説明

蒸着マスクおよび蒸着マスクの製造方法

【課題】蒸着材料を高い利用効率で成膜することができる蒸着マスクを提供する。
【解決手段】蒸着マスク20は、第1面34aおよび第1面とは反対側の第2面34bを有し、第1面と第2面との間を延びる貫通孔25が形成された金属製シート34を備える。金属製シートの第1面側に、線状に延びる溝26が形成されている。金属製シートの第2面側に、穴27が形成されている。溝と穴とは通じており、これにより、溝と穴とによって金属製シートを貫通する貫通孔が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクに係り、とりわけ、蒸着材料を高い利用効率で成膜することができる蒸着マスクに関する。
【0002】
また、本発明は、所望のパターンで蒸着を行うために用いられる蒸着マスクを製造する方法に係り、とりわけ、蒸着材料を高い利用効率で成膜することができる蒸着マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、所望のパターンで配列された貫通孔を含む蒸着用マスクを用い、所望のパターンで薄膜を形成する方法が知られている。そして、昨今においては、例えば有機EL表示装置の製造時において有機材料を基板上に蒸着する場合等、極めて高価な材料を成膜する際に蒸着が用いられることがある。なお、蒸着用マスクは、一般的に、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングによって金属板に貫通孔を形成することにより、製造され得る(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−39319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸着マスクを用いて蒸着材料を基板に成膜する場合、蒸着マスクにも蒸着材料が付着する。すなわち、使用された蒸着材料のすべてが基板に付着するわけではない。また、蒸着マスクの開孔率が低くなれば、蒸着材料の利用効率も低下してしまう。例えば、カラー表示装置を製造するために有機発光材料を基板に蒸着する場合、一つの色を発光し得る有機発光材料を蒸着するための蒸着マスクの開孔率は通常34%未満となり、蒸着材料の利用効率は非常に低い値となる。高価な蒸着材料を用いる場合、利用効率が低いことは大きな問題となる。なお、ここでいう利用効率とは、用いられた蒸着材料のうちの基板に付着した割合を指している。
【0005】
また、蒸着材料の中には、蒸着マスクをなす金属製シートのシート面に対して斜めに移動して基板に向かうものもある。斜めに移動する蒸着材料を有効に利用して蒸着材料の利用効率を高めるためには、壁面が大きく傾斜して先細りする貫通孔を金属製シートに形成することが好ましい。しかしながら、エッチングによって金属製シートに貫通孔を形成しようとすると、貫通孔の壁面を大きく傾斜させることが困難な場合がある。具体的には、隣り合う孔の離間間隔が短い場合、隣りの孔に面する側の壁面が切り立ってしまう傾向がある。また、平面視において長方形状を有する貫通孔をエッチングによって作製する場合には、貫通孔の長辺沿いの壁面を大きく傾かせることができる一方で、貫通孔の短辺沿いの壁面が切り立ってしまう傾向がある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、蒸着材料を高い利用効率で成膜することができる蒸着マスクを提供することを目的とする。また、本発明は、蒸着材料を高い利用効率で成膜することができる蒸着マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
ところで、貫通孔の壁面が切り立っていると、蒸着材料の利用効率が悪化するだけでなく、さらに他の不具合を生じさせる。蒸着マスクをなす金属製シートは、製造上の制約または使用上の制約から、或る程度の厚みを有している。したがって、貫通孔の壁面が切り立っていると、上述したように蒸着材料の一部が斜めに移動することから、被蒸着領域(成膜されるべき領域)の縁部領域に所定の厚みで安定して成膜することが困難となる。この不具合を回避するため、貫通孔を所望のパターンよりも大きくすることが有効と考えられている。しかしながら、この方法を採用すると、隣り合う被蒸着領域が近接している場合に、蒸着マスクの貫通孔がつながってしまう。したがって、例えば表示装置の各画素として有機発光材料を成膜する場合等においては、この方法を採用することができず、隣り合う被成膜領域(画素)を別々の蒸着工程にて蒸着しなければならない。すなわち、一回の蒸着工程において一つおきに半分の被成膜領域を蒸着し、二回目の蒸着工程において残りの被成膜領域を蒸着することにより、同一材料を二回に分けて蒸着しなければならない。このため、カラー表示装置を作製するために三種類の有機発光材料を蒸着する場合には、一種類の有機発光材料につき二回、合計六回の蒸着工程を設けなければならない。本発明によってこのような不具合を解決し、蒸着工程の回数を削減することができれば、さらに都合がよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による蒸着マスクは、第1面および前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記第1面と前記第2面との間を延びる貫通孔が形成された金属製シートを備え、前記金属製シートの前記第1面側に、線状に延びる溝が形成され、前記金属製シートの前記第2面側に、穴が形成されており、前記溝と前記穴とは通じており、前記溝と前記穴とによって前記金属製シートを貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明による蒸着マスクにおいて、前記溝は、前記金属製シートを前記第1面の側からエッチングすることによって形成されているようにしてもよい。
【0010】
また、本発明による蒸着マスクにおいて、前記第1面側から前記第2面側に向け、前記金属製シートのシート面に沿った断面における前記溝の断面積はしだいに小さくなっていくようにしてもよい。
【0011】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、前記穴は、前記金属製シートを前記第2面の側からエッチングすることによって形成されているようにしてもよい。
【0012】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、前記第2面側から前記第1面側に向け、前記金属製シートのシート面に沿った断面における前記穴の断面積はしだいに小さくなっていくようにしてもよい。
【0013】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、前記溝の壁面と前記穴の壁面との接続部によって囲まれる領域は、前記金属製シートの平面視において、長方形状を有し、前記接続部によって囲まれる領域の長手方向は、前記線状の溝の長手方向に沿って延びているようにしてもよい。
【0014】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、直線状に延びる前記溝が、互いに平行に複数設けられているようにしてもよい。
【0015】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、前記穴が、前記溝の長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられているようにしてもよい。
【0016】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、互いに平行に延びる複数の溝が等間隔をあけて設けられ、各溝の長手方向に沿って複数の穴が等間隔をあけて設けられ、前記金属製シートの平面視において、各溝の長手方向に沿って隣り合う二つの貫通孔の間の長さは、隣り合う溝にそれぞれ形成された二つの貫通孔の間の長さよりも短くしてもよい。
【0017】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、前記穴が前記溝の長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられている場合、前記溝の前記長手方向に直交する方向に沿った前記溝の前記第1面上における幅は、前記長手方向における前記穴が形成されている部分よりも、前記長手方向における隣り合う二つの穴の間の部分において狭くなっているようにしてもよい。
【0018】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、前記溝は、前記第1面側に形成された複数の穴によって形成されており、前記複数の穴のうちの前記溝の前記長手方向に沿って隣り合う二つの穴は前記第1面において接続されているようにしてもよい。
【0019】
さらに、本発明による蒸着マスクにおいて、前記穴が前記溝の長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられている場合、前記溝は、前記第1面側に形成された複数の穴によって形成されており、前記複数の穴のうちの前記溝の前記長手方向に沿って隣り合う二つの穴は前記第1面において接続されており、前記第2面側に形成された穴は、前記第1面側に形成され前記溝を構成する穴に対面する位置に配置されているようにしてもよい。
【0020】
本発明による蒸着マスクの製造方法は、第1面および前記第1面とは反対側の第2面を有する金属製シートをエッチングして、前記金属製シートの前記第1面側に線状に延びる溝を形成する工程と、前記金属製シートをエッチングして、前記金属製シートの前記第2面側に穴を形成する工程と、を含み、前記溝と前記穴とが通じ、前記溝と前記穴とによって前記金属製シートを貫通する貫通孔が形成されるように、前記溝および前記穴が形成されることを特徴とする。
【0021】
本発明による蒸着マスクの製造方法において、互いに平行に延びる複数の溝が等間隔をあけて形成され、各溝の長手方向に沿うようにして複数の穴が等間隔をあけて形成され、 前記金属製シートの平面視において、各溝の長手方向に沿って隣り合う二つの貫通孔の間の長さは、隣り合う溝にそれぞれ形成された二つの貫通孔の間の長さよりも短くなるようにしてもよい。
【0022】
また、本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記溝の壁面と前記穴の壁面との接続部によって囲まれる領域が、前記金属製シートの平面視において、長方形状を有するように、前記溝および前記穴が形成され、前記接続部によって囲まれる領域の長手方向は、前記線状の溝の長手方向に沿って延びるようにしてもよい。
【0023】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法が、前記金属製シートを供給する工程をさらに含み、前記溝を形成する工程において、前記金属製シートの供給方向に沿って延びる溝が形成されるようにしてもよい。
【0024】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記金属製シートをエッチングすることによって前記溝が形成され、前記金属製シートをエッチングすることによって前記穴が形成されるようにしてもよい。
【0025】
このような蒸着マスクの製造方法において、前記金属製シートの前記第1面および前記第2面が同時にエッチングされ、前記穴を形成する工程および前記溝を形成する工程が並行して行われるようにしてもよい。
【0026】
あるいは、このような蒸着マスクの製造方法において、前記金属製シートの前記第1面および前記第2面が同時にエッチングされ前記穴を形成する工程および前記溝を形成する工程が並行して行われ、その後、前記穴を形成する工程および前記溝を形成する工程のいずれか一方のみが引き続き行われるようにしてもよい。
【0027】
あるいは、このような蒸着マスクの製造方法が、前記金属製シートをエッチングすることによって前記穴が形成された後に実施される工程であって、形成された前記穴を樹脂で封止する工程をさらに備え、前記穴を封止された後に、前記金属製シートを前記第1面側からエッチングすることにより、前記穴まで通じる前記溝が形成されるようにしてもよい。このような蒸着マスクの製造方法の前記穴を形成する工程において、前記金属製シートの前記第1面および前記第2面が同時にエッチングされ、前記溝の形成が部分的に進むようにしてもよい。
【0028】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記穴を形成する工程は、前記溝を形成する工程の前に行われるようにしてもよい。
【0029】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記溝を形成する工程は、前記穴を形成する工程の前に行われるようにしてもよい。
【0030】
さらに、本発明による蒸着マスクの製造方法の前記溝を形成する工程において、隣り合う二つの穴が前記第1面において接続されるようにして、複数の穴を線状に並べて前記第1面側から形成することにより、前記溝を形成するようにしてもよい。このような蒸着マスクの製造方法において、前記第2面側に形成される穴は、前記第1面側に形成され前記溝を構成する穴に対面するようになる位置に形成されてもよい。また、このような蒸着マスクの製造方法の前記溝を形成する工程において、前記溝を構成する複数の穴は、複数の貫通穴が間隔を空けて並べて形成されたレジストを前記第1面上に設けられた状態で前記金属製シートの前記第1面をエッチングすることにより、前記レジストの前記貫通穴に対応する位置において前記金属製シートの前記第1面側に形成され、前記複数の穴からなる溝を形成するためのエッチングは、前記溝の長手方向に沿って隣り合う二つの穴が、当該二つの穴にそれぞれ対応する前記レジストの二つの貫通穴の間に位置するレジストのブリッジ部の下方において接続されるように、行われてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、線状の溝と穴とによって金属製シートに貫通孔が形成されている。したがって、金属製シートのシート面に対して斜めに進む蒸着材料であって溝の長手方向に概ね沿うようにして進む蒸着材料を高い効率で蒸着に用いることができる。これにより、蒸着材料の利用効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図1乃至図18を参照して本発明による蒸着マスクおよび蒸着マスクの製造方法の一実施の形態について説明する。ここで図1乃至図18は本発明の一実施の形態を説明するための図である。なお、以下の実施の形態では、有機ELディスプレイ装置を製造する際に有機発光材料を所望のパターンでガラス基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)および蒸着マスクの製造方法を例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)および蒸着マスクの製造方法に対し、本発明を適用することができる。
【0033】
まず最初に、本発明による蒸着マスクの製造方法により製造され得る蒸着マスクの一例について、主に図1乃至図5を参照して説明する。ここで図1は蒸着マスクおよび蒸着マスク装置の一例を示す斜視図であり、図2は蒸着マスクの部分平面図であり、図3は図2のIII−III線に沿った断面図であり、図4は図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【0034】
図1乃至図4に示すように、蒸着マスク20は、対向する第1面34aおよび第2面34bを有する金属製シート34からなっている。金属製シート34には、第1面34aと第2面34bとの間を延びる多数の貫通孔25が形成されている。蒸着マスク装置10は、図1に示すように、蒸着マスク20と、この蒸着マスク20と固定されたフレーム15と、を有している。図1に示す例において、フレーム15は、蒸着マスク20(金属製シート34)の周縁部に取り付けられている。
【0035】
図1に示された蒸着マスク装置10は、図5に示すように、蒸着マスク20がガラス基板42に対面するようにして、蒸着装置40内に支持される。ここで図5は、蒸着マスク装置10の使用方法を説明するための図である。蒸着装置40内には、この蒸着マスク装置10を挟んだガラス基板42の下方に、蒸着材料(一例として、有機発光材料)48を収容するるつぼ44と、るつぼ44を加熱するヒータ46とが配置されている。るつぼ44内の蒸着材料48は、ヒータ46からの加熱により、気化または昇華してガラス基板42の表面に付着するようになる。上述したように、蒸着マスク20には多数の貫通孔25が形成されており、蒸着材料48はこの貫通孔25を介してガラス基板42に付着する。この結果、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料48がガラス基板42の表面に成膜される。
【0036】
図1および図2に示すように、本実施の形態において、蒸着マスク20をなす金属製シート34は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。図3および図4に示すように、金属製シート34の第1面34aの側に、線状に延びる溝26が形成され、金属製シート34の第2面34bの側に、穴(凹部、孔)27が形成されている。穴27と溝26とは通じており、この結果、穴27と溝26とによって金属製シート34を貫通する貫通孔25が形成されている。
【0037】
図3に示す例において、第1面34a側から第2面34b側に向け、金属製シート34のシート面に沿った断面における溝26の断面積はしだいに小さくなっていく。このような溝26は、例えば後述するように、金属製シート34を第1面34aの側からエッチングすることによって形成され得る。同様に、図3および図4に示す例において、第2面34b側から第1面34a側に向け、金属製シート34のシート面に沿った断面における穴27の断面積はしだいに小さくなっていく。このような穴27は、例えば後述するように、金属製シート34を第2面34bの側からエッチングすることによって形成され得る。
【0038】
図1および図2に示すように、溝26は金属製シート34のシート面に沿って直線状に延びている。金属製シート34の第1面34aには、互いに平行に延びる多数の溝26が形成されている。各溝26に対し、当該溝26に通じる穴27が多数形成されている。各溝26に対面する多数の穴27は、当該溝26の長手方向に沿って一定の間隔をあけて直線上に配列されている。
【0039】
金属製シート34のシート面に直交する方向(厚さ方向)からの視野において、言い換えると金属製シート34の平面視において、穴27は矩形状、さらに詳細には長方形状に形成されている。穴27の長手方向、つまり、穴27が有する長方形状輪郭の長辺に沿った方向は、溝26の長手方向(溝26が延びる方向(延在方向))に沿っている。図2に示すように、穴27は溝26に対面する位置に形成されている。さらに具体的には、溝26の長手方向に直交する幅方向中心に、穴27の平面視における中心が位置するように、穴27が配置されている。穴27の幅は、溝26の幅よりも狭い。なお、ここでいう矩形状または長方形状とは、正確な矩形状や正確な長方形だけを指すものではなく、エッチングにより矩形状または長方形を作製しようとした場合に作製され得る略矩形状および略長方形を含む概念である。
【0040】
穴27は金属製シート34の第2面34bから溝26の底部へ延びている。溝26の壁面26aと穴27の壁面27aとは、周状の接続部28で接続されている。図3および図4に示すように、接続部28は、開孔面積(平面視における貫通孔25の面積)が最小となる張り出し部28aの稜線からなっている。穴27の平面視における形状が長方形状であることから、周状の接続部28によって囲まれる領域も、金属製シート34のシート面に直交する方向からの視野において(平面視において)、長方形状となっている。また、図2に示すように、接続部28によって囲まれる領域の長手方向は、線状の溝26の長手方向に沿って延びている。さらに、本実施の形態では、図2に示すように、金属製シート34のシート面に直交する方向からの視野において(平面視において)、各溝26の長手方向に沿って隣り合う二つの貫通孔25(接続部28によって囲まれる領域)の間の長さLaは、隣り合う溝26にそれぞれ形成された二つの貫通孔25(接続部28によって囲まれる領域)の間の長さLbよりも短くなっている。
【0041】
ところで、図6および図7に示すように、蒸着マスク装置10が蒸着装置40に収容された場合、金属製シート34の第2面34bに対応する蒸着マスク20の第2面20bはガラス基板42に対面し、金属製シート34の第1面34aに対応する蒸着マスク20の第1面20aが蒸着材料48を保持したるつぼ44に対面する。すなわち、図6および図7に示すように、蒸着材料48は次第に先細りしていく溝26側から貫通孔25に入り、その後、穴27を経て貫通孔25から出る。
【0042】
上述したように、穴27は第2面34b側から第1面34a側へ向けて先細りしているので、貫通孔25内に開孔面積が最小となる張り出し部28aが形成されている。そして、このような蒸着マスク20を用いて蒸着を行った場合、ガラス基板42のうちの張り出し部28aの裏側に対応する領域に成膜される蒸着膜49の膜厚は安定しない。本件発明者が確認したところ、有機ELディスプレイを作製する際に有機発光材料を蒸着させるために用いられる蒸着マスク20においては、溝26の壁面26aと穴27の壁面27aとの接続部28から第2面34b(20b)までの金属製シート34のシート面に直交する方向に沿った長さLcが、10μm以下(さらに望ましくは5μm以下)であれば、あるいは、溝26の壁面26aと穴27の壁面27aとの接続部28から第1面34a(20a)までの金属製シート34のシート面に直交する方向に沿った長さLdの三分の一以下であれば、安定した膜厚で被成膜領域(成膜されるべき領域)に蒸着膜49を形成することができた。
【0043】
また、図6および図7に示すように、一部の蒸着材料48は、るつぼ44からガラス基板42に向けて直線的に移動せず、ガラス基板42の板面に対して斜めに移動することもある。上述したように、貫通孔25の断面形状が金属製シート34のシート面に直交する方向に切り立っていれば、斜めに移動する蒸着材料48を有効に利用することができない。
【0044】
そして一般的に、隣り合う貫通孔25の離間間隔が短い場合、隣りの貫通孔側の壁面が切り立ってしまう傾向がある。本実施の形態においては、平面視において、貫通孔25が、一方向に沿って一定の離間間隔Laをあけて配列されているとともに、一方向とは異なる他方向に沿って離間間隔Laよりも長い離間間隔Lbをあけて配列されている。しかしながら、本実施の形態によれば、より離間間隔Laが短くなる一方向に沿って溝26が延びているため、貫通孔25の長手方向を横切る断面において、一方向における隣りの貫通孔側の壁面が切り立つどころか、図7に示すように貫通孔25を成す壁面自体が、厚さLcを調整された穴27部分のみしか存在しない。
【0045】
また一般的に、平面視において長方形状を有する貫通孔25の長手方向を横切る断面(長方形状の短辺を横切る断面)において、貫通孔25の壁面は切り立つ傾向がある。すなわち、平面視において長方形状を有する貫通孔25の短辺沿いの壁面は切り立つ傾向がある。しかしながら、本実施の形態によれば、貫通孔25の長手方向は溝26の長手方向に一致しているため、貫通孔25の長手方向を横切る断面において、貫通孔25を成す壁面が切り立つどころか、図7に示すように貫通孔25を成す壁面自体が、厚さLcを調整された穴27部分のみしか存在しない。
【0046】
以上のことから、図7に示す貫通孔25の長手方向を横切る断面において、斜めに移動してガラス基板42に向かう蒸着材料48を、有効に利用して、蒸着材料の利用効率(成膜効率)を大幅に向上させることができる。さらに、図7に示すように貫通孔25を成す壁面がほとんど存在しないので、ガラス基板42のうちの貫通孔25の縁部領域に対応する領域おいても十分な膜厚で安定して成膜することができる。したがって、従来のように被成膜領域(成膜されるべき領域)よりも貫通孔25の開孔面積を大きめに形成しておく必要がない。このため、貫通孔25を短い間隔で形成し、ファインピッチでのパターニングを精度良く一回で行うことができる。
【0047】
一方、図6に示すように、平面視において長方形状を有する貫通孔25の幅方向を横切る断面(長方形状の長辺を横切る断面)において、貫通孔25の壁面は、溝26部分にも存在している。貫通孔25の幅方向における断面において、溝26の壁面26aが図6の点線で示す輪郭を有していたとすると、斜めに移動する蒸着材料48は、蒸着マスク20に付着してガラス基板42まで到達しない。すなわち、蒸着材料の利用効率(ガラス基板42に付着する割合)を高めて高価な蒸着材料を節約するためには、溝26の長手方向に直交するとともに金属製シート34のシート面に直交する断面(図6に示す断面)において、溝26の壁面26aおよび穴27の壁面27aの接続部28と溝26の第1面34a(20a)側の端部とを結ぶ直線Lが第2面34b(20b)となす角度θが小さい方がよく、角度θが45°以下となっていることが好ましい。
【0048】
なお、角度θを小さくしていくと、図6に二点鎖線で示すように、隣り合う溝26の壁面26a同士が接続されるようになる。しかしながら、蒸着マスク20の強度を考慮すると、隣り合う溝26の壁面26a同士は接続されていないことが好ましく、平坦な第1面34a(20a)において隣り合う溝26の間に5μm以上の平坦な面が形成されていることがさらに好ましい。
【0049】
すなわち、直線Lが第2面34b(20b)に対してなす角度θは、第1面34a(20a)において溝26の間に5μm以上の平坦な面が形成されるようになる角度以上であって、45°以下であることが好ましい。
【0050】
上述したように、本実施の形態では、直線状に延びる溝26に沿って複数の貫通孔25が一定の離間距離Laをあけて配置されている。また、所定の間隔をあけて複数の溝26が形成されている。この結果、図2に示すように、貫通孔25は、溝26の長手方向だけでなく、溝26の長手方向に直交する方向に沿っても一定の離間距離Lbをあけて配置されている。一例として、蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)が中型のディスプレイ(例えば20インチ型のディスプレイ)を作製するために用いられる場合、上述した離間距離Laは20μm以上50μm以下程度とすることができ、離間距離Lbは84μm以上254μm以下程度とすることができる。また、矩形状を有する貫通孔25の一辺(貫通孔25が長方形状を有する場合は、長辺または短辺)の長さは、8μm以上64μm以下程度とすることができる。
【0051】
そして、溝26の長手方向に直交する方向に沿って蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)とガラス基板42とを少しずつ相対移動させ、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に蒸着させていくことにより、カラー表示用のディスプレイを作製することができる。とりわけ、本実施の形態によれば、貫通孔25の開孔面積を蒸着されるべき領域に比べて大きく設定しておく必要がないので、小さな離間距離Laで離間した画素を一回の蒸着工程で成膜することができる。したがって、三色の有機発光材料を蒸着する場合、各色の成膜を二回にわけて行っていた従来の方法に比べ、三工程も省略することができる。
【0052】
なお、蒸着マスク20の周縁部に取り付けられたフレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように蒸着マスク20を張った状態に保持するためのものである。蒸着マスク20とフレーム15とは、例えばスポット溶接により互いに対して固定される。上述したように、蒸着マスク装置10は、高温雰囲気となる蒸着装置40の内部に保持される。したがって、蒸着マスク20およびフレーム15は、蒸着フレームの撓みや熱応力の発生を防止するため、熱膨張率が低い同一の材料によって作製されていることが好ましい。このような材料として、例えば、36%Niインバー材を用いることができる。
【0053】
次に、このような蒸着マスク20および蒸着マスク装置10の製造方法について、主に図8乃至図10を用いて説明する。このうち図8は蒸着マスクの製造方法を全体的に説明するための図であり、図9は金属製シートにレジストパターンを形成する方法を説明するための図であり、図10は金属製シートをエッチングする方法を説明するための図である。
【0054】
図8に示すように、本実施の形態における蒸着マスクの製造方法は、帯状に延びる金属製シート34を供給する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを金属製シート34に施して、金属製シート34の第1面34a側に線状に延びる溝26を形成する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを金属製シート34に施して、金属製シート34の第2面34b側に穴27を形成する工程と、を含んでいる。各工程について、以下においてさらに詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、以下に説明するように、金属製シート34の第1面34aおよび第2面34bが同時にエッチングされ、溝26を形成する工程および穴27を形成する工程が並行して行われる。
【0055】
図8に示すように、本実施の形態においては、金属製シート34を供給コア31に巻き取った巻体29が準備される。そして、この供給コア31が回転して巻体29が巻き戻されることにより、図8に示すように帯状に延びる金属製シート34が供給される。なお、金属製シート34は貫通孔25を形成されて蒸着マスク20をなすようになる。したがって、上述したように、金属製シート34は、例えば36%Niインバー材からなる。ただし、これに限られず、ステンレス、銅、鉄、アルミニウムからなるシートを金属製シート34として用いることも可能である。
【0056】
供給された金属製シート34はエッチング装置(エッチング手段)50によってエッチング処理を施される。具体的には、まず、金属製シート34の第1面34a上(図9の紙面における下側の面上)および第2面34b上に感光性レジスト材料を塗布し、金属製シート34上にレジスト膜36a,36bを形成する。次に、レジスト膜36a,36bのうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたガラス乾板37a,37bを準備し、ガラス乾板37a,37bをレジスト膜36a,36b上に配置する。
【0057】
その後、図9に示すように、レジスト膜36をガラス乾板37越しに露光し、さらにレジスト膜36を現像する。以上のようにして、金属製シート34の第1面34a上にレジストパターン(単に、レジストとも呼ぶ)35aが形成されるとともに、金属製シート34の第2面34b上にレジストパターン(単に、レジストとも呼ぶ)35bが形成される。
【0058】
なお、ガラス乾板37a,37bのうちの除去すべきレジスト膜36a,36bに対面する領域を黒色にしておき、露光光として可視光を用いるようにしてもよい。この場合、黒色部分で可視光が吸収されることにより、レジスト膜36a,36bの除去すべき領域には光が入射せず、レジスト膜36a,36bが金属製シート34上に定着しない。一方、レジスト膜36a,36bの除去すべきでない領域には光が入射して、当該領域におけるレジスト膜36a,36bが金属製シート34上に定着する。定着していないレジスト膜36a,36bは、例えば湯洗によって除去される。
【0059】
次に、図10に示すように、金属製シート34上の形成されたレジストパターン35a,35bをマスクとして、エッチング液(例えば塩化第二鉄溶液)38により金属製シート34を第1面34a側および第2面34b側からエッチングする。本実施の形態においては、エッチング液38が、搬送される金属製シート34の下方に配置されたエッチング装置50の下方ノズル51aから、レジストパターン35a越しに金属製シート34の第1面34aに向けて噴射される。同時に、エッチング液38が、搬送される金属製シート34の上方に配置されたエッチング装置50の上方ノズル51bから、レジストパターン35b越しに金属製シート34の第2面34bに向けて噴射される。このとき、図10に点線で示すように、金属製シート34のうちのレジストパターン35a,35bによって覆われていない領域で、エッチング液による浸食が始まる。その後、浸食は、金属製シート34の厚み方向だけでなく、金属製シート34のシート面に沿った方向にも進んでいく。以上のようにして、エッチング液による浸食が金属製シート34の第1面34aから第2面34b側に向けて進んで溝26が形成されていき、同様に、エッチング液による浸食が金属製シート34の第2面34bから第1面34a側に向けて進んで穴27が形成されていく。最終的に、溝26と穴27とが互いに通じ、溝26と穴27とによって金属製シート34を貫通する貫通孔25が形成される。
【0060】
その後、金属製シート34上のレジストパターン35a,35bを除去し、さらに金属製シート34を水洗いする。このようにして、多数の貫通孔25を形成された金属製シート34からなる蒸着マスク用シート状部材18が得られる。
【0061】
このようにして得られた蒸着マスク用シート状部材18は、当該蒸着マスク用シート状部材18を狭持した状態で回転する一対の搬送ローラ52,52により、切断装置(切断手段)53へ搬送される。なお、この搬送ローラ52,52の回転によって蒸着マスク用シート状部材18および金属製シート34に作用するテンション(引っ張り力)を介し、上述した供給コア31が回転させられ、巻体29から金属製シート34が供給されるようになっている。
【0062】
多数の貫通孔25が形成された金属製シート34を切断装置(切断手段)53によって所定の長さに切断することにより、枚葉状の蒸着マスク20が得られる。そして、各蒸着マスク20に対してフレーム15を取り付けることにより、蒸着マスク装置10が得られる。なお、フレーム15は、蒸着マスク20の一方の面20aに取り付けられてもよいし、蒸着マスク20の他方の面20bに取り付けられてもよい。
【0063】
なお、上述したように直線状に細長く延びる溝26を形成する場合、溝26が延びる方向と、金属製シート34が供給される方向(金属製シート34が搬送される方向)とが略平行となっていることが好ましい。この場合、蒸着マスク20の製造中に、厚みの薄くなっている溝26の部分において金属製シート34が延びてしまったり切断されてしまったりすることを防止することができる。
【0064】
以上のように本実施の形態によれば、線状の溝26と穴27とによって金属製シート34に貫通孔25が形成されている。したがって、金属製シート34のシート面に対して斜めに進む蒸着材料48であって溝26の長手方向に概ね沿うようにして進む蒸着材料48を高い効率で蒸着に用いることができる。これにより、蒸着材料48の利用効率を大幅に高めることができる。そして、本実施の形態による蒸着マスク20は、有機ELディスプレイ装置を製造する際に、例えば高価な有機発光材料を所望のパターンで基板42上にパターニングするために用いられる蒸着マスク(蒸着用のメタルマスク)に非常に適している。
【0065】
また、本実施の形態によれば、金属製シート34の厚みをある程度以上に確保しながら、蒸着材料48の利用効率を大幅に高めている。言い換えると、金属製シート34の厚みを全体的に薄くすることなく、金属製シート34の厚みを局所的に削って、蒸着材料48の利用効率を大幅に高めている。したがって、金属製シート34および蒸着マスク20の剛性を確保することが可能となり、蒸着マスク20の作製時や取り扱い時(搬送や使用等)に、蒸着マスク20(金属製シート34)が変形してしまうことを効果的に防止することができる。この結果、得られた蒸着マスク20を用いた場合、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる。
【0066】
さらに、本実施の形態によれば、金属製シート34を供給する工程において、金属製シート34を巻き取った巻体29を巻き戻して、帯状に延びる金属製シート34を供給する。このような巻体29は安価に入手可能であり、しかも取り扱い上の都合が非常に良い。
【0067】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、変形例の一例について適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下で参照する図13乃至図18において、上述した実施の形態との同一な部分、並びに、以下に説明する変形例同士で同一な部分には同一な符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
【0068】
(変形例1)
上述した実施の形態において、金属製シート34の第1面34aおよび第2面34bが同時にエッチングされ、溝26および穴27が並行して形成されていく例を示したが、これに限られない。例えば、図11に示すように、穴27を形成する工程が、溝26を形成する工程の前に行われるようにしてもよいし、図12に示すように、溝26を形成する工程が、穴27を形成する工程の前に行われるようにしてもよい。穴27を形成する工程が溝26を形成する工程の前に行われる場合、金属製シート34の第2面34b側からエッチングして穴27を形成した後に、穴27を樹脂で埋める工程、あるいは、穴27を樹脂で埋めるとともに金属製シート34の第2面34bを樹脂膜で被覆する工程をさらに設けるようにしてもよい。この場合、エッチングにより溝26を精度良く形成することができる。なお、穴27および第2面34b上の樹脂膜は、溝26を形成した後に除去される。同様に、溝26を形成する工程が穴27を形成する工程の前に行われる場合、金属製シート34の第1面34a側からエッチングして溝26を形成した後に、溝26を樹脂で埋める工程、あるいは、溝26を樹脂で埋めるとともに金属製シート34の第1面34aを樹脂膜で被覆する工程をさらに設けるようにしてもよい。この場合、エッチングにより穴27を精度良く形成することができる。なお、溝26および第1面34a上の樹脂膜は、穴27を形成した後に除去される。
【0069】
あるいは、図13に示すように、金属製シート34の第1面34aおよび第2面34bが同時にエッチングされ穴27を形成する工程および溝26を形成する工程が並行して行われ、その後、穴27を形成する工程および溝26を形成する工程のいずれか一方のみが引き続き行われるようにしてもよい。すなわち、この方法において、エッチングが二段階に分けて実施され、第1回目のエッチングにおいて、穴27を形成する工程および溝26を形成する工程が並行して行われる。そして、第1回目のエッチングにおいて、穴27を形成する工程および溝26を形成する工程のいずれか一方が終了し、第2回目のエッチングにおいて、穴27を形成する工程および溝26を形成する工程のいずれか他方のみが引き続き実施される。上述した実施の形態の蒸着マスク20の製造に適用する場合、エッチングによる削り込む量が少なくてよい穴27の形成が第1回目のエッチングによって完成するようになっていることが好ましい。このような方法によれば、エッチングによる削り込み量の異なる溝26および穴27を効率的に作製することが可能となる。
【0070】
ここで、図14に示す製造方法の変形例を詳細に説明しておく。ここで、図14(a)乃至図14(e)は蒸着マスクの製造方法の一変形例を説明するための図であって、いずれも溝26の幅方向に沿った断面において金属製シート34を示している。
【0071】
図14(a)に示すように、上述した方法と同様にして、金属製シート34の第1面34a上にレジスト(レジストパターン)35aを形成し、金属製シート34の第2面34b上にレジスト(レジストパターン)35bを形成する。次に、レジスト35a,35b越しに金属製シート34に対して第1回目のエッチングを行う。第1回目のエッチングにおいては、金属製シート34の第1面34aおよび第2面34bが同時にエッチングされ、第1面34a側の溝26および第2面34b側の穴27が並行して形成されていく。ただし、穴27を形成するためのエッチングによる削り込み量は、溝26を形成するためのエッチングによる削り込み量よりも格段に少ない。したがって、図14(b)に示すように、所望の形状の穴27が金属製シート34の第2面34b側に形成された時点で、溝26は未だ形成途中の段階にある。この図14(b)に示す状態において、金属製シート34に対する第1回目のエッチングが終了する。
【0072】
次に、図14(c)に示すように、エッチング液38に対する耐性を有した樹脂39によって、形成された穴27が被覆される。すなわち、エッチング液38に対する耐性を有した樹脂39によって、穴27が封止される。図14(c)に示す例において、樹脂39の膜が、形成された穴27だけでなく、第2面34b(レジスト35b)も覆うように形成されている。
【0073】
その後、金属製シート34に対して第2回目のエッチングを行う。第2回目のエッチングにおいて、金属製シート34は第1面34aの側のみからエッチングされ、第1面34aの側から溝26の形成が進行していく。金属製シート34は第2面34bの側には、エッチング液38に対する耐性を有した樹脂39が被覆されているからである。したがって、第1回目のエッチングにより所望の形状に形成された穴27の形状が損なわれてしまうことはない。そして、図14(d)に示すように、所望の形状の溝26が金属製シート34の第1面34a側に形成された時点で、金属製シート34に対する第2回目のエッチングが終了する。このとき、図14(d)に示すように、溝26は金属製シート34の厚さ方向に沿って穴27に到達する位置まで延びており、これにより、互いに通じ合っている溝26および穴27によって貫通孔25が金属製シート34に形成されている。
【0074】
次に、金属製シート34からレジスト35a,35bおよび樹脂膜39が除去される。なお、樹脂膜39は、例えば燃焼させることにより、除去することができる。このようにして、図14(e)に示すように、蒸着マスク20(蒸着マスク用シート状部材18)が得られる。
【0075】
以上の製造方法においては、第2回目のエッチングが終了し、穴27と溝26とが連通して貫通孔25が作製された際、穴27は樹脂39によって封止されている。そして、このような製造方法によれば、溝26および穴27(すなわち、貫通孔25)を、極めて精度よく安定して形成することができる。
【0076】
仮に、穴27が樹脂で封止されていなかったとすると、金属製シート34aの第1面34aおよび第2面34bが貫通孔25を介して連通するようになる。この場合、浸食能力の高いフレッシュなエッチング液38(図10参照)が、溝26内から穴27側へ向けて流れ込むようになる。このとき、断面積(開孔面積)が小さくなる穴27内や張り出し部28a近傍において液圧が高くなり、これらの領域がフレッシュなエッチング液により局所的に激しく浸食される。また、第1面34a側から第2面34b側へ流れ込んだエッチング液が、第2面34b上における穴27の周囲に残留することもある。これらのことから、貫通孔25の輪郭を画定させる接続部28の形状を安定させること、さらには、すべての貫通孔25の輪郭を均一にすることが難しくなる。またそもそも、穴27が樹脂39で封止されていなかったとすると、溝26が穴27に通じてエッチング液が第2面34b側へ流れ込みはじめる際に発生する圧力により、貫通孔25の断面形状(とりわけ、張り出し部28aの形状)がだれてしまうことがある。
【0077】
その一方で、穴27と溝26とが連通して貫通孔25が作製された際に、穴27が樹脂39によって封止されている本変形例によれば、以上の問題点をすべて回避することができ、所望の形状の貫通孔25を精度良く安定して形成することができる。また、この方法によれば、穴27と溝26とを極めて精度良く所望の形状に形成することができるので、上述した、接続部28から第2面34b(20b)までの金属製シート34のシート面に直交する方向に沿った長さLc(図6参照)を安定して5μm以下(さらに詳細には、2〜4μm)にすることができる。この結果、得られた蒸着マスク20を用いた場合、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる。とりわけ、被成膜領域(成膜されるべき領域)内のうちの縁部における蒸着膜の膜厚をも安定させることができるようになる。
【0078】
(変形例2)
さらに、上述した実施の形態において、金属製シート34を第1面34aの側からエッチングすることによって溝26が形成され、金属製シート34を第2面34bの側からエッチングすることによって穴27が形成される例を示したが、これに限られない。例えば、金属製シート34を第1面34aの側からエッチングして溝26を形成した後に、さらに、金属製シート34の第1面34bの側にレジストパターン(レジスト)を形成し、金属製シート34を第1面34aの側からエッチングすることによって穴27を形成するようにしてもよい。この場合、溝26の底部から金属製シート34の第2面34bに延びる穴27を形成することができ、形成された穴27は、溝26と同様に、金属製シート34の第1面34a側から第2面34b側へ向けて断面積が小さくなっていくようになる。すなわち、この方法によれば、第1面34a側から第2面34b側に向け、金属製シート34のシート面に沿った断面における貫通孔25の断面積(開孔面積)がしだいに小さくなっていく。したがって、このようにして製造された金属製シート34からなる蒸着マスク20によれば、高精細なパターンでの蒸着を極めて精度よく行うことができるようになる。
【0079】
(変形例3)
さらに、上述した実施の形態における金属製シート34の第1面34a側に形成された溝26の構成は一例に過ぎない。例えば、上述した実施の形態において、溝26がその長手方向に沿って略均一な幅および略均一な深さを有する例を示したが、これに限れない。一例として、図15に示すように、溝26の長手方向に直交する方向(つまり、溝の幅方向)に沿った溝26の第1面34a上における幅が、一定でないようにしてもよい。図15に示す蒸着マスク20において、溝26の長手方向において穴27が形成されている部分の幅Waは、溝26の長手方向において隣り合う二つの穴27の間の部分の幅Wbよりも太くなっている。
【0080】
このような溝26は、溝26の長手方向に沿って並べて第1面34a側に形成された複数の穴(溝構成用穴)30から形成されている。この溝26を構成する複数の穴30のうちの、溝26長手方向に沿って隣り合う二つの穴27は第1面34aにおいて接続されている。言い換えると、二つの穴27は、第1面34a上において、部分的に重なり合うようにして形成されている。すなわち、第1面34aにおいて、二つの穴27の外輪郭はつながっている。また、図15および図16に示されているように、第2面34b側に形成された穴27は、溝26を構成するために第1面34a側に形成された穴30に対面する位置に配置されている。とりわけ、本実施の形態においては、図15および図16から理解され得るように、第2面34b側に形成された穴27の溝26の長手方向に沿った中心位置C27は、第1面34a側に形成された溝構成用穴30の溝26の長手方向に沿った中心位置C30と、溝26の長手方向において一致している。さらに、本実施の形態においては、図15から理解され得るように、第2面34b側に形成された穴27の溝26の幅方向に沿った中心位置は、第1面34a側に形成された溝構成用穴30の溝26の幅方向に沿った中心位置と、溝26の幅方向において一致している。なお、図16には、この溝26の長手方向に沿った断面が示されている。
【0081】
また、図16に示すように、溝26は線状に延びているものの、溝26の深さは一定ではない。溝26の長手方向において穴27が形成されている部分の深さDaは、溝26の長手方向において隣り合う二つの穴27の間の部分の深さDbよりも深くなっている。
【0082】
なお、図15および図16に示された蒸着マスク20のその他の構成については、上述した実施の形態において説明した蒸着マスクと同一の構成とすることができる。例えば、溝26の幅方向に沿った断面形状は、上述した蒸着マスクにおける溝の断面形状(図3参照)と同一にすることができる。
【0083】
このような蒸着シート20によれば、上述した実施の形態における蒸着シートと同一の作用効果を期待することができる。例えば、線状の溝26と穴27とによって金属製シート34に貫通孔25が形成されているため、金属製シート34のシート面に対して斜めに進む蒸着材料48(図5参照)であって溝26の長手方向に概ね沿うようにして進む蒸着材料48を高い効率で蒸着に用いることができる。これにより、蒸着材料48の利用効率を大幅に高めることができる。とりわけ、本変形例によれば、上述した実施の形態における蒸着マスクよりも、金属製シート34および蒸着マスク20の剛性を確保することが可能となる。このため、蒸着マスク20の作製時や取り扱い時(搬送や使用等)に、蒸着マスク20(金属製シート34)が変形してしまうことをさらに効果的に防止することができる。この結果、得られた蒸着マスク20を用いた場合、極めて高精細なパターンでの蒸着をさらに精度良く行うことができる。
【0084】
ここで、図15および図16に示された蒸着シートの製造方法の一例について、図17および図18を参照して説明しておく。なお、図15および図16に示された蒸着シート20は、図8、図11、図12および図13に示した上述の製造方法のいずれによっても作製され得る。一例として、以下に説明する製造方法は、図13および図14を参照して説明した製造方法と同様の方法となっている。ここで、図17(a)乃至図17(e)は蒸着マスクの製造方法を説明するための図であって、いずれも溝の長手方向に沿った断面において金属製シート34を示している。また、図18は、金属シート34の第1面34a上に配置され得るレジスト(レジストパターン)35aの一例を、形成されるべき溝26および貫通孔25の外輪郭とともに示す平面図である。
【0085】
まず、図17(a)に示すように、金属製シート34の第1面34a上にレジスト(レジストパターン)35aを形成し、金属製シート34の第2面34b上にレジスト(レジストパターン)35bを形成する。なお、本例においては、図18に示すように、金属製シート34の第1面34a上に形成されるレジスト35aには、第1面34a上において溝26を構成するようになる穴30が形成されるべき位置にそれぞれ貫通穴35a1が形成されている。図18に示すように、複数の貫通穴35a1は、形成されるべき溝26の長手方向(図18の紙面における上下方向)に沿って間隔を空けて配列されている。したがって、レジスト35aは、形成されるべき溝26の長手方向に沿って隣り合う二つの貫通穴35a1の間に位置するブリッジ部35a2を有するようになっている。
【0086】
次に、レジスト35a,35b越しに金属製シート34に対して第1回目のエッチングを行う。第1回目のエッチングにおいては、金属製シート34の第1面34aおよび第2面34bが同時にエッチングされ、第1面34a側の溝26を構成するようになる穴30と、第2面34b側の穴27と、が並行して形成されていく。すなわち、溝26を構成する複数の穴30は、複数の貫通穴35a1が間隔を空けて線状に並べて形成されたレジスト35aを第1面34a上に配置された状態で金属製シート34の第1面34aをエッチングすることにより、レジスト35aの貫通穴35a1に対応する位置において金属製シート34の第1面34a側に形成されていく。そして、図17(b)に示すように、所望の形状の穴27が金属製シート34の第2面34b側に形成された状態であって、溝26を構成する穴30が完全に形成されていない状態において、金属製シート34に対する第1回目のエッチングが終了する。次に、図17(c)に示すように、エッチング液38に対する耐性を有した樹脂からなる樹脂膜39が、形成された穴27および第2面34b(レジスト35b)を覆うように形成される。すなわち、エッチング液38に対する耐性を有した樹脂39によって、穴27が封止される。
【0087】
その後、金属製シート34に対して第2回目のエッチングを行う。第2回目のエッチングにおいて、金属製シート34は第1面34aの側のみからエッチングされ、第1面34a側から溝26を構成する穴30の形成が進行していく。このとき、穴27がエッチング液38に対する耐性を有した樹脂39に封止されているので、第1回目のエッチングにより形成された穴27の形状が損なわれてしまうことはない。そして、図17(d)に示すように、所望の形状の穴30が金属製シート34の第1面34a側に形成された時点で、金属製シート34に対する第2回目のエッチングが終了する。
【0088】
上述したようにエッチングによる金属製シート34の浸食は、金属製シート34の厚み方向だけでなく、金属製シート34のシート面に沿った方向にも進んでいく。そして、図17(d)に示すように、二段階のエッチング工程を経て、第1面34aから形成された穴30は、第2面34b側に形成された穴27まで金属製シート34の厚さ方向に延びるとともに、形成されるべき溝26の長手方向に沿って隣り合う穴30と第1面34aにおいてつながるように金属製シート34のシート面に沿った方向にも延びる。そして、二回目のエッチングは、複数の穴30のうちの溝26の長手方向に沿って隣り合うすべての二つの穴3が、当該二つの穴30にそれぞれ対応するレジスト35aの二つの貫通穴35a1の間に位置するレジスト35aのブリッジ部35a2の下方において接続されるまで、続けられる。つまり、二回目のエッチングが終了した後には、レジスト35aのブリッジ部35a2と金属製シート34との間に隙間が形成されるようになる。このようにして、二段階のエッチングにより、隣り合う二つの穴30が最終的に第1面34aにおいて接続されるようにして、複数の穴(溝構成用穴)30が線状に並べて第1面34a側から形成されていき、最終的に、この複数の穴30から溝26が形成される。なお、溝26の長手方向に沿って隣り合う二つの穴30が第1面34a上において重なり合い始めるのは、第1回目のエッチング工程中であってもよいし、第2回目のエッチング工程中であってもよい。
【0089】
その後、金属製シート34からレジスト35a,35bおよび樹脂膜39が除去され、図17(e)に示すように、蒸着マスク20(蒸着マスク用シート状部材18)が得られる。
【0090】
以上の製造方法によれば、図13および図14を参照しながら説明した製造方法と同様の作用効果を期待することができる。例えば、以上の製造方法によれば、所望の形状の貫通孔25を精度良く安定して形成することができる。また、以上の製造方法によれば、上述した、接続部28から第2面34b(20b)までの金属製シート34のシート面に直交する方向に沿った長さLc(図6参照)を安定して5μm以下(さらに詳細には、2〜4μm)にすることができる。この結果、得られた蒸着マスク20を用いた場合、極めて高精細なパターンでの蒸着を精度良く行うことができる。とりわけ、被成膜領域(成膜されるべき領域)内のうちの縁部における蒸着膜の膜厚をも安定させることができるようになる。
【0091】
また、金属製シート34の第1面34a上に形成されるレジスト35aは、貫通穴35a1間にブリッジ部35a2を有している。したがって、レジスト35aは、形成されるべき溝26に対応して線状に延びる細長い貫通穴が並べて配列されている場合と比較して、高い剛性を有するようになるとともに、金属製シート34への接着性が向上する。すなわち、エッチングの途中に、レジスト35aが金属製シート34の第1面34a上で変形してしまうこと、あるいは、レジスト35aが金属製シート34の第1面34aから剥がれてしまうことを、効果的に防止することができる。これにより、所望の形状の貫通孔25をさらに精度良くさらに安定して形成することができる。
【0092】
(変形例4)
さらに、上述した実施の形態における金属製シート34の第1面34a側に形成された穴27の構成は一例に過ぎない。例えば、上述した実施の形態において、穴27が平面視において長方形状である例を示したが、これに限られず、例えば、正方形等の種々の形状を有するようにしてもよい。
【0093】
(変形例5)
さらに、上述した実施の形態において、帯状に延びる金属製シート34を供給する例を示したが、これに限られない。枚葉状の金属製シート34を供給し、この金属製シート34にエッチングを施して蒸着マスク20を形成するようにしてもよい。
【0094】
(変形例6)
さらに、上述した実施の形態においては、所定の長さに切断された蒸着マスク20に対してフレーム15を取り付ける例を示したが、これに限られない。例えば、切断前の蒸着マスク用シート状部材18に対してフレーム15を取り付け、その後、フレーム15が固定された蒸着マスク用シート状部材18を所定の長さに切断していくようにしてもよい。
【0095】
(変形例7)
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明による蒸着マスクの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示された蒸着マスクを示す部分平面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面における断面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った断面における断面図である。
【図5】図5は、蒸着マスクの使用方法を説明するための図である。
【図6】図6は、図3に対応する断面において、蒸着マスクの作用を説明するための図である。
【図7】図7は、図4に対応する断面において、蒸着マスクの作用を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明による蒸着マスクの製造方法の一実施の形態を説明するための図である。
【図9】図9は、金属製シートにレジストパターンを形成する方法を説明するための図である。
【図10】図10は、金属製シートをエッチングする方法を説明するための図である。
【図11】図11は、図8に対応する図であって、蒸着マスクの製造方法の一変形例を説明するための図である。
【図12】図12は、図8に対応する図であって、蒸着マスクの製造方法の他の変形例を説明するための図である。
【図13】図13は、図8に対応する図であって、蒸着マスクの製造方法のさらに他の変形例を説明するための図である。
【図14】図14(a)乃至図14(e)は、図13に示された製造方法を説明するための図であって、いずれも形成されるべき溝の幅方向に沿った断面において金属製シートを示す図である。
【図15】図15は、図2に対応する図であって、蒸着マスクの一変形例を示す部分平面図である。
【図16】図16は、図15のXVI−XVI線に沿った断面図である。
【図17】図17(a)乃至図17(e)は、図15に示された蒸着マスクの製造方法も一例を説明するための図であって、いずれも形成されるべき溝の長手方向に沿った断面において金属製シートを示す図である。
【図18】図18は、図17に示された製造方法において用いられる得るレジストの一例を示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0097】
20 蒸着マスク
20a 一方の面
20b 他方の面
25 貫通孔
26 溝
26a 壁面
27 穴
27a 壁面
28 接続部
30 穴
34 金属製シート
34a 第1面
34b 第2面
35a レジスト(レジストパターン)
35a1 貫通穴
35a2 ブリッジ部
35b レジスト(レジストパターン)
39 樹脂(樹脂膜)
L 直線
La 長さ
Lb 長さ
Lc 長さ
Ld 長さ
θ 角度
Wa 幅
Wb 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記第1面と前記第2面との間を延びる貫通孔が形成された金属製シートを備え、
前記金属製シートの前記第1面側に、線状に延びる溝が形成され、
前記金属製シートの前記第2面側に、穴が形成されており、
前記溝と前記穴とは通じており、前記溝と前記穴とによって前記金属製シートを貫通する貫通孔が形成されている
ことを特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
前記第1面側から前記第2面側に向け、前記金属製シートのシート面に沿った断面における前記溝の断面積はしだいに小さくなっていく
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記第2面側から前記第1面側に向け、前記金属製シートのシート面に沿った断面における前記穴の断面積はしだいに小さくなっていく
ことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記溝の壁面と前記穴の壁面との接続部によって囲まれる領域は、前記金属製シートのシート面に直交する方向からの視野において、長方形状を有し、
前記接続部によって囲まれる領域の長手方向は、前記線状の溝の長手方向に沿って延びている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
直線状に延びる前記溝が、互いに平行に複数設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
前記穴が、前記溝の長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至5に記載の蒸着マスク。
【請求項7】
互いに平行に延びる複数の溝が等間隔をあけて設けられ、
各溝の長手方向に沿って複数の穴が等間隔をあけて設けられ、
前記金属製シートの平面視において、溝の長手方向に沿って隣り合う二つの貫通孔の間の長さは、隣り合う溝にそれぞれ形成された二つの貫通孔の間の長さよりも短い
ことを特徴とする請求項1乃至6に記載の蒸着マスク。
【請求項8】
前記溝の前記長手方向に直交する方向に沿った前記溝の前記第1面上における幅は、前記長手方向における前記穴が形成されている部分よりも、前記長手方向における隣り合う二つの穴の間の部分において狭くなっている
ことを特徴とする請求項6または7に記載の蒸着マスク。
【請求項9】
前記溝は、前記第1面側に形成された複数の穴によって形成されており、前記複数の穴のうちの前記溝の前記長手方向に沿って隣り合う二つの穴は前記第1面において接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項10】
前記溝は、前記第1面側に形成された複数の穴によって形成されており、前記複数の穴のうちの前記溝の前記長手方向に沿って隣り合う二つの穴は前記第1面において接続されており、
前記第2面側に形成された穴は、前記第1面側に形成され前記溝を構成する穴に対面する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項11】
第1面および前記第1面とは反対側の第2面を有する金属製シートをエッチングして、前記金属製シートの前記第1面側に線状に延びる溝を形成する工程と、
前記金属製シートをエッチングして、前記金属製シートの前記第2面側に穴を形成する工程と、を含み、
前記溝と前記穴とが通じ、前記溝と前記穴とによって前記金属製シートを貫通する貫通孔が形成されるように、前記溝および前記穴が形成される
ことを特徴とする蒸着マスクの製造方法。
【請求項12】
互いに平行に延びる複数の溝が等間隔をあけて形成され、
各溝の長手方向に沿うようにして複数の穴が等間隔をあけて形成され、
前記金属製シートの平面視において、溝の長手方向に沿って隣り合う二つの貫通孔の間の長さは、隣り合う溝にそれぞれ形成された二つの貫通孔の間の長さよりも短くなるようになっている
ことを特徴とする請求項11に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項13】
前記溝の壁面と前記穴の壁面との接続部によって囲まれる領域が、前記金属製シートの平面視において、長方形状を有するように、前記溝および前記穴が形成され、
前記接続部によって囲まれる領域の長手方向は、前記線状の溝の長手方向に沿って延びるようになっている
ことを特徴とする請求項11または12に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項14】
前記金属製シートを供給する工程をさらに含み、
前記溝を形成する工程において、前記金属製シートの供給方向に沿って延びる溝が形成される
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項15】
前記金属製シートをエッチングすることによって前記溝が形成され、
前記金属製シートをエッチングすることによって前記穴が形成される
ことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項16】
前記金属製シートの前記第1面および前記第2面が同時にエッチングされ、前記穴を形成する工程および前記溝を形成する工程が並行して行われる
ことを特徴とする請求項15に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項17】
前記金属製シートの前記第1面および前記第2面が同時にエッチングされ前記穴を形成する工程および前記溝を形成する工程が並行して行われ、その後、前記穴を形成する工程および前記溝を形成する工程のいずれか一方のみが引き続き行われる
ことを特徴とする請求項15に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項18】
前記金属製シートをエッチングすることによって前記穴が形成された後に実施される工程であって、形成された前記穴を樹脂で封止する工程をさらに備え、
前記穴を封止された後に、前記金属製シートを前記第1面側からエッチングすることにより、前記穴まで通じる前記溝が形成される
ことを特徴とする請求項15に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項19】
前記穴を形成する工程において、前記金属製シートの前記第1面および前記第2面が同時にエッチングされ、前記溝の形成が部分的に進む
ことを特徴とする請求項18に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項20】
前記穴を形成する工程は、前記溝を形成する工程の前に行われる
ことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項21】
前記溝を形成する工程は、前記穴を形成する工程の前に行われる
ことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項22】
前記溝を形成する工程において、隣り合う二つの穴が前記第1面において接続されるようにして、複数の穴を線状に並べて前記第1面側から形成することにより、前記溝を形成する
ことを特徴とする請求項11乃至請求項21に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項23】
前記第2面側に形成される穴は、前記第1面側に形成され前記溝を構成する穴に対面するようになる位置に形成される
ことを特徴とする請求項22に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項24】
前記溝を形成する工程において、
前記溝を構成する複数の穴は、複数の貫通穴が間隔を空けて並べて形成されたレジストを前記第1面上に設けられた状態で前記金属製シートの前記第1面をエッチングすることにより、前記レジストの前記貫通穴に対応する位置において前記金属製シートの前記第1面側に形成され、
前記複数の穴からなる溝を形成するためのエッチングは、前記溝の長手方向に沿って隣り合う二つの穴が、当該二つの穴にそれぞれ対応する前記レジストの二つの貫通穴の間に位置するレジストのブリッジ部の下方において接続されるように、行われる
ことを特徴とする請求項22または23に記載の蒸着マスクの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2009−74160(P2009−74160A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81349(P2008−81349)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】