説明

蒸気タービンバルブ用の流れ誘導バルブシート

【課題】蒸気タービンバルブ用の流れ誘導バルブシートを提供すること。
【解決手段】流れバルブ(10)は、可動本体を有する制御バルブ(20)と、可動本体を有する停止バルブ(24)と、流れバルブ(10)が閉鎖位置にあるときに制御バルブ(20)本体又は停止バルブ(24)本体のうちの一方の少なくとも一部に接触する接面を有するバルブシート(48)と、を備え、バルブシート(48)の接面が、先端部分(56)においてバルブシート(48)の後方部分と合わさるように構成され、該バルブシート(48)の接面が、流れバルブ(10)を通る流れ方向で誘導流れを提供する空気力学的輪郭を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、蒸気タービンに関し、詳細には、バルブを通る蒸気の空力的流れを改善する空気力学的輪郭を備えた流れ誘導バルブシートを有する蒸気タービンバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは通常、タービン内の蒸気の流量を制御する蒸気タービンバルブを含む。バルブは、蒸気タービン内のバルブの位置に応じて、主停止及び制御バルブ又は複合再熱蒸気バルブを含む。何れの場合においても、「流れ」バルブは通常、可動バルブ本体(例えば、直線運動)と、静止バルブシートとを含み、これら各々の一部は、バルブ入口からの蒸気の流れが流れバルブを介してバルブ出口に移動するのを阻止するよう共に接触して流れバルブを閉鎖し、或いは、蒸気の流れが入口から出口まで流れバルブを通過できるように離れて流れバルブを開放する。
【0003】
蒸気の流れがバルブを通過できるときの蒸気タービンバルブの作動において、バルブ前後で比較的大きな圧力低下が存在する場合がある。これは、ひとつには、バルブシートの空気力学的輪郭に起因する。バルブ前後のこの圧力低下は、特にバルブシートから離れるバルブ本体の移動中に、バルブシートの下流側での蒸気の望ましくない流れ分離を生じさせる可能性がある。この流れ分離は、ある程度の空気力学的な不安定性と、バルブ内のノイズ及び振動問題とを引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7284569号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、流れバルブは、可動本体を有する制御バルブと、可動本体を有する停止バルブと、流れバルブが閉鎖位置にあるときに制御バルブ本体又は停止バルブ本体のうちの一方の少なくとも一部に接触する接面を有するバルブシートと、を備え、バルブシートの接面が、先端部分においてバルブシートの後方部分と合わさるように構成され、該バルブシートの接面が、流れバルブを通る流れ方向で誘導流れを提供する空気力学的輪郭を有する。
【0006】
本発明の別の態様によれば、流れバルブは、蒸気の流れが流れバルブに流入する入口と、蒸気の流れが流れバルブから流出する出口と、可動本体を有する制御バルブ及び可動本体を有する停止バルブのうちの1つとを含む。流れバルブはまた、流れバルブが閉鎖位置にあるときに制御バルブ本体又は停止バルブ本体のうちの一方の少なくとも一部に接触する接面を有するバルブシートを含み、バルブシートの接面は、先端部分においてバルブシートの後方部分と合わさるように構成され、該バルブシートの接面が、流れバルブを通る流れ方向で誘導流れを提供する空気力学的輪郭を有する。
【0007】
本発明の更に別の態様によれば、流れバルブは、可動本体を有する制御バルブ及び可動本体を有する停止バルブのうちの1つを含む。流れバルブはまた、流れバルブが閉鎖位置にあるときに制御バルブ本体又は停止バルブ本体のうちの一方の少なくとも一部に接触する接面を有するバルブシートを含み、バルブシートの接面は、先端部分においてバルブシートの後方部分と合わさるように構成され、該バルブシートの接面が、流れバルブを通る流れ方向で誘導流れを提供する空気力学的輪郭を有する。
【0008】
これら及び他の利点並びに特徴は、図面を参照しながら以下の説明から明らかになるであろう。
【0009】
本発明と見なされる主題は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲に具体的に指摘し且つ明確に特許請求している。本発明の上記及び他の特徴並びに利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から明らかである。
【0010】
この詳細な説明は、例証として図面を参照しながら、本発明の利点及び特徴と共に例示的な実施形態を説明している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】公知の空気力学的輪郭を備えたバルブシートを有する蒸気バルブの断面図。
【図2】本発明の1つの実施形態による蒸気バルブ内に位置付けられたバルブシートの空気力学的輪郭の側面図。
【図3】本発明の別の実施形態による、蒸気バルブ内に位置付けられたバルブシートの空気力学的輪郭の側面図。
【図4】本発明の更に別の実施形態による、蒸気バルブ内に位置付けられたバルブシートの空気力学的輪郭の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、蒸気タービンの一部である蒸気バルブ10を示す。例えば、蒸気タービンバルブ10は、複合停止及び制御バルブ、再熱バルブ、又は他のタイプの蒸気タービンバルブ(「流れバルブ」)とすることができ、矢印14を有するラインで示すように、入口12(例えば、パイプ)にて流れバルブ10に流入し、次いで、流れバルブ10内部のストレーナ15内の開口を通過し、矢印18を有するラインで示すように、流れバルブ10の出口(例えば、パイプ)から蒸気タービンの他の構成要素上に流出する蒸気の流れを配向する。
【0013】
また、流れバルブ10のケーシング20内には、制御バルブ22及び停止バルブ24が位置付けられる。制御バルブ22は、矢印28を有するラインにより示すように、例えば、直線運動用に既知の方式(例えば、油圧、空気圧、モータ駆動、その他)で駆動されるよう構成されるシリンダ又はロッド26を含むことができる。制御バルブ22はまた、ロッド26の一方端に位置付けられ、該ロッド26と一体的に接続又は形成されたバルブ本体30を含み、ロッド26の移動に伴って制御バルブ本体30を同時に運動させる。制御バルブ本体30は、該制御バルブ本体30の下部に形成されるキャビティ32を含む。
【0014】
ケーシング20はまた停止バルブ24を含み、該停止バルブ24は、矢印36を有するラインで示されるように、例えば直線運動のため既知の方式(例えば、油圧、空気圧、モータ駆動、その他)で駆動され、制御バルブ22のロッド26と同様に構成されたシリンダ又はロッド34を含むことができる。停止バルブ24はまた、ロッド34の一方端に位置付けられ、該ロッド34と一体的に接続又は形成されたバルブ本体38を含み、ロッド34の移動に伴って停止バルブ本体38を同時に運動させる。停止バルブ本体38は、制御バルブ本体30のキャビティ32内に移動することができる。
【0015】
図1にはまた、比較的平坦又は直線状の空気力学的輪郭を備えた表面42を有するバルブシート40が示される。バルブシート40はまた、平坦な表面42に隣接する比較的平坦部分44を含む。この平坦部分44はまた、バルブシート40の空気力学的輪郭の一部である。図1は、閉鎖位置の制御バルブ22及び停止バルブ24の両方を示している。このような位置において、制御バルブ本体30及び停止バルブ本体38の一部は、バルブシート40の表面42と接触しており、これにより流れバルブ10を通る蒸気の流れが遮断される。すなわち、図1に示す閉鎖位置において、蒸気の流れは、バルブ入口12からバルブ出口16に流れるのが阻止される。しかしながら、流れバルブ10の作動のある場合において、制御バルブ本体30だけがバルブシート40の表面42に接触し、これにより流れバルブ10を通る蒸気の流れを遮断することができ、流れバルブ10の作動の他の場合において、停止バルブ本体38だけがバルブシート40の表面42に接触し、これにより流れバルブ10を通る蒸気の流れを遮断することができる。
【0016】
対照的に、流れバルブ10の開放位置(図示せず)において、制御バルブ22及び停止バルブ24は、それぞれの本体30、38がバルブシート表面42から離れて位置付けられるように位置決めされる。この位置において、蒸気の流れは、バルブ入口12から流れて、開口の一方側で制御バルブ本体30と停止バルブ本体38との間に形成された開口又は通路を通り、更に開口の他方側のバルブシート表面42を通り、次いで蒸気バルブ出口16を通ることが可能になる。
【0017】
しかしながら、開放位置におけるこのバルブシート40では、流れバルブ10を通過する蒸気の流れの一部は、バルブシート40の平坦表面44に衝突する。これにより、バルブシート40の平坦表面44に衝突する蒸気流の当該部分の流れ方向において急激な変化が生じる可能性がある。結果として、蒸気流の一部の方向における急激な変化は、バルブシート40の平坦表面44の下流側での蒸気流に2次的な流れ及びスワールを引き起こし、結果として流れバルブ10の比較的高い圧力損失をもたらす可能性がある。すなわち、この平坦な表面44は、流れバルブ10を通過する蒸気の誘導流を提供せず、代わりに、流れ方向に対する障壁となる。
【0018】
図2には、本発明の1つの実施形態による、流れバルブ10内に位置付けられたバルブシート48の空気力学的輪郭の側面図が示される。バルブシート48は、共に接合された2つの要素50、52を備えることができ、或いは単一要素を備えてもよい。第1の要素50の表面54の空気力学的輪郭は、バルブシート48の第1の要素50の先端部分56に対して流れ方向で一定の角度にある線形又は直線状とすることができる。先端部分56は先鋭とすることができる。表面54は、流れバルブ10が閉鎖位置にあるときに、制御バルブ本体30及び停止バルブ本体38の一部と接触する。
【0019】
図1のバルブシート40とは対照的に、図2のバルブシート48のこの実施形態では平坦な表面44は存在しない。すなわち、蒸気流接面54は、先端部分56において第1の要素50(並びに1つの実施形態において利用されるときに第2の要素)の後方部分又は表面57と結合され、先端部分は平坦部分を包含しない点を含む。更に、バルブシート48の第2の要素52の表面58の空気力学的輪郭はまた、少なくとも長さの一部が線形又は直線状とすることができるが、第1の要素50の先端部分56に対してある角度にあるとすることができ、該角度は、バルブシート48の第1の要素の先端部分56に対して第1の要素50の表面54の角度よりも小さい。この表面58の一部はまた、流れバルブ10が閉鎖位置にあるときに制御バルブ本体30及び停止バルブ本体38の一部と接触することができる。従って、バルブシート40の表面54、58は、流れバルブ10を通過する流れ方向の蒸気の誘導流を提供する。
【0020】
図2の実施形態においてバルブシート48の平坦部分44を排除することによって、及び流れ方向においてバルブシート48の表面54及び58の線形部分を設けることによって、流れバルブ10が開放位置にあるときに、蒸気の比較的滑らかな空気力学的流れを達成することができる。すなわち、2次的流れ及びスワールの量は、流れ方向におけるこの誘導流れにより低減又は更に排除することもできる。
【0021】
図3には、本発明の別の実施形態による、流れバルブ10内に位置付けられたバルブシート48の空気力学的輪郭の側面図を示している。この実施形態において、表面54は、凹面状の空気力学的輪郭を有することができ、表面58は、直線状又は線形とすることができる。図2の実施形態と同様に、バルブシート40の表面54、58は、流れバルブ10を通る流れ方向で蒸気の誘導流れを提供する。表面54の凹面状輪郭は、先鋭とすることができる先端部分56の後に流れ方向で始まることができる。また、表面54及び58のこれらが合わさる部分は、凸面状とすることができる。図2の実施形態と同様に、蒸気の比較的円滑な空気力学的流れは、流れバルブ10が図3の実施形態で開放位置にあるときに達成することができる。
【0022】
図4には、本発明の更に別の実施形態による、流れバルブ10内に位置付けられたバルブシート48の空気力学的輪郭の側面図が示される。この実施形態において、表面54は、流れ方向で先端部分56付近に凹面状部分60を有することができ、また、同様に流れ方向で先端部分から離れて凸面状部分62を有することができる。表面54の凹面状輪郭は、先鋭とすることができる先端部分56の後に始まることができる。表面58の一部は直線状又は線形とすることができる。図2及び3の実施形態と同様に、蒸気の比較的円滑な空気力学的流れは、流れバルブ10が図4の実施形態で開放位置にあるときに達成することができる。また、図2及び3の実施形態と同様に、バルブシート40の表面54、58は、流れバルブ10を通る流れ方向で蒸気の誘導流れを提供する。
【0023】
本発明の実施形態は、流れバルブ10前後の圧力低下量の軽減を可能にする。これは、蒸気タービンの効率の向上、並びに蒸気タービンにおける振動及びノイズの相対的低減をもたらす。加えて、本発明の実施形態は、流れバルブ10内の蒸気の流れに対する比較的円滑な空気力学的経路を提供し、これにより粘性エネルギーが低減され、流れバルブ10前後の圧力低下が軽減される。流れバルブ10前後の比較的向上した空気力学的蒸気流路はまた、流れバルブ10の圧力変動を低減する。更に、本発明の実施形態は、蒸気バルブでの使用に限定されず、あらゆるタイプのバルブが本発明の実施形態で利用できる。
【0024】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明はこのような開示された実施形態に限定されないことは理解されたい。むしろ、本発明は、上記で説明されていない多くの変形、改造、置換、又は均等な構成を組み込むように修正することができるが、これらは、本発明の技術的思想及び範囲に相応する。加えて、本発明の種々の実施形態について説明してきたが、本発明の態様は記載された実施形態の一部のみを含むことができる点を理解されたい。従って、本発明は、上述の説明によって限定されると見なすべきではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0025】
10:蒸気タービンバルブ
12:入口
14,18,28,36:矢印
15:ストレーナ
16:出口
20:ケーシング
22:制御バルブ
24:停止バルブ
26,34:ロッド
30,38:バルブ本体
32:キャビティ
40:バルブシート
42:バルブシート表面
44:平坦部分
48:バルブシート
50,52:要素
54,57,58:表面
56:先端部分
60:凹面状部分
62:凸面状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動本体を有する制御バルブ(20)と、
可動本体を有する停止バルブ(24)と、
前記流れバルブ(10)が閉鎖位置にあるときに前記制御バルブ(20)本体又は前記停止バルブ(24)本体のうちの一方の少なくとも一部に接触する接面を有するバルブシート(48)と
を備える流れバルブ(10)であって、前記バルブシート(48)の接面が、先端部分(56)において前記バルブシート(48)の後方部分と合わさるように構成され、該バルブシート(48)の接面が、前記流れバルブ(10)を通る流れ方向で誘導流れを提供する空気力学的輪郭を有する、流れバルブ(10)。
【請求項2】
ケーシング(20)と、
前記ケーシング(20)において蒸気の流れが前記流れバルブ(10)に流入する入口(12)と、
前記流れバルブ(10)が開放位置にあるときに、前記ケーシング(20)において蒸気の流れが前記流れバルブ(10)から流出する出口(16)と
を更に備える、請求項1記載の流れバルブ(10)。
【請求項3】
前記バルブシート(48)の接面の空気力学的輪郭が、流れ方向で前記先端部分(56)の後に位置付けられる線形部分を有する、請求項1記載の流れバルブ(10)。
【請求項4】
前記バルブシート(48)の接面の空気力学的輪郭が、流れ方向で前記先端部分(56)の後に位置付けられる凹面状部分(60)を有する、請求項1記載の流れバルブ(10)。
【請求項5】
前記バルブシート(48)の接面の空気力学的輪郭が、凹面状の第1の部分と、凸面状の第2の部分とを有する、請求項1記載の流れバルブ(10)。
【請求項6】
前記バルブシート(48)の接面の空気力学的輪郭が、流れ方向で前記凸面状部分(62)の後に位置付けられる直線状部分を有する、請求項5記載の流れバルブ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256864(P2011−256864A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123867(P2011−123867)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】