説明

航行支援方法およびシステム

航行支援システムにおいて、ユーザによって企図された水上旅行に関連する情報がユーザからインターネットを介して受け取られる。システムは水路データを記憶しているデータベースを含む。データベースはユーザからの情報に応答してアクセスされる。少なくとも1つの推奨水上ルートが、ユーザ情報に応答してかつデータベース内の水路データに従って導出され、推奨ルートはコンピュータネットワークを介してユーザに伝達される。ルートの導出は好ましくは、有効に航行可能な区域を通って延びるルート区間だけを包含することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航海旅行者に航行の支援を提供するための方法および関連するシステムに関する。より詳しくは、本発明は、旅行始点と旅行終点との間のルートを計画する上で航海旅行者を支援するための方法および関連するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットとして知られる世界的コンピュータネットワークを通じて自動車運転者に出発住所から目的地住所までのハイウェイおよび道路上の走行のための道路地図はもとより推奨ルートさえも提供するための周知のサービスが存在する。しかし、船舶ユーザはそうしたサービスの内情に通じてはいなかった。そのようなサービス、すなわち、水路旅行者に航海地図および旅行始点と旅行終点との間の推奨ルートを提供するインターネット介在航行支援サービスの必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、航海旅行を計画する際に、より詳しくは旅行始点と旅行終点との間の航海または水上ルートを決定する際に、水路旅行者を支援するための方法および/またはシステムを提供することを目的とする。本発明は、少なくとも始点および終点を含むユーザ入力情報に応じて推奨航海または水上ルートを自動的に決定する方法および/またはシステムを意図している。好ましくは、しかし必ずしもではなく、推奨航海または水上ルートはユーザの船に合わせて個別化または個人化される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
航行支援方法は、本発明によれば、(a)ユーザによって企図された水上旅行に関連する情報をユーザからコンピュータネットワークを介して受け取ることと、(b)水路データを記憶しているデータベースにアクセスすることと、(c)ユーザ情報に応じてかつ前記データベース内の水路データに従って少なくとも1つの推奨水上ルートを導出することと、そしてそのルートをコンピュータネットワークを介してユーザに伝達することと、を含む。ルートの導出は好ましくは、有効に航行可能な区域を通って延びるルート区間だけを包含することからなる。
【0005】
航行不可能な区域は、いかなる船、ボート、いかだまたは他の水上船も航行できない領域、例えば島といった陸地領域を含む。航行不可能な区域はさらに、少なくともそのユーザの船による航行にとって十分に深くないかまたは、橋または埠頭といった水面上方障害物または、砂州または水中の難破船といった水中障害物にごく近い表面水の領域を含む。
【0006】
一般に、推奨ルートは、ユーザのコンピュータモニタに表示される地図の形態でユーザに伝達される。ルートは、旅行レグ終端および中間地点を規定する緯度および経度座標を含んでもよい。あるいはまた、ルートは、複数の緯度および経度座標の組によって完全に指定されてもよい。加えて、ルート情報には、途上の中間地点で進路変更を行う際にユーザを支援し、それによってユーザがルートの1つのレグから別のレグに移行するために、進路変更角度またはコンパス方位が含まれ得る。
【0007】
推奨ルートの導出は一般に、事前ルートを生成し、推奨水上ルートを生成するために最適化プロセスにおいて事前ルートを修正することを含む。事前ルートは(ネットワークを介して)ユーザによって全体的または部分的に提案されてもよく、最適化プロセスは反復技法によって具体化され得る。
【0008】
事前ルートの修正は一般に、事前ルートの航行不可能な区間を決定するために事前ルートをデータベース内の情報と比較することと、航行不可能な区間を航行可能な代替ルート区間と置き換えることを含む。事前ルートの修正はさらに、例えば陸地またはいずれかのユーザ定義障害物もしくはシステムからの最小距離などのユーザによって供給された旅行詳細に従ってルート変更を組み込むことを含み得る。
【0009】
本発明の1実施形態において、ルートの導出は、それぞれの水深値をグリッド線に割り当てることを含む。その場合、事前ルートはグリッド線に沿って延び、そして事前ルートの修正は、事前ルートのジグザグ部分を、よりまっすぐな、または滑らかなルート区間で置き換えることを含む。一般に、最適ルートを導出するために複数の直線化または平滑化反復が要求される。
【0010】
好ましくは、ユーザから受け取る情報は、始点、終点および最小水深を含む。その際、ルートの導出は、始点と終点との間に延びる少なくとも1つのルートに沿って水深を考慮するためにデータベースにアクセスすることを含む。
【0011】
ユーザから受け取る情報はさらに燃料使用率を含み得る。その場合、方法はさらに、ルートに沿ってユーザのための少なくとも1つの燃料補給場所を決定することを含み得る。この燃料補給場所は、燃料タンクについて計画ルートに沿った走行距離を決定し、燃料枯渇地点以前の計画ルートの近傍に位置する燃料補給所を決定することによって計算され得る。走行距離および関係する燃料枯渇地点を決定する際に局地水流を考慮に入れることが可能である。流れに乗った走行は、流れに逆らう走行よりも使用する燃料が少ない。流れは、河川流、潮流または海流であればよい。データベースは、これらの水流のうちの1つ以上に関するデータを含み得る。
【0012】
ユーザから受け取る情報は、陸地からの最小許容距離、海図危険物からの最小許容距離およびユーザ規定境界からの最小距離からなる群から選択される少なくとも1つの最小許容距離を含み得る。ユーザから受け取る情報はまた、最小進路変更角度、最小レグ長および最大レグ長からなる群から得られる少なくとも1つのルート区間パラメータを含み得る。ユーザから受け取る情報は船種および船体長をさらに含み得る。
【0013】
データベースが橋高データを含む場合、ユーザから受け取る情報は垂直クリアランスをさらに含み得る。その場合、ルートの導出は、垂直クリアランスをデータベース内の橋高と比較することを含む。
【0014】
データベースは、潮汐データによってある程度決定される水深情報を含み得る。その場合、ルートの導出は、ある程度、潮汐データによって修正された水深データにルート決定の基礎をおくことによって、潮汐データを考慮する。満潮で可能ないずれかのルートが干潮では可能でないかもしれない。
【0015】
航行支援システムは、本発明によれば、水深情報を含む水路データを記憶しているデータベースおよび、世界的コンピュータネットワークに接続されており、ユーザによって企図された水上旅行に関連する情報をユーザから受け取るためのサーバコンピュータとを備える。サーバコンピュータはそこに記憶された水路データにアクセスするためにデータベースと接続されている。サーバコンピュータは、ユーザ情報に応答してかつデータベース内の水路データに従って少なくとも1つの推奨水上ルートを導出するためのソフトウェアによりプログラムされている。ソフトウェアは有効に航行可能な区域を通って延びるルート区間だけを包含するためのプログラミングを含む。サーバコンピュータはルートをコンピュータネットワークを介してユーザに伝達するためのプログラミングを含む。
【0016】
ソフトウェアは好ましくは、事前ルートを生成し、推奨水上ルートを生成するために最適化プロセスにおいて事前ルートを修正するためのプログラミングを含む。最適化プロセスは、反復的であってもよく、それによって連続したルートが生成され、例えば総ルート長および進路変更の数などに関して以前のバージョンと比較される。一般に、ルート長および進路変更の数の両方とも、水面上方および水面下の障害物を回避しつつ最小限にされる。障害物は、安全かつ航行可能であるとしてすでに吟味され断定された予め決定されたルート区間またはレグを電子的に集成することによって一般に回避される。それゆえ、ソフトウェアは、事前ルートの航行不可能な区間を決定するために事前ルートを(他の仮ルートと同様に)データベース内の情報と比較し、航行不可能な区間を航行可能な代替ルート区間と置き換えるためのプログラミングを含み得る。事前ルートがユーザによって付与される場合、事前ルートが航行不可能な区間を含むことは場合によってはあり得なくもないが、それは事前ルートをデータベースに記憶された情報と自動的または電子的に比較することによって発見される。
【0017】
事前ルートを修正するためのプログラミングは、ユーザによって供給される旅行詳細に従ってルート変更を組み込むためのルーチンを含み得る。
【0018】
事前ルートを生成するためのプログラミングは、コンピュータネットワークを介してユーザから受け取った情報に従って事前ルートを規定するためのルーチンを含み得る。
【0019】
ソフトウェアはさらに、それぞれの水深値をグリッド線に割り当てるためのプログラミングを含み得る。事前ルートはグリッド線に沿って延びる。その際、事前ルートを修正するためのプログラミングは、事前ルートのジグザク部分を、よりまっすぐな、または滑らかなルート区間で、すなわちより少ないルート区間、従ってより少ない進路変更で置き換えるためのルーチンを含む。
【0020】
ユーザから受け取る情報が始点、終点および最小水深を含む場合、ソフトウェアは、始点と終点との間に延びる少なくとも1つのルートに沿って水深を考慮するためにデータベースにアクセスするためのプログラミングを含む。
【0021】
ユーザから受け取る情報が燃料使用率をさらに含む場合、ソフトウェアはルートに沿ってユーザのための少なくとも1つの燃料補給場所を決定するためのプログラミングを付加的に含む。データベースが水流に関するデータを含む場合、このプログラミングはデータベース内の水流データにある程度従って燃料使用量を計算するためのルーチンを含み得る。
【0022】
上述の通り、ユーザから受け取る情報はまた、陸地からの最小許容距離、海図危険物からの最小許容距離およびユーザ規定境界からの最小距離からなる群から選択される少なくとも1つの最小許容距離を含み得る。ユーザから受け取る情報はさらに、最小進路変更角度、最小レグ長、最大レグ長、船種および船体長からなる群から得られる少なくとも1つのルート区間パラメータを含み得る。
【0023】
データベースが橋高データを含み、ユーザから受け取る情報が垂直クリアランスをさらに含む場合、ソフトウェアは、垂直クリアランスをデータベース内の橋高と比較するためのプログラミングをさらに含み得る。垂直クリアランスが船の高さに適応するために不十分であれば、橋を含まない代替ルートが構成される。
【0024】
選定されたルートが少なくとも1つの中間地点を含む場合、ソフトウェアは中間地点を計算するためのプログラミングを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(定義)
用語「航海」はここで、水上走行、すなわち河川、湖沼、運河、港、沿岸水域、河口および大洋といった水路上での走行を示すために広範囲に使用される。それゆえ、用語「航海」はここで、海および大洋の走行に関するその通常の用法に限定されない。用語「航海」はまた、それらの部分的に水で覆われた区域が少なくとも部分的に航行可能である限り、浸水した平野、沼沢地および湿地上の走行を対象として使用される。要するに、ここで使用される用語「航海」は、水の上(または下でさえ)のあらゆる種類の走行を示す。
【0026】
用語「有効に航行可能な」はここで、少なくとも1つの所定の等級の船によって航行され得る航海ルートおよび水路区域を述べるために使用される。より具体的には、ここに記載された方法において、用語「有効に航行可能な」は、特定の船を用いた特定の航海旅行に関する特定のユーザの指定の要求条件に適した導出または構成されたルートを述べるために使用される。この推奨ルートは、その特定のユーザの船と同じ種類および等級の他の船にとって有効に航行可能であろう。しかし、その特定の推奨ルートは異なる種類または規模の船にとって必ずしも有効に航行可能であるわけではない。予め決定されたディジタル化ルート(下記参照)に関して使用された時。有効に航行可能なルートは、水面下、水面上または水面の上方に関わらず、ユーザの船による通過にとって障害物がないものであると確定される。
【0027】
用語「航行不可能な」はここで、ボート、船、いかだまたは他の水上走行船によって横断できない領域を示すために使用される。島といった陸地領域はこの定義によれば航行不可能である。一般に、航行不可能な区域は、水上を走行するための障害物がある領域である。障害物は、水面下(例えば川床、砂州、水中の難破船)、水面上(例えば陸塊)、または水面の上方(例えば埠頭、橋)にあり得る。用語「航行不可能な」はまた、表面水上走行が法律または条約によって制限または禁止されている区域を指すこともある。加えて、用語「航行不可能な」は、任意の船にとって浅すぎる水路領域を包含し得る。それゆえ、ある特定の経路が航行可能であるか否かは、特定の船の水面下の大きさまたは特定のユーザの水深要求条件に依存する。
【0028】
ここで使用される用語「水路データ」は、水路境界および、少なくとも間接的に、水深情報を含む。水路境界は一般に陸塊の位置および陸地表面輪郭線を含み、水深情報は等深線の形をとり得る。記憶された水路データに含まれる水路境界は付加的に、標識ブイ、特に許可された水路走行の区域と不許可または禁止された水路走行の区域との境界を規定しているブイの位置を含み得る。本発明の特定の実施形態において、記憶された水路データはまた、ディジタル化ルートを含み得る。
【0029】
ここで使用される用語「水路ルート」または「水上ルート」は、水上走行船が旅行始点と旅行終点との間でたどることができる連続的経路を示す。ここに記載された通りコンピュータによって決定されネットワーク(例えばインターネット)によりユーザに伝達される水路または水上ルートは、始点または終点のどちらか一方までずっと及んではいないかもしれない。しかし、決定された水路または水上ルートは、ユーザ選択された始点の十分に近くから始まり、ユーザ選択された終点の十分に近傍で終わるはずであり、それによりそのルートをたどるそのユーザまたは他の者は旅行を容易に完了することができる。水路または水上ルートは通常、その用語がここで使用される際、航行が変化する中間地点によって相互に結合される複数のほぼ直線の区間を含む。
【0030】
用語「中間地点」はここで、航海者が障害物を回避するか、またはルート上の2つのレグを連結するために方向を転じるまたは変更するための基準点を示すために使用される。中間地点は、航行目的のために実際の地理空間(geospatial)座標によって地理空間用語において定義される。中間地点は航行方向基準の働きをする。
【0031】
語句「ルートのディジタル化」は、安全なルートまたはルート区間を作成する行為に適用される。付随して、用語「ディジタル化ルート」は、任意の目的で安全な、例えば、規模に関わらず、帆船、パワーボートおよびヨットを含むレジャー用船舶による航行のために安全であるように事前に決定されている作成または作り上げられた水路ルートを意味するためにここで使用されている。ディジタル化ルートの種々の等級および下位等級が存在し得る。例えば、小型船艇下位等級は所定の規模未満の船により航行可能な全部のルートを含むであろうし、商船等級は規定の規模のはしけおよび外洋航行船といった指定の種類の船を収めることができる。ディジタル化ルートの別の可能な分類は地政学的なものであり、それぞれの下位等級として、地域、州、国および国際ルートを含む。いずれにしても、ディジタル化ルートは、ユーザのための推奨水路ルートを規定するために正しくプログラムされたコンピュータによる使用のためにディジタルフォーマットで水路データベースに記憶される。ここに記載されるように、推奨水上ルートは、複数のディジタル化ルート区間を集成することによって電子的に導出され得る。ルート区間はそれ自体、相互に角度をなして方向づけられた複数の直線区間を含み得る。それらの角度は、旅行を計画しているユーザに供給される推奨ルートの中間地点における進路変更を規定する。
【0032】
用語「ソフトウェア」、「プログラミング」および「ルーチン」は、コンピュータプログラムおよびプログラムの部分を指示するためにここでは区別なく使用される。ここで機能上開示されたプログラムおよびそれらの部分は、開示された機能を実行するモジュール式演算ユニットを形成するために汎用ディジタルコンピュータの一般回路を修正する。
【0033】
用語「等級」はここで、任意の種類および規模の水上走行船を示すために使用される。例えば、ディジタル化ルート区間についてただ1つの等級だけが存在する場合、そのルート区間は全部の種類および規模の船によって航行可能であるとして予め決定される。より先進的な実施形態において、例えばモーターボートおよびパワーボート、帆船、はしけ、ヨットなどのボートの種類および、例えば15フィート以下、15〜25フィート、25〜40フィートなどといった船の規模によって特徴づけられる複数の等級が存在し得る。
【0034】
ここで使用される用語「事前ルート」は、ユーザによって要求された航海ルートの最初の反復を言う。事前ルートは一般に、一続きまたは、中間または仮ルートを形成するために複数の反復において修正される。この反復的最適化処理の完了時に、すなわち全ルート長の最小化および進路変更の数の最小化の時点で、完成したルートは、要求側ユーザに推奨水路または水上ルートとして送られる。
【0035】
(詳細な説明)
図1は、インターネット16として既知の世界的コンピュータネットワークに接続され、それぞれのパーソナルコンピュータ18a、18b…18nを介してサーバコンピュータ14のサービスを利用するユーザに推奨航海または水路ルートを提供するためのデータベース12およびサーバコンピュータ14を備える航行支援システムを図示している。一般に、サーバコンピュータ14は、推奨ルートを導出または計算し、ユーザコンピュータからの要求に応答して水路地図および推奨ルートのほか付加的な情報をユーザコンピュータ18a、18b…18nに提供する。
【0036】
データベース12は、水路水深情報を少なくとも暗黙的に組み込んでいる水路データを記憶している。水路水深情報は、例えばグリッドの点における個別的な緯度および経度座標での水深値の形をとり得る。あるいはまた、水深情報は等深線の形をとり得る。
【0037】
別の形式の水路データフォーマッティングにおいて、データベース12は、水深によって分類される予め決定されたルート区間を記憶し得る。最も単純な具体化において、データベース12は、全部のルート区間、すなわちルートもしくは部分、またはここに述べる航行支援サービスを利用するであろうあらゆる船によって航行可能であるルートを含む、単一の水深カテゴリを記憶し得る。予め決定されたルート区間は、手作業で導出されてディジタル化ルート入力装置19を介してデータベース12に入力される。
【0038】
やはりデータベース12に直接的または間接的に、明示的または暗黙的に、または要約形式で含まれた他の関連情報は、陸塊および、砂州、水中の難破船、埠頭および橋といった航行の他の障害物または妨害物の位置を含む。水路アクセスと密接な関係があるデータベース12に記憶される他の種類のデータは、法律の規制を取り入れているか、符号化または具現化しているものを含む。データベース12はまた、燃料補給所、レストラン、史跡、難破船、景勝地などを含む、航海旅行者にとって有用または興味深い地点の場所を記憶し得る。そのような有用または興味深い地点は、推奨水路ルートとともにユーザに伝達され得る。
【0039】
データベース12の内容は、船の種類および規模によって編成され得る。それゆえ、ユーザがパワーボートを有する場合、サーバコンピュータ14は、ユーザの船が帆船である場合とはデータベース12において異なる情報にアクセスするかもしれない。同様に、50フィートのヨットのためのルートをプロットする際に、サーバコンピュータ14は、15フィートのモーターボートとはデータベース12の異なる領域にアクセスするであろう。データベース12が予め決定されたディジタル化ルート区間を記憶する場合、ルート区間は船の種類および規模によって編成され得る。
【0040】
図6は、港または湾の領域の例示的な場合におけるディジタル化ルート区間(太い破線)の例を図示している。ディジタル化ルートは標識ブイによって区分された航路において延びている。
【0041】
上述の通り、サーバコンピュータ14は、それぞれのユーザによって企図された水上旅行に関連する情報をユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取るためにインターネット16に接続されている。図2に図示された通り、サーバコンピュータ14は、データベース12に接続されており、支援のユーザ要求に応答して、そこに記憶された水路データにアクセスするためのデータベースアクセスモジュール22を含む。サーバコンピュータ14は、ユーザ情報に応答しかつデータベース12における水路データに従って少なくとも1つの推奨水上ルートを導出するためのルート決定ユニット20(図2)を具体化するソフトウェアによりプログラムされている。
【0042】
サーバコンピュータ14は、有効に航行可能な区域を通って延びるルート区間だけを有する水路ルートを推奨するようにプログラムされている。サーバコンピュータ14は、インターネット16を介してユーザコンピュータ18a、18b…18nと通信するための、特に推奨ルートをユーザコンピュータに送るためのプログラミングまたは通信インタフェース24(図2)を含む。サーバコンピュータ14によって導出または決定された推奨ルートは、陸塊に対するルートを例示する地図を含むことができ、随意選択で、陸地構造、人工構造物、水流および潮汐情報、燃料補給所、航海生活アトラクション、汚染水域、危険な暗礁などといったユーザにとって潜在的に関心のある水面および水中の特徴を指示することができる。推奨ルートは一般に、緯度および経度座標、進路変更方位などを含む中間地点詳細を含む。
【0043】
図2に例示された通り、サーバコンピュータ14は、ルート決定ユニット20が事前ルートモジュール26、事前ルートコンパレータ28およびルート修正モジュール30を含むようにプログラムされている。事前ルートモジュール26は、ある特定のユーザコンピュータ18a、18b…18nから事前ルートを受け取るか、またはユーザによってすべて供給される旅行始点および終点ならびに最小水深値に基づき事前ルートを構成するかのどちらかによって、事前ルートを生成する。(後者の場合、モジュール26は、そこからルートデータを受け取るためにデータベース12と接続されており、そのデータに従って事前ルートを規定するためのルーチンを含む。)コンパレータ28は、水路データベース12に明示的または暗黙的に記憶された障害物および水深情報に従って事前ルートを分析し、島および法的禁止区域といった表面障害物、砂州および水中の難破船といった水中障害物および、桟橋、埠頭および少なくとも低い橋といった水面上方障害物を回避するために事前ルートを修正する。コンパレータ28は、推奨水上ルートを生成するために最適化プロセスにおいて事前ルートをさらに修正し得るルート修正モジュール30に、補正された事前ルートを供給する。十分な水深を備えるルートの選定は一般にユーザによって指定される水深要求条件に基づくことに留意しなければならない。この指定の水深は、ユーザの船の実際の喫水よりも相当に大きいかもしれない。
【0044】
図4は、ユーザディジタル化ルートとして、すなわちユーザコンピュータ18a、18b…18nからの提案に応答して、事前ルートモジュール26によって生成された事前ルート(点線)の例を図示している。図4は、事前ルートがどのように浅い、つまり低水深水域の区域を横断するかを示し、その浅瀬を回避する修正された事前ルート(実線)を図示している。
【0045】
サーバコンピュータ14は、上流側で通信インタフェース24の接続されユーザ入力旅行パラメータを受け取り、そして下流側で事前ルートモジュール26およびルート修正モジュール30に接続されそれらにユーザ入力パラメータを分配するための旅行パラメータ検出モジュール32を含む。随意選択で、サーバコンピュータ14は、入力側でアクセスモジュール22を介して水路データベース12に接続され、出力側で水深決定モジュール36に接続され、続いて事前ルートコンパレータ28およびルート修正モジュール30と接続されたグリッド線生成器34を含む。
【0046】
ルート修正モジュール30によって実行される最適化プロセスは反復的であるとしてよく、それによって連続したルートが生成され、総ルート長および進路変更の数に関して以前のバージョンと比較される。好ましくは、全ルート長および全ルートにおける進路変更の数は、水面上方、水面上および水面下の障害物を回避しつつ最小限にされる。データベース12がディジタル化ルート区間を記憶する場合、記憶されたルート区間が安全かつ1つ以上の等級の船によって航行可能であると予め決定されているので、障害物は自動的に回避される。データベース12に記憶されたデータがほとんど前処理されておらず、地理的位置(緯度、経度)の関数としての水深値または等深線データのような本質的に生のデータである場合、ルート修正モジュール30によって行われる数学的計算は必然的により膨大で時間がかかるが、十分な処理パワーが利用できる限り合理的時間内に完遂され得る。
【0047】
いずれにしても、モジュール26から事前ルートの航行可能性を決定し、航行不可能な区間を航行可能な代替ルート区間と置き換えるためにデータベース12を照会する際に、コンパレータ28は本質的に水深を考慮する。事前ルートがユーザによって付与される場合、事前ルートが航行不可能な区間を含むことは場合によってはあり得なくもないが、それは事前ルートをデータベース12に記憶された情報と自動的または電子的に比較することによって発見される。
【0048】
上述の通り、事前ルートコンパレータ28は、モジュール26からの事前ルートをデータベース12に記憶された水路データに従って修正することができる。コンパレータ28は、元のまたは修正された事前ルートをルート修正モジュールに、より詳しくはその中のルートバッファまたはレジスタ38に供給する。バッファ38は、コンパレータ28から受け取った事前ルートだけでなく、最適化プロセスの間にモジュール30によって導出されたルートのさらに修正されたバージョンも格納する。最適化プロセスの終了時に、ルートバッファ38は、最適化されたルートを、ユーザの航行支援の要求に応答しての推奨水路ルートとしてそれぞれのユーザコンピュータ18a、18b…18nへ転送するために通信インタフェース24に転送する。
【0049】
旅行パラメータ検出モジュール32(図2および3)は、ルート修正モジュール30と接続されておりユーザコンピュータ18a、18b…18nからの付加的な旅行パラメータをそのモジュールに供給する。図3に例示された通り、ルート修正モジュールは、最小距離コンパレータ40、最小進路変更コンパレータ42、最小レグ長コンパレータ44、最大レグ長コンパレータ46、船体長コンパレータ48、最小水深コンパレータ50および垂直クリアランスコンパレータ52といったソフトウェア具体化モジュールを含み得る。旅行パラメータ検出モジュール32は、それらにユーザ定義パラメータを供給するためにこれらのコンパレータと接続されている。コンパレータ40、42、44、46、48、50および52は、ルートバッファ38と接続されておりそれから仮のまたは修正された事前ルートデータを受け取り、コンパレータがバッファ38内の仮ルートを、旅行パラメータ検出モジュール32を経て中継される際にそれぞれのユーザ供給パラメータに照らして検査することを可能にする。
【0050】
コンパレータ40、42、44、46、48、50および52は一般に、汎用コンピュータの一般的なコンパレータ回路の形態をしており、その回路は仮ルートデータの規定の分析を実行するためにソフトウェアルーチンによって修正されている。コンパレータ40、42、44、46、48、50および52は、ルートバッファ38と直接に(図示せず)、またはルート修正器54を介して間接的に接続され得る。ルート修正器54は、コンパレータ40、42、44、46、48、50および52からの命令に従ってバッファ38内の仮ルートを調整する。
【0051】
ユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取った情報が、例えば、陸地からの最小許容距離、海図危険物からの最小許容距離またはユーザ規定境界からの最小距離などの1つ以上の最小許容距離を含む場合、コンパレータ40がバッファ38内の仮ルートを分析してその仮ルートが要求された最小許容距離に適合するかどうかを決定する。適合しなければ、コンパレータ40およびルート修正器54は、可能な範囲まで、最小限の要求された距離が認められることを保証するために協働する。そのために、ルート修正器54はアクセスモジュール22を介してデータベース12と接続されている。
【0052】
ユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取った情報が最小進路変更角度を含む場合、コンパレータ42はバッファ38内の仮ルートを検査してその仮ルートが指定の最小進路変更角度に適合するかどうかを決定する。適合しなければ、コンパレータ42およびルート修正器54は、可能な範囲まで、最小限の要求された進路変更角度が満たされることを保証するために協働する。
【0053】
ユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取った情報が最小レグ長を含む場合、コンパレータ44はバッファ38内の仮ルートを検査してその仮ルートが指定の最小レグ長に適合するかどうかを決定する。適合しなければ、コンパレータ44およびルート修正器54は、可能な範囲まで、仮ルートのレグが少なくとも指定の最小レグ長を有することを保証するために協働する。
【0054】
ユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取った情報が最大レグ長を含む場合、コンパレータ46はバッファ38内の仮ルートを検査してその仮ルートが指定の最大レグ長に適合するかどうかを決定する。適合しなければ、コンパレータ46およびルート修正器54は、可能な範囲まで、仮ルートのレグが指定の最大レグ長を超えない長さであることを保証するために協働する。
【0055】
ユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取った情報が船体長を含む場合、コンパレータ48はバッファ38内の仮ルートを検査してその仮ルートが指定された船体長に適応するかどうかを決定する。例えば、コンパレータ48は、その船体長の場合に港内での進路変更が実際に可能であるかどうかを決定するかもしれない。適応しなければ、コンパレータ48およびルート修正器54は、船体長が正しく適応されるように仮ルートを変更するために共に機能する。
【0056】
コンパレータ48はまた、ユーザによって指示された特定の種類の船が仮ルート全体にわたり合法的かつ物理的に走行し得ることを確認するために機能することができる。例えば、パワーボートが一部の区域で禁止されるかもしれない。その場合、コンパレータ48およびルート修正器54は、法律の規制に従うようにバッファ38内の仮ルートを調整する。
【0057】
データベース12が十分な水深クリアランスについて以前に吟味されているディジタル化ルートだけを記憶している場合、コンパレータ50の機能は、仮ルートのレグとして役立つようにデータベース12からルート区間を単に選択することによって本質的に果たされ得る。あるいはまた、データベース12内の水深データが生のデータである場合、コンパレータ50は、バッファ38内の仮ルートがユーザによって指定された最小水深に適合することを保証するために機能する。
【0058】
データベース12が橋高データを含み、ユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取った情報が垂直クリアランスを含む場合、コンパレータ52は、その垂直クリアランスをデータベース12に記録されたいずれかの橋高または、いずれかの他の水面上方または頭上障害物の高さに対して比較する。垂直クリアランスが船の高さに適応するために不十分である場合、コンパレータ52はルート修正器54と協働して橋または頭上障害物を含まない代替ルートを構成する。
【0059】
ルート修正モジュール30は、進路変更角度を計算し進路変更位置または中間地点の緯度および経度を決定するためにルートバッファ38と接続されている進路変更・中間地点計算器56を含む。計算器56は、インターネット16を介して中間地点および進路変更角度をそれぞれのユーザコンピュータ18a、18b…18nに送るために通信インタフェース24と接続されている。
【0060】
生の水深データがデータベース12に記憶されている場合、図2に図示されたグリッド線生成器34は、グリッド線およびグリッド座標を符号化し、その情報をデータベース12からの等深線とともに水深決定モジュール36に転送するために設けられ得る。モジュール36は、それぞれの水深値をグリッド線に割り当てる。事前ルートはグリッド線に沿って延びる(図5参照)。その際、事前ルートを修正するためのプログラミングは、事前ルートのジグザク部分を、よりまっすぐな、または滑らかなルート区間で、すなわちより少ないレグ、従ってより少ない進路変更で置き換えるためのルーチンを含む。
【0061】
図5は、水深決定モジュール36からのグリッド線データに従って事前ルートモジュール26(図2)によって導出されたジグザグ事前ルートの例を例示している。図5はまた、ジグザグ事前ルートの多くの進路変更がより滑らかな最適化されたルートに有利なように実質的に削除されている最適化されたルートも図示している。事前ルートおよび最適化されたルートの両方とも、5メートルの等深線の陸側の浅瀬を回避している。最適化されたルートは、その等深線の深部側での滑らかな経路である。
【0062】
図3に例示された通り、ルート修正モジュール30は、ユーザが仮ルートに沿って走行できる距離を決定するためにルートバッファ38と接続された燃料使用量計算器58をさらに含み得る。計算器58は、この決定を、旅行パラメータ検出モジュール32を介してそれぞれのユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取った燃料使用率に関する入力に応答して行う。ルート修正モジュール30はさらに、アクセスモジュール22を介してデータベース12と、そしてまた燃料使用量計算器58と動作可能に接続されており、仮の(そして最終的に推奨)ルートに沿ってユーザのための少なくとも1つの燃料補給場所を決定するための燃料補給停船ロケータ60を含む。データベース12が水流に関するデータを含む場合、燃料使用量計算器58は、データベース内の水流データにある程度従って燃料使用量を計算するためにプログラム制御される。
【0063】
ルート修正モジュール30は、進路変更の数および付随的にルートレグの数を低減するためにバッファ38内の事前ルートまたは仮ルートを操作するルート平滑化モジュール62を、別個の機能性としてかまたはルート修正器54の固有構成要素として、組み込むことができる。当然ながら、ユーザが最小および最大レグ長ならびに最小進路変更といった制限を設けている場合、ルート平滑化モジュール62の動作は必然的に制限される。
【0064】
図1〜3のシステムによって実行される航行支援方法は、ユーザによって企図された水上旅行に関連する情報をインターネット16を通じてユーザコンピュータ18a、18b…18nから受け取り、データベース12にアクセスし、ユーザ情報に応答してかつデータベース12における水路データに従って少なくとも1つの推奨水上ルートを導出し、そのルートをインターネット16を通じてユーザに伝達することを含む。推奨ルートは、有効に航行可能な区域を通って延びるルート区間だけを含む。
【0065】
航行不可能な区域は、いかなる船、ボート、いかだまたは他の水上船も航行できない領域、例えば島といった陸地領域を含む。航行不可能な区域はさらに、少なくともそのユーザの船による航行にとって十分に深くないかまたは、橋または埠頭といった表面上方障害物または、砂州または水中の難破船といった水中障害物にごく近い表面水の領域を含む。
【0066】
推奨ルートは、それぞれのユーザコンピュータ18a、18b…18nのモニタに表示される地図(図4、5、8および9参照)の形でユーザに伝達される。ルートは一般に、旅行レグ終端および中間地点を規定する進路変更・中間地点計算器56によって導出される緯度および経度座標を含む。あるいはまた、ルートは、複数の緯度および経度座標の組によって完全に指定される。加えて、ルート情報には、途上の間の中間地点で進路変更を行う際にユーザを支援し、それによってユーザがルートの1つのレグから別のレグに移行するために、進路変更角度またはコンパス方位が含まれ得る。
【0067】
上述の通り、ルート決定ユニット20は、一般に初めに事前ルートを生成し、最適化プロセスにおいて事前ルートを修正して推奨水上ルートを生成することによって推奨ルートを導出する。事前ルートは(インターネット16を介して)ユーザによって全体的または部分的に提案されることができ、最適化プロセスはルート修正器54によって部分的に具体化された反復技法によって具体化され得る。
【0068】
事前ルートコンパレータ28は、事前ルートの航行不可能な区間を決定するために事前ルートをデータベース12内の情報と比較し、航行不可能な区間を航行可能な代替ルート区間と置き換えることによって事前ルートを修正した。(図4参照。)ルート修正モジュール30は、コンパレータ40、42、44、46、48、50および52に関して上述した通りユーザによって供給された旅行詳細に従って付加的なルート変更を導出する。
【0069】
システムの1実施形態において、グリッド線生成器34および水深決定モジュール36は、それぞれの水深値をグリッド線に割り当てる。その場合、事前ルートはグリッド線に沿って延び、そして事前ルートの修正は、事前ルートのジグザグ区間を、よりまっすぐな、または滑らかなルート区間で置き換えることを含む。(図5参照。)一般に、事前ルートコンパレータ28およびルート修正モジュール30は、最適ルートを導出するために複数の直線化または平滑化反復を実行する。
【0070】
ユーザから受け取った情報が燃料使用率を含む場合、燃料使用量計算器58および燃料補給停船ロケータ60は、ルートに沿ってユーザのための少なくとも1つの燃料補給場所を決定するために共に機能する。この燃料補給場所は、燃料タンクについて計画ルートに沿った走行距離を決定し、燃料枯渇地点以前の計画ルートの近傍に位置する燃料補給所を決定することによって計算され得る。走行距離および関係する燃料枯渇地点を決定する際に局地水流を考慮に入れることが可能である。流れに乗った走行は、流れに逆らう走行よりも使用する燃料が少ない。流れは、河川流、潮流または海流であり得る。データベースは、これらの水流のうちの1つ以上に関するデータを含み得る。
【0071】
図7に関して、データベース12がディジタル化ルート区間を記憶する場合、モジュール26(図2および3)によって生成された事前ルートは、ユーザによって選定された出発点に最も近い航海ルートから始まる。航海ルートは、ディジタル化ルート上の点AとBとの間に延びるものとして計算され表示される。この事前航海ルートは、事前ルートに沿って走行するはずの距離がシステム定義された最小距離パラメータよりも大きい場合、図8に図示のように修正され得る。ルート修正モジュール(30)および、より詳細には最大レグ長コンパレータ46は、全ルート距離を低減するために進路調整として45°の角度ならびに開始ルートレグ(A〜C)および終了ルートレグ(D〜終点)を計算することができる。修正されたルートは、所要の水深の範囲内であり、航行の障害物がないであろう。
【0072】
図9に図示された島といった障害物が存在する場合、ルート修正モジュール30による仮開始ルート区間(A〜C)の検査は障害物の存在を明らかにする。モジュール30はその際、67°の角度または22°の角度を選定することによってその障害物を迂回しようとするであろう。これらの代替進路変更のどちらも許容ルートを生じない場合、障害物を回避するために中間地点が導入され得る。
【0073】
データベース12がディジタル化ルート区間を含まない場合、サーバコンピュータ14および、より具体的にはルート決定ユニット20は、ユーザ供給された始点および終点ならびに両者間のあらゆる障害物に基づき最適または推奨ルートを計算する。ルート決定ユニット20は最初に、始点および終点間の直線を計算し、そのルートをデータベース12内の障害物および水深データと比較する。一方で、計算されたルートが障害物がなければ、そのルートはユーザに伝達される推奨ルートになる。他方、障害物が検出された場合、ルート決定ユニット20は上述のように個別の角度によってルートを変更する。相対的に密なグリッドが使用される場合、選定された経路は平滑化されて最終的な推奨ルートを生じる。
【0074】
データベース12の内容の生成は、国際水路機関(IHO)の委員会によって作成された電子データ転送規格であるS−57フォーマットデータを使用することにより助成される。航海用電子海図(ENC)ファイルのインポートは、基礎データとして理想的である極めて正確なベクトルデータセットを提供する。このベクトルデータは、水路データベース12の基本内容を形成するために処理される。処理は、可能な範囲まで、航行支援システムによってサービスされる全部の航海区域を包含している地図の連続的またはシームレスな集合を形成することを含み得る。この地図の併合または照合プロセスは、限定するものではないが、エッジマッチングおよびいくつかの地図ポリゴンの分解を含み、隣接する地図が同じ縮尺のものであれば容易になる。1つ以上の個別の生データ地図の縮尺は、複合的なシームレスな地図の形成を可能にするために、必要に応じて変更され得る。基礎データの処理はさらに、例えば、三角化不規則網の形態でのディジタル地形モデルの生成を含み得る。その後、等深線が生成および処理されて閉じた水深ポリゴンを規定する。全部の障害物が識別されて水深ポリゴンでオーバレイされる。
【0075】
ルートのディジタル化は一般に、基本情報の処理の後に行うことができる。主要な海岸都市中心間の主要ルートは、少なくとも2つの代替を伴いディジタル化され得る。代替ルートは網を構成するために一定の間隔で連結される。主要ルートは、例えば6フィート、10フィートおよび30フィートの等深線といった異なる等深線について組になってもたらされ得る。港湾網は好ましくは、ルート間の連結性をサポートしつつ、より密であり適用可能な航行規制を考慮している。各々の航路および橋は、必要な横断制限情報(幅、高さ)を提示するクリティカルライン区間と関係づけられている。ディジタル化ルートは以下の要求条件に従って作成され得る。(i)各ルートは指定の水深ポリゴンの範囲内にある、(ii)いずれのルートも障害物(島、禁止区域その他)を横断または接触しない、(iii)ルートは航行用水路および橋を使用する、(iv)ルートの網は指定のフィート数(例えば500フィート)以内に潜在的目的地に到着するために十分に密である。地図情報はさらに圧縮画像フォーマットに処理されることができ、個々の地図区画の検索を支持するためにピラミッドが構成され得る。
【0076】
ユーザは、地図のシームレスな集合全体へのアクセスが提供され得る。当然ながら、ユーザは、各自の随意選択で、ダウンロードされた地図または地図区画だけでなく、推奨ルートの詳細を印刷することができる。ジオレフ(geo-referenced)画像がシームレスな地図またはその部分の背景として表示され得る。
【0077】
SVG(スカラー・ベクトル・グラフィックス)と呼ばれる、ワールドワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)のウェブ用XMLグラフィックスのためのオープンスタンダードは、ウェブ/インターネットによって地理空間データを提示するために有用である。SVGは、ウェブアプリケーションのためにXMLで二次元グラフィックスおよびグラフィックアプリケーションを記述するための言語である。しかし、ウェブ上でプログラムをサービスするためにあらゆる他の市販の製品を使用することができよう。
【0078】
推奨水上ルートをユーザコンピュータ18a、18b…18nに伝送することに加えて、サーバコンピュータ14は、ユーザにとっての関心のある補助的情報を伝送することができる。そのような補助的情報は、潮汐および潮流、ブイ位置、およびルートに沿って予測された気象に関する詳細を含み得る。潮汐、潮流および気象情報は計画された旅行の予想時刻に合わせて調整されることが可能である。あるいはまた、この情報は、旅行が直ちに行われるという前提で提供され得る。その場合、ユーザは、必要に応じて、旅行が実際に開始された時点で更新を取得することができる。ユーザに提供される付加的な情報は、CMANデータ、燃料補給場所、レストラン解説、史跡および旅行者向け情報を含み得る。
【0079】
上に開示された航行支援システムの付加的な特徴の一つは、ユーザの位置および指定に応じて最も近い港の入口および/または出口をそれが見つけるというものである。システムソフトウェアはこれを、報告されたユーザの位置の周囲x海里の円を描き、適切な結果を見つけ出すために水路データベースに照会/トラバースすることによって達成する。この機能は、特に、航海者が苦境に陥っているか燃料が少ない時、または嵐が迫っているなどで、できる限り早く安全な陸地に着きたい時に、航海者の助けとなる。
【0080】
また、システムは、ユーザがほぼリアルタイムで海図上の変更を目にするためにリアルタイムで水路データベース12を更新することができる。例えば、沿岸警備隊が都市xの沖合に難破船を報告した場合、水路データベース12はその難破船の位置を包含するために更新される。この時ルーティングプログラムは、ユーザがその区域の周辺でルートをプロットしている時は必ずその難破船を回避するであろう。別の例では、海軍がある特定の区域において演習を行うことになり、レクリエーションの航海者を立ち入り禁止にする必要がある。海軍はその海軍練習に関する詳細をサーバコンピュータ12にか、またはデータベース12を更新する手動操作員に伝達すると、ユーザは禁止区域の近くでルートが提供されない。
【0081】
その船が正しく艤装されているあらゆる個々のユーザは、各自のルートをリアルタイムまたは準リアルタイム(定期的に)に(GPS構成要素を通じて)衛星によって追跡させることができる。船の実際の追跡位置は、ユーザが途上にいる間、船上のモニタによって表示され得る。個々のユーザが船上で無線インターネットアクセスができる場合、ルートの変更は、途上にある間、上に詳述した航行支援方法およびシステムを用いて行うことができる。航行システムのためのソフトウェアは、CD、インターネットまたはいずれかの他の可搬型電子ディジタル媒体によってユーザに配布され得る。
【0082】
図6に関して、種々の情報断片(燃料補給場所、レストランの場所、ブイ位置、造船所、史跡、難破船その他)は任意の区域の地図上の凡例として提示され得ることに留意しなければならない。あるいはまた、そのような情報は、緯度および経度座標とともに、別個のテキストとして提供され得る。
【0083】
本発明は特定の実施形態および適用に関して説明したが、当業者は、この教示に照らして、クレームする本発明の精神を逸脱するか、またはその範囲を超えることなく付加的な実施形態および修正を生み出すことができる。従って、ここでの図面および説明は本発明の理解を助成するための例証として提示されており、その範囲を限定するように解釈してはならないことを理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は,航行支援方法およびシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に従った航行支援システムのブロック図である。
【図2】図1に図示されたサーバコンピュータの選択された機能構成要素のブロック図である。
【図3】図2に例示されたルート修正モジュールの選択された機能構成要素のブロック図である。
【図4】本発明に従ったルート最適化方法を実行する際に図1〜3のシステムによって決定された連続した航海ルートの例を図示している地図である。
【図5】本発明に従った代替的なルート最適化方法を実行する際に図1〜3のシステムによって決定された連続した航海ルートの別の例を図示している地図である。
【図6】本発明に従った複数の予め決定されたディジタル化ルートを図示している例示的な海岸線の地図である。
【図7】本発明に従ったルート最適化または導出方法における事前ルートを図示している沿岸水域の地図である。
【図8】図7に図示された事前ルートの修正として推奨航海または水上ルートを図示している、図8に類似の地図である。
【図9】島の形態の障害物および島を回避してプロットされたルートを図示している、図7および8に類似の地図である。
【符号の説明】
【0086】
12 水路データベース
14 サーバコンピュータ
19 ディジタル化ルート入力
16 インターネット
18a、18b、18n ユーザコンピュータ
22 データベースアクセスモジュール
20 ルート決定ユニット
24 通信インタフェース
26 事前ルートモジュール
28 事前ルートコンパレータ
30 ルート修正モジュール
32 旅行パラメータ検出モジュール
34 グリッド線生成器
36 水深決定モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航行支援方法であって、
ユーザによって企図された水上旅行に関連する情報をユーザからコンピュータネットワークを介して受け取ることと、
水路データを記憶しているデータベースにアクセスすることと、
ユーザ情報に応答してかつ前記データベース内の水路データに従って少なくとも1つの推奨水上ルートを導出することであって、前記ルートの導出は有効に航行可能な区域を通って延びるルート区間だけを包含することと、
前記ルートを前記コンピュータネットワークを介してユーザに伝達することを含む、航行支援方法。
【請求項2】
前記ルートの導出は、事前ルートを生成することと、前記推奨水上ルートを生成するために最適化プロセスにおいて前記事前ルートを修正することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記事前ルートの修正は、前記事前ルートの航行不可能な区間を決定するために前記事前ルートを前記データベース内の情報と比較することと、航行不可能な区間を航行可能な代替ルート区間と置き換えることとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記事前ルートの修正は、ユーザによって供給された旅行詳細に従ってルート変更を組み込むことをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記旅行詳細は陸地からの最小距離を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記事前ルートの生成は、前記コンピュータネットワークを介してユーザから受け取った情報に従って前記事前ルートを規定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ルートの導出は、それぞれの水深値をグリッド線に割り当てることをさらに含み、前記事前ルートはグリッド線に沿って延びており、前記事前ルートの修正は、進路変更の数を低減するために前記事前ルートのジグザグ区間を置き換えることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
ユーザから受け取る情報は、始点、終点および最小水深を含み、前記ルートの導出は、前記始点と前記終点との間に延びる少なくとも1つのルートに沿って水深を考慮するために前記データベースにアクセスすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ユーザから受け取る情報は燃料使用率をさらに含み、前記ルートに沿ってユーザのための少なくとも1つの燃料補給場所を決定することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記データベースは水流に関するデータを含み、前記燃料補給場所の決定は、前記データベース内の水流データにある程度従って燃料使用量を計算することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ユーザから受け取る情報は、陸地からの最小許容距離、海図危険物からの最小許容距離およびユーザ規定境界からの最小距離からなる群から選択される少なくとも1つの最小許容距離をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ユーザから受け取る情報は、最小進路変更角度、最小レグ長および最大レグ長からなる群から得られる少なくとも1つのルート区間パラメータをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
ユーザから受け取る情報は船種および船体長をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記データベースは橋高データを含み、ユーザから受け取る情報は垂直クリアランスをさらに含み、前記ルートの導出は、前記垂直クリアランスを前記データベース内の橋高と比較することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記データベースは潮汐データによってある程度決定される水深情報を含み、前記ルートの導出は前記潮汐データを考慮することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記データベースは等深線情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記データベースは水流に関する情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ルートは少なくとも1つの中間地点を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
航行支援システムであって、
水深情報を含む水路データを記憶しているデータベースと、
世界的コンピュータネットワークに接続されており、ユーザによって企図された水上旅行に関連する情報をユーザから受け取るためのサーバコンピュータとを備えており、
前記コンピュータはそこに記憶された水路データにアクセスするために前記データベースと接続されており、
前記サーバコンピュータは、ユーザ情報に応答してかつ前記データベース内の水路データに従って少なくとも1つの推奨水上ルートを導出するためのソフトウェアによりプログラムされており、
前記ソフトウェアは有効に航行可能な区域を通って延びるルート区間だけを包含するためのプログラミングを含んでおり、前記サーバコンピュータは前記ルートを前記コンピュータネットワークを介してユーザに伝達する、航行支援システム。
【請求項20】
前記ソフトウェアは、事前ルートを生成し、前記推奨水上ルートを生成するために最適化プロセスにおいて前記事前ルートを修正するためのプログラミングを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記ソフトウェアは、前記事前ルートの航行不可能な区間を決定するために前記事前ルートを前記データベース内の情報と比較し、航行不可能な区間を航行可能な代替ルート区間と置き換えるためのプログラミングをさらに含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記事前ルートを修正するためのプログラミングは、ユーザによって供給された旅行詳細に従ってルート変更を組み込むためのルーチンを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記旅行詳細は陸地からの最小距離を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記事前ルートを生成するためのプログラミングは、前記コンピュータネットワークを介してユーザから受け取った情報に従って前記事前ルートを規定するためのルーチンを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
前記ソフトウェアは、それぞれの水深値をグリッド線に割り当てるためのプログラミングをさらに含み、前記事前ルートはグリッド線に沿って延びており、前記事前ルートを修正するためのプログラミングは前記事前ルートのジグザグ区間をよりまっすぐなルート区間で置き換えるためのルーチンを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
ユーザから受け取る情報は、始点、終点および最小水深を含み、前記ソフトウェアは、前記始点と前記終点との間に延びる少なくとも1つのルートに沿って水深を考慮するために前記データベースにアクセスするためのプログラミングを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
ユーザから受け取る情報は燃料使用率をさらに含み、前記ソフトウェアは、前記ルートに沿ってユーザのための少なくとも1つの燃料補給場所を決定するためのプログラミングをさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記データベースは水流に関するデータを含み、前記プログラミングは、前記データベース内の水流データにある程度従って燃料使用量を計算するためのルーチンを含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
ユーザから受け取る情報は、陸地からの最小許容距離、海図危険物からの最小許容距離およびユーザ規定境界からの最小距離からなる群から選択される少なくとも1つの最小許容距離をさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
ユーザから受け取る情報は、最小進路変更角度、最小レグ長および最大レグ長からなる群から得られる少なくとも1つのルート区間パラメータをさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
ユーザから受け取る情報は船種および船体長をさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項32】
前記データベースは橋高データを含み、ユーザから受け取る情報は垂直クリアランスをさらに含み、前記ソフトウェアは前記垂直クリアランスを前記データベース内の橋高と比較するためのプログラミングをさらに含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項33】
前記データベースは潮汐データによってある程度決定される水深情報を含み、前記ソフトウェアは前記潮汐データを考慮するためのプログラミングを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項34】
前記データベースは等深線情報を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項35】
前記データベースは水流に関する情報を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項36】
前記ルートは、少なくとも1つの中間地点を含み、前記ソフトウェアは前記中間地点を計算するためのプログラミングを含む、請求項19に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−513779(P2008−513779A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532430(P2007−532430)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/032787
【国際公開番号】WO2006/036561
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(507090465)
【出願人】(507090454)
【Fターム(参考)】