説明

荷電粒子ビーム描画装置の評価方法及び荷電粒子ビーム描画装置

【課題】荷電粒子ビームの移動に起因する位置誤差の発生をできるだけ抑えてより正確な測定用パターンの描画を行うことで、精度良くセトリング条件の算出を行うことが可能な荷電粒子ビーム描画装置の評価方法及び荷電粒子ビーム描画装置を提供する。
【解決手段】測定用パターン11を描画する制御データを記憶部31iに格納するステップと、制御データに基づき荷電粒子ビームBを使用して測定用パターン11を描画するとともに、新たに測定用パターン11の描画が行われる位置まで今後測定用パターン11の描画が行われる予定の領域ごとにデータ分解能と同程度の微小ショットを打ちつつ荷電粒子ビームBを移動させるステップと、全ての測定用パターン描画後露光するステップと、露光後の測定用パターン11を基に、その位置誤差を確認するステップと、確認された位置誤差に基づいて最適なセトリング条件を算出するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、荷電粒子ビーム描画装置の評価方法及び荷電粒子ビーム描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに所望の回路パターンを形成するために、リソグラフィー技術が用いられる。リソグラフィー技術では、マスク(レチクル)と称される原画パターンを使用したパターンの転写が行われる。この際、高精度なレチクルを製造するために、優れた解像度を備える電子ビーム(電子線)描画技術が用いられる。
【0003】
レチクルに電子ビーム描画を行う荷電粒子ビーム描画装置の一方式として、例えば以下のような可変成形方式を挙げることができる。すなわち、ここでは図示しないが、この可変成形方式は、第1成形アパーチャの開口と、第2成形アパーチャの開口とを通過することで成形された電子ビームによって可動ステージに載置された試料上に図形パターンが描画される。
【0004】
ここで基板への位置変更に主副2段の偏向器を用いて行われるパターンの描画処理は、基板の描画領域を主偏向器で変更可能な幅で短冊状に分割したストライプ領域ごとに行われる。さらに、各ストライプ領域を描画する際には、ストライプ領域を副偏向器で変更可能なサイズでメッシュ状に分割した副偏向領域(サブフィールド)ごとに描画される。近年、高精度、微細化が進むに伴い、上記ストライプ幅やサブフィールドが小さくなってきている。
【0005】
ストライプ幅の縮小に伴うストライプ数の増加やサブフィールドの縮小は、描画精度に影響を与えるが、副偏向領域における補正については、以下の特許文献1にその内容が記載されている。
【0006】
一方、この状況は、主偏向フィールドにおけるセトリングにも影響を及ぼしつつある。従来より主偏向フィールドにおけるセトリングは、例えば、以下の通りに行われている。すなわち、図9は、主偏向フィールド101内におけるセトリング条件の算出に必要な位置誤差を測定するために用いられる評価用基板100の一部を示すものである。図9では特に主偏向フィールド101を拡大して示している。
【0007】
この評価用基板100には、位置誤差を測定する際に使用される測定用パターン102が描画されている。測定用パターン102は、図9において矩形で示されているが、X方向に10カ所、Y方向に11カ所、1つの主偏向フィールド101内に計110カ所の測定用パターン102が描画されている。なお、1つの主偏向フィールド内にいくつの測定用パターンを描画するかについては任意に設定することが可能である。
【0008】
図9に示す主偏向フィールド101においては、実線の矢印が示す通り、左下隅に最初の測定用パターンが描画された後、Y方向に向けて順次測定用パターンが描画される。主偏向フィールドにおけるY方向一杯に測定用パターンが描画された後は、荷電粒子ビームは右下に移動し(評価用基板100が載置されているXYステージが移動し)、再度Y方向に向けて測定用パターンが描画される。
【0009】
このような描画処理が行われることによって、荷電粒子ビームの移動距離が長い場合(1列全ての測定用パターンの描画が終了した後、次の列に移動する場合)、及び、反対に
短い場合(同じ列の中でY方向に描画していく場合)における荷電粒子ビームの描画による位置誤差を基にセトリング条件の算出が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−066236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記図9を用いて説明した主偏向セトリングについては、以下の点についてより精度良く行うことが可能とも考えられる。
【0012】
すなわち、図9に示す測定用パターンの描画方法では、荷電粒子ビームの移動距離が長い場合、或いは短い場合の2つの距離に関する測定データしか得ることができない。もちろん、これらの測定データから各距離におけるデータを類推することができることから、実際にセトリング条件を算出することは可能である。但し、上述したように主偏向セトリングについても高精度であることが求められる場合には、長短の測定データだけではセトリング条件の算出には不足となる場合もあると考えられる。
【0013】
そこで、測定用パターンの描画方法について、以下のような方法を採用することも考えられる。図10及び図11は、図9に示す描画方法とは異なる測定用パターンの描画方法について説明する説明図であり、さらに図10と図11とで異なる方法が示されている。測定用パターン102を示す矩形内に数字が示されている測定用パターン102があるが、これは描画の順序を示すものである。
【0014】
図10においては、主偏向フィールド101Aの左下から測定用パターン102の描画が開始される。数字の1で示される測定用パターン102Aが描画された後、同列の測定用パターン102Aから最も通り位置に示される領域に数字の2で示される測定用パターン102Bを描画する。測定用パターン102Bが描画されると、今度は測定用パターン102Aに隣接し、同列に含まれる数字の3で示される測定用パターン102Cの描画が行われる。
【0015】
このように、図10で示される主偏向フィールド101Aでは、最も端にある測定用パターンを描画開始場所とし、同じ列に含まれる測定用パターンの描画領域であって、描画された測定用パターンから最も遠い距離にある測定用パターンの描画領域に測定用パターンを描画する。この結果、同列内でY方向に行ったり来たりしながら、すなわち、図10において数字が付されている順に描画が行われる。同列内において設定される全ての領域について測定用パターンが描画された後は、列を替えて同様に描画処理が行われる。
【0016】
一方、図11において示されている描画の方法は、描画が開始される位置は図10を示して説明した方法と同様であるが、その順序が異なる。すなわち、図11に示す主偏向フィールド101Bでは、主偏向フィールド101Bの左下から描画が開始される。次に描画されるのは数字の2で示される測定用パターン102bであり、さらにその次に描画される位置は、数字の1で示される測定用パターン102aと同じ行に含まれ、測定用パターン102aに隣接する位置である(数字の3で示される測定用パターン102c)。数字の3で示される位置に測定用パターン102cが描画された後は、測定用パターン102cと同じ列に含まれ、測定用パターン102cから最も遠い位置にて描画処理が行われる(数字の4で示される測定用パターン102d)。この位置は、測定用パターン102bと同じ行に含まれ、測定用パターン102bに隣接する位置である。
【0017】
このようにX方向に描画を続け、測定用パターン102を描画できなくなると、再度測定用パターン102aと同じ列まで戻り、行を替えて数字の21で示される測定用パターン102から同じように描画処理が行われる。
【0018】
図10或いは、図11に示される方法を採用すれば、長短いずれかの距離におけるセトリングの評価のみならず、様々な距離におけるセトリングの評価を行うことが可能となり、これら評価を通じて高精度なセトリング条件を算出することができる。
【0019】
但し、図10、図11に示す方法であれば様々な距離におけるセトリング条件を算出することは可能であるが、新たな不都合も考えられる。すなわち、いずれの方法も荷電粒子ビームが長い距離を移動して描画処理を行った上で、順次描画処理に必要な移動距離が短くなる方法である。この場合、描画開始の段階でセトリング時間が足りない場合もあり得ることを考えると、セトリング時間が足りない状態で次々と連続して描画処理が進行すると、セトリング時間が不足することに起因する位置ズレの状態を引きずったまま描画処理がなされることになる。これでは正しい評価を行うことができない。
【0020】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、荷電粒子ビームが移動することに起因する位置誤差の発生をできるだけ抑えてより正確な測定用パターンの描画を行うことで、精度良くセトリング条件の算出を行うことが可能な荷電粒子ビーム描画装置の評価方法及び荷電粒子ビーム描画装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の実施の形態に係る特徴は、荷電粒子ビーム描画装置の評価方法において、評価用基板の主偏向フィールド内に測定用パターンを描画するための荷電粒子ビームの制御データを記憶部に格納するステップと、制御データに基づいて、荷電粒子ビームを使用して測定用パターンを描画するとともに、新たに測定用パターンの描画が行われる位置まで今後測定用パターンの描画が行われる予定の領域ごとにデータ分解能と同程度の微小ショットを打ちつつ荷電粒子ビームを移動させるステップと、評価に必要な測定用パターンを全て描画した後、露光するステップと、露光後の測定用パターンを基に、描画された測定用パターンの位置誤差を確認するステップと、確認された位置誤差に基づいて最適なセトリング条件を算出するステップとを備える。
【0022】
また、上記荷電粒子ビーム描画装置の評価方法において、測定用パターンの描画が列ごとに行われる場合には、同列であって、連続して描画される2つの測定用パターン間の距離が順次短くなるように描画処理が行われるとともに、測定用パターンへの描画処理の間に荷電粒子ビームを移動させる際、微小ショットを打ちつつ同列において移動する距離が順次短くなるように移動処理されることが望ましい。
【0023】
また、上記荷電粒子ビーム描画装置の評価方法において、描画される測定用パターンによって構成される第1の行と、第1の行に対して最も遠い距離において描画される測定用パターンによって構成される第2の行とのそれぞれの測定用パターンが交互に描画される場合に、第1の行と第2の行において、新たに描画される測定用パターンは、順次その行において直前に描画された測定用パターンに隣接する位置に描画されるとともに、第1の行を構成する第1の測定用パターン及び、第1の測定用パターンと同列に含まれる第2の行を構成する第2の測定用パターンを描画した後、第1の行を構成するとともに、第1の測定用パターンに隣接する位置に描画される第3の測定用パターンへ荷電粒子ビームを移動させる場合、第1及び第2の測定用パターンによって構成される第1の行に隣接する第2の行を微小ショットを打ちつつ第3の測定用パターンの描画領域まで移動させることが望ましい。
【0024】
さらに、上記荷電粒子ビーム描画装置の評価方法において、荷電粒子ビームの移動が行われる描画済みの測定用パターンと新たに描画が行われる測定用パターンとの間における今後測定用パターンの描画が行われる予定の領域において、予定領域の整数倍の微小ショットが打たれることが望ましい。
【0025】
本発明の実施の形態に係る特徴は、荷電粒子ビーム描画装置において、荷電粒子ビームを用いて移動可能なステージ上に載置される評価用基板に測定用パターンを描画する描画部と、荷電粒子ビームの偏向を制御する偏向制御部と、ステージの移動を制御するステージ制御部と、偏向制御部とステージ制御部に対する制御を行う制御計算機と、から構成される制御部と、を備え、制御部は、評価用基板の主偏向フィールド内に描画された測定用パターンから抽出された測定データを解析する解析部と、解析部による解析結果を基に、荷電粒子ビームのショットの位置誤差を確認し、最適なセトリング条件を算出する算出部とを備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、荷電粒子ビームが移動することに起因する位置誤差の発生をできるだけ抑えてより正確な測定用パターンの描画を行うことで、精度良くセトリング条件の算出を行うことが可能な荷電粒子ビーム描画装置の評価方法及び荷電粒子ビーム描画装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における制御計算機の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における評価用基板と主偏向フィールドとの関係を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置の評価の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置の評価方法のうち、1つ目の評価方法を説明する際に使用する説明図である。
【図6】図5に示す破線内部を拡大して示す拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置の評価方法のうち、2つ目の評価方法を説明する際に使用する説明図である。
【図8】図7に示す破線内部を拡大して示す拡大図である。
【図9】従来の主偏向フィールドにおける測定用パターンの描画の順序について説明する説明図である。
【図10】従来の主偏向フィールドにおける測定用パターンの描画の順序について説明する説明図である。
【図11】従来の主偏向フィールドにおける測定用パターンの描画の順序について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置1の全体構成を示すブロック図である。なお、以下の実施の形態においては、荷電粒子ビームの一例として電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限られるものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームであっても良い。
【0030】
荷電粒子ビーム描画装置1は、試料に所定のパターンを描画する装置であり、特に可変成形型の描画装置の一例である。図1に示すように、荷電粒子ビーム描画装置1は、大きく描画部2と制御部3を備えている。描画部2は、電子鏡筒4と描画室6を備えている。
【0031】
電子鏡筒4内には、電子銃41と、照明レンズ42と、ブランキング偏向器43と、ブランキングアパーチャ44と、第1の成形アパーチャ45と、投影レンズ46と、成形偏向器47と、第2の成形アパーチャ48と、対物レンズ49と、位置偏向器50とが配置されている。照明レンズ42と、ブランキング偏向器43と、ブランキングアパーチャ44と、第1の成形アパーチャ45と、投影レンズ46と、成形偏向器47と、第2の成形アパーチャ48と、対物レンズ49と、主偏向器50と、副偏向器51とは、電子銃41から照射される電子ビームBの光路に沿って順に配置されている。
【0032】
描画室6の中には、ステージ61が配置される。ステージ61上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料が載置されることになるが、ここでは評価用基板Mが載置されている。
【0033】
ブランキング偏向器43は、例えば、2極、或いは、4極等の複数の電極によって構成される。また、成形偏向器47、主偏向器50、副偏向器51は、例えば、4極、或いは、8極等の複数の電極によって構成される。図1では、成形偏向器47、主偏向器50、副偏向器51、それぞれの偏向器ごとに1つのDACアンプしか記載していないが、各電極にそれぞれ少なくとも1つのDACアンプが接続される。なお、DACアンプにいう「DAC」は、「Digital to Analog Converter」の頭文字である。
【0034】
制御部3は、制御計算機31と、偏向制御部32と、ブランキングアンプ33と、偏向アンプ(DACアンプ)34,35と、ステージ制御部36と、を備えている。制御計算機31、偏向制御部32、ステージ制御部36は、図示しないバスを介して互いに接続されている。また、偏向制御部32、ブランキングアンプ33、DACアンプ34,35は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0035】
ブランキングアンプ33は、ブランキング偏向器43に接続される。また、DACアンプ34は、成形偏向器47に接続される。DACアンプ35は、位置偏向器である、ここでは副偏向器51に接続される。ブランキングアンプ33、DACアンプ34,35に対しては、偏向制御部32から、それぞれ独立した制御用のデジタル信号が出力される。デジタル信号が入力されたブランキングアンプ33、DACアンプ34,35は、それぞれのデジタル信号をアナログ電圧信号に変換し、増幅させて偏向電圧として接続された各偏向器に出力する。このようにして、各偏向器には、それぞれ接続されるDACアンプから偏向電圧が印加される。かかる偏向電圧によって電子ビームが偏向させられる。
【0036】
なお、荷電粒子ビーム描画装置1には、上述したように電子ビームを取り囲むように成形偏向器47、主偏向器50、副偏向器51が4極、或いは、8極設けられており、電子ビームを挟んで各々一対(4極の場合は2対、8極の場合は4対)配置されている。そして成形偏向器47、主偏向器50、副偏向器51ごとにそれぞれDACアンプが接続されている。但し、図1には成形偏向器47、主偏向器50、副偏向器51に接続されているDACアンプそれぞれ1つずつのみを示し、その他のDACアンプを示していない。
【0037】
ステージ制御部36は、ステージ61と制御計算機31とに接続し、ステージ61の動きを検出するとともに制御している。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態における制御計算機31の内部構成を示すブロック図であ
る。制御計算機31は、CPU(Central Processing Unit)31aと、ROM(Read Only Memory)31bと、RAM(Random Access Memory)31c及び入出力インターフェイス31dがバス31eを介して接続されている。入出力インターフェイス31dには、入力部31fと、表示部31gと、通信制御部31hと、記憶部31iと、リムーバブルディスク31jとが接続されている。また、バス31eを介して、解析部37と、算出部38も接続されている。
【0039】
CPU31aは、入力部31fからの入力信号に基づいてROM31bから荷電粒子ビーム描画装置1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶部31iに格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。またCPU31aは、入力部31fや入出力インターフェイス31dを介して、図1において図示していないその他の外部機器からの入力信号に基づいて各種装置の制御を行う。さらにCPU31aは、RAM31cや記憶部31i等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAM31cにロードするとともに、RAM31cから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、データの計算、加工等、一連の処理を実現する処理装置である。
【0040】
入力部31fは、荷電粒子ビーム描画装置1の操作者が各種の操作を入力するキーボード、ダイヤル等の入力デバイスにより構成されており、操作者の操作に基づいて入力信号を作成しバス31eを介してCPU31aに送信される。
【0041】
表示部31gは、例えば液晶ディスプレイである。この表示部31gは、CPU31aからバス31eを介して出力信号を受信し、例えば、CPU31aの処理結果等を表示する。
【0042】
通信制御部31hは、LANカードやモデム等の手段であり、荷電粒子ビーム描画装置1をインターネットやLAN等の通信ネットワークに接続することを可能とする手段である。通信制御部31hを介して通信ネットワークと送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インターフェイス31d及びバス31eを介してCPU31aに送受信される。
【0043】
記憶部31iは、半導体や磁気ディスクで構成されている。記憶部31iには、描画データの基となるレイアウトデータや描画データ、CPU31aで実行されるプログラムやデータが記憶されている。
【0044】
リムーバブルディスク31jは、光ディスクやフレキシブルディスクのことであり、ディスクドライブによって読み書きされた信号は、入出力インターフェイス31d及びバス31eを介してCPU31aに送受信される。
【0045】
また、制御計算機31は、ここではハードウェアとして構成した例を挙げて説明しているが、プログラムといったソフトウェアで構成されても良い。また、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成されても良い。制御計算機31が上述したようにソフトウェアを含んで構成される場合、制御計算機31に入力される入力データ、或いは、演算された結果は、都度図1には示されていない、例えばメモリに記憶される。
【0046】
さらに、図1に示す本発明の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置1には、本発明の実施の形態を説明する上で必要な構成のみを示している。従って、その他の構成、例えば、各レンズを制御する制御回路等が付加されていても良い。
【0047】
荷電粒子ビーム描画装置1は、以下のように動作して対象へ描画を行う。電子銃41(放出部)から放出された電子ビームBは、ブランキング偏向器43内を通過する際、ブラ
ンキング偏向器43によってONの状態にされている場合に電子ビームBがブランキングアパーチャ44を通過するように制御される。一方、OFFの状態では、電子ビームB全体がブランキングアパーチャ44で遮蔽されるように偏向される。ブランキングアンプ33からの偏向電圧がOFFからONとなり、その後再度OFFになるまでにブランキングアパーチャ44を通過した電子ビームBが1回の電子ビームのショットとなる。
【0048】
かかる電子ビームBがブランキングアパーチャ44を通過する状態、ブランキングアパーチャ44によって遮蔽される状態を交互に生成する偏向電圧がブランキングアンプ33から出力される。そしてブランキング偏向器43は、ブランキングアンプ33から出力された偏向電圧によって、通過する電子ビームBの向きを制御して、電子ビームBがブランキングアパーチャ44を通過する状態、ブランキングアパーチャ44によって遮蔽される状態を交互に生成する。
【0049】
以上のようにブランキング偏向器43とブランキングアパーチャ44とを通過することによって生成された各ショットの電子ビームBは、照明レンズ42により矩形、例えば、長方形の孔を持つ第1の成形アパーチャ45全体を照明する。ここで電子ビームBをまず矩形、例えば長方形に成形する。そして、第1の成形アパーチャ45を通過した第1のアパーチャ像の電子ビームBは、投影レンズ46により第2の成形アパーチャ48上に投影される。第1の成形アパーチャ45を通過した電子ビームBの向きを制御するための偏向電圧がDACアンプ34から印加された成形偏向器47によって、かかる第2の成形アパーチャ48上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。
【0050】
第2の成形アパーチャ48を通過した電子ビームBの照射位置を制御するための偏向電圧がDACアンプ35から副偏向器51、及び図示しないDACアンプから主偏向器50に対して出力される。第2の成形アパーチャ48を通過し第2のアパーチャ像とされた電子ビームBは、対物レンズ49により焦点を合わせられ、ステージ制御部36によって制御され連続的に移動するステージ61に載置された試料(本発明の実施の形態においては、評価用基板)の所望する位置に照射される。
【0051】
図3は、本発明の実施の形態における評価用基板Mと主偏向フィールド10との関係を説明する説明図である。図3に示すように、荷電粒子ビーム描画装置1を用いて所定のパターンを描画する場合には、描画対象試料となる、例えばマスク、或いは、評価用基板の描画領域は、主偏向器50により偏向可能な幅で、例えば、Y方向にストライプ状の複数の単位描画領域(ストライプ)Sに分割される。さらに、各ストライプSにおいてX方向にも、例えば、ストライプSのY方向の幅と同じ幅で区切られる。この区切られた領域が主偏向器50により偏向可能な主偏向フィールド10となる。なお、図3では図示していないが、主偏向フィールド10をさらに細分化した領域が副偏向領域(サブフィールド)となる。
【0052】
ここで主偏向器50は、副偏向領域の位置を制御するために用いられ、複数の副偏向領域が含まれる範囲(主偏向フィールド10)内で移動する。そのため、マスク、或いは、評価用基板といった描画対象試料を描画するに当たっては、主偏向フィールド10での、例えば、ビームドリフト等に起因する描画位置のずれを補正する必要がある。
【0053】
本発明の実施の形態においては、評価用基板Mの主偏向フィールド10には、複数の測定用パターン11が描画される。主偏向フィールド10においてこの測定用パターン11が描画される際の描画位置のずれを荷電粒子ビームBの移動距離との関係で測定し、主偏向器50における最適なセトリングを算出することによって荷電粒子ビーム描画装置1の評価を行う。
【0054】
次に具体的な荷電粒子ビーム描画装置1の評価方法について、図4に示すフローチャートを基に、適宜図5ないし図8を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置1の評価の流れを示すフローチャートである。
【0055】
まず、荷電粒子ビーム描画装置1(制御計算機31内の記憶部31i)に評価用の描画データを格納する(ST1)。評価用基板Mに対しては、当該描画データを用いて測定用パターン11を描画する。描画データの格納に当たっては、例えば、操作者が入力部31fを用いて直接入力しても、或いは、リムーバブルディスク31jを介して読み込むようにしても良い。
【0056】
そして、当該描画データを用いて評価用基板Mの主偏向フィールド10に測定用パターン11を描画する(ST2)。このときの測定用パターン11の描画方法については、以下2つの実施の形態に分けて説明する。
【0057】
図5は、本発明の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置1の評価方法のうち、1つめの評価方法を説明する際に使用する説明図である。また、図6は、図5に示す破線内部を拡大して示す拡大図である。
【0058】
図5に示す主偏向フィールド10には、X方向に10カ所、Y方向に11カ所、1つの主偏向フィールド内に計110カ所の測定用パターン11が描画されている。なお、ここでは、理解の便宜のために、X方向に数えることのできる10の列をC1ないしC10で表わす。また、Y方向に数えることのできる11の行をL1ないしL11と表わす。
【0059】
また、測定用パターン11内に記載されている数字は、描画の順序を示している。すなわち、例えば、(C1,L1)の座標で表わすことのできる測定用パターン11は、当該主偏向フィールド10において1番目に描画される。また、(C1,L11)の座標で表わすことのできる測定用パターン11は、当該主偏向フィールド10において2番目に描画される。
【0060】
本発明の第1の実施の形態においては、図5に示す主偏向フィールド10内の測定用パターン11は、列ごとに描画される。例えば、C1列の描画が開始されると、当該C1列に含まれる全ての測定用パターンが描画された後、隣接するC2列の描画が開始される。このようにしてC1列からC10列に向けてX方向に各列ごとに順々に描画がなされる。
【0061】
さらに、C1列の中では、L1行の測定用パターン11が描画された後、L11行の測定用パターン11が描画される。その後、L2行の測定用パターン11が描画され、次はL10の測定用パターン11が描画される。このように図5に示す評価方法における測定用パターンの描画順は、同列であって、連続して描画される2つの測定用パターン間の距離が順次短くなるように描画処理が行われる、と言うことができる。
【0062】
以上の順序に従って測定用パターン11が描画されることによって、描画に当たって荷電粒子ビームBの移動距離が最も長い場合(L1からL11に移動する場合)から、最も短い場合(L7からL6に移動する場合)まで様々な距離をもって描画を行うことになるため、様々な距離における描画位置のずれを測定することが可能となる。
【0063】
次に、実際の描画処理について、図6を用いてさらに詳細に説明する。図6は、図5における主偏向フィールド10のうち、C1列及びC2列を抜き出して拡大して示している。上述したように、第1の実施の形態において説明している評価方法においては、(C1,L1)の座標で示される測定用パターン11Aが1番目に描画された後、(C1,L1
1)の座標で示される測定用パターン11Bが2番目に描画される。その後、(C1,L2)の座標で示される測定用パターン11Cが3番目に描画されることになる。このような順序に従って、荷電粒子ビームBは移動し、所定の領域に測定用パターン11を描画する。
【0064】
その際、1番目に測定用パターン11Aが描画された後、C1列において最も遠い距離にある測定用パターン11Bを2番目に描画するべく荷電粒子ビームBは移動する。この移動に関して、主偏向フィールド10内において長い距離を移動するということは、DACアンプに高い電圧が印加されることを意味し、この段階ではまだ適切とは言えないセトリング条件の下では、エラーが発生しうる。
【0065】
ここでの「エラー」とは、荷電粒子ビームBによるショットが対象予定位置に正確になされず、位置誤差が発生することを示す。すなわち、測定用パターン11Bとして(C1,L11)の位置に描画するべきところ、予定されている位置には描画されず少しずれて描画がされることである。ここでのエラーは、高い電圧が印加されていることによって生ずるものであることから、エラーが解消(キャンセル)するまでには暫く時間が掛かる。このエラー解消時間は、印加される電圧の高低により、上述したように高い電圧が印加された場合には、エラー解消時間が長くなり、一方、低い電圧が印加された場合には、それだけエラー解消時間が短くなる。
【0066】
従って、何の手当もせずこのようなエラーが発生した状態で、次の(C1,L2)の位置に3番目の測定用パターン11Cの描画がなされると、測定用パターン11の描画は連続して行われることから、十分なエラー解消時間を確保することができず、測定用パターン11Bを描画する際に生じたエラーがキャンセルされず残ったままになる。そのため連続して描画がされると、エラーの状態を引きずったまま3番目の測定用パターン11Cが描画されることになる。しかも2番目の測定用パターン11Bの位置(C1,L11)から3番目の測定用パターン11Cの位置(C1,L2)への移動距離は、1番目の測定用パターン11Aの位置(C1,L1)から2番目の測定用パターン11Bの位置(C1,L11)への移動距離に次いで長い距離である。
【0067】
なお、2番目の測定用パターンBから3番目の測定用パターンCへの荷電粒子ビームBの移動においてもエラーが発生する。1番目の測定用パターンAから2番目の測定用パターンBへの移動にて発生したエラーが解消しないうちに2番目の測定用パターンBから3番目の測定用パターンCへの移動がなされ、当該移動についてもエラーが発生することから、結果としてエラーが累積する形になる。これでは精度の良い描画がなされないばかりでなく、正確なセトリング条件の算出も不可能である。
【0068】
そこで、本発明の実施の形態においては、例えば、2番目の測定用パターンBから3番目の測定用パターンCへの移動等、2番目の測定用パターンの描画以降に行われる描画処理における移動に特徴を持たせた。すなわち、上述したようにエラー解消時間の長短は、荷電粒子ビームBの移動距離に対応することになることから、荷電粒子ビームBの移動距離を短くする。すなわち、2番目の測定用パターンBから3番目の測定用パターンCへ一足飛びに移動するのではなく、(C1,L10)で示される4番目に描画予定の位置、(C1,L9)で示される6番目に描画予定の位置、(C1,L8)で示される8番目に描画予定の位置、というように、移動元となる測定用パターン11から隣接する位置に描画される予定の測定用パターン11へと順々に移動していき、最終的に移動先となる測定用パターン11へと至る移動方法である。図6では、実線の矢印によってこのように荷電粒子ビームBが移動する様子を示している。
【0069】
このように、長い距離の移動を経た後、短い距離の移動を重ねることで、長い距離の移
動に伴って生ずるエラーを解消する時間を確保することができる。もともと隣接する測定用パターン間を移動する距離に伴って生ずるエラーは、移動距離が短いことから印加される電圧が低く、エラーが生じたとしてもその解消時間は無視できるほどごく短いものである。そのため、荷電粒子ビームBが移動元の測定用パターン11Bから移動先の測定用パターン11Cへ隣接する測定用パターンをたどって移動している間に、測定用パターン11Aから測定用パターン11Bへの移動の際に生じたエラーは十分に低減、或いは、解消されるものと考えられる。従って、移動先の測定用パターン11Cに到達し、測定用パターン11Cに描画を行う際には、発生していたエラーは既に十分に低減、或いは、解消されていることから、これまでのエラーを引きずることなく描画処理を行うことができる。
【0070】
なお、測定用パターン11Cの描画後、測定用パターン11Dの描画のために(C1,L2)から(C1,L10)まで移動する際にもまたエラーは発生する。但し、上述したように隣接する測定用パターンを伝ってその次に描画予定の測定用パターン11Eに到達する際には、測定用パターン11Cから測定用パターン11Dへの移動に伴って発生したエラーは十分に低減、或いは、解消されているものと考えられる。
【0071】
また、この移動を行うに当たっては、荷電粒子ビームBを用いて実際に描画を行う。但し、例えば、測定用パターン11Aや11Bというように測定用パターン11の領域内に露光可能な大きさでショットを打つことはしない。このようなショットを打ってしまうと、その後荷電粒子ビームBの移動に伴って描画した当該測定用パターン11は利用することができなくなってしまうからである。これでは、単に移動元の測定用パターンから隣接する測定用パターンへ荷電粒子ビームBが短距離移動したに過ぎず、荷電粒子ビームBが様々な距離を移動して描画したことを利用してセトリング条件を算出するという本来の目的を果たすことができない。
【0072】
そこで、本発明の実施の形態においては、本来の移動先へ移動する際の途中にある隣接する測定用パターン11に対して、微小なショットを打つこととしている。この「微小ショット」とは、ビーム分解能よりも小さなショットであり、例えば、測定用パターンの大きさを1とした場合、その大きさの1/1000くらいの大きさである。最少データ分解能寸法を用いてもよい。この大きさであれば、描画処理後のプロセス処理において露光処理が行われたとしても露光されず、セトリング条件の算出に当たっての阻害要因とはならない。
【0073】
従って、このような微小ショットであれば、まだ描画されていない測定用パターン11内において評価可能な領域をつぶすことはなく、別途本来の描画処理がなされた場合であってもそのショット位置に関する誤差の有無を確認することができ、十分にセトリング条件の算出に必要な評価を行うことが可能となる。
【0074】
図6に示す4番目に描画予定の測定用パターン11Dをはじめとして、移動元である2番目の測定用パターン11Bから移動先である3番目の測定用パターン11CまでC1列において互いに隣接する測定用パターン内に斜線で示される小さな矩形は、微小ショットを示している。
【0075】
このように、微小ショットを打ちつつ描画対象となる測定用パターンまで移動する方法を採用することによって、微小ショットを打ったとしてもその痕跡を残さず移動することを可能とし、荷電粒子ビームBの様々な移動距離における位置誤差を測定する、という目的を達することができる。
【0076】
2番目に描画された測定用パターン11Bから3番目に描画される予定の測定用パターン11Cまで移動した荷電粒子ビームBは、測定用パターン11Cに描画をした後、今度
は4番目に描画予定の(C1,L10)に位置する測定用パターン11Dまで一気に移動する。そして測定用パターン11Dに描画をした後、隣接する測定用パターン11を1つずつ移動して次に描画予定の測定用パターン11Eに向けて移動する。
【0077】
以上説明した順序で主偏向フィールド10内に測定用パターン11を描画した後、評価用基板Mを荷電粒子ビーム描画装置1から取り出す(図4のST3)。これは、露光等のプロセス処理を行うためであり、この処理を行うことによって、測定用パターン11に描画された荷電粒子ビームBのショットの痕跡を明らかにすることができる。なお、上述したように、微小ショットに関してはこのプロセス処理を経てもその痕跡が現われることはない。
【0078】
その上で、位置誤差測定器を用いて、評価用基板Mの主偏向フィールド10内における位置誤差を測定データとして抽出する(ST4)。この測定データがセトリング条件を算出するに当たっての基となるデータとなる。なお、ここでは、荷電粒子ビーム描画装置1とは別の装置である位置誤差測定器を用いて測定データの抽出を行う例を説明したが、この位置誤差測定器の機能を荷電粒子ビーム描画装置1が備えている場合には、荷電粒子ビーム描画装置1にて測定データの抽出を行う。
【0079】
抽出された測定データは、改めて荷電粒子ビーム描画装置1に入力され、解析されてその位置誤差の確認が行われる(ST5)。すなわち入力された測定データは、制御計算機31内の解析部37において解析がなされる。
【0080】
解析部37において解析された測定データは、算出部38に送られ、主偏向フィールド10における最適なセトリング条件が算出される(ST6)。これまで説明してきた通り、第1の実施の形態における描画順序を採用することによって、荷電粒子ビームBの移動距離は、長短様々な距離となり、それだけ移動距離を変更した様々なパターンを評価することが可能となる。
【0081】
以上説明した方法によれば、荷電粒子ビームが移動することに起因する位置誤差の発生をできるだけ抑えてより正確な測定用パターンの描画を行うことで、精度良くセトリング条件の算出を行うことが可能な荷電粒子ビーム描画装置の評価方法及び荷電粒子ビーム描画装置を提供することができる。
【0082】
特に、次に描画対象となる測定用パターンに向けて移動する際に、その直前に描画が行われた測定用パターンに対する荷電粒子ビームのショットに依存するエラーを軽減、或いはキャンセルすることができるため、評価用基板からは純粋に荷電粒子ビームの移動距離に依存したエラーのみを抽出することが可能となる。
【0083】
また、最小、或いは、最長の移動距離に関する測定データのみならず、これらを含む様々な距離に関する測定データを抽出することができるため、これらの測定データを1枚の評価用基板から抽出することができるとともに、他の誤差要因をある程度除いて評価することが可能となる。
【0084】
さらに、同じ移動距離に関する測定データを複数抽出することができるので、より精度良くセトリング条件を算出することができる。
【0085】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0086】
第2の実施の形態における評価方法は、その装置構成等は第1の実施の形態と同様であるが、主偏向フィールドに描画される測定用パターンの描画順序が相違する。
【0087】
図7は、本発明の実施の形態における荷電粒子ビーム描画装置1の評価方法のうち、2つ目の評価方法を説明する際に使用する説明図である。また、図8は、図7に示す破線内部を拡大して示す拡大図である。
【0088】
第2の実施の形態において説明する評価方法において、まず、(C1,L1)にある測定用パターン11を1番目に描画した後、(C1,L11)にある測定用パターン11を2番目に描画するまでの順序は上述した1つ目の評価方法と同じである。しかし、その後の主偏向フィールド10内における測定用パターンの描画順序が上述した第1の実施の形態の評価方法と相違する。
【0089】
2番目に描画された(C1,L11)にある測定用パターン11bの次、3番目に描画される予定の測定用パターン11は、(C2,L1)の位置にある。すなわち、この測定用パターン11cは、1番目に描画された測定用パターンaの(図7に示すところの)右隣にある。また、4番目に描画予定の測定用パターン11dは(C2,L11)に位置し、2番目に描画された測定用パターン11bの(図7に示すところの)右隣にある。
【0090】
このように2つ目の評価方法においては、図7に示すように、描画される測定用パターンによって構成される第1の行(ここでは、例えばL1の行)と、この第1の行に対して最も遠い距離において描画される測定用パターンによって構成される第2の行(ここでは、例えばL11)とのそれぞれの測定用パターンが交互に描画される。
【0091】
その上で、第1の行(L1行)と第2の行(L11行)において、新たに描画される測定用パターンは、順次その行において直前に描画された測定用パターン(例えば、L1行であれば測定用パターン11a、L11行であれば測定用パターン11b)においてX方向に隣接する位置に描画される(例えば、L1行であれば測定用パターン11c、L11行であれば測定用パターン11d)。
【0092】
つまり、まず最も離れた位置にある2つの行であって、それぞれの行に属する測定用パターン11が交互に描画されるとともに、同じ行に属する測定用パターン11についてみれば、同じ行に属する測定用パターン11が順次描画されることになる。これを図7に示す主偏向フィールド10について見れば、まずL1行とL11行に含まれる測定用パターンが交互に、しかしL1行とL11行に含まれない測定用パターンについては描画されることなく描画処理が行われる。従って、図7においては、描画順序を示す番号が、C1列L1行に位置する測定用パターン11a、C1列L11行に位置する測定用パターン11b、C2列L1行に位置する測定用パターン11c、C2列L11行に位置する測定用パターン11dと交互に測定用パターンに振られている。
【0093】
この描画処理は、X方向に向けてL1行、L11行に含まれる測定用パターン11がなくなるまで続き(図7では、L1行に含まれC10の位置にある19番目に描画される測定用パターン11s、L11行に含まれC10の位置にある20番目に描画される測定用パターン11t)、その後は、この状態で次に最も離れた位置にある2つの行に含まれる測定用パターンの描画が行われることになる(ここでは、L2行とL10行に含まれる測定用パターン)。
【0094】
以上の順序に従って測定用パターン11が描画されることによって、描画に当たって荷電粒子ビームBの移動距離が最も長い場合(L1行からL11行に移動する場合)から、
最も短い場合(L7行からL6行に移動する場合)まで様々な距離をもって描画を行うことになるため、様々な距離における描画位置のずれを測定することが可能となる。
【0095】
次に、実際の描画処理について、図8を用いてさらに詳細に説明する。図8は、図7における主偏向フィールド10のうち、C1列ないしC3列を抜き出して拡大して示している。上述したように、ここで説明している評価方法においては、(C1,L1)の座標で示される測定用パターン11aが1番目に描画された後、(C1,L11)の座標で示される測定用パターン11bが2番目に描画される。その後、(C2,L1)の座標で示される測定用パターン11cが3番目に描画されることになる。このような順序に従って、荷電粒子ビームBは移動し、所定の領域に測定用パターン11を描画する。
【0096】
その際、1番目に測定用パターン11aが描画された後、C1列において最も遠い距離にある測定用パターン11bを2番目に描画するべく荷電粒子ビームBは移動する。この移動は長い移動であり、高い電圧が印加されることを意味する。そして、この段階ではまだ適切とは言えないセトリング条件の下では、エラーが発生しうる。
【0097】
ここでの「エラー」とは、上述した通り、荷電粒子ビームBによるショットが対象予定位置に正確になされず、位置誤差が発生することを示す。ここでのエラーは、高い電圧が印加されていることによって生ずるものであることから、エラーが解消(キャンセル)するまでには暫く時間が掛かる。このエラー解消時間は、印加される電圧の高低に起因するため、上述したように高い電圧が印加された場合には、エラー解消時間が長くなり、一方、低い電圧が印加された場合には、それだけエラー解消時間が短くなる。
【0098】
従って、何の手当もせずこのようなエラーが発生した状態で、次の(C2,L1)の位置に3番目の測定用パターン11cの描画がなされると、測定用パターン11の描画は連続して行われることになって十分なエラー解消時間を確保することができず、エラーがキャンセルされないことから測定用パターン11bを描画する際に生じたエラーが残ったままになる。そのため連続して描画がされると、エラーの状態を引きずったまま3番目の測定用パターン11cが描画されることになる。しかも2番目の測定用パターン11Bの位置(C1,L11)から3番目の測定用パターン11cの位置(C2,L1)への移動距離は、1番目の測定用パターン11aの位置(C1,L1)から2番目の測定用パターン11bの位置(C1,L11)への移動距離と同様の長い距離である。
【0099】
なお、2番目の測定用パターンbから3番目の測定用パターンcへの荷電粒子ビームBの移動においてもエラーが発生する。1番目の測定用パターンaから2番目の測定用パターンbへの移動にて発生したエラーが低減、或いはキャンセルしないうちに2番目の測定用パターンbから3番目の測定用パターンcへの移動がなされ、当該移動についてもエラーが発生することから、結果としてエラーが累積する形になる。これでは精度の良い描画がなされないばかりでなく、正確なセトリング条件の算出も不可能である。
【0100】
そこで、第2の実施の形態においては、例えば、2番目の測定用パターンbから3番目の測定用パターンcへの移動等、2番目の測定用パターンの描画以降に行われる描画処理における移動に特徴を持たせている。すなわち、上述したようにエラー解消時間の長短は、荷電粒子ビームBの移動距離に対応することになることから、荷電粒子ビームBの移動距離を短くする。すなわち、2番目の測定用パターンbから3番目の測定用パターンcへ一足飛びに移動するのではなく、 第1及び第2の測定用パターン(測定用パターン11a及び11b)によって構成される第1の行(C1列)に隣接する第2の行(C2列)を微小ショットを打ちつつ第3の測定用パターン(測定用パターン11c)の描画領域まで移動させる。そのためにまず(C2,L10)で示される24番目に描画予定の位置に移動し、その後(C2,L9)で示される44番目に描画予定の位置、(C2,L8)で示
される64番目に描画予定の位置、というように、移動元となる測定用パターン11から隣接する位置に描画され測定用パターン11へと順々に移動していき、最終的に移動先となる測定用パターン11へと至る移動方法である。図8では、実線の矢印によってこのように荷電粒子ビームBが移動する様子を示している。
【0101】
なお、この移動方法についてはあくまでも例示である。例えば、移動元の測定用パターン(ここでは測定用パターン11b)から(C1,L10)で示される22番目に描画予定の位置に移動し、その後(C1,L9)で示される42番目に描画予定の位置、へとC1列を順々に移動して、(C1,L2)の21番目に描画される予定の位置まで移動し、最後、移動先である3番目に描画予定である測定用パターン11cの位置へ移動する方法も採用しうる。
【0102】
このように、長い距離の移動を経た後、短い距離の移動を重ねることで、長い距離の移動に伴って生ずるエラーを解消する時間を確保することができる。もともと隣接する測定用パターン間を移動する距離に伴って生ずるエラーは、印加される電圧が低いこととも相まってエラーが生じたとしてもその解消時間は無視できるほどごく短いものである。そのため、荷電粒子ビームBが移動元の測定用パターン11bから移動先の測定用パターン11cへ隣接する測定用パターンをたどって移動している間に、測定用パターン11aから測定用パターン11bへの移動の際に生じたエラーは十分に低減、或いは、解消されるものと考えられる。従って、移動先の測定用パターン11cに到達し、測定用パターン11cに描画を行う際には、発生していたエラーは既に十分に低減、或いは、キャンセルされていることから、これまでのエラーを引きずることなく描画処理を行うことができる。
【0103】
なお、測定用パターン11cの描画後、測定用パターン11dの描画のために(C2,L1)から(C2,L11)まで移動する際にもまたエラーは発生する。但し、上述したように隣接する測定用パターンを伝ってその次に描画予定の測定用パターン11Eに到達する際には、測定用パターン11cから測定用パターン11dへの移動に伴って発生したエラーは解消されているものと考えられる。
【0104】
また、この移動を行うに当たっては、荷電粒子ビームBを用いて実際に描画を行う。但し、例えば、測定用パターン11aや11bというように測定用パターン11の領域内に露光可能な大きさでショットを打つことは行わない。このようなショットを打ってしまうと、その後荷電粒子ビームBの移動に伴って描画した当該測定用パターン11は利用することができないからである。これでは、単に移動元の測定用パターンから隣接する測定用パターンへ荷電粒子ビームBが短距離移動したに過ぎず、荷電粒子ビームBが様々な距離を移動して描画したことを利用してセトリング条件を算出するという本来の目的を果たすことができない。
【0105】
そこで、本発明の実施の形態においては、本来の移動先へ移動する際の途中にある隣接する測定用パターン11に対して、微小なショットを打つこととしている。この「微小ショット」とは、ビーム分解能よりも小さなショットであり、例えば、測定用パターンの大きさを1とした場合、その大きさの1/1000くらいの大きさである。データ最少分解能寸法を用いることが好ましい。この大きさであれば、描画処理後のプロセス処理において露光処理が行われたとしても露光されず、セトリング条件の算出に当たっての阻害要因とはならない。
【0106】
従って、このような微小ショットであれば、まだ描画されていない測定用パターン11内において評価可能な領域をつぶすことはなく、別途本来の描画処理がなされた場合であってもそのショット位置に関する誤差の有無を確認することができ、十分にセトリング条件の算出に必要な評価を行うことが可能となる。
【0107】
図8に示す24番目に描画予定の測定用パターン11をはじめとして、移動元である2番目の測定用パターン11Bから移動先である3番目の測定用パターン11cまでC2列において互いに隣接する測定用パターン内に斜線で示される小さな矩形は、微小ショットを示している。
【0108】
このように、微小ショットを打ちつつ描画対象となる測定用パターンまで移動する方法を採用することによって、微小ショットの痕跡を残さず移動することを可能とし、荷電粒子ビームBの様々な移動距離における位置誤差を測定する、という目的を達することができる。
【0109】
2番目に描画された測定用パターン11bから3番目に描画される予定の測定用パターン11cまで移動した荷電粒子ビームBは、測定用パターン11cに描画をした後、今度は4番目に描画予定の(C2,L11)に位置する測定用パターン11dまで一気に移動する。そして測定用パターン11dに描画をした後、隣接する測定用パターン11を1つずつ移動して次に描画予定の測定用パターン11eに向けて移動する。
【0110】
以上説明した順序で主偏向フィールド10内に測定用パターン11を描画した後、評価用基板Mを荷電粒子ビーム描画装置1から取り出す(図4のST3)。これは、露光等のプロセス処理を行うためであり、この処理を行うことによって、測定用パターン11に描画された荷電粒子ビームBのショットの痕跡を明らかにすることができる。なお、上述したように、微小ショットに関してはこのプロセス処理を経てもその痕跡が現われることはない。
【0111】
その上で、位置誤差測定器を用いて、評価用基板Mの主偏向フィールド10内における位置誤差を測定データとして抽出する(ST4)。この測定データがセトリング条件を算出するに当たっての基となるデータとなる。そして、抽出された測定データは、改めて荷電粒子ビーム描画装置1に入力され、解析されてその位置誤差の確認が行われる(ST5)。すなわち入力された測定データは、制御計算機31内の解析部37において解析がなされる。
【0112】
解析部37において解析された測定データは、算出部38に送られ、主偏向フィールド10における最適なセトリング条件が算出される(ST6)。これまで説明してきた通り、第1の実施の形態における描画順序を採用することによって、荷電粒子ビームBの移動距離は、長短様々な距離となり、それだけ移動距離を変更した様々なパターンを評価することが可能となる。
【0113】
以上説明した方法によれば、荷電粒子ビームが移動することに起因する位置誤差の発生をできるだけ抑えてより正確な測定用パターンの描画を行うことで、精度良くセトリング条件の算出を行うことが可能な荷電粒子ビーム描画装置の評価方法及び荷電粒子ビーム描画装置を提供することができる。
【0114】
特に、次に描画対象となる測定用パターンに向けて移動する際に、その直前に描画が行われた測定用パターンに対する荷電粒子ビームのショットに依存するエラーを軽減、或いはキャンセルすることができるため、評価用基板からは純粋に荷電粒子ビームの移動距離に依存したエラーのみを抽出することが可能となる。
【0115】
また、最小、或いは、最長の移動距離に関する測定データのみならず、これらを含む様々な距離に関する測定データを抽出することができるため、これらの測定データを1枚の評価用基板から抽出することができるとともに、他の誤差要因をある程度除いて評価する
ことが可能となる。
【0116】
さらに、同じ移動距離に関する測定データを複数抽出することができるので、より精度良くセトリング条件を算出することができる。
【0117】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、荷電粒子ビームが長距離を移動し発生したエラーが、次の測定用パターンの描画処理が開始されるまでに十分に低減、或いは、キャンセルされないと考えられる場合には、例えば、荷電粒子ビームの移動途中でショットする微小ショットの数を整数倍で増加させることも可能である。この場合、微小ショットの大きさは、例えば、測定用パターンの大きさを1とした場合、その大きさの1/1000くらいの大きさで行われるのが好適である。または、データ最少分解能寸法を用いることが好ましい。
【0118】
また、この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1 荷電粒子ビーム描画装置
10 主偏向フィールド
11 測定用パターン
C 列
L 行





【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価用基板の主偏向フィールド内に測定用パターンを描画するための荷電粒子ビームの制御データを記憶部に格納するステップと、
前記制御データに基づいて、前記荷電粒子ビームを使用して前記測定用パターンを描画するとともに、新たに前記測定用パターンの描画が行われる位置まで今後前記測定用パターンの描画が行われる予定の領域ごとにデータ分解能と同程度の微小ショットを打ちつつ前記荷電粒子ビームを移動させるステップと、
評価に必要な前記測定用パターンを全て描画した後、露光するステップと、
前記露光後の前記測定用パターンを基に、描画された前記測定用パターンの位置誤差を確認するステップと、
確認された前記位置誤差に基づいて最適なセトリング条件を算出するステップと、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置の評価方法。
【請求項2】
前記測定用パターンの描画が列ごとに行われる場合には、同列であって、連続して描画される2つの測定用パターン間の距離が順次短くなるように描画処理が行われるとともに、前記測定用パターンへの描画処理の間に前記荷電粒子ビームを移動させる際、前記微小ショットを打ちつつ同列において移動する距離が順次短くなるように移動処理されることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム描画装置の評価方法。
【請求項3】
描画される前記測定用パターンによって構成される第1の行と、前記第1の行に対して最も遠い距離において描画される前記測定用パターンによって構成される第2の行とのそれぞれの前記測定用パターンが交互に描画される場合に、前記第1の行と前記第2の行において、新たに描画される前記測定用パターンは、順次その行において直前に描画された前記測定用パターンに隣接する位置に描画されるとともに、前記第1の行を構成する第1の測定用パターン及び、前記第1の測定用パターンと同列に含まれる前記第2の行を構成する第2の測定用パターンを描画した後、前記第1の行を構成するとともに、前記第1の測定用パターンに隣接する位置に描画される第3の測定用パターンへ前記荷電粒子ビームを移動させる場合、前記第1及び前記第2の測定用パターンによって構成される第1の行に隣接する第2の行を前記微小ショットを打ちつつ前記第3の測定用パターンの描画領域まで移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の荷電粒子ビーム描画装置の評価方法。
【請求項4】
前記荷電粒子ビームの移動が行われる描画済みの前記測定用パターンと新たに描画が行われる前記測定用パターンとの間における今後前記測定用パターンの描画が行われる予定の領域において、前記予定領域の整数倍の微小ショットが打たれることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の荷電粒子ビーム描画装置の評価方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームを用いて移動可能なステージ上に載置される評価用基板に測定用パターンを描画する描画部と、
前記荷電粒子ビームの偏向を制御する偏向制御部と、前記ステージの移動を制御するステージ制御部と、前記偏向制御部と前記ステージ制御部に対する制御を行う制御計算機と、から構成される制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記評価用基板の主偏向フィールド内に描画された測定用パターンから抽出された測定データを解析する解析部と、
前記解析部による解析結果を基に、前記荷電粒子ビームのショットの位置誤差を確認し、最適なセトリング条件を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−58699(P2013−58699A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197489(P2011−197489)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】