説明

色変換機能を備えた印刷装置および印刷方法

【課題】任意の特色インクを充填したカートリッジを装着できる印刷装置において、ユーザー側での作業なしに適切な色変換ができる印刷装置を提供する。
【解決手段】特色インクカートリッジに貼付された記録媒体に記録された特色インク情報をもとに色変換装置を更新する。より具体的にはLUTの一部の格子点情報を記録媒体に記録しておき、本体にデフォルトで記憶しているLUTと置換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換機能を備えた印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクドットの吐出のON/OFFを制御することで記録媒体に画像を印刷するいわゆるインクジェットプリンターでは近年、高画質化の要請が強まるに伴って、色再現域を拡大するために、一般的なシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク(これらをプロセスカラーインクと称する)以外の色のインク、例えばレッドインク、オレンジインク、グリーンインク、ブルーインク(これらを特色インクと称する)を加えた製品が増加している。これらの製品では使用する特色インクが固定されており、入力色情報をインク量に変換する色変換機能についても、使用する特定の特色インクにあわせて調整されて出荷されるものが一般的であるが、ユーザー側で使用する特色インクを自由に選択・交換したいという要望がある。こういった要望に対して、特許文献1ではパッチサンプルを印刷・測色することによって、色変換機能(画像処理装置)の色変換テーブルをユーザーの選択した特色インクにあわせて作成する方法が開示されている。また、特許文献2では、特色インクに対応した特色色変換テーブル(ルックアップテーブル)をCD−ROMなどの記録媒体やネットワーク経由で色変換装置に読み込ませ、色変換テーブル(ルックアップテーブル)を書き換える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−169687号公報
【特許文献2】特開2005−153281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されている構成はユーザーが自由に特色インクを選択可能にするものであるが、ユーザーが印刷・測色をしなくてはならないため、色変換テーブル作成に時間がかかる上に作業者に一定レベルの知識が必要となるという課題がある。特許文献2ではインクカートリッジとは別にCD−ROM等を入手し、特色インクに対応する色変換テーブルを選択しインストールする手間が生じる。また、ネットワークを介して色変換テーブルを入手する方法も開示されているが、この場合はプリンターがインターネットに接続されていなくてはならず、また提供側も十分な能力のあるホストサーバーとネット回線容量を維持管理していかなくてはならない。
【0005】
また、製品の出荷前にあらかじめ全ての特色インクについて色変換テーブルの作成を行っておき、ユーザー側で使用する特色インクに対応した色変換テーブルを選択させるようにしてもよいが、ユーザー側が必要とする全ての特色インクに対して色変換テーブルの作成を行うと莫大な時間を要する上に、製品の出荷後に新たな特色インクの要望が発生したときに対応することが出来ない。
【0006】
このような課題は特にサイネージ向けの業務用プリンターにおいて問題になる。すなわち、サイネージ向け業務用プリンターではユーザー企業のコーポレートカラーや製品のイメージカラーを忠実に再現するために特色インクを使用したいという要望があるが、ユーザーごとに必要とする特色インクが異なり、製品出荷前に必要とされる特色インクの種類を事前に調べ上げてその全てに色変換テーブルを用意することになり、実質的に不可能である。
【0007】
本発明は、プロセスカラーインクによる印刷と、プロセスカラーインクおよび特色インクによる印刷とをそれぞれ行う印刷装置および印刷方法であって、ユーザーの負荷を低減させつつ、ユーザーの必要とするインクに柔軟に対応できる印刷装置および印刷方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シアンインクと、マゼンタインクと、イエローインクとを供給するインクカートリッジを装着するためのカラーインク装着手段と、前記シアンインクと、前記マゼンタインクと、前記イエローインクとのいずれとも異なる色相を有する特色インクを供給する特色インクカートリッジを装着するための特色インク装着手段と、前記特色インクカートリッジに格納された特色インク情報を読み出すインターフェイス手段と、色入力値をインク量に対応する出力信号に変換する色変換手段と、を備え、前記色変換手段は、前記インターフェイス手段を介して前記特色インク情報が取得された場合に、前記特色インク情報をもとに、第1のモードから第2のモードへ更新され、前記色変換手段が前記第1のモードの場合に、前記特色インクを用いずに印刷を実行し、前記色変換手段が前記第2のモードの場合に、前記特色インクを用いて印刷を実行する、印刷装置について提案するものである。
【0009】
本発明によれば、プロセスカラーインクによる印刷を行う印刷装置に対して、特色カートリッジを装着するだけで、ユーザーの必要とする特色インクに柔軟に対応できる。
【0010】
また本発明は、前記色変換手段は、前記特色インク装着手段に前記特色インクカートリッジが装着されている状態から、前記特色インク装着手段に前記特色インクカートリッジが装着されていない状態になった場合には、前記第2のモードから前記第1のモードへ更新される印刷装置についても提案するものである。
【0011】
本発明によれば、プロセスカラーインクおよび特色インクによる印刷を行う印刷装置において、特色インクを必要としない用途の場合、特色カートリッジを取り外すだけで特色インク以外を用いて印刷することができるため、ユーザーの負荷を低減させつつユーザーの必要とするインクに対応できる。
【0012】
また本発明は、前記色変換手段はルックアップテーブルを参照して変換を行い、前記特色インク情報は前記ルックアップテーブルを書き換える情報であり、前記色変換手段は、前記ルックアップテーブルが前記特色インク情報に基づいて書き換えられることで、前記第1のモードから前記第2のモードへ更新される印刷装置についても提案するものである。
【0013】
本発明によれば、部分的なルックアップテーブル書き換え情報を特色インク情報として用いることで、特色インクカートリッジの特色インク情報を記憶させるための媒体の容量を低減できる。
【0014】
また本発明は、前記色変換手段は、変換関数を用いて変換を行い、前記特色インク情報は、前記変換関数を使用する領域を変更する情報であり、前記色変換手段は、前記変換関数を使用する領域が変更されることで、前記第1のモードから前記第2のモードへ更新される印刷装置についても提案するものである。
【0015】
本発明によれば、特色インク情報として色変換関数を用いる領域を指定させることで、より高速に処理を行うことができる。
【0016】
また本発明は、前記色変換手段は、変換関数を用いて変換を行い、前記特色インク情報は、前記変換関数の係数を含み、前記色変換手段は、前記変換関数の係数が前記特色インク情報に基づいて書き換えられることで、前記第1のモードから前記第2のモードへ更新される印刷装置についても提案するものである。
【0017】
本発明によれば、特色インク情報として関数の係数を持たせることでより高品位な画像を出力することができる。
【0018】
また本発明は、前記色変換手段は、前記特色インクの残量が所定の閾値を下回る場合には、前記第2のモードから前記第1のモードへ更新される印刷装置についても提案するものである。
【0019】
本発明によれば、特色インク印刷中に特色インクがなくなっても、特色インクを用いずに印刷を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の構成図。
【図2】本発明の実施形態に係るプリンターの内部構成ブロック図。
【図3】本発明の実施形態に係る印刷装置の動作を説明するフローチャート。
【図4】本発明の実施形態に係る印刷実行ステップの動作を説明するフローチャート。
【図5】本発明の実施形態に係るルックアップテーブルを説明する図。
【図6】本発明の実施形態に係るレッドインクの特色インク情報(ルックアップテーブル書き換え情報)を説明する図。
【図7】本発明の実施形態に係る書き換え後のルックアップテーブルを説明する図。
【図8】本発明の実施形態に係るブルーインクの特色インク情報(ルックアップテーブル書き換え情報)を説明する図。
【図9】本発明の実施形態に係る書き換え後のルックアップテーブルを説明する図。
【図10】本発明の第2実施形態に係る印刷装置の動作を説明するフローチャート。
【図11】本発明の第2実施形態に係るレッドインクの特色インク情報を説明する図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る印刷装置の色変換機能の動作を説明するフローチャート。
【図13】本発明の第3実施形態に係る印刷装置の動作を説明するフローチャート。
【図14】本発明の第3実施形態に係るレッドインクの特色インク情報を説明する図。
【図15】本発明の第3実施形態に係る印刷装置の色変換機能の動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
〔第1の実施形態〕
図1は本実施形態に係る印刷装置の構成図である。印刷装置は、プリンター101がコンピューター102にUSBケーブル103を介して接続されて構成される。プリンター101には紙挿入口108より記録媒体120が挿入され、プリンター101内部で印刷された後(図2で詳述する)、紙排出口109より排出される。また、プリンター101には、シアンインクスロット141C、マゼンタインクスロット141M、イエローインクスロット141Y、ブラックインクスロット141Kの各色インク用スロット(カラーインク装着手段)と、特色インクスロット155(特色インク装着手段)が設けられ、それぞれにシアンインクカートリッジ140C、マゼンタインクカートリッジ140M、イエローインクカートリッジ140Y、ブラックインクカートリッジ140K、特色インクカートリッジ150が挿入され、印刷に用いられる。
なお、図1では各カートリッジが別体型のカートリッジとなっているが、別体型のカートリッジに限られず、例えば、シアンインクカートリッジ140C、マゼンタインクカートリッジ140M、およびイエローインクカートリッジ140Yが一体型のカートリッジであってもよい。その場合、各色インク用スロットについても一体型のカートリッジの挿入を受け付ける形状となる。また、各色インク用のカートリッジの種類は、上記したインク色のカートリッジに限られず、例えば、ブラックインクのカートリッジを対象外としたり、ライトシアン、ライトマゼンタなどの各色インク用のカートリッジを対象に加えたりしてもよい。
【0023】
ここで特色インクカートリッジ150の中に格納されるインクは、例えばオレンジインク、レッドインク、グリーンインク、ブルーインクなどであり、ユーザーは必要なインクが格納された特色インクカートリッジ150を選択して特色インクスロット155に装着することができる。また、特色インクが不用な場合は特色インクスロット155には何も装着しなくともよく、この場合はシアンインクカートリッジ140C、マゼンタインクカートリッジ140M、イエローインクカートリッジ140Y、ブラックインクカートリッジ140Kのみで印刷される。
【0024】
コンピューター102はハードディスク、モニター、キーボード、マウスなどを備えたいわゆる汎用のパーソナルコンピューターであり、ハードディスク内に格納されたアプリケーションソフトを用いてプリンター101で印刷できるようになっている(図3で詳述する)。
【0025】
図2はプリンター101の内部構成ブロック図である。紙送りモーター111により駆動される紙送りローラー112によって記録媒体120は搬送され、キャリッジモーター113によってキャリッジ114が記録媒体120の搬送方向と直交して左右に動く機構となっている。キャリッジ114は印刷ヘッド115を備えており、印刷ヘッド115にはフレキシブルチューブ145を介して、シアンインクスロット141C、マゼンタインクスロット141M、イエローインクスロット141Y、ブラックインクスロット141K、特色インクスロット155のそれぞれに装着されたシアンインクカートリッジ140C、マゼンタインクカートリッジ140M、イエローインクカートリッジ140Y、ブラックインクカートリッジ140K、特色インクカートリッジ150が接続される。
【0026】
制御ユニット130は紙送りモーター111、キャリッジモーター113に接続されてこれらの制御を行っている。また、印刷ヘッド115も制御ユニット130に接続されていてキャリッジ114の移動と同期して、記録媒体120と印刷ヘッド115とが重なっている部分に対して適切なインク量を吐出するように制御される。キャリッジ114が端まで移動すると紙送りモーター111によって紙送りローラー112が一定量回転し、記録媒体120が一定量送られる。以上の動作を繰り返すことで、外部から送信されてきた印刷データに対応する画像を記録媒体120に印刷するように構成される。特色インクカートリッジ150には中に格納されるインクに関する情報(特色インク情報)を記録されたRFIDタグ151が貼付されており、特色インクスロット155内に設けられたRFIDタグリーダー161(インターフェイス手段)がISO/IEC18000に準拠した手順によってインクに関する情報を読み取り、制御ユニット130に転送できるように構成される。また、特色インクスロット155内にはインク残量センサー162が設けられ、特色インクカートリッジ150中の特色インク残量を光学的に検出し、制御ユニット130に残量情報を転送できるように構成される。
【0027】
図3は印刷装置としての動作を説明するフローチャートである。最初にステップS−01でユーザーが、印刷するデータをコンピューター102上のアプリケーションソフトで作成し、印刷コマンドを実行する。次にステップS−02でコンピューター102は、ハードディスク上に格納されている色変換のためのルックアップテーブル(デフォルトLUT、図5で説明する)をメモリー上にロードする。次にステップS−03でコンピューター102は、プリンター101の制御ユニット130に対し、特色インクカートリッジ150の特色インク情報の読み取りを要求するコマンドをUSBケーブル103を介して送信する。
【0028】
次にステップS−04で制御ユニット130は、RFIDタグリーダー161によりRFIDタグ151の読み取りを試行して、特色インクカートリッジ150の有無を判断する。RFIDタグ151からの読み取りが成功した場合は特色インクカートリッジ有り(YES)と判断し、ステップS−05へ進む。ステップS−05で制御ユニット130は、RFIDタグ151から読み取った特色インク情報(ルックアップテーブル書き換え情報、図6で説明する)をUSBケーブル103を介してコンピューター102に送信する。コンピューター102では、受信した特色インク情報に基づいてルックアップテーブルを書き換える。一方、ステップS−04で読み取りが失敗に終わった場合は特色インクカートリッジ無し(NO)と判断されてステップS−05はスキップされる。
【0029】
次にステップS−06でコンピューター102は、ルックアップテーブルを用いて、印刷するデータの色情報を(R,G,B)値よりシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、特色の各インク量値(インク量に対応する出力信号)に変換する(色変換機能、色変換手段)。次にステップS−07でコンピューター102は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、特色のインク量値をハーフトーン処理し、ドットのON/OFFを表す二値のハーフトーンデータに変換する。次にステップS−08でコンピューター102は、ハーフトーンデータをUSBケーブル103を介して制御ユニット130に送信し、ステップS−09へ進む。
【0030】
図4はステップS−09における印刷の実行の詳細動作を説明するためのフローチャートである。まずステップS−91で制御ユニット130は、図3のステップS−04で特色インクカートリッジ150を有りと判断してステップS−05を実施しているか否かを判定する。特色インクカートリッジ150を有りと判断している場合(YES)はステップS−92へ進み、インク残量センサー162により、特色インクカートリッジ150中の特色インク残量を検出し、制御ユニット130に残量情報を転送する。
【0031】
次にステップS−93へ進み、制御ユニット130は、特色インク残量の有無、具体的には特色インク残量が閾値以下であるか否かを判定する。特色インク残量が閾値以下で印刷続行が不可能であると判断される場合(YES)はステップS−94へ進む。ステップS−94ではコンピューター102は、図3のステップS−02と同様、コンピューター102のハードディスク上に格納されているルックアップテーブルを再度読み込み直し、ルックアップテーブルを変更前の状態に戻す。次にステップS−95でコンピューター102は、既に印刷済みの印刷データを削除して未印刷の印刷データだけを残して、図3のステップS−06から再度、色変換をやり直す。
【0032】
一方、ステップS−91で特色インクカートリッジ150を無しと判断している場合(NO)、およびステップS−93で特色インクの残量が十分あると判断された場合(NO)はステップS−96へ進む。ステップS−96で制御ユニット130は、キャリッジモーター113が駆動されるのと同期して、受信したハーフトーンデータに基づいて、印刷ヘッド115へ吐出・非吐出に応じた波形を選択しながら送信し、キャリッジ114が端まで移動したところで紙送りモーター111によって紙送りローラー112を一定量回転させ、記録媒体120に所望の画像を1ライン分形成する。次にステップS−97で制御ユニット130は、全ての印刷データの印刷が終わったか否かを判定し、印刷終了の場合(YES)はステップS−09を終了する。一方、未印刷のデータが残っている場合(NO)はステップS−91に戻って処理を繰り返す。なお、デフォルトLUTを用いて印刷を行う場合における色変換手段は第1のモードとし、特色インク情報に基づいて書き換えたLUTを用いて印刷を行う場合における色変換手段は第2のモードとする。
【0033】
なお、本実施形態では1ライン毎にインクの残量判断を行っているが、例えば1又は複数ページ毎に判断するようにしてもよいし、1ジョブ毎でもよい。また、インクの残量が閾値以下と判断したときにルックアップテーブルを切り替える前に一定の終端処理を行ってもよい。このような構成にする場合はルックアップテーブルを切り替える前にインク切れにならないようにステップS−91で残量の閾値を大きく設定しておく必要がある。また、本実施形態ではインク残量の検出に光学的なセンサーを用いたが、その他の既知のあらゆる方式のセンサーと置き換えてもよいし、例えばRFIDタグ151にインク残量を記憶させておき、印刷毎に使用した推定インク量を減じてRFIDタグ151に書き込み直してもよい。
【0034】
図3のステップS−02からステップS−09までは全て印刷装置が自動的に実行するため、ユーザーではステップS−01の操作が終了すれば、以降は印刷が完了するまで操作の必要はない。すなわち、ユーザーは自分の使用したい特色インクカートリッジ150をスロットに差し込み、印刷データを準備するだけで後は自動的に適切な色変換が行われるようにルックアップテーブルが更新され、それに基づいた変換・印刷が実施されるのである。
【0035】
以下、まず特色インクカートリッジ150にレッドインクが充填されている場合の例について説明する。図5は図3のステップS−02でコンピューター102が読み込むルックアップテーブルを説明するための表である。各行のデータは対応する入力色情報(R,G,B)と出力するインク量情報(C:シアン,M:マゼンタ,Y:イエロー,K:ブラック,Sp:特色)よりなり、R,G,Bのそれぞれに0,64,128,192,255の組み合わせの125行のデータが格納される。ここで入力色情報は、IEC61966−2−1で規定されるsRGB(standard RGB)規格に準拠したR,G,Bであり、それぞれが0〜255の1バイト整数で表される。また、インク量情報もそれぞれ、0〜255の1バイト整数で表され、図3で示したステップS−02でロードされるデフォルトのルックアップテーブルでは、特色インク量(Sp)は0に固定されている。なお、本実施形態ではルックアップテーブルの格子点数を5×5×5=125としているが、必要な色精度に応じて格子点数を増やしてもよい。また、図5では説明のために表形式のフォーマットで表した上で各行に数値を付与しているが、実際には1行8バイト×125行=1000バイトのバイナリーデータとしてコンピューター102上のハードディスクに格納されている。
【0036】
図6は図3のステップS−04で制御ユニット130がRFIDタグ151から読み取った特色インク情報(ルックアップテーブル書き換え情報)を説明するための表である。各行のデータの意味とフォーマットは図5で説明したものと同じであって入力色情報(R,G,B)と出力するインク量情報(C:シアン,M:マゼンタ,Y:イエロー,K:ブラック,Sp:特色)の計8バイトの情報より各行はなっている。図6の例では、(R,G,B)=(192,0,0)、(192,0,64)、(192,64,0)、(255,0,0)、(255,0,64)、(255,64,0)、(255,64,64)の7行によって構成され、各行の特色インク量(Sp)は0以外の数字となっている。図6の特色インク情報は図5と同様に実際には8バイト×7行=56バイトのデータであって、RFIDタグ151に書き込まれている。図6の場合、図3のステップS−04において特色インクカートリッジ有りと判断される。
【0037】
図7は図3のステップS−05でコンピューター102が書き換えた結果のルックアップテーブルの例である。ステップS−05でコンピューター102は、制御ユニット130より図6で説明した特色インク情報(ルックアップテーブル書き換え情報)を受け取り、ステップS−02において読み込んだ図5のルックアップテーブルを置き換える。すなわち、図5のルックアップテーブルの(R,G,B)値が一致する行を図6の特色インク情報で置き換えた結果が図7である。
【0038】
次に図3のステップS−06でコンピューター102は、図7で説明したルックアップテーブルに基づいて色入力情報である(R,G,B)値をシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、特色インク(Sp)の各インク量に変換する。すなわち、図7のテーブルのいずれかの行と一致する(R,G,B)値が入力された場合はその行の各インク量に変換し、それ以外の(R,G,B)値が入力された場合は入力(R,G,B)近傍の行を図7より複数行選択して補完処理を行う。補完処理方法については四面体線形補完などの既知の方法を用いればよい。具体的な処理手順は例えば「新編色彩科学ハンドブック第2版」ISBN:978−4130611121の第27章4.4項を参照。
【0039】
次に図3のステップS−07でコンピューター102は、求めたインク量をもとにハーフトーン処理を行い、二値化する。本実施形態ではハーフトーン処理として特許第4206588号広報の第76段落に開示されるのと同様のディザマスク法を用いる。この際、変換前のインク量が0であればハーフトーン処理を行った結果は常にOFF(インク吐出しない)であり、変換前のインク量が255であればハーフトーン処理を行った結果は常にON(インク吐出する)であり、インク量がX(1≦X≦254)であれば、ハーフトーン処理を行った結果はX÷255の確率でON(インク吐出する)、1−X÷255の確率でOFF(インク吐出しない)となる。
【0040】
次にステップS−08でコンピューター102は、印刷データ内の全画像点の色入力値(R,G,B)をドット吐出のON/OFFに対応する二値データに変換したデータを、コンピューター102からプリンター101にUSBケーブル103を介して送信する。そして、ステップS−09でプリンター101は、送信されてきたデータに基づいて記録媒体120上に所望の画像を印刷する。例えばステップS−01で作成された印刷データが(R,G,B)=(255,0,0)のベタデータ(赤ベタ)であったとする。図7のR=255、G=0、B=0に該当する行は特色インク(Sp、レッドインク)量のみ255であって他のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インク量は0であるから、特色インク(Sp、レッドインク)のみが100%出力され、他のインクは出力されない。
【0041】
なお、この印刷中に特色インクカートリッジ中のインク残量が閾値を下回った場合は図4のステップS−94およびステップS−95が実行され、図5のデフォルトLUTをコンピューター102が読み込み直して印刷を続行するため、図5のR=255、G=0、B=0に該当する行はマゼンタおよびイエローのインク量が255、特色インク(Sp)量およびシアンのインク量は0であるから、マゼンタおよびイエローインクのみで印刷が続行される。すなわち、色は変わってしまうものの、印刷自体は特色インク無しに続行される。また同様に、印刷データが(R,G,B)=(0,0,255)のベタデータ(青ベタ)であったとする。図7のR=0、G=0、B=255に該当する行はシアン(C)とマゼンタ(M)のインク量が255であってイエロー(Y)、ブラック(K)、特色インク(Sp)の各インク量は0であるから、シアンインクとマゼンタインクが100%出力されることになる。
【0042】
次に特色インクカートリッジ150にブルーインクが充填されている場合の例について説明する。図3のステップS−02でコンピューター102が図5で説明したルックアップテーブルを読み込むことは同じである。一方、RFIDタグ151に格納される特色インク情報(ルックアップテーブル書き換え情報)は図8で示す表のようになっていて、8バイト×2行=16バイトのサイズである。この特色インク情報(ルックアップテーブル書き換え情報)を図3のステップS−04で制御ユニット130がRFIDタグ151から読み取り、図6と図7を用いて説明したのと同様、ステップS−02において読み込んだルックアップテーブル(図5)の(R,G,B)値が一致する行を図8の値で置き換えて図9のようなルックアップテーブルに書き換えられる。
【0043】
図3のステップS−06〜S−09の各動作は先ほどと同様である。印刷データが(R,G,B)=(255,0,0)のベタデータ(赤ベタ)であった場合、図9のR=255、G=0、B=0に該当する行はマゼンタおよびイエローのインク量が255であって、特色インク(Sp)量およびシアンのインク量は0である。従って、マゼンタインクとイエローインクが100%出力され、シアンインクと特色インクは出力されない。一方、印刷データが(R,G,B)=(0,0,255)のベタデータ(青ベタ)であった場合、図9のR=0、G=0、B=255に該当する行は特色インク(Sp、ブルーインク)のインク量が255であって他のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インク量は0であるから、特色インク(Sp、ブルーインク)のみが100%出力されることになる。この印刷中に特色インク残量が閾値以下になった場合は、ルックアップテーブルがデフォルト状態に戻され、特色インクを用いずに印刷が続行されることは特色インクカートリッジ150にレッドインクが充填されている場合と同じである。
【0044】
最後に特色インクカートリッジ150をプリンター101にセットしなかった場合を考える。このとき、図3のステップS−04で制御ユニット130がRFIDタグ151の読み取りを試行するが、特色インクカートリッジ150がセットされていないのでRFIDタグ151も存在しないため読み取りは失敗し、制御ユニット130は特色インクカートリッジは無いものと判断してステップS−05は実行されない。このため、ルックアップテーブルはステップS−02でロードされたままの状態、すなわち図5に示すテーブルのままでステップS−06が実行される。
先ほどと同様に印刷データが(R,G,B)=(255,0,0)のベタデータ(赤ベタ)であったことを想定すると、図5のR=255、G=0、B=0に該当する行はマゼンタおよびイエローのインク量が255であって、特色インク(Sp)量およびシアンのインク量は0である。従って、マゼンタインクとイエローインクが100%出力され、シアンと特色インクは出力されない。また、印刷データが(R,G,B)=(0,0,255)のベタデータ(青ベタ)であった場合、図5のR=0、G=0、B=255に該当する行はシアン(C)とマゼンタ(M)のインク量が255であってイエロー(Y)、ブラック(K)、特色インク(Sp)の各インク量は0であるから、シアンインクとマゼンタインクが100%出力されることになる。
【0045】
このように、本実施形態では特色インクカートリッジの中に格納されるインクが変わっても、また特色インクカートリッジをセットしなくても、適切なインクの組み合わせで破綻なく印刷することが可能である。例えば、イメージカラーが赤の製品のポスターを印字する用途に本実施形態の印刷装置を使用する場合、レッドインクをいれた特色インクカートリッジを差し込み、印刷データで(R,G,B)=(255,0,0)を指定して印刷すれば、レッドインク100%で印刷されることにより製品のイメージカラーを鮮やかに印刷することができる。一方、別のイメージカラーが青の製品を印刷する場合は同様にブルーインクをいれた特色インクカートリッジを差し込み、印刷データで(R,G,B)=(0,0,255)を指定すればよい。また、特色インクカートリッジが入っていない、又はさらに別の製品のイメージカラーの特色インクカートリッジが入っていた場合(例えばグリーンインク)でも、本実施形態ではシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インクを用いて、鮮やかさは劣るが違和感のない色を印刷することができるのである。また、特色インクが途中でインク切れになった場合でもシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インクのみを用いて印刷を自動的に続行できる。
【0046】
また、インクカートリッジに貼付されたRFIDタグ151に特色インク情報を格納する構成のため、異なる特色インクを用いる場合でも、カートリッジを交換するだけで常に適切な色変換を行うことができる。このとき、特色インク情報の設定はインクカートリッジをスロットに差し込むだけで全て自動的に行われ、ユーザー側でCD−ROMなどから設定をインストールする必要も無いし、印刷装置がネットワーク環境に接続されている必要も無い。例えば、印刷装置の出荷後に新たな特色インクの要望が生じても、RFIDタグ151の中身を書き換えるだけで対応することができる。また、図5のルックアップテーブル全体をRFIDタグ151に収めると1000バイトの容量が必要であるが、本実施形態では特色インクを使用する領域だけ部分的に持ってデフォルトのルックアップテーブルと合成する構成にしていることで、RFIDタグ151に収めるデータ量が16〜56バイトとなり、RFIDタグ151の記録容量を大幅に削減できる。
【0047】
なお、本実施形態では色変換機能をコンピューター102上で実行したが、制御ユニット130上で実行する構成としてもよい。この場合、コンピューター102からプリンター101へ全画像点の(R,G,B)データが送信され、図3のステップS−02、ステップS−05、ステップS−06、ステップS−07は制御ユニット130で実行される。また、特色インク情報を格納する媒体としてRFIDタグ151、特色インク情報を読み込むインターフェイス手段としてRFIDタグリーダー161を用いたが、例えば媒体として端子を有したICチップ、インターフェイス手段として接触式のICリーダーを用いてもよいし、媒体として2次元コード又はバーコード、インターフェイス手段として光学式リーダーを用いてもよい。また、本実施形態では入力される印刷データに含まれる色情報として(R,G,B)座標を用いたが、(C,M,Y,K)座標を色入力情報として有する印刷データとしてもよいし、デバイス非依存の色彩値として例えばCIELAB空間の(L*,a*,b*)座標を用いてもよい。
【0048】
また、本実施形態では記録媒体120として単一の記録媒体を想定しているが、異なる特性を有した複数の記録媒体に対応することも可能である。この場合、図3のステップS−02で読み込まれるルックアップテーブルは記録媒体120の種類の数だけコンピューター102のハードディスク上に格納しておき、ステップS−04で読み込まれるRFIDタグ151中の特色インク情報にも記録媒体120の種類分だけの情報を格納しておき、それぞれ記録媒体の種類に応じて一つを選択して読み込みを行えばよい。
【0049】
また、本実施形態では特色インクスロット155は一つであるが、これを複数設け、複数の特色インクカートリッジを装着できるようにしてもよい。この場合、特色インク情報も複数読み込まれるので、書き換え順位を決めてルックアップテーブルを順次書き換えるように構成すればよい。
【0050】
〔第2の実施形態〕
図10は本実施形態の印刷装置としての動作を説明するフローチャートであり、第1の実施形態における図3に相当する図である。なお、本実施形態に係る印刷装置の構成図は第1の実施形態で説明した図1と、プリンター101の内部構成ブロック図は同じく図2と、それぞれ何ら変わる点は無いので説明は省略する。
【0051】
図10のフローチャートでは、まずステップS−01Bにて、ユーザーが、印刷するデータをコンピューター102上のアプリケーションソフトで作成し、印刷コマンドを実行する点は図3のステップS−01と同様であるが、ここで作成される印刷データは各画像点で(C,M,Y,K)の色情報を持つ。ここでC,M,Y,Kは各1バイトの整数(0〜255)である。次に特色インク情報の読み取りを要求するステップS−03、および特色インクカートリッジ150の有無を判断するステップS−04が実行されるが、第1の実施形態の図3で説明したのと同様な動作であるので、同じステップ番号を付与することで説明は省略する。また、第1の実施形態で説明した図3のステップS−02に相当するステップは本実施形態では存在しない。
【0052】
ステップS−04で特色インクカートリッジ150が有り(YES)と判断されると、本実施形態ではステップS−05Bへ進む。ステップS−05Bでは制御ユニット130は、RFIDタグ151から読み取った特色インク情報をUSBケーブル103を介してコンピューター102へ送信する。この動作は、図3で説明したステップS−05において制御ユニット130からコンピューター102へ特色インク情報を送信する動作と同様であるが、特色インク情報は図11のように構成される。なお、図11では説明のために表形式で表した上で各行に数値を付与しているが、実際には各行13バイト×5行=65バイトのバイナリーデータとしてRFIDタグ151に格納されている。ステップS−05Bを完了するとステップS−06Bに制御は移る。
【0053】
図12は図10のステップS−06B(色変換手段)の動作を説明するためのフローチャートである。まずステップS−0601が実行され、コンピューター102は、図10で説明したステップS−01にて作成された印刷データの最初の画像点(画像左上)の(C,M,Y,K)値を取り出す。次にステップS−0602に進み、コンピューター102は、図10のステップS−05Bが実行されたか否かを判定し、実行されていれば(YES)ステップS−0603へ進み、実行されていなければ(NO)ステップS−0608へ進む。ステップS−0603ではコンピューター102は、図10で説明したステップS−05Bで読み込んだ図11で示した特色インク情報から最初の行を取得する。
【0054】
次にステップS−0604でコンピューター102は、画像点の(C,M,Y,K)値とステップS−0603で読み込んだC1,M1,Y1,K1,C2,M2,Y2,K2データを比較する。ここでC1≦C≦C2かつM1≦M≦M2かつY1≦Y≦Y2かつK1≦K≦K2を満たせば(YES)ステップS−0605へ進み、満たさなければ(NO)ステップS−0606へ進む。ステップS−0605ではコンピューター102は、ステップS−0603またはステップS−0607で読み込んだ行のインク量を取得してステップS−0610へ進む。
一方、ステップS−0606へ進んだ場合、コンピューター102は、特色インク情報に次の行がまだあるか否かを判定し、まだ読み込んでない行があれば(YES)ステップS−0607へ進んで次の行を取得し、ステップS−0604へ戻って処理を繰り返す。一方、ステップS−0606で全ての行を読み込み済み(NO)であればステップS−0608へ進み、(C,M,Y,K)値からインク量に変換を実施する。本実施形態では、(C,M,Y,K)値からインク量への変換は以下の数式1で示す変換関数で実施される。
【0055】
【数1】

【0056】
ここでGc、Gm、Gy、Gk、Mc、Mm、My、Mkは予め設定されている定数である。ステップS−0608でシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインク量が算出されると次にステップS−0609でコンピューター102は、特色インクのインク量を0に設定し、ステップS−0610へ進む。次にステップS−0610でコンピューター102は、全ての画像点のインク量変換が終了したか否かを判定し、終了していれば(YES)ステップS−06Bは終了する。一方、まだ未変換の画像点が残っていれば(NO)ステップS−0611でコンピューター102は、次の(C,M,Y,K)画像点を取り出し、ステップS−0602の処理に戻る。
【0057】
以下、レッドインクが充填された特色インクカートリッジ150がプリンター101に装着されており、図10のステップS−01Bで(C,M,Y,K)=(0,255,255,0)の単色ベタデータを印刷データとして作成して印刷を実行する場合について説明する。
図10で説明したステップS−03で特色インク情報の読み取り要求が出されて図11で示す特色インク情報が図10のステップS−05Bで読み込まれ、図10のステップS−06Bへ進む。ここではまず図12で説明したステップS−0601で(C,M,Y,K)=(0,255,255,0)が最初の画像点で読み込まれる。ステップS−0602からステップS−0603へ進み、図11で示した特色インク情報の最初の行を読み込む。すなわち、C1=0、M1=250、Y1=250、K1=0、C2=5、M2=255、Y2=255、K2=5、シアンインク量=0、マゼンタインク量=0、イエローインク量=0、ブラックインク量=0、特色インク量=255を取得する。
【0058】
次にステップS−0604で、C1≦C≦C2かつM1≦M≦M2かつY1≦Y≦Y2かつK1≦K≦K2を満たすのでステップS−0605へ進んでインク量としてシアンインク=0、マゼンタインク=0、イエローインク=0、ブラックインク=0、特色インク=255が当該画像点のインク量として取得される。次にステップS−0610で次の画像点として(C,M,Y,K)=(0,255,255,0)を再び得て、ステップS−0602に戻り、同様の処理を行う。以上を全画像点で繰り返してステップS−06Bを終了する。次にステップS−07およびステップS−08が順次実行され、ステップS−09で特色インクが100%吐出されて印刷が実行される。ステップS−07〜S−09の詳細については第1の実施形態で述べている内容と変わらないので同じ番号を付与することで説明は省略する。
【0059】
次に特色インクカートリッジ150がプリンター101に装着されていなかった場合、あるいは特色インクカートリッジ150に別のインクが充填されていて、RFIDタグ151から読み取った特色インク情報に(C,M,Y,K)=(0,255,255,0)でC1≦C≦C2かつM1≦M≦M2かつY1≦Y≦Y2かつK1≦K≦K2を満たす行が含まれていなかった場合について説明する。
この場合、図12のステップS−0602もしくはステップS−0606からステップS−0608へ進む。ステップS−0608では数式1に基づいてインク量計算が実施される。本実施形態ではGc=1.7、Gm=1.6、Gy=1.4、Gk=1.7、Mc=255、Mm=255、My=255、Mk=230である。これらを数式1に代入して計算すると、シアンインク量=0、マゼンタインク量=255、イエローインク量=255、ブラックインク量=0を得る。次にステップS−0609で特色インク量=0と設定される。以降の各ステップにおいては先ほどと同様に、上記した動作が画像点終了まで繰り返され、最終的にステップS−09でイエローインクとマゼンタインクが各々100%吐出されて印刷が完了する。
【0060】
このように、本実施形態では第1実施形態と同様にプリンター101にセットされた特色インクに対して適切にインクを使用して印刷できる。本実施の形態ではルックアップテーブルを使わずに関数で入力値をインク量に変換し、特色インク情報に対しても入力(C,M,Y,K)値に対して簡単な判定を実施するだけなので処理が単純で高速である利点がある。
なお、本実施形態では入力値をインク量に変換する変換関数として数式1のような簡単な関数を用いたが、既知のあらゆる関数に置き換えて差し支えない。
【0061】
〔第3の実施形態〕
図13は本実施形態の印刷装置としての動作を説明するフローチャートであり、第1の実施形態における図3、第2の実施形態における図10に相当する図である。なお、本実施形態に係る印刷装置の構成図は第1の実施形態で説明した図1と、プリンター101の内部構成ブロック図は同じく図2と、それぞれ何ら変わる点は無いので説明は省略する。
【0062】
図13のフローチャートにおけるステップS−01Bの動作は第2の実施形態における図10で説明した動作となんら変わらないので同じステップ番号を付与することで説明は省略する。また、ステップS−03およびステップS−04の動作も第1の実施形態における図3で説明した動作となんら変わらないので同じステップ番号を付与することで説明は省略する。
【0063】
ステップS−04で特色インクカートリッジ150が有り(YES)と判断されると、ステップS−05Cへ進み、制御ユニット130は、RFIDタグ151から読み取った特色インク情報をUSBケーブル103を介してコンピューター102へ送信する。この動作は、第1の実施形態において図3を用いて説明したステップS−05において制御ユニット130からコンピューター102へ特色インク情報を送信する動作、あるいは第2の実施形態において図10を用いて説明したステップS−05Bと同様であるが、本実施形態での特色インク情報(変換関数の係数)は図14のように構成され、パラメーターMs、Gsc、Gsm、Gsy,Gsk、C1、M1、Y1、K1が設定される。なお、図14では説明のために表形式で表した上で各行に数値を付与しているが、実際には各行は0〜255の1バイト整数であり、9バイトのバイナリーデータとしてRFIDタグ151に格納されている。ステップS−05Cを完了するとステップS−06Cに制御は移る。
【0064】
図15は図13のステップS−06Cの動作(色変換手段)を説明するためのフローチャートであって、第2の実施形態において説明した図12に相当する。図15ではまずステップS−0601が実行されるが、第2の実施形態における図12で説明したものと同じ動作であるので同じステップ番号を付与することで説明は省略する。次にステップS−0602へ進み、コンピューター102は、図13のステップS−05Cが実行されたか否かを判定し、実行されていれば(YES)ステップS−0612へ進み、実行されていなければ(NO)ステップS−0608へ進む。ステップS−0612ではコンピューター102は、画像点の(C,M,Y,K)値と図14で示した特色情報とに基づいて、数式2で示す変換関数によってシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、特色の各インク情報に変換し、ステップS610へ進む。
【0065】
【数2】

【0066】
ここでGc、Gm、Gy、Gk、Mc、Mm、My、Mkは予め設定されている定数である。ステップS−608〜S−611の動作は、第2の実施形態において図10を用いて説明したのと同じ動作を行うので、同じ番号を付与することで説明は省略する。
【0067】
以下、レッドインクが充填された特色インクカートリッジ150がプリンター101に装着されており、図13のステップS−01Bで(C,M,Y,K)=(0,255,255,0)の単色ベタデータを印刷データとして作成して印刷を実行する場合について説明する。
図14に示す特色インク情報が図13のステップS−05Cで読み込まれ、Ms=255、Gsc=150、Gsm=130、Gsy=120、Gsk=200、C1=0、M1=255、Y1=255、K1=0を取得する。次に図13のステップS−06C(色変換手段)が実行される。まず図15のステップS−0601で(C,M,Y,K)=(0,255,255,0)が最初の画像点で読み込まれる。特色インク情報はステップS−05Cで読み込まれているので、ステップS−0602からステップS−0612へ進み、数式2を用いてインク量が変換される。本実施形態ではGc=1.7、Gm=1.6、Gy=1.4、Gk=1.7、Mc=255、Mm=255、My=255、Mk=230で設定されているので、これらに基づいて計算を行うとf(0,255,255,0)=1であるからシアンインク量=0、マゼンタインク量=0、イエローインク量=0、ブラックインク量=0、特色インク量=255となる。以上を全画像点で繰り返してステップS−06Cを終了する。次に図13のステップS−07およびS−08が順次実行されてステップS−09で特色インクのみが100%吐出され、印刷が完了する。ステップS−07〜S−09は第1の実施形態の図3で説明した内容と変わらないので省略する。
【0068】
次に特色インクカートリッジ150がプリンター101に装着されていない状態で図13のステップS−01Bで(C,M,Y,K)=(0,255,255,0)の単色ベタデータを印刷データとして作成して印刷を実行した場合について説明する。この場合、図13のステップS−05Cは実行されないので図15のステップS−0602からステップS−0608へ進み、第2の実施形態で説明した数式1を変換関数としてインク量計算が実施される。先ほどと同様にGc=1.7、Gm=1.6、Gy=1.4、Gk=1.7、Mc=255、Mm=255、My=255、Mk=230であるので、これらを数式1に代入して計算すると、シアンインク量=0、マゼンタインク量=255、イエローインク量=255、ブラックインク量=0を得る。次にステップS−0609で特色インク量=0と設定される。以降の他の各ステップにおいては先ほどと同様に、画像点終了まで繰り返され、最終的にステップS−09でイエローインクとマゼンタインクのみが吐出されて印刷が完了する。
【0069】
このように、本実施形態では第1実施形態および第2の実施形態と同様にプリンター101にセットされた特色インクに対して適切にインクを使用して印刷できる。本実施形態ではルックアップテーブルを使わずに関数で入力値をインク量に変換する点は第2の実施形態と同様であるが、特色インク情報として関数の係数を持たせることで、より滑らかで自然な画像を出力することができる。なお、入力値をインク量に変換するのに用いた変換関数は本実施形態で示した数式2に限定されるものではなく、既知のあらゆる関数に置き換えて差し支えない。
【符号の説明】
【0070】
101…印刷装置、102…コンピューター、115…印刷ヘッド、120…記録媒体、130…制御ユニット、140C…シアンインクカートリッジ、140M…マゼンタインクカートリッジ、140Y…イエローインクカートリッジ、140K…ブラックインクカートリッジ、141C…シアンインクスロット、141M…マゼンタインクスロット、141Y…イエローインクスロット、141K…ブラックインクスロット、150…特色インクカートリッジ、151…RFIDタグ、155…特色インクスロット、161…RFIDタグリーダー、162…インク残量センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアンインクと、マゼンタインクと、イエローインクとを供給するインクカートリッジを装着するためのカラーインク装着手段と、
前記シアンインクと、前記マゼンタインクと、前記イエローインクとのいずれとも異なる色相を有する特色インクを供給する特色インクカートリッジを装着するための特色インク装着手段と、
前記特色インクカートリッジに格納された特色インク情報を読み出すインターフェイス手段と、
色入力値をインク量に対応する出力信号に変換する色変換手段と、
を備え、
前記色変換手段は、前記インターフェイス手段を介して前記特色インク情報が取得された場合に、前記特色インク情報をもとに、第1のモードから第2のモードへ更新され、
前記色変換手段が前記第1のモードの場合に、前記特色インクを用いずに印刷を実行し、前記色変換手段が前記第2のモードの場合に、前記特色インクを用いて印刷を実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記色変換手段は、前記特色インク装着手段に前記特色インクカートリッジが装着されている状態から、前記特色インク装着手段に前記特色インクカートリッジが装着されていない状態になった場合には、前記第2のモードから前記第1のモードへ更新されることを特徴とした請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記色変換手段はルックアップテーブルを参照して変換を行い、
前記特色インク情報は前記ルックアップテーブルを書き換える情報であり、
前記色変換手段は、前記ルックアップテーブルが前記特色インク情報に基づいて書き換えられることで、前記第1のモードから前記第2のモードへ更新されることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記色変換手段は、変換関数を用いて変換を行い、
前記特色インク情報は、前記変換関数を使用する領域を変更する情報であり、
前記色変換手段は、前記変換関数を使用する領域が変更されることで、前記第1のモードから前記第2のモードへ更新されることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記色変換手段は、変換関数を用いて変換を行い、
前記特色インク情報は、前記変換関数の係数を含み、
前記色変換手段は、前記変換関数の係数が前記特色インク情報に基づいて書き換えられることで、前記第1のモードから前記第2のモードへ更新されることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記色変換手段は、前記特色インクの残量が所定の閾値を下回る場合には、前記第2のモードから前記第1のモードへ更新されることを特徴とした請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷装置を用いる印刷方法であって、
前記印刷装置は、カラーインク装着手段と特色インク装着手段とインターフェイス手段と色変換手段とを備え、
前記カラーインク装着手段は、シアンインクと、マゼンタインクと、イエローインクとを供給するインクカートリッジを装着し、
前記特色インク装着手段は、前記シアンインクと、前記マゼンタインクと、前記イエローインクとのいずれとも異なる色相を有する特色インクを供給する特色インクカートリッジを装着し、
前記インターフェイス手段は、前記特色インクカートリッジに格納された特色インク情報を読み出し、
前記色変換手段は、前記インターフェイス手段を介して前記特色インク情報が取得された場合に、前記特色インク情報をもとに、第1のモードから第2のモードへ更新され、
前記色変換手段が前記第1のモードの場合に、前記特色インクを用いずに印刷を実行し、
前記色変換手段が前記第2のモードの場合に、前記特色インクを用いて印刷を実行する印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−95080(P2013−95080A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240919(P2011−240919)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】