説明

芳香族ポリアミド、回路基板およびその製造方法

【課題】
芳香族ポリアミドが接着層を介さずにガラス板に接着可能であり、かつ、形成した高精度の回路パターンが回路基板加工プロセス中で位置ずれを起こしにくい芳香族ポリアミドを得ること。
【解決手段】
Siを含む基を有する構造単位、パラ配向性芳香族基を有する構造単位およびSOを含む基を有する構造単位をそれぞれ特定モル分率で含む芳香族ポリアミドとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用途等に好適に用いることができる芳香族ポリアミド、回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリアミドはその高い耐熱性や高剛性の特性を有することから、工業材料として広く用いられている。例えば、プリント回路基板、磁気記録媒体、音響振動板、コンデンサーなどに用いられている。その中でも、プリント回路基板においては、近年のエレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高精細化に伴い、プリント回路基板のパターニングの高精度化が求められている。現在は、高精度の回路パターンを形成する加工プロセスでは、支持板に接着層を介して貼り付けたフィルムに、高精度の回路パターンを形成し電子部品を接続した後に支持板からフィルムを剥離して高精度の回路パターンを形成する方法が採用されているが、回路基板の加工プロセス中に熱処理プロセスや湿式プロセスがあり、フィルムが収縮と膨張を繰り返すため、フィルムと接着層、接着層とガラスのそれぞれの界面で応力が発生し、高精度に形成した回路パターン間で位置ずれが発生する問題があった。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、一定の温度と湿度でフィルムを保存し、その保存温度と湿度で補強板に接着層を介してフィルムを貼り合わせることで、フィルムに形成した回路パターンの位置ずれを防ぐ方法が開示されているが、補強板に接着層を形成する必要があるだけでなく、一定の温度と湿度での保管が必要となるため製造プロセスが増えコストが高くなる問題があった。一方、接着性を向上させる目的でポリイミドのポリマー構造にSi系ジアミンを導入した例が特許文献2、3に開示されているが、これらは高精度の回路パターンの回路基板加工プロセスでの寸法変化量が大きく回路パターンの位置ずれが生じやすい。さらに、Si系ジアミンを含む芳香族ポリアミドが特許文献4に記載されているが、これはガラス板と芳香族ポリアミドが強く接着するため、高精度の回路パターンを形成し電子部品を接続した後に支持板から芳香族ポリアミドを剥離できないことがあるだけでなく、特許文献2、3と同様に寸法変化量が大きく回路パターンの位置ずれが生じる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−243899号公報
【特許文献2】特開2003−17647号公報
【特許文献3】特開2007―56201号公報
【特許文献4】特開2008−260266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術における問題点の課題を解決するため検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的は加工プロセスに応じて芳香族ポリアミドが接着層を介さずに、または接着層を介してガラス板に接着・剥離可能であるので用途に合わせて接着方法を選択できるだけでなく、調温、調湿環境下での保管を必要とせずとも、高精度回路パターンの回路基板加工プロセス中で回路パターンが位置ずれを起こしにくい芳香族ポリアミドを得ることにある。加えて、透明な回路基板、表示基板としても加工可能な芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、以下の特徴を有する。すなわち、
化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、次式(1)〜(4)を満足する芳香族ポリアミドである。
【0007】
化学式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
:Siを含む基
:任意の芳香族基
化学式(II):
【0010】
【化2】

【0011】
:パラ配向芳香族基。ただし芳香環の水素の一部または全てが置換基で置換されていても良い。
【0012】
:任意の芳香族基
化学式(III):
【0013】
【化3】

【0014】
:SOを含む基
:任意の芳香族基
0<l≦30 ・・・・(1)
40≦m<100 ・・・・(2)
0<n<50 ・・・・(3)
97≦l+m+n≦100 ・・・・(4)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シロキサン系ジアミンを特定のモル分率だけポリマー構造に導入した芳香族ポリアミドの有機溶媒溶液をガラス板上に塗布し、この有機溶媒溶液から有機溶媒を除去することで、ガラス板に接着層を介さずに芳香族ポリアミドの膜を形成でき、かつ、適度な力で剥離できるため、回路パターンの作成時にフィルムをガラスに貼り付けるための接着層を形成するプロセスや調温・調湿環境下での保管によるパターンズレ防止のプロセスを省くことができコストダウンが可能になる。さらに、特定の剛直構造をポリマー構造に導入することで、寸法変化量を小さくすることができ、回路基板の加工プロセス中で回路パターンの位置ずれが生じないだけでなく回路基板の加工プロセスで、ガラス板との剥離が生じない芳香族ポリアミドを得ることができる。それに加えて、シロキサン系ジアミンとその他の芳香族ジアミン、カルボン酸ジクロライドとの共重合比をある範囲とすることで、製膜性と寸法安定性および、ガラスとの接着力の両立が可能となり、さらに従来では接着が不可能であった高耐熱性の無機系接着剤とも接着可能である。その為、ガラス板に直接塗布してから加工を行う場合や、ガラス板に無機接着剤などの高耐熱性接着剤を介してフィルムを貼合してから加工を行う場合など、様々な加工プロセスに応じて使い分けが可能となるので工業的に有用となる。また、従来はポリイミドフィルムに回路パターンを作成していたので、茶褐色をした回路基板しか得られなかったが、本発明により透明な回路基板を作成することができる。加えて、本発明の芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体は、表示基板としても加工可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の芳香族ポリアミドは、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、次式(1)〜(4)を満足している。
【0017】
化学式(I):
【0018】
【化4】

【0019】
:Siを含む基
:任意の芳香族基
化学式(II):
【0020】
【化5】

【0021】
:パラ配向芳香族基。ただし芳香環の水素の一部または全てが置換基で置換されていても良い。
【0022】
:任意の芳香族基
化学式(III):
【0023】
【化6】

【0024】
:SOを含む基
:任意の芳香族基
0<l≦30 ・・・・(1)
40≦m<100 ・・・・(2)
0<n<50 ・・・・(3)
97≦l+m+n≦100 ・・・・(4)
本発明の芳香族ポリアミドの用途は特に限定されないが、回路基板用途に有用である。特に、芳香族ポリアミドの有機溶媒溶液をガラス板上に均一な厚さに塗布し、この有機溶媒溶液の有機溶媒を乾燥除去して得られた芳香族ポリアミドの膜とガラス板との積層体を用いて、芳香族ポリアミド面に高精度の回路パターンを形成し、電子部品を接続した後に、ガラス板から芳香族ポリアミドの膜を剥離することで得られる回路基板として好適に用いることができる。
【0025】
一般に、芳香族ポリアミドの有機溶媒溶液をガラス板に塗布し、この有機溶媒溶液を乾燥除去することで得られる芳香族ポリアミドとガラス板との積層体において、芳香族ポリアミドとガラス板との接着性は弱く、ガラス板等の支持体を用いて行う加工、具体的には高精度な回路基板の加工プロセスで、ガラス板から芳香族ポリアミドが剥離し、加工精度が低下する問題があった。そこで、本発明の芳香族ポリアミドは、上記した化学式(I)に示す構造を特定のモル分率導入したことで、ガラス板との接着性を向上させて回路基板の加工精度を改善したものである。さらに回路基板の加工プロセス終了後にガラス板から芳香族ポリアミドの膜を剥離する際に、例えば98N/m以上の大きな張力が必要なく、高精度の回路パターンが維持できる。
【0026】
また、ポリアミドはアミド基の水素結合により、分子間凝集力が強くなりポリマー同士がパッキングするため一般に溶解性が低い。一方で、屈曲成分の構成単位を多く含むと溶解性は向上するものの、フィルムに成形した場合に、ヤング率の低下や熱膨張係数が増大する問題があった。そこで本発明では、フィルムを構成するポリマーの構成単位に、上記した化学式(II)および(III)で示される構造を特定のモル分率だけ導入することで、溶解性が高く、高耐熱性および高剛性を有する芳香族ポリアミドが得られる。さらに、従来では接着が不可能であった無機系の接着剤との接着も向上させることができ、加工プロセスによって使い分けることができる。
【0027】
上記したように、本発明は、化学式(I)、(II)および(III)で示される構成単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、式(1)〜(4)を満たすことで、芳香族ポリアミドの有する高剛性と高耐熱性を両立でき、さらにガラス板との接着が向上し回路パターン形成が容易になる芳香族ポリアミドを得ることが可能となる。
【0028】
l、m、nは、より好ましくは、下記式(6)〜(9)を満足することである。
【0029】
0<l≦30 ・・・・(6)
40≦m<90 ・・・・(7)
0<n<40 ・・・・(8)
97≦l+m+n≦100 ・・・・(9)
さらに好ましくは、l、m、nが下記式(10)〜(13)を満足することである。
【0030】
0<l≦20 ・・・・(10)
40≦m<90 ・・・・(11)
10<n<40 ・・・・(12)
97≦l+m+n≦100 ・・・・(13)
さらにより好ましくは、l、m、nが下記式(14)〜(17)を満足することである。
【0031】
0<l≦1 ・・・・(14)
70≦m<100 ・・・・(15)
0<n<30 ・・・・(16)
97≦l+m+n≦100 ・・・・(17)
最も好ましくは、l、m、nが下記式(18)〜(21)を満足することである。
【0032】
0<l≦0.7 ・・・・(18)
80≦m<100 ・・・・(19)
0<n<20 ・・・・(20)
97≦l+m+n≦100 ・・・・(21)
なお、芳香族ポリアミドの構造は、その原料であるジアミンとカルボン酸ジクロライドによって決定される。原料が不明である場合は芳香族ポリアミド組成物から構造分析を行うが、この手法としては、質量分析、核磁気共鳴法による分析、分光分析などを用いることができる。
【0033】
化学式(I)におけるlは、シリコン系ジアミン残基の構成単位の導入量を示し、lが0の場合はガラス板との接着性が低下し、回路パターン形成時や回路基板の加工プロセスの際にガラス板からポリアミドが剥離し加工精度が低下する。さらに、lが30より大きい場合はジアミン成分とジカルボン酸成分が全て反応せずに十分に重合度が上がらず、膜が得られないことがある。また、仮に、製膜可能であっても得られた膜は非常に脆く加工精度が低下する。
【0034】
ここで、化学式(I)のRは、Siを含む基であれば好適に用いられ制限はないが、下記化学式(IV)で示される構造のいずれかであることが好ましい。
【0035】
化学式(IV):
【0036】
【化7】

【0037】
ただし、rは繰り返し数を示し、r=0〜15である。
【0038】
rのより好ましい範囲としては、r=1〜10である。最も好ましくはr=2〜5の範囲である。
【0039】
また、化学式(I)におけるRは任意の芳香族基を表しており、特に制限はないが、高耐熱性および高剛性の点からパラ結合を有する芳香族基がより好ましい。さらに好ましくは、Rがテレフタル酸ジクロライド残基、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド残基、2フロロ−テレフタル酸ジクロライド残基、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド残基、1,4−シクロへキサンカルボン酸ジクロライド残基であり、最も好ましくはテレフタル酸ジクロライド残基、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド残基である。
【0040】
化学式(II)におけるmは、剛直構造の構成単位の導入量を示し、mが40以上であり100よりも小さければ芳香族ポリアミドの耐熱性が高く、ヤング率が高くなるため好ましい。mが40より小さいと寸法変化量が大きくなるだけでなく、ヤング率が低下しハンドリング性が低下し破れやすくなる。また、mが100であると芳香族ポリアミドの有機溶媒への溶解性が低下し、芳香族ポリアミドの有機溶媒溶液がゲル化し、ガラス板に塗布した際に厚みがムラ大きくなり、さらにガラス板との接着性が低下する。
【0041】
一方、耐熱性の高い回路基板を芳香族ポリアミドで作成する場合、化学式(II)で示される構造はパラ結合からなる芳香族基であり、剛直な分子構造であるため、この構造を導入することで寸法変化量を低下でき、回路パターン形成時や加工プロセスの際に生じる回路パターンの位置ずれを低減できる。
【0042】
化学式(II)のRはパラ配向芳香族基を示す。芳香環の水素は、その一部または全てが置換基で置換されていてもよい。
【0043】
は、下記化学式(V)で示されるいずれかの構造であることが好ましい。芳香環の水素はその一部または全てが置換基で置換されていてもよい。置換基としてはCF、F、OH、OCH、Cl、CH、NO、CNが例示でき、いずれかを好適に用いることができる。
【0044】
化学式(V):
【0045】
【化8】

【0046】
:CF、F、OH、OCH、Cl、CH、NOまたはCN
n:1〜4の整数
なお、透明性の高い回路基板を芳香族ポリアミドで作成する場合、一般的な芳香族ポリアミドでは光線透過率が劣ることがある。芳香族ポリアミドは分子内および分子間の電荷移動錯体により着色すると考えられており、化学式(V)で示されるRの置換基を電子吸引基とすることで、芳香族ポリアミドの分子内および分子間の電荷移動錯体の形成を阻害でき、芳香族ポリアミドの光線透過率を向上させることができると考えられている。ここで、電子吸引基とはHamettの置換基常数において正の値を示す基であり、例えば、CF、F、OH、OCH、Cl、CH、NO、CNが例示できる。最も好ましいのはCFである。また、置換基は化学式(VI)で示されるいずれかの位置に置換していることが好ましい。
【0047】
化学式(VI):
【0048】
【化9】

【0049】
また、化学式(II)におけるRは任意の芳香族基を表しており、特に制限はないが、高耐熱性および高剛性の点からパラ結合を有する芳香族基がより好ましい。さらに好ましくは、Rがテレフタル酸ジクロライド残基、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド残基、2フロロ−テレフタル酸ジクロライド残基、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド残基、1,4−シクロへキサンカルボン酸ジクロライド残基であり、最も好ましくはテレフタル酸ジクロライド残基、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド残基である。
【0050】
化学式(III)におけるnは、屈曲構造の構成単位の導入量を示し、nが0の場合は、芳香族ポリアミドの有機溶媒への溶解性が低下し、ゲル化しガラス板に塗布した際に厚みムラ大きくなり、さらにガラス板との接着性が低下する。また、nが50以上の場合は寸法変化量が大きくなるだけでなく、ヤング率が低下しハンドリング性が低下し破れやすくなることがある。
【0051】
ここで、化学式(III)のRはSOを含む基であれば好適に用いられ、特に制限はないが、下記化学式(VII)で示される構造のいずれかであることが好ましい。
【0052】
化学式(VII):
【0053】
【化10】

【0054】
また、化学式(III)におけるRは任意の芳香族基を表しており、特に制限はないが、高耐熱性および高剛性の点からパラ結合を有する芳香族基がより好ましい。さらに好ましくは、Rがテレフタル酸ジクロライド残基、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド残基、2フロロ−テレフタル酸ジクロライド残基、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド残基、1,4−シクロへキサンカルボン酸ジクロライド残基であり、最も好ましくはテレフタル酸ジクロライド残基、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド残基である。
【0055】
また、本発明の芳香族ポリアミドは、以下の測定法による耐剥離性が良好であることが好ましい。すなわち、厚みが0.7mmの無アルカリガラス板上に芳香族ポリアミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液(濃度:7質量%)を面積が10cm×10cm、塗布厚みが150μmとなるようにバーコーターを用いて一方向に塗布し、次いでこのN−メチル−2−ピロリドン溶媒を120℃で30分間、280℃で1分間加熱して除去した後に得られる無アルカリガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体について、JIS K5600−5−6(1999)に準拠した測定による無アルカリガラス板(以下、単にガラス板ということがある)と芳香族ポリアミドとの耐剥離性が、分類1から4のいずれかであることが好ましい。より好ましくは分類2〜4にいずれかであり、さらに好ましくは分類3または4である。耐剥離性が分類0である場合は、ガラス板との接着性が強く回路パターンを形成したあと、ガラス板から芳香族ポリアミド(の膜)を剥離する際に破れてしまう場合がある。また耐剥離性が分類5である場合は、ガラス板との接着性が弱く回路パターン形成時や加工プロセスで芳香族ポリアミド(の膜)がガラス板から剥離してしまい、高精度な回路パターンを形成することが困難となる場合がある。上記した芳香族ポリアミドのガラス板との耐剥離性を分類1〜4のいずれかとするためには、化学式(I)で示される構造単位を含み、化学式(I)で示される構造単位のモル分率をlとしたとき、式(1)を満足する芳香族ポリアミドポリマーを用いることが有効である。なお、上記したガラス板は、JIS K 5600−1−4(1999)で規定されたガラス板である(以下、同様)。
【0056】
本発明の芳香族ポリアミドは、無機系接着剤(GRANDEX社製 FJ803D2)をガラス板に260μmになるようにバーコーターで均一に塗布し、100℃で7分間熱処理して、接着剤面に本発明の芳香族ポリアミドをハンドローラーを用いて貼合して、さらに150℃で5分間、次いで200℃で30分間熱処理を行い、得られた芳香族ポリアミドと接着剤を塗布したガラス板の積層体の接着力が5g/cm以上500g/cm以下となるような芳香族ポリアミドであることが好ましい。より好ましくは5g/cm以上450g/cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5g/cm以上400g/cm以下である。接着力が500g/cmを超える場合は、接着剤を塗布したガラス板との接着力が強すぎて剥離する際に芳香族ポリアミドが破れてしまう場合がある。また、接着力が5g/cm未満である場合は、接着剤を塗布したガラス板との接着力が弱く回路パターン形成時やその他加工プロセスで芳香族ポリアミドが接着剤を塗布したガラス板から剥離してしまい、加工精度が低下する場合がある。芳香族ポリアミドと接着剤を塗布したガラス板との接着力を5g/cm以上500g/cm以下とするには、化学式(I)で示される構造単位を含み、化学式(I)で示される構造単位のモル分率をlとしたとき、式(1)を満足することで、達成可能である。
【0057】
また、本発明の芳香族ポリアミドは、厚みが0.7mmの無アルカリガラス板上に芳香族ポリアミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液(濃度:7質量%)を面積が10cm×10cm、塗布厚みが150μmとなるようにバーコーターを用いて一方向に塗布し、次いでこのN−メチル−2−ピロリドン溶媒を120℃で30分間、280℃で1分間加熱して除去した後に得られる無アルカリガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体を、200℃で30分間熱処理したときの寸法変化量が次式(5)を満たしていることが好ましい。
【0058】
{(L−L)/L}×100≦0.1(%) ・・・・(5)
:熱処理前の製膜方向(バーコーターによる塗布方向)の寸法(cm)
:熱処理後の製膜方向(バーコーターによる塗布方向)の寸法(cm)
より好ましくは次式(22)を満たしていることである。
【0059】
{(L−L)/L}×100≦0.05(%) ・・・・(22)
さらに好ましくは次式(23)を満たしていることである。
【0060】
{(L−L)/L}×100≦0.01% ・・・・(23)
最も好ましくは次式(24)を満たしていることである。
【0061】
{(L−L)/L}×100≦0.005% ・・・・(24)
寸法変化量が0.1%を超える場合は、回路パターン形成時や加工プロセスの際に回路パターンの位置ずれが生じることがある。寸法変化量を0.1%以下とするには、上記した化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、上記式(1)〜(4)を満足する芳香族ポリアミドを用いることで達成可能である。
【0062】
本発明の芳香族ポリアミドを用いて作成したガラス板との積層体は、250℃で1時間熱処理した後のb値が5.0以下であることが好ましい。より好ましくはb値が4.0以下であり、さらに好ましくはb値が3.5以下である。熱処理後のb値が5.0を超える場合は、透明な回路基板や表示基板として、本発明の芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体を用いることが困難となる場合がある。また、b値の下限値については特に制限はないが、b値が0であることが最も好ましい。芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体を250℃で1時間熱処理した後のb値を5.0以下とするには、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、上記式(1)〜(4)を満足することで達成可能である。
【0063】
以下に本発明における芳香族ポリアミドの製造方法を説明するが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0064】
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。低温溶液重合法つまり酸ジクロライドとジアミンから得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。ポリマー溶液は、単量体として酸ジクロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
【0065】
2種類以上のジアミンを用いて重合を行う場合、ジアミンは1種類ずつ添加し、該ジアミンに対し10〜100モル%の酸ジクロライドを添加して反応させ、この後に他のジアミンを添加して、さらに酸ジクロライドを添加して反応させる段階的な反応方法、およびすべてのジアミンを混合して添加し、この後に酸ジクロライドを添加して反応させる方法などが利用可能である。また、2種類以上の酸ジクロライドを利用する場合も同様に段階的な方法、同時に添加する方法などが利用できる。いずれの場合においても全ジアミンと全酸ジクロライドのモル比は95〜105:105〜95が好ましく、この値を外れた場合、成形に適したポリマー溶液を得ることが困難となる。
【0066】
本発明の芳香族ポリアミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましい。更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
【0067】
カルボン酸ジクロライドとしては、テレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、2フロロ−テレフタル酸ジクロライド、2クロロ−テレフタル酸ジクロライド、1,4−シクロへキサンカルボン酸ジクロライドなどが挙げられるが、最も好ましくはテレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライドが用いられる。
【0068】
ジアミンとしては、例えば3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルが挙げられるが、最も好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルが用いられる。
【0069】
さらに、ガラス板または無機接着剤との接着性を向上させるために、原料ポリマー構造中にSi元素を含有することが好ましい。具体的には、ジアミン成分として1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを0mol%より多く、30mol%以下共重合したものなどが挙げられる。
【0070】
本発明の芳香族ポリアミドには、ガラス板や接着剤層との接着性を向上させる目的で表面処理を行なうことができる。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理等の電気処理、紫外線処理、超音波洗浄、金属水酸化物、有機アルカリ等の薬液による化学処理等が挙げられる。
【0071】
本発明の芳香族ポリアミドには、表面形成、加工性改善などを目的として10質量%以下の無機質または有機質の添加物を含有させてもよい。表面形成を目的とした添加剤としては例えば、無機粒子ではSiO、TiO、Al、CaSO、BaSO、CaCO、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ゼオライト、その他の金属微粉末等が挙げられる。また、好ましい有機粒子としては、例えば、架橋ポリビニルベンゼン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子、あるいは、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子が挙げられる。
【0072】
また、必要に応じて芳香族ポリアミドとガラス板との界面の塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を混合してもよい。
【0073】
さらに、ガラス板との接着性を高める為に、シランカップリング剤などを芳香族ポリアミド溶液中のポリマーに対しに0.5〜10質量%添加することもできる。
【0074】
芳香族ポリアミド溶液に添加する場合、メチルメタクリロキシジメトキシシラン、3−アミノプロピルメトキシシランなどのシランカップリング剤、アルミキレート剤を芳香族ポリマー溶液中のポリマーに対し0.5〜10質量%添加するとよい。
【0075】
ガラス板を処理する場合、上記で述べたシランカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエステルなどの溶媒に0.5〜20質量%溶解させた溶液をスピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などで表面を処理する。場合によっては、その後50℃から300℃までの温度をかけることで、ガラス板と上記シランカップリング剤との反応を進行させる。
【0076】
また、着色防止や非常に高い分子量の重合物の生成を抑制する目的で種々の末端封止剤を用いることができる。例えば、塩化ベンゾイル、置換塩化ベンゾイルや無水酢酸が好ましく塩化ベンゾイルや置換塩化ベンゾイルがより好ましい。置換塩化ベンゾイルの置換基としてはフッ素、トリフルオロメチルなどのフッ素化合物や、t−ブチル、アダマンタンなどのバルキーな炭化水素基が好ましい。末端封止剤の添加量はジカルボン酸残基とジアミン残基の総モル分率を100mol%としたときに、1.0mol%以下であることが好ましい。1.0mol%を超えると固有粘度が十分に大きくならず、得られるフィルムが脆くなることがある。
【0077】
このようにして得られた芳香族ポリアミド溶液は、酸ジクロライドから発生した塩化水素と、中和塩との反応により塩が形成される。この場合は5〜30質量%になり、この製膜原液をそのまま乾燥すると、塩が析出する。このため膜形成の前、もしくは膜の形成過程において、塩を除去することが好ましい。塩の除去方法としては、特に限定されないが、例えば芳香族ポリアミド溶液に水を加え、カッターを備えた撹拌機で撹拌してポリマーを再沈、洗浄する。得られたポリマーを乾燥し、任意の濃度で溶媒に溶解して製膜原液を得ることができる。
【0078】
次に回路基板について説明するが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0079】
本発明の回路基板は、ガラス板に芳香族ポリアミドの有機溶媒溶液を塗布する工程と、この有機溶媒溶液から有機溶媒を除去する工程とを有する方法により製造できる。また、ガラス板上に芳香族ポリアミドの膜を形成した後、この芳香族ポリアミドの膜に回路パターンを形成する工程と、回路パターンを形成した芳香族ポリアミドの膜をガラス板から剥離する工程とを有する方法によっても製造することが可能である。
【0080】
以下、具体的に説明する。
【0081】
上記のように調製された芳香族ポリアミドは、ガラス板上にキャストする溶液製膜法を用いることができる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがありいずれかの方法で製膜されても差し支えないが、ここでは乾式法を例にとって説明する。
【0082】
乾式法で製膜する場合は該原液をスリットダイを用いた間欠コートや、バーコート、スピンコートなどにより塗布する。次いでかかる原液から溶媒を乾燥して除去する。
【0083】
乾燥条件は例えば、室温〜220℃、60分以内の範囲で行なうことができる。乾燥時間、昇温速度は芳香族ポリアミドの組成および膜厚によって制御されるが、片側にガラスが密着した状態で他方の片側からのみの乾燥となるため、溶媒の沸点+10℃の穏和な乾燥や、段階的な昇温が好ましい。急激に加熱すると発泡することがある。
【0084】
次に200℃〜500℃、好ましくは250℃〜400℃の温度で数秒から数分間の熱処理を行ない、ガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体を得る。さらに、熱処理後に除冷することは有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。
【0085】
得られたガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体は、芳香族ポリアミド側に金属層をスパッタ法で形成したスパッタ膜付きであってもよい。スパッタ膜は電解めっき給電用として好適に用いられ、絶縁層と接する金属層は絶縁層との接着性を高めるためのクロム、ニッケル、チタン、タングステン、モリブデンおよびこれらの金属を含む合金の少なくとも1種類からなる金属層と銅層で構成されることが好ましい。
【0086】
本発明において、回路パターンを構成する金属膜を形成する方法は特に限定されず、例えば、銅箔等の金属箔を接着層で貼り付けて形成することができる他、スパッタやめっきあるいはこれらの組み合わせで形成することができる。
【0087】
金属膜を形成した膜上にフォトレジストをスピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、スクリーン印刷機などで塗布して乾燥する。フォトレジストを所定のパターンのフォトマスクを介して露光、現像して、めっき膜が不要な部分にレジスト層を形成する。次いで電解めっきを行う。電解めっき液としては、硫酸銅めっき液、シアン化合物めっき液、ピロ燐酸銅めっき液などが用いられる。暑さ2μm〜20μmの銅めっき膜を形成後、フォトレジストを剥離し、続いてスライトエッチングを行う。さらに必要に応じて、金、ニッケル、錫などのめっきを施し、回路パターンを得る。
【0088】
次に、回路パターンが形成された後、芳香族ポリアミド(の膜)をガラス板から剥離する。この時に電子部品との接続の位置精度を保つ為に、芳香族ポリアミド上の回路パターンに電子部品を接続した後に、芳香族ポリアミド(の膜)をガラス板から剥離することが好ましい。電子部品との接続方法としては、例えば、ハンダ接続、異方導電性フィルムによる接続、金属共晶による接続、非導電性接着剤による接続、ワイヤーボンディング接続などが利用できる。
【0089】
本発明により得られる回路基板は、電子機器の配線板、ICパッケージ用インターポーター、ウエハレベルプロバー、ウエハレベルバーンインソケット用基板などに好ましく使用される。回路パターンに抵抗素子や容量素子を入れ込むことは、適宜好ましく用いられる。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明における物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0091】
(1)耐剥離性
JIS K5600−5−6(1999)に準拠した方法で測定を行った。
【0092】
具体的には、厚みが0.7mmの無アルカリガラス板上に芳香族ポリアミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液(濃度:7質量%)を面積が10cm×10cm、塗布厚みが150μmとなるようにバーコーターを用いて一方向に塗布し、次いでこのN−メチル−2−ピロリドン溶媒を乾燥して除去した後に得られる無アルカリガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体について、無アルカリガラス板と芳香族ポリアミドとの耐剥離性を測定した。
【0093】
試験板の素地は、JIS K5600−1−4(1999)で規定される、ガラス板を選択した。また、乾燥膜厚の測定は、JIS K5600−1−7(1999)で規定されたマイクロメーター法により測定した。その他の条件を以下に示す。
【0094】
透明感圧付着テープ:ニチバン株式会社製 セロハン粘着テープCT405AP−18
カットの間隔 :1mmの間隔
カット数 :格子パターンの各方向で6個
塗装試験板乾燥時間:120℃で30分間乾燥した後、280℃で1分間
(2)接着力
厚み0.7mmの無アルカリガラス板上に、無機系接着剤(GRANDEX株式会社製 FJ803J2)を260μmの厚みになるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。そのガラス板を100℃で5分間熱処理し、接着剤層側に本発明の芳香族ポリアミドフィルム(厚み5μm〜20μm)をハンドローラーを用いて貼合した後、さらに150℃で5分間、次いで200℃で3分間の熱処理を行い、芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体を得た。次に、芳香族ポリアミドに、幅10mm×長さ150mmの切り込みをカッターで入れた芳香族ポリアミドフィルムの先端部を約10mm剥離し、剥離部をバネ計りが先についたアクリル板(40mm×50mm)に貼り付け、剥離角度が180°となるようにバネ計りを引張り、芳香族ポリアミドをガラス板から剥離していく。このときのバネ計りの重さを接着力とし、3本の平均値をデータとして採用した。
【0095】
(3)寸法変化量
上記(1)の耐剥離性の測定の場合の同様にして得た積層体について、芳香族ポリアミド面に8cm×8cmの枠を描き、膜を形成した方向(バーコーターによる塗布方向)の寸法を株式会社ニコン社製の万能投影機(V−16A)で測定した。この時の寸法をLとした。また、ガラス板と芳香族ポリアミドの積層体を200℃で30分間熱処理した後にも同様に膜を形成した方向(バーコーターによる塗布方向)の寸法を株式会社ニコン社製の万能投影機(V−16A)で測定した。この時の寸法をLとし、寸法変化量を下記式より求めた。
【0096】
{(L−L)/L}×100
:熱処理前の製膜方向(バーコーターによる塗布方向)の寸法(cm)
:熱処理後の製膜方向(バーコーターによる塗布方向)の寸法(cm)
(4)b値
芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体を250℃のオーブン中に1時間静置し、その後の積層体のb値を日本電色工業(株)製の分光色彩計(SE−2000)を用いて測定した。b値が5.0以下のものを「○」、b値が5.0を超えるものを「×」と評価した。
【0097】
(実施例1)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に臭化リチウム2.83g(本荘ケミカル株式会社製)を入れ、窒素気流下でマントルヒーターを用いて加熱して乾燥した。30℃まで冷却後2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)8.93g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)0.69g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)0.08g、N−メチル−2−ピロリドン156mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)4.99g、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.71gの混合物を5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、上記重合により得られたポリマー溶液に水を入れてミキサーを用いてポリマーを粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0098】
(実施例2)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)4.48g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)1.47g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)0.03g、N−メチル−2−ピロリドン92mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけて4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.12gを5回に分けて添加した。30分撹拌後、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)3.25gを5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、上記重合により得られたポリマー溶液に水を入れてミキサーを用いてポリマーを粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0099】
(実施例3)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)4.48g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)1.44g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)0.05g、N−メチル−2−ピロリドン92mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけて4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.12gを5回に分けて添加した。30分撹拌後、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)3.25gを5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、上記重合により得られたポリマー溶液に水を入れてミキサーを用いてポリマーを粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0100】
(実施例4)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)3.81g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)1.14g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)0.13g、N−メチル−2−ピロリドン117mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけて4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)0.95gを5回に分けて添加した。30分撹拌後、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)2.76gを5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、上記重合により得られたポリマー溶液に水を入れてミキサーを用いてポリマーを粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0101】
(実施例5)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に塩化リチウム(本荘ケミカル株式会社製)2.82gを入れ、窒素気流下でマントルヒーターを用いて加熱して乾燥した。30℃まで冷却後2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)4.28g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)3.32g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)1.66g、N−メチル−2−ピロリドン155mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)5.42g、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.87gの混合物を5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、上記重合により得られたポリマーをミキサーを用いて水中で粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0102】
(実施例6)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に塩化リチウム(本荘ケミカル株式会社製)2.82gを入れ、窒素気流下でマントルヒーターを用いて加熱して乾燥した。30℃まで冷却後2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)4.28g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)3.32g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)1.66g、N−メチル−2−ピロリドン155mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)5.42g、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.87gの混合物を5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、得られた芳香族ポリアミドフィルムとコロナ処理機(DENSOK PRECISION CORP.製のPINHOLE TESTER)の放電部分との間隔が1〜5mmになるようにセットし、電圧ダイアルを2周回した強度において空気中で20回コロナ処理を行ない、表面処理された芳香族ポリアミドを得た。また、上記重合により得られたポリマーをミキサーを用いて水中で粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0103】
(実施例7)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に塩化リチウム(本荘ケミカル株式会社製)4.15gを入れ、窒素気流下でマントルヒーターを用いて加熱して乾燥した。30℃まで冷却後2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)7.92g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)1.15g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)0.38g、N−メチル−2−ピロリドン172mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)5.02g、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.73gの混合物を5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、上記重合により得られたポリマーをミキサーを用いて水中で粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0104】
(実施例8)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に塩化リチウム(本荘ケミカル株式会社製)4.22gを入れ、窒素気流下でマントルヒーターを用いて加熱して乾燥した。30℃まで冷却後2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)8.41g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)1.15g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)0.04g、N−メチル−2−ピロリドン156mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)5.02g、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.73gの混合物を5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、上記重合により得られたポリマーをミキサーを用いて水中で粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0105】
(実施例9)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)3.84g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)2.24g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)2.24g、N−メチル−2−ピロリドン139mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)4.87g、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.68gの混合物を5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、上記重合により得られたポリマーをミキサーを用いて水中で粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0106】
(比較例1)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に臭化リチウム1.82gを入れ、窒素気流下でマントルヒーターを用いて加熱して乾燥した。30℃まで冷却後2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)5.76g、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)0.50g、N−メチル−2−ピロリドン93mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)3.18g、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.09gの混合物を5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性の膜を得た。得られた膜をガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃で1分間の熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た(乾湿式製膜)。また、得られたポリマーをミキサーを用いて水中で粉砕し、濾取、乾燥してポリマーを単離した。単離したポリマーを固形分濃度が7質量%になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて150μmの厚みの均一な膜を形成せしめた。これを120℃で30分間加熱し、さらに280℃で1分間熱処理を行いガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体を得た。耐剥離性と寸法変化量および接着力とb値を測定し、表1に示した。
【0107】
(比較例2)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)5.96g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)1.49g、N−メチル−2−ピロリドン128mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)4.87g、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド(東レ・ファインケミカル社製)1.68gの混合物を5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は重合度が低く、膜を得ることができなかった。
【0108】
(比較例3)
撹拌機を備えた300ml3つ口フラスコ中に2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(東レ・ファインケミカル社製)1.98g、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化株式会社製)3.07g、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製)3.07g、N−メチル−2−ピロリドン139mlを入れ窒素雰囲気下、0℃に冷却、撹拌しながら30分かけてテレフタル酸ジクロライド(東京化成社製)6.27gを5回に分けて添加した。さらに1時間撹拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和してポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液は重合度が低く、膜を得ることができなかった。
【0109】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、次式(1)〜(4)を満足する芳香族ポリアミド。
化学式(I):
【化1】

:Siを含む基
:任意の芳香族基
化学式(II):
【化2】

:パラ配向芳香族基。ただし芳香環の水素の一部または全てが置換基で置換されていても良い。
:任意の芳香族基
化学式(III):
【化3】

:SOを含む基
:任意の芳香族基
0<l≦30 ・・・・(1)
40≦m<100 ・・・・(2)
0<n<50 ・・・・(3)
97≦l+m+n≦100 ・・・・(4)
【請求項2】
、RおよびRが、それぞれ以下の化学式(IV)、(V)および(VI)で示される構造のいずれかである、請求項1に記載の芳香族ポリアミド。
:化学式(IV)で示される構造のいずれかである。
化学式(IV):
【化4】

rは繰り返し数を示し、r=0〜15である。
:化学式(V)で示される構造のいずれかである。
化学式(V):
【化5】

:CF、F、OH、OCH、Cl、CH、NOまたはCN
n:1〜4の整数
:化学式(VI)で示される構造のいずれかである。
化学式(VI):
【化6】

【請求項3】
厚みが0.7mmの無アルカリガラス板上に芳香族ポリアミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液(濃度:7質量%)を面積が10cm×10cm、塗布厚みが150μmとなるようにバーコーターを用いて一方向に塗布し、次いでこのN−メチル−2−ピロリドン溶媒を120℃で30分間、280℃で1分間加熱して除去した後に得られる無アルカリガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体について、JIS K5600−5−6(1999)に準拠した測定による無アルカリガラス板と芳香族ポリアミドとの耐剥離性が、分類1から4のいずれかである、請求項1または2に記載の芳香族ポリアミド。
【請求項4】
無機接着剤を介してガラス板に貼合したときの、ガラス板との接着力が5g/cm以上500g/cm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリアミド。
【請求項5】
厚みが0.7mmの無アルカリガラス板上に芳香族ポリアミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液(濃度:7質量%)を面積が10cm×10cm、塗布厚みが150μmとなるようにバーコーターを用いて一方向に塗布し、次いでこのN−メチル−2−ピロリドン溶媒を120℃で30分間、280℃で1分間加熱して除去した後に得られる無アルカリガラス板と芳香族ポリアミドとの積層体を、200℃で30分間熱処理したときの寸法変化量が次式(5)を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリアミド。
{(L−L)/L}×100≦0.1(%) ・・・・(5)
:熱処理前の製膜方向(バーコーターによる塗布方向)の寸法(cm)
:熱処理後の製膜方向(バーコーターによる塗布方向)の寸法(cm)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体。
【請求項7】
250℃で1時間熱処理された後のb値が5.0以下である、請求項6に記載の芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体。
【請求項8】
芳香族ポリアミドが表面処理されている、請求項6または7に記載の芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリアミドまたは請求項6〜8のいずれかに記載の芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体を用いた回路基板。
【請求項10】
ガラス板に芳香族ポリアミドの有機溶媒溶液を塗布する工程と、この有機溶媒溶液から有機溶媒を除去する工程とを有する、請求項9に記載の回路基板の製造方法。
【請求項11】
ガラス板上に芳香族ポリアミドの膜を形成した後、この芳香族ポリアミドの膜に回路パターンを形成する工程と、回路パターンを形成した芳香族ポリアミドの膜をガラス板から剥離する工程とを有する、請求項9または10に記載の回路基板の製造方法。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれかに記載の芳香族ポリアミドとガラス板とを含む積層体を用いた表示基板。

【公開番号】特開2011−184682(P2011−184682A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20327(P2011−20327)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】