説明

航跡相関統合装置

【課題】目標情報のより状況認識を行い易い表示を提供できる航跡相関統合装置を得る。
【解決手段】最初の航跡相関統合は、レーダ航跡生成部1で生成された航跡と角度センサ航跡生成部2で生成された航跡の全ての組合せの相関の尤度を計算して航跡同士の組合せの相関の有無を判定し、2回目以降の航跡相関統合は、レーダ航跡生成部1及び角度センサ航跡生成部2で生成された航跡と既存のグループの相関の尤度を計算して前記航跡と前記グループとの相関の有無を判定する航跡相関部3と、航跡相関部3により相関有りと判定された航跡同士、又は航跡と既存のグループは必ず同一のグループに入るようにグループ化し、グループの中心位置と広がりを計算するグループ処理部4と、1対1対応がとれた航跡群は統合航跡を表示し、1対1対応がとれない航跡群は前記グループの中心位置と広がりに基づきグループを楕円で表示する統合航跡・グループ表示部6とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダと角度センサを搭載するセンサシステムにおいて、各々のセンサで目標の観測値を使って追尾を行った結果得られる航跡が同一の目標であることを判定し、さらに同一と判定された航跡の推定諸元を統合する、航跡相関統合装置に関するものである。特に、各センサの航跡の統合することによって、センサ単独の場合に比べて、より有効なセンサ制御を行うこと、目標情報のより状況認識を行い易い表示をユーザに提供する航跡相関統合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、複数センサを用いて目標を観測して追尾する技術については、すでに多くの論文、特許(例えば、特許文献1参照)等の公知文献で取り挙げられており、その装置および方法については、様々な提案がなされていることは周知のところである。その中でも、センサ毎に追尾を行い航跡を統合する航跡相関統合は、処理の簡便さとセンサネットワークで目標追尾を行う場合の通信負荷軽減の面から有益あるとして、広く知られた技術である。
【0003】
異種センサによる航跡相関統合では、単独のセンサでは得られない観測情報を補い合うことによる効果が得られる。例えば、以下の2つのセンサで追尾を行う場合を想定する。(1)目標の距離、角度、距離変化率の観測値が得られるレーダ
(2)目標の角度が得られる角度センサ
角度センサによる追尾で生成される航跡(角度センサ航跡)は運動諸元として角度、角速度を持っているが、この航跡にレーダの追尾により生成される航跡(レーダ航跡)を統合することより、目標に関する距離情報を得ることができる。この距離情報により、例えば「角度センサで距離が近い目標を優先的に観測する」といった角度センサ航跡のみではできなかったセンサの制御が可能となる。
【0004】
相関統合処理は、主に以下の2つの処理から成り立っている。
(1)各センサの航跡が追尾している目標の一致、不一致を検査する相関処理
(2)相関処理で同一目標を追尾していると判定された航跡の位置、速度等の運動諸元を統合する統合処理
前者の相関処理は、観測領域に目標が複数存在する場合に、その対応付けの決定方法が、性能を左右する。この対応付けが困難となるのは以下の様な場合である。
・複数の目標が空間上に密集して存在し、1つのレーダ航跡に対して相関がある角度センサ航跡が複数あり、また1つの角度センサ航跡に対して相関があるレーダ航跡が複数ある場合。
・観測可能な空間領域がセンサにより異なり、レーダでは観測されないが、角度センサでは観測される領域に目標が存在する場合。
・観測可能な目標の種類がセンサにより異なり、レーダでは観測されるが、角度センサでは観測されない目標が存在する場合。
上記の様な場合にはセンサ間の航跡の対応が1対1とならないため、どの航跡とどの航跡を統合すればよいのか決定することが困難である。
【0005】
レーダと角度センサ間で相関処理を行う方式が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。なお、この非特許文献1ではレーダ航跡と角度センサの観測値の相関処理を行う目的で方式の提案が行われているが、レーダ航跡と角度センサ航跡の相関処理にも適用可能である。この方式ではレーダ航跡と角度センサ航跡の組合せについて相関の有無を判定する際に、2つの航跡が共通して持つ諸元である角度推定値を比較し、「2つの航跡は同一目標を追尾した結果である」との仮説を検定する。なお、レーダ航跡と角度センサ航跡の相関処理の場合には、比較する航跡の諸元として角度推定値のみでなく角速度推定値を併用できる。その際に計算された相関の尤度、さらにその尤度と別の航跡との組合せについて計算された相関の尤度との差で、2航跡の相関の有無、すなわち仮説の成否を判定する。上記の非特許文献1で紹介された方式では、相関の尤度に応じて判定レベルを5段階設定している。
【0006】
この非特許文献1で示されている方式を相関処理に適用した、航跡相関統合装置の従来方式の処理手順を以下に説明する。図12は、従来の航跡相関統合装置の構成を示すブロック図であり、図13は、従来の航跡相関統合装置の動作を示すフローチャートである。
【0007】
フローチャートに従って処理手順を説明する。まず、ステップ901の「1対1航跡相関」で、航跡相関部10が、航跡間の各センサで生成された航跡の全ての組合せについて、相関の尤度の計算を行う。
【0008】
例えば、図14の様に、レーダで生成された航跡(○印)がR1、R2、R3、R4、R5の5個、角度センサで生成された航跡(△印)がA1、A2、A3、A4、A5の5個の存在する場合、以下の25通りの組合せがある。
(R1,A1)、(R1,A2)、(R1,A3)、(R1,A4)、(R1,A5)、(R2,A1)、(R2,A2)、(R2,A3)、(R2,A4)、(R2,A5)、(R3,A1)、(R3,A2)、(R3,A3)、(R3,A4)、(R3,A5)、(R4,A1)、(R4,A2)、(R4,A3)、(R4,A4)、(R4,A5)、(R5,A1)、(R5,A2)、(R5,A3)、(R5,A4)、(R5,A5)
【0009】
各組合せについて、相関判定の尤度を計算し、その尤度が閾値を超えた場合に、その組合せを「相関有り」と判定する。上記の例では以下の組合せが「相関有り」と判定されたとする。
(R1,A1)、(R2,A1)、(R2,A2)、(R3,A4)、(R4,A4)、(R5,A5)
【0010】
これらのセンサ毎の航跡及びその相関による対応関係の情報を計算機の記憶手段である航跡情報記憶部12に格納する形態例を図15に示す。
【0011】
次に、ステップ902の「航跡統合」では、航跡統合部11が、相関有りと判定され、かつ1対1対応がとれた航跡の組合せについて、2つの航跡の諸元を統合して統合航跡を生成する。
【0012】
上記の例では、R5がA5との組合せのみで1対1対応となっている。なお、R1についてはA1のみと対応するが、同時にR2もA1と対応し、さらにR2はA2とも対応するため2対2の対応になっている。このため、R5とA5の航跡の位置、速度、誤差共分散を統合して統合航跡F5を生成する。
【0013】
次に、ステップ903の「航跡表示」では、航跡表示部13が、航跡相関処理を行った結果が反映された航跡の表示を行う。
【0014】
図16に角度空間上の航跡の表示例を示す。1対1対応がとれた航跡群については、統合航跡(例えば、F5(□印))を表示する。1対1対応がとれなかった航跡についてはセンサ毎の航跡をそのまま表示し、2つの航跡間で相関がある場合には、その航跡間を線分で結んで表示する。統合航跡、レーダ航跡、角度センサ航跡の種別が分かる様、表示する図形を変えている。
【0015】
以上の流れは航跡相関統合の処理指示が外部より入力されてから1周期分の処理を表している。センサ毎の追尾では観測が行われる度に航跡の更新が行われるため、航跡相関統合処理指令がかかる度にこの1周期分の処理を実施する。
【0016】
【特許文献1】特開2003−21678号公報
【非特許文献1】G.V.Trunk and J.D.Wilson、“Association of DF Bearing Measurements With Radar Tracks”,IEEE Trans. on Aerospace and Electronic Systems,Vol.AES-23, No.4, July 1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の従来技術には、各周期で常に全てのレーダ航跡と角度センサ航跡の組合せの相関尤度を計算するため、航跡相関統合処理指令が入力される頻度が高い場合には、処理負荷が問題となる。また、相関統合情報が組合せ毎に管理されているため煩雑であり、1対1対応がとれない場合には、表示がユーザにとって分かり難くになり、センサ制御は役立つ情報を取得し難いという問題点があった。
【0018】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、相関統合結果を効率的に管理し、センサ単独の場合に比べて、より有効なセンサ制御を行うことができ、目標情報のより状況認識を行い易い表示をユーザに提供することができる航跡相関統合装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明に係る航跡相関統合装置は、レーダと角度センサの2つのセンサを有する航跡相関統合装置であって、前記レーダからの観測値を使って3次元追尾を行うレーダ航跡生成部と、前記角度センサからの観測値を使って角度追尾を行う角度センサ航跡生成部と、最初の航跡相関統合では、前記レーダ航跡生成部で生成された航跡と前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡との全ての組合せの相関の尤度を計算して航跡同士の組合せの相関の有無を判定するとともに、2回目以降の航跡相関統合では、前記レーダ航跡生成部及び前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡と既存のグループとの相関の尤度を計算して前記航跡と前記既存のグループとの相関の有無を判定する航跡相関部と、少なくとも前記航跡相関部により相関の尤度の計算で相関有りと判定された航跡同士、又は航跡と既存のグループは必ず同一のグループに入るようにグループ化し、グループを構成する航跡に基づきグループの中心位置と広がりを計算するグループ処理部と、1対1対応がとれた航跡群については統合航跡を表示し、1対1対応がとれない航跡群については前記グループの中心位置と広がりに基づいてグループを楕円で表示する統合航跡・グループ表示部とを設けたものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る航跡相関統合装置は、相関統合結果を効率的に管理し、センサ単独の場合に比べて、より有効なセンサ制御を行うことができ、目標情報のより状況認識を行い易い表示をユーザに提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置について図1から図4までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置の構成を示すブロック図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0022】
図1において、この実施の形態1に係る航跡相関統合装置は、レーダからの観測値を使って3次元追尾を行うレーダ航跡生成部1と、角度センサからの観測値を使って角度追尾を行う角度センサ航跡生成部2と、最初の航跡相関統合では、レーダ航跡生成部1で生成された航跡と角度センサ航跡生成部2で生成された航跡の各々の角度推定値を比較して「同一目標である」との仮説を検定することにより相関の有無の判定とその尤度計算を行い、2回目以降の航跡相関統合では各センサの航跡とグループの尤度計算を行いグループと航跡の相関の有無を判定する航跡相関部3と、2つのセンサの航跡群で1対1の対応が取れない場合に、その航跡群を一まとめにして、グループ化し、さらにグループの中心値と広がりを計算するグループ処理部4と、センサ別航跡とグループ情報を記憶する航跡情報記憶部5と、統合航跡とグループ情報を表示する統合航跡・グループ表示部6とが設けられている。
【0023】
つぎに、この実施の形態1に係る航跡相関統合装置の動作について図面を参照しながら説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置の動作を示すフローチャートである。また、図3は、この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置の航跡情報記憶部の航跡相関データの管理の例を示す図である。図4は、この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置の統合航跡・グループ表示部の航跡相関統合結果の表示の例を示す図である。
【0024】
まず、ステップ101の「1対1航跡相関」で、航跡相関部3がレーダによる航跡、角度センサによる航跡の組合せを全て作り、相関の尤度を計算する。
【0025】
図14の例では、以下の25通りの組合せについて相関の尤度を計算する。
(R1,A1)、(R1,A2)、(R1,A3)、(R1,A4)、(R1,A5)、(R2,A1)、(R2,A2)、(R2,A3)、(R2,A4)、(R2,A5)、(R3,A1)、(R3,A2)、(R3,A3)、(R3,A4)、(R3,A5)、(R4,A1)、(R4,A2)、(R4,A3)、(R4,A4)、(R4,A5)、(R5,A1)、(R5,A2)、(R5,A3)、(R5,A4)、(R5,A5)
【0026】
次に、ステップ102の「航跡のグループ分け」で、グループ処理部4が航跡群のグループ分けを行う。このとき、航跡同士の組合せの相関の尤度の計算で相関有りと判定された航跡同士は必ず同一のグループに入る様にする。
【0027】
例えば、図14の例における25通りの組合せから、(R1,A1)、(R2,A1)、(R2,A2)、(R3,A4)、(R4,A4)、(R5,A5)の6つの組合せに「相関あり」と判定されたとする。このときのグループ分けの結果は以下となる。
グループ1:R1、R2、A1、A2。
グループ2:A3。
グループ3:R3、R4、A4。
グループ4:R5、A5。
上記のグループ1、3は1つのレーダ航跡に対して、対応する角度センサ航跡が2つあり、あるいは1つの角度センサ航跡に対して、対応するレーダ航跡が2つあり、1対1対応がとれない場合である。また、グループ2を構成する角度センサ航跡A3も対応するレーダ航跡がないため、1対1対応がとれない。グループ4は唯一1対1対応がとれているグループである。これらのセンサ毎の航跡、グループ情報を計算機の記憶手段である航跡情報記憶部5に格納する形態例を図3に示す。
【0028】
次に、ステップ103の「グループ中心、広がり計算」で、グループ処理部4が、グループを構成する航跡の距離、角度、さらに距離変化率、角度変化率の平均値を計算し、グループの中心位置、速度とする。さらにグループを構成する全航跡の誤差共分散行列の和を計算して、グループの広がりとする。
【0029】
なお、レーダ航跡1つ、角度センサ航跡1つで構成されるグループではセンサ間で1対1対応がとれているが、このグループについては従来技術におけるステップ902の「航跡統合」の処理を実施して、統合航跡を計算する。さらに、統合航跡の位置、速度をグループの中心位置、速度とする。また、統合航跡の誤差共分散行列をグループの広がりとする。また、何れかの航跡1つのみで構成されるグループについては、その単独センサの航跡の位置、速度をグループの中心位置、速度とする。また、単独センサの誤差共分散行列をグループの広がりとする。
【0030】
次に、ステップ104の「統合航跡・グループ表示」では、統合航跡・グループ表示部6が、グループ処理を行った結果が反映された航跡の表示を行う。
【0031】
図4に角度空間上の航跡の表示例を示す。1対1対応がとれた航跡群については、統合航跡(□印)を表示する。1対1対応がとれなかった航跡についてはセンサ毎の航跡をそのまま表示するが、従来技術の例(図16)の様に2つの航跡間を線分で結ぶ表示は行わない。この航跡表示に加え、グループを楕円体(または円)で表示する。この楕円体の中心位置と大きさは、グループの中心位置と広がりによって決まる。
【0032】
以上で1周期分の処理が終了する。上記は初めて航跡相関統合を行う場合の手順となるが、2回目以降、すなわち、次に航跡相関統合指示が入力される場合(ステップ106)には、既存のグループ情報を使って相関処理を行うため、最初の1周期目とは異なる処理を行う。以下に2周期目以降の処理内容を説明する。
【0033】
まず、ステップ107において、航跡相関部3が「グループ相関」を実行する。このステップでは、ステップ101の「1対1航跡相関」の様に全ての航跡の組合せについて尤度計算は行わず、既存のグループとレーダ航跡の相関、既存のグループと角度センサ航跡の相関処理を行う。
【0034】
上記の例では、相関処理は以下の組合せについて行う。
グループ1とR1、グループ1とR2、グループ1とA1、グループ1とA2、
グループ2とA3、
グループ3とR3、グループ3とR4、グループ3とA4、
グループ4とR5、グループ4とA5。
以上の10通りの組合せで、相関がないと判定された組合せが1つあり、それがグループ1とR1の組合せとする。この場合には、レーダ航跡R1と他のグループ、すなわちグループ2、3、4との相関処理が行われる。
【0035】
このグループ相関処理を行わずに、1対1航跡相関を繰り返すと、上記の例では常に25回の相関尤度計算が必要となるが、グループ相関処理を行う場合、必要な相関尤度計算の回数は14回であり、処理効率化が図られることが分かる。
【0036】
次に、ステップ103の「航跡のグループ分け」では、グループ処理部4が、前ステップのグループ相関の結果を基に、航跡のグループ分けを行う。
【0037】
上記の例で、航跡R1にグループ2と相関があった場合には、グループ構成は以下となる。
グループ1:R2、A1、A2。
グループ2:R1、A3。
グループ3:R3、R4、A4。
グループ4:R5、A5。
【0038】
また、もし航跡R1がどの既存グループに対しても相関がなかった場合は、新しいグループを作りそこにR1を所属させる。結果としてグループ構成は以下となる。
グループ1:R2、A1、A2。
グループ2:A3。
グループ3:R3、R4、A4。
グループ4:R5、A5。
グループ5:R1。
【0039】
以降のステップ103の「グループ中心、広がり計算」と、ステップ104の「統合航跡、グループ表示」の処理内容は1周期目と同様の処理となる。
【0040】
以上のように、この実施の形態1によれば、1対1対応がとれない場合でも、航跡群のグループ化を行うため、グループの中心値、広がりといった諸元によりセンサを向ける方向を決定できる。すなわち、2つのセンサの統合情報をセンサ制御に利用できる。また、グループ諸元を用いてグループとセンサ毎の航跡の相関を行うため、効率的に統合航跡及びグループの更新を行える。さらに、簡明でユーザにとって状況認識が行い易い目標情報を表示できる。
【0041】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置について図5から図8までを参照しながら説明する。図5は、この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置の構成を示すブロック図である。
【0042】
図5において、この実施の形態2に係る航跡相関統合装置は、レーダからの観測値を使って3次元追尾を行うレーダ航跡生成部1と、角度センサからの観測値を使って角度追尾を行う角度センサ航跡生成部2と、レーダ航跡生成部1で生成された航跡と角度センサ航跡生成部2で生成された航跡の各々の角度推定値を比較して「同一目標である」との仮説を検定することにより相関の有無の判定とその尤度計算を行う航跡相関部3と、2つのセンサの航跡群で1対1の対応が取れない場合に、その航跡群を一まとめにして、グループ化し、さらにグループの中心値と広がりを計算するグループ処理部4と、センサ別航跡とグループ情報を記憶する航跡情報記憶部5と、分離、統合を起こす可能性が高いグループを検出し、相関処理を行う航跡を絞り込む再検査航跡選択部7と、統合航跡とグループ情報を表示する統合航跡・グループ表示部6とが設けられている。
【0043】
つぎに、この実施の形態2に係る航跡相関統合装置の動作について図面を参照しながら説明する。図6は、この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置の動作を示すフローチャートである。また、図7は、この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置のセンサの接近によるグループ分離の例を示す図である。図8は、この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置のグループ間距離を示す図である。
【0044】
まず、ステップ201の「1対1航跡相関」で、航跡相関部3がレーダによる航跡、角度センサによる航跡の組合せを全て作り、相関の尤度を計算する。
【0045】
次に、ステップ202の「航跡のグループ分け」で、グループ処理部4が航跡群のグループ分けを行う。このとき、航跡同士の組合せの相関の尤度の計算で相関有りと判定された航跡同士は必ず同一のグループに入る様にする。
【0046】
例えば、図14における25通りの組合せから、(R1,A1)、(R2,A1)、(R2,A2)、(R3,A4)、(R4,A4)、(R5,A5)の6つの組合せに「相関あり」と判定されたとする。このときのグループ分けの結果は以下となる。
グループ1:R1、R2、A1、A2。
グループ2:A3。
グループ3:R3、R4、A4。
グループ4:R5、A5。
上記のグループ1、3は1つのレーダ航跡に対して、対応する角度センサ航跡が2つあり、あるいは1つの角度センサ航跡に対して、対応するレーダ航跡が2つあり、1対1対応がとれない場合である。また、グループ2を構成する角度センサ航跡A3も対応するレーダ航跡がないため、1対1対応がとれない。グループ4は唯一1対1対応がとれているグループである。これらのセンサ毎の航跡、グループ情報を計算機の記憶手段である航跡情報記憶部5に格納する形態例を図3に示す。
【0047】
次に、ステップ203の「グループ中心、広がり計算」で、グループ処理部4が、グループを構成する航跡の距離、角度、さらに距離変化率、角度変化率の平均値を計算し、グループの中心位置、速度とする。さらに、各航跡の誤差共分散行列の和を計算して、グループの広がりとする。
【0048】
なお、レーダ航跡1つ、角度センサ航跡1つで構成されるグループではセンサ間で1対1対応がとれているが、このグループについては従来技術におけるステップ902の「航跡統合」の処理を実施して、統合航跡を計算する。さらに、統合航跡の位置、速度をグループの中心値、速度とする。また、統合航跡の誤差共分散行列をグループの広がりとする。また、何れかの航跡1つのみで構成されるグループについては、その単独センサの航跡の位置、速度をグループの中心位置、速度とする。また、単独センサの誤差共分散行列をグループの広がりとする。
【0049】
次に、ステップ204の「統合航跡表示」では、統合航跡・グループ表示部6が、グループ処理を行った結果が反映された航跡の表示を行う。
【0050】
図4に角度空間上の航跡の表示例を示す。1対1対応がとれた航跡群については、統合航跡(□印)を表示する。1対1対応がとれなかった航跡についてはセンサ毎の航跡をそのまま表示するが、従来方式の様に2つの航跡間を線分で結ぶ表示は行わない。この航跡表示に加え、グループを楕円体(または円)で表示する。この楕円体の位置と形状は、グループの中心位置と広がりによって決まる。
【0051】
以上で1周期分の処理が終了する。上記は初めて航跡相関統合を行う場合の手順となるが、2回目以降、すなわち、次に航跡相関統合指示が入力される場合(ステップ206)には、既存のグループ情報を使って相関処理を行うため、最初の1周期目とは異なる処理方法となる。以下に2周期目以降の処理内容を説明する。
【0052】
まず、ステップ207の「再検査航跡選択」で、再検査航跡選択部7が構成に変化の起きる可能性の高いグループを選択する。構成の変化には以下の様な場合が考えられる。
・センサと目標群の距離が縮まり、観測精度が向上することにより、誤った相関がなくなり、目標毎にグループが分離される。図7に例を示す。
・編隊飛行から一部の目標が離脱することによりグループが分離される。
・目標群の接近により、グループの統合が起きる。
【0053】
以上の様な分離、統合が起きそうなグループ程、航跡相関処理の再計算を行う頻度を高くする。分離、統合が起きそうなグループの判定方法として、以下がある。
・グループ内での目標の密度が薄い場合には次のサンプリング時刻で分離が起きる可能性が高いので、目標密度が薄い程、選択の頻度を高くする。この目標の密度は、グループ内の目標数をグループの広がりで除算することにより計算する。なお、グループ内の目標数はグループを構成するレーダ航跡の数と角度センサ航跡の数のうち、多い方とする。
・グループ内での航跡間の相関の尤度が低い場合には次のサンプリング時刻で分離が起きる可能性が高いので、グループ内での航跡間の相関尤度の最小値が小さい程、選択の頻度を高くする。
・グループ間の距離が短いほど、次のサンプリング時刻で統合が起きる可能性が高いので、グループ間の距離が短いほど、選択の頻度を高くする。このグループ間の距離は、グループの位置を、グループ速度と現在時刻とグループ最新更新時刻の時間差の積により移動させた分の距離とする。図8で、例を使ってグループ間距離を示す。
【0054】
次に、ステップ201において、レーダの航跡、角度センサの航跡が更新されて「1対1航跡相関」を再度行実行するが、このとき上記のステップ207の「再検査航跡選択」で選択されたグループ内にある航跡のみについて、相関判定を行う。
【0055】
ここで、前ステップにおいて、グループ1に分離が起きそうで、グループ2とグループ4に統合が起きそうであると判定されたとする。この場合、相関尤度計算を行うのは、以下の組合せとなる。
グループ1内の組合せ:(R1,A1)、(R1,A2)、(R2,A1)、(R2,A2)。
グループ2と4による組合せ:(R5,A3)。
上記の組合せの数の合計は5であり、全ての組合せ数が25であるため、相関尤度計算の回数が従来技術に比べて削減されることが分かる。
【0056】
以降のステップ202の「航跡のグループ分け」と、ステップ203の「グループ中心、広がり計算」と、ステップ204の「統合航跡表示」の処理内容は1周期目と同様の処理となる。
【0057】
以上のように、この実施の形態2によれば、グループの構成の変化を予測しながら、分離、統合が起きそうなグループに所属する航跡のみについて航跡の相関を行うため、効率的に統合航跡及びグループの更新を行える。
【0058】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る航跡相関統合装置について図9から図11までを参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態3に係る航跡相関統合装置の構成を示すブロック図である。
【0059】
図9において、この実施の形態3に係る航跡相関統合装置は、レーダからの観測値を使って3次元追尾を行うレーダ航跡生成部1と、角度センサからの観測値を使って角度追尾を行う角度センサ航跡生成部2と、最初の航跡相関統合では、レーダ航跡生成部1で生成された航跡と角度センサ航跡生成部2で生成された航跡の各々の角度推定値を比較して「同一目標である」との仮説を検定することにより相関の有無の判定とその尤度計算を行い、2回目以降の航跡相関統合では各センサの航跡とグループの尤度計算を行いグループと航跡の相関の有無を判定する航跡相関部3と、2つのセンサの航跡群で1対1の対応が取れない場合に、その航跡群を一まとめにして、グループ化し、さらにグループの中心値と広がりを計算するグループ処理部4と、センサ別航跡とグループ情報を記憶する航跡情報記憶部5と、グループ内に含まれる目標数、目標の重要度に応じて、表示されるグループの色の種類、濃淡を変えてグループ情報を表示するグループ表示部8とが設けられている。
【0060】
つぎに、この実施の形態3に係る航跡相関統合装置の動作について図面を参照しながら説明する。図10は、この発明の実施の形態3に係る航跡相関統合装置の動作を示すフローチャートである。また、図11は、この発明の実施の形態3に係る航跡相関統合装置のグループ表示部の航跡相関統合結果の表示の例を示す図である。
【0061】
ステップ304の「グループ表示」以外は、上記実施の形態1におけるステップ101〜103、105〜107と同一の処理内容であるため、このステップ304の処理内容のみを以下に説明する。
【0062】
ステップ304の「グループ表示」では、まずグループ内の推定目標数を算出する。推定目標数は、グループを構成するレーダ航跡の数と角度センサ航跡の数のうち、多い方とする。
【0063】
次に、グループの重要度を計算する。グループの重要度は、各航跡の重要度の最大値とする。航跡の重要度は、航跡の更新に利用した観測値から得られる目標の位置、速度以外の識別情報、目標信号の信号強度などを使って決定する。
【0064】
以上によって計算された目標数、重要度に従ってグループを以下の方針に従って表示する。
・グループ内の目標の重要度に応じて、塗り潰しの色の種類を変える。
・グループ内の目標数に応じて、塗り潰しの色の濃さを変える。
図11にグループの表示例を示す。
【0065】
以上のように、この実施の形態3によれば、グループを構成する目標の重要度と目標数を視覚的に表示するため、ユーザにとって状況認識が行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置の航跡情報記憶部の航跡相関データの管理の例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る航跡相関統合装置の統合航跡・グループ表示部の航跡相関統合結果の表示の例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置のセンサの接近によるグループ分離の例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る航跡相関統合装置のグループ間距離を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る航跡相関統合装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る航跡相関統合装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態3に係る航跡相関統合装置のグループ表示部の航跡相関統合結果の表示の例を示す図である。
【図12】従来の航跡相関統合装置の構成を示すブロック図である。
【図13】従来の航跡相関統合装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】従来及びこの発明の航跡相関統合装置のセンサ毎の追尾航跡例を示す図である。
【図15】従来の航跡相関統合装置の航跡情報記憶部の航跡相関データの管理の例を示す図である。
【図16】従来の航跡相関統合装置の航跡表示部の航跡相関統合結果の表示の例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 レーダ航跡生成部、2 角度センサ航跡生成部、3 航跡相関部、4 グループ処理部、5 航跡情報記憶部、6 統合航跡・グループ表示部、7 再検査航跡選択部、8 グループ表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダと角度センサの2つのセンサを有する航跡相関統合装置であって、
前記レーダからの観測値を使って3次元追尾を行うレーダ航跡生成部と、
前記角度センサからの観測値を使って角度追尾を行う角度センサ航跡生成部と、
最初の航跡相関統合では、前記レーダ航跡生成部で生成された航跡と前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡との全ての組合せの相関の尤度を計算して航跡同士の組合せの相関の有無を判定するとともに、2回目以降の航跡相関統合では、前記レーダ航跡生成部及び前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡と既存のグループとの相関の尤度を計算して前記航跡と前記既存のグループとの相関の有無を判定する航跡相関部と、
少なくとも前記航跡相関部により相関の尤度の計算で相関有りと判定された航跡同士、又は航跡と既存のグループは必ず同一のグループに入るようにグループ化し、グループを構成する航跡に基づきグループの中心位置と広がりを計算するグループ処理部と、
1対1対応がとれた航跡群については統合航跡を表示し、1対1対応がとれない航跡群については前記グループの中心位置と広がりに基づいてグループを楕円で表示する統合航跡・グループ表示部と
を備えたことを特徴とする航跡相関統合装置。
【請求項2】
レーダと角度センサの2つのセンサを有する航跡相関統合装置であって、
前記レーダからの観測値を使って3次元追尾を行うレーダ航跡生成部と、
前記角度センサからの観測値を使って角度追尾を行う角度センサ航跡生成部と、
最初の航跡相関統合では、前記レーダ航跡生成部で生成された航跡と前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡との全ての組合せの相関の尤度を計算して航跡同士の組合せの相関の有無を判定するとともに、2回目以降の航跡相関統合では、前記レーダ航跡生成部及び前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡のうち、選択されたグループ内の航跡同士の組合せの相関の尤度を計算して航跡同士の組合せの相関の有無を判定する航跡相関部と、
少なくとも前記航跡相関部により相関の尤度の計算で相関有りと判定された航跡同士、又は航跡と既存のグループは必ず同一のグループに入るようにグループ化し、グループを構成する航跡に基づきグループの中心位置と広がりを計算するグループ処理部と、
分離、統合を起こす可能性が高いグループを選択し、前記航跡相関部の相関処理を行う航跡を絞り込む再検査航跡選択部と、
1対1対応がとれた航跡群については統合航跡を表示し、1対1対応がとれない航跡群については前記グループの中心位置と広がりに基づいてグループを楕円で表示する統合航跡・グループ表示部と
を備えたことを特徴とする航跡相関統合装置。
【請求項3】
前記再検査航跡選択部は、グループ内での前記レーダ航跡生成部及び前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡同士の組合せの相関の尤度の最小値に応じて、前記グループの選択の頻度を変える
ことを特徴とする請求項2記載の航跡相関統合装置。
【請求項4】
前記再検査航跡選択部は、グループ内での目標数とグループの広がりによって計算された目標密度に応じて、前記グループの選択の頻度を変える
ことを特徴とする請求項2記載の航跡相関統合装置。
【請求項5】
前記再検査航跡選択部は、異なるグループ間の空間的な距離に応じて、2つのグループの選択の頻度を変える
ことを特徴とする請求項2記載の航跡相関統合装置。
【請求項6】
レーダと角度センサの2つのセンサを有する航跡相関統合装置であって、
前記レーダからの観測値を使って3次元追尾を行うレーダ航跡生成部と、
前記角度センサからの観測値を使って角度追尾を行う角度センサ航跡生成部と、
最初の航跡相関統合では、前記レーダ航跡生成部で生成された航跡と前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡との全ての組合せの相関の尤度を計算して航跡同士の組合せの相関の有無を判定するとともに、2回目以降の航跡相関統合では、前記レーダ航跡生成部及び前記角度センサ航跡生成部で生成された航跡と既存のグループとの相関の尤度を計算して前記航跡と前記既存のグループとの相関の有無を判定する航跡相関部と、
少なくとも前記航跡相関部により相関の尤度の計算で相関有りと判定された航跡同士、又は航跡と既存のグループは必ず同一のグループに入るようにグループ化し、グループを構成する航跡に基づきグループの中心位置と広がりを計算するグループ処理部と、
グループを構成する航跡の重要度の最大値に基づき算出されたグループの重要度に応じてグループの色の種類を変え、グループを構成する航跡の数に基づき算出されたグループの目標数に応じてグループの色濃淡を変えて表示するグループ表示部と
を備えたことを特徴とする航跡相関統合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−24773(P2007−24773A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210167(P2005−210167)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】