説明

芳香族ケトンを含有する皮膚外用剤

【課題】美白効果を有し、経皮吸収性に優れた皮膚外用剤の提供。
【解決手段】経皮吸収作用を有するα,ε−ビス(γ−N−アシルグルタミル)リジンと、美白効果を有する下式の化合物とを組合せた皮膚外用剤。


(式中、R1、R2はアルキル基、R3は水素原子等、R4は芳香族性基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には、芳香族ケトンを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚におけるシミ、ソバカスや日焼け後の色素沈着は、皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)の活性化によりメラニン生成が著しく亢進した状態である。この様なメラノサイトの亢進に起因するメラニンの過剰産生を防止又は改善する目的で、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン又はカテコール等を配合した皮膚外用剤(特に美白剤)が知られている(例えば、非特許文献1、非特許文献2を参照)。しかしながら、これらの美白剤は何れも、美白効果、安定性及び安全性等の面から問題を有する場合が存したり、或いは、その効果が限られた症状にしか有効でなかったりする場合が存しており、これらの効果のみでは充分とは言えない状況にあると言える。又、美白作用の特徴としては、チロシナーゼ阻害効果、チロシナーゼ関連蛋白の分解、メラノサイトのデンドライトの伸長抑制によるメラニンの移送阻害など種々のものが存し、阻害点が多数存すると同時に阻害の回避経路も存し、単一な阻害では充分には効果を奏さない場合が存し、加えて、それぞれに適した化学構造が存すると考えられる。この様な観点に立って、本発明者らは、美白効果を有する新規の母核構造の化合物として、一般式(1)に表される化合物群を見出している。一般式(1)に表される化合物には、公知の化合物が存し、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノールであれば、前記美白作用以外に、抗酸化作用、プロスタグランディンの抑制を機序とする抗炎症作用、抗アレルギー作用や抗リウマチ作用を有することは知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献3、非特許文献4を参照)。この様な一般式(1)に表される化合物においては、前記の有用な性質が存するにもかかわらず、製剤成分との相溶性の問題から、実用製剤化に大きな課題が存した。かかる化合物を溶解せしめる方法として、ベンジルアルコールやセバシン酸ジイソプロピルなどの溶剤成分の使用が検討され(例えば、特許文献4を参照)、改善は見たが実用に適する製剤とはなり得なかった。溶状の一様性が確保できなければ、有効成分である一般式(1)に表される化合物の経皮吸収が阻害され、有効性が発現されないためである。又、仮に溶状の一様性が確保されても、皮膚という防御器官を、有効成分を通過せしめることは容易ならざる技術である。即ち、一般式(1)の経皮吸収性を向上せしめる技術の開発が望まれていたと言える。
【0003】
【化1】

一般式(1)
(但し、式中R1、R2はそれぞれ独立に炭素数3〜6のアルキル基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜4のアシル基又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4は芳香族性を有する基を表す。)
【0004】
経皮吸収促進という課題は、皮膚外用剤に於いては常に論議される課題であり、現在までに、種々の経皮吸収促進手段の開発が試みられている。例えば、油性ゲルの構築するカードハウス又はネットワーク構造を利用する方法(例えば、特許文献5を参照)、超音波を経皮吸収の駆動力として利用する方法(例えば、特許文献6を参照)、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤を利用する方法(例えば、特許文献7を参照)、ラウロイルサルコシンのような経皮吸収促進成分を利用する方法(例えば、特許文献8を参照)、リン脂質二重膜構造を有する球体の内部に内水相を有するリポソームやニオソームの内水相に薬剤を内包させて皮膚外用剤に配合する方法(例えば、特許文献9を参照)等が例示できる。これらの技術により、真皮への薬剤の到達性を向上させることは出来たが、充分とは言い難かったし、前記経皮吸収促進手段が、皮膚の防御機能そのものを損なう場合も少なくなかった。
【0005】
一方、ベシクルを利用した製剤としては、セラミドやフィトステロールなどの難溶性成分を安定に皮膚外用剤に配合させる技術が知られている(例えば、特許文献10、特許文献11を参照)。又、水と反応性を有する成分を内包させて、安定に水系の製剤に含有せしめる技術も知られている(例えば、特許文献12を参照)。しかしながら、これらのベシクル技術では、ベシクルを形成する界面活性剤がカチオン性界面活性剤であり、洗浄料以外に応用が困難であったり、ベシクル自身の安定性に問題のあるものが多かったりして、洗い流さない皮膚外用剤への応用は困難であった。
【0006】
他方、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン及び/又はその塩を含有するベシクルは全く知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開昭53−141265号公報
【特許文献2】特開昭63−008380号公報
【特許文献3】特表平06−501919号公報
【特許文献4】特開昭63−502281号公報
【特許文献5】特開2000−103722号公報
【特許文献6】特開平11−335271号公報
【特許文献7】特開平10−265379号公報
【特許文献8】特開平09−169637号公報
【特許文献9】特開2004−143080号公報
【特許文献10】特開2006−199635号公報
【特許文献11】特開2006−199634号公報
【特許文献12】特開平09−40543号公報
【非特許文献1】George N, Ziakas et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 14, 5616-5624 (2006)
【非特許文献2】Shaukath Ara. Khanum et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 14, 5351-5355 (2004)
【非特許文献3】Agents and Action, Vol.12, No.5, 674-683, (1982)
【非特許文献4】Bioorganic & Medicinal Chemistry, Vol.11, 4207-4216, (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、前記一般式(1)の経皮吸収性を向上せしめる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、前記一般式(1)の経皮吸収性を向上せしめる技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン及び/又はその塩を共存させることにより、この様な経皮吸収向上が為しうることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン及び/又はその塩と、前記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<2>前記一般式(1)で表される化合物が、次に示す、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、<1>に記載の皮膚外用剤。
【0010】
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R1及びR2は一般式(1)と同じ基を表し、R5は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシルオキシ基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0011】
【化3】

一般式(3)
(但し、式中R6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アルキルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子を表す。)
【0012】
<3>前記一般式(1)に表される化合物が、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の皮膚外用剤。
<4>前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンにおけるアシル基は、ラウロイル基であることを特徴とする、<1>〜<3>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
<5>更に、セラミド乃至はその類縁体と、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上とを含有することを特徴とする、<1>〜<4>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
<6>前記セラミド乃至はその類縁体は、セラミド・タイプII又はセラミド・タイプIIIであることを特徴とする、<5>に記載の皮膚外用剤。
<7>前記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上は、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノイソステアレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノイソステアレート、デカグリセリンペンタオレート及びデカグリセリンペンタイソステアレートから選択される1種乃至は2種以上である、<5>又は<6>に記載の皮膚外用剤。
<8>前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンと、セラミド乃至はその類縁体と、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上とを含有するベシクルが分散している剤形であることを特徴とする、<5>〜<7>何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記一般式(1)の経皮吸収性を向上せしめる技術を提供できる。
(1)本発明の皮膚外用剤の必須構成成分である一般式(1)で表される化合物
本発明の皮膚外用剤は一般式(1)で表される化合物及び/又はその塩を含有することを特徴とする。前記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数3〜6のアルキル基、より好ましくは分岐構造を有する、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、アミル基などのアルキル基、特に好ましくはtert−ブチル基を表し、R3は水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基などの炭素数1〜4のアシル基又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4は芳香族性、より好ましくは、炭素数5〜15の芳香族性を有する基を表す。R4においては芳香族基のみで構成されていても良いし、脂肪族基を介在させていても良い。前記芳香族基は炭化水素であっても良いし、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などの複素原子を有する複素芳香族基であっても良い。この芳香族基の種類により、本発明の皮膚外用剤の必須成分である一般式(1)に表される化合物は、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)に表される化合物に大別される。
【0014】
前記一般式(2)において、R1及びR2は一般式(1)と同じ基を表し、R5は水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはメチル基、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基などの炭素数1〜4のアシル基、より好ましくはアセチル基、又はメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基などのアルキルオキシ基を表し、より好ましくは水素原子を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子、より好ましくは硫黄原子を表す。この様な一般式(2)で表される化合物の内、特に好ましいものは、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール(化合物1)である。かかる一般式(2)で表される化合物は、フリー体で本発明の皮膚外用剤に使用することもできるが、アルカリなどを用いて塩とし、使用することも可能である。たとえばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0015】
【化4】

2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール(化合物(1))
【0016】
また、これらの化合物は、任意の方法で製造することができ、例えば下記スキーム1又は2で概略される方法で製造することができるが、これらの方法に限定されない。勿論、置換基の種類などに応じて、適宜製造方法を目的に適した形に変更することも可能である。
【0017】
【化5】

スキーム1
【0018】
スキーム1における反応について簡単に説明する。
3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドを塩化チオニルを用いて常法にて処理することにより、3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドの酸クロリド体(A)とする。この酸クロリド体(A)を二硫化炭素などの適当な溶媒中で、塩化アルミニウム、四塩化チタンなどのルイス酸で処理する。次いで、チオフェン(B)を添加して、フリーデルクラフト反応させることで、一般式(2)の化合物を得ることができる。
【0019】
3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドとしては、例えば、シグマ−アルドリッチ社より市販されている3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドを使用することができる。化合物(B)としては、R5が水素原子である無置換体やメチルチオフェン、メトキシチオフェンなどの置換体を使用することができる。ここで、化合物(B)としてチオフェンを用いた場合(X=S)には、一般式(2)で表される化合物が得られ、さらに、化合物(A)として3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイックアシッドの酸クロリド体を用いた場合には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2’−テノイル)フェノール(化合物(1))が得られる。
【0020】
【化6】

スキーム2
【0021】
スキーム2における反応について簡単に説明する。
チオフェンカルボン酸を塩化チオニルを用いて常法にて処理することにより、チオフェンカルボン酸の酸クロリド体(C)とする。この酸クロリド体(C)を二硫化炭素などの適当な溶媒中で、塩化アルミニウム、四塩化チタンなどのルイス酸で処理する。次いで、2,6−ジアルキルフェノール(D)を添加して、フリーデルクラフト反応させることで一般式(2)の化合物を得ることができる。化合物(C)を得るためには、シグマ−アルドリッチ社より市販されているR5が水素原子である2−チオフェンカルボン酸や3−メチル−2−チオフェンカルボン酸、5−メチル−2−チオフェンカルボン酸などを使用することができる。ここで、化合物(C)として、2−チオフェンカルボン酸の酸クロリドを用いた場合(X=S)には、一般式(2)で表される化合物が得られる。2,6−ジアルキルフェノール(D)としては、シグマ−アルドリッチ社より市販されている2,6−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−イソプロピルフェノールなどを使用することができる。化合物(C)として2−チオフェンカルボン酸の酸クロリド、化合物(D)として2,6−ジ−tert−ブチル−フェノールを用いた場合には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2’−テノイル)フェノール(化合物(1))が得られる。
【0022】
前記チオフェン、チオフェンカルボン酸をフラン、フランカルボン酸に置き換えることにより、Xが酸素原子である、一般式(2)に表される化合物を製造することができる。
【0023】
一般式(3)において、R6は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、より好ましくはメチル基、ビニル基、プロペニル基、n−ブテニル基などのアルケニル基、より好ましくはプロペニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基などのアルキルオキシ基、より好ましくはメトキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、iso−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基、より好ましくはtert−ブチルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、メチルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子、より好ましくは塩素原子を表す。この様な一般式(3)で表される化合物の具体的な例としては、例えば、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−フェニルベンゾフェノン、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メタノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものが好ましく例示できる。これらの内、より好ましいものは、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものである。
【0024】
かかる一般式(3)で表される化合物は、フリー体で本発明の皮膚外用剤に使用することもできるが、アルカリなどを用いて塩とし、使用することも可能である。たとえばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0025】
また、これらの一般式(3)で表される化合物は、任意の方法で製造することができ、例えば前記スキーム1又は2で概略される方法を適宜応用することによって製造することができるが、これらの方法に限定されない。
【0026】
例えば、前記スキーム1において、(置換)チオフェンの代わりに、種々の芳香族炭化水素を用いて、これと3,5−ジ−tert−ブチル−4−ベンゾイックアシッドの酸クロリド体を反応させることによって製造することが可能である。また、前記スキーム2において、チオフェンカルボン酸の代わりに、(置換)ベンゾイックアシッドを用いて、これを酸クロリド体とし、これを3,5−ジ−tert−ブチルフェノールと反応させることによって製造することが可能である。
【0027】
本発明の皮膚外用剤における一般式(1)で表される化合物の好ましい含有率は、総量で0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、上限は3質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。これはかかる量範囲において、前記のメラニン産生抑制作用を、安定して発現するからである。
【0028】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン
本発明の皮膚外用剤は、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを必須成分として含有する。かかる成分はフリー体を含有することもできるし、塩の形で含有することもできる。これらの塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。アシル基は炭素数10〜30のものであることを特徴とする。この様なアシル基としては、直鎖であっても、分岐構造を有していても、環状構造を有していても良く、飽和脂肪族であっても、不飽和脂肪族であっても良い。アシル基の具体例としては、例えば、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、リノロイル基等が例示でき、これらの中ではラウロイル基が特に好ましい。又、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは2つのアシル基を有することになるが、かかる2つのアシル基としては、同じであっても、異なっていても良い。α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは例えば、次のような手順で製造することができる。即ち、グルタミン酸をトリエチルアミンなどのアルカリの存在下、アシルクロリドと反応させてN−アシルグルタミン酸を得る。しかる後に、モル比2:1でリジンと、DCC等のペプチド合成試薬の存在下縮合させることにより、製造することができる。斯くして得られた反応生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、クロロホルム−メタノール混液系が好ましく例示できる。かかるα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの構造を式4に示す。又、かかる成分の塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。斯くして得られたα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは角層構成成分と親和性を有し、この性質故に皮膚外用剤中で有効成分の優れたベヒクルとして働く。
【0029】
【化7】

式4(但し、式中R1、R2はそれぞれ独立に炭素数10〜30のアシル基を表す。)
【0030】
前記のような方法によってα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを製造し用いることもできるが、ジα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンには既に市販されているものが存し、かかる市販品を購入し利用することもできる。この様な市販品としては、「ペリセアL−30」(旭化成株式会社製;α,ε−ビス(γ−N−ラウロイルグルタミル)リジン)が好適に例示できる。斯くして得られたα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは、二分子膜を形成しやすい特性を有し、この作用により、後記の他の必須成分とともに安定性に優れるベシクルを形成することもできる。かかるベシクルは表皮の細胞の膜構造と近似した物性を有するため、皮膚透過性に優れる。加えて脂質二重膜間に有効成分を保持する作用に優れる。これは該脂質二重膜自身に両親媒性が存するためである。又、この様な作用を発揮するためには、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンから選択される1種乃至は2種以上を総量で、ベシクル全量に対し、最低量で1質量%、より好ましくは5質量%、上限値として50質量%、より好ましくは10質量%含有することが好ましい。かかる成分が多すぎても、少なすぎても安定なベシクルが形成しない場合が存するためである。ベシクルの形態では、脂質二重相の相間に疎水性部分を有する有効成分を含有せしめ、二重相の外側と角層との親和性を利用して、有効成分を真皮に到達せしめる輸送体として働くことが出来る。この時、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン自身にも真皮において、バリア構造を強化せしめる作用を有するため、ベシクル材料、有効成分の二重の効果を奏する。本発明の皮膚外用剤では、ベシクルの形態で前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを含有することも出来るし、油相中に相溶した形で含有することも出来る。油相に相溶した形態で含有する場合には、前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの好ましい含有量は、皮膚外用剤全量に対して0.01〜10質量%であり、より好ましくは、0.05〜5質量%である。ベシクルの形態で含有する場合に於いても、この含有量は踏襲され、かかる含有量の範囲に収まるようにベシクルの配合量を調整することが好ましい。
【0031】
ベシクルの形態でα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを含有させる場合には、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン以外に、セラミド乃至はその類縁体と、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上とを含有することが好ましい。前記セラミドとしては、通常タイプ1〜タイプ7の7タイプが存することが知られており、それらのいずれもが利用できるが、その中では特にタイプ2が好ましく、N−ステアロイルジヒドロキシスフィンゴシンが特に好ましい。この様なセラミドには市販品が存し、かかる市販品を購入し、利用することが出来る。この様な市販品のうち、このましいものとしては、タイプ1である、N-(27-オクタデカノイルオキシ-ヘプタコサノイル-)-フィトスフィンゴシンを成分とする、「Ceramide I」(コスモファーム社製)、タイプ2であるN−ステアロイルジヒドロキシスフィンゴシンを成分とする、「セラミドTIC−001」(高砂香料工業株式会社製)、タイプ3であるN-ステアロイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide III」(コスモファーム社製)、タイプ3であるN-リノレオイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide IIIA」(コスモファーム社製)、タイプ3であるN-オレオイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide IIIB」(コスモファーム社製)、タイプ6であるN-2-ヒドロキシステアロイルフィトスフィンゴシンを成分とする、「Ceramide VI」(コスモファーム社製)等が好ましく例示できる。これらは唯一種を含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。これらは唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有することも出来る。本発明のベシクルでは、かかる成分は前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンのつくるベシクル構造を強化する作用を有する。かかる効果を奏するためには、ベシクル全量に対し、最低量で1質量%、より好ましくは5質量%、上限値として50質量%、より好ましくは10質量%含有することが好ましい。かかる成分が多すぎても、前記効果を奏さない場合が存する。
【0032】
【化8】

セラミドタイプ1
(R1アルキル基乃至はアルケニル基を表し、R2はリノレオイルオキシアルキル基を表す。)
セラミドタイプ2
(R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基乃至はアルケニル基を表す。)
【0033】
【化9】

セラミドタイプ3
(R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基を表す。)
【0034】
【化10】

セラミドタイプ4
(R1アルキル基を表し、R2はリノレオイルオキシアルキル基を表す。)
【0035】
【化11】

セラミドタイプ5
(R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【0036】
【化12】

セラミドタイプ6
(R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R3は水素原子乃至はアルキル基を表す。)
【0037】
【化13】

セラミドタイプ7
(R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
【0038】
本発明のベシクルにおいては、前記セラミド以外に、セラミドと近似の構造を有する成分も、セラミドの誘導体として含有することが出来る。かかるセラミド誘導体としては、例えば、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、スフィンゴシルホスホリルコリンや特開昭62−228048号、特開昭63−216812号、特開昭63−227513号、特開昭64−29347号、特開昭64−31752号、特開平8−319263号などに記載のセラミド類似構造物質等が好適に例示できる。前記セラミド類似構造物質としては、具体的には、次に示す式5に表される成分や式6に表される成分が好ましく例示できる。
【0039】
【化14】

式5
(但し、式中R1は炭素数10〜26の炭化水素基を表し、R2は炭素数9〜25の炭化水素基を表し、Xは−(CH2)n−で表される基において、nが2〜6のものを表す。)
【0040】
【化15】

式6
(式中、R1’及びR2’は同一又は異なって炭素数1〜40のヒドロキシル化されていてもよい炭化水素基を示し、R3は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又は単結合を示し、R4は水素原子、炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基又は2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ基を示す。ただし、R3が単結合のときはR4は水素原子である。)この様な式5或いは式6に表される成分は前記特許文献の内容に従って製造することが出来る。
【0041】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンにおけるグリセリンの重合度は2〜20が好ましく、2〜10がより好ましい。又、脂肪酸残基としては、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、ベヘン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、リノレイン酸残基などが好適に例示でき、オレイン酸残基、ステアリン酸残基乃至はイソステアリン酸残基が特に好ましい。かかるポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、一分子あたりの脂肪酸残基の数は、遊離の水酸基の数より多い形態が好ましく、具体例を挙げれば、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、ジグリセリンモノラウリン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、ジグリセリンモノイソステアリン酸エステル、トリグリセリンジラウリン酸エステル、トリグリセリンジステアリン酸エステル、トリグリセリンジオレイン酸エステル、トリグリセリンジイソステアリン酸エステル、ペンタグリセリントリラウリン酸エステル、ペンタグリセリントリステアリン酸エステル、ペンタグリセリントリオレイン酸エステル、ペンタグリセリントリイソステアリン酸エステル、ヘプタグリセリンテトララウリン酸エステル、ヘプタグリセリンテトラステアリン酸エステル、ヘプタグリセリンテトラオレイン酸エステル、ヘプタグリセリンテトライソステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタラウリン酸エステル、デカグリセリンペンタステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタオレイン酸エステル、デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル等が取り分け好適に例示できる。勿論、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル等の水酸基の数が多いものも効果を奏するので使用可能である。
【0042】
同様の効果を奏する成分としては、例えば、ピログルタミン酸グリセリンステアリン酸エステル、ピログルタミン酸グリセリンオレイン酸エステル等のピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。かかる成分も本発明のベシクルでは使用可能である。
【0043】
前記セラミド類、前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは、前記ポリグリセリンの脂肪酸エステル乃至はピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルの存在下、初めて安定なベシクルを形成する。この様な安定なベシクルを形成するためには、ポリグリセリンの脂肪酸エステル乃至はピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルは総量で、ベシクル全量に対して5〜30質量%含有することが好ましく、10〜25質量%含有することがより好ましい。又、かかるポリグリセリンの脂肪酸エステル乃至はピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルの質量の総和と前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの質量の総和の比は、5:1〜1:1が好ましく、4:1〜2:1がより好ましい。この2者の相互作用により、脂質二重相の配向が整えられる。この様に整えられた二重膜においては、かかる二重膜間に有効成分を保持することが出来る。前記一般式(1)に表される化合物も二重膜間に保持せしめて、ベシクル内包の形態で含有させることも出来、この様な形態での含有が好ましい。この様なベシクルはベシクル構成成分を70〜90℃で相溶させ、これを同様に温調した水性成分中に攪拌下徐々に加えることにより形成される。又、二重膜ベシクルの外壁と角層細胞層とは親和性を有する為、この様なベシクルは角層透過性に優れる。
【0044】
ベシクルには、前記必須成分、好ましい成分以外に、通常ベシクルや皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、イソプレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、コレステロール、カンペステロール、シトステロール、スチグマスタノールなどの環状アルコール、レシチン、水添レシチン、水酸化レシチン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルセリン、フォスファチジルグリセロールなどのリン脂質、オレイン酸、カプリン酸、カプリル酸、ステアリン酸などの脂肪酸、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、等が好ましく例示できる。これらの内、特に含有することが好ましいものとしては、環状アルコール、特に、カンペステロール、シトステロール、スチグマスタノールなどの植物ステロール(フィトステロール)、多価アルコール、分けても、グリセリンが例示できる。フィトステロールの含有量は、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンに対して、2:1〜1:2であることが好ましく、前記多価アルコールは、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの含有量の5〜15倍であることが好ましい。この様な構成を採用することにより、安定なベシクルが形成される。
【0045】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤としては、通常皮膚に外用で投与されるものであれば特段の限定無く適用することが出来、医薬部外品を包含する化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これらの中で特に好ましいものは、化粧料である。これは化粧料に於いては、真皮到達性が望まれて、且つ、該真皮到達が為されにくい有効成分が多いためである。かかる化粧料としては、例えば、化粧水などのローション、乳液、エッセンス、クリーム、パック化粧料、洗顔化粧料、クレンジング化粧料等が好ましく例示できる。更にその剤形としては、化粧料の領域で知られているものであれば特段の限定はなく、ローション製剤、水中油乳化製剤、油中水乳化製剤、複合エマルション乳化製剤等に好ましく適用できる。
【0046】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0047】
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分と任意成分とを常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0048】
以下に、実施例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0049】
以下に示す処方に従って、本発明のベシクルの分散液1を作成した。即ち、イ、ロの成分をそれぞれ70℃に加熱し、一様に溶解せしめ、攪拌下イに徐々にロを加え、ベシクル分散液を得た。
【0050】
【表1】

【0051】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、化粧料を製造した。即ち、下記に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である乳液を作製した。即ち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を80℃に加熱した。(A)の混合物に(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、更に(C)を加えて中和し、その後35℃にまで撹拌、冷却し、乳液1を作製した。
【0052】
【表2】

【実施例2】
【0053】
実施例1の乳液1と同様の手技に従って、乳液2を作成した。同様に操作して、「ペリセアL−30」を水に置換した比較例1、POE(45)ステアリン酸に置換した比較例2も作成した。
【0054】
【表3】

【0055】
<試験例1>
乳液1、乳液2、比較例1及び比較例2について、メラニン産生抑制作用を検討した。即ち、ボランティア7名の背部に3cm×6cmの部位を6つ作成し、この内、5つの部位に2MED(最小紅斑量)の紫外線を1日1回4日続けて照射した。照射終了後72時間より、1日1回30日連日当該部位をそれぞれの検体50μlを投与し、処理した。非照射の1部位は何も投与せずにコントロール部位とし、照射部位の一つも何も投与せず、照射コントロールとした。最後の処理の終了後48時間にそれぞれの部位とコントロール部位との色差を「コニカミノルタ色彩色差計CR400」(コニカミノルタ社製)で計測した。結果を表4に示す。これより、「ペリセアL−30」が存在することによりメラニン産生抑制作用が高まり、ベシクル形態で含有せしめることにより、より高まることが分かった。これは有効成分の経皮吸収の促進によるものであると推察される。
【0056】
【表4】

【0057】
<試験例2>
ベシクルの安定性
乳液2を5℃、20℃、40℃に1ヶ月間保存し、保存の前後に偏光顕微鏡でベシクルの存在を観察した。結果は、何れの保存条件でもベシクルを維持していた。これにより、ベシクルに由来する経皮吸収性の良さは安定に維持されることが分かった。
【実施例3】
【0058】
実施例2と同様に、下記処方に従って、ベシクル2〜4を作成し、乳液3〜5を作成し、試験例1の方法にて評価を行った。結果を表7に示す。これより、何れの一般式(1)に表される化合物も、本発明の皮膚外用剤の剤形において、優れた美白作用を発現することが分かる。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
<試験例3>
試験例2と同様に乳液3〜5のベシクルの安定性を検討した。結果を表8に示す。これより本発明の皮膚外用剤に於いてはベシクル構造が安定に維持され、優れた美白作用を発現することが分かる。
【0063】
【表8】

【実施例4】
【0064】
実施例1と同様に操作して、ベシクル分散液5を作成し、本発明の皮膚外用剤である化粧料を得た。このものは5℃、20℃、40℃での1ヶ月保存でもベシクル構造を維持していた。
【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は化粧料などに応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン及び/又はその塩と、次の一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【化1】


一般式(1)
(但し、式中R1、R2はそれぞれ独立に炭素数3〜6のアルキル基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜4のアシル基又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4は芳香族性を有する基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、次に示す、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R1及びR2は一般式(1)と同じ基を表し、R5は水素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアシルオキシ基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化3】

一般式(3)
(但し、式中R6は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、アルキルオキシ基、水酸基、メルカプト基、トリフルオロメチル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アルキルアミド基、スルフェニル基、スルホニル基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)に表される化合物が、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2‘−テノイル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−クロロベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−4‘−メトキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2’ ,4‘,6’−トリメチルベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5‘−テトラ−tert−ブチル−4,4‘−ジヒドロキシベンゾフェノン及び(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレニルメタノンから選択されるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンにおけるアシル基は、ラウロイル基であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
更に、セラミド乃至はその類縁体と、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上とを含有することを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記セラミド乃至はその類縁体は、セラミド・タイプII又はセラミド・タイプIIIであることを特徴とする、請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上は、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノイソステアレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノイソステアレート、デカグリセリンペンタオレート及びデカグリセリンペンタイソステアレートから選択される1種乃至は2種以上である、請求項5又は6に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
前記α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンと、セラミド乃至はその類縁体と、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上とを含有するベシクルが分散している剤形であることを特徴とする、請求項5〜7何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−1500(P2009−1500A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161091(P2007−161091)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】