説明

芳香族アミンおよびカルボン酸官能化ポリマーの反応生成物ならびに分散剤を含有する潤滑組成物

本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、およびアミン官能化添加剤を提供する。アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンから誘導される。本発明は、さらに、内燃機関における潤滑組成物の使用に関する。本発明の潤滑剤組成物は、(i)分散性、(ii)清浄さ、(iii)煤によって媒介される油の増粘および/またはスラッジ形成が許容されるレベルである潤滑剤、ならびに(iv)シール性能に対するいかなる悪影響も減らすかまたは防ぐことができる潤滑剤、の少なくとも1つを提供することができる潤滑組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、およびアミン官能化添加剤を提供する。アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンから誘導される。本発明は、さらに、内燃機関における潤滑組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン製造企業は、微粒子の排出、他の汚染物質の排出を最小限にし、清浄さ、燃料経済性、および効率も改善するために、エンジン設計を改善することに集中してきた。エンジン設計における改善点の1つは、排気ガス再循環(EGR)エンジンの使用である。エンジン設計および動作における改善は、排出物を減らすことに貢献したが、エンジン設計の進歩のあるものは、潤滑剤にとっての他の難問を発生させたと考えられている。例えば、EGRは、煤およびスラッジの形成および/または蓄積の増加をもたらしたと考えられている。
【0003】
煤によって媒介される油の増粘は、高出力ディーゼルエンジンにおいて一般的である。ディーゼルエンジンのあるものは、EGRを使用する。EGRエンジン中で形成される煤は、さまざまな構造を有し、EGRのないエンジン中の煤の形成より低い煤レベルにおいてエンジン潤滑油の粘度増加を引き起こす。下記に要約される参考文献に、煤によって媒介される油の増粘を軽減する試みが開示されている。
【0004】
ラジカル法により無水マレイン酸でグラフトされ、さまざまなアミンと反応した、エチレン−プロピレン共重合体から作られる従来形の分散剤粘度調整剤(DVM)が、ディーゼルエンジン中の油の増粘を防ぐ望ましい性能を示した。この点に関して、芳香族アミンが良い性能を示すと言われている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4にこの種類のDVMが開示されている。
【0005】
特許文献5は、芳香族アミン、例えば4−アミノジフェニルアミンでキャップされた、無水マレイン酸グラフト化エチレン−プロピレン共重合体を利用することによってEGR煤を制御することを開示している。
【0006】
特許文献6は、エチレン性不飽和カルボン酸材料でグラフトされ、アゾ含有芳香族アミン化合物で誘導体化されたエチレンアルファ−モノオレフィン共重合体を含有する官能化グラフト共重合体を粘度指数向上剤として開示している。
【0007】
特許文献7は、不飽和反応性モノマーがグラフトされ、その後にスルホンアミド単位を含有するアミンと反応した重合体を含有する、潤滑油のための多機能粘度指数向上剤を開示している。重合体は、エチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−プロピレン−ジエン三元重合体のどちらかである。
【0008】
特許文献8は、アミド含有芳香族アミン材料で誘導体化されたエチレン性不飽和カルボン酸でグラフトされた、エチレンアルファ−モノオレフィン共重合体を開示している。
【0009】
特許文献9は、スルホンアミド、ニトロアニリン、ジ芳香族ジアゾ化合物、アニリド、またはフェノキシアニリドでキャップされた、無水マレイン酸グラフト化エチレン−プロピレン共重合体を開示している。共重合体は、EGRの煤を制御するために有用である。
【0010】
特許文献10の開示を含むポリアクリル共重合体を含む、潤滑剤に適した他の分散剤粘度調整重合体が企図されている。
【0011】
特許文献11は、内部でコハク酸化ポリブテンがアルキルポリアミンまたはアルキルポリオールのどちらかと縮合してコハク酸イミド分散剤またはコハク酸エステル分散剤を作る、組成物を開示している。
【0012】
特許文献12は、約300から3500の範囲の平均分子量を有するグラフトおよびアミン誘導体化重合体を含む添加剤組成物を開示している。
【0013】
特許文献13および特許文献14はともに、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤と、脂肪族ポリアミンおよび芳香族ポリアミンを含む混合物とのアミノ化生成物を開示している。混合物中の芳香族ポリアミンに対する脂肪族ポリアミンのモル比は、約10:0.1から約0.1:10の範囲である。
【0014】
国際出願PCT/US08/082944号は、煤によって媒介される油の増粘および/またはスラッジ形成を減らすためのイサト酸無水物誘導添加剤を開示している。
【0015】
煤によって媒介される油の増粘を軽減する試みの多くは、シール性能(例えば引張り強さおよび破断伸び率)に悪影響を及ぼすと考えられている。その理由は、複数の既知の潤滑剤添加剤は確かに潤滑性能要件を満たすが、多くの場合に樹脂またはゴムシールを劣化させるからである。潤滑剤添加剤は、シールを収縮させ、および/またはシールの強さおよび弾性を低下させるのに十分なほど反応性があると考えられている。シールの例は、樹脂またはゴムシール、例えばシリコーンゴムシール、アクリルゴムシール、フルオロカーボン樹脂シール、ニトリルゴムシール、水素化ニトリルゴムシール、およびエチレン−プロピレンゴムシールを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,863,623号明細書
【特許文献2】米国特許第6,107,257号明細書
【特許文献3】米国特許第6,107,258号明細書
【特許文献4】米国特許第6,117,825号明細書
【特許文献5】米国特許第4,863,623号明細書
【特許文献6】米国特許第5,409,623号明細書
【特許文献7】米国特許第5,356,999号明細書
【特許文献8】米国特許第5,264,140号明細書
【特許文献9】国際公開第06/015130号
【特許文献10】英国特許第768 701号明細書
【特許文献11】米国特許第4,234,435号明細書
【特許文献12】米国特許第5,182,041号明細書
【特許文献13】米国特許第7,361,629号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2008/0171678号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の発明者らは、(i)分散性、(ii)清浄さ、(iii)煤によって媒介される油の増粘および/またはスラッジ形成が許容されるレベルである潤滑剤、ならびに(iv)シール性能に対するいかなる悪影響も減らすかまたは防ぐことができる潤滑剤、の少なくとも1つを提供することができる潤滑組成物を発見した。従って、添加剤が分散剤特性を提供することができ、任意選択として、煤によって媒介される油の増粘および/またはスラッジ形成が許容されるレベルである潤滑剤を提供することができたら望ましくもある。一実施態様において、シール性能に対する悪影響を減らすかまたはなくしながら、煤によって媒介される油の増粘および/またはスラッジ形成が許容されるレベルである潤滑剤を提供することは望ましいであろう。一実施態様において、シール性能(例えば引張り強さおよび破断伸び率)に対するいかなる有害な影響も減らすかまたは防ぎながら、分散性が許容されるレベルであり、煤によって媒介される油の増粘および/またはスラッジ形成が許容されるレベルである潤滑剤を提供することは望ましいであろう。
【0018】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、およびアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物であって、アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンから誘導することができる、潤滑組成物を提供する。
【0019】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、コハク酸イミド分散剤、およびアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物であって、アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンから誘導することができる、潤滑組成物を提供する。
【0020】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、およびアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物であって、アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基(特に少なくとも4つの芳香族基)を有するアミンから誘導することができる潤滑組成物を提供する。通常、アミンは、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有する。
【0021】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、およびアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物であって、アミン官能化添加剤は、(1)イサト酸無水物またはアルキル置換イサト酸無水物と、(2)少なくとも2つの芳香族基および第1または反応性第2アミノ基を有する芳香族アミンとを反応させることを含むプロセスによって得られる/得ることができる、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンから誘導することができる潤滑組成物を提供する。反応性第2アミノ基は、1以下の、結合された芳香族基を有する。
【0022】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、およびカルボン酸官能化重合体を少なくとも3つまたは4つの芳香族基(あるいは少なくとも4つの芳香族基)を有するアミンと反応させることによって得られる/得ることができる生成物を含む潤滑組成物を提供する。通常、アミンは、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有する。
【0023】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、および少なくとも3つまたは4つの芳香族基(あるいは少なくとも4つの芳香族基)を有するアミンから誘導されるアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物を提供する。通常、アミンは、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有し、−NH基は、マンニッヒ反応においてヒドロカルビル置換フェノール(通常はアルキルフェノール)、およびアルデヒドと縮合してアミンとヒドロカルビル置換フェノールとの共有結合を作ることができる。
【0024】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、ならびにカルボン酸(例えば脂肪酸)を少なくとも3つの芳香族基(または少なくとも4つの芳香族基)、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有するアミンと反応させることによって得られる/得ることができる生成物を含む潤滑組成物を提供する。
【0025】
脂肪酸は、ドデカン酸、デカン酸、トール油酸、10−メチル−テトラデカン酸、3−エチル−ヘキサデカン酸、および8−メチル−オクタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヘキサトリアコンタン酸、テトラプロピレニル置換グルタル酸、ポリブテンから誘導したポリブテニル置換コハク酸、ポリプロペンから誘導したポリプロペニル置換コハク酸、オクタデシル置換アジピン酸、クロロステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9−メチルステアリン酸、ジクロロステアリン酸、リシノール酸、レスケレリン酸、ステアリル安息香酸、エイコサニル置換ナフトエ酸、ジラウリル−デカヒドロナフタレンカルボン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、またはそれらの混合物を含んでよい。一実施態様において、カルボン酸は、ドデカン酸、デカン酸、トール油酸、10−メチル−テトラデカン酸、3−エチル−ヘキサデカン酸、および8−メチル−オクタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、またはそれらの混合物であってよい。
【0026】
本明細書において開示されている潤滑組成物中に存在する添加剤の量への本明細書において用いられる参照は、油を含まない基準、すなわち活性成分の量で示されている。
【0027】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、および本明細書に開示されているアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物を提供し、分散剤の量は、0.05重量%から12重量%、または0.1重量%から10重量%、または0.5重量%から6重量%存在してよく、アミン官能化添加剤は、0.01重量%から12重量%、または0.75重量%から8重量%、または1重量%から6重量%存在してよい。
【0028】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、およびイサト酸無水物またはアルキル置換イサト酸無水物から誘導した上記に開示されているアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物を提供し、分散剤の量は、0.05重量%から12重量%、または0.75重量%から8重量%、または1重量%から6重量%存在してよく、アミン官能化添加剤は、1重量%超から12重量%、または1.5重量%から8重量%、または2重量%から6重量%存在してよい。
【0029】
一実施態様において、本発明は、潤滑粘度の油、分散剤、および本明細書に開示されているアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物を提供し、分散剤の量は、0.05重量%から12重量%、または0.75重量%から8重量%、または1重量%から6重量%存在してよく、イサト酸無水物またはアルキル置換イサト酸無水物から誘導されたものではない上記に開示されているアミン官能化添加剤は、0.5重量%から12重量%、または0.75重量%から8重量%、または1重量%から6重量%存在してよい。
【0030】
一実施態様において、本発明は、内燃機関に潤滑剤を提供する方法であって、本明細書に開示されている潤滑組成物を内燃機関に供給することを含む方法を提供する。
【0031】
一実施態様において、本発明は、内燃機関に潤滑剤を提供する方法であって、潤滑粘度の油およびアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物を内燃機関に供給することを含み、アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基(特に少なくとも4つの芳香族基)、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有するアミンから誘導することができる方法を提供する。
【0032】
一実施態様において、本発明は、内燃機関に潤滑剤を提供する方法であって、潤滑粘度の油およびイサト酸無水物またはアルキル置換イサト酸無水物から誘導した上記に開示されているアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物を内燃機関に供給することを含む方法を提供する。
【0033】
一実施態様において、本発明は、シール性能に対するいかなる悪影響も減らすかまたは防ぎながら、煤によって媒介される油の増粘および/またはスラッジ形成を軽減するための本明細書に開示されている潤滑組成物の使用を提供する。
【0034】
一実施態様において、本発明は、内燃機関潤滑剤におけるシール性能に対するいかなる悪影響も減らすかまたは防ぎながら、煤によって媒介される油の増粘および/またはスラッジ形成を軽減するための本明細書に開示されている潤滑組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、上記に開示されているように、潤滑組成物、およびエンジンに潤滑剤を提供するための方法を提供する。
【0036】
分散剤
本発明の分散剤は、コハク酸イミド分散剤、またはその混合物であってよい。一実施態様において、分散剤は、単独の分散剤として存在してもよい。一実施態様において、分散剤は、2つまたは3つの異なる分散剤の混合物中に存在してもよく、少なくとも1つは、コハク酸イミド分散剤であってよい。
【0037】
コハク酸イミド分散剤は、脂肪族ポリアミン、またはその混合物から誘導することができる。脂肪族ポリアミンは、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミンなどの脂肪族ポリアミン、またはそれらの混合物であってよい。一実施態様において、脂肪族ポリアミンは、エチレンポリアミンであってよい。一実施態様において、脂肪族ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミン塔底残渣(still bottom)、およびそれらの混合物からなる群から選んでよい。
【0038】
分散剤は、N−置換長鎖アルケニルコハク酸イミドであってよい。N−置換長鎖アルケニルコハク酸イミドの例は、ポリイソブチレンコハク酸イミドを含む。通常、ポリイソブチレン無水コハク酸から誘導されるポリイソブチレンは、350から5000、または550から3000、または750から2500の数平均分子量を有する。例えば米国特許第3,172,892号、第3,219,666号、第3,316,177号、第3,340,281号、第3,351,552号、第3,381,022号、第3,433,744号、第3,444,170号、第3,467,668号、第3,501,405号、第3,542,680号、第3,576,743号、第3,632,511号、第4,234,435号、米国再発行特許第26,433号、および米国特許第6,165,235号、第7,238,650号、および欧州特許出願公開第0 355 895号に、コハク酸イミド分散剤およびそれらの調製方法が開示されている。
【0039】
コハク酸イミド分散剤を作るための2つの一般に使用されているプロセスがある。これらは、ポリアルキレン(通常はポリイソブチレンであるが、エチレン共重合体を含む共重合体も)置換基が調製される方法、およびそれが一塩基酸または二塩基酸または無水物部分、特に無水コハク酸部分またはその反応性等価物に付加される方法において異なる。従来のプロセス(a)においては、AlClの存在下でイソブチレンを重合させて主として3置換オレフィン(III)および4置換オレフィン(IV)の末端基を含み、非常に少ない量(例えば20パーセント未満)の鎖だけが末端ビニリデン基(I)を含む重合体の混合物を製造する。代替「塩素フリー」または「熱」プロセス(b)においては、BF触媒の存在下でイソブチレンを重合させて主として(例えば少なくとも70パーセント)末端ビニリデン基を含み、これより少ない量の4置換末端基および他の構造を有する重合体の混合物を製造する。米国特許第6,165,235号の表1に、ときに「高ビニリデンPIB」と称されるこれらの材料も記載されている。
【0040】
(a)の従来形ポリイソブチレンは、塩素の存在下で米国特許第6,165,235号により詳しく記載されている一連の塩素化、脱塩化水素、およびディールス−アルダー反応により無水マレイン酸と反応して顕著な量のジコハク酸化重合体材料を提供する。
【0041】
これに対して、(b)の高ビニリデンポリイソブチレンは、塩素の非存在下で一連の熱「エン」反応によって無水マレイン酸と反応してモノ−およびジコハク酸化重合体材料の混合物を生成すると考えられている。
【0042】
米国特許第4,152,499号に、BFプロセスから作られるポリイソブチレンからのアシル化剤の調製法およびアミンとの反応が開示されている。ポリイソブチレン以外の重合体を用いて同様な付加体を作ることができ、例えば、米国特許第5,275,747号は、モノ−またはジカルボン酸を作り出す部分で置換することができる末端エテニリデン不飽和を有する誘導体化エチレンアルファ−オレフィン重合体を開示している。成分(b)のこれらの材料は、環構造を有する少量の材料も含んでいることがある。しかし、環状成分は、主として塩素経路(プロセス(a))からの材料によって提供され、非環状成分は、主として熱経路(プロセス(b))からの材料によって提供される。
【0043】
上記に記載され、(a)および(b)と称されてもいる2種類の生成物は、記載における完全さおよび明確さを目的とし、そして検討がさらに進み、描かれた構造が不完全であるかまたはある程度正しくないことさえ示されることがあると理解されるので、本文においては構造と製造方法(塩素プロセス対非塩素または熱プロセス)との両方によって記載されている。それでも、塩素プロセスによって調製される材料は、非塩素経路によって調製されるものと異なり、最終的になにであると証明されようともこれらの差異が本発明の性能特性を生じさせることを認識することが重要である。例えば、塩素反応からの生成物は、通常、一定の百分率の内部、すなわち高分子鎖の主鎖上の、コハク酸官能基を含むが、そのような内部コハク酸官能基は、非塩素材料には実質的に存在しないとも考えられている。この差異も、本発明の性能において役割を演じることがある。出願人らは、いかなるそのような理論的説明によっても束縛されることを意図しない。
【0044】
無水コハク酸成分のそれぞれにあるヒドロカルビル置換基は、普通は、潤滑油中の所望の度合いの溶解性を提供するために十分な長さでなければならない。従って、成分(a)中のヒドロカルビル置換基の長さは成分(b)中と同じでなくてよいが、(a)および(b)のそれぞれは、通常、少なくとも300、少なくとも800、または少なくとも1200の数平均分子量を有するヒドロカルビレンから誘導され、例えば成分(a)のものは少なくとも1200であってよい。分子量に対する通常の上限は、溶解性、コストの考慮、または他の実際的な考慮によって決定してよく、最大5000または最大2500であってよい。従って、例えば、成分(a)および(b)のヒドロカルビル置換基から誘導されるヒドロカルビレンは、独立に、300から5000、または800から2500の数平均分子量を有してよい。
【0045】
2種類のコハク酸化重合体材料のそれぞれは、アミン、アルコール、またはヒドロキシアミン、および好ましくはポリアミンとさらに反応して分散剤を形成してよい。一般に、この種類の分散剤はよく知られており、例えば、米国特許第4,235,435号(特に種類(a)について)および米国特許第5,719,108号(特に種類(b)について)に開示されている。
【0046】
一実施態様において、分散剤は、米国特許第6,165,235号に記載されているプロセスによって調製することができる。例えば、分散剤は、ポリイソブチレン無水コハク酸をアルキレンポリアミンと反応させることによって調製することができる。
【0047】
アルキレンポリアミンは、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミン、またはそれらの混合物であってよい。通常、ポリアミンは、エチレンポリアミン、またはその混合物であってよい。エチレンポリアミン、例えば上記で言及されているもののあるものが好ましい。それらは、Kirk Othmerの「Encyclopedia of Chemical Technology」第4版、第8巻、John Wiley and Sons,N.Y.(1993)の74〜108頁の見出し「Diamines and Higher Amines」下に、およびMeinhardtらの米国特許第4,234,435号に詳しく記載されている。
【0048】
エチレンポリアミンの例は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−(2−アミノエチル)−N’−[2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル]−1,2−エタンジアミン、アルキレンポリアミン塔底残渣、またはそれらの混合物を含む。
【0049】
アルキレンポリアミン残渣は、2%未満、普通は1%(重量)未満の約200℃未満で沸騰する材料を有することを特徴としてよい。容易に入手することができ、非常に有用であることが見いだされているエチレンポリアミン残渣の場合、残渣は、約2%(重量)未満の全ジエチレントリアミン(DETA:diethylene triamine)またはトリエチレンテトラミン(TETA:triethylene tetramine)を含んでいる。Freeport,Tex.のDow Chemical Companyから得られる「E−100」と称されるそのようなエチレンポリアミン残渣の通常の試料は、15.6℃における1.0168の比重、33.15重量パーセントの窒素、および40℃における121cSt(mm/s)の粘度を有する。そのような試料のガスクロマトグラフィー分析により、「E−100」は、約0.93%の「軽質分」(おそらくジエチレントリアミン)、0.72%のトリエチレンテトラミン、21.74%のテトラエチレンペンタミン、および76.61%のペンタエチレンヘキサミンおよびそれ以上のもの(重量基準)を含むことが示された。同様なアルキレンポリアミン残渣がDow ChemicalからE100(登録商標)ポリエチレンアミンとして市販されている。
【0050】
分散剤の調製において用いられるポリイソブチレン無水コハク酸は、
(a)数平均分子量300〜10,000を有するポリイソブチレン、前記ポリイソブチレンのモル数を基準として90モルパーセントの4置換および3置換末端基、およびハロゲンを含む混合物を形成させ、150℃未満の温度において加熱するステップであって、前記ハロゲンは、最大で末端基の前記モル数と等しい量のモル量で前記混合物に加えられるステップ、
(b)前記ハロゲンの添加に続いてまたは前記ハロゲンの添加と同時に、前記混合物にα,β−不飽和酸(通常、マレイン酸)またはα,β−不飽和無水物(通常、マレイン酸無水物)化合物を加えるステップ、
(c)前記混合物の温度を170℃から220℃に増加させ、前記ポリイソブチレンを前記α,β−不飽和酸または前記α,β−不飽和無水物化合物と反応させるのに十分な時間混合物を前記温度に保持するステップ、
(d)前記混合物を200℃未満に冷却し、等しいモル量の前記ハロゲンおよび前記α,β−不飽和酸または前記α,β−不飽和無水物化合物をそれに加えるステップ、ならびに
(e)前記混合物の温度を220℃未満の限度に増加させ、前記混合物中の未反応α,β−不飽和酸またはα,β−不飽和無水物化合物を3パーセント未満に減らすのに十分な時間前記温度に保持するステップ、
を含む方法(米国特許第6,165,235号に記載されている)によって調製することができ、前記方法は、2,000ppm未満の塩素含有率を有するポリイソブチレン置換カルボン酸アシル化剤を製造する。
【0051】
米国特許第6,165,235号の分散剤は、実施例1(カラム12、25から63行目参照)、または実施例2(カラム12、64行目からカラム13、13行目参照)において調製されたポリイソブチレンとアルキレンポリアミン、例えばE100(商標)ポリエチレンアミンとを反応させることによって調製することができる。例えば、得られる化合物は、1:1.3から1:1.8、例えば1:1.5のポリイソブチレンに対する無水マレイン酸誘導単位の比を有してよい。この化合物は、1:1から1:5、または1:1.3の窒素に対するカルボニルの比を有してよい。
【0052】
分散剤は、さまざまな試薬のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理してもよい。これらの中には、ホウ素化合物、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、およびリン化合物がある。
【0053】
分散剤は、潤滑組成物の0.01重量%から20重量%、または0.1重量%から15重量%、または0.1重量%から10重量%、または1重量%から6重量%存在してよい。
【0054】
アミン官能化添加剤
本発明の潤滑組成物は、アミン官能化添加剤をさらに含む。アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンから誘導することができる。
【0055】
本明細書において用いられる用語「芳香族基」は、この用語の通常の意味で用いられ、環系あたり4n+2のπ電子のHueckel理論によって定義されることが知られている。従って、本発明の1つの芳香族基は、6、または10、または14のπ電子を有することができる。従って、ベンゼン環は、6つのπ電子を有し、ナフチレン環は10のπ電子を有し、アクリジン基は14のπ電子を有する。
【0056】
少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンの例は、式(1):
【0057】
【化1】

(式中、各変数は独立であり、
は、水素またはC1〜5アルキル基(通常は水素)であってよく、
は、水素またはC1〜5アルキル基(通常は水素)であってよく、
Uは、脂肪族、脂環式、または芳香族基であってよく、但し、Uが脂肪族のとき、脂肪族基は、1から5、または1から2の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキレン基であってよく、
wは、1から10、または1から4、または1から2(通常は1)であってよい)
によって表すことができる。
【0058】
少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンの例は、式(1a):
【0059】
【化2】

(式中、各変数は独立であり、
は、水素またはC1〜5アルキル基(通常は水素)であってよく、
は、水素またはC1〜5アルキル基(通常は水素)であってよく、
Uは、脂肪族、脂環式、または芳香族基であってよく、但し、Uが脂肪族のとき、脂肪族基は、1から5、または1から2の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキレン基であってよく、
wは、1から10、または1から4、または1から2(通常は1)であってよい)
によって表すことができる。
【0060】
あるいは、式(1a)の化合物は、
【0061】
【化3】


(式中、各変数U、RおよびRは、上記に記載されているものと同じであり、wは、0から9、または0から3、または0から1(通常は0)である)
によって表すことができる。
【0062】
少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンの例は、以下の式(2)および/または(3):
【0063】
【化4】

のどちらかによって表すことができる。
【0064】
一実施態様において、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンは、上記に開示されている式によって表される化合物の混合物を含んでよい。式(2)および(3)の化合物も下記に記載されているアルデヒドと反応してアクリジン誘導体を形成することができることは、当業者に自明であろう。形成することができるアクリジン誘導体は、下記の式(2a)または(3a)から(3c)によって例示され、表される化合物を含む。これらの式によって表されるこれらの化合物に加えて、アルデヒドが>NH基で架橋されているベンジル基を有する他のものと反応する、他のアクリジン構造が可能なことがあることも当業者に自明であろう。アクリジン構造の例は、式(2a)、(3a)、または(3b)、または(3c)によって表されるものを含む。
【0065】
【化5】

N−架橋芳香環のいずれかまたはすべてにそのようなさらなる縮合、およびおそらく芳香族化が可能である。式(3b)に、多くの可能な構造の他の1つが示されている。
【0066】
【化6】

上記の式(2)、(2a)(3)、または(3a)から(3c)のいずれも、さらなる縮合反応を行って分子あたり1つ以上のアクリジン部分が形成される結果となることができるであろう。
【0067】
少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンの例は、ビス[p−(p−アミノアニリノ)フェニル]−メタン、2−(7−アミノ−アクリジン−2−イルメチル)−N−4−{4−[4−(4−アミノ−フェニルアミノ)−ベンジル]−フェニル}−ベンゼン−1,4−ジアミン、N−4−{4−[4−(4−アミノ−フェニルアミノ)−ベンジル]−フェニル}−2−[4−(4−アミノ−フェニルアミノ)−シクロヘキサ−1,5−ジエニルメチル]−ベンゼン−1,4−ジアミン、N−[4−(7−アミノ−アクリジン−2−イルメチル)−フェニル]−ベンゼン−1,4−ジアミン、またはそれらの混合物であってよい。
【0068】
一実施態様において、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンは、ビス[p−(p−アミノアニリノ)フェニル]−メタン、2−(7−アミノ−アクリジン−2−イルメチル)−N−4−{4−[4−(4−アミノ−フェニルアミノ)−ベンジル]−フェニル}−ベンゼン−1,4−ジアミン、またはそれらの混合物であってよい。
【0069】
少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンは、アルデヒドをアミン(通常は4−アミノジフェニルアミン)と反応させることを含むプロセスによって調製することができる。得られるアミンは、少なくとも3つまたは4つの芳香族基、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有するアルキレン結合アミンとして記載することができる。
【0070】
アルデヒドは、脂肪族、脂環式または芳香族であってよい。脂肪族アルデヒドは、直鎖または分岐であってよい。適当な芳香族アルデヒドの例は、ベンズアルデヒドまたはo−バニリンを含む。脂肪族アルデヒドの例は、ホルムアルデヒド(またはその反応性等価物、例えばホルマリンまたはパラホルムアルデヒド)、エタナール、またはプロパナールを含む。通常、アルデヒドは、ホルムアルデヒドまたはベンズアルデヒドであってよい。
【0071】
あるいは、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンは、Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft(1910),43,728〜39に記載されている方法論によって調製することができる。
【0072】
一実施態様において、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンは、イサト酸無水物またはアルキル置換イサト酸無水物を少なくとも2つの芳香族基および反応性第1または第2アミノ基を有する芳香族アミンと反応させることを含むプロセスによって得られる/得ることができる。得られる材料は、アントラニル誘導体として記載することができる。
【0073】
一実施態様において、アントラニル誘導体は、イサト酸無水物またはアルキル置換イサト酸無水物、ならびにキシレンジアミン、4−アミノジフェニルアミン、1,4−ジメチルフェニレンジアミン、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる芳香族アミンを含む反応において調製することができる。一実施態様において、芳香族アミンは、4−アミノジフェニルアミンであってよい。
【0074】
アントラニル誘導体を調製する上記のプロセスは、20℃から180℃、または40℃から110℃の範囲の反応温度で実行してよい。プロセスは、溶媒の存在下で実行することもあり、しないこともある。適当な溶媒の例は、水、希釈油、ベンゼン、t−ブチルベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、またはそれらの混合物を含む。反応は、空気中または不活性雰囲気中いずれかで行ってもよい。適当な不活性雰囲気の例は、窒素またはアルゴン(通常は窒素)を含む。
【0075】
カルボン酸官能化重合体
アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンとカルボン酸官能化重合体との反応生成物であってよい。得られる生成物は、アミン官能化カルボン酸官能化重合体であるとして記載することができる。
【0076】
カルボン酸官能化重合体主鎖は、単独重合体または共重合体であってよく、但し、少なくとも1つのカルボン酸官能基またはカルボン酸官能基の反応性等価物(例えば無水物またはエステル)を含む。カルボン酸官能化重合体は、主鎖に、重合体主鎖内に、または重合体主鎖の末端基としてグラフトされたカルボン酸官能基(またはカルボン酸官能基の反応性等価物)を有してよい。
【0077】
カルボン酸官能化重合体は、ポリイソブチレン−無水コハク酸、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体のエステル、アルファオレフィン−無水マレイン酸共重合体、あるいは(i)スチレン−エチレン−アルファオレフィン重合体、(ii)水素化アルケニルアリール共役ジエン共重合体((すなわち、水素化アルケニルアレーン共役ジエン共重合体、特にスチレン−ブタジエンの水素化共重合体)、(iii)無水マレイン酸でグラフトされたポリオレフィン(特にエチレン−プロピレン共重合体)、または(iv)イソプレン重合体(特に非水素化イソブチレン−イソプレン共重合体もしくは水素化スチレン−イソプレン重合体)、またはそれらの混合物の無水マレイン酸グラフト共重合体であってよい。
【0078】
本明細書に記載されているカルボン酸官能化重合体は、潤滑剤技術において公知である。例えば、
(i)米国特許第6,544,935号から、無水マレイン酸およびスチレンを含む重合体のエステルが知られている。
【0079】
(ii)国際公開第01/30947号に、グラフト化スチレン−エチレン−アルファオレフィン重合体が教示されている。
【0080】
(iii)イソブチレンおよびイソプレンから誘導される共重合体が分散剤を調製する際に用いられ、国際公開第01/98387号に報告されている。
【0081】
(iv)独国特許発明第3,106,959号、ならびに米国特許第5,512,192号および第5,429,758号を含む複数の参考文献に、グラフト化スチレン−ブタジエンおよびスチレン−イソプレン共重合体が記載されている。
【0082】
(v)米国特許第4,234,435号、第3,172,892号、第3,215,707号、第3,361,673号、および第3,401,118号を含む多数の刊行物に、ポリイソブチレン無水コハク酸が記載されている。
【0083】
(vi)米国特許第4,632,769号、第4,517,104号、および第4,780,228号に、グラフト化エチレン−プロピレン共重合体が記載されている。
【0084】
(vii)米国特許第5,670,462号に、(アルファ−オレフィン無水マレイン酸)共重合体のエステルが記載されている。
【0085】
(viii)米国特許第7,067,594号、および第7,067,594号、ならびに米国特許出願公開第2007/0293409号に、イソブチレンと共役ジエンとの共重合体(例えばイソブチレン−イソプレン共重合体)が記載されている。
【0086】
(ix)米国特許第5,798,420号、および第5,538,651号に、エチレン、プロピレンおよび非共役ジエン(例えばジシクロペンタジエンまたはブタジエン)の三元重合体が記載されている。
【0087】
通常、ジエン、例えばブタジエンまたはイソプレン)を含む(iii)、(iv)および(viii)において言及されている重合体は、部分的にまたは全体的に水素化されている。
【0088】
R.M.MortierおよびS.T.Orszulik編、Blackie Academic&Professionalによって刊行された「Chemistry and Technology of Lubricants,Second Edition」に、重合体主鎖の多くが記載されている。特に、144〜180頁に、重合体主鎖(i)〜(iv)および(vi)〜(viii)の多くが考察されている。
【0089】
本発明の重合体主鎖(ポリイソブチレンを除く)は、最大150,000以上、例えば1,000または5,000から150,000または120,000または100,000であってよい数平均分子量(ゲル透過クロマトグラフィー、ポリスチレン標準による)を有してよい。適当な数平均分子量範囲の例は、10,000から50,000、または6,000から15,000、または30,000から50,000を含む。一実施態様において、重合体主鎖は、5,000より大きな、例えば5000超から150,000の数平均分子量を有する。上記で特定した分子量限界値の他の組み合わせも考えられる。
【0090】
本発明の重合体主鎖がポリイソブチレンのとき、その数平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィー、ポリスチレン標準による)は、350から5000、または550から3000、または750から2500であってよい。(従って、ポリイソブチレン無水コハク酸は、前述の分子量のいずれかを有するポリイソブチレンから誘導してよい)。市販のポリイソブチレン重合体は、550、750、950〜1000、1550、2000、または2250の数平均分子量を有する。市販のポリイソブチレン重合体のあるものは、異なる重量の1つ以上のポリイソブチレン重合体をブレンドすることによって上記の数平均分子量を得ることができる。
【0091】
一実施態様において、生成物は、カルボン酸官能化重合体を、少なくとも3つまたは4つの芳香族基、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有するアミン官能化添加剤と反応させることによって得られればよい/得ることが可能であればよい。
【0092】
少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミン官能化添加剤は、公知の反応条件下でカルボン酸官能化重合体と反応させることができる。カルボン酸官能化重合体のイミドおよび/またはアミドを形成するための反応条件は、当業者に公知である。
【0093】
カルボン酸官能化重合体を、少なくとも3つまたは4つの芳香族基、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有するアミンと反応させることによって得られる/得ることができるアミン官能化カルボン酸官能化重合体は、特定の実施態様において、式(4)および/または(5)によって表すことができる。
【0094】
【化7】

または
【0095】
【化8】

式中、各変数は独立であり、
、RおよびUは、既に記載されており、
BBは、重合体主鎖であってよく、ポリイソブチレン、あるいは(i)水素化アルケニルアリール共役ジエン共重合体(特に、スチレン−ブタジエンの水素化共重合体)、(ii)ポリオレフィン(特にエチレン−アルファオレフィン、例えばエチレン−プロピレン共重合体)、(iii)水素化イソプレン重合体(特に水素化スチレン−イソプレン重合体)、または(iv)イソプレンとイソブチレンとの共重合体、の共重合体であってよい。BBは、式(4)および(5)に示されているように、1つのコハク酸イミド基で置換されていてもよく、または複数のコハク酸イミド基で置換されていてもよい。一実施態様において、BBは、イソプレンとイソブチレンとの共重合体であってよい。
【0096】
式(4)および(5)に加えて、三量体、四量体、それ以上の量体、またはそれらの混合物を含む追加の構造も形成することができる。式(4)および(5)に示されているアミノ基は、全体としてまたは部分として、式(2a)、(3)、(3a)のアミン、またはそれらの混合物によって置き換えてもよい。
【0097】
BBがポリイソブチレンであってよいとき、得られるカルボン酸官能化重合体は、通常、ポリイソブチレン無水コハク酸であってよい。通常、式(1)に定義されているwは、1から5、または1から3であってよい。
【0098】
BBがポリイソブチレン以外であってよく、BBにグラフトされた無水マレイン酸(または他のカルボン酸官能基)を有してよいとき、グラフトされた無水マレイン酸基の1つ以上は、アミンと反応した後の本発明のアミンのコハク酸イミドであってよい。コハク酸イミド基の数は、1から40、または2から40、または3から20であってよい。
【0099】
アミン官能化カルボン酸官能化重合体は、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体のエステル、アルファ−オレフィン無水マレイン酸共重合体、またはそれらの混合物から誘導されるカルボン酸官能化重合体を、少なくとも3つまたは4つの芳香族基、少なくとも1つの−NH官能基、および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有するアミンと反応させることによって得られればよい/得ることが可能であればよい。通常、この種類の生成物は、交互共重合体として記載することができる。交互共重合体内で、無水マレイン酸から誘導される基の1つ以上が、式(6)によって表される基を有することができる。
【0100】
【化9】

式中、R、RおよびUは、既に記載され、式(6)の基は、上記のマレイン酸環構造上に示されている波形結合の一方または両方によって重合体主鎖の成分に結合することができる。一方の波形結合だけが重合体に結合しているとき、第2の波形結合は水素と結合することができる。
【0101】
式(6)におけるアミン含有基も、式(3)におけるアミン、またはその混合物によって置き換えることができる。
【0102】
一実施態様において、アミン官能化カルボン酸官能化重合体は、ポリイソブチレン重合体主鎖(下記の式7においてPIBによって表されている)から誘導することができる。ポリイソブチレン重合体主鎖のより詳細な記載が、本記載中に既に記載されている。
【0103】
ポリイソブチレン、アントラニル誘導体、および4−アミノジフェニルアミンから誘導されるアントラニル誘導体の適当な構造の例は、式(7)によって表すことができる。
【0104】
【化10】

一実施態様において、アミン官能化カルボン酸官能化重合体は、芳香族アミンの1つからおよび非ポリイソブチレン重合体主鎖から誘導することができる。4−アミノジフェニルアミンから誘導されるアントラニル誘導体の適当な構造の例は、式(8)によって表すことができる。
【0105】
【化11】

式中、BBは、重合体であってよい(通常、BBは、エチレン−プロピレン共重合体から誘導されるエチレン−プロピレン共重合体であってよい)。図示されているように、BBは、無水マレイン酸でグラフトされ、官能化されてイミド基を形成し、uは、[]内のグラフト化単位の数であり、通常、uは、1から2000、または1から500、または1から250、または1から50、1から20、1から10、または1から4の範囲であってよい。
【0106】
国際出願PCT/US2008/082944号(米国特許仮出願第60/987499号を原出願とする)に、アミン官能化カルボン酸官能化重合体のより詳細な記述が記載されている。特に、[0013]から[0021]、[0027]から[0091]、および段落[0111]から[0135]に開示されている調製実施例1から25を参照。この開示は、アミン官能化カルボン酸官能化重合体の可能な構造および調製の方法に関する綿密な考察を提供する。
【0107】
ポリアミンとのさらなる反応
一実施態様において、任意選択として、アミン官能化添加剤の構造内に追加のポリアミンまたはモノアミンが存在してよい。追加のポリアミンまたはモノアミンは、アミン官能化添加剤の全酸価(TAN:totoal acid number)を調節する上で助けとすることができる。
【0108】
アミン官能化添加剤(すなわち、芳香族アミンカルボン酸官能化重合体)と、2つ以上の反応部位を有する追加のポリアミンとの反応は、ゲル化、非相溶性、または油溶性不足によって証明される重合体の顕著な架橋を回避するのに十分なほどにカルボン酸官能性が低いか、またはポリアミン電荷が高い限り、可能であり、有用である。あるいは、当業者は、十分なモノアミンまたはキャッピングアミンをポリアミンと組み合わせて用いてゲル化、非相溶性または油溶性不足を回避することができる。
【0109】
適当なポリアミンの例は、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、N−メチルエチレンジアミン、N−獣脂(C16〜C18)−1,3−プロピレンジアミン、N−オレイル−1,3−プロピレンジアミン、ポリエチレンポリアミン(例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよび「ポリアミン残渣」(または「アルキレンポリアミン残渣」))を含む。一実施態様において、ポリアミンは、ポリアルキレンポリアミンを含む。式(1)のポリアミンの1つから誘導される添加剤は、分散剤特性を有すると考えられる。
【0110】
一般に、アルキレンポリアミン残渣は、2%未満、通常は1%未満(重量基準)、1気圧において約200℃未満で沸騰する材料を有することを特徴としてよい。そのようなエチレンポリアミン残渣の通常の試料は、Freeport,TexasのDow Chemical Companyから「HPA−X(商標)」として、またはHuntsmanから「E−100(商標)」として得ることができる。これらのアルキレンポリアミン残渣は、二塩化エチレンプロセスを用いて調製することができる。
【0111】
あるいは、キャッピングアミン(すなわち単反応形、単縮合形、非架橋形)を、単独で用いてもよく、または非キャッピングポリアミンと組み合わせて用いてもよい。
【0112】
アミンでの重合体のキャッピング
任意選択として、アミン官能化添加剤は、キャッピングアミン、またはそれらの混合物とさらに反応することができる。キャッピングアミンを用いて、本発明のアミン官能化添加剤の全酸価(本明細書においては以後TANと称される)を調整(通常はTANの低下)することができる。必要なら、キャッピングアミンは、他の添加剤、例えば洗剤に対するいずれかの悪影響を最小にする量で未反応カルボキシル基をキャップすることができる。悪影響は、ゲルの形成を生じさせるアミン含有添加剤と洗剤との間の相互作用を含んでよい。一実施態様において、アミン官能化添加剤は、キャッピングアミンとさらに反応することができる。一実施態様において、アミン官能化添加剤は、キャッピングアミンとさらに反応しない。
【0113】
一実施態様において、キャッピングアミンは、ジメチルアミノプロピルアミン、アニリン、4−アミノジフェニルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、3,4−ジメトキシフェネチルアミン、1,4−ジメチルフェニレンジアミン、およびそれらの混合物からなる群から選ぶことができる。これらのキャッピングアミンおよび他のキャッピングアミンのあるものは、分散性および他の特性に加えて、重合体に酸化防止剤性能も付与することができる。
【0114】
一実施態様において、キャッピングアミンは、ジメチルアミノプロピルアミン、アニリン、4−アミノジフェニルアミン、1,4−ジメチルフェニレンジアミン、およびそれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0115】
キャッピングプロセスは、40℃から180℃、または50℃から170℃の範囲の反応温度において実行してよい。
【0116】
反応は、溶媒の存在下で実行することもあり、実行しないこともある。適当な溶媒の例は、希釈油、ベンゼン、t−ブチルベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、またはそれらの混合物を含む。
【0117】
反応は、空気または不活性雰囲気のどちらの中で行ってもよい。適当な不活性雰囲気の例は、窒素またはアルゴン、通常は窒素を含む。
【0118】
米国特許出願第61/118012号の13頁の段落[0058]から21頁の段落[0088]に、キャッピングアミンのより詳細な記述が記載されている。
【0119】
潤滑粘度の油
潤滑組成物は、潤滑粘度の油を含む。そのような油は、天然油および合成油、水素化分解、水素化、および水素化精製から誘導した油、未精製油、精製油、再精製油、またはそれらの混合物を含む。国際公開第2008/147704号の段落[0054]から[0056]に、未精製油、精製油、および再精製油のより詳細な記載が提供されている。国際公開第2008/147704号の段落[0058]から[0059]に、天然潤滑油および合成潤滑油のより詳細な記述がそれぞれ記載されている。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって製造してもよく、通常、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであってよい。一実施態様において、油は、フィッシャー・トロプシュ気体−液体合成手順によって調製してもよく、他の気体−液体油であってもよい。
【0120】
潤滑粘度の油は、「Appendix E − API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils」の2008年4月版の1.3節の副見出し1.3「Base Stock Catagories」下に規定されているように定めることもできる。一実施態様において、潤滑粘度の油は、API II類またはIII類の油であってよい。
【0121】
存在する潤滑粘度の油の量は、通常、100重量%から本発明の化合物と他の機能性添加剤との合計量を減じた後に残る差し引き量である。
【0122】
潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に調合した潤滑剤の形であってよい。本発明の潤滑組成物(本明細書に開示する添加剤を含んでいる)が全体または一部を追加の油と組み合わせて仕上げの潤滑剤を形成することができる)濃縮物の形なら、潤滑粘度の油および/または希釈油に対する添加剤の比は、重量で1:99から99:1、または重量で80:20から10:90の範囲を含む。
【0123】
他の性能添加剤
本組成物は、任意選択として、他の性能添加剤を含む。他の性能添加剤は、金属不活性化剤、粘度調整剤、洗剤、摩擦調整剤、磨耗防止剤、腐食抑制剤、分散剤(上記に記載されている本発明の分散剤以外)、分散剤粘度調整剤(上記に記載されている本発明のアミン官能化添加剤以外)、極圧添加剤、酸化防止剤、発泡防止剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤の少なくとも1つ、およびそれらの混合物を含む。通常、完全に調合した潤滑油は、これらの機能性添加剤の1つ以上を含む。
【0124】
一実施態様において、潤滑組成物は、他の添加剤をさらに含む。一実施態様において、本発明は、磨耗防止剤、分散剤粘度調整剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、過塩基性洗剤の少なくとも1つ、またはそれらの混合物をさらに含む潤滑組成物を提供する。
【0125】
一実施態様において、本発明の潤滑組成物は、分散剤粘度調整剤をさらに含む。分散剤粘度調整剤は、潤滑組成物の0重量%から5重量%、または0重量%から4重量%、または0.05重量%から2重量%存在してよい。
【0126】
分散剤粘度調整剤は、官能化ポリオレフィン、例えば無水マレイン酸などのアシル化剤およびアミンで官能化したエチレン−プロピレン共重合体、アミンで官能化したポリメタクリレート、またはアミンと反応させたスチレン−無水マレイン酸共重合体を含んでよい。国際公開第2006/015130号、または米国特許第4,863,623号、第6,107,257号、第6,107,258号、および第6,117,825号に分散剤粘度調整剤のより詳細な記載が開示されている。一実施態様において、分散剤粘度調整剤は、米国特許第4,863,623号(カラム2、15行目からカラム3、52行目参照)または国際公開第2006/015130号(2頁、段落[0008]参照)に記載されているものを含んでよい。
【0127】
米国特許第4,863,623号の分散剤粘度調整剤は、15から80モルパーセントのエチレン、20から85モルパーセントのC3〜10アルファモノオレフィン、および0から15モルパーセントの非共役ジエンまたはトリエンの重合体であって、5000から500,000の範囲の平均分子量を有する重合体へのオレフィンカルボン酸アシル化剤のグラフト化、および前記グラフト化重合体をアミンとさらに反応させることによって調製すると記載することができる。重合体を少なくとも1つのオレフィンカルボン酸アシル化剤と反応させてカルボン酸アシル化機能を有する1つ以上のアシル化反応中間体を形成させ、前記反応性中間体をアミン、例えばN−アリールフェニレンジアミン、アミノチアゾール、アミノカルバゾール、アミノインドール、およびアミノピロール、アミノ−インダゾリノン、アミノメルカプトトリアゾール、ならびにアミノピリミジンから選ばれるアミノ−芳香族ポリアミン化合物と反応させることによって添加剤を形成させる。
【0128】
国際公開第2006/015130号の分散剤粘度調整剤は、(a)カルボン酸官能基またはその反応性等価物を含む重合体であって、5,000より大きな数平均分子量を有する重合体と、(b)前記カルボン酸官能基と縮合してペンダント基および少なくとも1つの窒素、酸素または硫黄原子を含む少なくとも1つの追加の基を提供することができる少なくとも1つのアミノ基を含む少なくとも1つの芳香族アミンを含むアミン成分と、の反応生成物として記載することができ、前記芳香族アミンは、(i)ニトロ置換アニリン、(ii)−C(O)NR−基、−C(O)O−基、−O−基、−N=N−基、または−SO−基によって結合した2つの芳香族部分を含むアミン、ここで、Rは、水素またはヒドロカルビルであり、前記芳香族部分の1つは前記縮合可能なアミノ基を有する、(iii)アミノキノリン、(iv)アミノベンゾイミダゾール、(v)N,N−ジアルキルフェニレンジアミン、および(vi)環置換ベンジルアミンからなる群から選ばれる。通常、国際公開第2006/015130号の重合体は、エチレン−プロピレン共重合体、またはエチレンと高級オレフィンとの共重合体であってよく、高級オレフィンは、3から10の炭素原子を有するアルファ−オレフィンである。国際公開第2006/015130号の分散剤粘度調整剤は、段落[0065]から[0073](これらの段落は実施例1から9に関する)に開示されているように調製される。
【0129】
一実施態様において、摩擦調整剤は、アミンの長鎖脂肪酸誘導体、長鎖脂肪酸エステル(すなわち長鎖脂肪酸とアルコールとの誘導体)、または長鎖脂肪族エポキシド(すなわち長鎖脂肪酸とエポキシドとの誘導体)、脂肪族イミダゾリン、アルキルリン酸のアミン塩、脂肪族アルキル酒石酸エステル、脂肪族アルキル酒石酸イミド、および脂肪族アルキル酒石酸アミドからなる群から選んでよい。摩擦調整剤は、潤滑組成物の0重量%から6重量%、または0.05重量%から4重量%、または0.1重量%から2重量%存在してよい。
【0130】
一実施態様において、本発明は、リン含有磨耗防止剤をさらに含む潤滑組成物を提供する。通常、リン含有磨耗防止剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスファート、またはその混合物であってよい。亜鉛ジアルキルジチオホスファートは、当分野において公知である。磨耗防止剤は、潤滑組成物の0重量%から15重量%、または0.1重量%から10重量%、または0.5重量%から5重量%存在してよい。
【0131】
一実施態様において、本発明は、モリブデン化合物をさらに含む潤滑組成物を提供する。モリブデン化合物は、モリブデンジアルキルジチオホスファート、モリブデンジチオカルバマート、モリブデン化合物のアミン塩、およびそれらの混合物からなる群から選んでよい。モリブデン化合物は、0から1000ppm、または5から1000ppm、または10から750ppm、5ppmから300ppm、または20ppmから250ppmのモリブデンを有する潤滑組成物を提供してよい。
【0132】
一実施態様において、本発明は、過塩基性洗剤をさらに含む潤滑組成物を提供する。過塩基性洗剤は、硫黄非含有フェナート、硫黄含有フェナート、スルホナート、サリキサラート、サリチラート、およびそれらの混合物からなる群から選んでよい。通常、過塩基性洗剤は、フェナート、硫黄含有フェナート、スルホナート、サリキサラート、およびサリチラートのナトリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩であってよい。過塩基性フェナートおよびサリチラートは、通常、180から450TBNの全アルカリ価を有する。過塩基性スルホナートは、通常、250から600、または300から500の全アルカリ価を有する。過塩基性洗剤は、当分野において公知である。過塩基性洗剤は、潤滑組成物の0重量%から15重量%、または0.1重量%から10重量%、または0.2重量%から8重量%存在してよい。
【0133】
一実施態様において、潤滑組成物は、酸化防止剤、またはその混合物を含む。酸化防止剤は、潤滑組成物の0重量%から15重量5、または0.1重量%から10重量%、または0.5重量%から5重量%存在してよい。
【0134】
酸化防止剤は、硫黄化オレフィン、アルキル化ジフェニルアミン(通常はジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン)、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(例えばモリブデンジチオカルバマート)、またはそれらの混合物を含む。
【0135】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、多くの場合、立体障害基としてセカンダリーブチルおよび/またはターシャリーブチル基を含む。フェノール基は、ヒドロカルビル基(通常は直鎖または分岐アルキル)および/または第2の芳香族基と結合している架橋基でさらに置換されていてよい。適当なヒンダードフェノール酸化防止剤の例は、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを含む。一実施態様において、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってよく、例えばCibaからのIrganox(商標)L−135を含んでよい。米国特許第6,559,105号に、適当なエステル含有ヒンダードフェノール酸化防止剤の化学のより詳細な記載が見いだされる。
【0136】
適当な摩擦調整剤の例は、アルコールまたはエポキシドとのアミンの長鎖脂肪酸誘導体、脂肪族イミダゾリン、例えばカルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物、アルキルリン酸のアミン塩、脂肪族アルキル酒石酸エステル、脂肪族アルキル酒石酸イミド、または脂肪族アルキル酒石酸アミドを含む。
【0137】
摩擦調節剤は、硫化脂肪族化合物およびオレフィン、モリブデンジアルキルジチオホスファート、モリブデンジチオカルバマート、ヒマワリ油、またはポリオールのモノエステル、ならびに脂肪脂肪族カルボン酸(fatty aliphatic carboxylic acid)などの材料も包含してよい。
【0138】
一実施態様において、摩擦調節剤は、長鎖脂肪酸エステルであってよい。別の実施態様において、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステルであってよく、別の実施態様において、長鎖脂肪酸エステルは、(トリ)グリセリドであってよい。
【0139】
他の機能性添加剤、例えば腐食抑制剤は、国際公開第2006/047486号として公開されている米国特許出願第05/038319号の段落5から8に記載されているもの、オクチルアミンオクタノアート、ドデセニルコハク酸または無水物および脂肪酸、例えばオレイン酸とポリアミンとの縮合生成物を含む。一実施態様において、腐食抑制剤は、Synalox(登録商標)腐食抑制剤を含む。Synalox(登録商標)腐食抑制剤は、プロピレンオキシドの単独重合体または共重合体であってよい。Synalox(登録商標)腐食抑制剤は、Dow Chemical Companyによって刊行されている様式第118−01453−0702 AMSの製品カタログにより詳細に記載されている。この製品カタログは、「SYNALOX Lubricants,High−Performance Polyglycols for Demanding Applications」という標題である。
【0140】
ベンゾトリアゾールの誘導体(通常はトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾール、または2−アルキルジチオベンゾチアゾールを含む金属不活性化剤、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシル、および任意選択として酢酸ビニルの共重合体を含む発泡防止剤、リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)重合体を含む解乳化剤、無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤が有用なことがある。本発明の組成物中で有用なことがある発泡防止剤は、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシル、および任意選択として酢酸ビニルの共重合体、リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)重合体を含む解乳化剤を含む。
【0141】
本発明の組成物中で有用なことがある流動点降下剤は、ポリアルファオレフィン、無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドを含む。
【0142】
さまざまな実施態様において、本潤滑組成物は、下表に記載する組成を有してよい。
【0143】
【表1】

産業用途
本潤滑組成物は、内燃機関中で利用することができる。内燃機関は、排気ガス再循環システムを有してもよく、有しなくてもよい。
【0144】
一実施態様において、内燃機関は、ディーゼル燃料エンジン(通常は高出力ディーゼルエンジン)、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、またはガソリン/アルコール混合燃料エンジンであってよい。一実施態様において、内燃機関は、ディーゼル燃料エンジンであってよく、別の実施態様において、ガソリン燃料エンジンであってよい。
【0145】
内燃機関は、2ストロークエンジンまたは4ストロークエンジンであってよい。適当な内燃機関は、船舶ディーゼルエンジン、航空機ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、ならびに自動車およびトラックエンジンを含む。
【0146】
内燃機関のための潤滑組成物は、硫黄、リン、または硫酸塩灰分(ASTM D−874)含有率に関わらず、いかなるエンジン潤滑剤にも適したものとすることができる。エンジン油潤滑剤の硫黄含有率は、1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下、または0.3重量%以下であってよい。一実施態様において、硫黄含有率は、0.001重量%から0.5重量%、または0.01重量%から0.3重量%の範囲であってよい。リン含有率は、0.2重量%以下、または0.12重量%以下、または0.1重量%以下、または0.085重量%以下、または0.08重量%以下、あるいは0.06重量%以下、0.055重量%以下、または0.05重量%以下でさえあってよい。一実施態様において、リン含有率は、100ppmから1000ppm、または200ppmから600ppmであってよい。全硫酸塩灰分含有率は、2重量%以下、または1.5重量%以下、または1.1重量%以下、または1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下、または0.4重量%以下であってよい。一実施態様において、硫酸塩灰分含有率は、0.05重量%から0.9重量%、または0.1重量%から0.2重量%または0.45重量%であってよい。
【0147】
一実施態様において、潤滑組成物は、エンジン油であってよく、潤滑組成物は、(i)0.5重量%以下の硫黄含有率、(ii)0.1重量%以下のリン含有率、および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含有率の少なくとも1つを有することを特徴としてよい。
【0148】
以下の実施例は、本発明の具体例を提供する。これらの実施例は、包括的ではなく、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0149】
調製実施例1(EX1)は、国際出願PCT/US2008/082944号(米国特許仮出願第60/987499号を原出願とする)の調製実施例8と同じである。トルエン中のアミノジフェニルアミンの溶液をイサト酸無水物とともに、アミノジフェニルアミンとイサト酸無水物とが1:1の比になるように仕込み、窒素雰囲気下で還流温度に加熱し、6時間撹拌する。冷却後、得られる生成物をろ過によって単離し、生成物(暗青色粉末)を得る。
【0150】
上部撹拌装置、温度計測用管、窒素ラインを接続した液面下吹き込み管、およびコンデンサー付きDean−Starkトラップを備えた2Lの4つ口フラスコに、3000gの従来のポリイソブチレン無水コハク酸(ポリイソブチレンは2000の数平均分子量を有する)および3507gの希釈油を仕込み、110Cに加熱する。上記で調製した暗青色の粉末の539gを加え、温度を155℃に上げ、6時間保持した。生成物をろ過し、1.07重量%の窒素含有率および6629gの収量を有する粘稠な油を得る。
【0151】
調製実施例2(EX2)は、米国特許仮出願第61/118012号の調製実施例2と同じである。上部撹拌装置、温度計測用管、窒素ライン付き滴下ロート、およびコンデンサーを備えた1リットルの4つ口フラスコに、500mlの2M塩酸を加える。184.2gの4−アミノジフェニルアミンを加え、フラスコを75℃に加熱する。次に、滴下ロートに40.5gの37%ホルムアルデヒド溶液を仕込み、この溶液を30分間かけてフラスコに滴下して加える。フラスコを100℃に4時間維持する。次に、フラスコを周囲温度に冷却する。水中の50/50重量/重量の水酸化ナトリウム溶液80gを30分間かけて加える。反応の終わりに、ろ過によって固体生成物が得られる。
【0152】
上部撹拌装置、温度計測用管、窒素ライン付き液面下吹き込み管、およびコンデンサー付きDean−Starkトラップを備えた3リットルの4つ口フラスコにポリイソブチレン無水コハク酸(1270.0g)(ポリイソブチレンは2000の数平均分子量を有する)および希釈油(1400.1g)を仕込む。フラスコを90℃に加熱する。次に、固体生成物(442.0g)をゆっくり加える。次に、温度を110℃に上げ、水が除かれるまで保持する。次に、温度を160℃に上げ、10時間保持する。フラスコに珪藻土ろ過助材を少々加え、次に、第2の珪藻土ろ過助材の部分を通してフラスコ内容物をろ過する。得られる生成物は、0.65重量%の窒素含有率を有する暗色の油である。
【0153】
SAE 15W−40エンジン潤滑剤
1.3重量%の酸化防止剤(硫化オレフィン、ヒンダードフェノール、およびアルキル化ジフェニルアミンの混合物)、1重量%の亜鉛ジアルキルジチオホスファート、2.8重量%の洗剤混合物(カルシウムスルホナートおよびカルシウムフェナートを含む)を含む一連のSAE 15W−40エンジン潤滑剤を調製する。潤滑剤は、指定された量のコハク酸イミド分散剤と、調製実施例1または調製実施例2のどちらかの生成物とを含む。コハク酸イミド分散剤および調製実施例1および2の生成物の量を以下の表に示す。
【0154】
【表2】

脚注:
CE1、CE2、CE3およびCE4は、SAE 15W−40潤滑剤比較例である。
【0155】
コハク酸イミド分散剤は、50重量%の希釈油を含む量で示されている。
【0156】
調製物1および調製物2の生成物は、50重量%の希釈油を含む量で示されている。
【0157】
煤試験
煤試験において潤滑剤を評価する。1体積%の硫酸と硝酸との17.4M混合物(10:1)(TBNを11減少させると計算される酸の量)の添加によって潤滑剤にストレスを加える。酸ストレスを加えた試料を6重量%のカーボンブラック(煤モデル)および5重量%のディーゼル燃料でトップ処理する。次に、潤滑剤混合物をティッシュマイザー中でホモジナイズしてスラリーとする。次に、スラリーに超音波照射してカーボンブラックを完全に分散させる。試料中に空気中0.27%の亜酸化窒素を0.5cc分−1吹き込みながら、分散試料を90℃で7日間保存する。1日に1回、25マイクロリットルの分量の試料をクロマトグラフィーペーパーに載せる。ろ紙を90℃で2時間硬化した後、外側のオイルスポットに対する内側のカーボンブラック含有スポットの直径の比を測定し、7日間にわたっての平均とし、煤比として表に報告する。煤比が高いほど、煤分散改善を示す。得られた結果は、以下の通りである。
【0158】
【表3】

結果は、高い煤比は、より良い煤分散と相関することを示している。分散剤およびアミン官能化添加剤の高度に効率的な処理速度を組み合わせて用いると、高い煤比が観測される。
【0159】
Mack T−11試験
コハク酸イミド分散剤の量以外は上記に記載したものと同様な一連のSAE 15W−40潤滑剤を調製し、調製実施例1および2の生成物を以下の表に示す。
【0160】
【表4】

脚注:
CE5は、SAE 15W−40潤滑剤である。
【0161】
EX9は、エチレン−プロピレン共重合体から誘導した分散剤粘度調整剤をさらに2重量%含む。
【0162】
ASTM標準手順D7156に記載されている方法論によって、潤滑剤のMack T−11性能を評価する。通常、12mm/s(cSt)粘度上昇の点において、高い煤含有率を有する試料の場合ほど良好な結果が得られる。得られた結果は、以下である。
【0163】
【表5】

【0164】
シールデータ
次に、SAE 15W−40潤滑剤をシール試験において評価してAK6 Viton(登録商標)シールの引張り強さおよび破断伸び率を評価する。評価は、Mercedes−Benz供給規格(MB DBL 6674)に記載されている方法論によって行われる。得られるシール引張り強さおよび破断伸び率の結果は、以下である。
【0165】
【表6】

【0166】
提示したデータは、本発明の潤滑組成物が、シールと適合しながら、煤によって媒介される油の増粘を軽減することができることを示している。絶対数が小さいほど、潤滑組成物によるシールへの損傷が少ないことを示している。
【0167】
上記に記載した材料のいくつかが最終調合物中で相互作用し、その結果、最終調合物中の成分が最初に加えたものと異なる場合があることが知られている。それによって形成される生成物は、本発明の潤滑組成物をその意図した使用において使用したときに形成される生成物を含めて、簡単な記載で表すことができないことがある。それでも、すべてのそのような変更形および反応生成物が本発明の範囲内に含まれ、本発明は、上記に記載した成分を混ぜることによって調製した潤滑組成物を包含する。
【0168】
上記で参照した文書のそれぞれは、参照によって本明細書に組み込まれる。実施例中を除いて、または特に明記した場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数、および類似物を特定する、本記載におけるすべての数値的な量は、語「約」によって修飾されていると理解するべきである。特に明記しない限り、本明細書において参照されるそれぞれの化学物質または組成物は、異性体、副生物、誘導体、および市販等級品中に存在すると通常理解されるような他の材料を含むことがある市販等級材料であると解釈するべきである。しかし、各化学成分の量は、特に明記しない限り、市販材料中に慣習として存在することがある溶媒または希釈油をすべて除いて示してある。本明細書において示した上限量および下限量、範囲、比の限界は、独立に組み合わせてよいことを理解するべきである。同様に、本発明の各要素に関する範囲および量は、他の要素のいずれに関する範囲または量とともに用いてもよい。
【0169】
本明細書において用いられる用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者によく知られているその普通の意味で用いられている。詳しくは、この用語は、分子の残りに直接結合している炭素原子を有し、主として炭化水素の性格を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例は、脂肪族、脂環式、および芳香族置換基を含む炭化水素置換基、置換炭化水素置換基、すなわち本発明の状況において置換基の主として炭化水素の性質を変化させない非炭化水素基を含む置換基、ならびにヘテロ置換基、すなわち、同様に主として炭化水素の性格を有するが、環または鎖中に炭素以外を含む置換基を含む。国際公開第2008147704号の段落[0118]から[0119]に、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」のより詳細な定義が記載されている。
【0170】
本発明をその好ましい実施態様に関して説明してきたが、本明細書を読めばこれらの実施態様のさまざまな変更形が当業者に明らかになると理解するべきである。従って、本明細書に開示されている発明は、そのような変更形を添付の請求項の範囲に属するとして包含するものとすることを理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘度の油、分散剤、およびアミン官能化添加剤を含む潤滑組成物であって、該アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンから誘導される、潤滑組成物。
【請求項2】
前記アミン官能化添加剤は、少なくとも4つの芳香族基を有するアミンから誘導され、少なくとも1つの−NH官能基および少なくとも2つの第2または第3アミノ基を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有する前記アミンは、下式
【化12】

によって表され、
式中、各変数は独立であり、
は、水素またはC1〜5アルキル基であり、
は、水素またはC1〜5アルキル基であり、
Uは、脂肪族、脂環式または芳香族基であり、但し、Uが脂肪族のとき、該脂肪族基は、1から5、または1から2の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキレン基であってよく、
wは、1から10、または1から4、または1から2、または1である、請求項1から2の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有する前記アミンは、ビス[p−(p−アミノアニリノ)フェニル]−メタン、2−(7−アミノ−アクリジン−3−イルメチル)−N−4−{4−[4−(4−アミノ−フェニルアミノ)−ベンジル]−フェニル}−ベンゼン−1,4−ジアミン、またはそれらの混合物である、請求項1から3の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記アミン官能化添加剤は、少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有する前記アミンをカルボン酸官能化重合体と反応させることによって得られる/得ることができる生成物である、請求項1から4の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記アミン官能化添加剤は、(1)イサト酸無水物またはアルキル置換イサト酸無水物と、(2)少なくとも2つの芳香族基および第1アミノ基または反応性第2アミノ基を有する芳香族アミンとを反応させるステップを含むプロセスによって得られる/得ることができる少なくとも3つまたは4つの芳香族基を有するアミンから誘導される、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記カルボン酸官能化重合体は、ポリイソブチレン−無水コハク酸、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体のエステル、アルファオレフィン−無水マレイン酸共重合体、あるいは(i)スチレン−エチレン−アルファオレフィン重合体、(ii)水素化アルケニルアリール共役ジエン共重合体、(iii)無水マレイン酸でグラフトされたポリオレフィン、または(iv)水素化イソプレン重合体、もしくはそれらの混合物の無水マレイン酸グラフト共重合体である、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記カルボン酸官能化重合体は、ポリイソブチレン無水コハク酸である、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記ポリイソブチレン無水コハク酸は、350から5000、または550から3000、または750から2500の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される、請求項8に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記水素化アルケニルアリール共役ジエン共重合体は、スチレン−ブタジエンの水素化共重合体である、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
無水マレイン酸でグラフトされた前記ポリオレフィンは、エチレン−プロピレン共重合体である、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
前記水素化イソプレン重合体は、水素化スチレン−イソプレン重合体である、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
前記分散剤は、コハク酸イミド分散剤である、請求項1から12の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
前記コハク酸イミド分散剤は、脂肪族ポリアミン、またはその混合物から誘導される、請求項13に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
前記脂肪族ポリアミンは、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミン、またはそれらの混合物である、請求項14に記載の潤滑組成物。
【請求項16】
前記脂肪族ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミン塔底残渣、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項14または15の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項17】
前記潤滑組成物は、(i)0.5重量%以下の硫黄含有率、(ii)0.1重量%以下のリン含有率、および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含有率を有することを特徴とする、請求項1から16の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項18】
磨耗防止剤、分散剤粘度調整剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、過塩基性洗剤の少なくとも1つ、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項1から17の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項19】
前記摩擦調整剤は、アミンの長鎖脂肪酸誘導体、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪族エポキシド、脂肪族イミダゾリン、アルキルリン酸のアミン塩、脂肪族アルキル酒石酸エステル、脂肪族アルキル酒石酸イミド、および脂肪族アルキル酒石酸アミドからなる群から選ばれる、請求項18に記載の潤滑組成物。
【請求項20】
分散剤粘度調整剤をさらに含む、請求項1から19の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項21】
前記分散剤粘度調整剤は、15から80モルパーセントのエチレン、20から85モルパーセントのC3〜10アルファモノオレフィン、および0から15モルパーセントの非共役ジエンまたはトリエンの重合体へのオレフィンカルボン酸アシル化剤のグラフト化であって、該重合体は5000から500,000の範囲の平均分子量を有するグラフト化ならびに、該グラフト化した重合体をアミンとさらに反応させることによって調製される、請求項20に記載の潤滑組成物。
【請求項22】
前記分散剤粘度調整剤は、(a)カルボン酸官能基またはその反応性等価物を含む重合体であって、5,000より大きな数平均分子量を有する重合体と、(b)前記カルボン酸官能基と縮合してペンダント基、および少なくとも1つの窒素、酸素、または硫黄原子を含む少なくとも1つの追加の基を提供することができる、少なくとも1つのアミノ基を含む少なくとも1つの芳香族アミンを含むアミン成分との反応生成物であって、該芳香族アミンは、(i)ニトロ置換アニリン、(ii)−C(O)NR−基、−C(O)O−基、−O−基、−N=N−基、または−SO−基によって結合されている2つの芳香族部分を含むアミンであって、Rは、水素またはヒドロカルビルであり、該芳香族部分の1つは該縮合可能なアミノ基を有するアミン、(iii)アミノキノリン、(iv)アミノベンゾイミダゾール、(v)N,N−ジアルキルフェニレンジアミン、および(vi)環置換ベンジルアミンからなる群から選ばれる、請求項20に記載の潤滑組成物。
【請求項23】
リン含有磨耗防止剤をさらに含む、請求項1から22の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項24】
過塩基性洗剤をさらに含む、請求項1から23の任意の1項に記載の潤滑組成物。
【請求項25】
前記過塩基性洗剤は、フェナート、硫黄含有フェナート、スルホナート、サリキサラート、サリチラート、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項24に記載の潤滑組成物。
【請求項26】
内燃機関を潤滑剤する方法であって、該内燃機関に請求項1から25の任意の1項に記載の潤滑組成物を供給することを含む方法。

【公表番号】特表2012−519222(P2012−519222A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552089(P2011−552089)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025133
【国際公開番号】WO2010/099136
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】