説明

蒸着フィルム

【課題】生鮮食品、加工食品、医療品、医療機器、電子部品などの包装用フィルムとして、低コストで高度なガスバリア性と透明性に優れた、蒸着膜のクラックが発生しにくく、蒸着フィルムを供することを目的とする。
【解決手段】高分子フィルムから成る基材と、この基材の少なくとも片面に電子ビーム式真空蒸着法によりSiOxを成膜された無機化合物層とを備える蒸着フィルムにおいて、蒸着膜厚が15〜35nmである前記蒸着フィルムを5枚重ねて測定した黄色度(YI)が30以下であり、かつ、前記蒸着膜のクラック発生開始歪量[%]が2.5%以上であることを特徴とする蒸着フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する蒸着フィルムに係り、より詳しくは、生鮮食品、加工食品、医療品、医療機器、電子部品等の包装用フィルムの少なくとも片面に無機化合物層を形成された蒸着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療・医薬品などの包装材料分野や液晶、有機ELなどのフラットパネルディスプレイ用樹脂基板等のエレクトロニクス分野においては、高度のガスバリア性をもつことが求められている。この観点からアルミニウムなどの金属、あるいは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物を高分子フィルム基材上に真空成膜させたガスバリア性フィルムが使用されている。
【0003】
ガスバリア性を有する金属酸化物の中でも、酸化ケイ素は特にガスバリア性に優れており、原料であるケイ素は地球上に豊富に存在するため安価で取引され、供給が安定している。
【0004】
一方、真空で成膜する方法には、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法、真空蒸着法等が挙げられるが、成膜速度やコスト面において、真空蒸着法が最も優れている。特に電子ビーム式では成膜速度を照射面積や電子ビーム電流等で制御しやすく、材料を局部的に加熱させられるため、短時間で熱を与えられる点で有効である。
【0005】
電子ビーム方式での真空蒸着法による蒸着フィルムの生産では、巻取り式の蒸着機を用いて長尺、広幅の基材フィルムに蒸着し、一度に大量に蒸着フィルムの生産を行うのが一般的である。巻取り式の蒸着機を用いる生産の場合、基材フィルムの巻m数は小型の蒸着機で数百m、大型の蒸着機では数万mにも及ぶ。基材フィルムの幅は小型の蒸着機では1m以内となるが、大型では約2mに及ぶ。
【0006】
生産にあたっては、バリア性、透明性等の目的に応じて膜厚、光線透過率等を制御しながら加工する必要がある。制御項目には、電子ビームだけでも電流、パターン、照射面積等があり、同じ条件でも材料によって蒸発プロセスが異なる為、制御は容易ではない。特に長尺で加工する際には、成膜開始から終了まで一定の膜にする必要があり、広幅での加工に際しては、幅方向でのばらつきを極力抑えて加工することが望ましい。加えて、コストダウンのために加工時間を短縮すべく、フィルムの巻取速度も可能な限り上げることが望ましい。
【0007】
幅方向の成膜の制御に関して、特許文献1にて提案がなされているが、蒸着加工幅500mm以上に対して電子ビームを2つ以上要するため、プロセスが複雑化する上に、コスト高になることや、蒸着膜質の均一性を確保することにも問題がある。材料面では特許文献2にて、材料中の2種類の蒸着成分の割合に高さ方向で傾斜をつけることが提案されているが、大量生産に向いた手法ではない。
【0008】
一方で、電子ビーム方式の蒸着手法に限らず、蒸発源の蒸発を十分に制御できない場合には、均一な成膜が出来ないだけでなく、スプラッシュが発生しやすくなり、膜の物性に大きな影響を及ぼす。バリア膜に穴が開いてしまうため、バリアの低下につながったり、スプラッシュ痕がフィルム上に残り、その上にインキ等をコーティングする場合には、スプラッシュ痕が模様となって現れたりする。また、蒸着フィルムを特に包装材料として用いる場合には、その後のコーティング工程、ラミネート工程、スリット工程はもとより、
包装袋に加工する際にもフィルムを曲げたり、屈曲させたりしなければならない場合もある。そのような工程があると、蒸着膜をはじめとしたバリア層に負担がかかり、層にクラックが入り、バリア性の著しい低下につながる。これらのクラックは、バリア膜の硬さ等の物性に多少の依存はあるが、大抵は膜が引っ張りの張力に耐えきれずに裂け目が入ることで発生する。このときスプラッシュ痕が膜上に存在すると、スプラッシュ痕から裂け目が入るため、よりクラックが増すことになる。これは製品として当然望ましくない現象であるため、スプラッシュを減らすことは蒸着加工上で重要である。
【0009】
また一方で、SiOxを蒸着膜とする蒸着フィルムは、バリア性に優れてコストが安く、アルミやアルミ蒸着品よりはるかに透明性に優れることから、酸化ケイ素やケイ素は汎用の材料として用いられている。しかしながら、SiOxを蒸着膜とする蒸着フィルムは黄色を呈してしまい、包装材料や表示媒体の保護膜として用いた場合に正しい色の把握が困難なものとなってしまう(特許文献3および4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−287074号公報
【特許文献2】特開平11−189864号公報
【特許文献3】特開平3−100164号公報
【特許文献4】特開平4−337067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高分子フィルム基材と、この基材の少なくとも片面に電子ビーム式真空蒸着法によりSiOxを成膜された無機化合物層とを備える蒸着フィルムにおいて、低コストで高度なガスバリア性と透明性に優れた、蒸着膜のクラックが発生しにくく、蒸着フィルムを供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、本発明の請求項1に係る発明は、高分子フィルムから成る基材と、この基材の少なくとも片面に電子ビーム式真空蒸着法によりSiOxを成膜された無機化合物層とを備える蒸着フィルムにおいて、蒸着膜厚が15〜35nmである前記蒸着フィルムを5枚重ねて測定した黄色度(YI)が30以下であり、かつ、前記蒸着膜のクラック発生開始歪量[%]が2.5%以上であることを特徴とする蒸着フィルムである。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、高分子フィルム基材の少なくとも片面に、O/Si比が1.4〜1.9からなるSiOxの薄膜層が形成されて成ることを特徴とする蒸着フィルムである。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記SiOxの薄膜層を形成する蒸発源の主成分がSi、SiOであることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着フィルムである。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記高分子フィルム基材の少なくとも片面に、アンカーコート層を有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の蒸着フィルムである。
【0016】
また、本発明の請求項5に発明は、前記SiOxの薄膜層の表面にオーバーコート層を有することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の蒸着フィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、高分子フィルム基材と、この基材の少なくとも片面に電子ビーム式真空蒸着法によりSiOxを成膜された無機化合物層とを備える蒸着フィルムにおいて、蒸着膜のクラックが発生しにくく、透明性に優れる蒸着フィルムを供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るクラック発生開始歪量(%)を測定する引張試験機の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を説明する。本発明の蒸着フィルムは、高分子フィルム基材と、この基材の少なくとも片面に電子ビーム式真空蒸着法によりSiOxが成膜された蒸着フィルムであって、前記蒸着膜のクラック発生開始歪量(%)が2.5%以上であり、かつ、蒸着フィルムを5枚重ねて測定した黄色度(YI)が30以下であることを特徴とする蒸着フィルムである。
【0020】
蒸着膜のクラック発生を予測する目安となるクラック発生開始歪量(%)については、測定方法などについて具体的に後述するが、経験値からクラック発生開始歪量(%)が2.5%以上であれば極めてクラックの発生が抑えられ高品質が得られる。一方、この値が2.5%未満であると、クラックの発生率が高くなり製品としての品質を保証できない。
【0021】
また、蒸着フィルムの透明性の目安である黄色度(YI)は色度計を用いて計測するが、黄色度(YI)が30以下であれば透明性に優れ、例えば、蒸着後の印刷での色調整も問題なく行える。一方、黄色度(YI)が30を超えると、着色が目視で明らかに判別つくようになり、包装材料等の最終製品となった際の色味が不安定になるため、外観上の管理が困難になる問題があり、また、透明性が高い方が、内容物の鮮度を一般的に良く見せることができる。
【0022】
本発明で使用される高分子フィルム基材は特に限定はされるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が用いられ、機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく用いられる。
【0023】
高分子フィルム基材の表面に、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑材などが使用されていても良く、薄膜との密着性を良くするために前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理などを施しておいても良い。
【0024】
また、高分子フィルム基材の表面に、アクリルポリオール、ポリエステル、イソシアネート化合物等の非水性樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、でんぷん、セルロース、ポリアクリル酸、エチレンビニルアルコール樹脂等の水溶性樹脂からなるアンカーコート層を設けても良く、これにより基材と薄膜との密着性を良くするだけでなく、表面を平滑にすることで薄膜を欠陥なく成膜し、さらに蒸着薄膜層の微小なバリア欠陥を補助しバリア性を向上することができる。
【0025】
SiOxの薄膜層の上にオーバーコート層を設けても良く、オーバーコート層の存在によって、硬く脆い傾向のある蒸着膜を保護し擦れや屈曲によるクラックを防止することが
できる。
【0026】
上記高分子フィルム基材の厚みは特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性、他の層を積層する可能性があることを考えると、6〜30μmの厚みが好ましい。
【0027】
本発明で成膜されるSiOxの薄膜層は、電子ビーム式真空蒸着の蒸発源に酸化ケイ素ならびにケイ素を用いることによって得ることができる。前記酸化ケイ素は主にSiO、SiOの2種類があるが、SiOはSiOを原料として製造されるためにコスト高となるので、SiOを用いずに成膜するほうが望ましい。粉末の種類を1種類に限定して材料としても良いが、特に価格が安く、Si、SiOの2種類を混合させた材料において、蒸発プロセス及びSiOxのxの値を制御しやすく、すなわち膜厚や透明性を制御しやすい。SiOが昇華性であるのに対し、Si、SiOは溶融し、ガラス化する特徴が影響していると考えられる。そしてSiOを蒸着材料として用いる場合は、通常塊状であり、蒸着中に昇華する際に、塊状のまま吹き飛ぶ場合があり、これがスプラッシュの多さにつながっていると推測される。
【0028】
前記蒸発源の形状としては、粉末、粒状、成形体等が用いられる。粒状及び成形体は粉状から製造されるため、コストメリットは粉末がベストである。しかしながら、粉末はハンドリング性が悪く、蒸発源を挿入するルツボに均一に充填しにくい為、蒸発源の形状としては安定性に欠けるという問題があり、一般的には成形体が望ましい。
【0029】
用いる粉末の粒径は特に制限しない。一般にSiは平均粒径が約6〜20μm、SiOは約1〜20μm程度のグレードが市販されている。平均粒径や粒度分布の山がシャープかワイドか等の特性は、分散性、材料かさ密度、蒸発のプロセス等に影響を及ぼすため、選定が必要である。また、2種以上のグレードを混合させて用いる場合は、組み合わせに留意しなければならない。
【0030】
前記材料かさ密度に関しては、同じ体積の材料から同じ蒸着膜厚を得る場合、単純にはかさ密度の小さい材料のほうが、材料の体積上の減少が早い。従って、かさ密度が小さいほど、材料が底をつき、電子ビームで底を撃ってしまいやすいといえる。そのため、材料送り速度を早くせざるを得なくなり、蒸着プロセスに影響を及ぼすだけでなく、短時間で材料が無くなるため、長尺で加工することができないケースが生じる。逆にかさ密度が高すぎると、材料の減りは遅くとも、電子ビームでの材料加熱に時間を要し、蒸発開始が遅くなる危険性がある。材料かさ密度は、高すぎても低すぎても不具合を生じるため、生産機や蒸着フィルムの仕様等に合わせて適宜設計することが望ましい。
【0031】
前記蒸発源の成形体の製造方法は、流し込み法、ラバープレス法などの成形のみを行う方法と、ホットプレス法、熱間静水圧加圧法(HIP)など成形と同時に加圧焼結を行う方法がある。後者の方法を用いると緻密化の起こる温度が下がり異常粒成長のない均一な粒径からなる高密度な焼結体を得ることができるが、本発明では特に限定しない。また、焼結時の雰囲気としては真空雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、大気雰囲気などがある。本発明では特に焼結時の雰囲気を限定しないが、成膜されるSiOxの薄膜層の主成分がSi、Oであるため、雰囲気中のガスと蒸着材料の反応が無いほうが望ましい。
【0032】
成膜されるSiOx薄膜層のxは、薄膜層中のO/Si比であり、1〜2の数値を取る。2に近いほど性質がSiOに近くなり、透明性が増すもののバリア性に欠けてしまうが、1に近いとバリア性は上がるものの膜が黄色を呈して透明性が欠けてしまうという、相反する関係がある。これは、蒸着法の原理として、加熱されて蒸発したSiOxが基材フィルム上に物理的に堆積するためであり、その結果堆積時の隙間がガスバリア性能を決定する因子となる。そのため、xの値が小さいとフィルム上のSiOxの原子間ネットワークが密になってガスバリア性が発現し、反対にxの値が大きいと原子間ネットワークが疎になりガスバリア性が発現しないと推察される。その一方で、xの値が小さいと無機物であるSiが多くなり、xの値が大きいとSiが少なくなるため、膜の硬さとしてxの値が大きいほうが膜に柔軟性が出やすくなる。従って蒸着膜層に力がかかった際の抵抗力として、xの値が大きいほうが強く、割れ、すなわちクラックが入りやすくなるものと考えられる。
【0033】
本発明でいうクラック発生開始歪量(%)は、図1に示すような、基台2上に固定された固定ステージ3と、基台2上で水平方向に移動可能な可動ステージ4を具備する引張試験機1により測定する。先ず、測定試料として、透明基材102とバリア性薄膜104から構成される本発明の透明バリアフィルム10の一方の端部を、引張試験機1の固定ステージ3に固定し、次に、該試料の他方の端部を、可動ステージ4に固定する。なお、透明基材102の厚さは12μm、バリア性薄膜104の厚さは25nmに設定するのが好ましい。
【0034】
次に、可動ステージ4を基台2上で水平方向に下記の歪量が毎秒0.01%となる速度で移動させ、本発明の試料(透明バリアフィルム10)に引張力を印加する。この時の透明基材102上のバリア性薄膜104の状態を、上方に設置された顕微鏡観察装置5により、100倍の倍率にて観察する。可動ステージ4による引張方向に対して垂直方向にクラック破壊が観察された時点で測定を終了する。測定終了時における、試料(透明バリアフィルム10)の歪量、すなわち{(試料10の引張後の長さ−試料10の測定前の長さ)/試料10の測定前の長さ} × 100 (%)を、本発明でいうクラック発生開始歪量(%)とする。
【0035】
そこで、目的に応じて適切なx値にするべく、蒸着材料の処方設定、真空蒸着の機械条件設定を行う必要がある。例えば蒸着材料では材料のO/Si比が一般に高いほど、蒸着膜のO/Si比も高くなる。機械条件では例えば、真空蒸着中に成膜室に酸素あるいは水を適度に導入し、調整することが可能であるが、成膜室の圧力が電子ビームを使用できなくなるほど上昇してしまう場合もあり、技術確立の難易度が高い。
【0036】
発明者らは鋭意努力の結果、O/Si比が1.4〜1.9の範囲において、蒸着膜のクラックが発生しにくく、且つ、透明性に優れた蒸着フィルムが得られることを見出した。O/Si比が1.4未満の蒸着フィルムは、Siが多いため着色が濃くなる傾向があり、また、O/Si比が1.9を超えると、Oが多いためバリア性が低下する傾向がある。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を持って本発明をより詳細に説明する。
【0038】
<実施例1>
Si(平均粒径10μm)、SiO(平均粒径8μm)を材料のO/Si比が1.4となるように混合し、更に水、シリカゾルを混合し、スラリーを調整し、このスラリーを型に流し込み、それぞれ成形した。この成形物を乾燥及び熱処理して蒸着材料とした。さらに電子ビーム加熱方式の巻き取り式蒸着装置を用いて、作成した蒸着材料を、12μm厚のポリエステルフィルムに、巻き取り速度200nm・m/s、蒸着巾480mmで真空蒸着させ、実施例1の蒸着フィルムを得た。
【0039】
<実施例2>
蒸着材料の粉末のO/Si比が1.75であること以外は実施例1と同じ方法で成形体を作成して蒸着を行い、実施例2の蒸着フィルムを得た。
【0040】
<実施例3>
蒸着材料の粉末のO/Si比が1.65であること以外は実施例1と同じ方法で成形体を作成して蒸着を行い、実施例3の蒸着フィルムを得た。
【0041】
<実施例4>
ポリウレタン系樹脂からなるアンカーコート層を設けられたポリエステルフィルムを蒸着基材として用いたこと以外は実施例1と同じ方法で成形体を作成して蒸着を行い、実施例4の蒸着フィルムを得た。
【0042】
<実施例5>
蒸着膜上に水溶性高分子からなるオーバーコート層を設けたこと以外は実施例4と同じ方法で成形体を作成して蒸着を行い、実施例5の蒸着フィルムを得た。
【0043】
<比較例1>
蒸着材料の粉末のO/Si比が1.1であること以外は実施例1と同じ方法で成形体を作成して蒸着を行い、比較例1の蒸着フィルムを得た。
【0044】
<比較例2>
実施例1の蒸着材料の粉末のうち20%をSiOとしたこと以外は実施例1と同じ方法で成形体を作成して蒸着を行い、比較例3の蒸着フィルムを得た。
【0045】
<比較例3>
実施例1の粉末のO/Si比が1.42としたこと以外は実施例1と同じ方法で成形体を作成して蒸着を行い、比較例5の蒸着フィルムを得た。
【0046】
<評価方法>
実施例1〜5および比較例1〜3で得られたそれぞれの蒸着フィルムを用いて、以下の装置、方法にて、O/Si比、酸素透過度、水蒸気透過度、黄色度(YI)とクラック発生開始歪量(%)の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
O/Si比〜蒸着幅中央の膜組成をXPS(日本電子製 JPS−90SXV)で計測
酸素透過度(ml/m・day・MPa)〜酸素透過度測定装置
(OXTROXTRAN 2/20、mocon社製、30℃・70%RH)
水蒸気透過度(g/m・day)〜水蒸気透過度測定装置
(PERMATRAN 3/30、mocon社製、40℃・90%RH)
黄色度(YI)〜色差計により測定
クラック発生開始歪量(%)〜引張試験機1にて測定
【0047】
<比較結果>
実施例1〜5で得られた本発明品は、いずれもYI値が30以下であり、また、クラック発生開始歪量が2.5%以上で、酸素透過率及び水蒸気透過率に優れた結果が得られた。一方、比較例1〜3で得られた比較品は、YI値が30を越え、かつ、クラック発生開始歪量が2.5%未満であり、本発明はいずれも良好な結果を示した。
【0048】
【表1】

【符号の説明】
【0049】
1・・・・引張試験機
2・・・・基台
3・・・・固定ステージ
4・・・・可動式ステージ
5・・・・顕微鏡観察装置
10・・・・試料(透明バリアフィルム)
102・・・・透明基材
104・・・・バリア性薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルムから成る基材と、この基材の少なくとも片面に電子ビーム式真空蒸着法によりSiOxを成膜された無機化合物層とを備える蒸着フィルムにおいて、蒸着膜厚が15〜35nmである前記蒸着フィルムを5枚重ねて測定した黄色度(YI)が30以下であり、かつ、前記蒸着膜のクラック発生開始歪量[%]が2.5%以上であることを特徴とする蒸着フィルム。
【請求項2】
高分子フィルム基材の少なくとも片面に、O/Si比が1.4〜1.9からなるSiOxの薄膜層が形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の蒸着フィルム。
【請求項3】
前記SiOxの薄膜層を形成する蒸発源の主成分がSi、SiOであることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着フィルム。
【請求項4】
前記高分子フィルム基材の少なくとも片面に、アンカーコート層を有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の蒸着フィルム。
【請求項5】
前記SiOxの薄膜層の表面にオーバーコート層を有することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の蒸着フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−184496(P2012−184496A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50323(P2011−50323)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】