説明

蒸着フィルムの製造方法

【課題】様々な外観の要求に対応するためマット感を備えた蒸着フィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】フィルム状の基材1を巻出部11から巻取部51まで搬送する基材搬送手段と、巻出部から巻取部の間に設けられた真空蒸着装置21と、真空蒸着装置から巻取部の間に設けられた接着層形成手段31と、を少なくとも有する装置10を使用し、基材搬送手段によって、光を散乱させる粒子を含むマット層9が形成されたフィルム状の基材1を真空蒸着装置に導入しつつ、真空蒸着装置においてフィルム状の基材のマット層の上に蒸着層2を蒸着し、さらに真空蒸着装置から搬出されたフィルム状の基材の当該蒸着層の上に接着層形成手段によって接着剤を塗布して接着層3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属やセラミックを蒸着した蒸着フィルムの製造方法に関し、特に、蒸着層の上に形成された接着層によって、他の部材と接着させて使用される蒸着フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルムのバリア性能を高めるために、フィルムに金属やセラミックを蒸着させた蒸着フィルムが使用されている。特に、アルミニウムは、遮光性が高く、酸素や窒素のガスバリア性がよく、さらに水蒸気バリア性もよいため、食品等を包装するための包装体としてアルミ蒸着フィルムが利用されている。また、アルミニウムは光の反射率が高く美しい金属光沢を有するため、アルミニウム蒸着層よりも表面側に印刷を施すことにより、背景に金属光沢を持つ印刷ができるので、アルミ蒸着フィルムは装飾用としても注目されていた。
【0003】
このようなアルミ蒸着フィルムは、それ自体をフィルム状の包装体として製袋して、包装袋として利用されることもあったが、そのバリア特性及び意匠性を付与するために、他の部材に接着させて使用されることも多かった。例えば、金型でプラスチックの成形を行う際に成形品の表面にラベルを張り合わせるインモールドラベル成形において、ラベル材として、アルミ蒸着フィルムを張り合わせることにより容器等の表面に容易に装飾を施すことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このラベル材の構成は、印刷基材層、ガスバリア層及び接着層からなり、ガスバリア層として金属又は金属酸化物を蒸着等でプラスチックフィルムに積層したものを利用していた。印刷基材層はポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム等に印刷を施したものであり、また接着層は、射出樹脂と同材質のプラスチックや、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)を含有するポリエチレン等で、射出樹脂と接着するためのものであった。そして、従来では、これら各層を独立したフィルムとして形成した後、ドライラミネーションで張り合わせたり、その一部もしくは全層を溶融押出ラミネーションすることによって形成していた。
【0005】
このような蒸着層を製造するための蒸着装置として、真空チャンバー外にロール状に巻いたフィルムを配置し、フィルムを大気中から真空チャンバー内に連続的に導入し、真空チャンバー内で蒸着層を蒸着した後、真空チャンバー内から大気中に蒸着フィルムを搬出する生産性の高い連続式の蒸着装置も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−150979号公報(段落0014〜0019)
【特許文献2】特開平8−311650号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の製造方法では、印刷基材層、ガスバリア層及び接着層をそれぞれ製造した後、張り合わせていたため、ラベル材として完成するまでに複数の装置を経由するため、時間がかかり、生産性が悪かった。また、各層を独立して製造した後に張り合わせる場合には、それぞれの層に基材等が必要となり原価が増加することや、ラベル材の膜厚が厚くなるので使い勝手も悪くなることから、実用性の面で大きな問題があった。
【0008】
かかる問題に対し、出願人は、先願である特願2009−54915号において、印刷層が形成されたフィルム状の基材の上に蒸着装置によってガスバリア層(蒸着層)を蒸着し、蒸着層の上に接着層形成手段(ロールコータ)によって接着剤を塗布して接着層を形成した蒸着フィルムの製造方法を提案した。
【0009】
ところで、蒸着装置によって、蒸着層を蒸着する場合、アルミニウムを用いると、前述したとおり、美しい金属光沢を有するアルミニウム蒸着層を形成することができる。しかしながら、アルミニウム蒸着層は光の反射率が高いので、例えば、アルミ箔のような質感、すなわち、光沢・艶が少なく乾いていてくすんだ質感(以下、マット感という)のラベル材を製造したい場合には不適当であった。しかし、出願人が提案した上記製造方法によると、フィルム基材の上に、印刷層、蒸着層及び接着層が連続して製造され、得られた蒸着フィルムがそのまま他の部材と接着させて使用される。このように、蒸着フィルムをそのまま使用すると、蒸着層による金属光沢が不可避的に備わってしまいマット感を出せないという課題が新たに生じた。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するために、出願人が提案した上記製造方法が備える利点を損なうことなく、様々な外観の要求に対応するためマット感を備えた蒸着フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。また、従来に比べて、他の部材に接着させて使用される蒸着フィルムを短時間で製造でき、生産性の高い製造方法を提供することを目的とする。また、膜厚を薄くし、原材料費を安くし、使い勝手のよい他の部材と接着させて使用される蒸着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の蒸着フィルムの製造方法は、フィルム状の基材を巻出部から巻取部まで搬送する基材搬送手段と、前記巻出部から前記巻取部の間に設けられた真空蒸着装置と、前記真空蒸着装置から前記巻取部の間に設けられた接着層形成手段と、を少なくとも有する装置を使用し、前記基材搬送手段によって、光を散乱させる粒子を含むマット層が形成されたフィルム状の基材を前記真空蒸着装置に導入しつつ、前記真空蒸着装置において、前記導入されたフィルム状の基材のマット層の上に蒸着層を蒸着し、さらに前記基材搬送手段によって前記真空蒸着装置から搬出された蒸着層が蒸着されたフィルム状の基材の当該蒸着層の上に前記接着層形成手段によって接着剤を塗布して接着層を形成し、フィルム状の基材の上に、少なくとも、マット層、蒸着層及び接着層が、この順で形成され、他の部材と接着させて使用される蒸着フィルムを製造することを特徴とする。
【0012】
また、前記蒸着フィルムの製造方法において、前記マット層は、有機樹脂に粒子が分散したマット剤を塗布し、乾燥室において、残留する有機溶剤を揮発させることによって形成されることが好ましい。
【0013】
また、前記蒸着フィルムの製造方法において、前記マット層は、前記蒸着層の下地となるアンカーコート層としても機能し、前記蒸着層は前記マット層の上に直接蒸着されることが好ましい。
【0014】
さらに、前記蒸着フィルムの製造方法において、前記フィルム状の基材の上には、印刷層が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィルム基材の上にマット層を形成し、マット層の上に蒸着層が形成されているので、蒸着フィルムをそのまま他の部材と接着させて使用しても、マット層によって光が散乱するためマット感を備えた蒸着フィルムを製造することができる。
【0016】
また、本発明によれば、接着層形成手段(ロールコータ)によって蒸着層の上に接着剤を塗布するだけで接着層が形成できるため、フィルム基材に対して、蒸着層を形成した後、連続して接着層を形成することができる。このように、製造装置によって、フィルム基材上に、蒸着層及び接着層を一連の連続的な処理で形成することができるので、接着層を有する蒸着フィルムを完成させるまでに必要な時間を短縮することができ、生産性を高めることができた。従来の蒸着装置で蒸着層を形成し、その後、押出ラミネーション装置等の別の装置によって接着層を積層させた場合は、一つの基材に対する蒸着層の形成工程と、その上への接着層の積層工程とは別の日程で行うのが通常であり、接着層を有する蒸着フィルムを完成させるまで、少なくとも2日、積層装置の待ち時間によってはより多くの日数が必要であった。これに対し、本発明によれば、基材を装置に装填できれば、その日のうちに接着層を有する蒸着フィルムを製造することができるので、生産性が著しく向上した。さらに、接着層として、押出ラミネーション装置等によってフィルムを積層するのではなく、接着剤を塗布して接着層を形成するので、本発明では、接着層を有する蒸着フィルム全体の膜厚を薄くすることができた。つまり、従来よりも、およそ接着層のフィルム分、膜厚を薄くすることができるのである。本発明のその他の効果については、以下の実施の形態において記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の蒸着フィルムの製造方法において使用される製造装置の概略構成図
【図2】(A)〜(C)は本発明の蒸着フィルムの各製造工程における概略断面図
【図3】印刷層が形成されたフィルム基材の概略断面図
【図4】(A)及び(B)は本発明の蒸着フィルムの製造方法によって製造された他の蒸着フィルムの概略断面図
【図5】蒸着フィルムが接着された装飾容器の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0019】
図1には、本発明の蒸着フィルムの製造方法において使用される製造装置の概略構成図を示し、図2(A)〜(C)には、本発明の蒸着フィルムの製造工程における概略断面図を示す。
【0020】
図1に示す製造装置10は、フィルム状の基材(以下、「フィルム基材」又は単に「基材」と記載することもある)に各層を形成し、蒸着フィルム4(図面に示された4a、4b、4cをまとめて「4」とする)を製造する。
【0021】
製造装置10は、少なくとも、巻出部11、マット層形成手段63、第1乾燥室81、真空蒸着装置21、接着層形成手段31、第2乾燥室41及び巻取部51を有している。
【0022】
巻出部11は、通常、フィルム基材がロール状に巻き取られたロールが装填される部分であり、巻取部51は、装置内で処理されたフィルム基材1をロール状に巻き取って回収する部分である。図示しない搬送手段によって、巻出部11のロール及び/又は巻取部51のロール、さらに必要に応じて製造装置10内の適宜のロールを回転させて、巻出部11から装置内にフィルム基材1を連続的に供給し、巻取部51においてフィルム基材1を連続的に回収して、巻出部11から巻取部51までフィルム基材1を搬送する。
【0023】
マット層形成手段63は、フィルム基材1に対し、連続的にマット剤を塗布して、基材側からの入射光を散乱させる粒子を含むマット層9を形成する。この接着層形成手段(ロールコータ)63としては、例えば、グラビアロールコータやリバースロールコータを使用することができる。グラビアロールコータはグラビアロールの線密度とセルの深さを決めることで精度よくマット剤のコート量を管理することができる。反面、グラビアロールコータでは、マット剤のコート量を変更する場合にはグラビアロール自体を変更しなければならなかった。この点、リバースロールコータはメタリングロールとアプリケータロールの間隔及び各ロールの回転速度を変更することによって、マット剤のコート量を容易に変更することができる。
【0024】
第1乾燥室81は、熱源による高温(通常、80〜120℃)の気体及び/又は気流(風)を生成して、マット層形成手段63において塗布されたマット剤をより早く乾燥させるためのものであり、マット剤が十分に乾燥するだけの熱量をフィルム基材1に供給する。マット剤が十分に乾燥するとは、例えば、紙片を基材1に当てた場合、その紙片が湿らない程度にマット層が乾いているという状態である。
【0025】
真空蒸着装置21は、巻出部11から巻取部51の間に設けられ、フィルム基材1の一方の面に蒸着層2を形成するものであり、大気圧下の基材1を真空蒸着装置21に連続的に導入し、真空蒸着装置21内で蒸着層2を蒸着し、蒸着層2が蒸着された基材1を真空蒸着装置21から大気圧下に取り出すことができる連続式である。真空蒸着装置21は、フィルム基材1が導入及び取り出される導入出部22と、複数の減圧部23と、蒸着層2が蒸着される蒸着部24と、減圧部23及び蒸着部24を減圧する排気手段25とを有し、大気圧下の導入出部22から真空状態の蒸着部24までの間に設けられた複数の減圧部23によって段階的に真空度を向上し、また真空度を安定に維持するように構成されている。
【0026】
導入出部22は、フィルム基材1が真空蒸着装置21内に導入され、フィルム基材1が真空蒸着装置21から取り出される部分であり、通常は、大気圧下に設けられている。フィルム基材1の導入と取り出しを一か所にまとめることによって、省スペース化及び減圧の容易化を図っている。なお、フィルム基材1を真空蒸着装置21に導入する部分とフィルム基材1を真空蒸着装置21から取り出す部分とを別々に設けてもよい。
【0027】
減圧部23は、段階的に真空度を高めるために設けられた小部屋であり、導入出部22から蒸着部24までの間に少なくとも1つ、好ましくは複数段の部屋が設けられる。他の減圧部23や導入出部22又は蒸着部24との間は、多段に配設したシールロール群26によって仕切られており、排気手段25によって小部屋内の雰囲気を排気することによって減圧部23内の圧力を減圧状態にすることができ、さらにシールロール群26を介して真空度を維持したままフィルム基材1を搬送できるように構成されている。
【0028】
各シールロール群26は、図1においては、横方向に互いに接触するように並んだ3個のロールからなり、例えば、左のロールと中央のロールとで導入側のフィルム基材1を挟持し、右のロールと中央のロールとで導出側のフィルム基材1を挟持している。このように3個のロールが横方向に互いに接触するように配置されているため、各減圧部23や蒸着部24の真空度を維持しつつ、各減圧部23や蒸着部24にフィルム基材1を導入出することができる。さらに、各減圧部23内には、上下各段のシールロール群26の中間にデフレクタロール30が配置され、導入側および導出側のフィルム基材1を片寄らせるよう張力をかけて、フィルム基材1の円滑な走行を確保している。
【0029】
なお、減圧部23は3部屋としているが、その数を増やすことによって、蒸着部24の真空度をより高くしたり、より安定に維持したりすることができる。また、シールロール群26の構成は、中央のロールが導入側のロール対と導出側のロール対とで共通して使用され、3個のロールによって導入側も導出側も搬送できるようになっているが、4個のロールによって導入側のロール対と導出側のロール対を別個に設けてもよい。また、導入出部22として、フィルム基材1を真空蒸着装置21に導入する部分とフィルム基材1を真空蒸着装置21から取り出す部分とを別々に設けた場合には、フィルム基材1を導入する部分と蒸着部24との間及び蒸着部24とフィルム基材1を取り出す部分との間のそれぞれに減圧部23を配置する。
【0030】
蒸着部24は、真空チャンバー内に蒸着層2を蒸着するための設備が備えられており、排気手段25によって高真空状態に維持される。蒸着部24内には、フィルム基材1を支持すると共にその背面から冷却する冷却ロール27、冷却ロール27の下方に配置されたるつぼ28及びるつぼ28の周囲に配置された加熱手段29が設けられている。減圧部23からシールロール群26を介して蒸着部24に搬入されたフィルム基材1は、冷却ロール27に巻きつけられ、冷却ロール27に沿って搬送される。
【0031】
冷却ロール27の下方において、るつぼ28内に収容された蒸着材料が加熱手段29によって加熱されることにより蒸発しており、冷却ロール27に巻きつけられたフィルム基材1に蒸着し、フィルム基材1に形成されたマット層9の上に蒸着層2が形成される。図示していないが、るつぼ28と冷却ロール間の空間を仕切るチャンネル、蒸発した蒸着材料がフィルム基材1以外の冷却ロール27に蒸着するのを防ぐためのエッジマスク、フィルム停止時にるつぼからの熱や蒸着を遮断するコールドシャッタ等を設けていてもよい。
【0032】
排気手段25は、減圧部23及び蒸着部24内を排気するポンプであり、各部屋を真空引きしている。排気手段25は、各減圧部23及び蒸着部24の全てに対して連結されており、各減圧部23及び蒸着部24を減圧状態とする。ただし、同じポンプによって排気していても、最上段の減圧部23は、大気圧下の導入出部22が隣接しているため、真空度が低くなり、その下の段の減圧部23は最上段の減圧部23よりも真空度が高くなり、蒸着部24では最も真空度が高くなる。
【0033】
接着層形成手段31は、蒸着層2の上に接着層3を形成する。接着層形成手段31としては、例えば、グラビアロールコータやリバースロールコータを使用することができる。グラビアロールコータはグラビアロールの線密度とセルの深さを決めることで精度よくバリア剤及び接着剤のコート量を管理することができる。反面、グラビアロールコータでは、接着剤のコート量を変更する場合にはグラビアロール自体を変更しなければならなかった。この点、リバースロールコータはメタリングロールとアプリケータロールの間隔及び各ロールの回転速度を変更することによって、接着剤のコート量を容易に変更することができる。
【0034】
第2乾燥室41は、熱源による高温(通常、80〜120℃)の気体及び/又は気流(風)を生成して、接着層形成手段31により形成された接着層3をより早く乾燥させるためのものであり、より短期間で蒸着フィルムを製造するために設けることが好ましい。すなわち、接着剤が塗布された蒸着フィルム4は、第2乾燥室41内を搬送され、高温の雰囲気や気流等によって溶剤分を蒸発させ、接着層3を乾燥させる。ただし、接着層形成手段31から巻取部51までの間を搬送させるだけで乾燥するような乾燥しやすい接着剤を使用すれば、第2乾燥室41を設けなくてもよい。
【0035】
なお、図1では、製造装置10がマット層形成手段63及び真空蒸着装置21を有すると説明したが、マット層形成手段63と真空蒸着装置21とを別体として構成してもよい。すなわち、巻出部、マット層形成手段(ロールコータ)、乾燥室及び巻取部を有するマット層形成装置と、巻出部、真空蒸着装置、接着層形成手段(ロールコータ)、乾燥室及び巻取部を有する蒸着層形成装置とを設けてもよい。この場合、蒸着層形成装置の巻出部には、マット層9が形成されたフィルム基材1がロール状に巻き取られ、装填される。
【0036】
次に、上記製造装置10によって製造される蒸着フィルム4aについて説明する。まず、図2(A)に示すように、上記製造装置10の巻出部11にはロール状に巻き取られたフィルム基材1が装填され、図示しない搬送手段によって、フィルム基材1が巻取部51まで搬送される。
【0037】
フィルム基材1は、図2(B)に示すように、マット層形成手段63がマット剤を塗布することでマット層9が形成され、第1乾燥室81において乾燥させられる。さらに、マット層9を第1乾燥室81において十分乾燥した後、フィルム基材1は、大気圧下の導入出部22から連続的に真空蒸着装置21に導入される。真空蒸着装置21は、複数の減圧部23によって段階的に真空度を向上し、真空状態の蒸着部24で、図2(C)に示すように、マット層9の上に蒸着層2が形成される。その後、真空蒸着装置21の導入出部22から搬出された蒸着層2が形成されたフィルム基材1は、図2(D)に示すように、接着層形成手段31によって接着剤を塗布することで蒸着層2の上に接着層3が形成され、蒸着フィルム4aが形成される。このように、蒸着フィルム4aは、少なくともフィルム基材1と、基材1の一表面上に積層されたマット層9と、マット層の上に形成された蒸着層2と、蒸着層2の上に形成された接着層3を有している。さらに、フィルム基材1には他の層が積層されてもよい。例えば、基材1と蒸着層2との間のいずれかの位置に印刷層が設けられてもよいし、蒸着層2の上下に接触するようにトップコート層及びアンカーコート層が設けられてもよい。なお、図2においては、フィルム基材1の下面に各層を形成しているが、本明細書における層の上下関係は、基材側を下、外側を上とする。
【0038】
基材1は、その一方の表面にマット層9、蒸着層2及び接着層3が形成されるフィルムであり、これらの各層を形成できる基材であれば使用することが可能である。例えば、基材1として、プラスチック、紙等の材質からなる単層フィルム、プラスチック、紙等の材質からなる層の1種又は複数種類を積層した積層フィルム又はこれらの単層フィルム又は積層フィルムに印刷層等が形成されたフィルム(後述するように、あらかじめ印刷層が形成された基材1はもちろん、製造装置内で蒸着層の前に印刷層を形成する場合も含む)であってもよい。なお、フィルム基材1としては、少なくとも光を一部透過する材質のものを使用することが好ましい。印刷層が形成された場合、基材側から、印刷層の文字、模様、色彩等を観察できるためである。
【0039】
また、基材1としての積層体フィルムの形成方法は、特に限定されず、押出ラミネーション法やドライラミネーション法によって複数の層を貼り合わせたり、押出コーティング法によって積層したりしてもよい。フィルム基材1の厚さについては特に制限はなく、製造装置10において、搬送できる程度の可撓性を有していればよい。一部の分野において「シート」と呼ばれる0.25mm以上の厚みのものも本発明のフィルム基材1に含まれる。
【0040】
基材1は、蒸着フィルムが接着される他の部材の材料と同じ材料のフィルムを基材の最下層(接着層が形成される面とは反対側の表面)となるようにすれば、蒸着フィルムを接着後の他の部材において、蒸着フィルムを接着した部分とそれ以外の部分とで同じ材質となるため、全体として統一した質感の部材(容器、皿等)を製造できる。また、金型で他の部材を成形する際に表面にラベルを張り合わせるインモールドラベル成形において、蒸着フィルムを使用する場合には、蒸着フィルムの基材が他の部材と同じ材料であれば、成形加工において、ラベルの接着性が高まり好ましい。
【0041】
基材1の一部として、プラスチックを利用する場合は、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ナイロン等を使用することができる。特に、延伸ポリスチレン(OPS)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、二軸延伸ナイロン(ONY)、無延伸ナイロン(CNY)等を使用することができる。
【0042】
マット層9は、マット層形成手段63によって基材1の上に塗布されて形成されるものであり、グラビアロールコート法、リバースロールコート法等によって、有機樹脂に粒子を分散させたマット剤を均一に塗布して形成する。マット層は、層内に分散した粒子によって入射光を散乱させることができ、マット層を介在させることでマット感を出すことができる。マット剤の粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機粒子、及びポリエチレン等のポリマー粒子を使用することができる。特に、ポリエチレンの粉体を溶剤に均一に分散させたポリエチレン分散物を用いるのが好ましい。ポリエチレン分散物を用いると、蒸着層2の劣化を防止することができる。マット剤の粒子径として5〜60μm、好ましくは、25μmのものを用いるのがよい。マット層の厚さは2〜5μmの範囲とすることが好ましい。マット層の配置は、蒸着層2より下側(光が入射する側)であれば特に制限されない。
【0043】
さらに、マット層9の上に直接蒸着層2を形成する場合には、マット層9は、蒸着層2の下地となるアンカーコート層としても機能するように形成されてもよい。この場合、マット層形成手段63は、マット剤の粒子を含むアンカーコート剤を塗布して入射光を散乱させる粒子を含む層を形成する。アンカーコート剤としては、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリエステル−ポリウレタン系あるいはポリエーテル−ポリウレタン系、アクリル系、ビニル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系等を使用することができる。特に、蒸着工程の高温に耐えられるように硝化綿を添加したポリウレタン系樹脂を使用するのが好ましい。アンカーコート層としては、3〜5g/m2のコート量(乾燥時)とすることが好ましく、これらのコート量におけるアンカーコート層の厚さは1〜2μm程度とすることが好ましい。なお、マット層とは別にアンカーコート層を形成してもよい。この場合、アンカーコート層は蒸着層2の下に直接接触するように形成されるため、積層構造は、基材から順に、マット層、アンカーコート層、蒸着層となる。
【0044】
蒸着層2は、基材1に金属を蒸着することにより得られる。蒸着層2としては、金属を蒸着してなる金属蒸着層を利用することができる。より具体的には、蒸着層としては、Al、Sn、In、Zn、Ag等の単独蒸着層が用いられる。また、アルミニウム(Al)には、成形時の延展性を付与させる目的で鉄を0.1〜9.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%含有させてもよい。なかでも、アルミニウム(Al)から形成されることが好ましい。蒸着層の厚みは、30〜100nm、好ましくは40nmの範囲とすることが好ましい。
【0045】
接着層3は、接着層形成手段31によって蒸着層2の上に塗布されて形成されるものであり、有機溶剤や水に溶解させた接着剤又は溶解した接着剤をグラビアロールコート法、リバースロールコート法等によって、蒸着層2の上に均一に塗布して形成する。接着層3は、その後、溶剤分を蒸発させて乾燥させて接着性を喪失させた状態で巻取部51において巻き取られる。また、安定した接着力を付与するため、接着層3を形成する表面にコロナ処理を行ってもよい。
【0046】
接着剤としては、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリエステル−ポリウレタン系あるいはポリエーテル−ポリウレタン系、アクリル系、ビニル系、ポリアミド系、エポキシ系、ゴム系等の接着剤を使用することができ、特に2液反応型のポリウレタン系接着剤を使用することが好ましい。
【0047】
例えば、2液反応型ポリウレタン系接着剤の場合、主剤として、各種のポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられ、硬化剤として、アダクト(トリメチロールプロパンと有機ジイソシアネートの付加物)、ビューレット(3モルの有機ジイソシアネートと1モルの水の反応物)、イソシアヌレート(3モルの有機ジイソシアネートの重合物)等の多官能の有機ポリイソシアネートが使用され、又、ポリイソシアネートとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール又は必要によりこれらと低分子ポリオールを反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート化合物を使用することができる。
【0048】
また、ウレタン系接着剤の溶剤としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、ノルマルヘキサン等を使用することができる。接着層3としては、1.5〜5.0g/m2のコート量(乾燥時)とすることが好ましく、これらのコート量における接着層3の厚さは2〜3μm程度とすることが好ましい。
【0049】
以上、説明したとおり、本発明の蒸着フィルムの製造方法によれば、フィルム基材1と蒸着層2との間に、マット層形成手段(ロールコータ)63によって、マット層9を形成するので、基材側から入射した光を散乱させることができ、光沢の少ないマット感のある蒸着フィルムを製造することができる。
【0050】
さらに、本発明の蒸着フィルムの製造方法によれば、接着層形成手段(ロールコータ)31によって、蒸着層の上に接着剤を塗布するだけで接着層が形成できるため、フィルム基材に対して、蒸着層を形成した後、連続して接着層を形成することができる。このように、蒸着装置によって、フィルム基材上に、蒸着層及び接着層を一連の連続的な処理で形成することができるので、接着層を有する蒸着フィルムを完成させるまでに必要な時間を短縮することができ、生産性を高めることができる。
【0051】
従来の蒸着装置で蒸着層を形成し、その後、押出ラミネーション装置等の別の装置によって接着層を積層させた場合は、一つの基材に対する蒸着層の形成工程と、その上への接着層の積層工程とは別の日程で行うのが通常であり、接着層を有する蒸着フィルムを完成させるまで、少なくとも2日、積層装置の待ち時間によってはより多くの日数が必要であった。これに対し、本発明によれば、基材を装置に装填できれば、その日のうちに接着層を有する蒸着フィルムを製造することができるので、生産性の向上の効果は計り知れないものである。
【0052】
さらに、接着層として、押出ラミネーション装置等によってフィルムを積層するのではなく、接着剤を塗布して接着層を形成するので、本発明では、接着層を有する蒸着フィルム全体の膜厚を薄くすることができた。つまり、従来よりも、およそ接着層のフィルム分、膜厚を薄くすることができるのである。
【0053】
なお、図2(D)に示したとおり、蒸着フィルム4aは、フィルム基材1の上に、少なくとも、マット層9と、蒸着層2と、接着層3とがこの順で形成されているが、蒸着フィルムの構成はこれに限定されない。このほかの層(例えば、印刷層)を有する蒸着フィルムを製造することもできる。以下、本発明の蒸着フィルムの製造方法によって製造される他の蒸着フィルムの例について説明する。
【0054】
図3には、印刷層5が形成されたフィルム基材1の概略断面図を示す。図1では、ロール状に巻き取られたフィルム基材1が巻出部11に装填されると説明したが、他の形態として、あらかじめ印刷層5が形成されたフィルム基材1が、ロール状に巻き取られ、そのロールが巻出部11に装填されてもよい。
【0055】
ここで、印刷層5は、例えば、製造装置10とは別に設けられた図示しない印刷装置によって、フィルム基材1の上に形成される。印刷装置は、蒸着フィルムを製造する製造装置10の前段に設けられ、少なくとも、巻出部、印刷手段、及び巻取部を有し、印刷手段によって形成された印刷層5を乾燥させる乾燥室を有してもよい。印刷手段(図示省略)としては、例えば凹版印刷(グラビア)、凸版印刷(フレキソ)、平版印刷(オフセット)、スクリーン印刷、転写印刷等の方式を使用できる。印刷手段は、インキ選択性が高く、適用可能なフィルム基材1の種類が多いグラビア印刷を利用することが好ましい。なお、印刷層5を形成する前のフィルム基材1の表面に対し、コロナ放電処理を施してもよい。印刷装置の乾燥室は、熱源による高温(通常、80〜120℃)の気体及び/又は気流(風)を生成して、印刷手段によって形成された印刷層5を乾燥させるものである。
【0056】
なお、印刷装置については、製造装置10の前段に設けられる構成に限定されず、製造装置10が印刷手段を備える構成としてもよい。この場合、例えば、製造装置10は、マット層形成手段63の前段に印刷手段(図示省略)を備え、印刷手段は、フィルム基材1の上に印刷層5を形成する。
【0057】
図4(A)には、印刷層5を有する蒸着フィルム4bの概略断面図を示す。図4(B)には、印刷層5のほか、さらに、バリア層7を有する蒸着フィルム4cの概略断面図を示す。
【0058】
製造装置10において、巻出部11に図3に示した印刷層5が形成されたフィルム基材1のロールが装填されると、図示しない搬送手段によって、巻出部11のロール及び/又は巻取部51のロール、さらに必要に応じて製造装置10内の適宜のロールを回転させて、巻出部11から装置内に印刷層5が形成されたフィルム基材1を連続的に供給し、また巻取部51においてフィルム基材1を連続的に回収して、巻出部11から巻取部51までフィルム基材1を搬送する。これによって、図4(A)に示したように、印刷層5を有する蒸着フィルム4bが製造される。
【0059】
図4(B)に示した蒸着フィルム4cは、蒸着層2と接着層3との間に、蒸着フィルムのバリア特性を高めるバリア層(トップコート層)7を有するように構成されている。バリア層7は、酸素及び水分の透過を防止する層であり、蒸着層2を有する蒸着フィルム4において必須のものではないが、バリア性を向上させるために形成することが好ましい。バリア層7は、図示しないバリア層形成手段によってバリア剤が塗布されて形成される。バリア層形成手段は、真空蒸着装置21と接着層形成手段31との間に設けれ、有機溶剤や水に溶解させたバリア剤又は溶解したバリア剤を、グラビアロールコート法、リバースロールコート法等によって、蒸着層2の上に均一に塗布して、バリア層7を形成する。バリア剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)系を使用することができる。バリア層7としては、1〜5g/m2のコート量(乾燥時)とすることが好ましく、これらのコート量におけるバリア層7の厚さは1〜2μm程度とすることが好ましい。
【0060】
なお、図4(B)においては、蒸着層2の上にバリア層7を形成したが、バリア層7の配置はこの位置に限定されるものではなく、フィルム基材上に形成されていればよい。例えば、印刷層5の下に形成されてもよいし、図示しないアンカーコート層や接着層3と兼用させてもよい。バリア層と接着層とが一体となった層を形成する場合、接着層形成手段31によって、バリア剤を含む接着剤を蒸着層2の上に塗布することにより、バリア性を備えた接着層3を形成できる。
【0061】
この蒸着フィルム4b(又は4c)は、図4(A)(又は図4(B))に示したように、フィルム基材1の上に印刷層5、マット層9、蒸着層2、(バリア層7)及び接着層3が順番に形成された構造である。そして、蒸着フィルム4b又は4cの接着層3を他の部材に接着させると、フィルム基材1を通して印刷層5の文字、模様、色彩等を観察できるので、他の部材の表面に装飾を施すことができる。この場合、フィルム基材1としては、少なくとも光を一部透過する材質のものを使用する。また、蒸着層2として、金属(特にAl)を使用した場合であっても、マット層9が入射した光を散乱させるので、金属光沢を少なくすることができ、マット感のある背景を得ることができる。すなわち、印刷層5の文字、模様、色彩等は、マット感のある層を背景にして観察されるので、落ち着いた印象の装飾を提供することができる。また、第1乾燥室81によって、アンカーコート剤の溶剤を十分に揮発させることができるので、蒸着フィルム4に残留する溶剤臭を少なくすることができる。
【0062】
さらに、蒸着層と接着層との間にバリア層を形成するので、酸素及び水分の透過を防ぐことができる高いバリア性を有する蒸着フィルムを製造することができる。
【0063】
図5は、図4(B)に示した蒸着フィルム4cが接着された装飾容器70の概略断面図である。図5においては、容器71の内側表面に蒸着フィルム4cが接着されている。蒸着フィルム4cは、接着層3によって、容器71の内側表面に接着されるため、装飾容器70において、内側表面の最表面は、フィルム基材1が配置され、その次に、印刷層5、マット層9、蒸着層2及びバリア層7が順番に配置され、接着層3によって容器71に接着される。そして、蒸着フィルム4cのフィルム基材1を通して印刷層5の文字、模様、色彩等が観察されるため、装飾容器70は、蒸着フィルム4cによって内側表面に装飾が施されたのである。この場合、蒸着層2より外側(光が入射する側)に設けられたマット層9によって、入射した光が散乱するので、金属光沢が抑えられたマット感のある装飾とすることができる。
【0064】
容器71は、他の部材の一実施形態であり、材質としては、プラスチック、紙等の材質、又はプラスチック、紙等の材質からなる層の1種若しくは複数種類を積層した積層体を使用できる。特に、容器71としては、インモールド成形するために、射出成形可能な熱可塑性樹脂、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を使用することが好ましい。なお、図5においては、容器71の内側表面に蒸着フィルム4cが接着されているが、容器71の外側表面、内側及び外側表面の両方又は内側若しくは外側表面の一部に、蒸着フィルム4a、4b及び4cのうちの一つ又は二つ以上を接着してもよい。また、蒸着フィルムは、容器ではなく、他のフィルムに接着されてもよい。
【0065】
[実施例] 本実施例では、図4(B)の構造の蒸着フィルム4cを製造した。フィルム基材1として、15μmの膜厚の二軸延伸ナイロンフィルム(ONY)からなるフィルムを使用し、フィルム基材1の上に印刷層を形成した。そして、マット層形成手段63を使用し、印刷層が形成されたフィルム基材1の印刷面側に、マット剤としてポリエチレン分散物を添加したポリウレタン系の溶剤を塗布し、マット層を1μm程度の厚さに形成し、第1乾燥室81において乾燥させた。続いて、製造装置10の真空蒸着装置21において、マット層の上に40nmのアルミニウム層を蒸着した。そして、バリア層形成手段を使用し、アルミニウム層の上に、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)系のバリア層7を2μm程度の厚さに形成した。最後に、シクロヘキサンとメチルエチルケトンの混合溶剤で希釈したポリスチレン系の接着剤を接着層形成手段31によってバリア層の上に塗布し、第2乾燥室41において溶剤分を蒸発させて2μm程度の膜厚のポリスチレン系の接着層3を形成した。こうして、印刷層5が形成された二軸延伸ナイロンフィルム1上に、マット層9、蒸着アルミニウム層2、バリア層7及び接着層3を有する蒸着フィルム4cを製造することができた。
【0066】
かかる蒸着フィルム4cを別の部材に接着させた。別の部材としては、60μmの厚さの直鎖状低密度ポリエチレン(PE−LLD)のシートを使用し、蒸着フィルムの接着層3をポリスチレンシートに対向させて160〜180℃の温度で熱圧着して蒸着フィルムをポリスチレンシートに貼り合わせた。蒸着フィルムが接着されたポリスチレンシートは、マット感のある装飾を簡単に施すことができた。また、別の部材であるポリスチレンシートと、接着層3の材質であるポリスチレン系の接着剤及びフィルム基材1の二軸延伸ナイロンフィルムが同質であるため、強固な接着を実現でき、全体として一体感のあるポリスチレンシートを得ることができた。
【符号の説明】
【0067】
1 フィルム基材
2 蒸着層
3 接着層
4a、4b、4c 蒸着フィルム
5 印刷層
7 バリア層
9 マット層
10 製造装置
11 巻出部
21 真空蒸着装置
31 接着層形成手段
41 第2乾燥室
51 巻取部
63 マット層形成手段
81 第1乾燥室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材を巻出部から巻取部まで搬送する基材搬送手段と、前記巻出部から前記巻取部の間に設けられた真空蒸着装置と、前記真空蒸着装置から前記巻取部の間に設けられた接着層形成手段と、を少なくとも有する装置を使用し、
前記基材搬送手段によって、光を散乱させる粒子を含むマット層が形成されたフィルム状の基材を前記真空蒸着装置に導入しつつ、前記真空蒸着装置において、前記導入されたフィルム状の基材のマット層の上に蒸着層を蒸着し、さらに前記基材搬送手段によって前記真空蒸着装置から搬出された蒸着層が蒸着されたフィルム状の基材の当該蒸着層の上に前記接着層形成手段によって接着剤を塗布して接着層を形成し、
フィルム状の基材の上に、少なくとも、マット層、蒸着層及び接着層が、この順で形成され、他の部材と接着させて使用される蒸着フィルムを製造することを特徴とする蒸着フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記マット層は、有機樹脂に粒子が分散したマット剤を塗布し、乾燥室において、残留する有機溶剤を揮発させることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の蒸着フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記マット層は、前記蒸着層の下地となるアンカーコート層としても機能し、前記蒸着層は前記マット層の上に直接蒸着されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルム状の基材の上には、印刷層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蒸着フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−45844(P2012−45844A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191113(P2010−191113)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390033868)株式会社メイワパックス (27)
【Fターム(参考)】