説明

蒸気タービン設備

【課題】高圧タービン部から排気される蒸気を他の蒸気を取り扱う蒸気取扱部に供給したり、蒸気取扱部からの蒸気を低圧タービン部に供給したりすることが可能な蒸気タービン設備を提供する。
【解決手段】高圧タービン部9と低圧タービン部10とがロータ6で連接された蒸気タービン設備であって、前記高圧タービン部9及び前記低圧タービン部10間に湿分分離器44を接続し、前記湿分分離器44と前記低圧タービン部10との間に蒸気遮断弁50及び圧力制御弁51を介装し、前記湿分分離器44と前記高圧タービン9との間に仕切り弁46を介して外部蒸気取扱部47を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内に高圧部と低圧部とが中間シール部を介して配設された蒸気タービン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蒸気タービン設備としては、例えば高圧タービンからの排気を湿分分離器及び組合せ中間弁を備えたクロスアラウンド管を経て低圧タービンに導入し、低圧タービンの排気を復水器に導入し、且つクロスアラウンド管の湿分分離器出口側に安全排気管により復水器に接続するようにした蒸気タービン設備が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、組合せ中間弁は、2つのバタフライ弁で構成し、湿分分離器側のバタフライ弁は非常時に全閉制御される中間蒸気止め弁としての役割を果たし、低圧タービン側のバタフライ弁は危急遮断時にクロスアラウンド管に蓄えられた大量の蒸気が低圧タービンを過速させることを防ぐインターセプト弁としての役割を果たす。
【特許文献1】特開2006−97543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の従来例にあっては、高圧タービンからの排気を湿分分離器及び組合せ中間弁を備えたクロスアラウンド管を経て低圧タービンに導入するので、負荷遮断時に組合せ中間弁で蒸気を遮り、低圧タービンをオーバースピードから保護することができる。
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、高圧タービンからの排気を全て低圧タービン側に導入するようにしているので、高圧タービンの排気を外部の蒸気圧消費部で消費したり、外部の蒸気圧発生部で発生した蒸気を低圧タービンに導入したりすることができないという未解決の課題がある。
【0004】
また、高圧タービン及び低圧タービン間が湿分分離器及び組合せ中間弁のみが介装されたクロスアラウンド管で接続されているので、組合せ中間弁で湿分分離器と低圧タービンとの間が遮断されたときにクロスアラウンド管に残留する蒸気圧を調整する手段がないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、高圧タービンから排気される蒸気を他の蒸気を取り扱う蒸気取扱部に供給したり、蒸気取扱部からの蒸気を低圧タービンに供給したりすることが可能な蒸気タービン設備を提供することを第1の目的としている。
また、本発明は、高圧タービン及び低圧タービン間に接続された湿分分離器を経由する系統に蒸気圧が残留することを回避することが可能な蒸気タービン設備を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に係る蒸気タービン設備は、高圧タービンと低圧タービンとがロータで連接された蒸気タービン設備であって、前記高圧タービン及び前記低圧タービン間に湿分分離器を接続し、前記湿分分離器と前記低圧タービンとの間に遮断装置及び圧力制御装置を介装し、前記湿分分離器と前記高圧タービンとの間に仕切り弁を介して外部蒸気取扱部を接続したことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に係る蒸気タービン設備は、請求項1に係る発明において、前記圧力制御装置は、前記外部蒸気取扱部の要求蒸気圧に基づいて圧力制御を行なうように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る蒸気タービン設備は、請求項1又は2に係る発明において、前記高圧タービンと前記湿分分離器及び仕切り弁との間に逆流防止手段を介装したことを特徴としている。
【0007】
さらに、第2の目的を達成するために、請求項4に係る発明は、高圧タービンと低圧タービンとがロータで連接された蒸気タービン設備であって、前記高圧タービン及び前記低圧タービン間に湿分分離器を接続し、前記湿分分離器と前記低圧タービンとの間に遮断装置及び圧力制御装置を介装し、前記湿分分離器と前記高圧タービンとの間に逆流防止手段を接続し、該逆流防止手段と前記高圧タービンとの間に圧抜き系統を接続したことを特徴としている。
【0008】
さらにまた、第2の目的を達成するために、請求項5に係る蒸気タービン設備は、高圧タービンと低圧タービンとがロータで連接された蒸気タービン設備であって、前記高圧タービン及び前記低圧タービン間に湿分分離器を接続し、前記湿分分離器と前記低圧タービンとの間に遮断装置及び圧力制御装置を介装し、前記湿分分離器と前記高圧タービンとの間に逆流防止手段を接続し、前記湿分分離器に圧抜き系統を接続したことを特徴としている。
【0009】
なおさらに、第2の目的を達成するために、請求項6に係る蒸気タービン設備は、高圧タービンと低圧タービンとがロータで連接された蒸気タービン設備であって、前記高圧タービン及び前記低圧タービン間に湿分分離器を接続し、前記湿分分離器と前記低圧タービンとの間に遮断装置及び圧力制御装置を介装し、前記湿分分離器と前記高圧タービンとの間に逆流防止手段を接続し、前記高圧タービン及び逆流防止手段の間と前記遮断装置及び圧力制御装置の間とをミニフロー系統で連通したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、湿分分離器と高圧タービンとの間に仕切り弁を介して外部蒸気取扱部を接続したので、高圧部から排気される蒸気を、仕切り弁を介して外部蒸気取扱部に供給する抽気状態としたり、外部蒸気取扱部からの蒸気を、仕切り弁を介して高圧タービンから排気される蒸気に混合する混気状態としたりすることができる。このため、高圧タービンから排気される蒸気を有効利用することができると共に、外部からの蒸気で低圧タービンを駆動することができるという効果が得られる。
【0011】
このとき、圧力制御装置で、外部蒸気取扱部の要求蒸気圧に基づいて圧力制御を行なうことにより、外部蒸気取扱部に供給する抽気量を一定に制御することができる。
また、高圧タービンと湿分分離器及び仕切り弁との間に逆流防止手段を設けることにより、外部蒸気取扱部から混気される蒸気が高圧タービンに導入されることを確実に防止することができると共に、湿分分離器を含む系統に残留する蒸気やドレンが高圧タービンに供給されることを確実に防止することができる。
【0012】
また、本発明によれば、高圧タービン及び逆流防止手段との間に、圧抜き系統を設けたので、起動時や負荷遮断状態が発生したときに、高圧タービンに供給される蒸気が絞られている状態で、圧抜き系統で蒸気圧を逃がすことができ、高圧タービンの出口側の蒸気圧が一時的に高くなった後、高い状態で維持されることによりかき回し損失が発生することを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、湿分分離器と高圧タービンとの間に逆流防止手段が介装されているので、逆流防止手段から湿分分離器を含む低圧部までの間に蒸気圧が残留する可能性があり、この残留蒸気圧を湿分分離器に接続された圧抜き系統により放出することができる。
さらにまた、本発明によれば、高圧タービン及び逆流防止手段の間と前記遮断装置及び圧力制御装置の間とをミニフロー系統で連通したので、起動時や負荷遮断時に、高圧タービンに流入する蒸気を絞ったときに、高圧タービンから排気される蒸気圧を、ミニフロー系統を介して遮断装置及び圧力制御装置間に供給して低圧タービンで必要とする最小蒸気量を確保することができ、低圧部での空回りを防止することができる。このため、低圧部の連続運転を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明を地熱蒸気タービンに適用した場合の一実施形態を示すタービン部を断面とした正面図、図2はタービン部の蒸気系統図である。
図中、1地熱蒸気タービン設備であって、この地熱タービン設備1は地熱蒸気井(図示せず)から高圧蒸気が供給される蒸気タービン2を備えている。
この蒸気タービン2は、固定部に固定された基台3と、この基台3上に固定された左右一対の軸受部4及び5と、これら軸受部4及び5によって回転自在に支持された蒸気タービンロータ6と、この蒸気タービンロータ6を覆うケーシング7とを備えている。
蒸気タービンロータ6は、ケーシング7を貫通しており、このケーシング7内で中間シール部8によって高圧タービン部9及び低圧タービン部10に分割されている。
【0015】
高圧タービン部9には、ケーシング7の左端側の外周面に地熱蒸気井(図示せず)から高圧蒸気が供給される高圧蒸気入口11が設けられ、ケーシング7の中間シール部8側の外周面に高圧蒸気出口12が設けられている。
同様に、低圧タービン部10には、ケーシング7の中間シール部8側の外周面に低圧蒸気が供給される低圧蒸気入口13が設けられ、ケーシング7の右端部に図2に示す復水器30に低圧蒸気を排出する排気口(低圧蒸気出口)14が設けられている。
【0016】
そして、地熱蒸気タービンロータ6には、ケーシング7内において、高圧タービン部9の高圧蒸気入口11及び高圧蒸気出口12間に複数の動翼16が軸方向に所定間隔を保って固定配置されている。また、これら動翼16に対応する静翼17が静止部(ケーシング7)に固定され、これら静翼17と動翼16とが軸方向で交互に配置されている。
また、地熱蒸気タービンロータ6には、ケーシング7内において、低圧タービン部10の低圧蒸気入口及び排気口14間に複数の動翼18、19が固定配置されている。また、動翼18及び19に対応する静翼20及び21が静止部(ケーシング7)に固定され、これら静翼20及び21と動翼18及び19とが軸方向で交互に配置されている。この地熱蒸気タービンロータ6の右端が図2に示すように発電機31に接続されている。
【0017】
そして、高圧タービン部9及び低圧タービン部10に対する蒸気系統が図2に示すように構成されている。高圧タービン部9には、地熱蒸気井(図示せず)から高圧蒸気が高圧蒸気遮断弁41及び高圧蒸気加減弁42を介して高圧蒸気入口11に供給される。
また、高圧タービン部8の高圧蒸気出口12には、高圧タービン部8への高圧蒸気の逆流を阻止する逆流防止手段としての逆止弁43を介して湿分分離器44が接続されている。
【0018】
そして、逆止弁43及び湿分分離器44との接続配管45に仕切り弁46を介して外部蒸気取扱部47が接続されている。この外部蒸気取扱部47としては、高圧タービン部9から排出される高圧蒸気を抽気して利用する蒸気利用設備と、高圧タービン部9に供給される地熱蒸気井とは別の地熱蒸気井のように余剰蒸気を高圧タービン部9から供給される高圧蒸気に混気する蒸気供給設備とがある。蒸気利用設備としては例えば高圧蒸気を使用してスチーム暖房を行なう暖房設備や、高圧蒸気を使用して加熱する加熱設備等がある。蒸気供給設備としては上述した地熱蒸気井の他に余剰蒸気を出力することが可能な原子炉などの他の蒸気発生源がある。
【0019】
また、湿分分離器44で湿分分離された高圧蒸気は、蒸気遮断弁50及び圧力制御弁51を介して低圧タービン部10の低圧蒸気入口13に供給される。ここで、圧力制御弁51は、逆止弁43及び湿分分離器44間の接続配管45の圧力を検出する圧力センサ52で検出した圧力に基づいて制御部53によって、外部蒸気取扱部47で抽気される蒸気圧又は外部蒸気取扱部47から混気される蒸気圧が一定となるように圧力制御が行なわれる。
さらに、高圧タービン部9の高圧蒸気出口12と逆止弁43との接続配管54が圧抜弁55を介して復水器30に接続されて残留蒸気圧を逃がす圧抜き系統が形成されている。また、湿分分離器44にも圧抜き弁56を介して復水器30に接続されて残留蒸気圧を逃がす圧抜き系統が形成されている。
【0020】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、外部蒸気取扱部47に例えば蒸気圧を使用するスチーム暖房設備が接続されているものとする。この状態で、高圧蒸気遮断弁41及び高圧蒸気加減弁42が共に閉状態であって、蒸気タービン2が停止状態にあるものとする。
この蒸気タービン2の停止状態から蒸気タービン2を起動するには、先ず、仕切り弁46を閉状態とした状態で、地熱蒸気井から高圧蒸気が供給されている高圧蒸気遮断弁41を開状態とし、次いで高圧蒸気加減弁42を閉状態から徐々に開度を増加させる。
これと同時に、蒸気遮断弁50を開状態とすると共に、圧力制御弁51を閉状態から徐々に開度を増加させる。
これにより、蒸気タービン2の高圧蒸気入口11に地熱蒸気井からの高圧蒸気が高圧タービン部9に徐々に供給されることにより、高圧タービン部9の静翼17及び動翼16で仕事をして高圧蒸気出口12から排出される。
【0021】
この高圧蒸気出口12から排出された蒸気は逆止弁43を通じて湿分分離器44に供給され、この湿分分離器44で蒸気中の湿分が分離されて適度な湿り度の蒸気が蒸気遮断弁50を介して、圧力制御弁51を介して低圧タービン部10に供給され、この低圧タービン部10の静翼20、21及び動翼18、19で仕事をしてから大部分が排気口14から復水器30に排出される。
この復水器30では、低圧タービン部10から排気される蒸気が冷却及び凝縮して復水となり、排気蒸気の圧力は大気圧以下の圧力に保持される。
このようにして、蒸気タービンロータ6が回転を開始し、その回転力が負荷としての発電機31に伝達されて、この発電機31で電力に変換される。
【0022】
その後、高圧タービン部9から排気される蒸気圧が上昇して、外部蒸気取扱部47から要求される要求蒸気圧に達すると、仕切り弁46が開状態に制御される。このため、高圧タービン部9から排気される蒸気が仕切り弁46を介して外部蒸気取扱部47へ抽気される。このとき、圧力制御弁51が逆止弁43と湿分分離器44との間の接続配管45の圧力を圧力センサ52で検出したこの圧力が外部蒸気取扱部47側から要求される要求蒸気圧と一致するように制御部53によって圧力制御弁51の圧力制御が行なわれる。このとき、低圧タービン部10に対しては必要最低限の蒸気量は確保される。
このように、逆止弁43及び湿分分離器44間の蒸気を抽気して外部蒸気取扱部47に供給することにより、高圧タービン部9から排気される蒸気の余剰分を外部蒸気取扱部47で有効利用することができ、この外部蒸気取扱部47でスチーム暖房等を行なうことができる。
【0023】
また、高圧タービン部9と湿分分離器44との間に逆止弁43を備えていることにより、外部蒸気取扱部47として、余剰蒸気を供給可能な地熱蒸気井、原子炉等の蒸気供給源を適用して、この蒸気供給源から供給される蒸気を高圧タービン部9から排気される蒸気に混気することができる。すなわち、蒸気供給源から出力される余剰蒸気を、仕切り弁46を介して供給することにより、高圧タービン部9から排気される蒸気に混気して湿分分離器44に供給することができる。この場合、高圧タービン部9に対しては逆止弁43が介装されているので、高圧蒸気が高圧タービン部9に逆流することを確実に防止することができ、外部蒸気取扱部47の余剰蒸気を低圧タービン部10で有効利用することができる。仮にこの逆止弁43を湿分分離器44と仕切り弁46との間に備えた場合には、高圧タービン部9から排気される蒸気の余剰分を外部蒸気取扱部47で有効利用することはできるが、外部蒸気取扱部47を蒸気供給源として、そこから供給される蒸気を高圧タービン部9から排気される蒸気に混気することはできなくなる。
【0024】
ところで、上記のような蒸気タービン2の負荷運転時に、負荷が急激に低下して無負荷になったときには、この無負荷状態を例えば発電機31に設けられた出力検出器61で検出すると、先ず、高圧蒸気加減弁42が一旦閉状態に制御され、その後徐々に開度が増加されて、所定量の蒸気が供給されるが、その量が少ないため、高圧タービン部9での動翼16が極低流量の蒸気中で回転され、かき回し損失が発生する。そのため、このかき回し損失による発熱を防止する必要がある。
【0025】
負荷遮断時に、湿分分離器44側では圧力制御弁51が一旦全閉状態となるので、蒸気圧が高い状態を維持することになる。
一方、高圧蒸気加減弁42の開度が小開度に制御されて高圧タービン部9に供給される高圧蒸気量は極低流量であるものの、高圧タービン部9に蓄積された蒸気を外部に放出する系統は、中間シール部8等に限られるため、高圧タービン部9内が比較的高圧状態を維持してかき回し損失が生じることになる。
【0026】
負荷遮断時に高圧タービン部9でかき回し損失による発熱が発生するのは、高圧タービン部9内の圧力が高い状態で維持されかつ、流量が極少ない場合であるが、その圧力が高い状態で維持されるケースは次の2つが考えられる。なお、負荷遮断時に強制的に逆止弁43を閉としない場合、以下のどちらのケースとなるかは、タービン内部の流量バランスや蒸気配管等の容積、外部蒸気取扱部圧力および容量などに依存する。
【0027】
1)逆止弁43が閉まる場合(高圧タービン部の圧力<湿分分離器系統側の圧力で維持される場合)。なお、高圧タービン部9内の圧力は、高圧蒸気加減弁42から流入する蒸気(この際、高圧蒸気加減弁42は回転数制御を行っている)とタービン内部の洩れ蒸気(例えば中間シール部8)とのバランスによって決定される。
2)逆止弁43が閉まらない場合(高圧タービン部の圧力>湿分分離器系統側の圧力で維持される場合)。高圧タービン部9内の圧力は、湿分分離器系統側圧力とほぼ一致した状態で維持される。
【0028】
負荷遮断時にかき回し損失による発熱が生じる恐れがあるのは、ごく短時間の間である。定性的には、負荷遮断後仕切り弁46を全閉し、蒸気タービン2を外部蒸気取扱部47と切り離せば、湿分分離器44を含めた系統側の蓄積蒸気は、圧力制御装置51(この際は圧力制御状態でなく全開状態である)を通じてタービン低圧部10に導入され復水器30へ流れるため、圧抜き弁55を開にしなくても時間はかかるが、湿分分離器系統側圧力は下がる。湿分分離器系統側圧力が充分に下がれば、逆止弁43は必ず開状態となり高圧タービン部9内の圧力は下がる。但し、高圧排気部〜湿分分離器〜低圧入口部の容量が大きい場合には、仕切り弁46閉〜湿分分離器系統側圧力降下に時間がかかる。そのため、負荷遮断後に高圧タービン9内の圧力を速やかに低下させる目的で圧抜き弁55が設けられている。
【0029】
負荷遮断時に、高圧タービン部9内の圧力が高い状態で維持される時に、圧抜き弁55を開状態に制御することにより、高圧タービン部9から排気される極低流量の高圧蒸気が復水器30に逃がされることになり、高圧タービン部9でのかき回し損失が生じることを防止することができる。
同様に、負荷遮断時に、湿分分離器44側でも蒸気圧が高圧に維持されることになるので、この蒸気圧を、圧抜き弁56を開状態に制御することにより、復水器30に逃がして、湿分分離器44を低圧状態に制御することができる。また、圧抜き弁55の操作は、蒸気タービン2の起動時に、高圧タービン部9への供給蒸気量が少なくて、逆止弁43が閉状態を維持する場合にも、圧抜き弁55を開状態として高圧タービン部9に蒸気が籠もってしまうことを防止することができる。
【0030】
このように、上記第1の実施形態によると、高圧タービン部9及び低圧タービン部10との間に湿分分離器44を設けたので、高圧タービン部9から排気される湿り蒸気を適度な湿り度の蒸気として低圧タービン部10に供給することができる。
また、高圧タービン部9の高圧蒸気出口12に逆止弁43を設けたので、この逆止弁43と湿分分離器44との間の蒸気を抽気して外部蒸気取扱部47に供給することができると共に、逆に外部蒸気取扱部47からの蒸気を高圧タービン部9から排気される蒸気に混気して低圧タービン部10に供給することもできる。
【0031】
さらに、高圧タービン部9の高圧蒸気出口12に圧抜き弁55を設けたので、高圧タービン部9に供給される蒸気量が低流量であって、逆止弁43を開状態とすることができない場合に、圧抜き弁55によって蒸気を復水器30に逃がすことができ、高圧タービン部9に蒸気が籠もってかき回し損失を生じることを防止することができる。
同様に、湿分分離器44にも圧抜き弁56を接続したので、湿分分離器44の残留蒸気圧が高い場合に、これを復水器30に排気することができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態を図3について説明する。
この第2の実施形態では、湿分分離器44と低圧タービン部10との間の蒸気遮断弁50が全閉状態となった場合でも低圧タービン部10で必要とする必要最低限の蒸気量を確保するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図3に示すように、高圧タービン部9の高圧蒸気出口12及び逆止弁43間と蒸気遮断弁50及び圧力制御弁51間とに管径の小さいミニフロー系統を構成するミニフロー用接続配管71が配設されていることを除いては前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、図2との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0033】
この第2の実施形態によると、前述した起動時や負荷遮断時等に高圧タービン部9から排気される蒸気量が低流量であって、逆止弁43が遮断状態である場合に、高圧タービン部9から排気される低流量の蒸気を、ミニフロー用接続配管71を通じて圧力制御弁51に供給することができる。このため、圧力制御弁51によって低圧タービン部10で必要とする必要最小限の蒸気量を確保するように全開させることにより、高圧タービン部9及び低圧タービン部10に必要最小限の蒸気量を供給して、高圧タービン部9及び低圧タービン部10におけるかき回し損失による発熱を防止することができる。
【0034】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、ケーシング7内に中間シール部8を介して高圧タービン部9と低圧タービン部10を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、高圧タービン及び低圧タービンを別個に構成し、両者のロータを連結シャフトで連結するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、負荷として発電機31を接続した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の任意の構成の負荷を接続することができる。
またさらに、上記第1及び第2の実施形態においては、圧抜き弁55及び56の接続先を復水器30とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、一次側の圧力よりも充分に低いもの(例えば大気放出ライン)であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す蒸気タービンを示す要部を断面とした正面図である。
【図2】第1の実施形態の蒸気系統図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の蒸気系統図である。
【符号の説明】
【0036】
1…地熱蒸気タービン設備、2…蒸気タービン、6…蒸気タービンロータ、7…ケーシング、9…高圧タービン部、10…低圧タービン部、30…復水器、31…発電機、41…高圧蒸気遮断弁、42…高圧蒸気加減弁、43…逆止弁、44…湿分分離器、45…仕切り弁、47…外部蒸気取扱部、50…蒸気遮断弁、51…圧力制御弁、55,56…圧抜き弁、71…ミニフロー用接続配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タービンと低圧タービンとがロータで連接された蒸気タービン設備であって、
前記高圧タービン及び前記低圧タービン間に湿分分離器を接続し、前記湿分分離器と前記低圧タービンとの間に遮断装置及び圧力制御装置を介装し、前記湿分分離器と前記高圧タービンとの間に仕切り弁を介して外部蒸気取扱部を接続したことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項2】
前記圧力制御装置は、前記外部蒸気取扱部の要求蒸気圧に基づいて圧力制御を行なうように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン設備。
【請求項3】
前記高圧タービンと前記湿分分離器及び仕切り弁との間に逆流防止手段を介装したことを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸気タービン設備。
【請求項4】
高圧タービンと低圧タービンとがロータで連接された蒸気タービン設備であって、
前記高圧タービン及び前記低圧タービン間に湿分分離器を接続し、前記湿分分離器と前記低圧タービンとの間に遮断装置及び圧力制御装置を介装し、前記湿分分離器と前記高圧タービンとの間に逆流防止手段を接続し、該逆流防止手段と前記高圧タービンとの間に圧抜き系統を接続したことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項5】
高圧タービンと低圧タービンとがロータで連接された蒸気タービン設備であって、
前記高圧タービン及び前記低圧タービン間に湿分分離器を接続し、前記湿分分離器と前記低圧タービンとの間に遮断装置及び圧力制御装置を介装し、前記湿分分離器と前記高圧タービンとの間に逆流防止手段を接続し、前記湿分分離器に圧抜き系統を接続したことを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項6】
高圧タービンと低圧タービンとがロータで連接された蒸気タービン設備であって、
前記高圧タービン及び前記低圧タービン間に湿分分離器を接続し、前記湿分分離器と前記低圧タービンとの間に遮断装置及び圧力制御装置を介装し、前記湿分分離器と前記高圧タービンとの間に逆流防止手段を接続し、前記高圧タービン及び逆流防止手段の間と前記遮断装置及び圧力制御装置の間とをミニフロー系統で連通したことを特徴とする蒸気タービン設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−257178(P2009−257178A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106774(P2008−106774)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (主催)The Chinese Society of Power Engineering(中国動力工程学会) (共催)The Japan Society of Mechanical Engineers(日本機械学会) The American Society of Mechanical Engineers(米国機械学会)、「International Conference on Power Engineering 2007」論文集、平成19年10月23日公開
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】