説明

荷役用クレーンの制御装置

【課題】コンテナ等の荷役作業における巻上げ量とスプレッダ等の支持手段の方向とを適切に制御することにより、荷役効率を大幅に向上させることができる荷役用クレーンの制御装置を得る。
【解決手段】船に設置された複数の船体用GPSアンテナ22a及び22bと、船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーン5に設けられたクレーン用GPSアンテナ14と、クレーン5に設けられ、荷物を所定の方向から支持する支持手段と、船体用GPSアンテナ及びクレーン用GPSアンテナ14により検出された各位置データに基づいて、荷物の横行時の障害物高さ及び横行される荷物の下面高さを演算し、複数の船体用GPSアンテナ22a及び22bにより検出された各位置データに基づいて、荷物の傾斜を演算する演算手段21とを備え、演算手段21の演算結果に基づいて、クレーン5の巻上げ量及び支持手段の傾斜を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンテナクレーンターミナルで使用されるコンテナクレーン等の荷役用クレーンを制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンテナの荷役作業は、以下の手順により実施される。即ち、船に積載されたコンテナを陸側に降ろす場合、先ず、目的のコンテナが積載されたコンテナ列に合わせてクレーンを走行させ、スプレッダを船体及び積載コンテナに干渉しない位置まで巻き上げる。スプレッダを所定の高さに配置した後、目的のコンテナの上方までスプレッダを横行させ、かかる位置でスプレッダを巻き下げ、目的のコンテナを掴む。そして、船体及び他の積載コンテナに干渉しない高さまでコンテナを巻き上げた後、コンテナを陸側に横行させ、地上で待機するトレーラの荷台に巻き下げる。かかる作業を1サイクルとして所定のコンテナを全て降ろし終わるまで繰り返す。一方、陸側に積載されたコンテナを船に積み込む場合には、上記作業とは反対に、陸側で掴んだコンテナを船上の目的位置で降ろすことになる。
【0003】
そして、従来では、上記のようなコンテナの荷役作業において、安全に荷役をするための巻上げ横行軌跡は、手動であれば運転手の感覚によって操作されていたが、自動化された荷役用クレーンでは、積載コンテナ等の干渉物と衝突することのない常用上限位置まで巻き上げるのが主流であった。なお、上記のような常用上限位置までの巻上げは、積載コンテナの高さが低い小型の船を含めて全ての船において実施されていた。
【0004】
また、上記コンテナの荷役作業では、スプレッダによってコンテナを掴む場合に、スプレッダの方向をコンテナの向きに合わせる必要がある。このため、コンテナを掴む際に、スプレッダのコンテナに対する傾き偏差(コンテナの長手方向の傾き、コンテナの短手方向の傾き、水平方向の回転)を許容値以下にすべく、運転手によって陸側と船側とにおけるスプレッダの傾き量が操作調整されていた。なお、自動化された荷役用クレーンでは、クレーンの仕様によって陸側と船側とにおけるスプレッダの傾きを記憶しておき、陸側から船側に、また、船側から陸側にトロリを移動させた際に、自動的にスプレッダが記憶された状態になるように制御するものも実用化されている。
【0005】
なお、荷役作業を行う荷役装置の従来技術として、走行レールの延在方向におけるベイの位置を検出する可搬型GPS検出器と、走行レールの延在方向におけるガントリークレーンの位置を検出する固定型GPS検出器とを備えることにより、上記固定型GPS検出器及び可搬型GPS検出器からの検出値に基づいて、走行レールの延在方向におけるガントリークレーンの走行目標位置を決定し、荷役対象にある船内ベイ位置までガントリークレーンを的確且つ速やかに走行させるとともに、潮位や潮流等による船舶の位置変化にも速やかに対応することができるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、他の従来技術として、クレーンアーム先端の吊り位置に移動局側GPS受信アンテナを設置し、その吊り位置座標を計測しながら運搬手段内で予め決められた位置に積載された複数の運搬物を積み替え移動するに際し、予め決められた運搬手段内の基準点にクレーンの吊り位置を初期位置合わせして、その後、基準点から個々の運搬物の相対位置を演算して、運搬手段の座標をクレーンアーム先端の吊り位置座標に変換し、個々の運搬物の吊り位置を決定するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−244209号公報
【特許文献2】特開2000−136088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のコンテナの荷役作業では、スプレッダで掴んだコンテナを他の積載コンテナ等に衝突することのない常用上限位置まで巻き上げていたため、余分な高さを巻き上げることによる時間的損失が大きく、荷役効率を悪化させる要因となっていた。特に、小型の船では荷役効率の悪化が顕著になっていた。
【0009】
また、停止中の船は、コンテナの積み降ろし等を要因とする船重心の移動や、潮の影響によるあらゆる方向への移動、即ち、横方向傾斜、縦方向傾斜、水平方向回転、高低差等が頻繁に発生する。このため、トロリの移動中にスプレッダを予め記憶された状態に制御しても、実態と記憶値とに偏差が生じる場合があり、手動によるスプレッダの向きの調整が必要となって、荷役効率を悪化させる要因となっていた。
【0010】
なお、特許文献1記載のものは、走行レールの延在方向におけるガントリークレーンの位置を船内ベイ位置に合わせるためのものであり、上記問題を解決することはできなかった。また、特許文献2記載のものは、船が潮の影響などにより移動してしまった場合に、再度初期位置合わせの必要性が生じ、荷役効率を向上させることはできなかった。
【0011】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、コンテナ等の荷役作業における巻上げ量を適切に制御することにより、荷役効率を大幅に向上させることができる荷役用クレーンの制御装置を提供することである。
【0012】
また、他の目的は、コンテナ等の荷役作業における巻上げ量とスプレッダ等の支持手段の方向とを適切に制御することにより、荷役効率を大幅に向上させることができる荷役用クレーンの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る荷役用クレーンの制御装置は、船に設置された船体用GPSアンテナと、船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、船体用GPSアンテナ及びクレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、荷物の横行時の障害物高さ及び横行される荷物の下面高さを演算する演算手段と、演算手段の演算結果に基づいて、クレーンの巻上げ量を制御する駆動制御手段とを備えたものである。
【0014】
また、この発明に係る荷役用クレーンの制御装置は、船に設置された複数の船体用GPSアンテナと、船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、クレーンに設けられ、荷物を所定の方向から支持する支持手段と、船体用GPSアンテナ及びクレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、荷物の横行時の障害物高さ及び横行される荷物の下面高さを演算し、複数の船体用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、荷物の傾斜を演算する演算手段と、演算手段の演算結果に基づいて、クレーンの巻上げ量及び支持手段の傾斜を制御する駆動制御手段とを備えたものである。
【0015】
また、この発明に係る荷役用クレーンの制御装置は、船に設置され、二次元傾斜を検出する機能を有する船体用GPSアンテナと、船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、クレーンに設けられ、荷物を所定の方向から支持する支持手段と、船体用GPSアンテナ及びクレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、荷物の横行時の障害物高さ及び横行される荷物の下面高さを演算する演算手段と、演算手段の演算結果に基づいてクレーンの巻上げ量を制御し、船体用GPSアンテナにより検出された傾斜データに基づいて支持手段の傾斜を制御する駆動制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、船に設置された船体用GPSアンテナと、船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、船体用GPSアンテナ及びクレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、荷物の横行時の障害物高さ及び横行される荷物の下面高さを演算する演算手段と、演算手段の演算結果に基づいて、クレーンの巻上げ量を制御する駆動制御手段とを備える構成としたことで、コンテナ等の荷役作業における巻上げ量を適切に制御することにより、荷役効率を大幅に向上させることができる。
【0017】
また、この発明は、船に設置された複数の船体用GPSアンテナと、船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、クレーンに設けられ、荷物を所定の方向から支持する支持手段と、船体用GPSアンテナ及びクレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、荷物の横行時の障害物高さ及び横行される荷物の下面高さを演算し、複数の船体用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、荷物の傾斜を演算する演算手段と、演算手段の演算結果に基づいて、クレーンの巻上げ量及び支持手段の傾斜を制御する駆動制御手段とを備える構成としたことで、コンテナ等の荷役作業における巻上げ量とスプレッダ等の支持手段の方向とを適切に制御することにより、荷役効率を大幅に向上させることができる。
【0018】
また、この発明は、船に設置され、二次元傾斜を検出する機能を有する船体用GPSアンテナと、船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、クレーンに設けられ、荷物を所定の方向から支持する支持手段と、船体用GPSアンテナ及びクレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、荷物の横行時の障害物高さ及び横行される荷物の下面高さを演算する演算手段と、演算手段の演算結果に基づいてクレーンの巻上げ量を制御し、船体用GPSアンテナにより検出された傾斜データに基づいて支持手段の傾斜を制御する駆動制御手段とを備える構成としたことで、コンテナ等の荷役作業における巻上げ量とスプレッダ等の支持手段の方向とを適切に制御することにより、荷役効率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0020】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるコンテナターミナルを示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図を示している。図2はこの発明の実施の形態1における荷役用クレーンの制御装置を示すブロック構成図である。図1及び図2において、1は岸壁、2は岸壁1に接岸し停泊している船の船体、3は船体2に積載されたコンテナ、4は岸壁1に沿って敷設された走行レール、5は船体2と陸との間でコンテナ3等の荷物を積み降ろすクレーン(コンテナクレーン、ガントリークレーン等)、6は岸壁1に停車されてコンテナ3が積み降ろしされるトレーラである。
【0021】
ここで、上記クレーン5は、走行レール4上を走行するクレーン本体7と、平面視走行レール4と直交するようにクレーン本体7の所定の高さに水平に設けられ、一端部が船体2の上方にまで突設されたガーダ8と、ガーダ8を走行するトロリ(図示せず)上に設けられた機械室9と、トロリからワイヤロープ10によって吊り下げられ、コンテナ3の上部四隅を所定の方向から掴んで支持するスプレッダ11(支持手段)とを備えている。なお、上記スプレッダ11は、ワイヤロープ10が巻き掛けられた巻上装置(図示せず)によって上下方向に移動(巻上げ、巻下げ)され、所定角度内における長手方向の傾き、短手方向の傾き、水平方向の回転が制御可能に構成されている。また、巻上装置、モータ、ブレーキ等といったクレーン5を駆動する駆動装置12、並びに、駆動装置12を制御する駆動制御手段13は、上記機械室9内に収納されている。
【0022】
14はクレーン5に設けられ、GPS衛星からの電波を受信し易いクレーン5の最頂部に配置されたクレーン用GPSアンテナ、15はクレーン用GPSアンテナ14によって検出された位置データを出力する位置データ送信装置、16は船体2に設置され、船体2に積載されたコンテナ3の荷役対象レーン上に配置された可搬型の船体用GPSアンテナ、17は船体用GPSアンテナ16によって検出された位置データを出力する位置データ送信装置、18は機械室9に設けられ、位置データ送信装置15及び17から出力された各位置データを受信する位置データ受信装置である。
【0023】
19はクレーン5や船体2、コンテナ3等の各種所定の情報が記憶されたデータ記憶部、20はワイヤロープ10の巻出し量を検出するロープ巻出し量検出装置、21は位置データ受信装置18から入力される各位置データ、データ記憶部19に予め記憶された各種データ、ロープ巻出し量検出装置20から入力されるワイヤロープ10の巻出し量に基づいて、スプレッダ11で掴んだコンテナ3を横行させる際に障害物となり得る物(以下、単に「障害物」という)の高さ及び横行されるコンテナ3の下面高さを演算する演算手段である。なお、上記演算手段21の演算方法については後述する。そして、上記駆動制御手段13は、駆動装置12を適切に駆動制御するとともに、演算手段21の演算結果に基づいてクレーン5の巻上げ量を制御する。
【0024】
次に、上記構成を有する荷役用クレーンの制御装置の動作について説明する。
先ず、荷役作業開始時に、可搬型の船体用GPSアンテナ16が船体2に持ち込まれ、荷役対称レーン上の電波を受け易い位置に設置される。なお、船体用GPSアンテナ16の設置位置は、上記の通り荷役対称レーン上の電波を受け易い位置が望ましいが、荷役対象レーンのコンテナ3の高さは、船体用GPSアンテナ16によって検出される位置データ及びデータ記憶部19に記憶された船体データに基づいて演算手段21で演算可能であるため、電波を受け易い位置であれば任意の位置でも構わない。また、上記位置データ送信装置17は、通常、船体用GPSアンテナ16と一体化されており、船体用GPSアンテナ16とともに船体2に設置される。
【0025】
船体用GPSアンテナ16の設置後、クレーン用GPSアンテナ14及び船体用GPSアンテナ16によって検出された各位置データが、位置データ送信装置15及び17を介して位置データ受信装置18に入力される。演算手段21では、先ず、クレーン用GPSアンテナ14によって検出された位置データに基づいて、ガーダ8の機械位置を演算する。また、ロープ巻出し量検出装置20から入力されたロープ巻出し量に基づいてロープ長(ガーダ8及びスプレッダ11間距離)を演算する。そして、演算されたガーダ8の高さ、上記ロープ長、データ記憶部19に記憶されたスプレッダ高さ及び規格化されたコンテナ高さに基づいて、スプレッダ11に掴まれたコンテナ3の下面の高さを演算する。即ち、ガーダ8の高さから、ロープ長、スプレッダ高さ、コンテナ高さを差し引くことによって、スプレッダ11に掴まれたコンテナ3の下面の高さが演算される。なお、上記コンテナ3の下面の高さに関する演算結果は、極僅かな所定時間毎に逐次更新される。
【0026】
一方、演算手段21は、船体用GPSアンテナ16によって検出された位置データに基づいて、船体2や船体2に積載されたコンテナ3の高さ、即ち、障害物の高さを演算する。なお、上記障害物の高さに関する演算結果は、極僅かな所定時間毎に逐次更新される。
【0027】
そして、駆動制御手段13では、演算手段21によって演算された、スプレッダ11に掴まれたコンテナ3の下面の高さ及び障害物の高さに基づいて、駆動装置12を適切に制御する。即ち、障害物の高さに所定の安全高さを加算した高さを制限値とし、スプレッダ11に掴まれたコンテナ3の下面の高さが上記制限値に一致、或いは、上記制限値より高くなるように、巻上げ及び横行を実施する。
【0028】
この発明の実施の形態1によれば、スプレッダ11で掴んだコンテナ3の巻上げ量を障害物の高さに合わせて設定することができ、余分な巻上げを防止し、荷役作業に要する時間を短縮して荷役効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0029】
また、演算手段21によって演算される、スプレッダ11に掴まれたコンテナ3の下面の高さ及び障害物の高さは、極僅かな所定時間毎に逐次更新され、常時最新の演算結果に基づいて駆動装置12が制御される。したがって、コンテナ3の積み降ろしによって船重心が移動して船体2が傾いた場合や、船体2が潮の影響によって上下動した場合でも、船体2の変位に合わせて十分な巻上げ量を確保してコンテナ3が障害物に接触することを防止することができ、且つ、余分な巻上げを防止して荷役効率を向上させることができる。
【0030】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2におけるコンテナターミナルを示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図を示している。図3において、22a及び22bは船体2の異なる場所に設置された可搬型の複数(実施の形態2においては2つ)の船体用GPSアンテナであり、実施の形態1における船体用GPSアンテナ16と同様の構成を有している。即ち、上記船体用GPSアンテナ22a及び22bには、図示しない位置データ送信装置がそれぞれ一体的に設けられており、この位置データ送信装置によって、検出された位置データが位置データ受信装置18に対して出力される。また、演算手段21は、上記2つの船体用GPSアンテナ22a及び22bにより検出された各位置データに基づいて、コンテナ3の傾斜θを演算する。なお、演算手段21の演算方法については後述する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0031】
上記構成を有する荷役用クレーンの制御装置では、先ず、荷役作業開始時に、可搬型の船体用GPSアンテナ22a及び22bが船体2に持ち込まれ、積載コンテナ3の上面の電波を受け易い異なる位置にそれぞれ設置される。例えば、船体用GPSアンテナ22a及び22bをなるべく離れた位置に配置するため、略直方体状に積載されたコンテナ3群の対角に設置される。そして、船体用GPSアンテナ22a及び22bの設置後、クレーン用GPSアンテナ14並びに船体用GPSアンテナ22a及び22bによって検出された各位置データが、位置データ受信装置18に入力される。
【0032】
演算手段21では、実施の形態1と同様に、位置データ受信装置18で受信した各位置データに基づいて、スプレッダ11に掴まれたコンテナ3の下面の高さ及び障害物の高さを演算する。そして、駆動制御手段13は、上記演算手段21の演算結果に基づいて、余分な巻上げを防止し、且つ、荷役効率を向上させるように駆動装置12を制御して、適切な巻上げ及び横行を実施する。
【0033】
また、演算手段21は、船体用GPSアンテナ22a及び22bによって検出された各位置データ並びにデータ記憶部19に記憶された船体データに基づいて、船体2に積載されたコンテナ3の傾きθを演算する。なお、図4はこの発明の実施の形態2における荷役用クレーンの制御装置の動作を説明するための図であり、上記傾きθの演算方法を説明するための図である。図3及び図4において、傾斜θは次式で表される。
【0034】
[数1]
θ=tan−1(H1/W1)+θ0
ここで、H1は船体用GPSアンテナ22a及び22bによって検出された位置データの高さ成分の差、即ち、船体用GPSアンテナ22a及び22bの高低差、W1は船体用GPSアンテナ22a及び22bの設置間距離、θ0は船体2の船倉床面とデッキ面との構造的傾きである。なお、数1のW1に、船体用GPSアンテナ22a及び22bの船体2の幅方向における設置間距離(図3におけるx)を代入することにより、船体2を正面から見た場合の傾きθが算出され、船体用GPSアンテナ22a及び22bの船体2の横(長さ)方向における設置間距離(図3におけるy)を代入することにより、船体2を横から見た場合の傾きθが算出される。なお、上記傾きθに関する演算結果は、極僅かな所定時間毎に逐次更新される。
【0035】
そして、駆動制御手段13では、演算手段21によって演算された上記傾きθに基づいて、駆動装置12を適切に制御する。即ち、スプレッダ11がコンテナ3を掴む際に、スプレッダ11の傾斜が、数1にx及びyを代入して得られた各傾斜θに一致するように制御する。
【0036】
この発明の実施の形態2によれば、船体2に積載されたコンテナ3を掴む際のスプレッダ11の向きが、演算された傾きθに合わせて設定されるため、手動によるスプレッダ11の向きの調整が不要となって、荷役効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0037】
また、演算手段21によって演算される上記傾きθは、極僅かな所定時間毎に逐次更新され、常時最新の演算結果に基づいて駆動装置12が制御される。したがって、コンテナ3の積み降ろしによって船重心が移動して船体2が傾いた場合や、船体2が潮の影響によって上下動した場合でも、船体2の変位に合わせてスプレッダ11の向きを追従させることができる。なお、トロリを陸側から船側に横行させる際にスプレッダ11の傾斜を上記傾斜θに一致させるような制御を開始することにより、船上でコンテナ3を掴む際の調整時間を短縮することができ、さらに荷役効率を向上させることが可能となる。その他の効果は、実施の形態1と同様である。
【0038】
実施の形体3.
図5はこの発明の実施の形態3におけるコンテナターミナルを示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図を示している。図5において、23a及び23bはクレーン5の異なる場所に設けられた複数(実施の形態3においては2つ)のクレーン用GPSアンテナであり、実施の形態1におけるクレーン用GPSアンテナ14と同様の構成を有している。即ち、上記クレーン用GPSアンテナ23a及び23bには、図示しない位置データ送信装置がそれぞれ一体的に設けられており、この位置データ送信装置によって、検出された位置データが位置データ受信装置18に対して出力される。また、演算手段21は、上記2つのクレーン用GPSアンテナ23a及び23bにより検出された各位置データに基づいて、クレーン5の傾斜θcを演算する。なお、演算手段21の演算方法については後述する。その他の構成は、実施の形態1及び2と同様である。
【0039】
上記構成を有する荷役用クレーンの制御装置では、先ず、荷役作業開始時に、可搬型の船体用GPSアンテナ22a及び22bが、積載コンテナ3の上面の電波を受け易い異なる位置にそれぞれ設置される。そして、船体用GPSアンテナ22a及び22bの設置後、クレーン用GPSアンテナ23a及び23b並びに船体用GPSアンテナ22a及び22bによって検出された各位置データが、位置データ受信装置18に入力される。
【0040】
演算手段21では、実施の形態1と同様に、位置データ受信装置18で受信した各位置データに基づいて、スプレッダ11に掴まれたコンテナ3の下面の高さ及び障害物の高さを演算する。そして、駆動制御手段13は、上記演算手段21の演算結果に基づいて、余分な巻上げを防止し、且つ、荷役効率を向上させるように駆動装置12を制御して、適切な巻上げ及び横行を実施する。
【0041】
また、演算手段21は、実施の形態2と同様に、船体用GPSアンテナ22a及び22bによって検出された各位置データ並びにデータ記憶部19に記憶された船体データに基づいて、上記傾きθを演算する。また、クレーン用GPSアンテナ23a及び23bから入力された各位置データに基づいて、クレーン5の傾きθcを演算する。なお、図6はこの発明の実施の形態3における荷役用クレーンの制御装置の動作を説明するための図であり、上記傾きθcの演算方法を説明するための図である。図5及び図6において、傾斜θcは次式で表される。
【0042】
[数2]
θc=tan−1{(H2−p)/W2}
ここで、H2はクレーン用GPSアンテナ23a及び23bによって検出された位置データの高さ成分の差、即ち、クレーン用GPSアンテナ23a及び23bの高低差、W2はクレーン用GPSアンテナ23a及び23bの設置間距離、pはクレーン用GPSアンテナ23a及び23bと設置時との機械的高低差である。なお、数2のW2に、クレーン用GPSアンテナ23a及び23bのトロリ走行方向における設置間距離(図5におけるxc)を代入することにより、クレーン5を正面から見た場合の傾きθcが算出され、クレーン用GPSアンテナ23a及び23bの走行レール4長手方向における設置間距離(図5におけるyc)を代入することにより、クレーン5を横から見た場合の傾きθcが算出される。なお、上記傾きθcに関する演算結果は、極僅かな所定時間毎に逐次更新される。
【0043】
そして、駆動制御手段13では、演算手段21によって演算された上記傾きθ及び傾きθcに基づいて、駆動装置12を適切に制御する。即ち、スプレッダ11がコンテナ3を掴む際に、スプレッダ11の傾斜が(θ−θc)に一致するように制御する。
【0044】
この発明の実施の形態3によれば、船体2に積載されたコンテナ3を掴む際のスプレッダ11の向きが、傾斜θ及び傾斜θcに合わせて設定されるため、より正確な設定が可能となる。また、トロリを陸側から船側に横行させる際にスプレッダ11の向きを上記傾斜(θ−θc)に一致させるような制御を開始することにより、船上でコンテナ3を掴む際の調整時間を短縮することができ、さらに荷役効率を向上させることが可能となる。その他は、実施の形態1及び2と同様の効果を奏する。
【0045】
実施の形態4.
実施の形態4における荷役用クレーンの制御装置は、基本的に図1及び図2に示すものと同様である。ここで、船体用GPSアンテナ16は、二次元方向の傾斜を検出する機能(センサ)を有しており、位置データと船体2の幅方向の傾斜データ及び横(長さ)方向の傾斜データとを、位置データ送信装置17を介して位置データ受信装置18に対して出力する。また、駆動制御手段13は、演算手段21の演算結果に基づいてクレーン5の巻上げ量を制御するとともに、船体用GPSアンテナ16により検出された各傾斜データに基づいて、スプレッダ11の傾斜を制御する。その他の構成は、実施の形体1と同様である。
【0046】
かかる構成を有することにより、1つの船体用GPSアンテナ16によって、実施の形態2の機能及び効果を奏することが可能となる。即ち、船体用GPSアンテナ16によって直接的にコンテナ3の傾きθを得ることができ、スプレッダ11の向きを傾きθに合わせて容易に設定することができる。その他は、実施の形態1及び2と同様の効果を奏する。
【0047】
実施の形態5.
実施の形態5における荷役用クレーンの制御装置は、基本的に図1及び図2に示すものと同様である。ここで、クレーン用GPSアンテナ14及び船体用GPSアンテナ16は、二次元方向の傾斜を検出する機能(センサ)を有している。そして、クレーン用GPSアンテナ14は、位置データとクレーン5のトロリ走行方向の傾斜データ及び走行レール4長手方向の傾斜データとを、位置データ送信装置15を介して位置データ受信装置18に対して出力し、船体用GPSアンテナ16は、位置データと船体2の幅方向方向の傾斜データ及び横(長さ)方向の傾斜データとを、位置データ送信装置17を介して位置データ受信装置18に対して出力する。また、駆動制御手段13は、クレーン用GPSアンテナ14及び船体用GPSアンテナ16により検出された各傾斜データに基づいて、スプレッダ11の傾斜を制御する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0048】
かかる構成を有することにより、1つのクレーン用GPSアンテナ14及び1つの船体用GPSアンテナ16とによって、実施の形態3の機能及び効果を奏することが可能となる。即ち、クレーン用GPSアンテナ14によって直接的にクレーン5の傾きθcを得ることができ、スプレッダ11の向きを(θ−θc)に合わせて容易に設定することができる。その他は、実施の形態1乃至3と同様の効果を奏する。
【0049】
なお、GPSアンテナによる位置検出精度は、cm級の検出が可能なものが実用化されており、その方法については限定しない。現在cm級の検出精度を得るための方式としては、国内基準点に設けられたGPSアンテナによってGPS衛星からの信号を元に計算した値と基準位置とのずれ補正量を、電話(携帯電話等の無線手段を含む)やインターネット網(無線LAN等も含む)により現地計算値に対し補正を加えるもの等がある。このような方式は、実施の形態1乃至5におけるクレーン用GPSアンテナ及び船体用GPSアンテナに対しても適宜採用される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施の形態1におけるコンテナターミナルを示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における荷役用クレーンの制御装置を示すブロック構成図である。
【図3】この発明の実施の形態2におけるコンテナターミナルを示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図4】この発明の実施の形態2における荷役用クレーンの制御装置の動作を説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態3におけるコンテナターミナルを示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図6】この発明の実施の形態3における荷役用クレーンの制御装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0051】
1 岸壁、 2 船体、 3 コンテナ、 4 走行レール、 5 クレーン、
6 トレーラ、 7 クレーン本体、 8 ガーダ、 9 機械室、
10 ワイヤロープ、 11 スプレッダ、 12 駆動装置、
13 駆動制御手段、 14 クレーン用GPSアンテナ、
15 位置データ送信装置、 16 船体用GPSアンテナ、
17 位置データ送信装置、 18 位置データ受信装置、 19 データ記憶部、
20 ロープ巻出し量検出装置、 21 演算手段、
22a 船体用GPSアンテナ、 22b 船体用GPSアンテナ、
23a クレーン用GPSアンテナ、 23b クレーン用GPSアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船に設置された船体用GPSアンテナと、
前記船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、
前記船体用GPSアンテナ及び前記クレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、前記荷物の横行時の障害物高さ及び横行される前記荷物の下面高さを演算する演算手段と、
前記演算手段の演算結果に基づいて、前記クレーンの巻上げ量を制御する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする荷役用クレーンの制御装置。
【請求項2】
船に設置された複数の船体用GPSアンテナと、
前記船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、
前記クレーンに設けられ、前記荷物を所定の方向から支持する支持手段と、
前記船体用GPSアンテナ及び前記クレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、前記荷物の横行時の障害物高さ及び横行される前記荷物の下面高さを演算し、前記複数の船体用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、前記荷物の傾斜を演算する演算手段と、
前記演算手段の演算結果に基づいて、前記クレーンの巻上げ量及び前記支持手段の傾斜を制御する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする荷役用クレーンの制御装置。
【請求項3】
複数のクレーン用GPSアンテナがクレーンに設けられ、
演算手段は、前記複数のクレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、前記クレーンの傾斜を演算する
ことを特徴とする請求項2に記載の荷役用クレーンの制御装置。
【請求項4】
船に設置され、二次元傾斜を検出する機能を有する船体用GPSアンテナと、
前記船と陸との間で荷物を積み降ろすクレーンに設けられたクレーン用GPSアンテナと、
前記クレーンに設けられ、前記荷物を所定の方向から支持する支持手段と、
前記船体用GPSアンテナ及び前記クレーン用GPSアンテナにより検出された各位置データに基づいて、前記荷物の横行時の障害物高さ及び横行される前記荷物の下面高さを演算する演算手段と、
前記演算手段の演算結果に基づいて前記クレーンの巻上げ量を制御し、前記船体用GPSアンテナにより検出された傾斜データに基づいて前記支持手段の傾斜を制御する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする荷役用クレーンの制御装置。
【請求項5】
クレーン用GPSアンテナは、二次元傾斜を検出する機能を有し、
駆動制御手段は、船体用GPSアンテナ及び前記クレーン用GPSアンテナにより検出された各傾斜データに基づいて、支持手段の傾斜を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の荷役用クレーンの制御装置。
【請求項6】
駆動制御手段は、支持手段の横行時に、前記支持手段の傾斜の制御を開始することを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の荷役用クレーンの制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−320737(P2007−320737A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154586(P2006−154586)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】