癌;多発性内分泌腫瘍症候群、幼児期;骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性の;骨髄白血病、幼児期急性の;骨髄腫、多発性の;脊髄増殖性疾患、慢性の;鼻腔および副鼻腔癌;上咽頭癌;上咽頭癌、幼児期;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、幼児期;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺癌;口腔癌、幼児期;口腔および唇癌;口腔咽頭癌;骨の骨肉腫/悪性線維性組織球腫;卵巣癌、幼児期;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、幼児期;膵臓癌、膵島細胞;副鼻腔および鼻腔癌;副甲状腺癌;陰茎癌;褐色細胞腫;松果腺およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、幼児期;下垂体腫瘍;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠および乳癌;妊娠およびホジキンリンパ腫;妊娠および非ホジキンリンパ腫;一次中枢神経系リンパ腫;原発性肝臓癌、成人;原発性肝臓癌、幼児期;前立腺癌;直腸癌;腎臓細胞(腎臓)癌;腎臓細胞癌、幼児期;腎臓骨盤および尿管、移行細胞癌;網膜芽細胞腫;黄紋筋肉腫、幼児期;唾液腺癌;唾液腺癌、幼児期;肉腫、ユーイング腫瘍;カポシ肉腫;骨の肉腫(骨肉腫)/悪性線維性組織球腫;肉腫、黄紋筋肉腫、幼児期;肉腫、軟組織、成人;肉腫、軟組織、幼児期;セザリー症候群;皮膚癌;皮膚癌、幼児期;皮膚癌(メラノーマ);皮膚癌腫、メルケル細胞;小細胞肺癌;小腸癌;軟組織肉腫、成人;軟組織肉腫、幼児期;原発不明の偏平頸部癌、転移性の;胃袋(胃の)癌;胃袋(胃の)癌、幼児期;テント上原始神経外胚葉腫瘍、幼児期;T細胞リンパ腫、皮膚の;睾丸癌;胸腺腫、幼児期;胸腺腫、悪性の;甲状腺癌;甲状腺癌、幼児期;腎臓骨盤および尿管の移行細胞癌;絨毛腫瘍、妊娠の;原発部位不明癌、幼児期;幼児期の異常癌;尿管および腎臓骨盤、移行細胞癌;尿道癌;子宮肉腫;膣癌;視経路および視床下部神経膠腫、幼児期;外陰癌;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;ならびに腎芽細胞腫瘍が含まれる。本発明の方法は、そのようなタイプの癌を治療するために有用である可能性がある。
【0136】
本発明の別の態様は、治療効果のある量の式IもしくはIIの1つ以上の化合物、またはそれらの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、急性膵炎の治療または予防方法に関する。
【0137】
膵炎は、最終的に器官それ自体の破壊につながる消化酵素の放出によって仲介される膵臓の炎症である。膵炎は、多くの合併症のある深刻な致命的病気であり得る。重症例においては、出血、心臓、肺および腎臓への組織損傷、ならびに感染症が起こる可能性がある。急性膵炎の約80,000の症例が米国において毎年発生し;それらの約20パーセントが深刻である。膵炎のための公知の治療はない。膵炎を管理するための現行アプローチは、それが自然に消散するのを待つことと、それが発生した場合心臓、肺および腎臓合併症の治療とを含む。
【0138】
自食作用は、急性膵炎によって誘発される細胞損傷を仲介するのに重要な役割を果たすことを示してきた。早期に活性化された膵臓自体の消化プロテアーゼによる膵臓の自己消化が急性膵炎の開始にとって重要であると考えられる。リソソーム加水分解酵素は膵臓トリプシノーゲン活性化に重要な役割を果たすことが知られているが、どこでそしてどのようにしてトリプシノーゲンがこれらのリソソーム酵素と接触するかは、はっきりしないままである。近年、自食作用は、膵炎の動物モデルにおいて膵臓消化酵素の放出に重要な役割を果たすことが提案されている(Hashimoto,D.,et al.,Involvement of autophagy in trypsinogen activation within the pancreatic acinar cells.J Cell Biol,2008.181(7):1065−72ページ;およびOhmuraya,M.and K.Yamamura,Autophagy and acute pancreatitis:a novel autophagy theory for trypsinogen activation.Autophagy,2008.4(8):1060−2ページ)。重要な自食作用遺伝子Atg5にとって欠陥がある、Atg5−/−マウスにおいて、セルレインによって誘発される急性膵炎の重症度は、有意に低下したレベルのトリプシノーゲン活性化で大きく低下する。したがって、自食作用の活性化は、トリプシンへのトリプシノーゲンの活性化を仲介することによって膵臓腺房細胞において有害な影響を及ぼす可能性がある。自食作用の阻害は、急性膵炎においてトリプシノーゲン活性化をブロックするためのまたとない機会を提供する可能性がある。自食作用阻害剤の開発は、急性膵炎用のピカ新の阻害剤を提供する可能性がある。
【0139】
本発明の別の態様は、治療効果のある量の式IもしくはIIの1つ以上の化合物、またはそれらの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、細胞内病原体によって引き起こされる疾病の治療または予防方法に関する。たとえば、Chenらに付与される米国特許出願公開第2009/0111799号明細書(その全体を参照により本明細書によって援用される)を参照されたい。
【0140】
近年の研究は、増殖するために自食胞を使用するウィルスおよび原生動物だけでなく、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、赤痢菌種(Shigella spp.)、およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)などの、細菌を含む細胞内病原体からの細胞防御における自食作用の役割を確証してきた。自食作用の遂行は、養分状態、成長因子/サイトカイン、および低酸素症状態などの主として生理学的因子によって左右される上流信号変換システムによって調整される。自食作用の薬理学的な誘発は、先天性免疫のこのエフェクターが細胞内病原体から防御するための引き金になるかまたは防御するために増幅されるであろう治療戦略である。
【0141】
本発明の別の態様は、脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体を式IまたはIIの1つ以上の化合物と接触させる工程を含む脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の不活性化方法であって、この脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体がUSP3およびUSP10を含む方法に関する。そのような方法は、脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の活性によって引き起こされるかまたはこの活性によって高められるあらゆる状態を改善するために用いることができる。
【0142】
併用療法
本発明の一態様においては、本発明の化合物、またはそれの製薬上許容される塩は、単独でかまたは別の治療薬と組み合わせて癌および膵炎などの疾病を治療するために使用することができる。本発明の化合物は単独でかまたは追加の試剤、たとえば、治療薬と組み合わせて使用することができ、前記追加の試剤はその意図される目的のために熟練者によって選択されることが理解されるべきである。たとえば、追加の試剤は、本発明の化合物によって治療中の疾病または状態を治療するために有用であると当該技術分野において認められている治療薬であることができる。追加の試剤はまた、治療組成物に有益な特質を与える試剤、たとえば、組成物の粘度に影響を及ぼす試剤であることができる。
【0143】
本発明によって考えられる併用療法は、たとえば、別個の医薬調合物での本発明の化合物、またはそれの製薬上許容される塩と、追加の試剤との投与だけでなく、単一医薬調合物での本発明の化合物、またはそれの製薬上許容される塩と、追加の試剤との投与を含む。言い換えれば、共投与は、両試剤の併用の有益な効果を提供するように対象への少なくとも2つの試剤の投与を意味するものとする。たとえば、試剤は、同時にまたはある時間にわたって順次投与されてもよい。
【0144】
本発明内に含められる併用は、それらの意図される目的のために有用なそれらの併用であることがさらに理解されるべきである。下に記述される試剤は、目的上例示的であり、限定されることを意図されない。本発明の一部である、併用は、本発明の化合物と下のリストから選択される少なくとも1つの追加の試剤とであることができる。併用が、形成される組成物がその意図される機能を果たすことができるようなものである場合、併用はまた、2つ以上の追加の試剤、たとえば、2つもしくは3つの追加の試剤を含むことができる。
【0145】
たとえば、本発明の一態様は、癌の治療のために抗血管新生阻害剤と組み合わせての小分子自食作用阻害剤(たとえば式IまたはIIのもの)の使用に関する。抗血管新生阻害剤は、腫瘍生存および成長を支援するために必要とされる腫瘍における血管の成長を抑えることによって腫瘍成長を阻害すると期待されることが知られている。たとえば、血管新生抑制剤エンドスタチンおよび関連化学薬品は、血管の構築を抑え、腫瘍成長を低下させる。抗血管新生薬物の数百の臨床試験が現在進行中である。患者での試験において、抗血管新生治療は、比較的少ない副作用で腫瘍成長を抑えることができる。しかし、抗血管新生治療が単独で患者生存を延ばすのに不十分ではない可能性があり;従来の化学療法との併用はそれ故有益である可能性がある。特に、自食作用阻害剤は、単独でかまたは抗血管新生治療と組み合わせて機能する新しい選択肢を提供する可能性がある。
【0146】
エンドスタチンは、ベクリン1およびベータ−カテニン・レベルを調節することによって内皮細胞において自食作用を誘発することが示されている(Nguyen,T.M.,et al.,Endostatin induces autophagy in endothelial cells by modulating Beclin 1 and beta−catenin levels.J Cell Mol Med,2009)。本明細書において開示されるように、自食作用の阻害は飢餓条件下に癌細胞の小集団を選択的に殺すことが分かった。それ故、抗血管新生治療は追加の代謝ストレスを誘発して、普通は細胞毒性がない、自食作用阻害剤に対して癌細胞を敏感にする可能性があることが提案される。したがって、抗血管新生治療と抗自食作用治療との併用は、正常細胞への細胞毒性なしの癌の治療のための新たな選択肢を提供する可能性がある(Ramakrishnan,S.,et al.,Autophagy and angiogenesis inhibition.Autophagy,2007.3(5):512−5ページ)。
【0147】
本発明の化合物と併用することができる抗血管新生剤の非限定的な例としては、たとえば、次のものが挙げられる:ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、カルボキシアミドトリアゾール、TNP−470、CM101、IFN−α、IL−12、血小板因子−4、スラミン、SU5416、トロンボスポンジン、VEGFR拮抗薬、ヘパリンと一緒の血管新生抑制ステロイド、軟骨由来血管新生阻害因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、アンギオスタチン、エンドスタチン、2−メトキシエストラジオール、テコガラン、トロンボスポンジン、プロラクチン、αVβ3阻害剤およびリノミド。
【0148】
さらに、Thompsonらに付与される米国特許出願公開第2008/0269259号明細書(その全体を参照により本明細書によって援用される)に記載されているように、自食作用阻害剤は、解糖依存性癌を解糖できない細胞に変換する1つ以上の抗癌化合物と1つ以上の自食作用阻害剤とを組み合わせることによって、解糖依存性癌を有すると特定された対象を治療するために使用することができる。解糖依存性癌を解糖できない細胞に変換する抗癌化合物の例:アルキル化剤;ニトロソウレア;抗腫瘍抗生物質;コルチコステロイドホルモン;抗エストロゲン;アロマターゼ阻害剤;プロゲスチン;抗アンドロゲン;LHRHアゴニスト;キナーゼ阻害剤;ならびに抗体療法;たとえば、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、カルマスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、ミトキサントロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、gleevac、イレッサ、タルセバ、ハーセプチン、アバスチン、L−アスパラギナーゼおよびトレチノイン。
【0149】
投与量
本明細書において使用される場合、「治療効果のある量」または「治療効果のある用量」は、病気の進行を完全にまたは部分的に阻害するかまたは病気の1つ以上の症状を少なくとも部分的に軽減する、本発明の化合物または2つ以上のそのような化合物の組み合わせの量である。治療効果のある量はまた予防的に有効である量であることができる。治療効果のある量は、患者のサイズおよび性、治療されるべき病気、病気の重症度および求められる結果に依存するであろう。所与の患者について、治療効果のある量は、当業者に公知の方法によって決定することができる。
【0150】
本発明の方法に使用される任意の化合物について、治療効果のある用量は、細胞アッセイから最初に推定することができる。たとえば、用量は、細胞アッセイにおいて測定されるようなIC50(すなわち、半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む血中濃度範囲を達成するよう細胞および動物モデルにおいて調合することができる。ある場合には、そのような測定は化合物への血漿タンパク質の結合影響を近似するので、3〜5%血清アルブミンの存在下にIC50を測定することが適切である。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。
【0151】
治療効果のある用量は、患者における症状の改善をもたらす化合物の量を意味する。そのような化合物の毒性および治療効果は、たとえば、最大耐量(MTD)およびED50(50%最大反応のための有効用量)を測定するための細胞培養物または実験動物における標準薬剤学手順によって測定することができる。毒性効果と治療効果との用量比が治療指数であり、それは、MTDとED50との比として表すことができる。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトで使用するためのある範囲の投与量を調合するのに用いることができる。そのような化合物の投与量は好ましくは、毒性がほとんどないかまったくなしでED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与ルートに依存してこの範囲内で変わってもよい。的確な調合、投与ルートおよび投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(たとえば、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p1における、Fingl et al.,1975を参照されたい)。危機状態の治療においては、MTDに近づく緊急のボーラスまたは注入が急速な反応を得るために必要とされる可能性がある。
【0152】
投与量および間隔は、キナーゼ調節効果、または最小限の有効濃度(MEC)を維持するのに十分である活性部分の血漿レベルを提供するために個々に調節されてもよい。MECは各化合物について変わるであろうが、生体内データから推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、投与の個々の特性およびルートに依存するであろう。しかし、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを用いて血漿濃度を測定することができる。
【0153】
投与間隔はまた、MEC値を用いて決定することができる。化合物は、症状の所望の改善が達成されるまで、10〜90%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは50〜90%の時間にMECより上の血漿レベルを維持する投薬計画を用いて投与されるべきである。局所投与または選択的摂取の場合には、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度に関連しなくてもよい。
【0154】
投与される組成物の量は、もちろん、治療中の対象に、対象の体重、苦痛の重症度、投与の方法および処方医師の判断に依存するであろう。
【0155】
キット
本発明の化合物および組成物(たとえば、式IまたはIIの化合物および組成物)は、必要ならば、キット(たとえば、パックまたはディスペンサー装置)で提供されてもよい。パックは、たとえば、ブリスター・パックなどの、金属またはプラスチック箔を含んでもよい。パックまたはディスペンサー装置には、本明細書に記載されるあらゆる方法での化合物の使用についての使用説明書が添えられていてもよい。相溶性の医薬担体において調合された本発明の化合物を含む組成物がまた調製され、適切な容器に入れられ、指示病気の治療についてラベルを貼られてもよい。使用説明書がまた提供されてもよい。
【実施例】
【0156】
今大まかに記載されている本発明は、本発明のある態様および実施形態の例示目的のために挙げられるにすぎない、そして本発明を限定することを意図されない、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【0157】
実施例1:自食作用の小分子阻害剤の単離
自食作用の機構を探究し、そしてそれを活性化することができる追加の小分子を特定するために、自食作用調整剤についてのハイスループット画像ベース選別を開発した。このシステムは、自食作用の誘発時の自食胞膜へのGFPに結合した軽鎖3(LC3−GFP)の局在化をうまく利用する(Zhang,L.,Yu,J.,Pan,H.,Hu,P.,Hao,Y.,Cai,W.,Zhu,H.,Yu,A.D.,Xie,X.,Ma,D.,et al.(2007).Small molecule regulators of autophagy identified by an image−based high−throughput screen.Proc Natl Acad Sci USA 104,19023−19028)。哺乳類LC3、酵母ATG8のオーソログは、特異的に自食胞膜をマークすることが示されている(Kabeya,Y.,Mizushima,N.,Ueno,T.,Yamamoto,A.,Kirisako,T.,Noda,T.,Kominami,E.,Ohsumi,Y.,and Yoshimori,T.(2000).LC3,a mammalian homologue of yeast Apg8p,is localized in autophagosome membranes after processing.EMBO J 19,5720−5728;およびMizushima,N.,and Yoshimori,T.(2007).How to interpret LC3 immunoblotting.Autophagy 3,542−545)。1細胞当たりのLC3−GFP陽性自食胞の数は、正常成長条件下では非常に低いが、血清飢餓またはラパマイシンの添加時に急速に増加する。しかし、LC3−GFPの細胞レベルを上げる化合物が自食作用の分解活性を必ずしも上げることができるわけではない。代わりに、LC3−GFPの増加は、細胞死に関係するかまたはリソソーム欠陥の結果であり、こうして自食作用の閉塞に関係する可能性がある。
【0158】
480の公知の生物活性化合物の選別において、LC3−GFPベースのハイスループット画像選別を、細胞損傷を引き起こす結果としてかまたは下流リソソーム機能をブロックすることによってLC3−GFPのレベルを非特異的に上げるものから自食症分解を特異的に誘発することができる化合物の特定を可能にする長期タンパク質分解についてのロースループットアッセイと結合させた。選別の結果は、自食作用を誘発し、そして明らかな細胞損傷を引き起こすことなく長期タンパク質分解を促進することができる、そのうちの7つがFDA認可薬物である、8つの化合物の特定につながった(Zhang,L.,Yu,J.,Pan,H.,Hu,P.,Hao,Y.,Cai,W.,Zhu,H.,Yu,A.D.,Xie,X.,Ma,D.,et al.(2007).Small molecule regulators of autophagy identified by an image−based high−throughput screen.Proc Natl Acad Sci USA 104,19023−19028)。
【0159】
この選別において、以前はPDE5阻害剤として知られた(MacPherson,J.D.,Gillespie,T.D.,Dunkerley,H.A.,Maurice,D.H.,and Bennett,B.M.(2006).Inhibition of phosphodiesterase 5 selectively reverses nitrate tolerance in the venous circulation.J Pharmacol Exp Ther 317,188−195)、公知の生物活性化合物、MBCQ(図1A)が、自食作用阻害剤活性を有すると特定された。ラパマイシン(0.2μM)でのLC3−GFP−H4細胞の刺激は、予期される通りにLC3−GFPのレベルの増加につながった。MBCQの存在は、ラパマイシン刺激LC3−GFPだけでなく基本的レベルを両方とも阻害した。LC3−GFPドットの低下は、ラバマイシン単独のそれと比較してMBCQおよびラバマイシンの添加1時間後に明らかであった。ハイスループット顕微鏡法を用いるLC3−GFPドットの定量的分析(図1B)。MBCQの処理は、対照とまたはラバマイシン処理単独と比較してLC3−GFPドットのスポット強度だけでなく数、スポットサイズをも低下させた。LC3−GFPの強度を、ラバマイシン単独のそれに対してラバマイシンおよびMBCQ両方一緒の存在下に両方とも測定し、MBCQのIC50は、10mMのワーキング濃度を有する、一般に使用されるタイプIII PtdIns3Pキナーゼ阻害剤、3−メチル−アデニン(3−MA)より約10,000倍強力である、0.788μMであると測定された。
【0160】
MBCQによる自食作用の阻害を確認するために、H4−LC3細胞、293T細胞およびマウス胎児線維芽細胞をMBCQで処理し、内因性LC3IIのレベルをウェスタンブロットによって測定した。MBCQの阻害活性と一致して、LC3IIのレベルは、ラバマイシン単独のそれと比較してMBCQおよびラパマイシン共処理したH4−LC3、293TおよびMEF細胞において一貫して低下した。LC3−GFP分析(図1B)と一致して、LC3IIのレベルは、ラバマイシン単独のそれと比較して1時間のMBCQおよびラパマイシンでの処理後に有意により低かった。
【0161】
飢餓誘発自食作用へのMBCQの影響を測定するために、H4−LC3−GFP細胞をHanks緩衝液中で1時間培養し、それは、LC3−GFPドットのレベル(図2)の増加によって実証されるように自食作用を誘発するのに十分であった。MBCQ(5μM)の存在下に、飢餓誘発自食作用は有意に低下する。LC3−GFPスポット数、スポットサイズおよびスポット強度の定量的測定は、飢餓誘発自食作用がMBCQ(5μM)または3−MA(10mM)またはウォルトマンニン(0.1μM)の陽性対照によって阻害されることを裏付けた。
【0162】
ラパマイシンで処理された細胞の超微細構造をMBCQの存在または不在下に測定した。MBCQ単独で4時間処理された細胞は、ビヒクル(1%DMSO)で処理された対照と形態学的に似ていることが分かった。ラパマイシンの処理は、特徴的な二重膜を持った大量の自食胞の形成につながった。そのような二重膜自食胞は、ラパマイシンおよびMBCQ一斉に処理された細胞においては目立って不在であった(図3)。
【0163】
実施例2:MBCQの構造活性相関(SAR)
MBCQは4−ヘテロ原子置換キナゾリン化合物である。SARの目的のために、MBCQの構造を、図4Aに示されるように3つの部分すなわち部分A、BおよびC、に分割した。
【0164】
部分Aにおいて、異なる置換基を6−位へ導入し:ハロゲン、電子不足基(たとえば、ニトロおよびメチルスルホニル基)、および電子に富む基(たとえばメトキシおよびアミノ基);ハロゲンを7−位へ導入し;ハロゲンを6−および8−位の両方へ導入し;ならびにメチルまたはアミノ基を2−位へ導入した。
【0165】
部分Bについては、窒素を酸素または硫黄原子で置き換え;メチレン鎖を伸ばし;および分枝点(すなわち置換)をメチレン鎖に加えた。
【0166】
部分Cにおいて、4−ピリジル、モルホリニル、ならびに置換および非置換フェニルを含む、異なる芳香族サイクルの影響を研究した。置換フェニルの置換基としては、電子吸引性基(たとえば、ハロゲン、ニトロ、およびトリフルオロメチル基)、置換フェニル5)ならびに電子供与性基(たとえばアミノ、メトキシ基)の両方が挙げられる。
【0167】
MBCQ構造上で上記の修正をした合計194種の化合物を合成し、自食作用を阻害することにおけるそれらの活性を分析した。
【0168】
SAR結果は次の通りまとめることができる(また図4Bも参照されたい):
(1)キナゾリンの6−位の置換基の性質は、活性にとって決定的に重要である。電子吸引性置換基(たとえばニトロまたはフッ素基)は活性を向上させる(たとえば図16におけるC29)。6−位に電子供与性置換基(たとえばアミノ基)を持った化合物は活性をまったく持たない(たとえば図14におけるC71)。6−位に置換基なしの化合物は穏やかな活性を有する。
【0169】
(2)7−および8−位の置換基は、活性に負の影響を及ぼす。たとえば、キナゾリンが7−または8−位にモノ置換されているとき、化合物は活性を失い(たとえばC83)、6−および8−位の両方にクロロ基でビス−置換されている化合物と同じである(たとえばC19、C20)。
【0170】
(3)部分A上の立体障害は活性を妨げる(たとえばC68、C01)。
【0171】
(4)部分Bにおけるヘテロ原子がOまたはSであるとき、活性はまったく検出されなかった(たとえばC101、C45)。
【0172】
(5)化合物は、部分Cにおけるベンゼンがモルホリンまたはフランで置き換えられるときに活性を失う(たとえばC78、C54)。
【0173】
(6)部分Cにおいて4−CF3、4−NO2または4−ピリジンを持った化合物はまったく活性を示さない(たとえばC15)。同時に3−、4−および5−位に置換基があるとき、活性はまったく検出されなかった(たとえばC15)。
【0174】
(7)部分Bにおけるヘテロ原子が、1〜3個の炭素に連結された、窒素であるときに高活性は観察された(たとえばC16、C51およびC13)。4個以上のメチレン単位が部分Aと部分Cとを連結する鎖中にあるとき活性はまったく検出されなかった(たとえばC30、C49)。さらに、分枝鎖上の嵩高い置換基は活性なしにつながる(たとえばC81、C86およびC94)。さらに、分枝鎖上の異なる光学的配置(RまたはS)で感知できるほどの効果は検出されなかった(たとえばC69およびC84、C76およびC77)。
【0175】
合成され、そしてそれらの自食作用阻害活性について分析されたMBCQ誘導体のうちで、44種の化合物がMBCQのそれと類似のまたはそれより上の自食作用阻害活性を示した(図16)。同時に、構造上MBCQに似ているが自食作用阻害活性をまったく持たない、C71およびC82などの、多数の化合物が特定され、その後の実験において陰性対照として使用された(図15)。
【0176】
自食作用への阻害活性を確認するために、マウス胎児線維芽(MEF)細胞を、ラバマイシンの存在または不在下にC29、C43またはC71で4時間処理し、自食作用のレベルをLC3ウェスタンブロッティングによって測定した。C43またはC29の処理はラバマイシンによって誘発される自食作用を阻害したが、陰性対照C71は阻害しなかった(図5A)。
【0177】
自食作用へのC29およびC43の影響は、電子顕微鏡法によってさらに確認された。ラバマイシン処理MEF細胞において、予期されるように多くの多重膜の小胞だけでなく多数の二重膜の自食小胞が観察された(図5B)。ラバマイシンおよびC29またはC43で処理された細胞においては、自食胞は、ビヒクル処理細胞におけるように概して存在しない(図5)。
【0178】
実施例3:MBCQは自食作用を含む選択的細胞死モデルを阻害する
細胞活性へのMBCQの影響を特徴付けるために、細胞生存および細胞サイクルへのMBCQの影響を以下に概説されるように測定した。H4細胞をMBCQ(5μM)で5日間処理し、トリパンブルーの存在下での細胞数計数のために毎日採取した。図6Aに示されるように、MBCQの処理は、細胞増殖にまったく影響を及ぼさなかった。MBCQ(5μM)で24時間および48時間処理されたH4細胞における細胞サイクルプロフィールおよび可能なアポトーシス細胞もまた測定した。図6Bに示されるように、MBCQは細胞サイクル分布に検出できる影響をまったく及ぼさない。
【0179】
自食は多数のアポトーシス欠損細胞タイプにおける細胞死に関与すると提案されてきた。たとえば、bax/bak二重欠損マウス胎児線維芽細胞(DKO mef)は、アポトーシスに対して強い抵抗性がある(Wei,M.C.,Zong,W.X.,Cheng,E.H.,Lindsten,T.,Panoutsakopoulou,V.,Ross,A.J.,Roth,K.A.,MacGregor,G.R.,Thompson,C.B.,and Korsmeyer,S.J.(2001).Proapoptotic BAX and BAK:a requisite gateway to mitochondrial dysfunction and death.Science 292,727−730)。エトポシドによるbax/bak DKO mefの刺激は、自食作用誘発によって一部分において細胞死を誘発すると示されてきた(Shimizu,S.,Kanaseki,T.,Mizushima,N.,Mizuta,T.,Arakawa−Kobayashi,S.,Thompson,C.B.,and Tsujimoto,Y.(2004).Role of Bcl−2 family proteins in a non−apoptotic programmed cell death dependent on autophagy genes.Nat Cell Biol 6,1221−1228)。MBCQがエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を阻害する可能性があるかどうかを試験するために、Bax/bak DKO細胞を、陽性対照としてのMBCQ(10μM)、または3−MA(10mM)の存在下にエトポシドで8時間処理した。図7Aに示されるように、MBCQの存在は、bax/bak DKO MEF細胞の細胞死を有意に減少させた。さらに、MBCQによる阻害と一致して、LC3IIのレベルは、エトポシド処理細胞において上がったが、MBCQの存在下では下がった(図7B)。
【0180】
実施例4:MBCQはPI3Pの細胞レベルを選択的に下げる
MBCQはラパマイシンおよび飢餓によって誘発される自食作用を阻害するので、MBCQがmTORの活性に影響を及ぼすかどうかを先ず測定した。ウェスタンブロッティングアッセイは、MBCQが対照またはラバマイシン処理細胞において、mTORおよびその標的、p70S6KおよびS6のホスホリル化にまったく影響を及ぼさないことを実証した。そしてまたMBCQは、GSK−3α/β、AKTのホスホリル化にもいかなる影響も及ぼさない。AKTのホスホリル化はタイプI PtdIns3(PI3)キナーゼによって調整されるので、この結果はまた、MBCQがタイプI PISキナーゼへまったく影響を及ぼさないことを示唆する。したがって、MBCQはmTOR経路またはタイプI PI3キナーゼに対してまったく影響を及ぼさないと結論された。
【0181】
マーカーとしてEEA1の免疫染色を用いる早期エンドソーム、マーカーまたはリソトラッカーとしてlamp2の免疫染色を用いるリソソーム、マーカーとしてGalT−YFPを用いるトランス−GolgiへのMBCQの影響を測定した。MBCQの影響は、これらの実験のいずれにおいても検出されなかった。したがって、MBCQは主要な細胞内小器官に影響を及ぼさないと結論された。
【0182】
さらに、pEGFP−CL1、短寿命ペプチドとのGFP融合を用いるプロテアソーム分解経路へのMBCQの影響を測定した(Bence,N.F.,Sampat,R.M.,and Kopito,R.R.(2001).Impairment of the ubiquitin−proteasome system by protein aggregation.Science 292,1552−1555)。MBCQはpEGFP−CL1のレベルに影響を及ぼさず、MBCQがプロテアソーム経路に一般的な影響を及ぼさないことを示唆することが分かった(データは示されていない)。さらに、MBCQの処理は、ポリユビキチン化の一般的なレベルにまったく影響を及ぼさない。したがって、MBCQはユビキチン−プロテアソーム分解経路に一般的な影響を及ぼさないと結論された。
【0183】
PtdIns3P(PI3P)のレベルは自食作用を仲介するのに決定的に重要な役割を果たすことが知られている(Levine,B.,and Klionsky,D.J.(2004).Development by self−digestion:molecular mechanisms and biological functions of autophagy.Dev Cell 6,463−477)。MBCQがPI3Pに影響を及ぼすかどうかを問うために、FYVE−RFPを発現するH4細胞を使用した。FYVEはPI3Pに特異的に結合し、PI3Pについての細胞レベル用のマーカーとして広く使用されている(Gaullier,J.M.,Simonsen,A.,D’Arrigo,A.,Bremnes,B.,Stenmark,H.,およびAasland,R.(1998).FYVE fingers bind PtdIns(3)P.Nature 394、432−433)。興味深いことに、MBCQの処理は、基礎H4細胞およびラバマイシン処理H4細胞の両方においてFYVE−RFPスポットのレベルを急速におよび効果的に下げるが、ウェスタンブロッティングによって検出されるFYVE−RFPのレベルは変化しなかった(図8)。
【0184】
PtdIns3Pの細胞レベルへのMBCQの影響をさらに測定するために、脂質ドットブロットアッセイを用いた。細胞PtdIns種を抽出し、ポリフッ化ビニリデン膜上へ塗布した。PtdIns3Pのレベルは、GST−PXドメイン・タンパク質および抗GST抗体を使用して検出された。図9に示されるように、MBCQおよびC43の処理は、基礎細胞およびラバマイシン処理細胞の両方中のPtdIns3Pの細胞レベルを選択的に下げた。総合すれば、MBCQはPtdIns3Pのレベルを下げると結論された。
【0185】
実施例5:MBCQおよびその活性誘導体はVps34錯体の分解を選択的に促進する
タイプIII PtdIns3キナーゼ錯体、Vps34/ベクリン1/p150は、PtdIns3Pを生成するためのPtdInsのホスホリル化に関与するので、Vps34錯体のキナーゼ活性へのMBCQ阻害活性を測定した。293T細胞をHA−Vps34/GFP−ベクリン1でトランスフェクトした。抗HAを使用して免疫沈降させたVps34錯体を、γ−32P−ATPの存在下にPtdInsで培養した。ホスホリル化産物を薄層クロマトグラフィーおよび引き続くオートラジオグラフィーによって分析した。図10Aに示されるように、PtdInsホスホリル化は、ウォルトマンニンによって阻害されるが、MBCQによって阻害されない。したがって、MBCQはVps34酵素活性の直接阻害剤ではないと結論された。
【0186】
他方では、flag−タグ付きベクリン1およびHA−Vps34のレベルは、C82、不活性アナログのそれよりMBCQ、C29またはC43処理細胞においてかなり低いことが分かった(図10B)。MBCQ、C29およびC43の処理はまた、GFP−p150およびAtg14Lのレベルを下げたが、C82は下げなかった(図10C〜D)。
【0187】
MBCQおよびC43は、H4細胞における(図10E)および293T細胞における(図10F)内因性ベクリン1、Vps34およびAtg14Lのレベルを下げ得るが、公知の自食作用阻害剤3−MAは、H4細胞における内因性ベクリン1にまったく影響を及ぼさない(図10G)ことがまた分かった。
【0188】
MBCQおよびC43が内因性ベクリン1に類似の影響を及ぼすかどうかを測定するために、293T細胞を、タンパク質合成を阻害するためのCHXの存在下にMBCQまたはC43で処理した。ベクリン1のレベルは、6時間の処理後にCHX単独でよりMBCQまたはC43の存在下にとりわけ低かった(図10E)。したがって、MBCQおよびC45の両方が内因性ベクリン1の分解を促進すると結論することができる。
【0189】
MBCQおよびC43がVsp34錯体のレベルを下げる機構を探究するために、293T細胞を、リソソーム分解を阻害するためのプロテアソーム阻害剤MG132またはNH4Clと共にC43で処理した。MG132の存在はGFP−ベクリン1の減少を阻害したが、NH4Clは阻害しないことが分かった。この結果は、C43の処理がプロテアソーム経路によってベクリン1の分解を促進することを示唆する。それ故、C43は、Vps34/ベクリン1/p150/Atg14L/UVRAGを含むタイプIII PI3キナーゼ錯体の分解を選択的に促進することによって自食作用を阻害すると結論された。
【0190】
実施例6:MBCQおよびその活性誘導体は飢餓誘発アポトーシスを高める
自食作用は細胞生存を支援するために代謝ストレス条件下に活性化されるので、化合物を、それらが飢餓条件下に細胞死を促進するかどうかを測定するために試験した。確かに、C43は血清を含まない条件下にMDA−MB−231細胞(図11A)およびグルコースを含まない条件下にMCF−7細胞(図11B)の生存を低下させることが分かった。ウェスタンブロット分析は、C43の処理が基礎条件およびグルコースを含まない条件の両方下にMCF−7細胞における自食作用を阻害することを裏付けた。
【0191】
さらに、C43は、10%ウシ血清の存在下に、Bcap−37細胞、乳癌細胞株の増殖を阻害することが分かった(図11C)。さらに、Mcap−37細胞は、グルコースを含まない条件下にC43に非常に敏感になった(図11D)。対照およびグルコースを含まない条件下に培養されたBcap−37細胞のウェスタンブロット分析は、C43の処理が基礎条件およびグルコースを含まない条件の両方下に自食作用を阻害することを裏付けた。
【0192】
C43がBcap−37細胞の死を誘発する機構を探究するために、DNA中身をFACSによって解析した。グルコースを含まない条件下のBcap−37細胞の処理は、アポトーシスDNA崩壊と一致する、サブ二倍体DNAのピークを誘発することが分かった(図11E)。さらに、PARPの開裂、カスパーゼ活性化の特徴もまた、グルコースを含まない条件下にC43で6時間処理されたBcap−37細胞において検出された(図11F)。別の乳癌細胞株、BT549もまた、C43の処理に対して同様な反応を実証した。
【0193】
解析された上記の癌細胞株とは対照的に、Madin−Darbyイヌ腎臓に由来する、MDCK細胞のグルコースを含まない条件下のspautinでの処理は、アポトーシスを誘発せず;10μMのspautinで48時間処理されたときに約25%成長抑制が観察されるにすぎなかった(図12Aおよび12B)。腫瘍周辺の正常組織から樹立された、そして起源が筋上皮である、Hs578Bst細胞もまた、spautinに敏感ではなかった(図12Cおよび12D)。これらの結果は、癌細胞が増加した代謝圧力下にあり得る可能性と一致し、それ故非癌細胞より自食作用の阻害に敏感である。
【0194】
アポトーシス欠損条件下での自食作用の増加した活性化は細胞死を仲介することが示されてきた。この可能性を試験するために、Bax−Bak二重ノックアウト(DKO)細胞を、spautinの存在または不在下にDNA損傷応答によって誘発するためのエトポシドで試験し、C43、MBCQおよび3−MAがBax−Bak DKO細胞のエトポシド誘発死を阻害することが分かった。
【0195】
したがって、癌細胞の小集団は自食作用の阻害に選択的に敏感である可能性があると結論された。
【0196】
実施例7:生体内でのMBCQ誘導体の効果
生体内でのMBCQ誘導体の効果を試験することを始めるために、ラバマイシン注射マウスにおける自食作用を阻害するMBCQ誘導体の能力を研究した。マウスに陽性対照としてラバマイシン(10mg/kg)単独を、またはC43もしくはMBCQ(40mg/kg)を4時間毎時間腹腔内注射し、次に5時間目に犠牲にした。肝臓における自食作用レベルを次に、抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析した。図13Aに示されるように、C43もしくはMBCQの投与は、LC3IIのレベルを有意に下げた。したがって、C43およびMBCQは両方とも、自食作用を阻害するのに生体内で活性であると測定された。
【0197】
自食作用は膵炎における組織損傷に関与すると提案されてきたので、MBCQ誘導体を、それらがセルレイン注射、膵炎の十分に確立された動物モデルによって誘発される組織損傷を減らすことができるかどうかを見るために試験した(Hashimoto,D.,Ohmuraya,M.,Hirota,M.,Yamamoto,A.,Suyama,K.,Ida,S.,Okumura,Y.,Takahashi,E.,Kido,H.,Araki,K.,et al.(2008).Involvement of autophagy in trypsinogen activation within the pancreatic acinar cells.J Cell Biol 181,1065−1072;およびOhmuraya,M.,and Yamamura,K.(2008).Autophagy and acute pancreatitis:a novel autophagy theory for trypsinogen activation.Autophagy 4,1060−1062)。ラットにセルレイン(50ng/kg)単独をまたはC43(40mg/kg)を4時間毎時腹腔内注射した。ラットを最後の注射の1時間後に犠牲にし、膵臓をウェスタンブロッティング分析のために単離した。図13Bに示されるように、セルレインの注射は報告されているように自食作用を誘発し;C43の共注射はセルレイン注射に誘発される自食作用のレベルを有意に下げた。総合すれば、C43は、セルレイン誘発膵炎において誘発される自食作用を減らすのに有効であると結論された。
【0198】
実施例8:化合物の製造
式IおよびIIの化合物の合成への1つの一般的なアプローチをスキームIにおいて下に図示する。
【化8】
【0199】
[1]工程1は、キナゾリン−4−ケトン(または8−アザ−キナゾリン−4−ケトン)の形成である。
【0200】
1つのアプローチにおいては、アントラニル酸メチルエステル(または2−アミノニコチン酸メチル)をホルムアミドと1:15〜20のモル比で混合し、約170〜190℃で加熱する。反応が完了した後、混合物を冷却し、濾過し、洗浄し、乾燥させる。生じた粗生成物をさらに処理することなく次の反応に使用する。
【0201】
[2]工程2は、4−クロロキナゾリン(または8−アザ−4−クロロキナゾリン)の形成である。
【0202】
1つのアプローチにおいては、工程1からの粗生成物をオキシ塩化リンと1:8.7〜10のモル比で混合し、次に約100〜115℃で加熱する。反応が完了する、約10〜12時間後に、混合物を冷却し、過剰のオキシ塩化リンを回転蒸発によって除去する。ジクロロメタンなどの、有機溶媒を加えて固体を溶解させ、これにアンモニアの添加による約7〜8への生じた溶液のpH調整が続く。生じた混合物をジクロロメタンで抽出し、乾燥させ、カラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0203】
別のアプローチにおいては、工程1からの組成生物を、触媒量の無水DMF(たとえば0.5〜1mL)と共に、塩化チオニルと1:15〜20のモル比で混合し、次に約80〜90℃で加熱する。反応が完了する、約10〜12時間後に、混合物を冷却し、過剰の塩化チオニルをロータリーエバポレーターによって除去する。ジクロロメタンなどの、有機溶媒を加えて固体を溶解させ、これにアンモニアの添加による約7〜8への生じた溶液のpH調整が続く。生じた混合物をジクロロメタンで抽出し、乾燥させ、カラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0204】
別のアプローチにおいては、工程1からの組成生物を塩化オキサリルとアルゴン下に混合し、無水DMFを滴加して、1:1.5:1.5工程1の生成物:塩化オキサリル:DMFのモル比の混合物を形成し、次に約85〜95℃に加熱する。約7〜10時間後に、反応を飽和リン酸二ナトリウム水素でクエンチする。次に混合物を、ジクロロメタンなどの、有機溶媒で抽出し、カラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0205】
[3]工程3は、N−置換−4−アミノ−キナゾリン(または8−アザ−N−置換−4−アミノ−キナゾリン)の形成である。
【0206】
アルゴン下に、工程2の生成物、HXC(R2)(R3)(CH2)nZ(本明細書において定義されるような)、およびトリエチルアミンを、テトラヒドロフランなどの、有機溶媒中、1:1.25:1.68のモル比で組み合わせ、約75〜80℃に加熱する。12〜18時間後に、有機溶媒を回転蒸発によって除去する。生じた粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0207】
追加の例示のために、化合物A9、A30およびA36の合成を下により詳細に記載する。上に指摘されたように、追加の化合物は、任意選択的に置換された4−クロロキナゾリン(下に示される9−3などの)と結合するアミンを変えることによって製造することができる。
【0208】
A9の製造
【化9】
【0209】
ジエチルエーテル(5mL)中のAgNO2(448.5mg、2.92ミリモル)の懸濁液に化合物9−1(500mg、2.65ミリモル)をアルゴン下に氷−塩浴中で滴加した。混合物を室温に暖め、一晩撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(EA:PE、1:100)によって精製して3つの化合物を得た。1H NMRによってどれが所望の化合物9−2であるかを判断することは困難であった。
【0210】
CH3CN/H2O(1mL/1mL)中に化合物9−2(150mg、0.967ミリモル、MC0449−41−2)およびKOH(81.4mg、1.451ミリモル)を含有する混合物を室温で2時間撹拌した。次にセレクトフルオル(514.0mg、1.451ミリモル)を一度に加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水(10mL)に注ぎ込み、酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物を食塩水(10mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(PE)によって精製して化合物9−3を無色オイル(70mg、収率:42%)として得た。
【0211】
イソプロピルアルコール(5mL)中の化合物9−3(50mg、0.27ミリモル)および(4−クロロフェニル)メタンアミン(47mg、0.33ミリモル)の溶液にEt3N(46μL、0.33ミリモル)を加えた。溶液を150℃で20分間電子レンジにかけた。TLCは反応が完了していることを示した。混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーによって精製してA9を淡黄色固体(52mg、収率:67%、1H NMR、およびLC−MSによって確認)として得た。1H NMRを図23に示す。
【0212】
A30の製造
【化10】
【0213】
イソプロピルアルコール(4mL)中の化合物9−3(105mg、0.573ミリモル)、30−9(94mg、0.573ミリモル)およびNEt3(0.22mL、1.64ミリモル)を150℃で20分間電子レンジにかけた。濃縮およびカラムクロマトグラフィーによる精製はA30を黄色固体(80mg、収率:45%、1H NMRによって確認)として与えた。1H NMRを図24に示す。
【0214】
A36の製造
【化11】
【0215】
DMSO(10mL)中の化合物36−1(1.0g、5.3ミリモル)およびNaCN(520mg、10.6ミリモル)の溶液を30℃で一晩撹拌した。TLCは反応が完了していることを示した。混合物を水(30mL)で希釈し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を水(10mL×5)およびNaHCO3(飽和、20mL)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して36−2を無色オイル(360mg、収率:50%)として得た。
【0216】
THF(10mL)中の化合物36−2(346mg、2.56ミリモル)の溶液にラネー(Raney)Niを加えた。次に混合物を濃水性アンモニアでpH=10に調整し、30℃で一晩撹拌した。TLCは反応が完了していることを示した。混合物を、セライト(Celite)を通して濾過し、濾液を濃縮して36−3を黄色オイル(120mg、収率:34%)として得た。
【0217】
イソプロピルアルコール(5mL)中の化合物9−3(50mg、0.27ミリモル)および36−3(46mg、0.33ミリモル)の溶液にEt3N(46μL、0.33ミリモル)を加えた。溶液を150℃で20分間電子レンジにかけた。TLCは反応が完了していることを示した。濃縮およびフラッシュクロマトグラフィーによる精製はA36を白色固体(48.4mg、収率:63%、DMSO中400MHzでの1H NMR、およびMSによって確認)として得た。1H NMRを図25に示す。
【0218】
実施例9:PDE5阻害活性からの自食作用阻害活性の分離
MBCQ誘導体の構造活性相関(SAR)を、自食作用の阻害におけるその活性がそのPDE5阻害活性から分離され得るかどうかを決定するために研究した。上に記載されたように、合成され、そしてそれらの自食作用阻害活性について分析されたMBCQ誘導体のうち、幾つかの化合物はMBCQのそれに類似のまたはそれより上の自食作用阻害活性を示し、その他のものは自食作用阻害活性をまったく持たず、したがって陰性対照として役立つことができる。
【0219】
14のMBCQ誘導体を選択し、PDE5へのそれらの活性について選別した(Wang,H.,Yan,Z.,Yang,S.,Cai,J.,Robinson,H.,and Ke,H.(2008).Kinetic and structural studies of phosphodiesterase−8A and implication on the inhibitor selectivity.Biochemistry 47,12760−12768)。それらのうち、C43(6−フルオロ−N−(4−フルオロベンジル)キナゾリン−4−アミン)、MBCQのそれに匹敵する0.87μMのIC50の有効な自食作用阻害剤が、PDE5およびその他のPDEに対してはるかに低下した阻害活性を有することが分かった。このように、MBCQのPDE5阻害活性は、自食作用阻害活性のそれから化学的に分離することができる。
【表1】
【0220】
この結論と一致して、MY−5445、ジピリダモール、IBMXおよびシルデナフィルを含む、選別されたが、自食作用阻害剤として明るみに出ていない多数のその他の公知PDE5阻害剤が生物活性ライブラリーに存在した。この結論をさらに確認するために、H4−LC3−GFP細胞を、MBCQを陽性対照として使用してラバマイシンと、MY−5445(30μM)、ジピリダモール(80μM)、IBMX(100μM)またはシルデナフィル(10μM)を含むその他のPDE5阻害剤とで処理した。PDE5について2.5nMのEC50を有する最も強力なPDE5阻害剤、シルデナフィル(Viagra)を含む、試験されたPDE5阻害剤のどれもが、自食作用に関するいかなる活性も持たない。これらのデータから、MBCQの自食作用阻害活性はそのPDE5阻害活性と関係がないと結論された。
【0221】
実施例10:Vps34錯体Iのための脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の同定
ユビキチン化は、プロテアソーム分解を仲介するのに本質的な重要な工程を表す。それ故実験は、ベクリン1のユビキチン化がC43で処理された細胞において増加するかどうかを測定するために行った。図16に図示されるように、C43はベクリン1のユビキチン化を促進することが分かった。
【0222】
それ故、C43は、Vps34錯体Iのユビキチン化を負に調整するために普通は機能する脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体(DUB)を標的にすると仮説を立てた。これは、小分子が活性剤より阻害剤である可能性が高いという共通の所見に従っている。この仮説を直接試験するために、DharmaconライブラリーSMARTプールからヒト脱ユビキチン化酵素を標的にする127siRNAのコレクションを、アッセイとしてLC3−GFP−H4細胞を使用してノックダウン時に自食作用の阻害につながるDUBについて選別した。
【0223】
siPLK1をトランスフェクション効率の検証のために使用し、siVps34を陽性対照として含めた。トランスフェクションの72時間後に、細胞を、DMSO、自食作用を誘発するためのラパマイシン(200nM)、またはラパマイシン(200nM)およびspautin(10μM)で、それぞれ正副2通り追加の8時間処理した。細胞をHoechst 33342(0.5μM)で対比染色し、3.8%PFA中で固定した。蛍光画像をとり、CellWoRx High Content Cell Analysis Systemを用いて定量した。
【0224】
選別は、USP10、USP13、USP3、USP16およびUSP18を、ノックダウン時に、プレート中央から少なくとも1.5標準偏差だけラバマイシンの存在下だけでなく基礎条件下に自食作用のレベルの低下につながる5つの遺伝子として特定した。H4細胞におけるVps34錯体でのタンパク質発現レベルへのこれらの5つのUSPのノックダウンの影響を解析した。5つのUSPのいずれのノックダウンも内因性Vps34、ベクリン1、Atg14LおよびUVRAGのレベルを下げることが分かった(図17)。さらに、5つのUSPのいずれのノックダウンもまたその他の4つのUSPのタンパク質レベルの低下につながった(図18)。興味深いことに、C43の処理もまたこれらの5つのUSPのレベルを下げた(図18)。spautinの処理もまた、293T細胞およびBcap−37細胞におけるUSP13およびUSP10のレベルを下げることができたが、USP44、非関連USPのレベルにほとんど影響を及ぼさない。
【0225】
これらの結果は、USP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18の安定性が互いに共依存であることを示唆し、これは、それらが大きい錯体中に存在する場合に起こる可能性がある。この可能性を試験するために、GFP−USP10およびMyc−USP13プラスミドを293T細胞へトランスフェクトし、GFP−USP10相互作用およびMyc−USP13免疫沈降によって調べた。GFP−USP10およびMyc−USP13は実際に相互作用し、そして重要なことには、この相互作用はspautin処理細胞において阻害されることが分かった(図19)。したがって、spautinは、Vps34錯体のユビキチン化状態を調整するためにこの脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体を適切に標的にするのに必要とされる可能性があるUSP10とUSP13と相互作用を中断させると結論された。
【0226】
USP10はp53のDUBとして知られているから、これらのUSPをノックダウンすることのp53への影響もまた研究した。5つのUSPのどれかのノックダウンがp53の減少につながり得ることが分かった(図20)。これらのデータは、USP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18がすべてp53の調整剤であることを示唆する。
【0227】
USP10およびUSP13がVps34錯体の脱ユビキチン化プロテアーゼであることをさらに確認するために、293T細胞におけるFlag−USP10/GFP−ベクリン1とMyc−USP13/GFP−ベクリン1との相互作用を免疫沈降でアッセイした。Flag−USP10およびMyc−USP13は両方ともGFP−ベクリン1と相互作用することができ;そして興味深いことに、spautinの処理はFlag−USP10とGFP−ベクリン1との相互作用を損なう(図21A)が、Myc−USP13とGFP−ベクリン1との相互作用を損なうことができない(図21B)ことが分かった。この結果は、spautinがUSP10をまたはUSP10の上流を標的にしてUSP10とベクリン1との相互作用を中断させる可能性があることを示唆する。重要なことには、ベクリン1またはVps34のノックダウンはUSP10および、USP10の基質として知られるp53の内因性レベルを下げ得ることもまた分かった(図21C)。これは、Vps34錯体が、USP10およびUSP13を含むその脱ユビキチン化プロテアーゼを安定化させることによって、それら自体のレベルを調整することができる可能性があることを示唆する。さらに、これは、ベクリン1の損失がその脱ユビキチン化プロテアーゼを阻害することによってp53の減少につながる可能性があるので、なぜベクリン1が多くの種類の癌において頻繁に失われるかを説明するための機構を提供する可能性がある。
【0228】
参照による援用
本明細書に引用される米国特許および米国公開特許出願のすべては、参照により本明細書によって援用される。
【0229】
均等物
本発明の幾つかの実施形態が本明細書に記載され、例示されてきたが、当業者は、機能を果たすためのおよび/または本明細書に記載される結果および/または利点の1つ以上を得るための様々なその他の方法および/または構造を容易に想像するであろうし、そのような変形および/または修正のそれぞれは本発明の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構造が例示的であることを意図されること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構造が、本発明の教示が用いられる1つまたは複数の具体的な用途に依存することを容易に十分理解するであろう。当業者は、通常の実験を用いるだけで、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認めるか、または均等物を確認することができるであろう。それ故、前述の実施形態は例として提示されているにすぎないこと、および、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載され、そして特許請求されるようなもの以外の別のやり方で実施されてもよいことが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載される各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を指向する。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法のあらゆる組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾していないならば、本発明の範囲内に含められる。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図4A】
【図4B】
【図6A】
【図6B】
【図7B】
【図7E】
【図8A】
【図11A】
【図11B】
【図11D】
【図11E】
【図11H】
【図11I】
【図11K】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図14−1】
【図14−2】
【図14−3】
【図14−4】
【図14−5】
【図14−6】
【図15−1】
【図15−2】
【図15−3】
【図15−4】
【図15−5】
【図15−6】
【図23】
【図24】
【図25】
【図3】
【図5A】
【図5B】
【図7A】
【図7C】
【図7D】
【図7F】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図10I】
【図10J】
【図10K】
【図10L】
【図10M】
【図11C】
【図11F】
【図11G】
【図11J】
【図11L】
【図11M】
【図13】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図17】選択された自食作用タンパク質の安定性へのUSP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18のsiRNAノックダウンの影響を実証する実験の結果を図示する。H4細胞が、示されたsiRNAsで72時間トランスフェクトされ、ラパマイシン(0.2μM)またはspautin(10μM)で4時間処理され、非標的siRNA(N.T.siRNA)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、(Left):示されたタンパク質に対して特異的な抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図18】USPタンパク質の安定性へのUSP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18のsiRNAノックダウンの影響を実証する実験の結果を図示する。H4細胞が、示されたsiRNAsで72時間トランスフェクトされるか、ラパマイシン(0.2μM)またはspautin(10μM)で4時間処理され、非標的siRNA(N.T.siRNA)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、(Left):示されたタンパク質に対して特異的な抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図19】siRNAノックダウンのP53の安定性へのUSP3、USP10、USP13、USP16、USP18およびベクリン1の影響を実証する実験の結果を図示する。H4細胞が、示されたsiRNAs(各USPについて3つ)でトランスフェクトされ、ラパマイシン(0.2μM)で4時間処理され、DMSO(1%)が陰性対照として使用された。細胞溶解物が採取され、抗p53抗体またはその他の示された抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。抗α−チューブリンが負荷対照として使用された。
【図20】GFP−USP10およびMyc−USP13が実際に相互作用し得たことならびにこの相互作用がspautin処理細胞において阻害されたことを実証する実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−USP10(レーン1〜4)、Myc−USP13(レーン2〜4)、MG132(レーン3〜4)および/またはspautin(レーン4)でトランスフェクトされた。溶解物が抗GFP抗体で免疫沈降され、免疫錯体が、示された抗体を使ったウェスタンブロットによって分析された。
【図21】flag−USP10およびGFP−ベクリン1が実際に相互作用し得たことならびにこの相互作用がspautin処理細胞において阻害されたことを実証する実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−ベクリン1(レーン1)、GFP−ベクリン1およびFlag−USP10(レーン2〜4)プラスミドで12時間でトランスフェクトされ、spautin(10μM)ありまたはなしのMG132(10μM)で4時間培養され、細胞溶解物が抗GFP抗体で免疫沈降され、免疫錯体が抗Flag抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図22】flag−USP10およびGFP−ベクリン1が実際に相互作用し得たことならびにこの相互作用がspautin処理細胞においてはほとんど達成されなかったことを実証する実験の結果を図示する。293T細胞がGFP−ベクリン1(レーン1)、GFP−ベクリン1およびMyc−USP13(レーン2〜4)プラスミドで12時間でトランスフェクトされ、spautin(10μM)ありまたはなしのMG132(10μM)で4時間培養され、細胞溶解物が抗GFP抗体で免疫沈降され、免疫錯体が抗Myc抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。
【図23】A9の1H NMRスペクトルを図示する。
【図24】A30の1H NMRスペクトルを図示する。
【図25】A36の1H NMRスペクトルを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
自食作用、細胞異化プロセスは、リサイクリングのために細胞内構成要素のリソソーム依存性ターンオーバーを仲介することによって代謝ストレス条件下に細胞生存を促進するのに重要な役割を果たす。自食作用の阻害は、可能な新規癌治療として提案されてきた。
【0022】
自食作用の小分子調整剤のための画像ベース選別において、自食作用阻害剤、MBCQが特定された。MBCQの広範な医薬化学変性は、C43などの、新規誘導体を特定した。C43は細胞ベースのアッセイにおいて約0.8μMのIC50で自食作用を阻害することが開示される。本明細書においてある場合にはC43は「spautin」(特異的で強力な自食作用阻害剤)と言われる。約30nMのIC50のC43の誘導体もまた製造された。
【0023】
さらに、MBCQおよびspautinはVps34錯体(たとえば、その産物、PtdIns3Pが自食作用の開始のために必要とされる、ベクリン1/Vps34/p150を含むタイプIII PtdIns3キナーゼ錯体)の分解を促進し得ることが本明細書において開示される。Vps34錯体のユビキチン化および分解はUSP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18を含む脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体によって調整されることがさらに開示される。spautinが自食作用を阻害する機構は、哺乳類細胞におけるVps34錯体のターンオーバーを調整することに関与するUSP10およびUSP13を含む脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の崩壊であると本明細書において提案される。
【0024】
さらに、spautinは概して非細胞毒性であるが飢餓条件下に癌細胞の小集団のアポトーシスを誘発することが本明細書において開示される。さらに、spautinは膵炎の動物モデルにおいて生体内で自食作用を阻害することが本明細書において開示される。
【0025】
定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語がここに集められる。本明細書において定義され、使用されるような、すべての定義は、辞書の定義、参照により援用される公文書における定義、および/または定義される用語の普通の意味に優先する。
【0026】
冠詞「a」および「an」は、この冠詞の文法上の対象の1つをまたは2つ以上を(すなわち、少なくとも1つを)意味するために本明細書において使用される。例として、「an element(要素)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0027】
語句「および/または」は、本明細書においておよび特許請求の範囲においてここで使用される場合、そのように等位接続される要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し、別の場合には離接的に存在する要素の「どちらかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」を使ってリストアップされる複数の要素は、同じように、すなわち、要素の「1つ以上」がそのように等位接続されていると解釈されるべきである。具体的に特定されるそれらの要素に関係しているか関係していないかを問わず、「および/または」節によって具体的に特定される要素以外のその他の要素が任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む(comprising)」などの制約がない言語と連結して使用されるとき、一実施形態においては、Aのみ(B以外の要素を任意選択的に含んで)を;別の実施形態においては、Bのみ(A以外の要素を任意選択的に含んで)を;さらに別の実施形態においては、AおよびBの両方(その他の要素を任意選択的に含んで)などを意味することができる。
【0028】
本明細書においておよび特許請求の範囲においてここで使用される場合、「または」は、上に定義されたような「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。たとえば、リストにおいて項目を分離するとき、「または」または「および/または」は包括的である、すなわち、多数の要素またはリストの要素、および、任意選択的に、追加のリストアップされていない項目の、少なくとも1つの包含であるが、それらの2つ以上をまた包むと解釈されるものとする。「の1つだけ」もしくは「の厳密に1つ」、または特許請求の範囲において使用されるとき、「からなる」などの、それとは反対が明確に示された用語だけが、多数の要素またはリストの要素の厳密に1つの要素の包含を意味するであろう。一般に、用語「または」は本明細書において使用される場合、「どちらか」、「の1つ」、「のただ1つ」または「の厳密に1つ」などの、排他性の用語に先行されるとき、排他的な別の可能性(すなわち、「1つまたはその他、しかし両方ではない」)を示唆すると解釈されるにすぎないものとする。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用されるとき、特許法の分野において使用されるようなその普通の意味を有するものとする。
【0029】
本明細書においておよび特許請求の範囲において使用される場合、語句「少なくとも1つ」は、1つ以上の要素のリストに関連して、要素のリストにおける要素の任意の1つ以上から選択されるが、要素のリスト内に具体的にリストアップされたそれぞれの要素の少なくとも1つおよびあらゆる要素を必ずしも含まず、そして要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除しない少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきである。この定義はまた、具体的に特定されるそれらの要素に関係しているか関係していないかを問わず、語句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が任意選択的に存在してもよいことを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」または、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態においては、Bがまったく存在せずに(およびB以外の要素を任意選択的に含んで)、2つ以上を任意選択的に含む、少なくとも1つのAを;別の実施形態においては、Aがまったく存在せずに(およびA以外の要素を任意選択的に含んで)、2つ以上を任意選択的に含む、少なくとも1つのBを;さらに別の実施形態においては、2つ以上を任意選択的に含む、少なくとも1つのA、および2つ以上を任意選択的に含む(および他の要素を任意選択的に含んで)、少なくとも1つのBなどを意味することができる。
【0030】
それとは逆であると明らかに示されない限り、2つ以上の工程または行為を含む本明細書で特許請求されるあらゆる方法において、この方法の工程または行為の順番が、この方法の工程または行為が列挙される順番に必ずしも限定されないことがまた理解されるべきである。
【0031】
上の本明細書においてだけでなく、特許請求の範囲において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「持っている(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「からなる(composed of)」などのすべての移行句は、制約がないこと、すなわち、それらを含むが、それらに限定されないことを意味することが理解されるべきである。移行句「からなる(consisting of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」だけは、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、Section 2111.03に明記されているように、それぞれ、制限されたまたは半制限された移行句であるものとする。
【0032】
各表現、たとえば、アルキル、m、nなどの定義は、それが任意の構造において2回以上現れるとき、同じ構造における他の場所でのその定義とは無関係であることを意図される。
【0033】
「置換」または「で置換された」が言外に含まれたものを含むこと、ただしそのような置換が、置換される原子および置換基の許される原子価に一致していること、そしてこの置換が安定な化合物、たとえば、転位、環化、脱離、またはその他の反応によってなどの変形を自発的に経ない化合物、をもたらすことが理解されるであろう。
【0034】
用語「置換(された)」はまた、有機化合物のすべての許容される置換基を含むと考えられる。広い見方において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式の、分枝および非分枝の、炭素環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、たとえば、下で本明細書に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物について1つ以上であっても同じまたは異なるものであってもよい。本発明の目的のためには、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物のあらゆる許容される置換基を有してもよい。本発明は、有機化合物の許容される置換基によっていかなる方法によっても制限されることを意図されない。「1つ以上の」置換基が示されるとき、たとえば、1、2、3、4または5つの置換基があってもよい。
【0035】
用語「低級」は、以下にリストアップされる基のいずれかに添えられる場合、それらの基が7個未満の炭素(すなわち、6個以下の炭素)を含有することを示す。たとえば「低級アルキル」は1〜6個の炭素を含有するアルキル基を意味する。
【0036】
本発明の目的のために、化学元素は、元素の周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics、67th Ed、1986−87、裏表紙に従って特定される。
【0037】
用語「アルキル」は、1〜20個、1〜15個、または1〜10個の炭素原子を含有する脂肪族または脂環式炭化水素を意味する。アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、イソブチル、第三ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルl、2−メチルシクロペンチル、および1−シクロヘキシルエチルが挙げられるが、それらに限定されない。用語「フルオロアルキル」は、1個以上の水素がフッ素で置き換えられているアルキルを意味する。
【0038】
用語「アルコキシ」は、酸素を経て親部分に結合したアルキル基を意味する。用語「フルオロアルコキシ」は、酸素を経て親部分に結合したフルオロアルキル基を意味する。
【0039】
選択される自食作用阻害剤
本発明の一態様は、
nが0、1、2、3または4であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−CH3、低級フルオロアルキル、−CH2F、−CHF2、−CF3、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、または低級アルキニルであり;
R1が独立して、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、−OH、−NH2、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CH3、−CF3、−C(=O)(低級アルキル)、−CN、−O(低級アルキル)、−O(低級フルオロアルキル)、−S(=O)(低級アルキル)、−S(=O)2(低級アルキル)および−C(=O)O(低級アルキル)からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、低級アルキル、低級フルオロアルキル、低級アルキニルおよびヒドロキシアルキルからなる群から選択され;
Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2−または−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−であり;
Zがフェニル、ピリジル、ビニル、モルフィニル、フェナンスロリニル、ナフチル、フリルまたはベンゾ[d]チアゾリルであり;そして−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されている、
式I:
【化2】
【0040】
で表される化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0041】
ある実施形態においては、本発明は、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関するが、ただしこの化合物は、
【化3】
【0042】
(式中、JはCl、OCHF2、OCH2CH3、OCH2CF3、O(CH2)2CH3、OCH(CH3)2、O(CH2)3CH3、またはO(シクロペンチル)である)
ではない。
【0043】
ある実施形態においては、本発明は、nが0である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが1である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが4である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0044】
ある実施形態においては、本発明は、Yが−C(R1)=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0045】
ある実施形態においては、本発明は、Yが−C(H)=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0046】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−N=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0047】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0048】
ある実施形態においては、本発明は、Rが低級アルキルまたは低級フルオロアルキルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0049】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0050】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−CH2F、−CHF2または−CF3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、1つのR1だけが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、2つのR1だけが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、3つのR1だけが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0051】
ある実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのR1が−NH2、−Cl、−NO2、−I、または−OMeである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのR1が−NH2、−Cl、−NO2、−I、または−OMeであり;少なくとも2つのR1が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0052】
ある実施形態においては、本発明は、R2が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2がヒドロキシアルキルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0053】
ある実施形態においては、本発明は、R3が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R3が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R3がヒドロキシアルキルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0054】
ある実施形態においては、本発明は、R2が−CH3であり;R3がHである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2が−Hであり;R3が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0055】
ある実施形態においては、本発明は、Xが−O−、−S−、−N(H)−、−N(低級アルキル)−または−CH2−である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、Xが−N(H)−または−N(低級アルキル)−である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、Xが−N(H)−である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0056】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Xが−N(H)−であり;R2が−Hであり;R3が−Hであり;Rが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0057】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された4−ピリジルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0058】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたモルフィニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0059】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された2−フリルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0060】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された1−ナフチルまたは2−ナフチルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0061】
ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたベンゾ[d]チアゾール−5−イルまたはベンゾ[d]チアゾール−6−イルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0062】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0063】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Xが−N(H)−であり;Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0064】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Xが−N(H)−であり;R2が−Hであり;R3が−Hであり;Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0065】
ある実施形態においては、本発明は、nが0または1であり;Xが−N(H)−であり;R2が−Hであり;R3が−Hであり;Rが−Hであり;Zが、−CH3、低級アルキル、フルオロアルキル、−OCH3、−OCF3、低級フルオロアルコキシ、−F、−Cl、−Br、−I、−NO2、低級アルコキシ、−NH(低級アルキル)、−N(低級アルキル)2、−CF3、および3,4−メチレンジオキシからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されたフェニルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0066】
本発明の一態様は、
nが0、1、2、3または4であり;
Yが−C(R1)=または−N=であり;
Rが−H、低級アルキル、−CH3、低級フルオロアルキル、−CH2F、−CHF2、または−CF3であり;
R1が独立して、−H、−CH3、−F、−Cl、−Br、−Iまたは−NO2からなる群からそれぞれ選択され;
R2およびR3が独立して、−H、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3または−CH(CH3)2からなる群から選択され;
R4、R5およびR8が独立して、−H、−CH3、−CF3、−OCH3、−OCF3、−F、−Cl、−Brまたは−Iからなる群から選択され;
R6およびR7が独立して、−H、−CH3、−CF3、−OCH3、−OCF3、−F、−Cl、−Brもしくは−Iからなる群から選択されるか;またはR6およびR7が一緒になって−OCH2O−である
式II:
【化4】
【0067】
で表される化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0068】
ある実施形態においては、本発明は、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する、ただしこの化合物は、
【化5】
【0069】
ではない。
【0070】
ある実施形態においては、本発明は、nが0である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが1である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、nが4である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0071】
ある実施形態においては、本発明は、Yが−C(R1)=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0072】
ある実施形態においては、本発明は、Yが−C(H)=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0073】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−N=である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0074】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0075】
ある実施形態においては、本発明は、Rが低級アルキルまたは低級フルオロアルキルである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0076】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0077】
ある実施形態においては、本発明は、Rが−CH2F、−CHF2または−CF3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0078】
ある実施形態においては、本発明は、R1が−Fである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−Clである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−Brである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−Iである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−NO2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R1が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0079】
ある実施形態においては、本発明は、R2が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2が−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3または−CH(CH3)2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R2が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0080】
ある実施形態においては、本発明は、R3が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R3が−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3または−CH(CH3)2である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R3が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0081】
ある実施形態においては、本発明は、R4が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R4が−Fである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R4が−Clである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R4が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R4が−OCH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0082】
ある実施形態においては、本発明は、R5が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R5が−Fである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R5が−Clである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R5が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R5が−OCH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0083】
ある実施形態においては、本発明は、R6が−H、−F、−Cl、−Brまたは−Iである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−Fである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−Clである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−Brである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−CH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−CF3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−OCH3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R6が−OCF3である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0084】
ある実施形態においては、本発明は、R6およびR7が一緒になって−OCH2O−である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0085】
ある実施形態においては、本発明は、R7が−H、−F、−Cl、−Brまたは−Iである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。ある実施形態においては、本発明は、R7が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0086】
ある実施形態においては、本発明は、R8が−Hである、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0087】
本発明の一態様は、
【化6−1】
【化6−2】
【化6−3】
【化6−4】
【0088】
からなる群から選択される、化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0089】
本発明の一態様は、
【化7】
【0090】
またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体に関する。
【0091】
ある実施形態においては、本発明は、化合物が自食作用阻害剤であり;そして自食作用阻害剤のEC50が約100nM未満である、前述の化合物および付随する定義のいずれかに関する。
【0092】
ある実施形態においては、本発明は、約10μM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約5μM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約1μM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約750nM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約500nM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約250nM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、約100nM未満のIC50で自食作用を阻害する、前述の化合物のいずれか1つに関する。
【0093】
ある実施形態においては、本発明は、自食作用の阻害剤であり;そしてPDE5を阻害しない、前述の化合物のいずれか1つに関する。
【0094】
ある実施形態においては、本発明は、自食作用およびPDE5の両方を阻害し;約0.001μM〜約10μMの自食作用IC50を有し;そしてPDE5 IC50対自食作用IC50の比が約10〜約50である、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、自食作用およびPDE5の両方を阻害し;約0.001μM〜約10μMの自食作用IC50を有し;そしてPDE5 IC50対自食作用IC50の比が約50〜約100である、前述の化合物のいずれか1つに関する。ある実施形態においては、本発明は、自食作用およびPDE5の両方を阻害し;約0.001μM〜約10μMの自食作用IC50を有し;そしてPDE5 IC50対自食作用IC50の比が約100〜約1,000である、前述の化合物のいずれか1つに関する。
【0095】
酸性置換基を有する本発明のある化合物は、製薬上許容される塩基との塩として存在してもよい。本発明はそのような塩を包含する。そのような塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リジン塩およびアルギニン塩が挙げられる。これらの塩は、当業者に公知の方法によって製造されてもよい。
【0096】
本発明のある化合物およびそれらの塩は、2つ以上の結晶形で存在してもよく、本発明は、各結晶形およびそれの混合物を包含する。
【0097】
本発明のある化合物およびそれらの塩はまた、溶媒和物、たとえば水和物の形態で存在してもよく、本発明は、各溶媒和物およびそれの混合物を包含する。
【0098】
本発明のある化合物は、1つ以上のキラル中心を含有し、異なる光学活性形で存在してもよい。本発明の化合物が1つのキラル中心を含有するとき、化合物は2つのエナンチオマー形態で存在し、本発明は、両方のエナンチオマーおよびラセミ混合物などのエナンチオマーの混合物を包含する。エナンチオマーは、当業者に公知の方法によって、たとえば、たとえば結晶化によって分離することができるジアステレオマー塩の形成;たとえば結晶化、気−液もしくは液体クロマトグラフィーによって分離することができるジアステレオマー誘導体もしくは錯体の形成;1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、たとえば酵素的エステル化;またはキラル環境における、たとえばキラル担体たとえばキラル配位子が結合したシリカ上でのもしくはキラル溶媒の存在下での、気−液もしくは液体クロマトグラフィーによって分割されてもよい。所望のエナンチオマーが、上記の分離手順の1つによって別の化学物質へ変換される場合、所望のエナンチオマー形態を遊離させるためにさらなる工程が用いられることは十分理解されるであろう。あるいは、特定のエナンチオマーが、光学活性の試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成により、または不斉転換によって1エナンチオマーを他のものへ変換することにより合成されてもよい。
【0099】
本発明の化合物が2つ以上のキラル中心を含有するとき、それはジアステレオマー形態で存在する可能性がある。ジアステレオマー化合物は、当業者に公知の方法、たとえばクロマトグラフィーまたは結晶化によって分離されてもよく、個々のエナンチオマーは上記の通り分離されてもよい。本発明は、本発明の化合物の各ジアステレオマーおよびそれらの混合物を包含する。
【0100】
本発明のある化合物は、異なる互変異性型でまたは異なる幾何異性体として存在する可能性があり、本発明は、本発明の化合物の各互変異性体および/または幾何異性体ならびにそれらの混合物を包含する。
【0101】
本発明のある化合物は、分離可能であり得る異なる安定な立体配座形態で存在する可能性がある。たとえば立体障害または環歪みのための、不斉単結合周りの制限された回転によるねじれ不斉は、異なる配座異性体の分離を可能にし得る。本発明は、本発明の化合物の各配座異性体およびそれらの混合物を包含する。
【0102】
本発明のある化合物は双性イオン形態で存在する可能性があり、本発明は、本発明の化合物の各双性イオン形態およびそれらの混合物を包含する。
【0103】
本明細書において使用される場合、用語「プロドラッグ」は、ある生理学的化学的プロセスによって親薬物に生体内で変換される試剤を意味する(たとえば、プロドラッグは、生理学的pHにされるとすぐに所望の薬物形態に変換される)。プロドラッグは、ある状況において、それらが親薬物より投与するのが容易であり得るので多くの場合に有用である。それらは、たとえば、経口投与によって生物学的に利用可能であり得るが、親薬物はそうではない。プロドラッグはまた、親薬物よりも薬理学的な組成物に改善された溶解性を有する可能性がある。限定なしに、プロドラッグの例は、水溶解性が有益ではない細胞膜を横切っての送達を容易にするエステル(「プロドラッグ」)としてそれが投与されるが、次に、水溶解性が有益である細胞内に入るとすぐにそれが代謝加水分解されてカルボン酸になる本発明の化合物であろう。プロドラッグは多くの有用な特性を有する。たとえば、プロドラッグは、究極的な薬物より水溶性であり、それによって薬物の静脈内投与を容易にする可能性がある。プロドラッグはまた、究極的な薬物より高いレベルの生物学的利用可能性を有する可能性がある。投与後に、プロドラッグは、血液または組織において酵素的にまたは化学的に開裂されて究極的な薬物を送達する。
【0104】
例示的なプロドラッグは、アミンの遊離水素が(C1〜C6)アルカノイルオキシメチル、1−((C1〜C6)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C1〜C6)アルカノイルオキシ)エチル、(C1〜C6)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C1〜C6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1〜C6)アルカノイル、α−アミノ(C1〜C4)アルカノイル、アリールアクチル(arylactyl)およびα−アミノアシル、またはα−アミノアシル−α−アミノアシル(ここで、前記α−アミノアシル部分は独立して、タンパク質中に見いだされる天然起源のL−アミノ酸のいずれかである)、−P(O)(OH)2、−P(O)(O(C1〜C6)アルキル)2またはグリコシル(炭水化物のヘミアセタールのヒドロキシルの脱離から生じるラジカル)に置き換えられている本発明の化合物のアミンを放出する。
【0105】
医薬組成物
本発明の1つ以上の化合物は、本明細書に記載されるような疾病もしくは病気を治療するもしくは改善するためにそれらだけでか、またはそれらが投与量で生物学的に好適な担体もしくは賦形剤と混合されている医薬組成物で、ヒト患者に投与することができる。これらの化合物の混合物はまた、単純混合物としてかまたは好適な調合医薬組成物で患者に投与することができる。たとえば、本発明の一態様は、治療効果のある用量の式IもしくはIIの化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体と、製薬上許容される希釈剤または担体とを含む医薬組成物に関する。
【0106】
本明細書において使用される場合、治療効果のある用量は、本明細書に記載されるような疾病または病気の予防または減衰をもたらすのに十分な1種または複数種の化合物の量を意味する。本出願の化合物の調合および投与技法は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Co,Easton,PA,最新版などの、当業者に周知の参考文献に見いだすことができる。
【0107】
投与の好適なルートとしては、たとえば、経口、点眼、直腸、経粘膜、局所、または腸内投与;くも膜下、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼球内注射だけでなく、筋肉内、皮下、脊髄内注射を含む、非経口投与が挙げられてもよい。
【0108】
あるいは、たとえば、多くの場合デポーまたは持続放出調合物で、浮腫性部位への化合物の直接注射によって、全身様式よりもむしろ局所様式で化合物を投与してもよい。
【0109】
さらに、標的薬物送達システムで、たとえば、内皮細胞特異的抗体で被覆されたリポソームにおいて薬物を投与してもよい。
【0110】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知である方法で、たとえば、従来型混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥方法を用いて製造されてもよい。
【0111】
本発明に従って使用するための医薬組成物はしたがって、賦形剤と薬剤的に使用することができる製剤への活性化合物の処理を容易にする助剤とを含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用する従来法で調合されてもよい。適切な調合物は、選択される投与のルートに依存する。
【0112】
注射のためには、本発明の試剤は、水溶液において、好ましくはハンクス(Hanks)液、リンゲル(Ringer)液、または生理食塩緩衝液などの生理学的に相溶性の緩衝液において調合されてもよい。経粘膜投与のためには、透過されるべきバリアに適切な浸透剤が調合物中に使用される。そのような浸透剤は当該技術分野において一般に公知である。
【0113】
経口投与のために、化合物は、当該技術分野において周知の製薬上許容される担体と活性化合物を組み合わせることによって容易に調合することができる。そのような担体は、本発明の化合物が、治療されるべき患者による経口摂取のための、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして調合されることを可能にする。経口使用のための医薬製剤は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、生じた混合物を任意選択的にすり潰し、必要ならば、好適な助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工することによって得ることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、サッカロース、マニトール、またはソルビトールを含む、糖類などの充填剤;たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース製剤、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。必要ならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤が添加されてもよい。
【0114】
糖衣錠コアは好適なコーティングが付いている。この目的のために、アラビヤゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶剤もしくは溶剤混合物を任意選択的に含有してもよい、高濃度の糖類溶液が使用されてもよい。染料または顔料が、同定のためにまたは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。
【0115】
経口で使用することができる医薬製剤としては、ゼラチンとグリセロールもしくはソルビトールなどの可塑剤とでできたソフトな、密封カプセルだけでなく、ゼラチンでできた押し込み式カプセルが挙げられる。押し込み式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどのバインダー、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤ならびに、任意選択的に、安定剤との混合剤中に活性原料を含有することができる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの、好適な液体に溶解されてもまたは懸濁されてもよい。さらに、安定剤が添加されてもよい。経口投与のためのすべての調合物は、そのような投与に好適な投与量にあるべきである。
【0116】
口腔投与のためには、組成物は、従来法で調合された錠剤またはトローチ剤の形態をとってもよい。
【0117】
吸入による投与のためには、本発明に従って使用するための化合物は、好適な噴射剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の好適なガスを使って、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレー・プレゼンテーションの形態で便利に送達される。加圧エアゾールの場合には投与量単位は、計量供給量を送達するためのバルブを提供することによって測定されてもよい。たとえば、吸入具または吸入器において使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の粉末ミックスとラクトースもしくはデンプンなどの好適な粉末基剤とを含有して調合されてもよい。
【0118】
化合物は、注射、たとえば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与のために調合することができる。注射用の調合物は、添加された保存剤入りの、単位投与量形態で、たとえば、アンプルでまたは多用量容器で提供されてもよい。組成物は、油状もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとってもよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの調合剤を含有してもよい。
【0119】
非経口投与のための医薬調合物としては、水溶性形態での活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液が適切な油状注射懸濁液として調製されてもよい。好適な親油性溶剤またはビヒクルとしては、ごま油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの、合成脂肪酸エステル、またはリボソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を高める物質を含有してもよい。任意選択的に、懸濁液はまた、好適な安定剤または高濃度溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を上げる試剤を含有してもよい。
【0120】
あるいは、活性原料は、使用前に、好適なビヒクル、たとえば、滅菌したピロゲンを含まない水で構成するための粉末形態にあってもよい。
【0121】
化合物はまた、たとえば、ココアバターまたはその他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を含有する、坐薬または保持浣腸などの直腸組成物に調合されてもよい。
【0122】
前に記載された調合物に加えて、化合物はまた、デポー製剤として調合されてもよい。そのような長時間効果のある調合物は、移植によって(たとえば皮下でもしくは筋肉内でまたは筋肉内注射によって)投与されてもよい。このように、たとえば、化合物は、好適なポリマー材料もしくは疎水性材料(たとえば許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を使って、または溶けにくい誘導体として、たとえば、溶けにくい塩として調合されてもよい。
【0123】
あるいは、疎水性医薬化合物のためのその他の送達システムが用いられてもよい。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物のための送達ビヒクルまたは担体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなどのある有機溶剤がまた、通常より大きい毒性という代償を払ってであるが、用いられてもよい。さらに、化合物は、治療薬を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの、持続放出システムを用いて送達されてもよい。様々な持続放出材料が確立されており、当業者によく知られている。持続放出カプセルは、それらの化学的性質に依存して、2、3週間から100日超まで化合物を放出することができる。治療用薬剤の化学的性質および生物学的安定性に依存して、タンパク質安定化のための追加の戦略が用いられてもよい。
【0124】
医薬組成物はまた、好適な固相もしくはゲル相担体または賦形剤を含んでもよい。そのような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0125】
本発明の化合物の多くは、製薬上相溶性の対イオンとの塩(すなわち、製薬上許容される塩)として提供されてもよい。「製薬上許容される塩」は、受容者への投与時に、直接にか間接にかのどちらかで、本発明の化合物または化合物のプロドラッグを提供することできるあらゆる非毒性塩を意味する。「製薬上許容される対イオン」は、受容者への投与時に塩から放出されるときに毒性でない塩のイオン性部分である。製薬上相溶性の塩は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むが、それらに限定されない、多くの酸を使って形成することができる。塩は、相当する遊離塩基形態より水性もしくはその他のプロトン性溶剤に可溶性である傾向がある。
【0126】
製薬上許容される塩を形成するために一般に用いられる酸としては、パラ−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、ビ酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸などの有機酸だけでなく、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびに関連無機酸および有機酸が挙げられる。そのような製薬上許容される塩としてはしたがって、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ベータ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩および同様な塩が挙げられる。好ましい製薬上許容される酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸で形成されるもの、そしてとりわけマレイン酸などの有機酸で形成されるものが挙げられる。
【0127】
酸性官能基と製薬上許容される塩を形成するための好適な塩基としては、ナトリウム、カリウム、およびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛などの、その他の金属の水酸化物;アンモニア、および非置換もしくはヒドロキシ置換モノ−、ジ−、またはトリアルキルアミンなどの、有機アミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−第三ブチルアミン、もしくはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどの、N,N−ジアルキル−N−(ヒドロキシアルキル)−アミン、またはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどの、モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミン);N−メチル−D−グルカミン;ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0128】
本発明において使用するのに好適な医薬組成物としては、活性原料がその意図される目的を達成するのに有効な量で含有される組成物が挙げられる。より具体的には、治療効果のある量は、治療中の対象の現存する症状の進行を防ぐためにまたは症状を軽減するために有効な量を意味する。有効量の決定は十分に当業者の能力内にある。
【0129】
選択される使用方法
本発明の一態様は、対象における自食作用活性が変えられ、そして治療または予防が達成されるように本発明の化合物を対象に投与する工程を含む、自食作用の阻害が有益である対象における自食作用の阻害方法を提供する。ある実施形態においては、対象はヒトである。
【0130】
用語「治療すること」は本明細書において使用される場合、病気の予防もしくは病気の管理、および/または病気の治療を提供するという目的のための、本明細書に記載される1つ以上の化合物の対象への投与および/または塗布を包含する。本開示の目的のための「治療」は、治療を提供してもよいが、提供しなければならないわけではなく;むしろ、「治療」は病気の管理の形態にあってもよい。本明細書に記載される化合物が、癌を含む、望まれていない増殖型細胞を治療するために使用されるとき、「治療」は、正常細胞への最小限の破壊影響で、望ましくない増殖型細胞の部分的または全面的破壊を含む。細胞レベルでの、癌細胞を含む、望まれていない急速増殖型細胞の治療の所望の機構はアポトーシスである。
【0131】
用語「予防すること」は本明細書において使用される場合、臨床的に明らかな望まれていない細胞増殖の開始を防ぐもしくは遅くすることか、危険にさらされた個体における望まれていない急速な細胞増殖の前臨床的に明らかな段階の開始を防ぐもしくは遅くすることかのどちらかを含む。悪性細胞の転移の防止もしくは鈍化または悪性細胞の進行を阻むかもしくは逆転させることもまたこの定義によって包含されることが意図される。これには、前癌状態および癌を進行させるという危険にされされているものの予防的治療が含まれる。血管形成またはステント手順を受けた対象における再狭窄の防止または鈍化もまたこの定義によって包含される。
【0132】
治療の目的のための用語「対象」には、自食作用の阻害が有益であろう、疾患ありと診断された、疾患の症状を有する、または疾患を進行させるという危険にさらされているあらゆるヒトまたは動物対象が含まれる。予防の方法のためには対象はあらゆるヒトまたは動物対象である。予防の目的上、例示するために、対象は、癌などの、望まれていない急速な細胞増殖によって特徴付けられる疾患にかかる危険にさらされているかまたは疾患に遺伝学的にかかりやすいヒト対象であってもよい。対象は、発癌物質への暴露のために、望まれていない急速な細胞増殖によって特徴付けられる疾患に遺伝学的にかかりやすいために危険にさらされているなどであってもよい。ヒト治療のために有用であることに加えて、本明細書に記載される化合物はまた、イヌ、ネコ、馬、乳牛、ヒツジ、および豚などの、しかしそれらに限定されない、ペットおよび家畜を含む、哺乳類の獣医治療のためにも有用である。
【0133】
本発明の一態様は、治療効果のある量の式IもしくはIIの1つ以上の化合物、またはそれの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、癌の治療または予防方法に関する。
【0134】
自食作用の抑制は、放射線増感および化学増感を促進することによる新しい抗癌治療であると提案されてきた。癌治療の動物モデルにおいて、重要な自食作用遺伝子ATG5に抗するshRNAを使ってか抗マラリア薬物クロロキンを使ってかのどちらかでの治療誘発自食作用の阻害は、活性化p53かアルキル化化学療法かのどちらかが腫瘍細胞を駆動するために使用されたMyc−駆動腫瘍の細胞死および腫瘍退縮を高めた(Amaravadi,R.K.,et al.,Autophagy inhibition enhances therapy−induced apoptosis in a Myc−induced model of lymphoma.J Clin Invest,2007.117(2):326−36ページ)。クロロキンは、大きい自食小胞の用量依存性蓄積を引き起こし、アルキル化治療誘発細胞死をATG5のノックダウンと類似の程度まで高める。慢性骨髄性白血病(CML)の場合には、クロロキンは、イマチニブによって誘発される、CML細胞株、K562の死を著しく高めた。さらに、イマチニブ抵抗性細胞株、BaF3/T315IおよびBaF3/E255Kは、イマチニブおよびクロロキンでの共治療によって死に誘導することができる。これらの研究は、自食作用の阻害が従来の化学療法を助長する可能性があることを示唆する。
【0135】
米国国立癌研究所(National Cancer Institute)の癌のアルファベット順リストには、急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、幼児期;急性骨髄白血病、成人;副腎皮質癌腫;副腎皮質癌腫、幼児期;エイズ関連リンパ腫;エイズ関連悪性腫瘍;肛門癌;星状細胞腫、幼児期小脳の;星状細胞腫、幼児期脳の;胆管癌、肝外の;膀胱癌;膀胱癌、幼児期;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫、幼児期;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、幼児期;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、幼児期;脳腫瘍、脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、幼児期;脳腫瘍、上衣腫、幼児期;脳腫瘍、髄芽腫、幼児期;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉腫瘍、幼児期;脳腫瘍、視経路および視床下部神経膠腫、幼児期;脳腫瘍、幼児期(その他);乳癌;乳癌および妊娠;乳癌、幼児期;乳癌、男性;気管支腺腫/カルチノイド、幼児期;カルチノイド腫瘍、幼児期;カルチノイド腫瘍、胃腸の;癌腫、副腎皮質の;癌腫、膵島細胞;原発不明の癌腫;中枢神経系リンパ腫;小脳星状細胞腫、幼児期;脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、幼児期;頸部癌;幼児期癌;慢性リンパ球白血病;慢性骨髄性白血病;慢性脊髄増殖性疾患;腱鞘の明細胞肉腫;大腸癌;結腸直腸癌、幼児期;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜癌;上衣腫、幼児期;上皮癌、卵巣の;食道癌;食道癌、幼児期;ユーイング腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍、幼児期;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼癌、眼球内メラノーマ;眼癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(胃袋)癌;胃(胃袋)癌、幼児期;胃腸カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外の、幼児期;胚細胞腫瘍、性腺外の;胚細胞腫瘍、卵巣の;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫、幼児期脳幹;神経膠腫、幼児期視経路および視床下部;毛様細胞白血病;頭頚部癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(原発性の);肝細胞(肝臓)癌、幼児期(原発性の);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、幼児期;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部および視経路神経膠腫、幼児期;眼球内メラノーマ;膵島細胞癌腫(内分泌膵臓);カポジ肉腫;腎臓癌;咽頭癌;咽頭癌、幼児期;白血病、急性リンパ芽球性の、成人;白血病、急性リンパ芽球性の、幼児期;白血病、急性骨髄の、成人;白血病、急性骨髄の、幼児期;白血病、慢性リンパ球の;白血病、慢性骨髄性の;白血病、毛様細胞;唇および口腔癌;肝臓癌、成人(原発性の);肝臓癌、幼児期(原発性の);肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ芽球性白血病、成人急性の;リンパ芽球性白血病、幼児期急性の;リンパ球白血病、慢性の;リンパ腫、エイズ関連の;リンパ腫、中枢神経系(原発性の);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキンの、成人;リンパ腫、ホジキンの、幼児期;リンパ腫、妊娠中のホジキンの;リンパ腫、非ホジキンの、成人;リンパ腫、非ホジキンの、幼児期;リンパ腫、妊娠中の非ホジキンの;リンパ腫、一次中枢神経系;マクログロブリン血症、ヴァルデンストレームの;男性乳癌;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、幼児期;悪性胸腺腫;髄芽腫、幼児期;メラノーマ;メラノーマ、眼球内の;メルケル細胞癌腫;中皮腫、悪性の;原発不明の転移性頚部偏平上皮癌;多発性内分泌腫瘍症候群、幼児期;骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性の;骨髄白血病、幼児期急性の;骨髄腫、多発性の;脊髄増殖性疾患、慢性の;鼻腔および副鼻腔癌;上咽頭癌;上咽頭癌、幼児期;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、幼児期;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺癌;口腔癌、幼児期;口腔および唇癌;口腔咽頭癌;骨の骨肉腫/悪性線維性組織球腫;卵巣癌、幼児期;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、幼児期;膵臓癌、膵島細胞;副鼻腔および鼻腔癌;副甲状腺癌;陰茎癌;褐色細胞腫;松果腺およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、幼児期;下垂体腫瘍;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠および乳癌;妊娠およびホジキンリンパ腫;妊娠および非ホジキンリンパ腫;一次中枢神経系リンパ腫;原発性肝臓癌、成人;原発性肝臓癌、幼児期;前立腺癌;直腸癌;腎臓細胞(腎臓)癌;腎臓細胞癌、幼児期;腎臓骨盤および尿管、移行細胞癌;網膜芽細胞腫;黄紋筋肉腫、幼児期;唾液腺癌;唾液腺癌、幼児期;肉腫、ユーイング腫瘍;カポシ肉腫;骨の肉腫(骨肉腫)/悪性線維性組織球腫;肉腫、黄紋筋肉腫、幼児期;肉腫、軟組織、成人;肉腫、軟組織、幼児期;セザリー症候群;皮膚癌;皮膚癌、幼児期;皮膚癌(メラノーマ);皮膚癌腫、メルケル細胞;小細胞肺癌;小腸癌;軟組織肉腫、成人;軟組織肉腫、幼児期;原発不明の偏平頸部癌、転移性の;胃袋(胃の)癌;胃袋(胃の)癌、幼児期;テント上原始神経外胚葉腫瘍、幼児期;T細胞リンパ腫、皮膚の;睾丸癌;胸腺腫、幼児期;胸腺腫、悪性の;甲状腺癌;甲状腺癌、幼児期;腎臓骨盤および尿管の移行細胞癌;絨毛腫瘍、妊娠の;原発部位不明癌、幼児期;幼児期の異常癌;尿管および腎臓骨盤、移行細胞癌;尿道癌;子宮肉腫;膣癌;視経路および視床下部神経膠腫、幼児期;外陰癌;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;ならびに腎芽細胞腫瘍が含まれる。本発明の方法は、そのようなタイプの癌を治療するために有用である可能性がある。
【0136】
本発明の別の態様は、治療効果のある量の式IもしくはIIの1つ以上の化合物、またはそれらの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、急性膵炎の治療または予防方法に関する。
【0137】
膵炎は、最終的に器官それ自体の破壊につながる消化酵素の放出によって仲介される膵臓の炎症である。膵炎は、多くの合併症のある深刻な致命的病気であり得る。重症例においては、出血、心臓、肺および腎臓への組織損傷、ならびに感染症が起こる可能性がある。急性膵炎の約80,000の症例が米国において毎年発生し;それらの約20パーセントが深刻である。膵炎のための公知の治療はない。膵炎を管理するための現行アプローチは、それが自然に消散するのを待つことと、それが発生した場合心臓、肺および腎臓合併症の治療とを含む。
【0138】
自食作用は、急性膵炎によって誘発される細胞損傷を仲介するのに重要な役割を果たすことを示してきた。早期に活性化された膵臓自体の消化プロテアーゼによる膵臓の自己消化が急性膵炎の開始にとって重要であると考えられる。リソソーム加水分解酵素は膵臓トリプシノーゲン活性化に重要な役割を果たすことが知られているが、どこでそしてどのようにしてトリプシノーゲンがこれらのリソソーム酵素と接触するかは、はっきりしないままである。近年、自食作用は、膵炎の動物モデルにおいて膵臓消化酵素の放出に重要な役割を果たすことが提案されている(Hashimoto,D.,et al.,Involvement of autophagy in trypsinogen activation within the pancreatic acinar cells.J Cell Biol,2008.181(7):1065−72ページ;およびOhmuraya,M.and K.Yamamura,Autophagy and acute pancreatitis:a novel autophagy theory for trypsinogen activation.Autophagy,2008.4(8):1060−2ページ)。重要な自食作用遺伝子Atg5にとって欠陥がある、Atg5−/−マウスにおいて、セルレインによって誘発される急性膵炎の重症度は、有意に低下したレベルのトリプシノーゲン活性化で大きく低下する。したがって、自食作用の活性化は、トリプシンへのトリプシノーゲンの活性化を仲介することによって膵臓腺房細胞において有害な影響を及ぼす可能性がある。自食作用の阻害は、急性膵炎においてトリプシノーゲン活性化をブロックするためのまたとない機会を提供する可能性がある。自食作用阻害剤の開発は、急性膵炎用のピカ新の阻害剤を提供する可能性がある。
【0139】
本発明の別の態様は、治療効果のある量の式IもしくはIIの1つ以上の化合物、またはそれらの製薬上許容される塩、生物学的に活性な代謝産物、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、エナンチオマーもしくは立体異性体を、それを必要としている対象に投与する工程を含む、細胞内病原体によって引き起こされる疾病の治療または予防方法に関する。たとえば、Chenらに付与される米国特許出願公開第2009/0111799号明細書(その全体を参照により本明細書によって援用される)を参照されたい。
【0140】
近年の研究は、増殖するために自食胞を使用するウィルスおよび原生動物だけでなく、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、赤痢菌種(Shigella spp.)、およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)などの、細菌を含む細胞内病原体からの細胞防御における自食作用の役割を確証してきた。自食作用の遂行は、養分状態、成長因子/サイトカイン、および低酸素症状態などの主として生理学的因子によって左右される上流信号変換システムによって調整される。自食作用の薬理学的な誘発は、先天性免疫のこのエフェクターが細胞内病原体から防御するための引き金になるかまたは防御するために増幅されるであろう治療戦略である。
【0141】
本発明の別の態様は、脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体を式IまたはIIの1つ以上の化合物と接触させる工程を含む脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の不活性化方法であって、この脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体がUSP3およびUSP10を含む方法に関する。そのような方法は、脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の活性によって引き起こされるかまたはこの活性によって高められるあらゆる状態を改善するために用いることができる。
【0142】
併用療法
本発明の一態様においては、本発明の化合物、またはそれの製薬上許容される塩は、単独でかまたは別の治療薬と組み合わせて癌および膵炎などの疾病を治療するために使用することができる。本発明の化合物は単独でかまたは追加の試剤、たとえば、治療薬と組み合わせて使用することができ、前記追加の試剤はその意図される目的のために熟練者によって選択されることが理解されるべきである。たとえば、追加の試剤は、本発明の化合物によって治療中の疾病または状態を治療するために有用であると当該技術分野において認められている治療薬であることができる。追加の試剤はまた、治療組成物に有益な特質を与える試剤、たとえば、組成物の粘度に影響を及ぼす試剤であることができる。
【0143】
本発明によって考えられる併用療法は、たとえば、別個の医薬調合物での本発明の化合物、またはそれの製薬上許容される塩と、追加の試剤との投与だけでなく、単一医薬調合物での本発明の化合物、またはそれの製薬上許容される塩と、追加の試剤との投与を含む。言い換えれば、共投与は、両試剤の併用の有益な効果を提供するように対象への少なくとも2つの試剤の投与を意味するものとする。たとえば、試剤は、同時にまたはある時間にわたって順次投与されてもよい。
【0144】
本発明内に含められる併用は、それらの意図される目的のために有用なそれらの併用であることがさらに理解されるべきである。下に記述される試剤は、目的上例示的であり、限定されることを意図されない。本発明の一部である、併用は、本発明の化合物と下のリストから選択される少なくとも1つの追加の試剤とであることができる。併用が、形成される組成物がその意図される機能を果たすことができるようなものである場合、併用はまた、2つ以上の追加の試剤、たとえば、2つもしくは3つの追加の試剤を含むことができる。
【0145】
たとえば、本発明の一態様は、癌の治療のために抗血管新生阻害剤と組み合わせての小分子自食作用阻害剤(たとえば式IまたはIIのもの)の使用に関する。抗血管新生阻害剤は、腫瘍生存および成長を支援するために必要とされる腫瘍における血管の成長を抑えることによって腫瘍成長を阻害すると期待されることが知られている。たとえば、血管新生抑制剤エンドスタチンおよび関連化学薬品は、血管の構築を抑え、腫瘍成長を低下させる。抗血管新生薬物の数百の臨床試験が現在進行中である。患者での試験において、抗血管新生治療は、比較的少ない副作用で腫瘍成長を抑えることができる。しかし、抗血管新生治療が単独で患者生存を延ばすのに不十分ではない可能性があり;従来の化学療法との併用はそれ故有益である可能性がある。特に、自食作用阻害剤は、単独でかまたは抗血管新生治療と組み合わせて機能する新しい選択肢を提供する可能性がある。
【0146】
エンドスタチンは、ベクリン1およびベータ−カテニン・レベルを調節することによって内皮細胞において自食作用を誘発することが示されている(Nguyen,T.M.,et al.,Endostatin induces autophagy in endothelial cells by modulating Beclin 1 and beta−catenin levels.J Cell Mol Med,2009)。本明細書において開示されるように、自食作用の阻害は飢餓条件下に癌細胞の小集団を選択的に殺すことが分かった。それ故、抗血管新生治療は追加の代謝ストレスを誘発して、普通は細胞毒性がない、自食作用阻害剤に対して癌細胞を敏感にする可能性があることが提案される。したがって、抗血管新生治療と抗自食作用治療との併用は、正常細胞への細胞毒性なしの癌の治療のための新たな選択肢を提供する可能性がある(Ramakrishnan,S.,et al.,Autophagy and angiogenesis inhibition.Autophagy,2007.3(5):512−5ページ)。
【0147】
本発明の化合物と併用することができる抗血管新生剤の非限定的な例としては、たとえば、次のものが挙げられる:ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、カルボキシアミドトリアゾール、TNP−470、CM101、IFN−α、IL−12、血小板因子−4、スラミン、SU5416、トロンボスポンジン、VEGFR拮抗薬、ヘパリンと一緒の血管新生抑制ステロイド、軟骨由来血管新生阻害因子、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、アンギオスタチン、エンドスタチン、2−メトキシエストラジオール、テコガラン、トロンボスポンジン、プロラクチン、αVβ3阻害剤およびリノミド。
【0148】
さらに、Thompsonらに付与される米国特許出願公開第2008/0269259号明細書(その全体を参照により本明細書によって援用される)に記載されているように、自食作用阻害剤は、解糖依存性癌を解糖できない細胞に変換する1つ以上の抗癌化合物と1つ以上の自食作用阻害剤とを組み合わせることによって、解糖依存性癌を有すると特定された対象を治療するために使用することができる。解糖依存性癌を解糖できない細胞に変換する抗癌化合物の例:アルキル化剤;ニトロソウレア;抗腫瘍抗生物質;コルチコステロイドホルモン;抗エストロゲン;アロマターゼ阻害剤;プロゲスチン;抗アンドロゲン;LHRHアゴニスト;キナーゼ阻害剤;ならびに抗体療法;たとえば、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルファラン、カルマスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、ミトキサントロン、プレドニゾン、デキサメタゾン、タモキシフェン、フルベストラント、アナストロゾール、レトロゾール、酢酸メゲストロール、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、gleevac、イレッサ、タルセバ、ハーセプチン、アバスチン、L−アスパラギナーゼおよびトレチノイン。
【0149】
投与量
本明細書において使用される場合、「治療効果のある量」または「治療効果のある用量」は、病気の進行を完全にまたは部分的に阻害するかまたは病気の1つ以上の症状を少なくとも部分的に軽減する、本発明の化合物または2つ以上のそのような化合物の組み合わせの量である。治療効果のある量はまた予防的に有効である量であることができる。治療効果のある量は、患者のサイズおよび性、治療されるべき病気、病気の重症度および求められる結果に依存するであろう。所与の患者について、治療効果のある量は、当業者に公知の方法によって決定することができる。
【0150】
本発明の方法に使用される任意の化合物について、治療効果のある用量は、細胞アッセイから最初に推定することができる。たとえば、用量は、細胞アッセイにおいて測定されるようなIC50(すなわち、半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む血中濃度範囲を達成するよう細胞および動物モデルにおいて調合することができる。ある場合には、そのような測定は化合物への血漿タンパク質の結合影響を近似するので、3〜5%血清アルブミンの存在下にIC50を測定することが適切である。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。
【0151】
治療効果のある用量は、患者における症状の改善をもたらす化合物の量を意味する。そのような化合物の毒性および治療効果は、たとえば、最大耐量(MTD)およびED50(50%最大反応のための有効用量)を測定するための細胞培養物または実験動物における標準薬剤学手順によって測定することができる。毒性効果と治療効果との用量比が治療指数であり、それは、MTDとED50との比として表すことができる。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトで使用するためのある範囲の投与量を調合するのに用いることができる。そのような化合物の投与量は好ましくは、毒性がほとんどないかまったくなしでED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与ルートに依存してこの範囲内で変わってもよい。的確な調合、投与ルートおよび投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(たとえば、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p1における、Fingl et al.,1975を参照されたい)。危機状態の治療においては、MTDに近づく緊急のボーラスまたは注入が急速な反応を得るために必要とされる可能性がある。
【0152】
投与量および間隔は、キナーゼ調節効果、または最小限の有効濃度(MEC)を維持するのに十分である活性部分の血漿レベルを提供するために個々に調節されてもよい。MECは各化合物について変わるであろうが、生体内データから推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、投与の個々の特性およびルートに依存するであろう。しかし、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを用いて血漿濃度を測定することができる。
【0153】
投与間隔はまた、MEC値を用いて決定することができる。化合物は、症状の所望の改善が達成されるまで、10〜90%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは50〜90%の時間にMECより上の血漿レベルを維持する投薬計画を用いて投与されるべきである。局所投与または選択的摂取の場合には、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度に関連しなくてもよい。
【0154】
投与される組成物の量は、もちろん、治療中の対象に、対象の体重、苦痛の重症度、投与の方法および処方医師の判断に依存するであろう。
【0155】
キット
本発明の化合物および組成物(たとえば、式IまたはIIの化合物および組成物)は、必要ならば、キット(たとえば、パックまたはディスペンサー装置)で提供されてもよい。パックは、たとえば、ブリスター・パックなどの、金属またはプラスチック箔を含んでもよい。パックまたはディスペンサー装置には、本明細書に記載されるあらゆる方法での化合物の使用についての使用説明書が添えられていてもよい。相溶性の医薬担体において調合された本発明の化合物を含む組成物がまた調製され、適切な容器に入れられ、指示病気の治療についてラベルを貼られてもよい。使用説明書がまた提供されてもよい。
【実施例】
【0156】
今大まかに記載されている本発明は、本発明のある態様および実施形態の例示目的のために挙げられるにすぎない、そして本発明を限定することを意図されない、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【0157】
実施例1:自食作用の小分子阻害剤の単離
自食作用の機構を探究し、そしてそれを活性化することができる追加の小分子を特定するために、自食作用調整剤についてのハイスループット画像ベース選別を開発した。このシステムは、自食作用の誘発時の自食胞膜へのGFPに結合した軽鎖3(LC3−GFP)の局在化をうまく利用する(Zhang,L.,Yu,J.,Pan,H.,Hu,P.,Hao,Y.,Cai,W.,Zhu,H.,Yu,A.D.,Xie,X.,Ma,D.,et al.(2007).Small molecule regulators of autophagy identified by an image−based high−throughput screen.Proc Natl Acad Sci USA 104,19023−19028)。哺乳類LC3、酵母ATG8のオーソログは、特異的に自食胞膜をマークすることが示されている(Kabeya,Y.,Mizushima,N.,Ueno,T.,Yamamoto,A.,Kirisako,T.,Noda,T.,Kominami,E.,Ohsumi,Y.,and Yoshimori,T.(2000).LC3,a mammalian homologue of yeast Apg8p,is localized in autophagosome membranes after processing.EMBO J 19,5720−5728;およびMizushima,N.,and Yoshimori,T.(2007).How to interpret LC3 immunoblotting.Autophagy 3,542−545)。1細胞当たりのLC3−GFP陽性自食胞の数は、正常成長条件下では非常に低いが、血清飢餓またはラパマイシンの添加時に急速に増加する。しかし、LC3−GFPの細胞レベルを上げる化合物が自食作用の分解活性を必ずしも上げることができるわけではない。代わりに、LC3−GFPの増加は、細胞死に関係するかまたはリソソーム欠陥の結果であり、こうして自食作用の閉塞に関係する可能性がある。
【0158】
480の公知の生物活性化合物の選別において、LC3−GFPベースのハイスループット画像選別を、細胞損傷を引き起こす結果としてかまたは下流リソソーム機能をブロックすることによってLC3−GFPのレベルを非特異的に上げるものから自食症分解を特異的に誘発することができる化合物の特定を可能にする長期タンパク質分解についてのロースループットアッセイと結合させた。選別の結果は、自食作用を誘発し、そして明らかな細胞損傷を引き起こすことなく長期タンパク質分解を促進することができる、そのうちの7つがFDA認可薬物である、8つの化合物の特定につながった(Zhang,L.,Yu,J.,Pan,H.,Hu,P.,Hao,Y.,Cai,W.,Zhu,H.,Yu,A.D.,Xie,X.,Ma,D.,et al.(2007).Small molecule regulators of autophagy identified by an image−based high−throughput screen.Proc Natl Acad Sci USA 104,19023−19028)。
【0159】
この選別において、以前はPDE5阻害剤として知られた(MacPherson,J.D.,Gillespie,T.D.,Dunkerley,H.A.,Maurice,D.H.,and Bennett,B.M.(2006).Inhibition of phosphodiesterase 5 selectively reverses nitrate tolerance in the venous circulation.J Pharmacol Exp Ther 317,188−195)、公知の生物活性化合物、MBCQ(図1A)が、自食作用阻害剤活性を有すると特定された。ラパマイシン(0.2μM)でのLC3−GFP−H4細胞の刺激は、予期される通りにLC3−GFPのレベルの増加につながった。MBCQの存在は、ラパマイシン刺激LC3−GFPだけでなく基本的レベルを両方とも阻害した。LC3−GFPドットの低下は、ラバマイシン単独のそれと比較してMBCQおよびラバマイシンの添加1時間後に明らかであった。ハイスループット顕微鏡法を用いるLC3−GFPドットの定量的分析(図1B)。MBCQの処理は、対照とまたはラバマイシン処理単独と比較してLC3−GFPドットのスポット強度だけでなく数、スポットサイズをも低下させた。LC3−GFPの強度を、ラバマイシン単独のそれに対してラバマイシンおよびMBCQ両方一緒の存在下に両方とも測定し、MBCQのIC50は、10mMのワーキング濃度を有する、一般に使用されるタイプIII PtdIns3Pキナーゼ阻害剤、3−メチル−アデニン(3−MA)より約10,000倍強力である、0.788μMであると測定された。
【0160】
MBCQによる自食作用の阻害を確認するために、H4−LC3細胞、293T細胞およびマウス胎児線維芽細胞をMBCQで処理し、内因性LC3IIのレベルをウェスタンブロットによって測定した。MBCQの阻害活性と一致して、LC3IIのレベルは、ラバマイシン単独のそれと比較してMBCQおよびラパマイシン共処理したH4−LC3、293TおよびMEF細胞において一貫して低下した。LC3−GFP分析(図1B)と一致して、LC3IIのレベルは、ラバマイシン単独のそれと比較して1時間のMBCQおよびラパマイシンでの処理後に有意により低かった。
【0161】
飢餓誘発自食作用へのMBCQの影響を測定するために、H4−LC3−GFP細胞をHanks緩衝液中で1時間培養し、それは、LC3−GFPドットのレベル(図2)の増加によって実証されるように自食作用を誘発するのに十分であった。MBCQ(5μM)の存在下に、飢餓誘発自食作用は有意に低下する。LC3−GFPスポット数、スポットサイズおよびスポット強度の定量的測定は、飢餓誘発自食作用がMBCQ(5μM)または3−MA(10mM)またはウォルトマンニン(0.1μM)の陽性対照によって阻害されることを裏付けた。
【0162】
ラパマイシンで処理された細胞の超微細構造をMBCQの存在または不在下に測定した。MBCQ単独で4時間処理された細胞は、ビヒクル(1%DMSO)で処理された対照と形態学的に似ていることが分かった。ラパマイシンの処理は、特徴的な二重膜を持った大量の自食胞の形成につながった。そのような二重膜自食胞は、ラパマイシンおよびMBCQ一斉に処理された細胞においては目立って不在であった(図3)。
【0163】
実施例2:MBCQの構造活性相関(SAR)
MBCQは4−ヘテロ原子置換キナゾリン化合物である。SARの目的のために、MBCQの構造を、図4Aに示されるように3つの部分すなわち部分A、BおよびC、に分割した。
【0164】
部分Aにおいて、異なる置換基を6−位へ導入し:ハロゲン、電子不足基(たとえば、ニトロおよびメチルスルホニル基)、および電子に富む基(たとえばメトキシおよびアミノ基);ハロゲンを7−位へ導入し;ハロゲンを6−および8−位の両方へ導入し;ならびにメチルまたはアミノ基を2−位へ導入した。
【0165】
部分Bについては、窒素を酸素または硫黄原子で置き換え;メチレン鎖を伸ばし;および分枝点(すなわち置換)をメチレン鎖に加えた。
【0166】
部分Cにおいて、4−ピリジル、モルホリニル、ならびに置換および非置換フェニルを含む、異なる芳香族サイクルの影響を研究した。置換フェニルの置換基としては、電子吸引性基(たとえば、ハロゲン、ニトロ、およびトリフルオロメチル基)、置換フェニル5)ならびに電子供与性基(たとえばアミノ、メトキシ基)の両方が挙げられる。
【0167】
MBCQ構造上で上記の修正をした合計194種の化合物を合成し、自食作用を阻害することにおけるそれらの活性を分析した。
【0168】
SAR結果は次の通りまとめることができる(また図4Bも参照されたい):
(1)キナゾリンの6−位の置換基の性質は、活性にとって決定的に重要である。電子吸引性置換基(たとえばニトロまたはフッ素基)は活性を向上させる(たとえば図16におけるC29)。6−位に電子供与性置換基(たとえばアミノ基)を持った化合物は活性をまったく持たない(たとえば図14におけるC71)。6−位に置換基なしの化合物は穏やかな活性を有する。
【0169】
(2)7−および8−位の置換基は、活性に負の影響を及ぼす。たとえば、キナゾリンが7−または8−位にモノ置換されているとき、化合物は活性を失い(たとえばC83)、6−および8−位の両方にクロロ基でビス−置換されている化合物と同じである(たとえばC19、C20)。
【0170】
(3)部分A上の立体障害は活性を妨げる(たとえばC68、C01)。
【0171】
(4)部分Bにおけるヘテロ原子がOまたはSであるとき、活性はまったく検出されなかった(たとえばC101、C45)。
【0172】
(5)化合物は、部分Cにおけるベンゼンがモルホリンまたはフランで置き換えられるときに活性を失う(たとえばC78、C54)。
【0173】
(6)部分Cにおいて4−CF3、4−NO2または4−ピリジンを持った化合物はまったく活性を示さない(たとえばC15)。同時に3−、4−および5−位に置換基があるとき、活性はまったく検出されなかった(たとえばC15)。
【0174】
(7)部分Bにおけるヘテロ原子が、1〜3個の炭素に連結された、窒素であるときに高活性は観察された(たとえばC16、C51およびC13)。4個以上のメチレン単位が部分Aと部分Cとを連結する鎖中にあるとき活性はまったく検出されなかった(たとえばC30、C49)。さらに、分枝鎖上の嵩高い置換基は活性なしにつながる(たとえばC81、C86およびC94)。さらに、分枝鎖上の異なる光学的配置(RまたはS)で感知できるほどの効果は検出されなかった(たとえばC69およびC84、C76およびC77)。
【0175】
合成され、そしてそれらの自食作用阻害活性について分析されたMBCQ誘導体のうちで、44種の化合物がMBCQのそれと類似のまたはそれより上の自食作用阻害活性を示した(図16)。同時に、構造上MBCQに似ているが自食作用阻害活性をまったく持たない、C71およびC82などの、多数の化合物が特定され、その後の実験において陰性対照として使用された(図15)。
【0176】
自食作用への阻害活性を確認するために、マウス胎児線維芽(MEF)細胞を、ラバマイシンの存在または不在下にC29、C43またはC71で4時間処理し、自食作用のレベルをLC3ウェスタンブロッティングによって測定した。C43またはC29の処理はラバマイシンによって誘発される自食作用を阻害したが、陰性対照C71は阻害しなかった(図5A)。
【0177】
自食作用へのC29およびC43の影響は、電子顕微鏡法によってさらに確認された。ラバマイシン処理MEF細胞において、予期されるように多くの多重膜の小胞だけでなく多数の二重膜の自食小胞が観察された(図5B)。ラバマイシンおよびC29またはC43で処理された細胞においては、自食胞は、ビヒクル処理細胞におけるように概して存在しない(図5)。
【0178】
実施例3:MBCQは自食作用を含む選択的細胞死モデルを阻害する
細胞活性へのMBCQの影響を特徴付けるために、細胞生存および細胞サイクルへのMBCQの影響を以下に概説されるように測定した。H4細胞をMBCQ(5μM)で5日間処理し、トリパンブルーの存在下での細胞数計数のために毎日採取した。図6Aに示されるように、MBCQの処理は、細胞増殖にまったく影響を及ぼさなかった。MBCQ(5μM)で24時間および48時間処理されたH4細胞における細胞サイクルプロフィールおよび可能なアポトーシス細胞もまた測定した。図6Bに示されるように、MBCQは細胞サイクル分布に検出できる影響をまったく及ぼさない。
【0179】
自食は多数のアポトーシス欠損細胞タイプにおける細胞死に関与すると提案されてきた。たとえば、bax/bak二重欠損マウス胎児線維芽細胞(DKO mef)は、アポトーシスに対して強い抵抗性がある(Wei,M.C.,Zong,W.X.,Cheng,E.H.,Lindsten,T.,Panoutsakopoulou,V.,Ross,A.J.,Roth,K.A.,MacGregor,G.R.,Thompson,C.B.,and Korsmeyer,S.J.(2001).Proapoptotic BAX and BAK:a requisite gateway to mitochondrial dysfunction and death.Science 292,727−730)。エトポシドによるbax/bak DKO mefの刺激は、自食作用誘発によって一部分において細胞死を誘発すると示されてきた(Shimizu,S.,Kanaseki,T.,Mizushima,N.,Mizuta,T.,Arakawa−Kobayashi,S.,Thompson,C.B.,and Tsujimoto,Y.(2004).Role of Bcl−2 family proteins in a non−apoptotic programmed cell death dependent on autophagy genes.Nat Cell Biol 6,1221−1228)。MBCQがエトポシドによって誘発されるbax/bak DKO細胞の細胞死を阻害する可能性があるかどうかを試験するために、Bax/bak DKO細胞を、陽性対照としてのMBCQ(10μM)、または3−MA(10mM)の存在下にエトポシドで8時間処理した。図7Aに示されるように、MBCQの存在は、bax/bak DKO MEF細胞の細胞死を有意に減少させた。さらに、MBCQによる阻害と一致して、LC3IIのレベルは、エトポシド処理細胞において上がったが、MBCQの存在下では下がった(図7B)。
【0180】
実施例4:MBCQはPI3Pの細胞レベルを選択的に下げる
MBCQはラパマイシンおよび飢餓によって誘発される自食作用を阻害するので、MBCQがmTORの活性に影響を及ぼすかどうかを先ず測定した。ウェスタンブロッティングアッセイは、MBCQが対照またはラバマイシン処理細胞において、mTORおよびその標的、p70S6KおよびS6のホスホリル化にまったく影響を及ぼさないことを実証した。そしてまたMBCQは、GSK−3α/β、AKTのホスホリル化にもいかなる影響も及ぼさない。AKTのホスホリル化はタイプI PtdIns3(PI3)キナーゼによって調整されるので、この結果はまた、MBCQがタイプI PISキナーゼへまったく影響を及ぼさないことを示唆する。したがって、MBCQはmTOR経路またはタイプI PI3キナーゼに対してまったく影響を及ぼさないと結論された。
【0181】
マーカーとしてEEA1の免疫染色を用いる早期エンドソーム、マーカーまたはリソトラッカーとしてlamp2の免疫染色を用いるリソソーム、マーカーとしてGalT−YFPを用いるトランス−GolgiへのMBCQの影響を測定した。MBCQの影響は、これらの実験のいずれにおいても検出されなかった。したがって、MBCQは主要な細胞内小器官に影響を及ぼさないと結論された。
【0182】
さらに、pEGFP−CL1、短寿命ペプチドとのGFP融合を用いるプロテアソーム分解経路へのMBCQの影響を測定した(Bence,N.F.,Sampat,R.M.,and Kopito,R.R.(2001).Impairment of the ubiquitin−proteasome system by protein aggregation.Science 292,1552−1555)。MBCQはpEGFP−CL1のレベルに影響を及ぼさず、MBCQがプロテアソーム経路に一般的な影響を及ぼさないことを示唆することが分かった(データは示されていない)。さらに、MBCQの処理は、ポリユビキチン化の一般的なレベルにまったく影響を及ぼさない。したがって、MBCQはユビキチン−プロテアソーム分解経路に一般的な影響を及ぼさないと結論された。
【0183】
PtdIns3P(PI3P)のレベルは自食作用を仲介するのに決定的に重要な役割を果たすことが知られている(Levine,B.,and Klionsky,D.J.(2004).Development by self−digestion:molecular mechanisms and biological functions of autophagy.Dev Cell 6,463−477)。MBCQがPI3Pに影響を及ぼすかどうかを問うために、FYVE−RFPを発現するH4細胞を使用した。FYVEはPI3Pに特異的に結合し、PI3Pについての細胞レベル用のマーカーとして広く使用されている(Gaullier,J.M.,Simonsen,A.,D’Arrigo,A.,Bremnes,B.,Stenmark,H.,およびAasland,R.(1998).FYVE fingers bind PtdIns(3)P.Nature 394、432−433)。興味深いことに、MBCQの処理は、基礎H4細胞およびラバマイシン処理H4細胞の両方においてFYVE−RFPスポットのレベルを急速におよび効果的に下げるが、ウェスタンブロッティングによって検出されるFYVE−RFPのレベルは変化しなかった(図8)。
【0184】
PtdIns3Pの細胞レベルへのMBCQの影響をさらに測定するために、脂質ドットブロットアッセイを用いた。細胞PtdIns種を抽出し、ポリフッ化ビニリデン膜上へ塗布した。PtdIns3Pのレベルは、GST−PXドメイン・タンパク質および抗GST抗体を使用して検出された。図9に示されるように、MBCQおよびC43の処理は、基礎細胞およびラバマイシン処理細胞の両方中のPtdIns3Pの細胞レベルを選択的に下げた。総合すれば、MBCQはPtdIns3Pのレベルを下げると結論された。
【0185】
実施例5:MBCQおよびその活性誘導体はVps34錯体の分解を選択的に促進する
タイプIII PtdIns3キナーゼ錯体、Vps34/ベクリン1/p150は、PtdIns3Pを生成するためのPtdInsのホスホリル化に関与するので、Vps34錯体のキナーゼ活性へのMBCQ阻害活性を測定した。293T細胞をHA−Vps34/GFP−ベクリン1でトランスフェクトした。抗HAを使用して免疫沈降させたVps34錯体を、γ−32P−ATPの存在下にPtdInsで培養した。ホスホリル化産物を薄層クロマトグラフィーおよび引き続くオートラジオグラフィーによって分析した。図10Aに示されるように、PtdInsホスホリル化は、ウォルトマンニンによって阻害されるが、MBCQによって阻害されない。したがって、MBCQはVps34酵素活性の直接阻害剤ではないと結論された。
【0186】
他方では、flag−タグ付きベクリン1およびHA−Vps34のレベルは、C82、不活性アナログのそれよりMBCQ、C29またはC43処理細胞においてかなり低いことが分かった(図10B)。MBCQ、C29およびC43の処理はまた、GFP−p150およびAtg14Lのレベルを下げたが、C82は下げなかった(図10C〜D)。
【0187】
MBCQおよびC43は、H4細胞における(図10E)および293T細胞における(図10F)内因性ベクリン1、Vps34およびAtg14Lのレベルを下げ得るが、公知の自食作用阻害剤3−MAは、H4細胞における内因性ベクリン1にまったく影響を及ぼさない(図10G)ことがまた分かった。
【0188】
MBCQおよびC43が内因性ベクリン1に類似の影響を及ぼすかどうかを測定するために、293T細胞を、タンパク質合成を阻害するためのCHXの存在下にMBCQまたはC43で処理した。ベクリン1のレベルは、6時間の処理後にCHX単独でよりMBCQまたはC43の存在下にとりわけ低かった(図10E)。したがって、MBCQおよびC45の両方が内因性ベクリン1の分解を促進すると結論することができる。
【0189】
MBCQおよびC43がVsp34錯体のレベルを下げる機構を探究するために、293T細胞を、リソソーム分解を阻害するためのプロテアソーム阻害剤MG132またはNH4Clと共にC43で処理した。MG132の存在はGFP−ベクリン1の減少を阻害したが、NH4Clは阻害しないことが分かった。この結果は、C43の処理がプロテアソーム経路によってベクリン1の分解を促進することを示唆する。それ故、C43は、Vps34/ベクリン1/p150/Atg14L/UVRAGを含むタイプIII PI3キナーゼ錯体の分解を選択的に促進することによって自食作用を阻害すると結論された。
【0190】
実施例6:MBCQおよびその活性誘導体は飢餓誘発アポトーシスを高める
自食作用は細胞生存を支援するために代謝ストレス条件下に活性化されるので、化合物を、それらが飢餓条件下に細胞死を促進するかどうかを測定するために試験した。確かに、C43は血清を含まない条件下にMDA−MB−231細胞(図11A)およびグルコースを含まない条件下にMCF−7細胞(図11B)の生存を低下させることが分かった。ウェスタンブロット分析は、C43の処理が基礎条件およびグルコースを含まない条件の両方下にMCF−7細胞における自食作用を阻害することを裏付けた。
【0191】
さらに、C43は、10%ウシ血清の存在下に、Bcap−37細胞、乳癌細胞株の増殖を阻害することが分かった(図11C)。さらに、Mcap−37細胞は、グルコースを含まない条件下にC43に非常に敏感になった(図11D)。対照およびグルコースを含まない条件下に培養されたBcap−37細胞のウェスタンブロット分析は、C43の処理が基礎条件およびグルコースを含まない条件の両方下に自食作用を阻害することを裏付けた。
【0192】
C43がBcap−37細胞の死を誘発する機構を探究するために、DNA中身をFACSによって解析した。グルコースを含まない条件下のBcap−37細胞の処理は、アポトーシスDNA崩壊と一致する、サブ二倍体DNAのピークを誘発することが分かった(図11E)。さらに、PARPの開裂、カスパーゼ活性化の特徴もまた、グルコースを含まない条件下にC43で6時間処理されたBcap−37細胞において検出された(図11F)。別の乳癌細胞株、BT549もまた、C43の処理に対して同様な反応を実証した。
【0193】
解析された上記の癌細胞株とは対照的に、Madin−Darbyイヌ腎臓に由来する、MDCK細胞のグルコースを含まない条件下のspautinでの処理は、アポトーシスを誘発せず;10μMのspautinで48時間処理されたときに約25%成長抑制が観察されるにすぎなかった(図12Aおよび12B)。腫瘍周辺の正常組織から樹立された、そして起源が筋上皮である、Hs578Bst細胞もまた、spautinに敏感ではなかった(図12Cおよび12D)。これらの結果は、癌細胞が増加した代謝圧力下にあり得る可能性と一致し、それ故非癌細胞より自食作用の阻害に敏感である。
【0194】
アポトーシス欠損条件下での自食作用の増加した活性化は細胞死を仲介することが示されてきた。この可能性を試験するために、Bax−Bak二重ノックアウト(DKO)細胞を、spautinの存在または不在下にDNA損傷応答によって誘発するためのエトポシドで試験し、C43、MBCQおよび3−MAがBax−Bak DKO細胞のエトポシド誘発死を阻害することが分かった。
【0195】
したがって、癌細胞の小集団は自食作用の阻害に選択的に敏感である可能性があると結論された。
【0196】
実施例7:生体内でのMBCQ誘導体の効果
生体内でのMBCQ誘導体の効果を試験することを始めるために、ラバマイシン注射マウスにおける自食作用を阻害するMBCQ誘導体の能力を研究した。マウスに陽性対照としてラバマイシン(10mg/kg)単独を、またはC43もしくはMBCQ(40mg/kg)を4時間毎時間腹腔内注射し、次に5時間目に犠牲にした。肝臓における自食作用レベルを次に、抗LC3抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析した。図13Aに示されるように、C43もしくはMBCQの投与は、LC3IIのレベルを有意に下げた。したがって、C43およびMBCQは両方とも、自食作用を阻害するのに生体内で活性であると測定された。
【0197】
自食作用は膵炎における組織損傷に関与すると提案されてきたので、MBCQ誘導体を、それらがセルレイン注射、膵炎の十分に確立された動物モデルによって誘発される組織損傷を減らすことができるかどうかを見るために試験した(Hashimoto,D.,Ohmuraya,M.,Hirota,M.,Yamamoto,A.,Suyama,K.,Ida,S.,Okumura,Y.,Takahashi,E.,Kido,H.,Araki,K.,et al.(2008).Involvement of autophagy in trypsinogen activation within the pancreatic acinar cells.J Cell Biol 181,1065−1072;およびOhmuraya,M.,and Yamamura,K.(2008).Autophagy and acute pancreatitis:a novel autophagy theory for trypsinogen activation.Autophagy 4,1060−1062)。ラットにセルレイン(50ng/kg)単独をまたはC43(40mg/kg)を4時間毎時腹腔内注射した。ラットを最後の注射の1時間後に犠牲にし、膵臓をウェスタンブロッティング分析のために単離した。図13Bに示されるように、セルレインの注射は報告されているように自食作用を誘発し;C43の共注射はセルレイン注射に誘発される自食作用のレベルを有意に下げた。総合すれば、C43は、セルレイン誘発膵炎において誘発される自食作用を減らすのに有効であると結論された。
【0198】
実施例8:化合物の製造
式IおよびIIの化合物の合成への1つの一般的なアプローチをスキームIにおいて下に図示する。
【化8】
【0199】
[1]工程1は、キナゾリン−4−ケトン(または8−アザ−キナゾリン−4−ケトン)の形成である。
【0200】
1つのアプローチにおいては、アントラニル酸メチルエステル(または2−アミノニコチン酸メチル)をホルムアミドと1:15〜20のモル比で混合し、約170〜190℃で加熱する。反応が完了した後、混合物を冷却し、濾過し、洗浄し、乾燥させる。生じた粗生成物をさらに処理することなく次の反応に使用する。
【0201】
[2]工程2は、4−クロロキナゾリン(または8−アザ−4−クロロキナゾリン)の形成である。
【0202】
1つのアプローチにおいては、工程1からの粗生成物をオキシ塩化リンと1:8.7〜10のモル比で混合し、次に約100〜115℃で加熱する。反応が完了する、約10〜12時間後に、混合物を冷却し、過剰のオキシ塩化リンを回転蒸発によって除去する。ジクロロメタンなどの、有機溶媒を加えて固体を溶解させ、これにアンモニアの添加による約7〜8への生じた溶液のpH調整が続く。生じた混合物をジクロロメタンで抽出し、乾燥させ、カラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0203】
別のアプローチにおいては、工程1からの組成生物を、触媒量の無水DMF(たとえば0.5〜1mL)と共に、塩化チオニルと1:15〜20のモル比で混合し、次に約80〜90℃で加熱する。反応が完了する、約10〜12時間後に、混合物を冷却し、過剰の塩化チオニルをロータリーエバポレーターによって除去する。ジクロロメタンなどの、有機溶媒を加えて固体を溶解させ、これにアンモニアの添加による約7〜8への生じた溶液のpH調整が続く。生じた混合物をジクロロメタンで抽出し、乾燥させ、カラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0204】
別のアプローチにおいては、工程1からの組成生物を塩化オキサリルとアルゴン下に混合し、無水DMFを滴加して、1:1.5:1.5工程1の生成物:塩化オキサリル:DMFのモル比の混合物を形成し、次に約85〜95℃に加熱する。約7〜10時間後に、反応を飽和リン酸二ナトリウム水素でクエンチする。次に混合物を、ジクロロメタンなどの、有機溶媒で抽出し、カラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0205】
[3]工程3は、N−置換−4−アミノ−キナゾリン(または8−アザ−N−置換−4−アミノ−キナゾリン)の形成である。
【0206】
アルゴン下に、工程2の生成物、HXC(R2)(R3)(CH2)nZ(本明細書において定義されるような)、およびトリエチルアミンを、テトラヒドロフランなどの、有機溶媒中、1:1.25:1.68のモル比で組み合わせ、約75〜80℃に加熱する。12〜18時間後に、有機溶媒を回転蒸発によって除去する。生じた粗生成物をカラムクロマトグラフィーによって精製する。
【0207】
追加の例示のために、化合物A9、A30およびA36の合成を下により詳細に記載する。上に指摘されたように、追加の化合物は、任意選択的に置換された4−クロロキナゾリン(下に示される9−3などの)と結合するアミンを変えることによって製造することができる。
【0208】
A9の製造
【化9】
【0209】
ジエチルエーテル(5mL)中のAgNO2(448.5mg、2.92ミリモル)の懸濁液に化合物9−1(500mg、2.65ミリモル)をアルゴン下に氷−塩浴中で滴加した。混合物を室温に暖め、一晩撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(EA:PE、1:100)によって精製して3つの化合物を得た。1H NMRによってどれが所望の化合物9−2であるかを判断することは困難であった。
【0210】
CH3CN/H2O(1mL/1mL)中に化合物9−2(150mg、0.967ミリモル、MC0449−41−2)およびKOH(81.4mg、1.451ミリモル)を含有する混合物を室温で2時間撹拌した。次にセレクトフルオル(514.0mg、1.451ミリモル)を一度に加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水(10mL)に注ぎ込み、酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物を食塩水(10mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(PE)によって精製して化合物9−3を無色オイル(70mg、収率:42%)として得た。
【0211】
イソプロピルアルコール(5mL)中の化合物9−3(50mg、0.27ミリモル)および(4−クロロフェニル)メタンアミン(47mg、0.33ミリモル)の溶液にEt3N(46μL、0.33ミリモル)を加えた。溶液を150℃で20分間電子レンジにかけた。TLCは反応が完了していることを示した。混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーによって精製してA9を淡黄色固体(52mg、収率:67%、1H NMR、およびLC−MSによって確認)として得た。1H NMRを図23に示す。
【0212】
A30の製造
【化10】
【0213】
イソプロピルアルコール(4mL)中の化合物9−3(105mg、0.573ミリモル)、30−9(94mg、0.573ミリモル)およびNEt3(0.22mL、1.64ミリモル)を150℃で20分間電子レンジにかけた。濃縮およびカラムクロマトグラフィーによる精製はA30を黄色固体(80mg、収率:45%、1H NMRによって確認)として与えた。1H NMRを図24に示す。
【0214】
A36の製造
【化11】
【0215】
DMSO(10mL)中の化合物36−1(1.0g、5.3ミリモル)およびNaCN(520mg、10.6ミリモル)の溶液を30℃で一晩撹拌した。TLCは反応が完了していることを示した。混合物を水(30mL)で希釈し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機相を水(10mL×5)およびNaHCO3(飽和、20mL)で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して36−2を無色オイル(360mg、収率:50%)として得た。
【0216】
THF(10mL)中の化合物36−2(346mg、2.56ミリモル)の溶液にラネー(Raney)Niを加えた。次に混合物を濃水性アンモニアでpH=10に調整し、30℃で一晩撹拌した。TLCは反応が完了していることを示した。混合物を、セライト(Celite)を通して濾過し、濾液を濃縮して36−3を黄色オイル(120mg、収率:34%)として得た。
【0217】
イソプロピルアルコール(5mL)中の化合物9−3(50mg、0.27ミリモル)および36−3(46mg、0.33ミリモル)の溶液にEt3N(46μL、0.33ミリモル)を加えた。溶液を150℃で20分間電子レンジにかけた。TLCは反応が完了していることを示した。濃縮およびフラッシュクロマトグラフィーによる精製はA36を白色固体(48.4mg、収率:63%、DMSO中400MHzでの1H NMR、およびMSによって確認)として得た。1H NMRを図25に示す。
【0218】
実施例9:PDE5阻害活性からの自食作用阻害活性の分離
MBCQ誘導体の構造活性相関(SAR)を、自食作用の阻害におけるその活性がそのPDE5阻害活性から分離され得るかどうかを決定するために研究した。上に記載されたように、合成され、そしてそれらの自食作用阻害活性について分析されたMBCQ誘導体のうち、幾つかの化合物はMBCQのそれに類似のまたはそれより上の自食作用阻害活性を示し、その他のものは自食作用阻害活性をまったく持たず、したがって陰性対照として役立つことができる。
【0219】
14のMBCQ誘導体を選択し、PDE5へのそれらの活性について選別した(Wang,H.,Yan,Z.,Yang,S.,Cai,J.,Robinson,H.,and Ke,H.(2008).Kinetic and structural studies of phosphodiesterase−8A and implication on the inhibitor selectivity.Biochemistry 47,12760−12768)。それらのうち、C43(6−フルオロ−N−(4−フルオロベンジル)キナゾリン−4−アミン)、MBCQのそれに匹敵する0.87μMのIC50の有効な自食作用阻害剤が、PDE5およびその他のPDEに対してはるかに低下した阻害活性を有することが分かった。このように、MBCQのPDE5阻害活性は、自食作用阻害活性のそれから化学的に分離することができる。
【表1】
【0220】
この結論と一致して、MY−5445、ジピリダモール、IBMXおよびシルデナフィルを含む、選別されたが、自食作用阻害剤として明るみに出ていない多数のその他の公知PDE5阻害剤が生物活性ライブラリーに存在した。この結論をさらに確認するために、H4−LC3−GFP細胞を、MBCQを陽性対照として使用してラバマイシンと、MY−5445(30μM)、ジピリダモール(80μM)、IBMX(100μM)またはシルデナフィル(10μM)を含むその他のPDE5阻害剤とで処理した。PDE5について2.5nMのEC50を有する最も強力なPDE5阻害剤、シルデナフィル(Viagra)を含む、試験されたPDE5阻害剤のどれもが、自食作用に関するいかなる活性も持たない。これらのデータから、MBCQの自食作用阻害活性はそのPDE5阻害活性と関係がないと結論された。
【0221】
実施例10:Vps34錯体Iのための脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体の同定
ユビキチン化は、プロテアソーム分解を仲介するのに本質的な重要な工程を表す。それ故実験は、ベクリン1のユビキチン化がC43で処理された細胞において増加するかどうかを測定するために行った。図16に図示されるように、C43はベクリン1のユビキチン化を促進することが分かった。
【0222】
それ故、C43は、Vps34錯体Iのユビキチン化を負に調整するために普通は機能する脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体(DUB)を標的にすると仮説を立てた。これは、小分子が活性剤より阻害剤である可能性が高いという共通の所見に従っている。この仮説を直接試験するために、DharmaconライブラリーSMARTプールからヒト脱ユビキチン化酵素を標的にする127siRNAのコレクションを、アッセイとしてLC3−GFP−H4細胞を使用してノックダウン時に自食作用の阻害につながるDUBについて選別した。
【0223】
siPLK1をトランスフェクション効率の検証のために使用し、siVps34を陽性対照として含めた。トランスフェクションの72時間後に、細胞を、DMSO、自食作用を誘発するためのラパマイシン(200nM)、またはラパマイシン(200nM)およびspautin(10μM)で、それぞれ正副2通り追加の8時間処理した。細胞をHoechst 33342(0.5μM)で対比染色し、3.8%PFA中で固定した。蛍光画像をとり、CellWoRx High Content Cell Analysis Systemを用いて定量した。
【0224】
選別は、USP10、USP13、USP3、USP16およびUSP18を、ノックダウン時に、プレート中央から少なくとも1.5標準偏差だけラバマイシンの存在下だけでなく基礎条件下に自食作用のレベルの低下につながる5つの遺伝子として特定した。H4細胞におけるVps34錯体でのタンパク質発現レベルへのこれらの5つのUSPのノックダウンの影響を解析した。5つのUSPのいずれのノックダウンも内因性Vps34、ベクリン1、Atg14LおよびUVRAGのレベルを下げることが分かった(図17)。さらに、5つのUSPのいずれのノックダウンもまたその他の4つのUSPのタンパク質レベルの低下につながった(図18)。興味深いことに、C43の処理もまたこれらの5つのUSPのレベルを下げた(図18)。spautinの処理もまた、293T細胞およびBcap−37細胞におけるUSP13およびUSP10のレベルを下げることができたが、USP44、非関連USPのレベルにほとんど影響を及ぼさない。
【0225】
これらの結果は、USP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18の安定性が互いに共依存であることを示唆し、これは、それらが大きい錯体中に存在する場合に起こる可能性がある。この可能性を試験するために、GFP−USP10およびMyc−USP13プラスミドを293T細胞へトランスフェクトし、GFP−USP10相互作用およびMyc−USP13免疫沈降によって調べた。GFP−USP10およびMyc−USP13は実際に相互作用し、そして重要なことには、この相互作用はspautin処理細胞において阻害されることが分かった(図19)。したがって、spautinは、Vps34錯体のユビキチン化状態を調整するためにこの脱ユビキチン化プロテアーゼ錯体を適切に標的にするのに必要とされる可能性があるUSP10とUSP13と相互作用を中断させると結論された。
【0226】
USP10はp53のDUBとして知られているから、これらのUSPをノックダウンすることのp53への影響もまた研究した。5つのUSPのどれかのノックダウンがp53の減少につながり得ることが分かった(図20)。これらのデータは、USP3、USP10、USP13、USP16およびUSP18がすべてp53の調整剤であることを示唆する。
【0227】
USP10およびUSP13がVps34錯体の脱ユビキチン化プロテアーゼであることをさらに確認するために、293T細胞におけるFlag−USP10/GFP−ベクリン1とMyc−USP13/GFP−ベクリン1との相互作用を免疫沈降でアッセイした。Flag−USP10およびMyc−USP13は両方ともGFP−ベクリン1と相互作用することができ;そして興味深いことに、spautinの処理はFlag−USP10とGFP−ベクリン1との相互作用を損なう(図21A)が、Myc−USP13とGFP−ベクリン1との相互作用を損なうことができない(図21B)ことが分かった。この結果は、spautinがUSP10をまたはUSP10の上流を標的にしてUSP10とベクリン1との相互作用を中断させる可能性があることを示唆する。重要なことには、ベクリン1またはVps34のノックダウンはUSP10および、USP10の基質として知られるp53の内因性レベルを下げ得ることもまた分かった(図21C)。これは、Vps34錯体が、USP10およびUSP13を含むその脱ユビキチン化プロテアーゼを安定化させることによって、それら自体のレベルを調整することができる可能性があることを示唆する。さらに、これは、ベクリン1の損失がその脱ユビキチン化プロテアーゼを阻害することによってp53の減少につながる可能性があるので、なぜベクリン1が多くの種類の癌において頻繁に失われるかを説明するための機構を提供する可能性がある。
【0228】
参照による援用
本明細書に引用される米国特許および米国公開特許出願のすべては、参照により本明細書によって援用される。
【0229】
均等物
本発明の幾つかの実施形態が本明細書に記載され、例示されてきたが、当業者は、機能を果たすためのおよび/または本明細書に記載される結果および/または利点の1つ以上を得るための様々なその他の方法および/または構造を容易に想像するであろうし、そのような変形および/または修正のそれぞれは本発明の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構造が例示的であることを意図されること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構造が、本発明の教示が用いられる1つまたは複数の具体的な用途に依存することを容易に十分理解するであろう。当業者は、通常の実験を用いるだけで、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認めるか、または均等物を確認することができるであろう。それ故、前述の実施形態は例として提示されているにすぎないこと、および、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載され、そして特許請求されるようなもの以外の別のやり方で実施されてもよいことが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載される各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を指向する。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法のあらゆる組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾していないならば、本発明の範囲内に含められる。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図4A】
【図4B】
【図6A】
【図6B】
【図7B】
【図7E】
【図8A】
【図11A】
【図11B】
【図11D】
【図11E】
【図11H】
【図11I】
【図11K】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図14−1】
【図14−2】
【図14−3】
【図14−4】
【図14−5】
【図14−6】
【図15−1】
【図15−2】
【図15−3】
【図15−4】
【図15−5】
【図15−6】
【図23】
【図24】
【図25】
【図3】
【図5A】
【図5B】
【図7A】
【図7C】
【図7D】
【図7F】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図10I】
【図10J】
【図10K】
【図10L】
【図10M】
【図11C】
【図11F】
【図11G】
【図11J】
【図11L】
【図11M】
【図13】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2013−500255(P2013−500255A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521755(P2012−521755)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/042759
【国際公開番号】WO2011/011522
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【出願人】(511074084)シャンハイ インスティテュート オブ オーガニック ケミストリー,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/042759
【国際公開番号】WO2011/011522
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【出願人】(511074084)シャンハイ インスティテュート オブ オーガニック ケミストリー,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ (1)
【Fターム(参考)】
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