荷電粒子線装置
【課題】試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供する。
【解決手段】荷電粒子線装置において、試料8表面の傾きを検出する傾き検出手段28、29と、検出された試料8の傾きに応じて、照射荷電粒子線を試料8表面に垂直に照射させ、同時に照射光学系の光軸中心および結像光学系の光軸中心に荷電粒子線軌道を合わせる電界と磁界を重畳させたE×B偏向器5とを具備する。
【解決手段】荷電粒子線装置において、試料8表面の傾きを検出する傾き検出手段28、29と、検出された試料8の傾きに応じて、照射荷電粒子線を試料8表面に垂直に照射させ、同時に照射光学系の光軸中心および結像光学系の光軸中心に荷電粒子線軌道を合わせる電界と磁界を重畳させたE×B偏向器5とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に係り、特に、半導体ウェハ、磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体、等の観察及び検査に適した荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの異物や回路パターンの欠陥等を検査する装置として、電子線を用いた検査装置が使用されている。これらの電子線検査装置は電子線を点状に絞って走査する走査電子線方式が主流となっている。
【0003】
電子線検査装置では、観察試料の損傷を抑え、所望の分解能や感度で検査するために、半導体ウェハに電圧を印加して電子線の照射エネルギーを制御している。この電圧の印加をリターディングと呼ぶ。リターディング電圧を試料に印加し、電子線を用いた観察手法の一種として、プロジェクション式検査装置と呼ばれる検査装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
この手法は、走査電子線を用いた手法より検査速度を高速にするために、電子線を「点ビーム」として走査する代わりに、2次元的な広がりを持った「面積ビーム」として照射するものである。試料には加速電圧とほぼ同じ絶対値を持った負のリターディング電圧が印加されており、試料に照射された電子線は試料に衝突する直前で軌道を反転させる。照射電子線はリターディング電圧によって試料上方に形成される等電位面で軌道を反転させられ、この等電位面の傾きに応じたコントラストが像として形成される。
【0005】
リターディング電圧の印加により試料の上方に電界が生じるが、試料が傾いていると電界も傾く。通常、電子線は水平な試料に対して垂直方向から入射するように電子光学レンズを調整しているため、試料が傾いて設置されると、電子線の軌道が光軸から外れてしまう。その結果、ビームシフトやシェーディングなどが生じ、正確な画像を観察することが困難であった。このような電界の乱れによる影響は、荷電粒子線を用いてリターディングを使用している装置であれば発生する可能性がある。
【0006】
照射電子線の光軸を試料表面の傾きに応じて補正し、試料表面と直交させる方法が特許文献2に開示されている。この方法は、電子線走査用の偏向コイルに補正信号を重畳させて、電子線の光軸が試料表面と直交するように、電子線を傾けるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−108864号公報
【特許文献2】特開平9−293474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の走査用偏向コイルを用いて照射電子線の光軸を補正する方法は、照射電子線を試料表面に対して垂直に照射できるが、等電位面で反射したミラー電子を結像光学系レンズの光軸中心を通すことは難しいため、プロジェクション式検査装置に適用するのは難しい。
【0009】
プロジェクション式検査装置の場合には先にも述べたように面積ビームを用いているため、傾いている試料表面に対して正確な画像を取得するには、電子線を試料表面に対して垂直に照射するだけでなく、照射電子を照射光学系の光軸中心を通し、さらに等電位面で反射したミラー電子を結像光学系の光軸中心を通す必要がある。
【0010】
また、発明者等は水平な試料ステージに載置された試料であっても正確な画像が得られない場合のあることを見出した。その原因を検討した結果、この手法は等電位面の傾きに対し非常に感度が良いため、水平な試料ステージ上に載置された試料の表面のうねり等による観察領域全体の傾きが0.1°程度であっても、大きくビームシフトしてしまい、画像を取得するのが困難になってしまうことが判明した。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決し、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の代表的なものの一例を示せば以下の通りである。即ち、本発明の荷電粒子線装置は、測定すべき試料表面の傾きを検出するための手段と、検出結果に基づいて照射荷電粒子線を試料表面に垂直に照射し、照射光学系の光軸中心および結像光学系の光軸中心に荷電粒子線軌道を合わせる荷電粒子線制御手段を持つ。また、荷電粒子線を観察対象試料に照射する照射光学系と、前記試料から放出もしくは反射した荷電粒子線を結像させる結像光学系と、前記試料に電圧を印加する機構と、前記試料を載置・移動させる試料ステージを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料ステージが傾いている場合や表面にうねりを有する観察試料に対しても正確な画像を取得することができ、正確なパターン欠陥の検査や異物検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施例になる検査装置を説明するための全体構成図である。
【図2A】第一の実施例における電子線調整手段の構造と試料表面が平らな場合の電子線の軌道を概略的に示した図である。
【図2B】第一の実施例における電子線調整手段の構造と試料表面にうねりを有する場合の電子線の軌道を概略的に示した図である。
【図2C】第一の実施例における電子線調整手段の構造と試料表面に他のうねりを有する電子線の軌道を概略的に示した図である。
【図2D】図2Aに示した構成において、電子線調整手段の設定値はそのままで、試料表面にうねりがある場合の電子線の軌道を概略的に示した図である。
【図3】第一の実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構成図である。
【図4】試料の傾き角と電子線調整手段の電界と磁界の関係を示したルックアップテーブル一例を示す図である。
【図5】第二の実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構成図である。
【図6】第三の実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構造断面図である。
【図7】第四の実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構造断面図である。
【図8】第一の実施例における電子線調整手段の調整手順のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態においては、レーザ光を試料表面で反射させ、反射光の変位を検出することで試料の傾きを検出する。検出された試料の傾きに応じて、電界と磁界を重畳させた偏向器であるE×B偏向器を調整し、照射電子を試料表面に垂直に照射させ、同時に照射光学系の光軸中心および結像光学系の光軸中心に電子線軌道を合わせることができる。
【0016】
本実施の形態によれば、表面が傾いている試料に対しても正確な画像を取得することができ、正確なパターン欠陥の検査や異物検査を実現することができる。
【0017】
また、別の方法として、微分干渉顕微鏡を使って試料表面の干渉像から試料の傾きを検出し、E×B偏向器を調整する。
【0018】
また、別の方法として、プローブを試料表面に接触させ試料表面の凹凸形状を検出し、E×B偏向器を調整する。
【0019】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第一の実施例になる検査装置を、図1〜図4を参照しながら説明する。まず、図1に、本実施例になる検査装置、すなわち荷電粒子線装置の全体的な構成を示す。本装置は、大別すると、電子ビーム照射光学系、ミラー電子結像光学系、ステージ機構系、画像検出系、制御系より構成されている。ただし、本図では、真空排気用ポンプやその制御装置、排気系配管などは略されている。電子ビーム照射光学系は、例えば電子銃1、引き出し電極2、コンデンサレンズ3、偏向器4、ビームを平行にする手段を主な要素とする。他にも色々な構成要素が付く場合もあるが、詳細は省略する。ミラー電子結像光学系は、電界と磁界を重畳させた偏向器(E×B偏向器)5、対物レンズ6、円孔電極7、試料ステージ9、中間レンズ10、投影レンズ11を主な構成要素とする。ミラー電子結像光学系に関しても、他に色々な構成要素が付く場合もあるが、詳細は省略する。
【0021】
電子ビーム照射光学系において、引き出し電極2には電圧が印加されており、電子源1から放出する照射電子線100の引き出し電圧と加速電圧を調整できるようになっている。電子源1から放出された照射電子線100は、コンデンサレンズ3によって集束させ、かつE×B偏向器5によって偏向されて、クロスオーバーを形成した後、対物レンズ6により平行束となって(または、特定の面積を持つ電子ビームとなって)、試料8上に照射される。
【0022】
照射電子線100はE×B偏向器5によって試料8に垂直な光軸に偏向されるため、E×B偏向器5は、電子源側から試料側へ向かう方向の電子線に対してのみ偏向作用を持ち、ビームセパレータとして機能している。E×B偏向器5により偏向された照射電子線は対物レンズ6により平行束となるため、数10μmといった大きな広がりをもった領域を照射する。
【0023】
試料8には、電子線の加速電圧と絶対値がほぼ等しいか、絶対値が加速電圧より僅かに大きい負電圧(リターディング電圧)が電源ユニット21によって印加されている。照射電子線はこのリターディング電圧によって試料8の手前で減速、反射してミラー電子100’として上方に引き戻される。入射電子は表面に触ることがないか、触ったとしても僅かであるため、試料表面に電荷が溜まりにくい。したがって、コンタミはほとんど付かず、試料表面を汚すことはない。
【0024】
このミラー電子100’は表面の電位分布を反映した情報を持っている。つまり表面の凹凸情報や材料の違いによる帯電の情報などを反映している。このミラー電子100’は対物レンズ6により集束作用を受け、E×B偏向器5は試料側から蛍光板側へ向かう方向の電子線に対しては偏向作用を持たないので、そのまま垂直に上昇し、中間レンズ10、投影レンズ11によって蛍光板13に投影される。符号12は結像系偏向器である。
【0025】
画像検出系は、蛍光板13、光学像伝達部14、光学像検出器15、検出器回転機構27を含み、投影されたミラー電子を電気信号に変換する。光学像伝達部14には光ファイバの束を用いることができる。光学像検出器15としてCCD(Charge Coupled Device)カメラもしくはTDI(Time Delay and Integration)センサを用いる。TDIセンサとは、時間遅延積分型の画像取得を行うモードを備えた撮像デバイスである。試料8を回転させながら連続で撮影する場合は、TDIセンサが好ましい。光学像検出器15としてTDIセンサを用いる場合、検出器回転機構27を用いてTDIセンサ15の画素積分方向と観察像の回転の線速度ベクトル方向を一致させる。また、任意信号発生器24からTDIセンサ15に出力されるトリガー信号及び回転ステージ17の回転速度を調整することで、TDIセンサ15の電荷移動速度と受光面上の画像移動速度を一致させる。
【0026】
画像処理ユニット25は、試料8の構造の設計パターンを記憶しており、取得画像から画像処理ユニット25が欠陥を検出したとき、その信号は装置制御ユニット23に送られ、ステージから送られてきた座標位置と関連づけられて保存される。なお、ここで、画像とは、光学像検出器の出力信号、二次元強度分布データ、等を含む。
【0027】
荷電粒子線装置各部の動作命令および動作条件は、装置制御ユニット23を介して入出力される。装置制御ユニット23はCPU、メモリ、プログラム等を備えた情報処理装置で構成される。装置制御ユニット23は、本実施例に関係する機能として、試料8の観察・検査を行う機能を有する検査部231、E×B偏向器5における偏向量を制御する機能を有する電源調整部232、及びそれらに関係するデータを保持する記憶部233を備えている。
【0028】
画像処理ユニット25はモニタ26に接続されており、取り込まれた電子線画像あるいは光学画像がモニタ26に出力表示される。
【0029】
ステージ機構系は、直進ステージや回転ステージを組み合わせた構成となっている。すなわち、主に、試料をX−Y平面で直進移動させる直進ステージを構成するXステージ18とYステージ19、試料をX−Y平面で回転させる回転ステージを構成するθステージ、試料の高さ(Z)方向の位置を変えるZステージ20、及びこれらを制御するステージ制御ユニット22を有している。なお、ステージ機構系は回転ステージ17を省き、Xステージ18とYステージ19とZステージ20のみから構成されていても良い。符号16は絶縁体である。
【0030】
試料8の検査・観察領域の表面の傾斜を計測するためのレーザ光源28と変位検出器29を備えている。レーザ光源28から発射したレーザ光を試料8の検査・観察領域の表面で反射させ、試料の検査・観察領域の表面が傾くことによるレーザの反射方向の変化を変位検出器29で検出する。変位検出器29で検出した変位量は装置制御ユニット23に送信され、電源調整部232は試料の検査・観察領域の表面の傾きに応じたE×B偏向器5の電圧および電流値を電源ユニット21に指示する。その指示値にしたがって電源ユニットはE×B偏向器5に電圧および電流を印加し、照射電子線100は常に試料8の検査・観察領域の表面に対して垂直に照射される。なお、試料表面が平らで試料ステージが傾斜しているような場合には、検査・観察領域以外の試料表面で傾きを検出してもよい。
【0031】
本実施例のE×B偏向器5について、図2A〜図2Dで説明する。図2Aは試料の検査・観察領域の表面が水平になっているときの、第一の実施例におけるE×B偏向器5と試料8の関係を示す図である。E×B偏向器5は電界と磁界を重畳させた偏向器である。図2Aに示すように電界Eの方向を電子源側から電子源から遠い方向(紙面右から左)に、磁界Bを電界に対して垂直(紙面奥から手前)に印加した時、照射電子線33は電界と磁界両方から同じ方向(紙面左から右)に偏向作用を受け、試料の検査・観察領域の表面に対して垂直方向32に照射される。符号33Eは照射電子が電界から受ける力(FEO)を、符号33Bは照射電子が磁界から受ける力(FBO)を示す。
【0032】
照射電子線33は試料8に印加されたリターディング電圧によって反射し、ミラー電子線34となる。このため、E×B偏向器の試料側において照射電子線とミラー電子線は移動の向きが逆で略同様のエネルギー分布を有する。ミラー電子線34はE×B偏向器5では電界と磁界からの偏向作用は逆向きに働くため、力が打ち消され、偏向されない。照射電子線33は電子ビーム照射光学系光軸30を通り、ミラー電子線34はミラー電子結像光学系光軸31を通るように調整されている。符号34Eはミラー電子線が電界から受ける力(FEO)を、符号34Bはミラー電子線が磁界から受ける力(−FBO)を示す。
【0033】
試料表面にうねりがあり検査・観察領域の表面が傾いている場合、E×B偏向器5を図2Aの設定値にしたままでは、図2Dに示すように照射電子線33は試料の検査・観察領域の表面に対して垂直方向32とはならず、斜めから照射されるため、ミラー電子線34の軌道はミラー電子結像光学系光軸31から大きく外れてしまい、画像を取得するのが困難になってしまう。
【0034】
E×B偏向器5は電界と磁界の強度を制御することによって、E×B偏向器5における照射電子線33の偏向角とミラー電子線34の偏向角をそれぞれ個別に制御することができる。そこで、図2Bのように試料の検査・観察領域の表面の法線が照射光学系光軸30から離れる方向に傾いた時には電界を強くし、図2Cのように試料8の法線が照射光学系光軸30に近づく方向に傾いた時には電界を弱くすることで、照射電子線33を試料8の検査・観察領域に対して垂直方向32に照射しつつ、ミラー電子線34をミラー電子結像光学系光軸31上に通すことができる。実際には、電界と磁界の両方を印加電圧および印加電流の1/1000程度の精度で調整することで実現する。
【0035】
照射電子線33を試料の検査・観察領域の表面に対して垂直に照射しながら、ミラー電子線34をミラー電子結像光学系光軸31上に通すE×B偏向器5の電界および磁界強度は、試料表面の傾きに応じて一意に決まるため、試料表面の傾きが分かれば最適なE×B偏向器5の設定値を決めることができる。
【0036】
図3は本実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構成図である。レーザ光源28からレーザを発生させ、試料8の表面で反射させ、反射光を変位検出器29で検出する。変位検出器29は複数に分割されており、試料8の表面が水平になっているときにレーザの反射光が変位検出器29の中心に当たるように設定されている。変位検出器29は4分割以上に分割されており、分割された検出器は変位検出器29の中心を含むように分割されているのが適当である。
【0037】
試料の検査・観察領域の表面が傾いている場合には、レーザの反射光は変位検出器29の中心からずれるため、分割された各検出器からの信号量に変化が生じる。変位検出器29の信号は装置制御ユニット23に伝達され、装置制御ユニット23は試料表面の傾きを計算する。装置制御ユニット23は試料の検査・観察領域の表面の傾きに応じた最適なE×B偏向器5の設定値を計算し、設定値を電源ユニット21に伝達し、電源ユニット21は試料表面の傾きに応じた最適なE×B偏向器5の電界、磁界を発生させる。
【0038】
図4は、試料表面のX方向の傾き(θX)と、Y方向の傾き(θY)と、E×B偏向器5の電界と磁界の設定値(En,Bn)の関係を示したルックアップテーブル234の一例である。装置制御ユニット23にはルックアップテーブル234が保存されており、装置制御ユニット23は変位検出器29が検出した試料表面の傾きに応じたE×B偏向器5の電界と磁界の設定値をルックアップテーブル234を参照して導き出す。
【0039】
E×B偏向器5の調整手順をフローとしてまとめると、図8のようになる。まず、ステップ800で照射光学系制御部(図示せず)により照射光学系を、および結像光学系制御部(図示せず)により結像光学系の光軸合わせを行う。光軸合わせにおいて参照する試料は、検査対象である試料8でも良いし、調整用パターンを使用しても良い。なお、照射光学系制御部や結像光学系制御部は装置制御ユニット23内に配置してもよいが、別ユニットとすることもできる。いずれにしても、装置制御ユニットにより各制御部は制御される。
【0040】
ステップ801では傾き検出手段を用いて、光軸合わせに使用した試料表面の傾きを測定する。この傾きを基準傾斜角とする。ステップ802では、ステージを移動させ、試料8の検査対象領域に電子線を照射する。ステップ803では、傾き検出手段を用いて試料表面の傾きを測定し、基準傾斜角からのズレを測定する。ステップ804では、事前に作成され装置制御ユニット23に保存されていたルックアップテーブル234を参照して、試料表面の傾きに対して最適なE×B偏向器5の電界と磁界を調整する。ステップ805では、画像を取得し、検査を実施する。以下、ステップ802からステップ805までのステップを繰り返し、試料8の検査対象領域全体を検査する。
【0041】
本実施例に係る装置を用いて磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の観察を行った結果良好な画像を取得することができた。
以上述べたように、本実施例によれば、検査・観察領域の傾斜を検出する手段及び検出された傾斜に基づき照射電子線、ミラー電子線を偏向する手段を備えることにより、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することができる。また、傾斜を検出する手段として、一組のレーザ光源と変位検出器を用いているので、シンプルな構成で使いやすく実用的な荷電粒子線装置を提供することができる。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明の第二の実施例になる検査装置を、図5を参照しながら説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用できる。
【0043】
図5は、第二の実施例になる荷電粒子線装置の試料ステージ付近の断面図である。試料の検査・観察領域の表面の傾き検出手段として、実施例1と同様のレーザによる傾き検出手段を二組以上搭載している。二組のレーザ光源28はX−Y平面内に設置されており、試料の検査・観察領域の表面を90度ずれた方向から照射することが適当である。
【0044】
試料の検査・観察領域の表面が傾き、さらに試料8の検査・観察領域の高さが変化した場合、レーザによる傾き検出が一組では、試料8の検査・観察領域の傾きと高さの違いを判別することは困難である。図5のようにレーザによる傾き検出手段を二組搭載し、二つの変位検出器29からの信号を検出し、計算することで、試料8の傾きと高さを分離検出することができる。その結果、試料表面の傾きに対しては実施例1と同様にE×B偏向器5の電界と磁界を調整し、試料8の高さ変化に対してはZステージ20を調整し試料8を所望の高さに設定することで、より正確な画像取得が可能になる。
【0045】
本実施例に係る装置を用いて磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の観察を行った結果良好な画像を取得することができた。
本実施例においても実施例1と同様に、検査・観察領域の傾斜を検出する手段及び検出された傾斜に基づき照射電子線、ミラー電子線を偏向する手段を備えることにより、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することができる。また、傾斜を検出する手段として、二組のレーザ光源と変位検出器を用いているので、仮に高さが変化した場合であっても試料の検査・観察領域の傾きと高さの違いを判別することができる。
【実施例3】
【0046】
次に、本発明の第三の実施例になる検査装置を、図6を参照しながら説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用できる。
【0047】
図6は、第三の実施例になる荷電粒子線装置の試料ステージ付近の断面図である。傾き検出手段として、微分干渉光学顕微鏡を使う。光源40から出た光は偏光板であるポラライザ42によって偏光され、ウォラストンプリズム44に入射する。ウォラストンプリズム44によって2つの光路に分離された光は、反射鏡45を使って試料8の表面に照射される。
【0048】
試料8の表面からの反射光は再度ウォラストンプリズム44を通った際、分離されていた光が合わさり、ビームスプリッタ43に入射する。反射光はビームスプリッタ43で反射し、偏光板であるアナライザ46を通って、カメラ47で取得する。試料表面が傾いていた場合、ウォラストンプリズム44で分離された2つの光には光路差が生じるため、再度合成された際、干渉による微分干渉像が観察される。この微分干渉像を観察し、解析することで試料表面の傾きを計測することができる。
【0049】
反射鏡45には電子ビームを通すための穴が開いており、電子線による観察と干渉光による試料表面の傾き測定を同時に行うことができる。なお、符号41はレンズを示す。
【0050】
計測された試料表面の傾きから、装置制御ユニット23は試料表面の傾きに応じた最適なE×B偏向器5の設定値を計算し、E×B偏向器5で電界と磁界を発生させる。微分干渉光学顕微鏡を用いた場合には傾き方向の特定が困難な為、一方に傾けて画像取得後、他方に傾けて画像取得しておくとよい。
【0051】
本実施例に係る装置を用いて磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の観察を行った結果良好な画像を取得することができた。
本実施例においても実施例1と同様に、検査・観察領域の傾斜を検出する手段及び検出された傾斜に基づき照射電子線、ミラー電子線を偏向する手段を備えることにより、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することができる。また、傾斜を検出する手段として、微分干渉光学顕微鏡を用いているのでレーザ光源と変位検出器を用いた場合に比べ傾きをより高感度に検出することができる。
【実施例4】
【0052】
次に、本発明の第四の実施例になる検査装置を、図7を参照しながら説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用できる。
【0053】
図7は、第四の実施例になる荷電粒子線装置の試料ステージ付近の断面図である。傾き検出手段として、プローブ48を使う。照射電子線33による観察領域から離れた試料表面にプローブ48を接触させ、プローブを走査し、表面の凹凸形状を測定し、凹凸形状と試料8上の座標を装置制御ユニット23に記録しておく。照射電子線33で試料8を観察する際、装置制御ユニット23は、観察位置における試料形状を読み出し、試料8の傾きに応じた最適なE×B偏向器5の設定値を計算し、E×B偏向器5で電界と磁界を発生させる。
【0054】
本実施例に係る装置を用いて磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の観察を行った結果良好な画像を取得することができた。
本実施例においても実施例1と同様に、検査・観察領域の傾斜を検出する手段及び検出された傾斜に基づき照射電子線、ミラー電子線を偏向する手段を備えることにより、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することができる。また、傾斜を検出する手段として、プローブを用いているので微分干渉光学顕微鏡を用いた場合に比べ傾きをより高感度に検出することができる。
【0055】
なお、実施例1〜4の手法は試料への照射電子線が面積ビームであるプロジェクション方式の場合を例として示したが、走査電子線方式やイオンなどの荷電粒子線を用いた装置の場合にも、E×B偏向器を用いることで、照射荷電粒子線の軌道と試料から発生する2次電子線の軌道を個別に制御できるため、表面が傾いた試料に対してシェーディング等の発生を抑えた正確な画像を取得可能になる。
【0056】
以上、本願発明を詳細に説明したが、以下に主な発明の形態を列挙する。
(1)荷電粒子発生源と、
前記荷電粒子発生源で発生した荷電粒子を第1の荷電粒子線として観察対象試料に照射する照射光学系と、
前記第1の荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出もしくは反射される第2の荷電粒子線を結像させる結像光学系と、
前記試料を載置すると共に移動させるステージと、
前記試料表面の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記第1の荷電粒子線を前記試料に垂直に入射させ、前記照射光学系の光軸中心に前記第1の荷電粒子線の軌道を合わせると共に、前記結像光学系の光軸中心に前記第2の荷電粒子線の軌道を合わせる荷電粒子線制御手段と、を具備することを特徴とする荷電粒子線装置。
(2) 荷電粒子発生源と、前記荷電粒子発生源で発生した荷電粒子からなる第1の荷電粒子線が照射される試料を載置するステージと、前記第1の荷電粒子線を前記試料に照射する照射光学系と、前記第1の荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出もしくは反射される第2の荷電粒子線を結像させる結像光学系と、結像された前記第2の荷電粒子線を検出する検出手段と、前記照射光学系を制御する照射光学系制御部と、前記結像光学系を制御する結像光学系制御部と、前記ステージを制御するステージ制御ユニットと、前記検出手段により検出された信号から画像を取得する画像処理ユニットと、前記照射光学系制御部、前記結像光学系制御部、前記ステージ制御ユニット、及び前記画像処理ユニットを統括制御する装置制御ユニットとを有する荷電粒子線装置において、
更に、前記試料の表面の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段により検出された傾きに基づいて前記第1の荷電粒子線を前記試料に垂直に入射させ、前記照射光学系の光軸中心に前記第1の荷電粒子線の軌道を合わせるように前記第1の荷電粒子線を偏向すると共に、前記結像光学系の光軸中心に前記第2の荷電粒子線の軌道を合わせるように前記第2の荷電粒子線を偏向する電界と磁界を重畳させた荷電粒子線制御手段と、
前記荷電粒子線制御手段に電力を供給する電源ユニットと、を有し、
前記照射光学系制御部は第1の試料を用いて前記照射光学系の光軸を合わせるものであり、
前記結像光学系制御部は前記第1の試料を用いて前記結像光学系の光軸を合わせるものであり、
前記装置制御ユニットは、前記傾き検出手段により検出された観察対象の第2の試料表面の傾きから、ルックアップテーブルを参照して前記第1の荷電粒子線が前記第2の試料表面に垂直に照射され前記第1の荷電粒子線の軌道が前記照射光学系の光軸中心を通り、前記第2の荷電粒子線の軌道が前記結像光学系の光軸中心を通るように前記電源ユニットを制御して前記荷電粒子線制御手段の電界と磁界を調整するものであり、
前記検出手段は、前記結像光学系の光軸中心を通るように偏向された前記第2の荷電粒子線を検出するものであり、
前記画像処理ユニットは、前記検出手段で検出された信号に基づいて画像を取得するものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【符号の説明】
【0057】
1…電子源、2…引き出し電極、3…コンデンサレンズ、4…偏向器、5…E×B偏向器、6…対物レンズ、7…円孔電極、8…試料、9…試料ホルダ、10…中間レンズ、11…投影レンズ、12…結像系偏向器、13…蛍光板、14…光学像伝達部、15…光学像検出器(TDIセンサ)、16…絶縁体、17…回転(θ)ステージ、18…Xステージ、19…Yステージ、20…Zステージ、21…電源ユニット、22…ステージ制御ユニット、23…装置制御ユニット、24…任意信号発生器、25…画像処理ユニット、26…モニタ、27…検出器回転機構、28…レーザ光源、29…変位検出器、30…電子ビーム照射光学系光軸、31…ミラー電子結像光学系光軸、32…試料面直交方向、33…照射電子線、33B…照射電子が磁界から受ける力、33E…照射電子が電界から受ける力、34…ミラー電子線、34B…ミラー電子線が磁界から受ける力、34E…ミラー電子線が電界から受ける力、40…光源、41…レンズ、42…ポラライザ、43…ビームスプリッタ、44…ウォラストンプリズム、45…反射鏡、46…アナライザ、47…カメラ、48…プローブ、100…照射電子線、100’…ミラー電子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に係り、特に、半導体ウェハ、磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体、等の観察及び検査に適した荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの異物や回路パターンの欠陥等を検査する装置として、電子線を用いた検査装置が使用されている。これらの電子線検査装置は電子線を点状に絞って走査する走査電子線方式が主流となっている。
【0003】
電子線検査装置では、観察試料の損傷を抑え、所望の分解能や感度で検査するために、半導体ウェハに電圧を印加して電子線の照射エネルギーを制御している。この電圧の印加をリターディングと呼ぶ。リターディング電圧を試料に印加し、電子線を用いた観察手法の一種として、プロジェクション式検査装置と呼ばれる検査装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
この手法は、走査電子線を用いた手法より検査速度を高速にするために、電子線を「点ビーム」として走査する代わりに、2次元的な広がりを持った「面積ビーム」として照射するものである。試料には加速電圧とほぼ同じ絶対値を持った負のリターディング電圧が印加されており、試料に照射された電子線は試料に衝突する直前で軌道を反転させる。照射電子線はリターディング電圧によって試料上方に形成される等電位面で軌道を反転させられ、この等電位面の傾きに応じたコントラストが像として形成される。
【0005】
リターディング電圧の印加により試料の上方に電界が生じるが、試料が傾いていると電界も傾く。通常、電子線は水平な試料に対して垂直方向から入射するように電子光学レンズを調整しているため、試料が傾いて設置されると、電子線の軌道が光軸から外れてしまう。その結果、ビームシフトやシェーディングなどが生じ、正確な画像を観察することが困難であった。このような電界の乱れによる影響は、荷電粒子線を用いてリターディングを使用している装置であれば発生する可能性がある。
【0006】
照射電子線の光軸を試料表面の傾きに応じて補正し、試料表面と直交させる方法が特許文献2に開示されている。この方法は、電子線走査用の偏向コイルに補正信号を重畳させて、電子線の光軸が試料表面と直交するように、電子線を傾けるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−108864号公報
【特許文献2】特開平9−293474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の走査用偏向コイルを用いて照射電子線の光軸を補正する方法は、照射電子線を試料表面に対して垂直に照射できるが、等電位面で反射したミラー電子を結像光学系レンズの光軸中心を通すことは難しいため、プロジェクション式検査装置に適用するのは難しい。
【0009】
プロジェクション式検査装置の場合には先にも述べたように面積ビームを用いているため、傾いている試料表面に対して正確な画像を取得するには、電子線を試料表面に対して垂直に照射するだけでなく、照射電子を照射光学系の光軸中心を通し、さらに等電位面で反射したミラー電子を結像光学系の光軸中心を通す必要がある。
【0010】
また、発明者等は水平な試料ステージに載置された試料であっても正確な画像が得られない場合のあることを見出した。その原因を検討した結果、この手法は等電位面の傾きに対し非常に感度が良いため、水平な試料ステージ上に載置された試料の表面のうねり等による観察領域全体の傾きが0.1°程度であっても、大きくビームシフトしてしまい、画像を取得するのが困難になってしまうことが判明した。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決し、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の代表的なものの一例を示せば以下の通りである。即ち、本発明の荷電粒子線装置は、測定すべき試料表面の傾きを検出するための手段と、検出結果に基づいて照射荷電粒子線を試料表面に垂直に照射し、照射光学系の光軸中心および結像光学系の光軸中心に荷電粒子線軌道を合わせる荷電粒子線制御手段を持つ。また、荷電粒子線を観察対象試料に照射する照射光学系と、前記試料から放出もしくは反射した荷電粒子線を結像させる結像光学系と、前記試料に電圧を印加する機構と、前記試料を載置・移動させる試料ステージを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料ステージが傾いている場合や表面にうねりを有する観察試料に対しても正確な画像を取得することができ、正確なパターン欠陥の検査や異物検査を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施例になる検査装置を説明するための全体構成図である。
【図2A】第一の実施例における電子線調整手段の構造と試料表面が平らな場合の電子線の軌道を概略的に示した図である。
【図2B】第一の実施例における電子線調整手段の構造と試料表面にうねりを有する場合の電子線の軌道を概略的に示した図である。
【図2C】第一の実施例における電子線調整手段の構造と試料表面に他のうねりを有する電子線の軌道を概略的に示した図である。
【図2D】図2Aに示した構成において、電子線調整手段の設定値はそのままで、試料表面にうねりがある場合の電子線の軌道を概略的に示した図である。
【図3】第一の実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構成図である。
【図4】試料の傾き角と電子線調整手段の電界と磁界の関係を示したルックアップテーブル一例を示す図である。
【図5】第二の実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構成図である。
【図6】第三の実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構造断面図である。
【図7】第四の実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構造断面図である。
【図8】第一の実施例における電子線調整手段の調整手順のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態においては、レーザ光を試料表面で反射させ、反射光の変位を検出することで試料の傾きを検出する。検出された試料の傾きに応じて、電界と磁界を重畳させた偏向器であるE×B偏向器を調整し、照射電子を試料表面に垂直に照射させ、同時に照射光学系の光軸中心および結像光学系の光軸中心に電子線軌道を合わせることができる。
【0016】
本実施の形態によれば、表面が傾いている試料に対しても正確な画像を取得することができ、正確なパターン欠陥の検査や異物検査を実現することができる。
【0017】
また、別の方法として、微分干渉顕微鏡を使って試料表面の干渉像から試料の傾きを検出し、E×B偏向器を調整する。
【0018】
また、別の方法として、プローブを試料表面に接触させ試料表面の凹凸形状を検出し、E×B偏向器を調整する。
【0019】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第一の実施例になる検査装置を、図1〜図4を参照しながら説明する。まず、図1に、本実施例になる検査装置、すなわち荷電粒子線装置の全体的な構成を示す。本装置は、大別すると、電子ビーム照射光学系、ミラー電子結像光学系、ステージ機構系、画像検出系、制御系より構成されている。ただし、本図では、真空排気用ポンプやその制御装置、排気系配管などは略されている。電子ビーム照射光学系は、例えば電子銃1、引き出し電極2、コンデンサレンズ3、偏向器4、ビームを平行にする手段を主な要素とする。他にも色々な構成要素が付く場合もあるが、詳細は省略する。ミラー電子結像光学系は、電界と磁界を重畳させた偏向器(E×B偏向器)5、対物レンズ6、円孔電極7、試料ステージ9、中間レンズ10、投影レンズ11を主な構成要素とする。ミラー電子結像光学系に関しても、他に色々な構成要素が付く場合もあるが、詳細は省略する。
【0021】
電子ビーム照射光学系において、引き出し電極2には電圧が印加されており、電子源1から放出する照射電子線100の引き出し電圧と加速電圧を調整できるようになっている。電子源1から放出された照射電子線100は、コンデンサレンズ3によって集束させ、かつE×B偏向器5によって偏向されて、クロスオーバーを形成した後、対物レンズ6により平行束となって(または、特定の面積を持つ電子ビームとなって)、試料8上に照射される。
【0022】
照射電子線100はE×B偏向器5によって試料8に垂直な光軸に偏向されるため、E×B偏向器5は、電子源側から試料側へ向かう方向の電子線に対してのみ偏向作用を持ち、ビームセパレータとして機能している。E×B偏向器5により偏向された照射電子線は対物レンズ6により平行束となるため、数10μmといった大きな広がりをもった領域を照射する。
【0023】
試料8には、電子線の加速電圧と絶対値がほぼ等しいか、絶対値が加速電圧より僅かに大きい負電圧(リターディング電圧)が電源ユニット21によって印加されている。照射電子線はこのリターディング電圧によって試料8の手前で減速、反射してミラー電子100’として上方に引き戻される。入射電子は表面に触ることがないか、触ったとしても僅かであるため、試料表面に電荷が溜まりにくい。したがって、コンタミはほとんど付かず、試料表面を汚すことはない。
【0024】
このミラー電子100’は表面の電位分布を反映した情報を持っている。つまり表面の凹凸情報や材料の違いによる帯電の情報などを反映している。このミラー電子100’は対物レンズ6により集束作用を受け、E×B偏向器5は試料側から蛍光板側へ向かう方向の電子線に対しては偏向作用を持たないので、そのまま垂直に上昇し、中間レンズ10、投影レンズ11によって蛍光板13に投影される。符号12は結像系偏向器である。
【0025】
画像検出系は、蛍光板13、光学像伝達部14、光学像検出器15、検出器回転機構27を含み、投影されたミラー電子を電気信号に変換する。光学像伝達部14には光ファイバの束を用いることができる。光学像検出器15としてCCD(Charge Coupled Device)カメラもしくはTDI(Time Delay and Integration)センサを用いる。TDIセンサとは、時間遅延積分型の画像取得を行うモードを備えた撮像デバイスである。試料8を回転させながら連続で撮影する場合は、TDIセンサが好ましい。光学像検出器15としてTDIセンサを用いる場合、検出器回転機構27を用いてTDIセンサ15の画素積分方向と観察像の回転の線速度ベクトル方向を一致させる。また、任意信号発生器24からTDIセンサ15に出力されるトリガー信号及び回転ステージ17の回転速度を調整することで、TDIセンサ15の電荷移動速度と受光面上の画像移動速度を一致させる。
【0026】
画像処理ユニット25は、試料8の構造の設計パターンを記憶しており、取得画像から画像処理ユニット25が欠陥を検出したとき、その信号は装置制御ユニット23に送られ、ステージから送られてきた座標位置と関連づけられて保存される。なお、ここで、画像とは、光学像検出器の出力信号、二次元強度分布データ、等を含む。
【0027】
荷電粒子線装置各部の動作命令および動作条件は、装置制御ユニット23を介して入出力される。装置制御ユニット23はCPU、メモリ、プログラム等を備えた情報処理装置で構成される。装置制御ユニット23は、本実施例に関係する機能として、試料8の観察・検査を行う機能を有する検査部231、E×B偏向器5における偏向量を制御する機能を有する電源調整部232、及びそれらに関係するデータを保持する記憶部233を備えている。
【0028】
画像処理ユニット25はモニタ26に接続されており、取り込まれた電子線画像あるいは光学画像がモニタ26に出力表示される。
【0029】
ステージ機構系は、直進ステージや回転ステージを組み合わせた構成となっている。すなわち、主に、試料をX−Y平面で直進移動させる直進ステージを構成するXステージ18とYステージ19、試料をX−Y平面で回転させる回転ステージを構成するθステージ、試料の高さ(Z)方向の位置を変えるZステージ20、及びこれらを制御するステージ制御ユニット22を有している。なお、ステージ機構系は回転ステージ17を省き、Xステージ18とYステージ19とZステージ20のみから構成されていても良い。符号16は絶縁体である。
【0030】
試料8の検査・観察領域の表面の傾斜を計測するためのレーザ光源28と変位検出器29を備えている。レーザ光源28から発射したレーザ光を試料8の検査・観察領域の表面で反射させ、試料の検査・観察領域の表面が傾くことによるレーザの反射方向の変化を変位検出器29で検出する。変位検出器29で検出した変位量は装置制御ユニット23に送信され、電源調整部232は試料の検査・観察領域の表面の傾きに応じたE×B偏向器5の電圧および電流値を電源ユニット21に指示する。その指示値にしたがって電源ユニットはE×B偏向器5に電圧および電流を印加し、照射電子線100は常に試料8の検査・観察領域の表面に対して垂直に照射される。なお、試料表面が平らで試料ステージが傾斜しているような場合には、検査・観察領域以外の試料表面で傾きを検出してもよい。
【0031】
本実施例のE×B偏向器5について、図2A〜図2Dで説明する。図2Aは試料の検査・観察領域の表面が水平になっているときの、第一の実施例におけるE×B偏向器5と試料8の関係を示す図である。E×B偏向器5は電界と磁界を重畳させた偏向器である。図2Aに示すように電界Eの方向を電子源側から電子源から遠い方向(紙面右から左)に、磁界Bを電界に対して垂直(紙面奥から手前)に印加した時、照射電子線33は電界と磁界両方から同じ方向(紙面左から右)に偏向作用を受け、試料の検査・観察領域の表面に対して垂直方向32に照射される。符号33Eは照射電子が電界から受ける力(FEO)を、符号33Bは照射電子が磁界から受ける力(FBO)を示す。
【0032】
照射電子線33は試料8に印加されたリターディング電圧によって反射し、ミラー電子線34となる。このため、E×B偏向器の試料側において照射電子線とミラー電子線は移動の向きが逆で略同様のエネルギー分布を有する。ミラー電子線34はE×B偏向器5では電界と磁界からの偏向作用は逆向きに働くため、力が打ち消され、偏向されない。照射電子線33は電子ビーム照射光学系光軸30を通り、ミラー電子線34はミラー電子結像光学系光軸31を通るように調整されている。符号34Eはミラー電子線が電界から受ける力(FEO)を、符号34Bはミラー電子線が磁界から受ける力(−FBO)を示す。
【0033】
試料表面にうねりがあり検査・観察領域の表面が傾いている場合、E×B偏向器5を図2Aの設定値にしたままでは、図2Dに示すように照射電子線33は試料の検査・観察領域の表面に対して垂直方向32とはならず、斜めから照射されるため、ミラー電子線34の軌道はミラー電子結像光学系光軸31から大きく外れてしまい、画像を取得するのが困難になってしまう。
【0034】
E×B偏向器5は電界と磁界の強度を制御することによって、E×B偏向器5における照射電子線33の偏向角とミラー電子線34の偏向角をそれぞれ個別に制御することができる。そこで、図2Bのように試料の検査・観察領域の表面の法線が照射光学系光軸30から離れる方向に傾いた時には電界を強くし、図2Cのように試料8の法線が照射光学系光軸30に近づく方向に傾いた時には電界を弱くすることで、照射電子線33を試料8の検査・観察領域に対して垂直方向32に照射しつつ、ミラー電子線34をミラー電子結像光学系光軸31上に通すことができる。実際には、電界と磁界の両方を印加電圧および印加電流の1/1000程度の精度で調整することで実現する。
【0035】
照射電子線33を試料の検査・観察領域の表面に対して垂直に照射しながら、ミラー電子線34をミラー電子結像光学系光軸31上に通すE×B偏向器5の電界および磁界強度は、試料表面の傾きに応じて一意に決まるため、試料表面の傾きが分かれば最適なE×B偏向器5の設定値を決めることができる。
【0036】
図3は本実施例における試料の傾き検出手段を説明するための概略構成図である。レーザ光源28からレーザを発生させ、試料8の表面で反射させ、反射光を変位検出器29で検出する。変位検出器29は複数に分割されており、試料8の表面が水平になっているときにレーザの反射光が変位検出器29の中心に当たるように設定されている。変位検出器29は4分割以上に分割されており、分割された検出器は変位検出器29の中心を含むように分割されているのが適当である。
【0037】
試料の検査・観察領域の表面が傾いている場合には、レーザの反射光は変位検出器29の中心からずれるため、分割された各検出器からの信号量に変化が生じる。変位検出器29の信号は装置制御ユニット23に伝達され、装置制御ユニット23は試料表面の傾きを計算する。装置制御ユニット23は試料の検査・観察領域の表面の傾きに応じた最適なE×B偏向器5の設定値を計算し、設定値を電源ユニット21に伝達し、電源ユニット21は試料表面の傾きに応じた最適なE×B偏向器5の電界、磁界を発生させる。
【0038】
図4は、試料表面のX方向の傾き(θX)と、Y方向の傾き(θY)と、E×B偏向器5の電界と磁界の設定値(En,Bn)の関係を示したルックアップテーブル234の一例である。装置制御ユニット23にはルックアップテーブル234が保存されており、装置制御ユニット23は変位検出器29が検出した試料表面の傾きに応じたE×B偏向器5の電界と磁界の設定値をルックアップテーブル234を参照して導き出す。
【0039】
E×B偏向器5の調整手順をフローとしてまとめると、図8のようになる。まず、ステップ800で照射光学系制御部(図示せず)により照射光学系を、および結像光学系制御部(図示せず)により結像光学系の光軸合わせを行う。光軸合わせにおいて参照する試料は、検査対象である試料8でも良いし、調整用パターンを使用しても良い。なお、照射光学系制御部や結像光学系制御部は装置制御ユニット23内に配置してもよいが、別ユニットとすることもできる。いずれにしても、装置制御ユニットにより各制御部は制御される。
【0040】
ステップ801では傾き検出手段を用いて、光軸合わせに使用した試料表面の傾きを測定する。この傾きを基準傾斜角とする。ステップ802では、ステージを移動させ、試料8の検査対象領域に電子線を照射する。ステップ803では、傾き検出手段を用いて試料表面の傾きを測定し、基準傾斜角からのズレを測定する。ステップ804では、事前に作成され装置制御ユニット23に保存されていたルックアップテーブル234を参照して、試料表面の傾きに対して最適なE×B偏向器5の電界と磁界を調整する。ステップ805では、画像を取得し、検査を実施する。以下、ステップ802からステップ805までのステップを繰り返し、試料8の検査対象領域全体を検査する。
【0041】
本実施例に係る装置を用いて磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の観察を行った結果良好な画像を取得することができた。
以上述べたように、本実施例によれば、検査・観察領域の傾斜を検出する手段及び検出された傾斜に基づき照射電子線、ミラー電子線を偏向する手段を備えることにより、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することができる。また、傾斜を検出する手段として、一組のレーザ光源と変位検出器を用いているので、シンプルな構成で使いやすく実用的な荷電粒子線装置を提供することができる。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明の第二の実施例になる検査装置を、図5を参照しながら説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用できる。
【0043】
図5は、第二の実施例になる荷電粒子線装置の試料ステージ付近の断面図である。試料の検査・観察領域の表面の傾き検出手段として、実施例1と同様のレーザによる傾き検出手段を二組以上搭載している。二組のレーザ光源28はX−Y平面内に設置されており、試料の検査・観察領域の表面を90度ずれた方向から照射することが適当である。
【0044】
試料の検査・観察領域の表面が傾き、さらに試料8の検査・観察領域の高さが変化した場合、レーザによる傾き検出が一組では、試料8の検査・観察領域の傾きと高さの違いを判別することは困難である。図5のようにレーザによる傾き検出手段を二組搭載し、二つの変位検出器29からの信号を検出し、計算することで、試料8の傾きと高さを分離検出することができる。その結果、試料表面の傾きに対しては実施例1と同様にE×B偏向器5の電界と磁界を調整し、試料8の高さ変化に対してはZステージ20を調整し試料8を所望の高さに設定することで、より正確な画像取得が可能になる。
【0045】
本実施例に係る装置を用いて磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の観察を行った結果良好な画像を取得することができた。
本実施例においても実施例1と同様に、検査・観察領域の傾斜を検出する手段及び検出された傾斜に基づき照射電子線、ミラー電子線を偏向する手段を備えることにより、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することができる。また、傾斜を検出する手段として、二組のレーザ光源と変位検出器を用いているので、仮に高さが変化した場合であっても試料の検査・観察領域の傾きと高さの違いを判別することができる。
【実施例3】
【0046】
次に、本発明の第三の実施例になる検査装置を、図6を参照しながら説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用できる。
【0047】
図6は、第三の実施例になる荷電粒子線装置の試料ステージ付近の断面図である。傾き検出手段として、微分干渉光学顕微鏡を使う。光源40から出た光は偏光板であるポラライザ42によって偏光され、ウォラストンプリズム44に入射する。ウォラストンプリズム44によって2つの光路に分離された光は、反射鏡45を使って試料8の表面に照射される。
【0048】
試料8の表面からの反射光は再度ウォラストンプリズム44を通った際、分離されていた光が合わさり、ビームスプリッタ43に入射する。反射光はビームスプリッタ43で反射し、偏光板であるアナライザ46を通って、カメラ47で取得する。試料表面が傾いていた場合、ウォラストンプリズム44で分離された2つの光には光路差が生じるため、再度合成された際、干渉による微分干渉像が観察される。この微分干渉像を観察し、解析することで試料表面の傾きを計測することができる。
【0049】
反射鏡45には電子ビームを通すための穴が開いており、電子線による観察と干渉光による試料表面の傾き測定を同時に行うことができる。なお、符号41はレンズを示す。
【0050】
計測された試料表面の傾きから、装置制御ユニット23は試料表面の傾きに応じた最適なE×B偏向器5の設定値を計算し、E×B偏向器5で電界と磁界を発生させる。微分干渉光学顕微鏡を用いた場合には傾き方向の特定が困難な為、一方に傾けて画像取得後、他方に傾けて画像取得しておくとよい。
【0051】
本実施例に係る装置を用いて磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の観察を行った結果良好な画像を取得することができた。
本実施例においても実施例1と同様に、検査・観察領域の傾斜を検出する手段及び検出された傾斜に基づき照射電子線、ミラー電子線を偏向する手段を備えることにより、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することができる。また、傾斜を検出する手段として、微分干渉光学顕微鏡を用いているのでレーザ光源と変位検出器を用いた場合に比べ傾きをより高感度に検出することができる。
【実施例4】
【0052】
次に、本発明の第四の実施例になる検査装置を、図7を参照しながら説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用できる。
【0053】
図7は、第四の実施例になる荷電粒子線装置の試料ステージ付近の断面図である。傾き検出手段として、プローブ48を使う。照射電子線33による観察領域から離れた試料表面にプローブ48を接触させ、プローブを走査し、表面の凹凸形状を測定し、凹凸形状と試料8上の座標を装置制御ユニット23に記録しておく。照射電子線33で試料8を観察する際、装置制御ユニット23は、観察位置における試料形状を読み出し、試料8の傾きに応じた最適なE×B偏向器5の設定値を計算し、E×B偏向器5で電界と磁界を発生させる。
【0054】
本実施例に係る装置を用いて磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の観察を行った結果良好な画像を取得することができた。
本実施例においても実施例1と同様に、検査・観察領域の傾斜を検出する手段及び検出された傾斜に基づき照射電子線、ミラー電子線を偏向する手段を備えることにより、試料ステージが傾いている場合や試料表面にうねりを有するような場合に起こり得る弊害を解消し、正確な画像を取得することができる荷電粒子線装置を提供することができる。また、傾斜を検出する手段として、プローブを用いているので微分干渉光学顕微鏡を用いた場合に比べ傾きをより高感度に検出することができる。
【0055】
なお、実施例1〜4の手法は試料への照射電子線が面積ビームであるプロジェクション方式の場合を例として示したが、走査電子線方式やイオンなどの荷電粒子線を用いた装置の場合にも、E×B偏向器を用いることで、照射荷電粒子線の軌道と試料から発生する2次電子線の軌道を個別に制御できるため、表面が傾いた試料に対してシェーディング等の発生を抑えた正確な画像を取得可能になる。
【0056】
以上、本願発明を詳細に説明したが、以下に主な発明の形態を列挙する。
(1)荷電粒子発生源と、
前記荷電粒子発生源で発生した荷電粒子を第1の荷電粒子線として観察対象試料に照射する照射光学系と、
前記第1の荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出もしくは反射される第2の荷電粒子線を結像させる結像光学系と、
前記試料を載置すると共に移動させるステージと、
前記試料表面の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記第1の荷電粒子線を前記試料に垂直に入射させ、前記照射光学系の光軸中心に前記第1の荷電粒子線の軌道を合わせると共に、前記結像光学系の光軸中心に前記第2の荷電粒子線の軌道を合わせる荷電粒子線制御手段と、を具備することを特徴とする荷電粒子線装置。
(2) 荷電粒子発生源と、前記荷電粒子発生源で発生した荷電粒子からなる第1の荷電粒子線が照射される試料を載置するステージと、前記第1の荷電粒子線を前記試料に照射する照射光学系と、前記第1の荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出もしくは反射される第2の荷電粒子線を結像させる結像光学系と、結像された前記第2の荷電粒子線を検出する検出手段と、前記照射光学系を制御する照射光学系制御部と、前記結像光学系を制御する結像光学系制御部と、前記ステージを制御するステージ制御ユニットと、前記検出手段により検出された信号から画像を取得する画像処理ユニットと、前記照射光学系制御部、前記結像光学系制御部、前記ステージ制御ユニット、及び前記画像処理ユニットを統括制御する装置制御ユニットとを有する荷電粒子線装置において、
更に、前記試料の表面の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段により検出された傾きに基づいて前記第1の荷電粒子線を前記試料に垂直に入射させ、前記照射光学系の光軸中心に前記第1の荷電粒子線の軌道を合わせるように前記第1の荷電粒子線を偏向すると共に、前記結像光学系の光軸中心に前記第2の荷電粒子線の軌道を合わせるように前記第2の荷電粒子線を偏向する電界と磁界を重畳させた荷電粒子線制御手段と、
前記荷電粒子線制御手段に電力を供給する電源ユニットと、を有し、
前記照射光学系制御部は第1の試料を用いて前記照射光学系の光軸を合わせるものであり、
前記結像光学系制御部は前記第1の試料を用いて前記結像光学系の光軸を合わせるものであり、
前記装置制御ユニットは、前記傾き検出手段により検出された観察対象の第2の試料表面の傾きから、ルックアップテーブルを参照して前記第1の荷電粒子線が前記第2の試料表面に垂直に照射され前記第1の荷電粒子線の軌道が前記照射光学系の光軸中心を通り、前記第2の荷電粒子線の軌道が前記結像光学系の光軸中心を通るように前記電源ユニットを制御して前記荷電粒子線制御手段の電界と磁界を調整するものであり、
前記検出手段は、前記結像光学系の光軸中心を通るように偏向された前記第2の荷電粒子線を検出するものであり、
前記画像処理ユニットは、前記検出手段で検出された信号に基づいて画像を取得するものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【符号の説明】
【0057】
1…電子源、2…引き出し電極、3…コンデンサレンズ、4…偏向器、5…E×B偏向器、6…対物レンズ、7…円孔電極、8…試料、9…試料ホルダ、10…中間レンズ、11…投影レンズ、12…結像系偏向器、13…蛍光板、14…光学像伝達部、15…光学像検出器(TDIセンサ)、16…絶縁体、17…回転(θ)ステージ、18…Xステージ、19…Yステージ、20…Zステージ、21…電源ユニット、22…ステージ制御ユニット、23…装置制御ユニット、24…任意信号発生器、25…画像処理ユニット、26…モニタ、27…検出器回転機構、28…レーザ光源、29…変位検出器、30…電子ビーム照射光学系光軸、31…ミラー電子結像光学系光軸、32…試料面直交方向、33…照射電子線、33B…照射電子が磁界から受ける力、33E…照射電子が電界から受ける力、34…ミラー電子線、34B…ミラー電子線が磁界から受ける力、34E…ミラー電子線が電界から受ける力、40…光源、41…レンズ、42…ポラライザ、43…ビームスプリッタ、44…ウォラストンプリズム、45…反射鏡、46…アナライザ、47…カメラ、48…プローブ、100…照射電子線、100’…ミラー電子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子発生源と、
前記荷電粒子発生源で発生した荷電粒子を第1の荷電粒子線として観察対象試料に照射する照射光学系と、
前記第1の荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出もしくは反射される第2の荷電粒子線を結像させる結像光学系と、
前記試料を載置すると共に移動させる試料ステージと、
前記試料表面の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記第1の荷電粒子線を前記試料に垂直に入射させ、前記照射光学系の光軸中心に前記第1の荷電粒子線の軌道を合わせると共に、前記結像光学系の光軸中心に前記第2の荷電粒子線の軌道を合わせる荷電粒子線制御手段と、を具備することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、レーザ光源と変位検出器を備えていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2記載の荷電粒子線装置において、
前記変位検出器は複数に分割された光検出器から成っていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、前記試料の検査・観察領域の表面の傾きを検出するものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、レーザ光源と変位検出器を二組以上備えていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、微分干渉顕微鏡を具備していることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、前記試料の表面と接触するプローブを具備していることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線制御手段は、電界と磁界を重畳させた偏向器であり、前記第1の荷電粒子線が前記試料に垂直に入射し、前記第1の荷電粒子線が前記照射光学系の光軸中心を、および前記第2の荷電粒子線が前記結像光学系の光軸中心を通るように、前記試料の傾きに応じて電界と磁界が調整されるものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記試料に電圧を印加する電圧印加手段を更に有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
荷電粒子発生源と、前記荷電粒子発生源で発生した荷電粒子からなる第1の荷電粒子線が照射される試料を載置する試料ステージと、前記第1の荷電粒子線を前記試料に照射する照射光学系と、前記第1の荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出もしくは反射される第2の荷電粒子線を結像させる結像光学系と、結像された前記第2の荷電粒子線を検出する検出手段と、前記照射光学系を制御する照射光学系制御部と、前記結像光学系を制御する結像光学系制御部と、前記試料ステージを制御するステージ制御ユニットと、前記検出手段により検出された信号から画像を取得する画像処理ユニットと、前記照射光学系制御部、前記結像光学系制御部、前記ステージ制御ユニット、及び前記画像処理ユニットを統括制御する装置制御ユニットとを有する荷電粒子線装置において、
更に、前記試料の表面の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段により検出された傾きに基づいて前記第1の荷電粒子線を前記試料に垂直に入射させ、前記照射光学系の光軸中心に前記第1の荷電粒子線の軌道を合わせるように前記第1の荷電粒子線を偏向すると共に、前記結像光学系の光軸中心に前記第2の荷電粒子線の軌道を合わせるように前記第2の荷電粒子線を偏向する電界と磁界を重畳させた荷電粒子線制御手段と、
前記荷電粒子線制御手段に電力を供給する電源ユニットと、を有し、
前記照射光学系制御部は第1の試料を用いて前記照射光学系の光軸を合わせるものであり、
前記結像光学系制御部は前記第1の試料を用いて前記結像光学系の光軸を合わせるものであり、
前記装置制御ユニットは、前記傾き検出手段により検出された観察対象の第2の試料表面の傾きから、ルックアップテーブルを参照して前記第1の荷電粒子線が前記第2の試料表面に垂直に照射され前記第1の荷電粒子線の軌道が前記照射光学系の光軸中心を通り、前記第2の荷電粒子線の軌道が前記結像光学系の光軸中心を通るように前記電源ユニットを制御して前記荷電粒子線制御手段の電界と磁界を調整するものであり、
前記検出手段は、前記結像光学系の光軸中心を通るように偏向された前記第2の荷電粒子線を検出するものであり、
前記画像処理ユニットは、前記検出手段で検出された信号に基づいて画像を取得するものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項10記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、前記第2の試料の検査・観察領域の表面の傾きを検出するものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項10記載の荷電粒子線装置において、
前記試料ステージは電圧が印加されるものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項1】
荷電粒子発生源と、
前記荷電粒子発生源で発生した荷電粒子を第1の荷電粒子線として観察対象試料に照射する照射光学系と、
前記第1の荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出もしくは反射される第2の荷電粒子線を結像させる結像光学系と、
前記試料を載置すると共に移動させる試料ステージと、
前記試料表面の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記第1の荷電粒子線を前記試料に垂直に入射させ、前記照射光学系の光軸中心に前記第1の荷電粒子線の軌道を合わせると共に、前記結像光学系の光軸中心に前記第2の荷電粒子線の軌道を合わせる荷電粒子線制御手段と、を具備することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、レーザ光源と変位検出器を備えていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2記載の荷電粒子線装置において、
前記変位検出器は複数に分割された光検出器から成っていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、前記試料の検査・観察領域の表面の傾きを検出するものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、レーザ光源と変位検出器を二組以上備えていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、微分干渉顕微鏡を具備していることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、前記試料の表面と接触するプローブを具備していることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線制御手段は、電界と磁界を重畳させた偏向器であり、前記第1の荷電粒子線が前記試料に垂直に入射し、前記第1の荷電粒子線が前記照射光学系の光軸中心を、および前記第2の荷電粒子線が前記結像光学系の光軸中心を通るように、前記試料の傾きに応じて電界と磁界が調整されるものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、
前記試料に電圧を印加する電圧印加手段を更に有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
荷電粒子発生源と、前記荷電粒子発生源で発生した荷電粒子からなる第1の荷電粒子線が照射される試料を載置する試料ステージと、前記第1の荷電粒子線を前記試料に照射する照射光学系と、前記第1の荷電粒子線の照射に起因して前記試料から放出もしくは反射される第2の荷電粒子線を結像させる結像光学系と、結像された前記第2の荷電粒子線を検出する検出手段と、前記照射光学系を制御する照射光学系制御部と、前記結像光学系を制御する結像光学系制御部と、前記試料ステージを制御するステージ制御ユニットと、前記検出手段により検出された信号から画像を取得する画像処理ユニットと、前記照射光学系制御部、前記結像光学系制御部、前記ステージ制御ユニット、及び前記画像処理ユニットを統括制御する装置制御ユニットとを有する荷電粒子線装置において、
更に、前記試料の表面の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段により検出された傾きに基づいて前記第1の荷電粒子線を前記試料に垂直に入射させ、前記照射光学系の光軸中心に前記第1の荷電粒子線の軌道を合わせるように前記第1の荷電粒子線を偏向すると共に、前記結像光学系の光軸中心に前記第2の荷電粒子線の軌道を合わせるように前記第2の荷電粒子線を偏向する電界と磁界を重畳させた荷電粒子線制御手段と、
前記荷電粒子線制御手段に電力を供給する電源ユニットと、を有し、
前記照射光学系制御部は第1の試料を用いて前記照射光学系の光軸を合わせるものであり、
前記結像光学系制御部は前記第1の試料を用いて前記結像光学系の光軸を合わせるものであり、
前記装置制御ユニットは、前記傾き検出手段により検出された観察対象の第2の試料表面の傾きから、ルックアップテーブルを参照して前記第1の荷電粒子線が前記第2の試料表面に垂直に照射され前記第1の荷電粒子線の軌道が前記照射光学系の光軸中心を通り、前記第2の荷電粒子線の軌道が前記結像光学系の光軸中心を通るように前記電源ユニットを制御して前記荷電粒子線制御手段の電界と磁界を調整するものであり、
前記検出手段は、前記結像光学系の光軸中心を通るように偏向された前記第2の荷電粒子線を検出するものであり、
前記画像処理ユニットは、前記検出手段で検出された信号に基づいて画像を取得するものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項10記載の荷電粒子線装置において、
前記傾き検出手段は、前記第2の試料の検査・観察領域の表面の傾きを検出するものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項10記載の荷電粒子線装置において、
前記試料ステージは電圧が印加されるものであることを特徴とする荷電粒子線装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−243487(P2011−243487A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116227(P2010−116227)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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