説明

色彩変化発光型自動認識コードの発光方法

【課題】データを表すデータパターンの間に設ける冗長セル(マージンパターンとも呼ぶ)の設定方法、及び、それに関連する種々の方法・装置を実現することを目的とする。
【解決手段】「データパターン」においては、各色彩の発光期間を1とし、「マージンパターン」中では、その中の各色彩の発光期間を3とする。例えば、マージンパターンとして、データパタン中のセルより「長いR(赤色)発光」を用いる。このように、マージンパターン中のセル(色彩)の発光期間(発光長)が、データパターン中のセル(各色彩)の発光期間とは異なっているので、受信側では、発光長の相違を検出することによって、マージンンパターンであるのか、データパターンであるのかを知ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色彩が時間の経過とともに変化していく色彩発光様式を定め、この発光様式をカメラ等でキャプチャすることによって発光体の位置とデータとを求める技術に関する。すなわち、その色彩発光様式で色彩を発光している発光体の位置を求めるとともに、その発光様式に基づくデータを解読すること、を可能ならしめる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IDと位置の同時検知技術について
本願発明者は、色彩変化によるID検知と発光点の位置を検知する技術について研究開発を続け、種々の特許出願を既に行っている。例えば、特願2008−212973(以下、973号特許と呼ぶ)を出願している。
【0003】
また特願2008−231448(以下、448号特許と呼ぶ)では、途切れなく発光する色彩変化発光に対応して、色彩配列のどの部分をとっても同一DATAを返すような巡環型コード体系について特許出願を行っている。
【0004】
また、上記973号特許で述べている技術においては、そこで利用するコード体系の大きな特徴の一つとして、画面内で本コード(発光体)を追尾することであると説明している。しかし、その追尾を行うためには、本発明の発光体は常に何らかの発光を行っていることが好ましい。即ち、発光のわずかな中断でも、背景にノイズ(色彩の点滅等)のある場面では、これらノイズの影響で位置検知、IDのデコードや、位置検知が極めて困難となる可能性があると考えられる。
【0005】
先行特許文献の例
例えば、下記特許文献1には、光を受光したCCD上の位置から、自己の位置を求める技術が開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、光を反射部材に向けて発し、反射してきた光を受光することによって、自己位置を検出する自律作業車が開示されている。
【0007】
また、下記特許文献3には、座標情報と方向情報とを表示する表示部材を用いて、自己の位置・姿勢を検出する技術が開示されている。この特許文献3の記載によれば、カメラを用いて前記表示部材を撮影し、画像を得る。そして、この画像中の表示部材の大きさ・傾きから、自己の向きと距離とが判明するとされている。
【0008】
また、下記特許文献4には、可視光通信において、発光パターンの周期を小さい周期から大きい周期まで変化させることによって、送信側と受信側とでサンプリング周期を合わせる必要をなくす通信技術が開示されている。
【0009】
また、下記特許文献5には、データを表す光パターンデータに従って、画面上の光の色彩を変化させて、それを携帯端末で受信することによってデータを受け取る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−0147764号公報
【特許文献2】特開2003−302469号公報
【特許文献3】特開2001−118187号公報
【特許文献4】特開2006−270808号公報
【特許文献5】特開2004−151842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記、448号特許は、このような発光の中断による追尾対象のロストを考慮した技術内容を含むものである。
【0012】
この448号特許では、1DATA(ワード)をN個のセルで表現する場合に、いかなる位置から読み取っても同じDATAを返すという技術内容を主な特徴の一つとする発明が開示されている。(※「セル」については、約20行下で詳述している。)
すなわち、コード体系にある程度の冗長性を持たせて、連続して配置されているセル群をどこから読み込んでも同様のデータが読み取れるように工夫したものである。なお、448号特許においては、コードシンボルが複数のセルから構成されるとしており、各セルとセルとの間の色彩の変化によって、データが表される。
【0013】
しかしながら、448号特許のこの方式ではDATAに対してセルの組合せの冗長度が大きく、更に誤り検出機能を盛り込むとますます冗長になるという問題がある。
【0014】
また、448号特許の方式では、DATAとセル並びとの間に適当な計算式を設けることは困難で、データとコードシンボルとの相互変換のためには変換のための何らかのテーブルを用いる必要があった。そのため、用途によっては、柔軟性に欠ける場合も想定される。
【0015】
一方、448号特許においては、各DATAを構成する色彩配列(つまり、コードシンボル)の間にDATAと無関係な「冗長セル」を設ける方式について言及している。このような冗長セルを用いる場合は、この「冗長セル」をDATAセル(データを表すセル群)内に包含しないことが、448号特許において説明している方式を成立させるための条件となる。しかし、本条件を論理的に導き出す方式については448号特許では具体的には触れてはいない。そのため、利用者がヒューリスティックな手法によって、各用途毎に種々の冗長セルを考える必要があった。従って、実際に448号特許における冗長セルを簡単に実現するためには、論理的に速やかにコード体系を構築できる方式を実現するための具体的かつ合理的アイデアが存在することが好ましい。
【0016】
セルについて
セルとは、1個のコードシンボルを構成する単位を言う。例えば、古典的1次元バーコードでは、白バー、黒バーが、セルである。また、QRコード等の2次元バーコードでは、1個1個の白マス、黒マスが、セルである。有彩色を用いたカラーコードでは、その所定の色彩が付された一定の色彩領域が、セルとなる。
【0017】
一方、色彩変化発光を用いた色彩変化型自動認識コードにおいては、発光パターン中のそれぞれの色彩が発光されている期間が、セルに相当する。物品上のカラーコードにおける色彩領域が空間上の領域であるのに対して、色彩変化型自動認識コードの場合は、色彩が発光されている期間は、いわば時間軸上の一領域である。空間上、時間軸上、という相違はあるが、所定の色彩が「付されている」「発光されている」という点において両者は共通し、ともにコード的に見れば、ともにコードを構成する単位であるので「セル」である。
【0018】
コードシンボルについて
あるコード体系に基づき構成された1個のシンボルは、単に「コード」とも呼ばれるが、ある特定の1個のシンボルを特に意味したい場合は、これを特に「コードシンボル」と呼ぶ。コードシンボルは、単にシンボルと呼ぶ場合もある。
【0019】
例えば、「バーコード」という場合、これは「バーコードの記号体系」全体を表す場合もあるが、1個1個の特定のシンボルを表す場合もある。そこで、しばしば、1個1個の特定のシンボルを意味したい場合は、「バーコードシンボル」と呼ぶこともある。
【0020】
目的
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、データを表すデータパターンの間に設ける冗長セル(マージンパターンとも呼ぶ)の設定方法、及び、それに関連する種々の方法・装置を実現することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、マージンンパターンを用いずに、データパターンを改良することによって、各データパターンを識別することをも目的とする。さらに、それに関連する技術を提供することを本発明は目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(1)本発明は、上記課題を解決するために、所定の周期で色彩を変化させながら発光を行い、所定のデータを表現する色彩変化発光方法において、所定の色彩を所定の第1期間毎に変化させて発光し、この発光した各色彩の変化の配列が前記データを表すデータパターン部と、前記データパターン部の区切りとして用いるマージンパターン部と、を交互に発光し、 前記マージンパターン部の一部または全部に、所定の色彩による所定の第2期間発光を含み、この第2期間は、前記第1期間と異なっていることを特徴とする色彩変化発光方法である。
【0023】
(2)また、本発明は、上記(1)に記載の色彩変化発光方法において、前記データパターン中のデータ発光タイミングである前記第1期間は、一定長、すなわち、色彩の変化は一定間隔であり、かつ、この発光タイミングは既知であることを特徴とする色彩変化発光方法である。
【0024】
(3)また、本発明は、(1)に記載の色彩変化発光方法において、前記データパターン中のデータ発光タイミングである前記第1期間は、複数種類のタイミングが混在しており、かつ、これらのタイミングはデータを構成する色彩列の順番に対して既知であることを特徴とする色彩変化発光方法である。
【0025】
(4)本発明は、所定の周期で色彩を変化させながら発光を行い、所定のデータを表現する色彩変化発光方法において、所定の色彩を所定の第4期間毎に変化させて発光し、この発光した各色彩の変化の配列が前記データを表すデータパターン部を、繰り返し発光し、前記データパターン部のあらかじめ決められた単数または複数位置のn種の色彩は、その発光期間が前記第4期間とは異なる第5期間であることを特徴とする色彩変化発光方法である。ここで、nは、1以上の整数である。
【0026】
(5)また、本発明は、上記(4)記載の色彩変化発光方法において、前記データパターン部のあらかじめ決められた単数または複数位置のn種の色彩は、前記データパターン部の開始位置からの位置を表すとともに、前記データパターンの制御情報を表していることを特徴とする色彩変化発光方法である。
【0027】
(6)また、本発明は、上記(5)記載の色彩変化発光方法において、前記データパターン部のあらかじめ決められた単数または複数位置のn種の色彩は、前記データパターン部の開始位置からの位置を表すとともに、前記データパターン部のエラー訂正情報を表すことを特徴とする色彩変化発光方法である。
【0028】
(7)また、本発明は、上記(5)記載の色彩変化発光方法において、前記データパターン部のあらかじめ決められた単数または複数位置のn種の色彩は、前記データパターン部の開始を表すとともに、前記データパターン部のソース情報又はディスティネーション情報を表すことを特徴とする色彩変化発光方法である。
【0029】
(8)また、本発明は、上記(4)記載の色彩変化発光方法において、前記データパターン部の先頭からk番目の色彩の発光長は、前記第5期間であることを特徴とする色彩変化発光方法である。ここで、kは前記nより大きい任意の整数であって、データパターン中のセルの個数以下の整数である。
【0030】
(9)また、本発明は、上記(4)〜(8)のいずれか1項に記載の色彩変化発光方法において、前記データパターン中のデータ発光タイミングである前記第4期間は、一定長、すなわち、色彩の変化は一定間隔であり、かつ、この発光タイミングは既知であることを特徴とする色彩変化発光方法である。
【0031】
(10)また、本発明は、上記(4)〜(8)のいずれか1項に記載の色彩変化発光方法において、前記データパターン中のデータ発光タイミングである前記第4期間は、複数種類のタイミングが混在しており、かつ、これらのタイミングはデータを構成する色彩列の順番に対して既知であることを特徴とする色彩変化発光方法である。
【発明の効果】
【0032】
以上述べたように、本発明によれば、データパターンとマージンンパターンとでその中のセルの発光長(発光期間)を異ならせた。従って、各セルの発光期間によって、そのセルがデータパターンか、マージンパターンかを容易に知ることができる。
【0033】
また、データパターンの先頭部分の所定数のセルの発光長(発光期間)を、データパターンの通常のデータを表すセルとは異ならせて、マージンンパターンとしての役割を果たさせた。したがって、発光期間を検出することによって、容易にデータパターンの区切りを知ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】発光長さを変化させてマージンパターンとデータパターンとの区別を容易にした例の示す説明図である。
【図2】発光強度を変化させてマージンパターンとデータパターンとの区別を容易にした例の示す説明図である。
【図3】データパターンの最初の数セルの発光周期(期間)をデータパターン中の他のセルより長くすることによって、開始パターンを構成した例を示す説明図である。
【図4】データパターンの最初の数セルの発光周期(期間)をデータパターン中の他のセルより長くすることによって、開始パターンを構成した他の例を示す説明図である。
【図5】データ以外の他の機能の部分のセルの発光周期を他のセルより長く設定して、マージンパターンとして利用した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づき説明する。
【0036】
本実施の形態においては、すでに出願者が出願している、特願2008−284986(以下、986号特許と呼ぶ)の考え方を発展させた方式を以下に説明する。
【0037】
尚、本出願では、986号特許で述べている「色彩変化の変化」という方式にこだわらず様々な方式を利用可能であり、また、様々な方式について述べていく。
【0038】
本発明は、色彩変化発光方式の改良に関する発明であり、特に、データパターンと、マージンパターンとの区別をつけやすい点に特徴を有する発明である。
【0039】
また、色彩変化発光方式は、物体に所定のデータを付する技術の一種であり、その意味において、いわゆる自動認識コードの一種であるといえる。特に、色彩を用いている点で、光学式自動認識コードの一種であるといえる。したがって、上で述べた「データパターン」は、色彩変化発光を用いた自動認識コードということで、「色彩変化発光型自動認識コード」としばしば呼ぶこともある。
【0040】
本発明の特徴の一つは、この色彩変化発光型自動認識コードの発光方法における技術的工夫といえよう。
【0041】
以下、本発明におけるマージンパターンと、データパターンとを、それらの区別をつけるための相違点を中心に説明し、本発明の考え方を説明する。
【0042】

第1 はじめに
(1)マージンパターンについて
まず、本実施の形態における特徴事項の一つであるマージンパターンについて説明する。
【0043】
上で、973号特許では、色彩変化発光によって所定の物体のIDを表す方式を提案したことは既に説明した。このようなIDの出力は、その物体の追尾機能を同時に達成するために連続的な発光パターンが前提となる。つまり、連続的に色彩変化発光を行わせることによって、その物体の追尾をも可能にするのである。
【0044】
連続的に発光を行わせる場合、IDを表す色彩変化パターン(これを、「IDパターン」又は「データパターン」と呼ぶ。)は周期的に繰り返すことが必要で、開始と終点が明確である必要がある。
【0045】
なお、色彩変化パターンは、ID以外を表すことももちろん可能であり、その場合は、「IDパターン」の代わりに、より汎用的な意味合いで「データパターン」と呼ぶことも多い。そこで、本特許では主として「データパターン」を用いるが、IDパターンと同様の意味であり、さらに、「IDを表すもの、データを表すもの」でもあるので、上述したように色彩変化型自動認識コードの一種でもある。
【0046】
通常、上記のような周期的な「データパターン」をそのまま連続して発光させると、開始位置が不明確となり読み取りが困難になることが予想されるので、「データパターン」の終端と開始の間に区切りを表すための「マージンパターン」を挿入する必要がある。
【0047】
(2)マージンパターンに求められる特性
このマージンパターンは、データパターンを区切るものであるから、データパターンと明確に区別できる必要がある。一般の通信技術においては、データを表す部分の区切りのパターンには、ある特定のパターンを定めておき、これを区切り(つまり、本特許でいうところのマージンパターン)として用いる場合が多い。
【0048】
このように特定のパターンをマージンパターンとして用いる倍は、この「マージンパターン」と同様のパターンが「データパターン」に包合されていると、通常データの解読が非常に煩雑になるおそれがある。従って、「マージンパターン」と同様のパターンが「データパターン」には現れないように技術的な工夫をする必要がある。
【0049】
さらに「マージンパターン」から「データパターン」に移行する時において、明確に「データパターン」の開始が判別できる必要がある。
【0050】
次に、区別をつけるための様々な手法について順次説明していく。下記の実施の形態1では、パターンの相違によらない区別の手法について主に説明し、下記実施の形態2では、パターンを異ならせて区別をつける場合の具体的な手法を主に説明していく。
【0051】

第2 本実施の形態における様々な技術
(1)パターン発光長さの変化
さて、986号特許で述べた「色彩変化発光」のポイントは、カメラのフレームレートとの同期を不要としたことであった。これを実現するために、986号特許においては、その発明の特徴の一つとして、色彩の変化(点)・遷移(点)を検出するという特徴的な技術を採用していた。この結果、986号特許の発明の本質的なコンセプトは、各色彩の各発光時間が「不定」であっても読み取りを行えるというコンセプトであった。
【0052】
しかしながら、現実にはカメラのフレームレートは安定しており、また発光タイミング制御も安定的に行えるので、フレームレートとの同期についてのみ留意すればばらつきを考慮しても発光時間をほぼ一定値に保つことで、実際には十分に、色彩変化パターンの読み取りを行い、対象物の追尾を行うことは十分に保証される可能性が高い。
【0053】
マージンンパターンとデータパターンとで、その中のセルの発光時間を異ならせる。
【0054】
このように、各色彩の発光時間を一定値に保つというコンセプトの下では、「マージンパターン」と「データパターン」の仕様の相違として、あえて発光時間を変えるというのも一つの考え方である。これが、本特許における基本的な考え方の一つである。
【0055】
データパターン中では、原則としてセルの発光時間は変化しない。
【0056】
その一方、データパターン中では、データの発光タイミングをあえて変化させないことによって、かつ、同発光タイミングが認識側にとって既知であることによって、色彩変化の起きるポイント(フレーム上のタイミング)が認識側にとって予測可能である。
【0057】
したがって、ノイズや移動に伴う不測の色彩変化を除外することができて有利である。このような考えを採用することによって、本願発明者が既に出願しているところの「色彩変化の変化」と同様に、「色彩変化」を検出することによって、データ検知と位置検知、移動追尾を実用的に行うことが可能である。
【0058】
例えば、
・「データパターン」においては、各色彩の発光期間を1とし、「マージンパターン」中では、各色彩の発光期間を3とする。
・さらに、上記各色彩の発光期間中において、複数回の色彩変化発光を行う。
のような方式が考えられる。
【0059】
図1には、この発光長さの変化を用いた具体例を示す説明図が示されている。
【0060】
まず、図1(a)には、マージンパターンとして、データパタン中のセルより「長いR(赤色)発光」を用いている。発光長さでマージンパターンを表しているので、特に特定の色彩(例えばR)を常に用いる必要はない。
【0061】
このように、本実施の形態で特徴的なことは、マージンンパターン中のセル(色彩)の発光期間(発光長)が、データパターン中のセル(各色彩)の発光期間とは異なっていることである。これによって、受信側では、発光長の相違を検出することによって、マージンンパターンであるのか、データパターンであるのかを知ることが可能である。
【0062】
マージンンパターン中の各セルの発光周期(発光長)は、データパターン中の各セルの整数倍とすることが制御が簡単で好適である。もちろん、データパターン中のセルの周期より区別が容易となる程度に長ければどのような周期でもかまわない。
【0063】
また、データパターン中のセルの周期の1.5倍や、2.5倍のように、ちょうど半周期ずれるような周期とすることも好適である。半周期ずれるような構成にすれば、色彩変化のサンプリングタイミングをマージンパターンの検知のために、その都度調整することになり、サンプリング周期のずれ等を調整しやすくなる。
【0064】
図1(b)では、マージンパターンとして2色の組み合わせ、例えばR(赤)G(緑)を用いる例が示されている。図1(b)に示すように、これらのR(赤)G(緑)も、図1(a)の例と同様に長く設定されている。このような例によれば、単に、周期が長いと言うことだけでなく、色彩のパターンでマージンパターンを表しているので、より誤認識を減少させることが可能である。
【0065】
(2)発光色(異色発光)
また、データパターンと、マージンパターンとで異なる色彩を利用することも好適である。これも、本発明における特徴事項の一つである。
【0066】
たとえば、
・「データパターン」はたとえばRGB3色の色彩変化発光であるが、マージンパターン部分においてこのRGB3色の色彩とは異なる色彩を使用するという方式が考えられる。これを、本特許では、便宜上、異色発光と呼ぶ。
【0067】
特に、対象物の検知に用いる場合は、「マージンパターン」においては、それを検知して追尾に利用できること、および、「データパターン」の区切りとなること(データパターンの認識ができること)、という機能が達成できればよいので、上記「発光長さの変化」と合わせて「異色発光」を行うことでマージン検出の確実性を向上させることが期待できる。また、異色発光の技術を単独で用いてマージンパターンと、データパターンとを識別することももちろん好適である。
【0068】
図1(c)にこの異色発光の例が示されている。すなわち、データパターンとマージンパターンとの区別をより一層つけるために、それぞれで用いる色彩を完全に異ならせた例が示されている。この例では、データパターン中のセルには、R(赤)G(緑)B(青)の3色を用いて、マージンパターン中のセルにはR(赤)G(緑)B(青)以外の色彩群を用いている。このように用いる色彩を完全に異ならせれば、より一層データパターンとマージンパターンとの区別を性格に行うことが可能である。すなわち、色彩を検知した瞬間に、それがデータパターンのセルであるのか、マージンパターンのセルであるのかについて、手がかりを取得することができるのである。
【0069】
例えば、マージンンパターン部では、Y(黄)、C(シアン)M(マゼンタ)等を用いて、データパターン部で用いられる色彩群(例えばR(赤)G(緑)B(青))とは異なる色彩群を用いることが好適である。
【0070】
なお、ここでは、マージンンパターンとして、RGB以外の色彩を複数種類用いたパターンの例を示したが、RGB以外の色彩の1色を用いても好適である。すなわち、単色でマージンンパターンを構成するのであり、単色である点では、図1(a)と共通している。例えば、その単色としてY(黄)を用いて、データパターン部で用いられる色彩群(例えばR(赤)G(緑)B(青))とは異なる色彩とすることが好適である。
【0071】
尚、色彩変化発光における発光手段としては、3色発光LEDを使用することが実際には好適である。このようなRGB3色からなるフルカラーLED等を使用する場合は、それら3色のLEDのうち、同時2色、もしくは同時3色発光によって、種々の色彩を発光させることが可能である。したがって、異色発光の技術の実現は容易であると考えられる。なお、同時2色、同時3色発光の場合、各色彩の発光強度を調整することによって、種々の色彩を表現できることはいうまでもない。
【0072】
(3)発光パターン
「マージンパターン」の発光パターンが「データパターン」に含まれない仕様とすることで「マージンパターン」、「データパターン」を区別する方式が考えられる。但し、両者のデータの混同を避けるエンコード方式、コード体系が確立している必要がある。
【0073】
上述した図1(b)において、(R)(G)のパターンが、データパターン中にできこないようにコード体系を定めれば、図1(b)も、この発光パターンを異ならせる例の好適な一例に相当する。
【0074】
(4)発光強度(強度変化発光)
発光強度の点から、マージンパターンとデータパターンとを区別する技術を2種提案する。
【0075】
第1に、「マージンパターン」の発光強度を「データパターン」と異ならせることである。
【0076】
第2に、「マージンパターン」と「データパターン」とのいずれかに発光の強度変化を持たせるという方式である。
【0077】
要するに、「マージンパターン」と「データパターン」との間で発光強度(またはその変化パターン)に関して相違を設けて、両者を区別するものである。
【0078】
これらの技術を、本特許では、総称して「強度変化発光」と呼ぶ。
【0079】
本色彩変化発光の認識においては(たとえば986号特許等においては)、色彩変化をとらえるという技術が重要である。この技術は、各フレーム毎でキャプチャした静止画像の差分検出技術がその中心的な重要な技術となる。
【0080】
その際、このように強度を変化させることによって、差分画像で色彩変化だけでなく強度変化をも用いれば、画像間の「差分」をより大きくすることができ、差分の検出がより行いやすくなるという技術的利点があある。
【0081】
その結果、「マージンパターン」と「データパターン」の区別をより確実に行えると考えられる。
【0082】
このような発光強度変化の例が図2に示されている。この図2に示されている例では、マージンパターンは、図1(a)と同様に、データパターン中のセルの周期より長い周期のR(赤)の発光である。但し、図1(a)と異なり、マージンパターンの発行中で、その発光強度が所定の強度パターンで変化している。このような変化によって、そのR(赤)の発光がマージンパターンであることをより明確に知ることができ、より一層マージンパターンとデータパターンとの区別を正確につけることができる。
【0083】
また、「強度変化発光」の一例としては、点滅発光も好適である。
【0084】
点滅の場合は、その周期によっては、ノイズ(他の点滅発光点)との区別がつきにくくなる場合もある。また、上述したように、追尾を行う場合は、常時発光していることを前提としているが、点滅発光の場合は当然のことながら、非発光時間が生じる。
【0085】
点滅の場合はこのような問題も考えられるが、条件によっては点滅は発光強度の変化を実現する手法としては簡単にできる場合が多く、用途によっては点滅方式が便利な場合もかなりある。たとえば、点滅するようなそのようなノイズ源がないことが明らかな場合や、非発光時間が十分短くできる場合等である。このような場合では、発光強度を変化させる簡易な方法として点滅発光は有用である。
【0086】
第3 マージンの考え方(実現手法の例)
以上述べたような様々な技術によって、マージンパターンと、データパターンとを区別することが容易になる。
【0087】
(1)これらの手法の最も簡単な実現例は、上記のような技術的工夫を施したマージンパターンを、データパターンの間に適宜設けていくことである。上に述べた種々の手法で、このマージンパターンはデータパターンと効率よく区別することができるので、データの読み取り精度の向上が期待される。
【0088】
典型的には、
・・・データパターン:マージンンパターン:データパターン:マージンンパターン:データパターン・・・
のように、交互に配置することが好ましい。
【0089】
しかし、具体的な実現手法としては、そのほかにも様々な形態が考えられる。例えば、下記のような形態が好適な一例である。
【0090】
(2)マージンパターン専用の色彩発光パターンを用いない例
たとえば、上述した「発光長の変動」の場合、これは、色彩の発光パターン以外の要素で「マージンパターン」を検出する考え方であり、極端に言えば、マージンとしての色彩発光パターンが不要であることも想定できる。
【0091】
マージンとしての色彩発光パターンが不要とは、マージンパターンを用いずに、全てデータパターンのみで構成することである。このような構成の下で、各「データパターン」の開始部の決められた部分のみ発光長を変えるのである。決められた部分とは、具体的には、データバーン中の先頭のn色(nは1以上の整数)と定めることが好適である。
【0092】
受信側では、発光長が変化したことをもって、データパターンの開始点(区切り)であることを認識することができる。
【0093】
この場合、各データパターン中の開始パターン、すなわち「発光長の異なる部分」の色彩発光パターンが予め定めれた特定の色彩発光パターンであれば、より一層、検出精度が向上するものと期待できる。しかし、これは特定の色彩発光パターンを用いるので、マージンンパターンとなる特定の色彩発光パターンを用いた例に相当し、既に上で説明した。
【0094】
なお、この開始パターンは、請求の範囲中の「データパターン部の先頭からn種の色彩」の好適な一例に相当する。
【0095】
(2−1)具体例
さて、マージンンパターンとして特定の色彩変化発光パターンを用いずに、データパターンの先頭部分をマージンンパターンとして兼用させる例が、図3に示されている。図3では、データパターン中の最初の数セルの発光期間(周期)をデータパターン中のセルより長くして、開始パターンであることを表している。なお、図3では、終端パターンも設けて、データパターンの終了をも明示的に表している。受信側では、この発光周期が長くなったことを以て、開始パターンであると認識し、データパターンが開始されたことを知ることができる。
【0096】
なお、本実施の形態では、データパターン中の先頭に開始パターンが存在する例を示したが、末尾に終端パターンを配置して、この終端パターン中の各色彩の発光長を異ならせて、マージンンパターンとして兼用させることも好適である。
【0097】
なお、上では、データパターン中の開始パターンは「数セル」であるとしたが、1セルでも良いし、2以上の複数のセルでも良い。一般には、検出をより確実なものとするため、。2〜10セル程度用いるのが好適であろう。この数が多すぎれば、発光長が長くなり、時間あたりのデータ送信量が減少し、データの送信効率が悪くなることも想定されるので、目的に応じて妥当な数とすることが好適である。
【0098】
(2−2)他の例
このような他の例が図4に示されている。ここで示す例は、全てデータパターンであるが、そのデータパターンの開始から数セルの発光周期(期間)を長くしたものである。これによって、そのセルの発光周期(期間)を長いことを以て、受信側では、そのセルがデータパターンの開始であると判断することができる。この原理自体は、上述した「パターン発光長さの変化」と同様である。また、この発光周期が長くなった部分は、データパターン中の最初の部分をマージンパターンとして兼用したものと見ることもできる。
【0099】
図4においては、まずDATA1を表すデータパターン中の最初の部分のセルの周期が長くなることによって、開始パターン(兼マージンパターン)であることが示されている。以下、各データパターン(DATA2、DATA3)も同様である。
【0100】
データパターン中のどの程度のセル数を、開始パターンとして用いるかは、場合によって異なる。数多く使用すれば、当然符号効率が悪くなり、データ転送速度が減少する。一方、あまりに少ないと、ノイズの影響か否かの識別が困難になる。したがって、多くの場合は、データ転送効率が悪化しない程度である程度の個数を用いることが妥当な場合が多いと考えられる。
【0101】
なお、本実施の形態では、開始パターンとして発光周期(期間)が長くなる例を示したが、短くなるように構成しても識別することは可能である。データ効率の点から、短くすることは困難な場合も多いと思われるが、用途や規格によっては発光時間が限られている場合もあり、その場合は開始パターンとして発光周期(期間)を短くした方が好適な場合もあろう。
【0102】
表現できるデータ種類の増加
さらに、図4に示す例では、データパターンの最初のnセル(nは1以上の任意の整数)を、開始パターンとして用いるために、発光長を異ならせているが、データパターンの先頭からk番目以降の所定のセルの発光長を異ならせる(例えば長くする)ように構成しても良い(kは前記nより大きい任意の整数であって、データパターン中のセルの個数以下の数)。このような構成によって、表現できるデータの種類を増加させることも可能である。そのように、開始パターン以外のセルの発光長を長くした例も図4に示されている。
【0103】
(3) 他の機能を果たしている部分を、マージンパターンとして利用する。
また、データ通信においては、誤り検出部位(例えばCRC等)が広く利用されており、一般的には、「データパターン」に対して予め決められた位置に配される(例えば後端)。そこで、この誤り検出部位を、「マージンパターン」としても用いることが考えられる。すなわち、この誤り検出部位の発光長を、データパターンと変えることによってマージンパターンとして利用するのである。
【0104】
このような例が、図5に示されている。この図5に示す例では、終端パターンとCRC部分のセルをデータパターン中のセルより発光周期を長く設定することによって、マージンパターンとしての役割を果たさせている。受信側では、発光周期が長くなったことを以てデータパターンの区切りである(マージンパターンである)と認識することができる。
【0105】
また、同様に発光周期が再び短くなった場合にデータパターンが開始されたと判断することができる。
【0106】
このように、実際の通信においては、データを表す部分の他、制御のための種々の部分が存在するので、データパターン以外の部分の発光長(周期)を変えて、それをマージンパターンとして利用することも好適である。上述した誤り検出や、アドレスデータ(ソース情報、ディスティネーション情報)や、種々のIDデータ、時刻情報、タイミング情報、エンコード方法の種別、等が含まれる場合もある。これらをマージンンパターンとして用いることが好適である。ここで、ソース情報とは、データの発信元を表し、ディスティネーション情報とは、データの送信先を表す。
【0107】
以上述べたような第3の(2)、第3の(3)等の手法によれば、マージンパターン専用の色彩発光パターンが存在しないので、符号効率の向上を図ることができる。
【0108】
第4 装置構成
これまで述べた方式でマージンパターンの発光を行えば、データパターンとより成果kに、迅速に識別できるので、誤認識等を減らすことができる。
【0109】
これらの方式を採用して色彩変化発光を行う装置は、これまでの技術を用いて容易に構成することが可能である。簡単に述べれば、この色彩変化発光装置は、外部から供給された表したい(送信したい)データから、色彩変化パターンを作成する手段と、作成した色彩変化パターンに基づき、発光手段に色彩を変化させながら発光させる制御手段と、前記発行手段と、から構成される。
【0110】
色彩変化パターンの作成をする手段は、一般的なコンピュータを用いることが好適であるが、デジタルデータから、一定の色彩変化パターンを得られればどのような手段でもかまわない。この変換は、数学的な計算で行うことも好適であるが、変換パターンを予め格納したテーブル手段を持ち、入力データからこのテーブルを引くことによって、色彩変化パターンを取り出す構成も好適である。このようなテーブルは半導体メモリや種々の聞く手段を用いて容易に構成することができる。
【0111】
発光手段は、典型的には様々な色彩で発光することができるフルカラーLED等が好適である。もちろん、液晶ディスプレイ等も、様々な色彩を発光できるので発光手段として用いることが可能である。その他、所望の色彩を発光できるのであれば、どのような手段でもかまわない。
【0112】
制御手段は、上記色彩変化パターンに基づき、上記発光手段に所定の色彩を発光させることができればどのような手段でもかまわない。例えば、RGBの3種のLEDから構成される発光手段であれば、それぞれの色彩のLEDを制御する駆動トランジスタ等を備えた駆動回路が好適である。このような駆動回路は発光手段に応じたものが広く知られているので、そのような手段を用いればよい。
【符号の説明】
【0113】
R 赤色
B 青色
G 緑色

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で色彩を変化させながら発光を行い、所定のデータを表現する色彩変化発光方法において、
所定の色彩を所定の第1期間毎に変化させて発光し、この発光した各色彩の変化の配列が前記データを表すデータパターン部と、前記データパターン部の区切りとして用いるマージンパターン部と、を交互に発光し、
前記マージンパターン部の一部または全部に、所定の色彩による所定の第2期間発光を含み、この第2期間は、前記第1期間と異なっていることを特徴とする色彩変化発光方法。
【請求項2】
請求項1に記載の色彩変化発光方法において、
前記データパターン中のデータ発光タイミングである前記第1期間は、一定長、すなわち、色彩の変化は一定間隔であり、かつ、この発光タイミングは既知であることを特徴とする色彩変化発光方法。
【請求項3】
請求項1に記載の色彩変化発光方法において、
前記データパターン中のデータ発光タイミングである前記第1期間は、複数種類のタイミングが混在しており、かつ、これらのタイミングはデータを構成する色彩列の順番に対して既知であることを特徴とする色彩変化発光方法。
【請求項4】
所定の周期で色彩を変化させながら発光を行い、所定のデータを表現する色彩変化発光方法において、
所定の色彩を所定の第4期間毎に変化させて発光し、この発光した各色彩の変化の配列が前記データを表すデータパターン部を、繰り返し発光し、
前記データパターン部のあらかじめ決められた単数または複数位置のn種の色彩は、その発光期間が前記第4期間とは異なる第5期間であることを特徴とする色彩変化発光方法。ここで、nは、1以上の整数である。
【請求項5】
請求項4記載の色彩変化発光方法において、
前記データパターン部のあらかじめ決められた単数または複数位置のn種の色彩は、前記データパターン部の開始位置からの位置を表すとともに、前記データパターンの制御情報を表していることを特徴とする色彩変化発光方法。
【請求項6】
請求項5記載の色彩変化発光方法において、
前記データパターン部のあらかじめ決められた単数または複数位置のn種の色彩は、前記データパターン部の開始位置からの位置を表すとともに、前記データパターン部のエラー訂正情報を表すことを特徴とする色彩変化発光方法。
【請求項7】
請求項5記載の色彩変化発光方法において、
前記データパターン部のあらかじめ決められた単数または複数位置のn種の色彩は、前記データパターン部の開始を表すとともに、前記データパターン部のソース情報又はディスティネーション情報を表すことを特徴とする色彩変化発光方法。
【請求項8】
請求項4記載の色彩変化発光方法において、
前記データパターン部の先頭からk番目の色彩の発光長は、前記第5期間であることを特徴とする色彩変化発光方法。ここで、kは前記nより大きい任意の整数であって、データパターン中のセルの個数以下の整数である。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載の色彩変化発光方法において、
前記データパターン中のデータ発光タイミングである前記第4期間は、一定長、すなわち、色彩の変化は一定間隔であり、かつ、この発光タイミングは既知であることを特徴とする色彩変化発光方法。
【請求項10】
請求項4〜8のいずれか1項に記載の色彩変化発光方法において、
前記データパターン中のデータ発光タイミングである前記第4期間は、複数種類のタイミングが混在しており、かつ、これらのタイミングはデータを構成する色彩列の順番に対して既知であることを特徴とする色彩変化発光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−145854(P2011−145854A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5689(P2010−5689)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(506226175)ビーコア株式会社 (39)
【Fターム(参考)】