説明

船灯

【課題】
少ない消費電力で、発光量の少ないLEDであっても、長い光到達性能が得られる船灯の提供。
【解決手段】
光源として多数のLED36を使用し、そのLEDを水平方向に円形又は円弧状に並べて設置し、光源の上下に互いに対称配置に一対の反射鏡40,41を、その反射面40a,41aを互いに対向させ、その反射鏡の両反射面により先端側が拡開したテーパ状の光放射空間45を円周方向に連続して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の航行又は停泊時の安全のために使用する船灯であって、光源にLED(発光ダイオード)を用いた船灯に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船灯には、信号灯と航海灯があり、航海灯としては前部灯(マスト灯)、停泊灯(アンカーライト)、船尾灯(スターンライト)、左舷灯(ポートライト)、右舷灯(スターボードライト)及び紅灯がある。これらは何れも海水、風雨及び直射日光に曝され、過酷な温度条件下に置かれるものであるとともに、船舶の安全航行にはなくてはならないものであるため、海上の厳しい環境の中でも十分安全に持ち堪えられるよう耐環境性が無ければならない。
【0003】
この種の従来の船灯は、図9示すようにフィラメント式の電球1を光源に使用し、これを支持台2に固定したソケット3に着脱可能に装着し、その周囲を、円筒状をした光透過性のカバー4で囲み、そのカバー4の外側又は内側に、船灯の種類に応じて遮光板5を取り付け、水平方向の照射角度を制限した構造のものが一般的である。また、光透過性のカバー4に集光レンズをその円周方向に連続して備え、これによって上下方向の光の拡散を抑制したものも知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、近年において、道路の信号灯や各種の照明器具等の光源としてLEDが使用され、広く実用化されているところであり、船灯においても光源にLEDを使用したものが提案されている(特許文献2及び3)。
【特許文献1】特開平10−149704号公報
【特許文献2】実開平2−56095号公報
【特許文献3】実開平4−133303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のLEDを使用した船灯のように、LEDを単に多数並べて設置したものは、光の拡散が大きいために光の到達性能が低く、道路の信号等のように光到達距離が比較的短い場合には使用できても、航海灯のように数kmもの到達距離を満足させるためには多数のLEDを使用せざるを得ず、形状が大きくなるとともに、消費電力も大きくならざるを得ないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、少ない消費電力で、発光量の少ないLEDであっても、長い光到達性能が得られる船灯の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成する請求項1の発明は、光源として多数のLEDを使用し、該LEDを水平方向に円形又は円弧状に並べて設置し、該光源の上下に互いに対称配置に一対の反射鏡を、その反射面を互いに対向させて備え、該反射鏡の両反射面により先端側が拡開したテーパ状の光放射空間を円周方向に連続して形成させたことを特徴としてなる船灯にある。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記請求項1の構成に加え、前記両反射鏡は反射面が円錐形に形成され、各反射面を、間隔を隔てて対向させることにより先端側が拡開したテーパ状の光放射空間を円周方向に連続して形成させたことにある。
【0009】
請求項3の発明は、前記請求項1又は2の構成に加え、前記両反射鏡の反射面間の先端部分に、上下方向きの光を水平方向側に屈折させる凸レンズを前記LED配列と同心配置に備えたことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、光源として多数のLEDを使用し、該LEDを水平方向に円形又は円弧状に並べて設置し、該光源の上下に互いに対称配置に一対の反射鏡を、その反射面を互いに対向させて備え、該反射鏡の両反射面により先端側が拡開したテーパ状の光放射空間を円周方向に連続して形成させたことにより、広範囲の向きに出ているLEDの光の成分を必要とされる範囲に集めることができ、かつ、上下の反射面によって1つのLEDからの光の像が反射回数に応じて幾重にも見えることとなり、明るさが増すこととなり、船灯として必要な光量を少ない数のLEDによって効果的に得ることができる。
【0011】
また、前記両反射鏡は反射面が円錐形に形成され、各反射面を、間隔を隔てて対向させることによりレンズ側が拡開したテーパ状の光放射空間を円周方向に連続して形成させたことにより、水平放射方向に均一な発光状況を容易に得ることができる。
【0012】
更に、前記両反射鏡の反射面間の先端部分に、上下方向きの光を水平方向側に屈折させる凸レンズを前記LED配列と同心配置に備えることにより、鉛直方向の光の広がりを更に抑制させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施の態様を図面について説明する。
【0014】
図1は本発明に係る船灯の一例を示しており、この船灯のケーシングは、最下部の基部ユニット10と、最上部の頂部ユニット11、両ユニット10,11間に介在させた中空筒状の胴部筒12とをもって構成されている。
【0015】
胴部筒12は、その内部が光源収容部となっており、全体が透光性の硬質合成樹脂材又は耐衝撃性のガラスをもって中空筒状に形成され、その周壁には、円周方向に連続させた凸レンズ13,13が上下2段配置に一体成形されている。この凸レンズ13,13部分が外部に光を照射する透光部となっている。
【0016】
基部ユニット10は円形をした上方開放型の箱状をしており、底面に開口部を有し、その開口部が底板14により閉鎖されている。底板14はボルト15によってネジ止めされており、取り外しが可能となっている。この基部ユニット10内には電源回路17が収容されている。基部ユニット10の上端外周にフランジ16が一体に成形されており、該フランジ16上に胴部筒12の下端が接合され、接着剤により気密を持たせた状態で接着されている。
【0017】
頂部ユニット11は、円形の中空箱状に成形され、その下端外周にフランジ18が一体に成形され、その下面に円形の漏斗状をした頂部閉鎖版19の周縁部上面が接合され、接着剤により気密性を持たせて接着されている。頂部閉鎖版19の周縁部下面に胴部筒12の上端が接合され、接着剤により気密性を持たせて接着されている。また、頂部ユニット11の頂面には中央部分に開口20が形成されている。
【0018】
基部ユニット10の前記フランジ16の上面及び頂部ユニット11の上記フランジ18の下面には、胴部筒12の接合位置の外側に遮光版取り付け用の凹溝21,22が互いに対向配置に形成されており、遮光版23が、両凹溝21,22内に上下各縁部が嵌合されることによって取り付けられている。この遮光版23は、必要に応じて胴部筒12の円周の所望の角度範囲を遮光するために取り付けるものであり、胴部筒12の全周に亘って発光させる船灯には使用しない。
【0019】
基部ユニット10の底板14の中央には、支柱用金属筒30が貫通されて一体化されており、その金属筒30の下端が底板14の下面に開口されている。この支柱用金属筒30は、胴部筒12の中央に挿入され、上端が胴部筒12の上端に固定されている頂部閉鎖版19の下面に接合されている。
【0020】
頂部閉鎖版19の中央部分には開口31が形成され、その周縁部に下向きの短筒部32が一体に成形されている。この短筒部32外に前記支柱用金属筒30の上端が嵌合され、パッキン33を介して頂部閉鎖版19の下面に気密性を持たせた状態で接合されている。
【0021】
支柱用金属筒30の外周には、図1、図5、図6に示すように、前述した胴部筒12の凸レンズ13、13と同高さ部分にリング状をした光源支持台35が固定されている。この光源支持台35はフレキシブルプリント配線基板から構成されており、その外周に光源である多数のLED36,36……が一定間隔を隔て、円周方向に並べて取り付けられている。このLED36,36……にはリード線37,37を介して電源回路17より通電されるようになっている。これらのLED36,36……によって胴部筒12のリング状の凸レンズ13,13に向けて放射状に光が照射されるようになっている。
【0022】
両光源支持台35,35の上下には、それぞれこれを挟む配置に円盤状をした一対の反射鏡40,41が固定されている。この各反射鏡40,41は中心部分に取り付け孔が開口され、この開口内に支柱用金属筒30が挿通されている。
【0023】
これらの上下に2対配置した各反射鏡40,41及び両光源支持台35,35は、上下両端の固定用リング42,43及び中央のスペーサーリング44によって所定間隔を隔てた所定の配置に固定されている。各リング42,43,44は、それぞれ支柱用金属筒30の外周に嵌合されており、上下両端位置の固定用リング42,43には内向きに固定用突起42a,43aが突設され、これを支柱用金属筒30の外周に形成した係合凹部に嵌合させることによって所定の高さ位置に固定され、これによって反射鏡40、光源支持台35及び反射鏡41の順にそれらを所定の位置及び間隔に位置決めさせている。
【0024】
両反射鏡40,41は互いに逆向きの円錐形に形成され、両者の間隔が中心部分側に比べて外周縁側が広い配置にとなるように設置している。そしてこれらの反射鏡40,41は互いに対向する面を反射面40a,41aとしており、これによって反射鏡中心部に比べて外周縁側(凸レンズ13側)が拡開したテーパ状の光放射空間45を円周方向に連続して形成させている。
【0025】
尚、図中46は、各リング42〜44と反射鏡40又は41との間に介在させた弾性パッキンである。
【0026】
このように構成される本発明に係る船灯は、光源であるLED36から発した光は、その前方側で全周の放射方向に拡散されることとなるが、その光は両反射面40a,41aに反射されて中央部分に集光され、更にこれが凸レンズ13によって上下方向の幅が狭められた光束となって水平放射方向に照射される。
【0027】
次に、上述した両反射鏡40,41を使用した場合のLED36からの光路を図面によって解析すると、図7(イ)に示す両反射面の挟み角αを20°、LED36から両反射面40a,41aの先端を結ぶ位置までの長さhを65mm、両反射面のLED位置の間隔zを5mmとした場合、正面側に達するLEDの光は、LEDと同高さ位置(中央)aでは、実物からの光がそのまま到達し、その上下の1つ隣りbでは実物が反射面40a又は41aによって一回反射した光が到達し、更に上下の2つ隣りcでは両反射面40a,41aに1回ずつ計2回反射した光が到達し、更に上下の3つ隣りdでは3回反射した光が到達することとなる。
【0028】
この時正面では、1つの円形のLEDの光が、図7(ロ)に示すように、中央が最も明るい円形に、上下に到るに従って徐々に短径が小さくなった楕円形に見える。
【0029】
また、水平から下側7.5°の位置では、図8(イ)の如き光跡をたどり、図8(ロ)に示すように、最下部よりやや上に、LEDの実物aが稍楕円気味の形状に見えることとなる。
【0030】
このように、LED及び反射鏡を配置することによって、両反射面に複数回反射し、それぞれが前方に到達するため、1つのLEDが複数個にみえることとなる。
【0031】
尚、上述の実施例では、円周方向に向けて1列にLEDを配置し、その上下に一対の反射鏡を設置し、その反射鏡間の外側に凸レンズを設けることによって1つの発光ユニットを構成し、この発光ユニットを上下2段配置に設置した場合を示しているが、この他、上記発光ユニットを1段又は3段以上設置してもよく、また、1つの上記発光ユニットに複数列配置(多段配置)にLEDを設置、即ち、上下1対の反射鏡間に上下複数段配置にLEDを設置したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の一例を示す船灯の縦断面図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】同上の底面図である。
【図4】同上の遮光版取り付け状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示す船灯のLED及び反射鏡設置部分の分解斜視図である。
【図6】同上の組立状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】図1に示す船灯における1組の反射鏡間のLEDからの光が前方中央高さに位置に到達する光跡を示す解析図、及び同位置で見えるLEDの実物及び反射像を示す正面図である。
【図8】同上の中央高さ位置から下7.5°の角度位置に達する光跡示す解析図、及び同位置で見えるLEDの実物及び反射像を示す正面図である。
【図9】従来の船灯の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 基部ユニット
11 頂部ユニット
12 胴部筒
13 凸レンズ
14 底板
15 ボルト
16 18 フランジ
17 電源回路
19 頂部閉鎖版
20 開口
21 22 凹溝
23 遮光版
30 支柱用金属筒
30 開口
32 短筒部
33 パッキン
35 光源支持台
36 LED
37 リード線
40 41 反射鏡
42 43 固定用リング
42a 43a 固定用突起
44 スペーサーリング
45 光放射空間
46 弾性パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源として多数のLEDを使用し、該LEDを水平方向に円形又は円弧状に並べて設置し、該光源の上下に互いに対称配置に一対の反射鏡を、その反射面を互いに対向させて備え、該反射鏡の両反射面により先端側が拡開したテーパ状の光放射空間を円周方向に連続して形成させたことを特徴としてなる船灯。
【請求項2】
前記両反射鏡は反射面が円錐形に形成され、各反射面を、間隔を隔てて対向させることにより先端側が拡開したテーパ状の光放射空間を円周方向に連続して形成させてなる請求項1に記載の船灯。
【請求項3】
前記両反射鏡の反射面間の先端部分に、上下方向きの光を水平方向側に屈折させる凸レンズを前記LED配列と同心配置に備えてなる請求項1又は2に記載の船灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−27052(P2007−27052A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211482(P2005−211482)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(595034189)日本船燈株式会社 (6)
【Fターム(参考)】