説明

蒸気回収調理器

【課題】発生した蒸気を復水して貯留し、貯留した水の水位を検出することのできる水位検知手段を備えた蒸気回収調理器を得る。
【解決手段】発生する蒸気を回収する蒸気回収手段と、回収した水を貯える水タンクと、水タンクの水量を検知する水位検知手段と、前記水位検知手段が検知した水位に応じて前記調理器の動作を制御する判定制御手段とを備え、前記水位検知手段は、1種類又は複数の水位を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯などの調理により発生する水蒸気を回収する蒸気回収調理器に関し、特に回収した水を貯える水タンクの水位検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯調理器においては、「調理器本体と、この調理器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記調理器本体を開閉自在に覆う蓋体と、この蓋体に設けた蒸気孔と、前記蓋体と鍋との間に配設され蓋体に取付けられた内蓋と、この内蓋内に設けたおねばをふき出すふき出し孔と、前記蓋体の蒸気孔と前記ふき出し孔との間に配設した環状リングと、この環状リングの壁上部と当接して前記ふき出し孔と前記蒸気孔との間を閉塞するように蓋体の下面に設けた凸部と、前記蓋体の中央部を中心として蒸気孔と反対側に位置する部分で前記凸部は除かれ、前記環状リングの壁との間で閉塞されない隙間部とを備えた」ものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2−305518号公報(第1―2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成の炊飯調理器では、炊飯中に発生する蒸気が蒸気孔から炊飯調理器外へ排出されるため、調理器の周辺に蒸気が結露し、壁面や天井などが汚染されてしまう。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、発生した蒸気を復水して貯留し、貯留した水の水位を検出することのできる水位検知手段を備えた蒸気回収調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る蒸気回収調理器は、調理器から着脱自在に装着され、発生した蒸気を回収し、復水して貯える水タンクと、前記水タンクの水位を検知する水位検知手段と、前記水位検知手段が検知した水位に応じて前記調理器の動作を制御する判定制御手段とを備え、前記水位検知手段は、1種類又は複数の水位を検知するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の蒸気回収調理器は、回収した蒸気が水として貯められた水タンクの水位を検出することができるので、貯留した水量に応じて調理器の動作を制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る調理器の主要部を示す断面図であり、本実施の形態1では、調理器が炊飯器である場合を例に説明する。
図1において、上部が開口した炊飯器の本体1の内部には、着脱自在に炊飯釜2を収納しており、炊飯釜2の上部は蓋体3が接触して覆っている。蓋体3には着脱自在に内蓋4が取り付けられている。本体1底面には、炊飯釜2を加熱するための加熱体5が設けられている。
蓋体3内部には蒸気パイプ6が配設されており、この蒸気パイプ6の一端は内蓋4を介して炊飯釜2の内部に、他端は水タンク7に接続されている。すなわち、蒸気パイプ6を介して、炊飯釜2と水タンク7とは連通している。
水タンク7は、水を貯留するために本体1内に設けられた容器であり、この水タンク7内の水位を検出するための手段として、磁気センサ8a及び8b、並びにフロート12を主要構成部品とする水位検知手段を備えている。なお、水位検知手段の詳細については後述する。
また、本体1の底部には、炊飯器の調理動作を制御する判定制御手段11が設けられており、この判定制御手段11は、加熱体5、磁気センサ8a、8b、及び図示しない操作手段や報知手段に接続されている。判定制御手段11は、水位検知手段により検出された水位に応じて加熱体5の加熱制御を行う。
【0009】
上記のように構成された炊飯器の動作概要について説明する。
ユーザは、炊飯釜2内に米及び水を入れて蓋体3を閉め、図示しない操作スイッチ等の操作手段を操作して炊飯開始を指示する。炊飯を開始すると、判定制御手段11によって制御された加熱体5は、炊飯釜2を介して米や水を加熱する。
炊飯時には、内蓋4が蓋体3によって炊飯釜2に押しつけられており、加熱によって炊飯釜2内部から発生した水蒸気は、蒸気パイプ6を通って水タンク7に導かれる。
水タンク7には予め一定の水位以上の水が貯められており、蒸気パイプ6はこの水の中に一端を接している。蒸気パイプ6を通って水タンク7に導かれた蒸気は、水タンク7内の水に接触して温度が下がり、結露して、蒸気から水となる。水となった蒸気は、回収水9として水タンク7内に貯留される。炊飯量にもよるが、1回の炊飯によって発生した蒸気が水として回収される量は、約50〜100mLである。
したがって、炊飯を行うと、水タンク7内の水深が大きくなる。例えば、水タンク7の底面が20cm×5cmの長方形で底面積が100m2であった場合、1回の炊飯によって水タンク7の水深が約0.5〜1cm大きくなることとなる。
【0010】
上述のようにして回収した水タンク7内の水の水位検出の概要について説明する。
図2〜図4は、水タンク7及びこの近傍の要素を側面から見た断面図であり、水位検出の構成としくみを示す概念図である。
図2〜図4において、点線又は実線で示す10a及び10bは、検出する水位を仮想的に示したものであり、それぞれ最低水位10a、満水位10bと称す。満水位10aは、水タンク7から水が溢れる寸前の満水位置を示し、最低水位10bは、蒸気を冷やすために最低限必要な水の水位を示したものである。
図2〜図4はそれぞれ水位が異なる場合の水タンク7の様子を示しており、図2は水位が10aと10bの間にある場合、図3は水位が10bの場合、図4は水位が10aの場合である。
【0011】
図2〜図4において、磁気センサ8a及び8bは前述の判定制御手段11に接続され、磁界の検出の有無によって出力が変化する機能を持つセンサである。例えば、磁界を検出した場合にはHighを、その他の場合にはLowを出力する。
磁気センサ8a及び8bは本体1に設けられており、水タンク7上面に近接する位置に磁気センサ8a、水タンク7底面に近接する位置に磁気センサ8bが、それぞれ水タンク7には結線等されない構成で配置されている。磁気センサ8a、8bの図示しない信号処理回路等も本体1に設けており、水タンク7には結線や部品の組み付け等を行わない構成で配設されている。
【0012】
図5は、水タンク7及びその蓋7aの斜視図である。
水タンク7は、上部を開口した略直方体の形状を有した、水を貯めることのできる容器である。本実施の形態1に係る水位検知手段は磁気を用いるため、磁気センサ8a及び8bに影響を与えないよう、プラスチックなどの非磁性体により構成されている。
水タンク7の上部開口部は、水タンク7と同じくプラスチックなどの非磁性体で構成された蓋7aにより覆われている。蓋7aの中心位置にはフロート軸14が固着されており、フロート軸14は、水タンク7の内部上下方向に位置するように蓋7aごと水タンク7に装着される。また、蓋7aには蒸気パイプ6を貫通させるための穴が設けられており、この穴を通った蒸気パイプ6を通じて、水タンク7内に蒸気が導かれる。なお、図2〜図5に示す蒸気パイプ6aは、前記上記パイプ6のうち、水タンク7内に位置する箇所のみを図示したものである。
フロート軸14は、水タンク7とほぼ同じ高さの円柱形状を有し、フロート12の案内軸としてフロート12の中心部を貫通している。
図17は、水タンク7の蓋7aを上面から見た場合のフロート12、フロート軸14及び蒸気パイプ6の貫通穴の配置を示す模式図である。図に示すように、フロート12は、水タンク7断面の中央位置に固定される。
【0013】
図6は、水タンク7を本体1から取り外した場合の模式図である。図中、実線で示した水タンク7が取り外し後の水タンク7、点線で示すのが本体1に取り付けられた状態の水タンク7である。前述の通り、水タンク7には結線や部品の組み付け等を行わないので、容易に水タンク7を本体1から取り外すことができる。
【0014】
図7は、フロート12の構成を示す模式図である。
フロート12は、水タンク7の水に浮かぶ素材で構成されており、図8に示す中空円柱形状のマグネット13を埋入させている。マグネット13は、図7に示すようにフロート12の上部及び下部の合計2箇所に設けられている。マグネット13の中空部は、フロート12と同様にフロート軸14を軸通する。なお、フロート12及びマグネット13の形状の詳細については後述する。
【0015】
本実施の形態1に係る水位検出の詳細は後述するが、大まかに説明すると、水位の変化に伴ってマグネット13a及び13bを埋入したフロート12がフロート軸14上を上下に移動し、マグネット13a及び13bの磁力の影響で磁気センサ8a及び8bの出力が変化することによって行うものである。フロート12は水タンク7の水位を検出するため、水に浮かんだ状態となっている。水タンク7へは、蒸気パイプ6を通じてある程度の勢いで蒸気が吹き込まれるため、フロート12はこの蒸気の影響を受けずに正しく水位を検出できるような構造とする必要がある。例えば、比重の小さな素材でフロート12を構成した場合、水面に浮かび上がるために必要な浮力は小さくて良いのでフロート12を小型化できる反面、蒸気パイプ6により吹き込まれる蒸気の勢いの影響を受け、フロート12が大きく揺れるなどして、正常に水位を検出することができない場合がある。逆に、蒸気の勢いの影響を受けないよう、比重の大きな素材でフロート12を構成した場合、浮かび上がるための大きな浮力を得るためにフロート12の体積を大きくしなければならず、これに伴って水タンク7や調理器本体1をも大型化せざるをえない。
【0016】
したがってフロート12は、蒸気が吹き込まれても安定して浮かぶことのできる比重の素材で構成し、かつ、水タンク7をなるべく小型化できるような形状とすることが求められる。そこで、水面下部分の直径を大きくかつ高さを低くすることで、水タンク7を小型化できるフロート形状を得る。本実施の形態1では、フロートの形状を、図7に示すように、直径の異なる2つの中空円柱を同心円状に上下に2つ結合した形状とした場合の例について説明する。両中空円柱は、上部の中空円柱の外径よりも下部の中空円柱の外径の方が大きくなるように構成する。
【0017】
以下、水タンク7、フロート12、マグネット13、フロート軸14、及び検出する水位の各構成の関係について説明する。
なお、以後の説明で用いる各記号の意味は以下の通りである。
φD1:フロート軸14の直径
φD2:フロート12上部の直径
φD3:フロート12下部の直径
φD4:マグネット13の内径
φD5:マグネット13の外径
Y:マグネット13の高さ
Lx:水タンク7内径(たて)
Ly:水タンク7内径(よこ)
Lz:水タンク7内径(高さ)
H:フロート12高さ
N:フロート12上部高さ
S:フロート12下部高さ
L:最低水量注入時の水の高さ
Vmin:最低水量
Vmax:満水水量
ρp:フロート12の比重
ρM:マグネット13の比重
【0018】
図9は、満水位10aまで水が貯められている場合の水タンク7の断面模式図である。満水位10aの状態であるので、水タンク7には満水水量Vmaxの水が注入されている状態である。
このとき、最低水位10bと満水位10aの水位の差分は、最低水量Vminから満水量Vmaxへの増加水量を水タンク7の断面積で割ったものに等しいことから、増加した水量は以下の(1)式で求めることができる。
Vmax−Vmin=(タンク断面積1)×(満水位10a−最低水位10b)・・・(1)式
ここで、(タンク断面積1)は、図11の斜線部分の面積のことをいい、水タンク7の、フロート軸14の位置における横方向の断面積である。(タンク断面積1)は、以下の要領で求めることができる。
(タンク断面積1)=(水タンク7底面積)−(フロート軸14断面積)
=(Lx×Ly)−(π×φD12/4)・・・(2)式
また、(満水位10a−最低水位10b)は、水タンク7の高さLzからフロート12の高さHを差し引いたものに等しい(図9)ことから、(1)式は以下のように書き換えることができる。
Vmax−Vmin=(Lx×Ly−π×φD12/4)×(Lz−H)・・・(3)式
【0019】
図10は、最低水位10bまで水が貯められている場合の水タンク7の断面模式図である。最低水位10bの状態であるので、水タンク7には最低水量Vminの水が注入されている状態である。このとき、フロート12の重量と浮力がちょうど釣り合って、フロート12の下部底面が水タンク7底面に接した状態となっている。したがって、Vminの値は、以下の式で求めることができる。
Vmin=(タンク断面積2)×(L−S)+(タンク断面積3)×S
ここで、(タンク断面積2)は図12の斜線部分の面積のことをいい、水タンク7の、フロート12の上部の位置における横方向の断面積である。(タンク断面積2)は、以下の要領で求めることができる。
(タンク断面積2)=(水タンク7底面積)−(フロート軸14断面積)−(フロート12上部断面積)
また、(タンク断面積3)は、図13の斜線部分の面積のことをいい、水タンク7の、フロート12の下部の位置における横方向の断面積である。(タンク断面積3)は、以下の要領で求めることができる。
(タンク断面積3)=(水タンク7底面積)−(フロート軸14断面積)−(フロート12下部断面積)
以上より、Vminの値は以下の(4)式により求めることができる。
Vmin={Lx*Ly-π*(D22)-D12)/4-π*D12/4}*(L-S)+(Lx*Ly-π*(D32-D12)/4)−π*D12/4}*S・・・(4)式
【0020】
フロート12の重量は、以下の式で求めることができる。
(フロート12重量)
={π*D32-D12)/4*(H-N)+π*(D22-D12)/4*N-π*(D52-D42)/4*Y*2}*ρp+{π*(D52-D42)/4*Y*2}*ρM
ここで、水の比重を1とすると、フロート12の重量は水面下のフロートの体積に等しい。従って、以下の式が成り立つ。
(フロート12重量)={(フロート12上部断面積)×(L−S)}+(フロート12下部断面積)×S
この式より、以下の式を得ることができる。
(フロート12重量)
={π*D32-D12)/4*(H-N)+π*(D22-D12)/4*N-π*(D52-D42)/4*Y*2}*ρp+{π*(D52-D42)/4*Y*2}*ρM
={π*(D22-D12)/4}*(L-S)+{π*(D32-D12)/4}*S・・・(5)式
(4)式及び(5)式を(L−S)及び(S)について解き直すと、以下の関係式が導かれる。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで(6)式におけるA〜Fの記号は、それぞれ以下の式を示す。
A=Lx*Ly-π*(D22-D12)/4-π*D12/4
B=Lx*LY-π*(D32-D12)/4-π*D12/4
C={π*(D32-D22)/4}ρp
D={π*(D22-D12)/4*H}*ρp+{π*(D52-D42)/4*Y*2}*(ρM-ρp)
E=π*(D22-D12)/4
F=π*(D32-D12)/4
【0023】
以上より、調理器本体1の大きさに合わせた水タンク7形状(Lx、Ly、Lz)、材質(ρp、ρM)、水量(Vmin、Vmax)を与えれば、(3)式よりフロート高さHを決定することができる。
例えば、以下の条件を設定したとする。
φD1:1.2cm、φD2:3cm、φD4:1.4cm、φD5:2cm、Y:0.5cm、Lx:25.45cm、Ly:9.4cm、Lz:5.9cm、Vmin:500cc、Vmax:1200cc、ρp:0.85、ρM:4.67
この場合において、下部フロート直径φD3をパラメータとしたときの、下部フロートの高さSと、上部フロートの高さL−Sの関連図を図14に示す。これらの組み合わせの中から、タンク形状等を考慮して、適当な大きさとなるよう、フロート12の上部及び下部の高さを選択すればよい。この場合、フロート12全体の高さHは、(3)式より2.94cmと求めることができる。
【0024】
図15は、磁気センサ8の構成を示す模式図である。
磁気センサ8は、リードスイッチ40と、抵抗44と、判定制御手段11に接続され判定制御手段11からの指示により動作する電圧制御手段45とで構成されている。
図16に、前記リードスイッチ40の構成を示す。リードスイッチ40は、強磁性体リード41aと強磁性体リード41bとが、ガラス管42に封止されて構成されている。ここに、外部磁界が印加されると、強磁性体リード41aと強磁性体リード41bとが磁化されて接点部43が閉じることにより、磁界を検出することができる。
【0025】
上記の構成の磁気センサ8において、判定制御手段11からの水位検出指示があった場合、電圧制御手段45を構成するスイッチがONし、抵抗44を介してリードスイッチ40に例えば5Vの電圧を印加する。電圧を印加されたリードスイッチ40は、フロート12に埋入されたマグネット13の磁界の検出を試みる。磁界が検出されない場合、リードスイッチ40の接点43は開放であり、判定制御手段11には、5Vの電圧が送られる。磁界が検出された場合には、接点43が閉じ、判定制御手段には0Vの電流が送られる。
【0026】
このように、判定制御手段11からの指示により動作する電圧制御手段45を設け、水位検出する場合のみリードスイッチ40に電圧を印加するようにしたので、リードスイッチの接点43の端子の摩耗を防ぐことができる。例えば、電圧制御手段45を設けなかった場合、加熱手段5としてコイルを用いたときには、コイル通電により強力な磁界が発生する。この状態で水位検出しようとすると、リードスイッチ40は加熱手段5からの磁界を検出してON/OFFを繰り返し、振動する。接点43の両端に電圧が印加された状態で、ON/OFFを繰り返すため、磨耗し、場合によっては、不通となってしまう。このような端子の摩耗を、水位検出するときのみリードスイッチ40に電圧を印加することのできる電圧制御手段45を設けることにより、防ぐことができるのである。
【0027】
以上のように構成した水タンク7及び水位検知手段により、回収水9の水位を検出する動作について、図3、図4を用いて詳細に説明する。
図3は、最低水位10bまで貯水された状態の水タンク7内部断面の模式図であり、まさにフロート12が浮上せんとする状態である。図4は、満水位10aの状態の水タンク7内部断面の模式図であり、フロート12が浮上して水タンク7の上面に接している状態である。
【0028】
水タンク7内のフロート12は、水位に応じてフロート軸14に従って上下に移動し、フロート12内のマグネット13a又は13bが磁気センサ8a又は8bに近接することにより、2種類の水位検出を行う。
第一の水位を満水位10aといい、水タンク7内が満水状態となる水量を示す。
満水位10aに達していないとき、フロート12は磁気センサ8aから離れており、磁気センサ8aはLowの出力を行う。水位が上昇するにつれてフロート12は上昇していき、満水位10aに達するとフロート12は水タンク7の上面に接し、フロート12内のマグネット13aの近接により磁気センサ8aはHighの出力を行う。
このようにして、満水位10aまで水位が達しているかどうかの検出を行うことができる。
【0029】
第二の水位を最低水位10bといい、発生した蒸気を水として回収するために水タンク7内に必要な水量を示す。最低水位10bを超える貯水量がある場合、水タンク7内に導かれた蒸気を効率的に水に変換することができる。
最低水量10b以下であるとき、フロート12は水タンク7底面に接している。フロート12内のマグネット13bは磁気センサ8bに近接しているので、このとき磁気センサ8bはHighの出力を行う。最低水量10bを超えたとき、フロート12は浮上してマグネット13が磁気センサ8bから離れ、磁気センサ8bはLowを出力する。
このようにして、最低水位10bを超えているかどうかの水位検出を行うことができる。
【0030】
磁気センサ8a及び8bの出力は、判定制御手段11に伝えられる。判定制御手段11は、磁気センサの出力結果に基づき、炊飯器の動作制御を行う。
磁気センサ8aがLowを出力し、かつ、磁気センサ8bもLowを出力している場合、すなわち、満水位10aに達しておらず、かつ、最低水位10bを超えていない場合には、調理開始に適した状態であるので、炊飯を開始する。
磁気センサ8aがHighを出力し、かつ、磁気センサ8bがLowを出力している場合、すなわち、満水状態にある場合には、炊飯を停止し、ユーザに排水を促すために表示や音声等による報知を行う。満水状態で炊飯を行った場合、回収された蒸気により水タンク7から水が溢れてしまう恐れがあるからである。
磁気センサ8aがLowを出力し、かつ、磁気センサ8bがHighを出力している場合、すなわち、水量が最低水位10bに達していない場合には、炊飯を停止し、ユーザに給水を促すために表示や音声等による報知を行う。最低水位10bに達していない状態で蒸気回収を行おうとした場合、蒸気を水へ変換する効率が低く、水タンク7外部に蒸気が漏れ出す恐れがあるからである。ここで、水タンク7に給水する水は、一般の水道水などを用いてよい。
磁気センサ8aがHighを出力し、かつ、磁気センサ8bもHighを出力している場合は、何らかの異常が発生していることを意味するので、炊飯を停止し、ユーザに点検を促すための表示や音声等による報知を行う。
【0031】
以上のように本実施の形態1によれば、水タンク7に結線や部品の組み付けを行わずに磁気センサ8を設けたので、容易に水タンク7を調理器本体から取り外すことのできる構成となっている。したがって、重量の大きい調理器本体1全体を流し台まで移動して排水、給水する必要はなく、軽量な水タンク7だけを容易に取り外して流し台まで移動して排水、給水が可能となり、簡便なメンテナンス環境をユーザに提供することができる。
また、水タンク7に結線がないので、水タンク7を取り外すときに結線を外す手間が省けるとともに、組み付け時の部品などの付け忘れによる動作不良を生じさせることもない。
【0032】
また、2つのマグネットと磁気センサにより2種類の水位を検知可能としたので、満水位と最低水位の両方の水位を検出することができる。また、満水位と最低水位の2種類の水位を検出して、判定制御手段11によってそれぞれの出力信号の組合せによって炊飯器の動作制御及びユーザへの通知を行うようにしたので、蒸気回収に必要な水量に満たない状態で炊飯を開始することを防止できるようになり、より確実で効率よい蒸気回収が可能となった。また、満水位まで達している場合にも、炊飯動作の制限及びユーザへの通知を行うようにしているので、水があふれ出すことなく安全に蒸気回収を行うことのできる調理器を得ることができる。さらに、生じ得ない検出信号の組合せを異常と判定するようにしたので、水位検知手段8や、水タンク7の異常を判定することが可能となり、より確実かつ安全に蒸気回収を行うことのできる調理器を得ることができる。
【0033】
また、フロート形状を、直径の異なる2つの中空円柱を直径の小さいものを上にして同心円上に結合した形状としたので、フロートの水面下部分の形状の高さが小さくかつ直径が大きくすることができ、円柱形のフロートと比較してより小さい最低水位を検出することが可能となる。
具体的に説明すると、上記で述べたように蒸気を回収した場合、水タンク内のフロートにも蒸気が吹きかけられるため、比重が軽い素材を用いたフロートを使用すると、吹きかけられる蒸気の勢いによりフロートの位置が安定せず、正しく水位を検出することができない場合がある。そのため、ある程度の比重を有する素材を用いてフロートを構成する必要がある。結果、浮力を得るためにフロートを大きくせざるを得ず、これは、水タンクや調理器全体の巨大化に繋がってしまう。
本実施の形態1で述べたフロート形状によると、円柱形のフロートと比較して、より小さい最低水位を検出することが可能となるので、同じ水タンクを使用した場合には、円柱形のフロートを用いた場合と比較して最低水位と満水位の差分が大きくなるので、よりたくさんの水を貯めることができる。すなわち、水タンクを小型化することが可能となる。
【0034】
また、図17に示したとおり、フロートを水タンクの中央に位置するように配置したので、水タンクが傾いた場合でも水位を検出することができる。
図18は、水タンク7が傾いた場合の水タンク7及び水面の模式図を示す。水タンク7が傾いた場合でも、フロート12はフロート軸14に従うので水タンク7の上面及び底面との平行な位置関係は変化しない。水タンク7の傾斜により移動した水量9aと水量9bは等しいので、水タンク7が傾いた状態でも正しく水位を検出することができる。
【0035】
また、磁気センサに電圧制御手段を設け、水位検出する場合のみリードスイッチに電圧を印加するようにしたので、リードスイッチの接点の端子の摩耗を防ぐことができる。
【0036】
実施の形態2.
本実施の形態2に係る調理器の構成を図19に示す。基本的な構成は、前述の実施の形態1の図1と同じであるので、図19では異なる部分のみ番号を付し、その他は番号を省略している。
本実施の形態2では、加熱体5aがコイルなどで構成されるIH調理器である場合を例に説明する。加熱体5aをコイルなどで構成した場合、加熱体5aからは調理動作中に強力な磁界が発生される。そのため、マグネット13の近接によって磁気センサ8が水位を検出しようとしても、加熱体5aの磁力により水位を検出できない場合がある。本実施の形態2では、かかる課題を解決する。
【0037】
上記の構成において、図20により調理器の動作について説明する。
図20において、ユーザが本体1の電源をONすると(S20)、判定制御手段11は加熱体5aの通電をOFFし(S21)、水位検出を行う(S22)。判定制御手段11は、規定水位の状態にあるかどうかを判定し(S23)、規定水位の状態にない場合には調理動作を停止し(S24)、エラー報知を行う(S25)。ここで規定水位とは、調理開始に適した水位状態にあることをいい、満水位10aより小さく、かつ、最低水位10bより大きい水位状態である。
規定水位の状態である場合には、加熱体5aへの通電をONする(S26)。そして、一定の検出周期が経過したら(S27)、再度一旦加熱体5aの通電をOFFし(S21)、調理動作中に増加した回収水9の水位を検出する(S22)。続けて規定水位の状態にあるかどうかを判定し(S23)、以後、加熱体5aへの通電をON(S26)または調理動作を停止(S24)する。また、検出周期が経過する前に調理が終了したら(S28)、調理動作を終了する(S29)。
すなわち、電源ON後、所定の周期で加熱体5aの通電をOFFして水位検出を行い、その都度調理を継続するか否か判定するのである。
【0038】
以上のように、水位検知中には加熱体の通電をOFFして調理器の動作を停止するようにしたので、水位検出中に加熱体5aの磁力による影響を受けることなく正確に水位を検出することができる。また、所定の周期で水位検出を行うので、例えば、長時間に渡る調理の場合や、大量に蒸気が発生した場合でも、水タンクから水が溢れるのを防ぐことができる蒸気回収調理器を得ることができる。
【0039】
なお、本実施の形態2では、検出周期に従って水位検出を行う例について説明したが、水位検出時に加熱体の通電をOFFして調理器の動作を停止する制御を行うものであれば、検出周期の長短や検出タイミングは問わない。例えば、必ずしも一定の検出周期で水位検出を行う必要はなく、定時のタイミングで水位検出を行うなど任意のタイミングで水位検出を行っても良い。
【0040】
実施の形態3.
前述の実施の形態1では、水タンク7が満水状態となる水位を満水位10aとして検出する場合の例について説明したが、本実施の形態3では、満水状態よりも調理1回分だけ少ない水量の状態(水位10c。図21参照。)を検出する場合の例について説明する。
図21に、本実施の形態3に係る炊飯器の構成図を示す。本実施の形態3では、基本的な構成は実施の形態1と同じであるので、以下、異なる点を中心に説明する。
【0041】
本実施の形態3で使用するフロート形状を、実施の形態1と同様に前述の(1)〜(6)式により求める。このとき、Vmaxとして、満水水量ではなく、満水水量から調理1回分で発生すると見込まれる水量を差し引いた値を用いて、フロート形状を決定する。例えば、満水水量が1200ccで、調理1回で発生すると見込まれる水量が100ccの場合、Vmaxを1100ccとしてフロート形状を決定する。
このような構成のフロート12を用い、実施の形態1で述べた検出動作を同様にして水位を検出する。本実施の形態3では、最低水位10bと、水位10cの2水位を検出することとなる。
【0042】
図22により、本実施の形態3に係る調理器の動作について説明する。
図22において、ユーザが本体1の電源をONすると(S30)、判定制御手段11は水位を磁気センサ8から取得し(S31)、規定水位の状態にあるかどうか判定する(S32)。ここで規定水位とは、調理開始に適した水位状態にあることをいい、水位10cより小さく、かつ、最低水位10bより大きい水位状態である。
規定水位の状態である場合には、加熱体5aへの通電をONし(S33)、調理動作を開始する(S35)。規定水位の状態にない場合には、表示手段やブザーなどにより排水または注水するようユーザにエラーを報知する(S34)。
【0043】
以上のように、満水状態より調理1回分だけ少ない水位を検出してこの水位を超えている場合は調理を行わないようにしたので、調理開始前に水位検出を一度行うだけであっても、調理中に水が溢れたり、また、途中で調理を停止したりといったことのない、使い勝手の良い調理器を得ることができる。
【0044】
なお、本実施の形態3では、調理開始前にのみ水位検出を行って加熱の有無を制御する例について説明したが、実施の形態2で示したように周期的に水位検出を行ってもよく、また、任意のタイミングで水位検出を行っても良い。
【0045】
上記実施の形態1〜3では、2種類の水位を検出する場合の例について説明したが、検出する水位は1種類であってもよい。例えば、満水位のみ検出したい場合には、図23に示すように、磁気センサを水タンク7上面に1個のみ設け、フロート12上部のマグネット13の近接により水位10のみを検出することができる。
さらに、フロート12や磁気センサ8を増やすことによって、3種類以上の水位を検出できるようにしてもよい。例えば、満水量から所定量少ない水位を検出するようにして満水の予告を行ったり、段階的な数種類の水位を検出して表示手段により水位を表示したりすることができ、より使い勝手の良い調理器を提供することができる。
【0046】
また、上記説明ではフロート12の形状を、直径の異なる2つの中空円柱を重ねた場合の例について説明したが、3つ以上の中空円柱を重ねて構成しても良い。
さらには、例えば円錐や台形などの、上方の体積が小さく、下方の体積が大きいようなものであってもよい。上記実施の形態1で示したのと同様に水タンク7、フロート12、マグネット13、及びフロート軸14の各箇所の大きさを得れば、同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、本発明に係る水位検出方法は、調理器の水タンクでの水位検知以外にも、水位検知を行う様々な装置への適用が可能である。例えば家電機器では、除湿機や加湿器の水タンクの水位検知などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態1を示す蒸気回収調理器の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す水位検出の説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す水位検出の説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1を示す水位検出の説明図である。
【図5】図1の水タンク7及び水位検出に用いる構成要素を示した説明図である。
【図6】図1の水タンク7を本体1から取り外した場合の説明図である。
【図7】図1のフロート12の説明図である。
【図8】図2〜4のマグネット13の説明図である。
【図9】この発明の実施の形態1を示す満水位検出時の水タンク7内の説明図である。
【図10】この発明の実施の形態1を示す最低水位検出時の水タンク7内の説明図である。
【図11】この発明の実施の形態1を示す、タンク断面積1の断面図である。
【図12】この発明の実施の形態1を示す、タンク断面積2の断面図である。
【図13】この発明の実施の形態1を示す、タンク断面積3の断面図である。
【図14】この発明の実施の形態1を示す、フロート12の下部直径と全体の高さとの相関の一例を示す図である。
【図15】図1の磁気センサ8の構成を示す説明図である。
【図16】前記磁気センサ8を構成するリードスイッチ40の詳細を示す説明図である。
【図17】この発明の実施の形態1を示す、水タンク7を上面から見た場合の模式図である。
【図18】この発明の実施の形態1を示す、水タンク7が傾いた場合の説明図である。
【図19】この発明の実施の形態2を示す蒸気回収調理器の断面図である。
【図20】この発明の実施の形態2を示す蒸気回収調理器の加熱体通電制御に関するフローチャートである。
【図21】この発明の実施の形態3を示す蒸気回収調理器の断面図である。
【図22】この発明の実施の形態3を示す蒸気回収調理器の加熱体通電制御に関するフローチャートである。
【図23】この発明の他の実施形態に係る蒸気回収調理器の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 本体、2 炊飯釜、3 蓋体、4 内蓋、5、5a 加熱体、6 蒸気パイプ、7 水タンク、7a 蓋、8、8a、8b 磁気センサ、9 回収水、10 検知水位、10a 満水位、10b 最低水位、11 判定制御手段、12 フロート、13、13a、13b マグネット、14 フロート軸、40 リードスイッチ、41 強磁性体リード、42 ガラス管、43 接点、44 抵抗、45 電圧制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器から着脱自在に装着され、発生した蒸気を回収し、復水して貯える水タンクと、
前記水タンクの水位を検知する水位検知手段と、
前記水位検知手段が検知した水位に応じて前記調理器の動作を制御する判定制御手段とを備え、
前記水位検知手段は、1種類又は複数の水位を検知する
ことを特徴とする蒸気回収調理器。
【請求項2】
前記水位検知手段が検知する水位は、蒸気回収を行う際に前記水タンク内に最低限必要な水量に相当する水位と、前記水タンクから水が溢れることを防止する満水に相当する水位のいずれか又は両方を含む
ことを特徴とする請求項1記載の蒸気回収調理器。
【請求項3】
前記水位検知手段は、前記水タンクから分離可能な態様で設置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の蒸気回収調理器。
【請求項4】
調理器から着脱自在に装着され、発生した蒸気を回収し、復水して貯える水タンクと、
前記水タンクの水位を検知する水位検知手段と、
前記水位検知手段が検知した水位に応じて前記調理器の動作を制御する判定制御手段とを備え、
前記水位検知手段は、前記水タンク内の水位に応じて昇降するフロートと、前記フロート内に固定されたマグネットと、前記マグネットの接近、隔離によりオン、オフ動作することで水位を検出する磁気センサとにより構成される
ことを特徴とする蒸気回収調理器。
【請求項5】
前記磁気センサは、前記水タンクへの結線や部品の止め付けを行わない構成で設けられている
ことを特徴とする請求項4記載の蒸気回収調理器。
【請求項6】
前記フロート内に2個以上の前記マグネットを固定し、前記マグネットと同数の磁気センサを備え、2種類以上の水位を検出する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の蒸気回収調理器。
【請求項7】
前記水位検知手段が検出する水位は、蒸気回収を行う際に前記水タンク内に最低限必要な水量に相当する水位と、前記水タンクから水が溢れることを防止する満水に相当する水位のいずれか又は両方を含む
ことを特徴とする請求項6記載の蒸気回収調理器。
【請求項8】
前記フロートは、直径の異なる2つ以上の中空円柱を、直径の小さいものを上にして同心円状に上下に結合した形状とする
ことを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかに記載の蒸気回収調理器。
【請求項9】
前記フロートは、前記水タンク断面の中央に配置される
ことを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれかに記載の蒸気回収調理器。
【請求項10】
前記水位検知手段は、前記調理器の動作開始前の水位を検出する
ことを特徴とする請求項4〜請求項9のいずれかに記載の蒸気回収調理器。
【請求項11】
前記水位検知手段は、前記水タンクの満水水量より蒸気回収水量一回分少ない水位を検出する
ことを特徴とする請求項4〜請求項10のいずれかに記載の蒸気回収調理器。
【請求項12】
前記磁気センサはリードスイッチを内蔵し、
水位を検知するときのみ、前記リードスイッチに電圧を印加する
ことを特徴とする請求項4〜請求項11のいずれかに記載の蒸気回収調理器。
【請求項13】
前記水位検知手段が水位を検知している最中には、調理器の動作を停止する
ことを特徴とする請求項4〜請求項12のいずれかに記載の蒸気回収調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−172203(P2009−172203A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14925(P2008−14925)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】