説明

船外機の制御装置

【課題】変速機を備えると共に、1速への変速が指示されているときに内燃機関が長時間継続して高回転となるのを防止し、よって変速ギヤへの負荷を軽減して変速機の耐久性を向上させるようにした船外機の制御装置を提供する。
【解決手段】変速機を備える船外機の制御装置において、操船者の操作に応じて変速指示を出力する変速指示出力手段から1速への変速指示が出力されているとき、内燃機関のスロットルバルブが全開開度付近にあると判定されると共に(S102)、内燃機関が所定の運転状態にあると判定されるとき(S112)、1速から2速に変速させる(S114)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は船外機の制御装置に関し、より詳しくは変速機を備えた船外機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、船外機において、搭載される内燃機関からの動力をプロペラに伝達する動力伝達軸に変速機を介挿し、内燃機関の出力を変速してプロペラに伝達するようにした技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の技術においては、変速機の変速段(変速比)を操船者の変速指示に応じて1速または2速に変速できるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−190672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如く構成された特許文献1記載の技術にあっては、操船者から1速への変速指示がなされているときに内燃機関が比較的高回転となり、その状態が長時間継続されると、変速ギヤへの負荷が過大となって変速機の耐久性が低下するなどの不具合が発生することがあった。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、変速機を備えると共に、1速への変速が指示されているときに内燃機関が長時間継続して高回転となるのを防止し、よって変速ギヤへの負荷を軽減して変速機の耐久性を向上させるようにした船外機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、内燃機関からの動力をプロペラに伝達する動力伝達軸に介挿されると共に、少なくとも1速、2速からなる変速段を有し、前記内燃機関の出力を前記変速段のうちの選択された変速段で変速して前記プロペラに伝達する変速機を備える船外機の制御装置において、操船者の操作に応じて変速指示を出力する変速指示出力手段と、前記変速指示出力手段から出力される前記変速指示に応じて前記変速機の動作を制御し、前記1速または前記2速に変速させる変速制御手段と、前記変速指示出力手段から前記1速への変速指示が出力されているとき、前記内燃機関のスロットルバルブが全開開度付近にあるか否か判定するスロットル全開開度判定手段と、前記スロットルバルブが全開開度付近にあると判定されるとき、前記内燃機関が所定の運転状態にあるか否か判定する運転状態判定手段とを備えると共に、前記変速制御手段は、前記内燃機関が前記所定の運転状態にあると判定されるとき、前記1速から前記2速に変速させる如く構成した。
【0007】
請求項2に係る船外機の制御装置にあっては、前記運転状態判定手段は、前記内燃機関の負荷の変化量を検出する負荷変化量検出手段と、前記内燃機関の機関回転数の変化量を検出する機関回転数変化量検出手段とを備えると共に、前記検出された負荷の変化量が所定値以下の場合または前記検出された機関回転数の変化量が既定値以上の場合、前記内燃機関が前記所定の運転状態にあると判定する如く構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る船外機の制御装置にあっては、変速機を備え、操船者の操作に応じて変速指示を出力する変速指示出力手段から1速への変速指示が出力されているときに内燃機関のスロットルバルブが全開開度付近にあると判定されると共に、内燃機関が所定の運転状態にあると判定されるとき、1速から2速に変速させるように構成、即ち、1速から2速に強制的に変速させて機関回転数を減少させるように構成したので、例えば所定の運転状態を、内燃機関が高回転領域にあって変速機の変速ギヤへの負荷が過大となるおそれがあり、変速機を1速から2速に変速させるべき運転状態に設定することも可能となり、内燃機関がそのような状態のときに1速から2速に強制的に変速させることで、内燃機関が長時間継続して高回転となるのを防止でき、よって変速ギヤへの負荷を軽減できると共に、変速機の耐久性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に係る船外機の制御装置にあっては、内燃機関の負荷の変化量を検出すると共に、内燃機関の機関回転数の変化量を検出し、検出された負荷の変化量が所定値以下の場合または前記検出された機関回転数の変化量が既定値以上の場合、内燃機関が所定の運転状態にあると判定するように構成したので、上記した効果に加え、内燃機関が長時間継続して高回転で運転されて変速機を1速から2速に変速させるべき状態にあることを正確に判定でき、そのような状態のときに1速から2速に変速させることで、機関回転数は減少し、よって変速ギヤへの負荷を確実に軽減でき、変速機の耐久性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の第1実施例に係る船外機の制御装置を船体も含めて全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す船外機の部分断面拡大側面図である。
【図3】図1に示す船外機の拡大側面図である。
【図4】図2に示す変速機構の油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。
【図5】図1に示すリモートコントロールボックスとシフト・スロットルレバーを船体の後方から見たときの拡大側面図である。
【図6】図1に示す電子制御ユニットの変速制御動作を示すフロー・チャートである。
【図7】図6フロー・チャートの変速許可判定処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【図8】図6フロー・チャートのシフトアップ判定処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【図9】図6フロー・チャートのシフトダウン判定処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【図10】図6から図9フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【図11】この発明の第2実施例に係る船外機の制御装置の電子制御ユニットの変速制御動作のうち、変速許可判定処理を示す、図7と同様なサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【図12】図11フロー・チャートの処理などを説明する、図10と同様なタイム・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に即してこの発明に係る船外機の制御装置を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1はこの発明の第1実施例に係る船外機の制御装置を船体も含めて全体的に示す概略図、図2は図1に示す船外機の部分断面拡大側面図、図3は船外機の拡大側面図である。
【0013】
図1から図3において、符号1は船外機10が船体(艇体)12に搭載されてなる船舶を示す。船外機10は、図2に良く示すように、スイベルケース14、チルティングシャフト16およびスターンブラケット18を介して船体12の後尾(船尾)12aに取り付けられる。
【0014】
スイベルケース14の付近には、スイベルケース14の内部に鉛直軸回りに回転自在に収容されるシャフト部20を駆動する転舵用電動モータ(アクチュエータ)22と、船外機10の船体12に対するチルト角またはトリム角をチルトアップ/ダウンまたはトリムアップ/ダウンによって調整可能なパワーチルトトリムユニット(アクチュエータ)24が配置される。転舵用電動モータ22の回転出力は減速ギヤ機構26、マウントフレーム28を介してシャフト部20に伝達され、よって船外機10はシャフト部20を転舵軸として左右に(鉛直軸回りに)転舵される。
【0015】
パワーチルトトリムユニット24はチルト角調整用の油圧シリンダ24aとトリム角調整用の油圧シリンダ24bを一体的に備え、油圧シリンダ24a,24bを伸縮させることで、スイベルケース14がチルティングシャフト16を回転軸として回転させられ、船外機10はチルトアップ/ダウンあるいはトリムアップ/ダウンさせられる。尚、油圧シリンダ24a,24bは、船外機10に配置された図示しない油圧回路に接続されて作動油の供給を受けて伸縮させられる。
【0016】
船外機10の上部には、内燃機関(以下「エンジン」という)30が搭載される。エンジン30は火花点火式の水冷ガソリンエンジンで、排気量2200ccを備える。エンジン30は水面上に位置し、エンジンカバー32によって覆われる。
【0017】
エンジン30の吸気管34には、スロットルボディ36が接続される。スロットルボディ36はその内部にスロットルバルブ38を備えると共に、スロットルバルブ38を開閉駆動するスロットル用電動モータ(アクチュエータ)40が一体的に取り付けられる。
【0018】
スロットル用電動モータ40の出力軸は減速ギヤ機構(図示せず)を介してスロットルバルブ38に接続され、スロットル用電動モータ40を動作させることでスロットルバルブ38が開閉され、エンジン30の吸気量が調量されてエンジン回転数(機関回転数)が調節される。
【0019】
船外機10は、水平軸回りに回転自在に支持されると共に、その一端にプロペラ42が取り付けられ、エンジン30からの動力をプロペラ42に伝達するプロペラシャフト(動力伝達軸)44と、エンジン30とプロペラシャフト44の間に介挿されると共に、1速、2速、3速からなる複数の変速段を有する変速機46を備える。
【0020】
変速機46は、複数の変速段を切換自在な変速機構50と、シフト位置を前進位置(フォワード位置)、後進位置(リバース位置)およびニュートラル位置に切換自在なシフト機構52からなる。
【0021】
図4は変速機構50の油圧回路を模式的に示す油圧回路図である。
【0022】
図2および図4に示す如く、変速機構50は、エンジン30のクランクシャフト(図において見えず)に接続されるインプットシャフト54と、インプットシャフト54に変速ギヤを介して接続されるカウンタシャフト56と、カウンタシャフト56に複数の変速ギヤを介して接続されるアウトプットシャフト58とが平行に配置された平行軸式の有段式の変速機構からなる。
【0023】
カウンタシャフト56には、後述する変速用の油圧クラッチや潤滑部に作動油(潤滑油。オイル)を圧送する油圧ポンプ(ギヤポンプ。図2,4にのみ示す)60が接続される。シャフト54,56,58や油圧ポンプ60などは、ケース(図2にのみ示す)62に収容される。ケース62の下部は作動油を受けるオイルパン62aを構成する。
【0024】
上記の如く構成された変速機構50においては、シャフト上に相対回転自在に配置されたギヤを変速クラッチでシャフト上に固定することで複数の変速段、詳しくは1速、2速、3速のうちのいずれかの変速段が選択(確立)され、エンジン30の出力は選択された変速段で変速され、シフト機構52、プロペラシャフト44を介してプロペラ42に伝達される。尚、各変速段の変速比は1速が最も大きく、2速、3速となるにつれて小さくなるように設定される。
【0025】
変速機構50について具体的に説明すると、図4に良く示すように、インプットシャフト54には、インプットプライマリギヤ64が支持される。カウンタシャフト56には、インプットプライマリギヤ64に噛合するカウンタプライマリギヤ66、カウンタ1速ギヤ68、カウンタ2速ギヤ70、カウンタ3速ギヤ72が支持される。
【0026】
また、アウトプットシャフト58には、カウンタ1速ギヤ68に噛合するアウトプット1速ギヤ74、カウンタ2速ギヤ70と噛合するアウトプット2速ギヤ76、カウンタ3速ギヤ72に噛合するアウトプット3速ギヤ78が支持される。
【0027】
上記において、アウトプットシャフト58に相対回転自在に支持されたアウトプット1速ギヤ74を1速用クラッチC1でアウトプットシャフト58に結合すると、1速(ギヤ。変速段)が確立する。尚、1速用クラッチC1は、ワンウェイクラッチからなり、後述する2速または3速用油圧クラッチC2,C3に油圧が供給されて2速または3速が確立し、アウトプットシャフト58の回転数がアウトプット1速ギヤ74のそれより大きくなるとき、アウトプット1速ギヤ74を空転させるように構成される。
【0028】
カウンタシャフト56に相対回転自在に支持されたカウンタ2速ギヤ70を2速用油圧クラッチC2でカウンタシャフト56に結合すると、2速(ギヤ。変速段)が確立する。また、カウンタシャフト56に相対回転自在に支持されたカウンタ3速ギヤ72を3速用油圧クラッチC3でカウンタシャフト56に結合すると、3速(ギヤ。変速段)が確立する。尚、油圧クラッチC2,C3は、油圧が供給されるとき各ギヤ70,72をカウンタシャフト56に結合する一方、油圧が供給されないとき各ギヤ70,72を空転させる。
【0029】
このように、クラッチC1,C2,C3によるギヤとシャフトの結合は、油圧ポンプ60から油圧クラッチC2,C3に供給される油圧を制御することで行われる。
【0030】
詳説すると、油圧ポンプ60がエンジン30により駆動されるとき、オイルパン62aの作動油は油路80a、ストレーナ82を介して汲み上げられて吐出口60aから油路80bを介して第1切換バルブ84aに、油路80c,80dを介して第1、第2電磁ソレノイドバルブ(リニアソレノイドバルブ)86a,86bに送られる。
【0031】
第1切換バルブ84aには、油路80eを介して第2切換バルブ84bが接続される。第1、第2切換バルブ84a,84bの内部には移動自在なスプールがそれぞれ収容され、スプールは一端側(図で左端)でスプリングによって他端側に付勢される。その他端側には、前記した第1、第2電磁ソレノイドバルブ86a,86bが油路80f,80gを介して接続される。
【0032】
従って、第1電磁ソレノイドバルブ86aが通電(オン)されると、その内部に収容されたスプールが変位させられ、油圧ポンプ60から油路80cを介して供給される油圧は第1切換バルブ84aのスプールの他端側に出力される。これにより、第1切換バルブ84aのスプールは一端側に変位させられ、よって油路80bの作動油が油路80eに送出される。
【0033】
第2電磁ソレノイドバルブ86bも、第1電磁ソレノイドバルブ86aと同様、通電(オン)されるときにスプールが変位させられ、油圧ポンプ60から油路80dを介して供給される油圧は第2切換バルブ84bの他端側に出力される。これにより、第2切換バルブ84bはスプールが一端側に変位させられ、よって油路80eの作動油は油路80hを介して2速用油圧クラッチC2に供給される。一方、第2電磁ソレノイドバルブ86bが通電されず(オフされ)、第2切換バルブ84bの他端側に油圧が出力されないときは油路80eの作動油は油路80iを介して3速用油圧クラッチC3に供給される。
【0034】
即ち、第1、第2電磁ソレノイドバルブ86a,86bが共にオフされるときは油圧クラッチC2,C3のいずれにも油圧が供給されないため、アウトプット1速ギヤ74とアウトプットシャフト58が1速用クラッチC1で結合されて1速が確立する。
【0035】
また、第1、第2電磁ソレノイドバルブ86a,86bが共にオンされるときは2速用油圧クラッチC2に油圧が供給されるため、カウンタ2速ギヤ70とカウンタシャフト56が結合されて2速が確立する。さらに、第1電磁ソレノイドバルブ86aがオン、第2電磁ソレノイドバルブ86bがオフされるときは3速用油圧クラッチC3に油圧が供給されるため、カウンタ3速ギヤ72とカウンタシャフト56が結合されて3速が確立する。このように、第1、第2切換バルブ84a,84bのオン・オフを制御することで、変速機46の変速段が選択される(変速制御が行われる)。
【0036】
尚、油圧ポンプ60からの作動油(潤滑油)は、油路80b,80j、レギュレータバルブ88やリリーフバルブ90を介して潤滑部(例えばシャフト54,56,58など)にも供給される。また、第1、第2切換バルブ84a,84bと第1、第2電磁ソレノイドバルブ86a,86bにはそれぞれ、圧抜き用の油路80kが適宜に接続される。
【0037】
図2の説明に戻ると、シフト機構52は、変速機構50のシャフト58に接続されると共に、鉛直軸と平行に配置されて回転自在に支持されるドライブシャフト(バーチカルシャフト)52aと、シャフト52aに接続されて回転させられる前進ベベルギヤ52bと後進ベベルギヤ52cと、プロペラシャフト44を前進ベベルギヤ52bと後進ベベルギヤ52cのいずれかに係合自在とするクラッチ52dなどからなる。
【0038】
エンジンカバー32の内部にはシフト機構52を駆動するシフト用電動モータ(アクチュエータ)92が配置され、その出力軸は、減速ギヤ機構94を介してシフト機構52のシフトロッド52eの上端に接続自在とされる。従って、シフト用電動モータ92を駆動することにより、シフトロッド52eとシフトスライダ52fが適宜に変位させられ、それによってクラッチ52dを動作させてシフト位置が前進位置、後進位置およびニュートラル位置の間で切り換えられる。
【0039】
シフト位置が前進位置あるいは後進位置のとき、変速機構50のシャフト58の回転はシフト機構52を介してプロペラシャフト44に伝達され、よってプロペラ42は回転させられ、船体12を前進あるいは後進させる方向の推力(推進力)を生じる。尚、船外機10はエンジン30に取り付けられたバッテリなどの電源(図示せず)を備え、それから各電動モータ22,40,92などに動作電源が供給される。
【0040】
図3に示す如く、スロットルバルブ38の付近にはスロットル開度センサ96が配置され、スロットルバルブ38の開度(スロットル開度)THを示す出力を生じる。また、吸気管34においてスロットルバルブ38の下流側には、絶対圧センサ98が配置され、吸気管内圧力(エンジン負荷)Pbに比例する出力を生じる。
【0041】
シフトロッド52eの付近にはニュートラルスイッチ100が配置され、変速機46のシフト位置がニュートラル位置のときにオン信号を、前進位置あるいは後進位置のときにオフ信号を出力する。エンジン30のクランクシャフトの付近にはクランク角センサ102が取り付けられ、所定のクランク角度ごとにパルス信号を出力する。
【0042】
上記した各センサやスイッチの出力は、船外機10に搭載された電子制御ユニット(Electronic Control Unit。以下「ECU」という)110に入力される。ECU110はCPUやROM,RAMなどを備えたマイクロ・コンピュータからなり、船外機10のエンジンカバー32の内部に配置される。ECU110は、センサ群の出力のうち、クランク角センサ102の出力パルスをカウントしてエンジン回転数NEを検出(算出)する。
【0043】
図1に示す如く、船体12の操縦席112の付近には、操船者(図示せず)によって回転操作自在なステアリングホイール114が配置される。ステアリングホイール114のシャフト(図示せず)には操舵角センサ116が取り付けられ、操船者によって入力されたステアリングホイール114の操舵角に応じた信号を出力する。
【0044】
操縦席112付近にはリモートコントロールボックス120が配置され、そこには操船者の操作自在に配置されるシフト・スロットルレバー(以下、単に「レバー」という)122が設けられる。レバー122は、初期位置から前後方向に揺動操作自在とされ、操船者からの前進/後進指示とエンジン回転数の調節指示を入力する。リモートコントロールボックス120の内部にはレバー位置センサ124が取り付けられ、レバー122の位置に応じた信号を出力する。
【0045】
図5は、図1に示すリモートコントロールボックス120とレバー122を船体12の後方から見たときの拡大側面図である。
【0046】
図5に示す如く、リモートコントロールボックス120の操船者によって操作自在な位置には切換スイッチ126が配置される。切換スイッチ126は、手動変速モード(マニュアルモード)ポジション(図5で「MT」と示す)と、自動変速モード(オートマチックモード)ポジション(図で「AT」と示す)の2つのポジションの間で切り換え(選択)自在とされると共に、選択されたモードを示す信号を出力する。尚、手動変速モードが選択されるときは、後述する如く、操船者からの変速指示に応じて変速機46の変速制御が行われる一方、自動変速モードが選択されるときはエンジン回転数NEやレバー122の位置などに基づいて変速制御が行われる。
【0047】
また、レバー122は操船者によって把持自在な把持部122aを備え、その把持部122aには、パワーチルトトリムスイッチ130とシフトスイッチ(変速指示出力手段)132が設置される。即ち、各スイッチ130,132は操船者に手動操作自在に設けられる。
【0048】
パワーチルトトリムスイッチ130は、具体的にはアップスイッチ(図5に「UP」と示す)とダウンスイッチ(図に「DN」と示す)を備えるプッシュスイッチからなり、操船者によってアップスイッチが押圧されたときにチルトアップあるいはトリムアップの指示を示す信号を、ダウンスイッチが押圧されたときにチルトダウンあるいはトリムダウンの指示を示す信号を出力する。
【0049】
同様に、シフトスイッチ132もアップスイッチ(図5に「UP」と示す)とダウンスイッチ(図に「DN」と示す)を備えるプッシュスイッチからなる。スイッチ132は、操船者によってアップスイッチが押圧されたときにシフトアップ指示(変速指示)を示す信号を出力する一方、ダウンスイッチが押圧されたときにシフトダウン指示(変速指示)を示す信号を出力する。このように、スイッチ132は、操船者の操作に応じて変速指示を出力する。これら各センサ116,124およびスイッチ126,130,132の出力もECU110に入力される。
【0050】
ECU110は、入力されたセンサ出力などに基づいて各電動モータ22,40,92やパワーチルトトリムユニット24の動作を制御すると共に、変速機46の変速制御を行う。このように、この実施例に係る船外機の制御装置は、操作系(ステアリングホイール114やレバー122)と船外機10の機械的な接続が断たれたDBW(Drive By Wire)方式の装置である。
【0051】
図6は、ECU110の変速制御動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは、ECU110によって所定の周期(例えば100msec)ごとに実行される。尚、以下に説明する変速制御においては、理解の便宜のため、1速と2速の間の変速を例にとるが、2速と3速または1速と3速の変速にも適用可能である。
【0052】
図6に示すように、先ずS10において切換スイッチ126の出力に基づき、操船者によって手動変速モードが選択されているか否か判断する。S10で肯定されるときはS12に進み、シフトスイッチ132から出力される変速指示に応じて行われる変速を許可すべきか否かの判定処理を行う。
【0053】
図7は、その変速許可判定処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。同図に示す如く、S100において現在の変速機46の変速段を判定すると共に、1速と判定されるときはS102に進み、スロットル開度センサ96の出力に基づき、スロットルバルブ38が全開開度付近にあるか否か判定、具体的にはスロットル開度THが90deg付近か否か判定する。
【0054】
S102で否定されるときは、エンジン30の運転状態は、変速機46の変速段が変速指示に応じて1速から2速に変速された場合に過大な負荷が変速ギヤ(インプットプライマリギヤ64やカウンタプライマリギヤ66など)に作用してしまうような状態ではないため、S104に進んでマニュアル変速許可フラグ(以下、「変速許可フラグ」という)のビットを1にセットする。この変速許可フラグのビットは、シフトスイッチ132から出力される変速指示に応じて行われる変速が許可されるとき1にセットされる一方、変速が許可されない、換言すれば、変速が禁止されるとき0にリセットされる。
【0055】
他方、S102で肯定されるときはS106に進み、エンジン回転数NEを所定回転数で一定に維持(保持)するように、スロットル開度THや燃料噴射量などを制御する。この所定回転数は、エンジン30が過回転になる値より低い値(例えば6000rpm)とされる。これにより、エンジン30が過回転(オーバーレブ)となるのを防止することができる。
【0056】
次いでS108に進み、エンジン回転数NEが所定範囲内にあるか否か判断する。この所定範囲は、前記した所定回転数の近傍に設定され、例えば5750rpmから6250rpmまでの範囲とされる。即ち、S108は、エンジン30が高回転領域に入ったか否か判断する処理、詳しくは、変速段が1速である場合に過大な負荷が変速機46の変速ギヤに作用するおそれのある回転領域に入ったか否か判断する処理である。
【0057】
S108で否定されるときは前述したS104に進む一方、肯定されるときはS110に進み、絶対圧センサ98の出力に基づき、吸気管内圧力Pbの所定時間(例えば500msec)当たりの変化量(換言すれば、エンジン30の負荷の変化量。変動量)ΔPbを検出(算出)する。
【0058】
次いでS112に進み、エンジン30が所定の運転状態か否か判定、具体的には、検出された吸気管内圧力の変化量ΔPbの絶対値が所定値Pb1以下か否か判定する。この所定の運転状態とは、エンジン30が高回転領域にあって変速機46の変速ギヤへの負荷が過大となり、変速機46を1速から2速に変速させるべき運転状態を意味する。
【0059】
ここで、S112の処理について詳説する。変速機46の変速段が1速にあってエンジン30が長時間継続して高回転領域にある場合は、変速機46に過大な負荷が作用するため、強制的に2速へ変速させることが望ましい。しかしながら、例えば航行中に比較的大きな波を乗り越える際は、変速機46を1速のままとして、エンジン30の出力トルクを変速機46(正確には、変速機構50)によって増幅させてプロペラ42に伝達させて走行する方が、船体姿勢を容易にバランス良く保つことができる。
【0060】
そこで、この実施例にあっては、船舶1が波を乗り越えるような運転状態にあることを、エンジン30の負荷の変動に基づいて検知(推定)すると共に、そのような運転状態が検知されるときは操船者の意図によってなされた1速での航行を継続させるようにした。
【0061】
具体的には、S112においては吸気管内圧力の変化量ΔPbの絶対値と所定値Pb1と比較し、変化量ΔPbの絶対値が所定値Pb1より大きいとき船舶1が波を乗り越えるような運転状態にあると判定する。即ち、スロットルバルブ38が全開開度付近にあると共に、エンジン回転数NEが所定範囲内にあってほとんど変化していないにも拘らず、吸気管内圧力(エンジン負荷)Pbが大きく変動する場合は、波の影響を受けて変動したと推定する。従って、所定値Pb1は、波の影響でエンジン30の負荷が変動したと判定できるような値、例えば10kPaに設定される。
【0062】
S112で否定、即ち、エンジン30の負荷の変動が比較的大きいときはS104に進み、変速機46の変速段を1速としたままプログラムを終了する。一方、S112で肯定されるときはS114に進み、変速機46の動作を制御して変速段を1速から2速に変速、具体的には、第1、第2電磁ソレノイドバルブ86a,86b(図で「第1SOL」「第2SOL」と示す)を共にオンして変速段を1速から2速に変速(シフトアップ)する。これにより、エンジン回転数NEは減少し、変速ギヤに過大な負荷が作用しなくなる。
【0063】
また、S100において現在の変速段が2速と判定されるときはS116に進み、エンジン回転数NEが所定回転数NE1以上か否か判断する。所定回転数NE1は、エンジン30がその値で回転させられているときに2速から1速に変速した場合、エンジン30の回転数NEが上昇して過回転になると共に、過大な負荷が変速機46の変速ギヤに作用するおそれのある、比較的高い値(例えば4500rpm)に設定される。
【0064】
S116で否定されるときは、変速機46が変速指示に応じて2速から1速に変速された場合であっても過大な負荷は変速ギヤに作用しないため、S118に進み、変速許可フラグのビットを1にセットする一方、S116で肯定されるときはS120に進んで変速許可フラグのビットを0にリセットする。
【0065】
図6フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS14に進み、シフトスイッチ132から出力されるシフトアップ指示に応じてシフトアップを実際に行うか否かの判定処理を行う。
【0066】
図8は、そのシフトアップ判定処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。図8に示す如く、先ずS200において変速許可フラグのビットが1か否か判断する。S200で肯定されるときはS202に進んで現在の変速機46の変速段を判定し、2速と判定されるときは以降の処理をスキップする一方、1速と判定されるときはS204に進む。
【0067】
S204では、シフトスイッチ132からシフトアップ指示、具体的には1速から2速への変速指示が出力されているか否か判断する。S204で否定されるときはそのままプログラムを終了する一方、肯定されるときはS206に進み、第1、第2電磁ソレノイドバルブ86a,86bを共にオンして変速機46の変速段を1速から2速に変速(シフトアップ)する。
【0068】
他方、S200で否定されるときは前述したS202からS206までの処理をスキップする。即ち、変速許可フラグのビットが0のときはシフトスイッチ132からシフトアップ指示が出力される場合であっても、シフトアップは行われない(シフトアップが禁止される)。
【0069】
図6においては次いでS16に進み、シフトスイッチ132から出力されるシフトダウン指示に応じてシフトダウンを実際に行うか否かの判定処理を行う。
【0070】
図9は、そのシフトダウン判定処理を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。図示のように、先ずS300において変速許可フラグのビットが1か否か判断する。S300で肯定されるときはS302に進み、現在の変速機46の変速段を判定する。S302において1速と判定されるときは以降の処理をスキップする一方、2速と判定されるときはS304に進み、シフトスイッチ132からシフトダウン指示、具体的には2速から1速への変速指示が出力されているか否か判断する。
【0071】
S304で否定されるときはそのままプログラムを終了する。他方、S304で肯定されるときはS306に進み、第1、第2電磁ソレノイドバルブ86a,86bを共にオフして変速機46の変速段を2速から1速に変速(シフトダウン)する。
【0072】
S300で否定されるときはS302からS306までの処理をスキップする。即ち、変速許可フラグのビットが0のときはシフトスイッチ132からシフトダウン指示が出力される場合であっても、シフトダウンは行われない(シフトダウンが禁止される)。
【0073】
また、図6フロー・チャートにあってはS10で否定されるとき、即ち、自動変速モードが選択されているときはS18に進み、自動変速制御を実行する。自動変速制御においては、エンジン回転数NEやスロットル開度TH、レバー122の位置などに基づいて、ROM内に格納されるマップを検索して変速段を決定し、その変速段が確立されるように変速機46(正確には変速機構50)の動作を制御するが、それらは本願の要旨と直接の関係を有しないので、これ以上の説明を省略する。
【0074】
図10は上記した処理の一部、具体的には手動変速モードにおける変速制御を説明するタイム・チャートである。図10においては、上から順にシフトスイッチ132からの変速指示、スロットル開度TH、エンジン回転数NE、吸気管内圧力の変化量ΔPbおよび変速機46の実際の変速段を示す。
【0075】
図10に示す如く、時刻t0からt1においては変速機46の変速段が2速で、かつスロットル開度THは全開開度付近にないものとする。そして時刻t1においてシフトスイッチ132から1速への変速指示が出力されると(S304)、それに応じて変速機46を2速から1速に変速させる(S306)。
【0076】
その後、シフトスイッチ132から1速への変速指示が出力されているときにレバー122が操作されてスロットルバルブ38が全開開度付近まで開弁されると共に(時刻t2。S102)、時刻t3においてエンジン回転数NEが所定範囲に到達してエンジン30が高回転領域に入る(S108)。
【0077】
時刻t3において、吸気管内圧力(エンジン負荷)の変化量ΔPbが所定値Pb1以下(エンジン30が所定の運転状態にある)と判定される場合(S112)、変速機46を強制的に1速から2速へ変速させる(S114)。これにより、エンジン回転数NEは減少する。
【0078】
一方、図10に想像線で示す如く、時刻t3において吸気管内圧力の変化量ΔPbが所定値Pb1より大きいと判定される場合、即ち、エンジン30が所定の運転状態になく、船舶1が波を乗り越えるような状態にあると推定される場合は変速機46の変速段を1速のままとする(S112,S104)。
【0079】
以上の如く、第1実施例に係る船外機の制御装置にあっては、変速機46を備え、操船者の操作に応じて変速指示(シフトアップ指示、シフトダウン指示)を出力するシフトスイッチ132から1速への変速指示が出力されているときにエンジン30のスロットルバルブ38が全開開度付近にあると判定されると共に、エンジン30が所定の運転状態にあると判定されるとき、1速から2速に変速させるように構成、即ち、1速から2速に強制的に変速させてエンジン回転数NEを減少させるように構成したので、例えば所定の運転状態を、エンジン30が高回転領域にあって変速機46の変速ギヤへの負荷が過大となるおそれがあり、変速機46を1速から2速に変速させるべき運転状態に設定することも可能となり、エンジン30がそのような状態のときに1速から2速に強制的に変速させることで、エンジン30が長時間継続して高回転となるのを防止でき、よって変速ギヤへの負荷を軽減できると共に、変速機46の耐久性を向上させることができる。
【0080】
また、エンジン30の負荷の変化量(吸気管内圧力の変化量)ΔPbを検出すると共に、検出された負荷の変化量ΔPbが所定値Pb1以下の場合、エンジン30が所定の運転状態にあると判定するように構成したので、エンジン30が長時間継続して高回転で運転されて変速機46を1速から2速に変速させるべき状態にあることを正確に判定でき、そのような状態のときに1速から2速に変速させることで、エンジン回転数NEは減少し、よって変速ギヤへの負荷を確実に軽減でき、変速機46の耐久性をより一層向上させることができる。
【実施例2】
【0081】
次いで、この発明の第2実施例に係る船外機の制御装置について説明する。
【0082】
第1実施例との相違点に焦点をおいて説明すると、第2実施例にあっては、スロットル用電動モータ40でスロットルバルブ38を開閉するDBW方式の装置を除去し、スロットルバルブ38とレバー122をワイヤー(プッシュプルケーブル)で機械的に接続するようにした。即ち、レバー122が操作されることによってスロットルバルブ38が直接開閉され、エンジン回転数NEが調整されるようにした。第2実施例にあってはさらに、エンジン30が所定の運転状態にあるか否かの判定を、エンジン30の負荷の変化量ΔPbに代え、エンジン回転数NEの変化量ΔNEに基づいて行うようにした。
【0083】
図11は第2実施例に係る船外機の制御装置のECU110の変速許可判定処理を示す、図7と同様なサブ・ルーチン・フロー・チャートである。尚、同一の処理を行うステップの符号は図7と同一とし、説明を省略する。
【0084】
以下説明すると、S100からS104まで第1実施例と同様な処理を行い、S102で肯定されるときはS105aに進んでエンジン30が過回転となるのを防止するレブリミット制御を実行する。
【0085】
即ち、この実施例に係る船外機の制御装置は、スロットルバルブ38のDBW方式の装置を備えていないため、スロットルバルブ38が全開開度付近にあるときはエンジン30の過回転を防止するエンジン回転数制御が必要となる。具体的には、レブリミット制御においては、エンジン回転数NEが最大回転数(レブリミット。例えば6000rpm)を超えたとき、燃料カットや点火カットなどが行われ、エンジン回転数NEを最大回転数以下に低下させるようにする。
【0086】
S105bに進み、エンジン回転数NEの所定時間(例えば500msec)当たりの変化量(変動量)ΔNEを検出(算出)する。次いでS105cに進み、エンジン30が所定の運転状態か否か判定、具体的には、検出されたエンジン回転数の変化量ΔNEの絶対値が既定値NE1以上か否か判定する。
【0087】
ここで、S105cの処理について詳説すると、前述したように、変速機46の変速段が1速にあってエンジン30が長時間継続して高回転領域にある場合、変速機46に過大な負荷が作用するため、強制的に2速へ変速させることが望ましい。また、スロットルバルブ38が全開開度付近にあってエンジン30が高回転領域にあるときは、前記したレブリミット制御の燃料カットなどによってエンジン回転数NEが比較的大きく変動(正確には一時的に大きく低下)することがある。
【0088】
そこで、S105cの処理にあっては、エンジン回転数NEが大きく変動するとき、エンジン30が長時間継続して高回転領域にあると判定し、後述の処理において2速へ変速するようにした。従って、上記した既定値NE1は、レブリミット制御の燃料カットなどによってエンジン回転数NEが変動したと判定できるような値とされ、例えば500rpmに設定される。
【0089】
S105cで否定されるときはS104に進む一方、肯定されるときはS105dに進み、変化量ΔNEが既定値NE1以上と判定された回数をカウントするカウンタCT(初期値0)の値を1つインクリメントする。次いでS105eに進み、カウンタCTの値が所定回数CT1(例えば3)以上か否か判断する。
【0090】
S105eに最初に進むときはカウンタCTの値が1であるため、ここでの判断は否定されてそのままプログラムを終了する。他方、S105eで肯定されるときはS114に進み、第1、第2電磁ソレノイドバルブ86a,86bを共にオンして変速段を1速から2速に変速(シフトアップ)する。これにより、エンジン回転数NEは減少し、変速ギヤに過大な負荷が作用しなくなる。次いでS115に進み、カウンタCTの値を0にリセットする。
【0091】
図12は上記した処理の一部、具体的には手動変速モードにおける変速制御を説明する、図10と同様なタイム・チャートである。図12においては、上から順にシフトスイッチ132からの変速指示、スロットル開度TH、エンジン回転数の変化量ΔNE、カウンタCTの値および変速機46の実際の変速段を示す。
【0092】
図12において、時刻t0からt2までは第1実施例と同じであるため、説明を省略する。時刻t2でスロットルバルブ38が全開開度付近まで開弁されてエンジン30が高回転領域に入った後、時刻t5に示す如く、エンジン回転数の変化量ΔNEが既定値NE1以上(エンジン30が所定の運転状態にある)と判定される場合(S105c)、カウンタCTの値を1つインクリメントする(S105d)。
【0093】
時刻t6で変化量ΔNEが既定値NE1以上と再度判定されるときはカウンタCTの値をさらに1つインクリメントし、その後時刻t7においてカウンタCTの値が所定回数CT1に到達すると(S105e)、変速機46を強制的に1速から2速へ変速させる(S114)。これにより、エンジン回転数NEは減少する。
【0094】
このように、第2実施例にあっては、エンジン回転数NEの変化量ΔNEを検出すると共に、検出されたエンジン回転数の変化量ΔNEが既定値NE1以上の場合、エンジン30が所定の運転状態にあると判定するように構成したので、エンジン30が長時間継続して高回転で運転されて変速機46を1速から2速に変速させるべき状態にあることをより正確に判定でき、そのような状態のときに1速から2速に変速させることで、エンジン回転数NEは減少し、よって変速ギヤへの負荷を確実に軽減でき、変速機46の耐久性をより一層向上させることができる。
【0095】
尚、残余の構成および効果は第1実施例と同一であるので、説明を省略する。
【0096】
以上の如く、この発明の第1および第2実施例にあっては、内燃機関(エンジン)30からの動力をプロペラ42に伝達する動力伝達軸(プロペラシャフト)44に介挿されると共に、少なくとも1速、2速からなる変速段を有し、前記内燃機関の出力を前記変速段のうちの選択された変速段で変速して前記プロペラに伝達する変速機46を備える船外機の制御装置において、操船者の操作に応じて変速指示(シフトアップ指示、シフトダウン指示)を出力する変速指示出力手段と(シフトスイッチ132)、前記変速指示出力手段から出力される前記変速指示に応じて前記変速機46の動作を制御し、前記1速または前記2速に変速させる変速制御手段と(ECU110。S14,S16,S204,S206,S304,S306)、前記変速指示出力手段から前記1速への変速指示が出力されているとき、前記内燃機関30のスロットルバルブ38が全開開度付近にあるか否か判定するスロットル全開開度判定手段と(ECU110。S12,S102)、前記スロットルバルブが全開開度付近にあると判定されるとき、前記内燃機関30が所定の運転状態にあるか否か判定する運転状態判定手段と(ECU110。S12,S112,S105c)を備えると共に、前記変速制御手段は、前記内燃機関30が前記所定の運転状態にあると判定されるとき、前記1速から前記2速に変速させる如く構成した(S12,S114)。
【0097】
また、前記運転状態判定手段は、前記内燃機関30の負荷(吸気管内圧力Pb)の変化量ΔPbを検出する負荷変化量検出手段と(絶対圧センサ98。S12,110)、前記内燃機関30の機関回転数(エンジン回転数)NEの変化量ΔNEを検出する機関回転数変化量検出手段と(クランク角センサ102。S12,115b)を備えると共に、前記検出された負荷の変化量ΔPbが所定値Pb1以下の場合または前記検出された機関回転数の変化量ΔNEが既定値NE1以上の場合、前記内燃機関30が前記所定の運転状態にあると判定する如く構成した(S12,S112,S105c)。
【0098】
尚、上記においては、船外機を例にとって説明したが、変速機を備えた船内外機についても本発明を適用することができる。
【0099】
また、所定値Pb1や既定値NE1、エンジン30の排気量などを具体的な値で示したが、それらは例示であって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0100】
10 船外機、30 エンジン(内燃機関)、38 スロットルバルブ、42 プロペラ、44 プロペラシャフト(動力伝達軸)、46 変速機、98 絶対圧センサ(負荷変化量検出手段)、102 クランク角センサ(機関回転数変化量検出手段)、110 ECU(電子制御ユニット)、132 シフトスイッチ(変速指示出力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの動力をプロペラに伝達する動力伝達軸に介挿されると共に、少なくとも1速、2速からなる変速段を有し、前記内燃機関の出力を前記変速段のうちの選択された変速段で変速して前記プロペラに伝達する変速機を備える船外機の制御装置において、
a.操船者の操作に応じて変速指示を出力する変速指示出力手段と、
b.前記変速指示出力手段から出力される前記変速指示に応じて前記変速機の動作を制御し、前記1速または前記2速に変速させる変速制御手段と、
c.前記変速指示出力手段から前記1速への変速指示が出力されているとき、前記内燃機関のスロットルバルブが全開開度付近にあるか否か判定するスロットル全開開度判定手段と、
d.前記スロットルバルブが全開開度付近にあると判定されるとき、前記内燃機関が所定の運転状態にあるか否か判定する運転状態判定手段と、
を備えると共に、前記変速制御手段は、前記内燃機関が前記所定の運転状態にあると判定されるとき、前記1速から前記2速に変速させることを特徴とする船外機の制御装置。
【請求項2】
前記運転状態判定手段は、
e.前記内燃機関の負荷の変化量を検出する負荷変化量検出手段と、
f.前記内燃機関の機関回転数の変化量を検出する機関回転数変化量検出手段と、
を備えると共に、前記検出された負荷の変化量が所定値以下の場合または前記検出された機関回転数の変化量が既定値以上の場合、前記内燃機関が前記所定の運転状態にあると判定することを特徴とする請求項1記載の船外機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−246062(P2011−246062A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123290(P2010−123290)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】